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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151937
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/10 20060101AFI20241018BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241018BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F25B1/10 E
F25B1/00 396D
F25B1/00 101E
F25B1/00 331Z
F25B1/00 311A
F25B5/02 530Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065776
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 明日香
(72)【発明者】
【氏名】三原 一彦
(57)【要約】
【課題】本開示は、高段圧縮機の吐出ガス温度の上昇を抑制できる冷凍装置を提供する。
【解決手段】冷凍装置は、低段圧縮機と、高段圧縮機と、複数の熱交換器と、気液分離器と、を冷媒配管にて接続する二段圧縮構成の冷凍装置であって、一端が気液分離器のガス側吐出口に接続され、他端が低段圧縮機と高段圧縮機との間の配管に接続されるガス抜き配管と、ガス抜き配管の冷媒の流量を調整可能なガス抜き弁と、気液分離器で分離された液冷媒の一部を、ガス抜き配管のガス抜き弁よりも下流側に流すバイパス配管と、バイパス配管の冷媒の流量を調整可能な液バイパス弁と、を備える、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低段圧縮機と、高段圧縮機と、複数の熱交換器と、気液分離器と、を冷媒配管にて接続する二段圧縮構成の冷凍装置であって、
一端が前記気液分離器のガス側吐出口に接続され、他端が前記低段圧縮機と前記高段圧縮機との間の配管に接続されるガス抜き配管と、
前記ガス抜き配管の冷媒の流量を調整可能なガス抜き弁と、
前記気液分離器で分離された液冷媒の一部を、前記ガス抜き配管の前記ガス抜き弁よりも下流側に流すバイパス配管と、
前記バイパス配管の冷媒の流量を調整可能な液バイパス弁と、を備える、
ことを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
前記高段圧縮機ごとの吐出ガス温度を測る吐出ガス温度センサと、
前記複数の熱交換器のうちガスクーラの出口温度を測る出口温度センサと、
最も高い前記吐出ガス温度と前記出口温度との温度差が第1設定値となるように前記液バイパス弁の開度を調整する制御装置と、を備え、
前記第1設定値は、前記複数の熱交換器における蒸発温度のうち、最も低い前記蒸発温度により決定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記気液分離器の液出口配管の液冷媒と、前記ガス抜き配管のうち前記バイパス配管との合流部よりも下流側の冷媒と、を熱交換させる内部熱交換器を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記内部熱交換器において熱交換する冷媒の流れ方向は、対向流である、
ことを特徴とする請求項3に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記高段圧縮機ごとの吐出ガス温度を測る吐出ガス温度センサと、
前記複数の熱交換器のうち、ガスクーラの出口温度を測る出口温度センサと、を備え、
前記液出口配管のうち、前記内部熱交換器の出口における冷媒の温度を検出する液温度センサと、
前記液バイパス弁の開度を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数の熱交換器のうち、蒸発器に流入する液冷媒の過冷却度が第2設定値となるように、前記液バイパス弁の開度を調整し、
最も高い前記吐出ガス温度と前記出口温度との温度差が第1設定値以下の場合は、前記液バイパス弁の開度を維持または小さくする、
ことを特徴とする請求項3に記載の冷凍装置。
【請求項6】
二酸化炭素を冷媒として使用する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ガス抜き弁が開いた状態で、前記温度差が前記第1設定値よりも大きい場合に、前記液バイパス弁を開方向に動作させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項8】
前記高段圧縮機と前記低段圧縮機との間に配置されるアキュームレータを備え、
前記ガス抜き配管の前記他端は、前記低段圧縮機と前記アキュームレータとの間の配管に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、二酸化炭素冷媒を用いた二段圧縮構成の冷媒回路を有し、気液分離器から抜いたガス冷媒を低段圧縮機と高段圧縮機との間の中間連結回路にインジェクションする冷凍装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-178042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、高段圧縮機の吐出ガス温度の上昇を抑制できる冷凍装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の冷凍装置は、低段圧縮機と、高段圧縮機と、複数の熱交換器と、気液分離器と、を冷媒配管にて接続する二段圧縮構成の冷凍装置であって、一端が前記気液分離器のガス側吐出口に接続され、他端が前記低段圧縮機と前記高段圧縮機との間の配管に接続されるガス抜き配管と、前記ガス抜き配管の冷媒の流量を調整可能なガス抜き弁と、前記気液分離器で分離された液冷媒の一部を、前記ガス抜き配管の前記ガス抜き弁よりも下流側に流すバイパス配管と、前記バイパス配管の冷媒の流量を調整可能な液バイパス弁と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示における冷凍装置は、バイパス配管からガス抜き配管に対して液冷媒を供給するため、高段圧縮機に吸入される冷媒の温度を低下させることができる。このため、高段圧縮機の吐出ガス温度の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1に係る冷凍装置の冷凍回路を示す図
図2】冷凍装置のブロック図
図3】冷凍装置のp-h線図
図4】冷凍装置のフローチャート
図5】実施の形態2に係る冷凍装置の冷凍回路を示す図
図6】実施の形態2に係る冷凍装置のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明者らが本開示に想到するに至った当時、二段圧縮構成の冷凍装置において、気液分離器のガス冷媒を、中間圧となる高段圧縮機の吸入側に導き、高段圧縮機の吸い込み圧力を下げ、高段側圧縮機の吐出温度を下げて、冷凍能力を上げる技術があった。
しかしながら、高段圧縮機の圧力比が大きくなると、体積効率が低下して吐出ガス温度が上昇し、成績係数の低下、オイルの劣化、モーターの故障等が生じ易くなるという課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
そこで本開示は、高段圧縮機の吐出ガス温度の上昇を抑制できる冷凍装置を提供する。
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0010】
(実施の形態1)
以下、図面を用いて、実施の形態1を説明する。
[1-1-1.冷凍回路の構成]
図1は、実施の形態1における冷凍装置1の冷凍回路を示す図である。
図1に示すように、冷凍装置1は、室外機10と、室内機20と、冷設機器30とを備えている。
室内機20は、例えば、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの店舗における店内の空調を行うものであり、冷設機器30は、店内に設置されている冷却貯蔵設備としての冷蔵ショーケースや冷凍ショーケースの庫内冷却を行うものである。
【0011】
室外機10は、低段圧縮機11と、2つの高段圧縮機12,12とを備えている。低段圧縮機11に対して、2つの高段圧縮機12は、並列に接続されている。
低段圧縮機11と、高段圧縮機12との間には、アキュームレータ13が配置されている。
すなわち、低段圧縮機11から吐出させた冷媒は、アキュームレータ13により気体と液体とに分離され、気体冷媒のみが高段圧縮機12に送られる。
【0012】
高段圧縮機12の吐出側には、オイルセパレータ14が接続されている。オイルセパレータ14には、冷媒配管40を介して室外熱交換器15が接続されている。
オイルセパレータ14と室外熱交換器15との間の冷媒配管40には、室内機20とアキュームレータ13との間の冷媒配管40に接続される第1の暖房用配管41が接続されている。
また、オイルセパレータ14と室外熱交換器15との間の冷媒配管40には、冷設機器30と低段圧縮機11との間の冷媒配管に接続される第1の室外戻り用配管42が接続されている。
【0013】
オイルセパレータ14と室外熱交換器15との間には、第1の切替機構50が設けられている。第1の切替機構50は、オイルセパレータ14と室外熱交換器15との間の冷媒配管40の開閉を行う第1の冷房用弁51と、第1の暖房用配管41の中途部に設けられ第1の暖房用配管41の開閉を行う第1の暖房用弁52と、第1の室外戻り用配管42の中途部に設けられ第1の室外戻り用配管42の開閉を行う室外冷媒戻り用弁53と、を備えている。
【0014】
室外熱交換器15には、冷媒配管40を介して気液分離器16が接続されている。気液分離器16には、冷媒配管40のうち液出口配管64および冷設用入口側膨張機構32を介して冷設機器30の冷設機器熱交換器31が接続されている。液出口配管64は、気液分離器16において分離された液冷媒の吐出口に接続される配管である。液出口配管64は、冷設機器熱交換器31、および、室外熱交換器15または室内熱交換器22のうち蒸発器に対して液冷媒を供給する。冷設機器熱交換器31は、冷設用出口側圧力調整機構33を介して低段圧縮機11に接続されている。
室外熱交換器15と気液分離器16との間の冷媒配管40には、室内用膨張機構21を介して室内熱交換器22に接続される第2の冷房用配管43が接続されている。
室外熱交換器15と気液分離器16との間の冷媒配管40には、室内熱交換器22に接続される第2の暖房用配管44が接続されている。
室外熱交換器15と気液分離器16との間の冷媒配管40には、冷設機器熱交換器31と気液分離器16との間の冷媒配管40に接続される第2の室外戻り用配管45が接続されている。
【0015】
室外熱交換器15と気液分離器16との間には、第2の切替機構54が設けられている。第2の切替機構54は、室外熱交換器15と気液分離器16との間の冷媒配管40の開閉を行う第2の冷房用弁55と、第2の冷房用配管43の中途部に設けられ第2の冷房用配管43の開閉を行う第3の冷房用弁56と、第2の暖房用配管44の中途部に設けられ第2の暖房用配管44の開閉を行う第2の暖房用弁57と、冷媒戻り用膨張機構58と、を備えている。冷媒戻り用膨張機構58は、第2の室外戻り用配管45の中途部に設けられ、第2の室外戻り用配管45の流量を制御する。
第2の冷房用弁55、第3の冷房用弁56および第2の暖房用弁57の下流側には、それぞれ逆止弁59が設けられている。
【0016】
室内熱交換器22は、冷媒配管40、開閉弁23およびアキュームレータ13を介して高段圧縮機12に接続されている。
また、本実施の形態においては、気液分離器16のガス冷媒をアキュームレータ13の吸込側に送るガス抜き配管60が設けられている。ガス抜き配管60は、一端を気液分離器16のガス側吐出口に接続され、他端を高段圧縮機12と低段圧縮機11との間の配管に接続されている。具体的には、ガス抜き配管60の他端は、低段圧縮機11とアキュームレータ13の吸込側との間の配管に接続される。ガス抜き配管60の中途部には、開度の変更によってガス抜き配管60を流れるガス冷媒の流量を調整可能なガス抜き弁61が設けられている。
【0017】
ここで、ガス抜き配管60の合流部60aには、バイパス配管62の一端が接続されている。合流部60aは、ガス抜き配管60のうち、ガス抜き弁61よりも冷媒の流れの下流側、すなわち、ガス抜き弁61よりも高段圧縮機12の吸入側に近い側に位置する。
【0018】
バイパス配管62は、他端を気液分離器16に連通する液出口配管64の分流部64aと接続されており、液出口配管64の液冷媒をガス抜き配管60に供給する。バイパス配管62の中途部には、開度の変更によってバイパス配管62を流れる液冷媒の流量を調整可能な液バイパス弁63が設けられている。
【0019】
[1-1-2.センサの構成]
室外機10は、吐出ガス温度センサ17a、17bと、出口温度センサ19と、を有している。吐出ガス温度センサ17a、17bは、2つの圧縮機12から吐出されるガス冷媒の温度である吐出ガス温度Tca、Tcbを個別に計測する温度センサである。出口温度センサ19は、室外熱交換器15がガスクーラとして機能する際における冷媒の出口側の配管に取り付けられ、室外熱交換器15によって冷却された冷媒の温度である出口温度T1を計測する。換言すれば、出口温度センサ19は、室外熱交換器15のうち、高段圧縮機12と反対側の出口における冷媒の温度を計測する。
【0020】
室外機10には、温度センサ以外に、高圧側圧力センサ17cと、中間圧側圧力センサ16bと、が設けられている。高圧側圧力センサ17cは、高段圧縮機12の吐出側からオイルセパレータ14までの間の冷媒配管に設けられており、冷凍回路のうち、高段圧縮機12の吐出側から気液分離器入口弁16aまでの高圧側の圧力P1を計測する。中間圧側圧力センサ16bは、気液分離器16から延びる液出口配管64に設けられている。中間圧側圧力センサ16bは、冷凍回路のうち、気液分離器16、ガス抜き弁61までのガス抜き配管60、および、液出口配管64における中間圧の圧力P2を計測する。
【0021】
室内機20および冷設機器30にはそれぞれ、熱交換器22、31の内部の冷媒の蒸発温度を計測する蒸発温度センサ22a、31aが取り付けられている。
【0022】
[1-1-3.冷凍装置の制御系の構成]
図2は、冷凍装置1のブロック図であり、冷凍装置1の制御系の構成を示す。
図1に示すように、室外機10は、制御装置90と室外機I/F95とを有する。制御装置90は、制御部91と、記憶部93と、を有する。
【0023】
制御部91は、予め記憶部93に記憶されているプログラムに基づいて動作するCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサである。制御部91は、単一のプロセッサにより構成されてもよいし、複数のプロセッサから構成されていてもよい。なお、制御部91として、DSP(digital signal processor)等が用いられてもよい。また、制御部91として、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等の制御回路が用いられてもよい。
制御部91は、記憶部93及び低段圧縮機11等と接続され、これらの各部の制御等を行う。
【0024】
制御部91は、記憶部93に記憶されたコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムに従って動作することにより、判定部91a、及び運転制御部91bとして機能する。
【0025】
後述するように、判定部91aは、吐出ガス温度センサ17a、17bによる吐出ガス温度Tca、Tcbの検出値と、出口温度センサ19、25による出口温度T1の検出値と、の差分である温度差dTを算出し、温度差dTについて判定を行う。判定に使用されるデータは、記憶部93に格納された設定データ93aに含まれる。
運転制御部91bは、室外機10が有する送風機18、低段圧縮機11、および高段圧縮機12等の各種機器を制御する。また、運転制御部91bは、室外機I/F95を介して室内機20および冷設機器30に制御信号を送信し、冷凍装置1を協調して動作させる。
【0026】
記憶部93は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶部93には、冷凍装置1の各種動作に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。これらのコンピュータプログラム等は、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部93にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリやSSD(Solid State Drive)を含む半導体記憶デバイス等である。コンピュータプログラム等は、所定のサーバ等からインストールされてもよい。
また、記憶部93は、揮発性の記憶領域を備え、制御部91のワークエリアを構成してもよい。
【0027】
記憶部93には、設定データ93aが記憶される。設定データ93aは、判定部91aの判定に使用される第1設定値を特定するための関係データや、第1設定圧力、第2設定圧力、および、第2設定値を含んでいる。
【0028】
室外機I/F95は、室外機10が、ケーブル等を介して各装置と所定の通信プロトコルに従って通信を行うための通信インタフェース回路やコネクタ等の通信ハードウェアを有する。室外機I/F95は、各装置から受信したデータを制御装置90に送るとともに、制御装置90から受け取ったデータを各装置に送信する。
【0029】
室内機20は、室内機制御装置80と室内機I/F85とを有する。室内機制御装置80は、室内機制御部81と室内機記憶部83とを有する。
【0030】
室内機制御部81は、制御部91と同様に、CPUやMPU等のプロセッサである。室内機制御部81は、室内機記憶部83に記憶されたコンピュータプログラムに従って動作することにより、室内機20に搭載された送風機28等の各種機器を制御する。また、室内機制御部81は、蒸発温度センサ22a等の室内機20に搭載された各種センサからの出力信号を受け取る。
室内機記憶部83は、記憶部93と同様に、RAMやROM等の記憶装置を有し、室内機20の各種動作に用いられるコンピュータプログラム等が格納される。
【0031】
室内機I/F85は、室内機20が各機器と通信を行うための通信インタフェース回路やコネクタ等の通信ハードウェアを有する。室内機I/F85は、各装置から受信したデータを室内機制御装置80に送るとともに、室内機制御装置80から受け取ったデータを各装置に送信する。
【0032】
冷設機器30は、冷設機器制御装置70と冷設機器I/F75とを有する。冷設機器制御装置70は、冷設機器制御部71と冷設機器記憶部73とを有する。
【0033】
冷設機器制御部71は、制御部91と同様に、CPUやMPU等のプロセッサである。冷設機器制御部71は、冷設機器記憶部73に記憶されたコンピュータプログラムに従って動作することにより、冷設機器30に搭載された送風機38等の各種機器を制御する。また、冷設機器制御部71は、蒸発温度センサ31a等の冷設機器30に搭載された各種センサからの出力信号を受け取る。
冷設機器記憶部73は、記憶部93と同様に、RAMやROM等の記憶装置を有し、冷設機器30の各種動作に用いられるコンピュータプログラム等が格納される。
【0034】
冷設機器I/F75は、冷設機器30が各機器と通信を行うための通信インタフェース回路やコネクタ等の通信ハードウェアを有する。冷設機器I/F75は、各装置から受信したデータを冷設機器制御装置70に送るとともに、冷設機器制御装置70から受け取ったデータを各装置に送信する。
【0035】
[1-2.動作]
次に、本実施の形態の冷凍装置1の動作について、例として冷房運転時の動作を説明する。
[1-2-1.冷房運転時の動作]
図3は、冷凍装置1のp-h線図である。
冷房運転を行う場合は、図1に示すように、第1の冷房用弁51を開とし、第2の冷房用弁55、第3の冷房用弁56をそれぞれ開とする。第1の暖房用弁52、第2の暖房用弁57、室外冷媒戻り用弁53、冷媒戻り用膨張機構58をそれぞれ閉とする。また、冷房運転の開始時において、液バイパス弁63は閉状態とされており、冷媒はバイパス配管62を通り抜けることができない状態である。
【0036】
この状態で、運転制御部91bが各高段圧縮機12を駆動することで、各高段圧縮機12によって圧縮された、図3の状態Aの冷媒がオイルセパレータ14に向けて吐出される。なお、本実施の形態では、冷媒として二酸化炭素を使用しており、状態Aの冷媒は、超臨界流体である。
【0037】
オイルセパレータ14を経た冷媒は、第1の冷房用弁51を通って室外熱交換器15に送られ、室外熱交換器15において外気と熱交換を行う。このとき、室外熱交換器15はガスクーラとして機能し、内部の冷媒の熱を外気に放出させる。
熱交換後の状態Bの冷媒は、第2の冷房用弁55を介して気液分離器16に送られる。このとき、冷媒は気液分離器入口弁16aを通過する際に減圧されて、状態Cの気液混合冷媒となって気液分離器16に流入する。
【0038】
気液分離器16に流入した状態Cの気液混合冷媒は、状態Dの液冷媒と、状態Eのガス冷媒と、に分離される。状態Eのガス冷媒は、ガス抜き配管60を流れ、ガス抜き弁61を介して、中間圧のアキュームレータ13に送られる。
【0039】
状態Dの液冷媒は、気液分離器16から液出口配管64に流入し、分岐してそれぞれ室内熱交換器22および冷設機器熱交換器31に向けて流れる。
分岐した一方の冷媒は、第3の冷房用弁56を介して室内機20に送られる。室内機20において、一方の冷媒は室内用膨張機構21によって減圧され、状態Gの気液混合冷媒となって室内熱交換器22に流入する。室内熱交換器22において、冷媒は室内空気と熱交換し、室内空気の冷却を行う。その後、冷媒は中間圧のアキュームレータ13に送られる。
【0040】
液出口配管64において分岐した他方の冷媒は、冷設用入口側膨張機構32によって減圧されて状態Hの気液混合冷媒となり、冷設機器熱交換器31に送られる。状態Hの冷媒は、冷設機器熱交換器31において熱交換を行い、冷設機器30の冷却を行う。本実施の形態において、冷設用入口側膨張機構32における冷媒の減圧幅は、室内用膨張機構21による冷媒の減圧幅よりも大きく、冷設機器熱交換器31における冷媒の蒸発温度は、室内熱交換器22における冷媒の蒸発温度よりも低温である。冷設機器熱交換器31において熱交換した冷媒は、吸熱によって状態Iのガス冷媒となり、冷設用出口側圧力調整機構33を介して低段圧縮機11に送られる。
【0041】
低段圧縮機11に送られた冷媒は、圧縮されて状態Jのガス冷媒となり、中間圧のアキュームレータ13に送られる。アキュームレータ13では、ガス抜き配管60からの冷媒、室内熱交換器22からの冷媒、および、状態Jの冷媒が混合され、状態Fの冷媒となる。状態Fの冷媒は、アキュームレータ13から各高段圧縮機12に流入し、再び圧縮される。
【0042】
[1-2-2.冷房運転時における吐出ガス温度を抑制する制御]
冷房運転時において、冷房負荷が大きい場合等には、各高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbが上昇する。以下では、吐出ガス温度Tca、Tcbの上昇を抑制するための制御について説明する。
【0043】
図4は、冷凍装置1のフローチャートであり、高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbを抑制するための制御を示す。制御の開始時点、すなわち、冷房運転の開始時点では、上述したように、気液分離器入口弁16aおよびガス抜き弁61は初期の開度で開いており、液バイパス弁63は閉状態とされる。また、室外機10に設けられた送風機18は、初期の回転数で回転し、ガスクーラとして機能する室外熱交換器15に対して外気を送風する。
【0044】
ステップSA1において、運転制御部91bは、ガスクーラである室外熱交換器15用の送風機18の回転数を設定する。このときの回転数は、室外機10が有する外気温度計による外気温の測定値、または、出口温度センサ19の出口温度T1の検出値に応じて設定される。具体的には、外気温または出口温度T1が高温である場合には、外気温または出口温度T1が低温である場合よりも、送風機18の回転数が大きく設定される。
【0045】
冷房運転時には、高段圧縮機12の回転数は冷房負荷に応じて制御されるため、例えば冷房負荷が大きい場合には、高圧側の圧力P1が大きくなり易い。次に説明するステップSA2からステップSA6では、冷凍回路のうち高圧側の圧力P1を第1設定圧力に近付けるための制御を行う。
【0046】
ステップSA2、SA3において、判定部91aは、冷凍回路のうち高圧側の圧力P1と、第1設定圧力との大小関係を比較する。具体的には、判定部91aは、高圧側圧力センサ17cによって計測された圧力P1が第1設定圧力より大きい(ステップSA2:YES)か、圧力P1が第1設定圧力よりも小さい(ステップSA3:YES)か、または、圧力P1が第1設定圧力に等しいか(ステップSA3:NO)、を判定する。判定に使用される第1設定圧力は記憶部93が記憶する設定データ93aに含まれており、判定部91aによって読み出される。第1設定圧力は、例えば、圧縮機11、12の運転効率が高まる圧力に設定される。
【0047】
次に、運転制御部91bは、判定結果に応じて気液分離器入口弁16aの開度を制御し、高圧側の圧力P1を第1設定圧力に近付ける(ステップSA4、SA5、SA6)。具体的には、圧力P1が第1設定圧力より大きいと判定された場合(ステップSA2:YES)、運転制御部91bは気液分離器入口弁16aの開度を大きくする(ステップSA4)。これにより、高圧側から中間圧の気液分離器16に対して圧力を逃がすことができるため、高圧側の圧力P1は低下して第1設定圧力に近付く。また、圧力P1が第1設定圧力よりも小さいと判定された場合(ステップSA3:YES)、運転制御部91bは気液分離器入口弁16aの開度を小さくする(ステップSA5)。これにより、高圧側から中間圧の気液分離器16に対して圧力が逃げにくくなるため、高圧側の圧力P1が上昇して第1設定圧力に近付く。また、圧力P1が第1設定圧力に等しい場合(ステップSA3:NO)、運転制御部91bは気液分離器入口弁16aの開度を維持する(ステップSA6)ため、圧力P1は第1設定圧力と等しい状態で維持される。
【0048】
ステップSA2からステップSA6までは、気液分離器16等の中間圧の圧力P2を、高圧側の圧力P1のバッファとして用いていた。このため、例えば、圧力P1を低下させるために気液分離器入口弁16aの開度を大きくしていくと、中間圧の圧力P2が上昇していく。次に説明するステップSA7からステップSA11においては、このように高圧側の圧力P1の調整のために変動する中間圧の圧力P2を第2設定圧力に近付けるための制御を行う。
【0049】
ステップSA7、SA8において、判定部91aは、冷凍回路のうち中間圧の圧力P2と、第2設定圧力との大小関係を比較する。具体的には、判定部91aは、中間圧側圧力センサ16bによって計測された圧力P2が第2設定圧力より大きい(ステップSA7:YES)か、圧力P2が第2設定圧力よりも小さい(ステップSA8:YES)か、または、圧力P2が第2設定圧力に等しいか(ステップSA8:NO)、を判定する。判定に使用される第2設定圧力は、判定部91aによって読み出される設定データ93aを用いて特定される。第2設定圧力は、例えば、室内熱交換器22における蒸発温度に準じた圧力に対して、設定データ93aから読み出した既定の値を加算した圧力に設定される。
【0050】
次に、運転制御部91bは、判定結果に応じてガス抜き弁61の開度を制御し、中間圧の圧力P2を第2設定圧力に近付ける(ステップSA9、SA10、SA11)。具体的には、圧力P1が第1設定圧力より大きいと判定された場合(ステップSA7:YES)、運転制御部91bはガス抜き弁61の開度を大きくする(ステップSA9)。これにより、中間圧の気液分離器16からガス抜き弁61を介して圧力を逃がし易くなるため、圧力P2は低下して第2設定圧力に近付く。また、圧力P2が第1設定圧力よりも小さいと判定された場合(ステップSA8:YES)、運転制御部91bはガス抜き弁61の開度を小さくする(ステップSA10)。これにより、中間圧の気液分離器16からガス抜き弁61を介して圧力を逃がしにくくなるため、圧力P2は上昇して第2設定圧力に近付く。また、圧力P2が第2設定圧力に等しい場合(ステップSA8:NO)、運転制御部91bはガス抜き弁61の開度を維持する(ステップSA11)ため、圧力P2は第2設定圧力と等しい状態で維持される。
【0051】
ステップSA7からステップSA11までは、ガス抜き弁61の開度を変更することにより中間圧の圧力P2を制御していたが、この制御に伴い、ガス抜き配管60を介してアキュームレータ13に戻される冷媒の密度が変動する。例えば、圧力P2を下げるためにガス抜き弁61の開度を大きくした場合、ガス抜き配管60からアキュームレータ13に戻される冷媒の圧力および密度が小さくなり、高段圧縮機12の圧縮比、および吐出ガス温度Tca、Tcbは上昇する。すなわち、高段圧縮機12から吐出される冷媒は、図3の状態Aよりも高温の状態A1となる。
【0052】
このように吐出ガス温度Tca、Tcbが上昇を続けると、成績係数の低下や、オイルの劣化、モーターの故障等を生じ易くなる。これを防ぐため、次に説明するステップSA12からステップSA16においては、液バイパス弁63の開度を制御し、高段圧縮機12に吸入される冷媒の状態を変化させ、吐出ガス温度Tca、Tcbの上昇を抑制する。ただし、液バイパス弁63の開度を大きくしすぎると、高段圧縮機12に吸入される冷媒に液冷媒が残り、高段圧縮機12において液圧縮が生じる。このため、ステップSA12からステップSA16においては、高段圧縮機12において液圧縮が起こらない範囲において、吐出ガス温度Tca、Tcbの上昇を抑制する制御をおこなう。
【0053】
ステップSA12、SA13において、判定部91aは、高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbのうち、より高温である一方と、ガスクーラの出口における出口温度T1と、の差分の絶対値である温度差dTを計算する。温度差dTは、高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbが高ければ大きくなり、吐出ガス温度Tca、Tcbが低ければ小さくなる。その後、判定部91aは、温度差dTと後述する第1設定値との大小関係を比較する。具体的には、判定部91aは、温度差dTが第1設定値より大きい(ステップSA12:YES)か、温度差dTが第1設定値よりも小さい(ステップSA13:YES)か、または、温度差dTが第1設定値に等しいか(ステップSA13:NO)、を判定する。
【0054】
次に、運転制御部91bは、判定結果に応じて液バイパス弁63を動作させる(ステップSA14、SA15、SA16)。液バイパス弁63が動作することにより、バイパス配管62からガス抜き配管60に流入する液冷媒の流量が増減または維持される。
【0055】
具体的には、温度差dTが第1設定値よりも大きいと判定された場合(ステップSA12:YES)、運転制御部91bは液バイパス弁63の開度を大きくする(ステップSA14)。これにより、高段圧縮機12に吸入される冷媒の温度が低下するため、吐出ガス温度Tca、Tcbが低下し易くなる。従って、温度差dTは小さくなり、第1設定値に近付く。
【0056】
また、温度差dTが第1設定値よりも小さいと判定された場合(ステップSA13:YES)、運転制御部91bは液バイパス弁63の開度を小さくする(ステップSA15)。これにより、高段圧縮機12に吸入される冷媒の温度が上昇するため、吐出ガス温度Tca、Tcbが上昇し易くなる。従って、温度差dTは大きくなり、第1設定値に近付く。
【0057】
また、温度差dTが第1設定値に等しいと判定された場合(ステップSA13:NO)、運転制御部91bは液バイパス弁63の開度を維持する(ステップSA16)。これにより、高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbは維持され、温度差dTは第1設定値に維持される。
【0058】
ここで、温度差dTの制御目標値とされる第1設定値は、蒸発器である室内熱交換器22および冷設機器熱交換器31における蒸発温度に基づいて決定される。具体的には、第1設定値は、蒸発温度センサ22a、31aによる熱交換器22、31の蒸発温度の計測値のうち、低い方の蒸発温度に対応して決定される。本実施の形態においては、冷設機器熱交換器31における冷媒の蒸発温度は、室内熱交換器22における冷媒の蒸発温度よりも低温であるため、第1設定値は、冷設機器熱交換器31における冷媒の蒸発温度によって決定される。記憶部93が記憶する設定データ93aは、低い方の蒸発温度に対して第1設定値を対応づける関係データを含んでおり、判定部91aは、関係データを読み出して低い方の蒸発温度と対応づけることにより、第1設定値を特定する。なお、関係データは、例えば、数式や表などである。
【0059】
関係データは、予め行われる実験により決定される。すなわち、2つの熱交換器22、31のうち低い方の蒸発温度ごとに、高段圧縮機12において液圧縮が起こらない温度差dTの範囲を実験によって特定しておき、この範囲内の値を蒸発温度に対応する第1設定値として採用している。典型的には、どの蒸発温度に対しても、概ね30K以上、45K以下の第1設定値が採用される。
【0060】
ステップSA14、SA15、または、SA16の終了後は、再びステップSA1が実行される。図4の制御は、冷房運転を実施する間、繰り返し行われる。本実施の形態では、図4の全てのステップを繰り返すうちに、気液分離器入口弁16a、ガス抜き弁61、および、液バイパス弁63は、それぞれ順を追って開方向に動作していく。すなわち、冷房運転の開始後、始めに高圧側の圧力P1が高まるため、最初に気液分離器入口弁16aが開方向に動作する。次に、中間圧の圧力P2が高まるため、ガス抜き弁61が開方向に動作する。最後に、吐出ガス温度Tca、Tcbが高まり、温度差dTが大きくなるため、冷房運転開始時は閉状態とされていた液バイパス弁63が開状態とされる。
【0061】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷凍装置1は、低段圧縮機11と、高段圧縮機12と、複数の熱交換器15、22、31と、気液分離器16と、を冷媒配管にて接続する二段圧縮構成の冷凍装置であって、一端が気液分離器16のガス側吐出口に接続され、他端が低段圧縮機11と高段圧縮機12との間の配管に接続されるガス抜き配管60と、ガス抜き配管60の冷媒の流量を調整可能なガス抜き弁61と、気液分離器16で分離された液冷媒の一部を、ガス抜き配管60のガス抜き弁61よりも下流側に流すバイパス配管62と、バイパス配管62の冷媒の流量を調整可能な液バイパス弁63と、を備える。
これにより、ガス抜き配管60によって高段圧縮機12の吸入側に供給されるガス冷媒に対してバイパス配管62によって液冷媒を注入できる。このため、高段圧縮機12に吸入される冷媒の温度を低下させることができ、高段圧縮機12による吐出ガス温度Tca、Tcbの上昇を抑制できる。
【0062】
本実施の形態のように、冷凍装置1は、高段圧縮機12ごとの吐出ガス温度Tca、Tcbを測る吐出ガス温度センサ17a、17bと、複数の熱交換器15、22、31のうちガスクーラとして機能する室外熱交換器15の出口温度T1を測る出口温度センサ19と、最も高い吐出ガス温度Tca、Tcbと出口温度との温度差dTが第1設定値となるように液バイパス弁63の開度を調整する制御装置90と、を備え、第1設定値は、複数の熱交換器22、31における蒸発温度のうち、最も低い蒸発温度により決定される、構成としてもよい。
これにより、少ないセンサ数で、高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbを制御することができる。また、制御装置90の動作を簡素にすることができる。また、本実施の形態では、第1設定値は、高段圧縮機12において液圧縮が起こらない値に設定されるため、高段圧縮機12の液圧縮を防ぎつつ、吐出ガス温度Tca、Tcbの制御が可能となる。
【0063】
本実施の形態のように、冷凍装置1は、二酸化炭素を冷媒として使用する、構成としてもよい。
これにより、二酸化炭素を利用した冷凍装置1において、高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbの抑制が可能となる。
【0064】
本実施の形態のように、制御装置90は、ガス抜き弁61が開いた状態で、温度差dTが第1設定値よりも大きい場合に、液バイパス弁63を開方向に動作させる、構成としてもよい。
これにより、ガス抜き弁61によって中間圧となる気液分離器16から圧力を逃がしつつ、高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbの上昇を抑制することができる。
【0065】
本実施の形態のように、冷凍装置1は、高段圧縮機12と低段圧縮機11との間に配置されるアキュームレータ13を備え、ガス抜き配管60の他端は、低段圧縮機11とアキュームレータ13との間の配管に接続される、構成としてもよい。
これにより、ガス抜き弁61および液バイパス弁63の開度の変更によってガス抜き配管60から高段圧縮機12の吸入側に供給される冷媒の量および状態が変化した場合であっても、高段圧縮機12は安定して冷媒を吸入することができる。
【0066】
(実施の形態2)
以下、図面を用いて、実施の形態2の冷凍装置101について説明する。なお、以下では、実施の形態1と同様の事項の説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
[2-1-1.冷凍回路の構成]
図5は、実施の形態2の冷凍装置101の冷凍回路を示す図である。
図5に示すように、実施の形態2の冷凍装置101は、ガス抜き配管60の冷媒と液出口配管64の冷媒とを熱交換させる内部熱交換器103を有する。
【0067】
内部熱交換器103には、それぞれ冷媒を流す流路であるガス流路103aと、液流路103bとが形成されている。ガス流路103aは、ガス抜き配管60のうちガス抜き弁61および合流部60aよりも圧縮機12の吸入側に近い側(下流側)に連通される。液流路103bは、液出口配管64のうち分流部64aよりも気液分離器16に近い側(上流側)に連通される。内部熱交換器103は、ガス流路103aの内部の冷媒と、液流路103bの内部の冷媒と、の間で熱交換させる。ここで、図5に矢印で示すように、ガス流路103a内の冷媒の流れ方向と、液流路103b内の冷媒の流れ方向は対向流であり、効率的に熱交換される。
【0068】
内部熱交換器103において、液流路103bには、気液分離器16から液出口配管64に流入した液冷媒がそのまま流れる。一方で、ガス流路103aには、気液分離器16から流れた後にガス抜き弁61の絞り膨張により低温化した冷媒と、液出口配管64からバイパス配管62に分流して液バイパス弁63の絞り膨張により低温化した冷媒と、が混合された冷媒が流れる。すなわち、ガス流路103aを流れる冷媒は、液流路103bを流れる冷媒よりも低温であり、内部熱交換器103においては、液流路103bを流れる液冷媒からガス流路103aを流れる冷媒に対して放熱される。すなわち、液出口配管64の液冷媒を図3の状態Dから状態D1まで過冷却することができ、熱交換器22、31に流入する冷媒をそれぞれ状態Gから状態G1、状態Hから状態H1に冷却できる。このため、内部熱交換器103により、冷凍装置101の冷凍能力を向上することができる。
【0069】
[2-1-2.センサの構成]
図5に示すように、実施の形態2の冷凍装置101には、内部熱交換器103から流れ出た液冷媒の温度を計測する液温度センサ107が設けられている。液温度センサ107は、液出口配管64において、内部熱交換器103の液流路103bよりも下流側、且つ、分流部64aよりも上流側に設けられている。
【0070】
[2-2.動作]
図6は、実施の形態2の冷凍装置101のフローチャートであり、高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbを抑制するための制御を示す。図6に示すように、実施の形態2においては、実施の形態1と異なり、ステップSA9、SA10、または、SA11の後に、ステップSB1が追加されている。
【0071】
ステップSB1において、判定部91aは、内部熱交換器103において、液流路103bを流れる液冷媒が十分に冷却されているか否かを判定する。具体的には、判定部91aは、液温度センサ107による液出口配管64の液冷媒の温度の計測値から、液冷媒の過冷却度を算出する。その後、液冷媒の過冷却度が、第2設定値未満であるか否かを判定する。過冷却度が第2設定値未満であると判定された場合(ステップSB1:YES)、ステップSA12に移行する。過冷却度が第2設定値以上であると判定された場合(ステップSB1:NO)、ステップSA13に移行する。なお、第2設定値は、フラッシュガスの発生を抑制可能な値(例えば、5K)に設定される。
【0072】
すなわち、実施の形態2においては、液冷媒の過冷却度が第2設定値未満である場合にのみ、液バイパス弁63の開度を大きくすることが可能であり、液冷媒の過冷却度が第2設定値以上の場合には、液バイパス弁63の開度を大きくすることができない。液バイパス弁63の開度が大きくなる場合、バイパス配管62を流れる液冷媒の流量が増加し、内部熱交換器103のガス流路103aを流れる冷媒の温度が低下し、内部熱交換器103において冷却された後の液冷媒の過冷却度は大きくなる。従って、実施の形態2においては、液冷媒の過冷却度が第2設定値に近付くように制御される。
【0073】
また、実施の形態2においては、液冷媒の過冷却度が第2設定値未満である場合(ステップSB1:YES)にも、温度差dTが第1設定値以下である場合(ステップSA12:NO)には、液バイパス弁63の開度は維持される(ステップSA16)か、または、小さくなる(ステップSA15)。このため、実施の形態2では、高段圧縮機12において液圧縮を起こさないことを優先して液バイパス弁63の開方向に向けた動作を規制しつつ、液冷媒の過冷却度を第2設定値に近付けることができる。
【0074】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷凍装置101は、気液分離器16の液出口配管64の液冷媒と、ガス抜き配管60のうちバイパス配管62との合流部60aよりも下流側の冷媒と、を熱交換させる内部熱交換器103を有する。
これにより、液出口配管64を流れる液冷媒を過冷却することができ、冷凍装置101の冷凍能力を向上できる。また、本実施の形態では、室内熱交換器22および冷設機器熱交換器31の上流側に配置された室内用膨張機構21および冷設用入口側膨張機構32でのフラッシュガス発生を抑制できるため、摩擦によるエネルギー損失を抑制できる。
【0075】
本実施の形態のように、内部熱交換器103において熱交換する冷媒の流れ方向は、対向流である、構成としてもよい。
これにより、内部熱交換器103における熱交換の効率が向上し、液冷媒を過冷却し易くなる。
【0076】
本実施の形態のように、冷凍装置101は、高段圧縮機12ごとの吐出ガス温度Tca、Tcbを測る吐出ガス温度センサ17a、17bと、複数の熱交換器15、22、31のうち、ガスクーラとして機能する熱交換器15の出口温度T1を測る出口温度センサ19と、を備え、液出口配管64のうち、内部熱交換器103の出口における冷媒の温度を検出する液温度センサ107と、液バイパス弁63の開度を制御する制御装置90と、を備え、制御装置90は、複数の熱交換器15、22、31のうち、蒸発器として機能する熱交換器22、31に流入する液冷媒の過冷却度が第2設定値となるように、液バイパス弁63の開度を調整し、最も高い吐出ガス温度Tca、Tcbと出口温度T1との温度差dTが第1設定値以下の場合は、液バイパス弁63の開度を維持または小さくする、構成としてもよい。
これにより、温度差dTが第1設定値よりも小さくならないように液バイパス弁63の開度を規制しつつ、液バイパス弁63の開度の調整によって液冷媒の過冷却度を第2設定値に制御することができる。本実施の形態では、第1設定値は高段圧縮機12において液圧縮が起こらない値に設定されるため、高段圧縮機12における液圧縮の防止を優先しつつ、液冷媒の過冷却度を制御することができる。
【0077】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1および2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1および2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0078】
実施の形態1および2では、冷凍装置1、101は2つの高段圧縮機12と、1つの低段圧縮機11と、を有すると説明したが、これは一例である。例えば、圧縮機12は、1つ、または3つ以上設けられていてもよく、低段圧縮機11は、2つ以上設けられていてもよい。
【0079】
実施の形態1および2では、冷凍装置1、101は、3つの熱交換器15、22、31を有すると説明したが、これは一例である。例えば、冷凍装置101は、4つ以上の熱交換器を有していてもよい。例えば、室内機20が2つ以上設けられ、室内熱交換器22が2つ以上設けられていてもよく、冷設機器30が2つ以上設けられ、冷設機器熱交換器31が2つ以上設けられていてもよい。
【0080】
実施の形態1および2では、制御装置90は、蒸発温度と第1設定値とを対応づける関係データを記憶しており、温度差dTが第1設定値に近付くように制御すると説明したが、これは一例である。たとえば、制御装置90は、高段圧縮機12に吐出された冷媒のp-h線図上の点(図3の状態A、A1に相当)を算出し、そこから断熱圧縮を仮定して高段圧縮機12の吸入時点の冷媒の点(図3の状態Fに相当)を推定し、この吸入時点の冷媒が湿り蒸気にならないように液バイパス弁63を制御する構成としてもよい。すなわち、制御装置90は、高段圧縮機12の吸入時点の冷媒が湿り蒸気に近付いた場合は液バイパス弁63を閉方向に動作させ、加熱度が大きくなった場合には液バイパス弁63を開方向に動作させる。
【0081】
実施の形態1および2では、高段圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbの計測値と、ガスクーラである室外熱交換器15の出口温度T1と、の差分として温度差DTを算出していたが、これは一例である。例えば、制御装置90は、圧縮機12の吐出ガス温度Tca、Tcbと、高圧側圧力センサ17cによって計測された高圧側の圧力P1と、を用いて、温度差dTを算出する構成としてもよい。
【0082】
図2に示した室外機10、室内機20、および冷設機器30の構成は一例であって、具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで各部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上述した実施の形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、冷凍装置1の他の各部の具体的な細部構成についても、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【0083】
図4および図6に示す動作のステップ単位は、動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、動作が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本開示の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0084】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0085】
(付記)
(技術1)低段圧縮機と、高段圧縮機と、複数の熱交換器と、気液分離器と、を冷媒配管にて接続する二段圧縮構成の冷凍装置であって、一端が前記気液分離器のガス側吐出口に接続され、他端が前記低段圧縮機と前記高段圧縮機との間の配管に接続されるガス抜き配管と、前記ガス抜き配管の冷媒の流量を調整可能なガス抜き弁と、前記気液分離器で分離された液冷媒の一部を、前記ガス抜き配管の前記ガス抜き弁よりも下流側に流すバイパス配管と、前記バイパス配管の冷媒の流量を調整可能な液バイパス弁と、を備える、ことを特徴とする冷凍装置。
これにより、ガス抜き配管によって高段圧縮機に供給されるガス冷媒に対してバイパス配管によって液冷媒を注入できる。このため、高段圧縮機に吸入される冷媒の温度を低下させることができ、高段圧縮機による吐出ガス温度の上昇を抑制できる。
【0086】
(技術2)前記高段圧縮機ごとの吐出ガス温度を測る吐出ガス温度センサと、前記複数の熱交換器のうちガスクーラの出口温度を測る出口温度センサと、最も高い前記吐出ガス温度と前記出口温度との温度差が第1設定値となるように前記液バイパス弁の開度を調整する制御装置と、を備え、前記第1設定値は、前記複数の熱交換器における蒸発温度のうち、最も低い前記蒸発温度により決定される、ことを特徴とする技術1に記載の冷凍装置。
これにより、少ないセンサ数で、高段圧縮機の吐出ガス温度を制御することができる。また、制御装置の動作を簡素にすることができる。
【0087】
(技術3)前記気液分離器の液出口配管の液冷媒と、前記ガス抜き配管のうち前記バイパス配管との合流部よりも下流側の冷媒と、を熱交換させる内部熱交換器を有する、ことを特徴とする技術1に記載の冷凍装置。
これにより、液出口配管を流れる液冷媒を過冷却することができ、冷凍装置の冷凍能力を向上できる。
【0088】
(技術4)前記内部熱交換器において熱交換する冷媒の流れ方向は、対向流である、ことを特徴とする技術3に記載の冷凍装置。
これにより、内部熱交換器における熱交換の効率が向上し、液冷媒を過冷却し易くなる。
【0089】
(技術5)前記高段圧縮機ごとの吐出ガス温度を測る吐出ガス温度センサと、前記複数の熱交換器のうち、ガスクーラの出口温度を測る出口温度センサと、を備え、前記液出口配管のうち、前記内部熱交換器の出口における冷媒の温度を検出する液温度センサと、前記液バイパス弁の開度を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数の熱交換器のうち、蒸発器に流入する液冷媒の過冷却度が第2設定値となるように、前記液バイパス弁の開度を調整し、最も高い前記吐出ガス温度と前記出口温度との温度差が第1設定値以下の場合は、前記液バイパス弁の開度を維持または小さくする、ことを特徴とする技術3または4に記載の冷凍装置。
これにより、最も高い吐出ガス温度と出口温度との温度差が第1設定値よりも小さくならないように液バイパス弁の開度を規制しつつ、液バイパス弁の開度の調整によって液冷媒の過冷却度を第2設定値に制御することができる。
【0090】
(技術6)二酸化炭素を冷媒として使用する、ことを特徴とする技術1から5のいずれかに記載の冷凍装置。
これにより、二酸化炭素を利用した冷凍装置において、高段圧縮機の吐出ガス温度の抑制が可能となる。
【0091】
(技術7)前記制御装置は、前記ガス抜き弁が開いた状態で、前記温度差が前記第1設定値よりも大きい場合に、前記液バイパス弁を開方向に動作させる、ことを特徴とする技術2または5に記載の冷凍装置。
これにより、ガス抜き弁によって中間圧となる気液分離器から圧力を逃がしつつ、高段圧縮機の吐出ガス温度の上昇を抑制することができる。
【0092】
(技術8)前記高段圧縮機と前記低段圧縮機との間に配置されるアキュームレータを備え、前記ガス抜き配管の前記他端は、前記低段圧縮機と前記アキュームレータとの間の配管に接続される、ことを特徴とする技術1から7のいずれかに記載の冷凍装置。
これにより、ガス抜き弁および液バイパス弁の開度の変更によってガス抜き配管から高段圧縮機に供給される冷媒の量および状態が変化した場合であっても、高段圧縮機は安定して冷媒を吸入することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示は、冷凍装置に利用可能である。具体的には、空気調和装置、冷設装置、または、空気調和装置と冷設装置とを複合する冷凍装置等に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 冷凍装置
10 室外機
11 低段圧縮機
12 高段圧縮機
13 アキュームレータ
14 オイルセパレータ
15 室外熱交換器
16 気液分離器
16a 気液分離器入口弁
16b 中間圧側圧力センサ
17a 吐出ガス温度センサ
17b 吐出ガス温度センサ
17c 高圧側圧力センサ
18 送風機
19 出口温度センサ
20 室内機
21 室内用膨張機構
22 室内熱交換器
22a 蒸発温度センサ
23 開閉弁
28 送風機
30 冷設機器
31 冷設機器熱交換器
31a 蒸発温度センサ
32 冷設用入口側膨張機構
33 冷設用出口側圧力調整機構
38 送風機
40 冷媒配管
41 第1の暖房用配管
42 第1の室外戻り用配管
43 第2の冷房用配管
44 第2の暖房用配管
45 第2の室外戻り用配管
50 第1の切替機構
51 第1の冷房用弁
52 第1の暖房用弁
53 室外冷媒戻り用弁
54 第2の切替機構
55 第2の冷房用弁
56 第3の冷房用弁
57 第2の暖房用弁
58 冷媒戻り用膨張機構
59 逆止弁
60 ガス抜き配管
60a 合流部
61 ガス抜き弁
62 バイパス配管
63 液バイパス弁
64 液出口配管
64a 分流部
70 冷設機器制御装置
71 冷設機器制御部
73 冷設機器記憶部
75 冷設機器I/F
80 室内機制御装置
81 室内機制御部
83 室内機記憶部
85 室内機I/F
90 制御装置
91 制御部
91a 判定部
91b 運転制御部
93 記憶部
93a 設定データ
95 室外機I/F
101 冷凍装置
103 内部熱交換器
103a ガス流路
103b 液流路
107 液温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6