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特開2024-151943情報処理装置、プロセスデータ処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151943
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、プロセスデータ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241018BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20241018BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20241018BHJP
【FI】
G05B23/02 R
G05B19/418 Z
C02F1/00 S
C02F1/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065783
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】灰塚 真浩
(72)【発明者】
【氏名】熊田 健司
(72)【発明者】
【氏名】仲井 義人
(72)【発明者】
【氏名】武次 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】小峰 佑介
【テーマコード(参考)】
3C100
3C223
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA56
3C100AA57
3C100AA58
3C100BB13
3C100BB33
3C100EE11
3C223AA01
3C223AA05
3C223AA14
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF05
3C223FF13
3C223FF16
3C223FF22
3C223FF26
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】複数の生産設備間における影響を適切に反映させた処理を行う。
【解決手段】情報処理装置は、生産設備の運転の段階を判別するためのプロセスデータを、配管で接続される上流側の複数の生産設備からそれぞれ取得することと、取得したプロセスデータに基づき、上流側の複数の生産設備の各々について、運転の段階を判別することと、下流側の生産設備に流入する所定の物質、又は下流側の生産設備において生じる所定の反応中間体、生成物若しくは排出物の状態を予測すること、並びに上流側の複数の生産設備及び下流側の生産設備の何れかにおいて生じる変調の原因を予測することの少なくとも何れかを、上流側の複数の生産設備の運転の段階の組合せを用いて行うことと、を実行する処理部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備の運転の段階を判別するためのプロセスデータを、配管で接続される上流側の複数の生産設備からそれぞれ取得することと、
取得したプロセスデータに基づき、前記上流側の複数の生産設備の各々について、前記運転の段階を判別することと、
下流側の生産設備に流入する所定の物質、又は前記下流側の生産設備において生じる所定の反応中間体、生成物若しくは排出物の状態を予測すること、並びに前記上流側の複数の生産設備及び前記下流側の生産設備の何れかにおいて生じる変調の原因を予測することの少なくとも何れかを、前記上流側の複数の生産設備の前記運転の段階の組合せを用いて行うことと、
を実行する処理部を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記運転の段階は、少なくとも、開始処理中、運転中、終了処理中及び停止中に分類される
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記運転の段階は、前記上流側の複数の生産設備の各々について予め定められた、前記運転の段階と、複数のセンサが出力する前記プロセスデータの値の組合せの特徴との対応関係を用いて判別される
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記状態の予測及び前記原因の予測は、所定のセンシングデータを、前記運転の段階に応じて異なる説明変数として用いる回帰モデルを用いて実行される
請求項1から3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記上流側の複数の生産設備は、並列に接続された複数の系列の生産設備を含む
請求項1から3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記生産設備はプラントであり、前記上流側の複数の生産設備は、製造プラントを含み、前記下流側の生産設備は、前記製造プラントから排出される廃液又は排水から所定の成分を回収する回収プラントであり、
前記処理部は、前記上流側の複数の生産設備の前記運転の段階の組合せに基づいて、前記回収プラントへ流入する前記廃液又は排水に含まれる所定の成分の濃度又は量を予測する
請求項1から3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、予測した前記回収プラントへ流入する前記所定の成分の濃度又は量に基づいて、前記上流側の複数の生産設備の少なくとも何れか又は前記回収プラントの運転スケジュールを決定する
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
生産設備の運転の段階を判別するためのプロセスデータを、配管で接続される上流側の複数の生産設備からそれぞれ取得するステップと、
取得したプロセスデータに基づき、前記上流側の複数の生産設備の各々について、前記運転の段階を判別するステップと、
下流側の生産設備に流入する所定の物質、又は前記下流側の生産設備において生じる所定の反応中間体、生成物若しくは排出物の状態を予測すること、並びに前記上流側の複数の生産設備及び前記下流側の生産設備の何れかにおいて生じる変調の原因を予測することの少なくとも何れかを、前記上流側の複数の生産設備の前記運転の段階の組合せを用いて
行うステップと、
をコンピュータが実行するプロセスデータ処理方法。
【請求項9】
生産設備の運転の段階を判別するためのプロセスデータを、配管で接続される上流側の複数の生産設備からそれぞれ取得するステップと、
取得したプロセスデータに基づき、前記上流側の複数の生産設備の各々について、前記運転の段階を判別するステップと、
下流側の生産設備に流入する所定の物質、又は前記下流側の生産設備において生じる所定の反応中間体、生成物若しくは排出物の状態を予測すること、並びに前記上流側の複数の生産設備及び前記下流側の生産設備の何れかにおいて生じる変調の原因を予測することの少なくとも何れかを、前記上流側の複数の生産設備の前記運転の段階の組合せを用いて行うステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロセスデータを処理する情報処理装置、プロセスデータ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントの運転条件最適化システムが提案されている(特許文献1)。本システムにおける計測データ記録部は、運転状態データ取得部により取得された運転状態データと運転指標データ取得部により求められた運転指標データとを所定の項目に基づき関連させた一連の計測データとして計測DBに記録する。また、回帰モデル作成部は、運転状態データ側を表す運転状態変数を説明変数とし、運転指標データ側を表す運転指標変数を目的変数として所定の多変量解析を行って回帰モデルを作成する。また、運転指標変数最適化部は、回帰モデルに基づき運転指標変数を最適化する運転状態変数を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-74007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば配管で接続される複数の生産設備間においては、影響の因果関係が複雑でありプロセスデータを関連付けることは容易ではなかった。そこで、本開示は、複数の生産設備間における影響を適切に反映させた処理を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(態様1)
本開示に係る情報処理装置は、生産設備の運転の段階を判別するためのプロセスデータを、配管で接続される上流側の複数の生産設備からそれぞれ取得することと、取得したプロセスデータに基づき、上流側の複数の生産設備の各々について、運転の段階を判別することと、下流側の生産設備に流入する所定の物質、又は下流側の生産設備において生じる所定の反応中間体、生成物若しくは排出物の状態を予測すること、並びに上流側の複数の生産設備及び下流側の生産設備の何れかにおいて生じる変調の原因を予測することの少なくとも何れかを、上流側の複数の生産設備の運転の段階の組合せを用いて行うことと、を実行する処理部を備える。
(態様2)
上記態様1において、運転の段階は、少なくとも、開始処理中、運転中、終了処理中及び停止中に分類されるものであってもよい。
(態様3)
上記態様2において、運転の段階は、上流側の複数の生産設備の各々について予め定められた、運転の段階と、複数のセンサが出力するプロセスデータの値の組合せの特徴との対応関係を用いて判別されるものであってもよい。
(態様4)
上記態様1から3の何れか一つにおいて、状態の予測及び原因の予測は、所定のセンシングデータを、運転の段階に応じて異なる説明変数として用いる回帰モデルを用いて実行されるようにしてもよい。
(態様5)
上記態様1から4の何れか一つにおいて、上流側の複数の生産設備は、並列に接続された複数の系列の生産設備を含むものであってもよい。
(態様6)
上記態様1から5の何れか一つにおいて、生産設備はプラントであり、上流側の複数の生産設備は、製造プラントを含み、下流側の生産設備は、製造プラントから排出される廃液又は排水から所定の成分を回収する回収プラントであり、処理部は、上流側の複数の生産設備の運転の段階の組合せに基づいて、回収プラントへ流入する廃液又は排水に含まれる所定の成分の濃度又は量を予測するようにしてもよい。
(態様7)
上記態様6において、処理部は、予測した回収プラントへ流入する所定の成分の濃度又は量に基づいて、上流側の複数の生産設備の少なくとも何れか又は回収プラントの運転スケジュールを決定するようにしてもよい。
【0006】
なお、課題を解決するための手段の内容は、コンピュータ等の装置若しくは複数の装置を含むシステム、コンピュータが実行する方法、又はコンピュータに実行させるプログラムとして提供することができる。なお、プログラムを保持する記録媒体を提供するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、複数の生産設備間における影響を適切に反映させた処理を行うための技術を提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、システムの一例を表す図である。
図2図2は、情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、複数のプラントの構成の一例を示す図である。
図4図4は、プラントが備える機器によって行われるプロセスの一例を示す模式的な図である。
図5図5は、バッチ工程におけるプロセスデータの一例を説明するための図である。
図6図6は、連続工程におけるプロセスデータの一例を説明するための図である。
図7図7は、運転の段階(ステップ)の一例を説明するための図である。
図8図8は、運転の段階(ステップ)を特定するための判断条件を説明するための図である。
図9図9は、所定の位置の平均流速を、ステップと対応付けて解析する例を示す図である。
図10図10は、情報処理装置が実行する処理の一例を示す処理フロー図である。
図11図11は、スケジュールの変更を説明するための図である。
図12図12は、回帰モデルの説明変数の一例を説明するための図である。
図13図13は、回帰モデルの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ予測装置の実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係るシステムの一例を表す図である。システム100は、情報処理装置1と、制御ステーション2と、プラント3とを含む。システム100は、例えば分散型制御システム(DCS:Distributed Control System)であり、複数の制御ステーション2を含む。すなわち、プラント3の制御系は複数の区画に分割され、各制御区画が制御ステーション2によって分散制御される。制御ステーション2は、DCSにおける既存
の設備であり、プラント3が備えるセンサ等から出力される状態信号を受信したり、プラント3に対して制御信号を出力する。そして、制御信号に基づいて、プラント3が備えるバルブ等のアクチュエータやその他の機器が制御される。また、システム100は、複数のプラント3を含む。プラント3は、例えば化学プラントであり、製品を生産する生産プラントや、原料や溶剤、溶媒等の所定の成分を回収するための回収プラント等、一連の化学プロセスにより何らかの目的を達成するための生産設備である。また、プラント3は、2以上の製品を生産し得る(すなわち、キャンペーン生産を行う)設備であってもよい。
【0011】
情報処理装置1は、制御ステーション2を介してプラント3の状態信号(プロセスデータ)を取得する。プロセスデータは、原料や中間体、生産物、廃液、排水等である処理対象の温度、圧力、流量等や、プラント3が備える機器の運転条件を定める設定値等を含む。そして、情報処理装置1は、取得したプロセスデータの少なくとも一部に基づいて、各プラント3の運転の状態を、予め定められた複数の段階のいずれかに分類する。また、情報処理装置1は、複数のプラント3の運転の段階の組合せを用いて、複数のプラント3全体の運転スケジュールを決定したり、処理対象、生成物(生産物、中間体等)又は排出物(廃液、排水等)の状態を予測したり、何れかのプラント3における変調の原因を予測したりする。なお、変調とは、プラント3の一般的な動作において期待されるプロセスデータの取り得る範囲から逸脱した変化及びその前兆となる変化をいうものとする。予測は、例えば予め作成した回帰モデルを利用して行うことができる。
【0012】
<装置構成>
図2は、情報処理装置1の構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1はコンピュータであり、通信インターフェース(I/F)11と、記憶装置12と、入出力装置13と、処理部(プロセッサ)14とを備えている。通信I/F11は、例えばネットワークカードや通信モジュールであってもよく、所定のプロトコルに基づき、他のコンピュータと通信を行う。記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の主記憶装置、及びHDD(Hard-Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置(二次記憶装置)であってもよい。主記憶装置は、プロセッサ14が読み出すプログラムや他のコンピュータとの間で送受信する情報を一時的に記憶したり、プロセッサ14の作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロセッサ14が実行するプログラムや他のコンピュータとの間で送受信する情報等を記憶する。入出力装置13は、例えば、キーボード、マウス等の入力装置、モニタ等の出力装置、タッチパネルのような入出力装置等のユーザインターフェースである。プロセッサ14は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置であり、プログラムを実
行することにより本実施形態に係る各処理を行う。図2の例では、プロセッサ14内に機能ブロックを示している。すなわち、プロセッサ14は、所定のプログラムを実行することにより、プロセスデータ取得部141、運転状態判定部142、制御支援部143として機能する。
【0013】
プロセスデータ取得部141は、例えば通信I/F11及び制御ステーション2を介して、プラント3が備えるセンサからプロセスデータを取得し、記憶装置12に記憶させる。プロセスデータは、後述するタグによってセンサと対応付けられている。運転状態判定部142は、取得したプロセスデータの少なくとも一部に基づいて、各プラント3の運転の状態を、予め定められた複数の段階のいずれかに分類する。また、制御支援部143は、各プラント3の運転の段階に基づいて、複数のプラント3全体の運転スケジュールを決定したり、生成物(生産物、中間体等)又は排出物(廃液、排水等)の状態を予測したり、何れかのプラント3における変調の原因を予測したりする。
【0014】
以上のような構成要素が、バス15を介して接続されている。
【0015】
図3は、複数のプラント3の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る複数のプラント3は、(矢印で示す配管)で互いに接続されている。図3の例では、システム100は、製造プラント3Aから製造プラント3Eまでと、回収プラント3Fとを含む。製造プラント3Aの生成物が、プラント3Bからプラント3Dへ導入されている。また、プラント3Bからプラント3Dの排出物が、回収プラント3Fへ導入されている。なお、前の工程から後の工程へ導入される処理対象物の単位時間当たりの流量(体積流量又は質量流量)を、「仕込量」とも呼ぶものとする。本実施形態では、異なる製造プロセスを実行するプラント3B、3C及び3Dから排出される排液又は排水から、プラント3Fにおいて同一の溶剤を回収するものとする。また、例えば回収プラント3Fで回収された成分は、プラント3Bからプラント3Eで利用され、その他の廃液又は排水が回収プラント3Fから排出される。
【0016】
また、プラント3(例えばプラント3Aからプラント3F)の各々は、複数のプロセスデータを出力する。図4は、プラント3が備える機器によって行われるプロセスの一例を示す模式的な図である。本実施形態では、プロセスは、バッチ工程31と連続工程32とを含み得る。バッチ工程31においては、所定の処理単位ごとに処理対象が逐次処理され、例えば各機器への原料の受入れ、保持、排出といった処理が順に行われる。連続工程32においては、バッファタンク等に貯留された処理対象が連続的に処理され、例えば、原料の受入れ、保持、排出といった処理が並行して行われる。また、プロセスは、並列に同一の処理を行う複数の系列33を含み得る。
【0017】
各処理を行う機器は、例えば反応器、蒸留装置、熱交換器、圧縮機、ポンプ、タンク等を含み、これらが配管を介して接続されている。また、機器や配管の所定の位置には、センサやバルブ等が設けられる。センサは、温度計、流量計、圧力計、レベル計、濃度計等を含み得る。また、センサは、各機器の運転状態を監視し、状態信号を出力する。また、プラント3が備えるセンサは、センサの各々を特定するための識別情報である「タグ」が付されているものとする。そして、情報処理装置1及び制御ステーション2は、各機器への入出力信号を、タグに基づいて管理する。
【0018】
図5は、バッチ工程におけるプロセスデータの一例を説明するための図である。図5の左側の列は、図4に示したバッチ工程31のプロセスの一部を示す。具体的には、プラント3は、シュレッダー301と、サイクロン302と、前処理303と、予冷機304と、反応機305とを含む。また、これらのプロセスは、前処理工程、予冷工程、反応工程に分類されている。図5の右側の列は、各プロセスにおいて取得されるプロセスデータの一例を示す。前処理工程においては、タグが001及び002であるセンサから時系列のデータが取得される。予冷工程においては、タグが003及び004であるセンサから時系列のデータが取得される。反応工程においては、タグが005、006及び007であるセンサから時系列のデータが取得される。また、バッチ工程においては、製造番号(「製番」とも呼ぶ)と対応付けられた処理対象を、断続的に処理する。すなわち、製造番号は、バッチ工程においてまとめて処理される処理対象を識別するための識別情報である。図5に示すように、時間の経過と共に、後続の製造番号と対応付けられた処理対象に関する時系列のデータが得られる。
【0019】
図6は、連続工程におけるプロセスデータの一例を説明するための図である。図6の左側の列は、図4に示した連続工程32のプロセスの一部を示す。具体的には、プラント3は、タンク311と、ポンプ312とを含む。図6の右側の列は、各プロセスにおいて取得されるプロセスデータの一例を示す。連続工程32においては、タグと対応付けられ、製造番号とは対応付けられていない時系列のデータが、センサから継続して取得される。図6の例においては、タグが102及び103である各センサから時系列のデータが取得される。連続工程においては、機器が連続的に処理対象を受け入れ、継続的に処理を行う
。バッチ工程と連続工程と続けて行う場合、バッチ工程における処理対象と連続工程における処理対象とを紐づけるようにしてもよい。例えば、センサのサンプリング間隔とバッチ工程と連続工程との間に処理対象が滞留する時間とに基づいて、バッチ工程における製造番号と連続工程におけるプロセスデータとを対応付ける。
【0020】
また、情報処理装置1は、1つのプラント3が出力する1以上のプロセスデータに基づいて、当該プラント3の運転の段階を特定する。運転の段階は、プラント3の運転状態を表す情報であり、予め複数の段階が定義されている。例えば、運転の段階は、少なくとも「開始処理(立上げ)中」、「運転中」、「終了処理(立下げ)中」、「停止中」を含む。また、運転の段階は、「洗浄中」、「洗浄停止」、「脱水中」、「脱水停止」、「洗浄液置換中」、「置換完了」等を含むものであってもよい。図7は、運転の段階の一例を説明するための図である。図7の表は、「ステップ」及び「説明」の列を含む。「ステップ」の列には、行程の段階を一意に特定するためのラベル(例えば通し番号のような識別情報)が表示されている。「説明」の列には、各段階の説明が表示されている。このような運転段階は、プラント3が製造する製品ごとに定義されていてもよい。すなわち、キャンペーン生産を行うプラントにおいては、複数の運転の段階のセットが、製品の数だけ定義される。
【0021】
図8は、運転の段階を特定するための判断条件を説明するための図である。図8の表は、運転の段階(「ステップ」とも呼ぶ)の各々を示す行を複数含む。また、図8の表は、ステップを表すラベルに対し、判断に用いられる複数のタグを示す列が対応付けられている。また、各タグについて、「1」、「0」又は「-1」の値が表示されている。「1」は、各列に相当するステップであるか否かを判断する上で有意な値(例えばタグごとに定められる閾値を超える値)であることを示す。なお、閾値は予め定められているものとする。図8においては、括弧書きで閾値を例示している。「0」は、ゼロ又はほぼゼロである(例えばゼロに近い所定の閾値を超えない)ことを示す。「-1」は、各行に相当するステップであるか否かの判断には寄与しないタグであることを示す。このような判断条件に基づいて、情報処理装置1は、プラント3が出力するプロセスデータの組合せに合致した特徴を有するステップを特定することができる。すなわち、取得されたプロセスデータに基づいて、値「1」が設定されたタグに対応するプロセスデータが所定の閾値を超え、且つ値「0」が設定されたタグに対応するプロセスデータがゼロ又はほぼゼロであるようなステップを特定する。なお、情報処理装置1は、図8に示すような情報に加え、遷移し得るステップの順序の定義を用いて、ステップを特定するようにしてもよい。すなわち、処理時点のステップが分かっている場合、当該ステップから遷移し得るステップの特徴をプロセスデータが示しているか判断する。例えば、開始時点のステップが「0」であることが分かっている場合、そこから遷移し得るステップ「1」のプロセスデータの特徴を検知した場合に、ステップ「1」に遷移したと判断する。同様に、処理時点のステップが「1」であると特定された後は、そこから繊維し得るステップ「2」のプロセスデータの特徴を検知した場合に、ステップ「2」に遷移したと判断する。一方、処理時点のステップを用いずに判断できるようにすれば、イレギュラーな状態からも運転の段階の判別処理を開始することができる。
【0022】
また、情報処理装置1は、複数のプラント3のそれぞれが、上述したステップの何れの状態であるかを判断し、複数のプラント3の状態を示すステップの組合せを用いて処理を行う。例えば、下流側のプラント3に流入する所定の物質、又は下流側のプラント3において生じる所定の反応中間体、生成物又は若しくは排出物の状態を予測してもよい。また、上流側の複数のプラント3及び下流側のプラント3の何れかにおいて生じる変調の原因を予測してもよい。なお、本実施形態では、ステップの組合せのほかに、ステップに基づく統計量等の特徴量を用いて処理を行うようにしてもよい。
【0023】
図9は、配管における所定の位置の平均流速を、ステップと対応付けて事前に解析する例を示す図である。図9の例は、過去の運転実績を解析して各ステップの所要時間及び各ステップでの平均流速を予めテーブルに記憶させたものである。また、プラント3の運転の段階に応じた所要時間や、処理対象の流速等、様々な値を説明変数として、回帰モデルを作成することができる。事前に解析しておくことで、当該期間の長さ(図9:各ステップ所要時間)のようなステップ自体を表す特徴量や、当該期間における平均流速(図9:各ステップでの平均流速)のようなステップごとに算出できる代表値などの統計量を、説明変数とすることができる。
【0024】
情報処理装置1は、複数のプラント3の状態を示すステップの組合せのパターンに基づいて、様々な処理を行うことができる。情報処理装置1は、上流工程のステップを特定すると共に、当該ステップに応じた説明変数を用いて、例えば予め作成した回帰モデルによる下流工程の予測を行う。例えば、下流のプラントへ排出される廃液又は排水における所定の成分の濃度を予測したり、下流の反応器における温度を予測したりすることができる。さらに、予測結果に応じてプラント3を制御するようにしてもよい。例えば、図3に示した製造プラント3B、3C及び3Dの状態の組合せに応じて、情報処理装置1は、製造プラント3B、3C及び3Dの少なくとも何れかについて後のステップへの移行を早めたり遅らせたりすることにより、スケジューリングしてもよい。具体的には、下流工程における負荷の偏りを低減させるようにスケジューリングを行うことができる。また、例えば、図3に示した製造プラント3B、3C及び3Dの状態の組合せに応じて、情報処理装置1は、回収プラント3Fの運転条件を変更してもよい。具体的には、上流工程のステップの組合せに基づいて予測される回収プラント3Fの仕込量及び処理対象の濃度に応じて、回収プラント3Fが溶剤等の成分を回収するために適した運転条件が決定される。
【0025】
図10は、情報処理装置1が実行する処理の一例を示す処理フロー図である。情報処理装置1のプロセスデータ取得部141は、各プラント3から所定のプロセスデータを取得する(図10:S1)。例えば、センサ等の識別情報であるタグとタグに対応付けられた測定値とが読み出される。プロセスデータは、図5図6に示すようにプラント3から継続的に出力され、情報処理装置1の記憶装置12に蓄積されているものとする。
【0026】
また、運転状態判定部142は、予め定められたプロセスデータの値に基づいて各プラント3の運転の段階(ステップ)を特定する(図10:S2)。運転状態判定部142は、例えば図8に示すような判断条件に基づいて、予め定められた複数のタグの値のパターンに対応するステップを特定する。
【0027】
そして、制御支援部143は、複数のプラント3に対応するステップの組合せに基づいて、所定の処理を行う(図10:S3)。例えば、制御支援部143は、複数のプラント3のステップの組合せのパターンに基づいて、何れかのプラント3の生成物又は排出物の状態を予測してもよい。図3に示したように複数の製造プラント3B~3Dから廃液を回収プラント3Fのバッファタンクに移液して処理するような場合、製造プラント3B~3Dのステップに応じて、製造プラント3B~3Dから排出される廃液の流速を特定し、将来的に回収プラント3Fへ流入する処理対象の量を予測してもよい。このようにすれば、下流の工程において処理対象を受け入れるために必要な機器の規模が予測できる。同様に、流量でなく所定の成分の濃度又は量(換言すれば「品質」)を予測するようにしてもよい。このようにすれば、回収プラント3Fの将来的な負荷が予測できる。このような例に限らず、上流側の複数のプラント3のステップの組合せを用いて、下流側のプラント3に流入する物質の状態を予測してもよいし、下流側のプラント3において生じる反応中間体、生成物若しくは排出物の状態を予測してもよい。
【0028】
また、制御支援部143は、複数のプラント3のステップの組合せのパターンに基づい
て、複数のプラント3の運転スケジュールを決定してもよい。上述のようにして予測された所定の物質の濃度又は量(すなわち、回収処理における負荷)に基づき、負荷を平準化させるように複数のプラント3の運転スケジュールを調整することができる。例えば、図11は、スケジュールの変更を説明するための図である。図11の例では、プラント3Dにおいて溶剤による洗浄を行うタイミングを変更することにより、負荷を低減させている。すなわち、複数の製造プラント3Bから3Eにおいて所定の期限までに要求される生産量を担保しつつ、負荷を均すように運転のタイミングを変更することで、回収プラント3Fにおいては所定の原料成分の回収効率を向上させることができる。同様に、回収プラント3Fのバッファタンクが溢れるような負荷の集中を避けることが容易になる。また、プラントオペレーターが担当する勤務時間を跨ぐような長期間を対象として平準化を行うことも容易になる。スケジュールの決定は、既存のスケジューリングアルゴリズムを用いて実行してもよい。
【0029】
以上のような平準化は、プラント3において製品の増産を行うような場合にも有用である。例えば、図3の製造プラント3Aから製造プラント3Eによる最大負荷に備えて回収プラント3Fのデボトルネッキングを行うと、設備の規模や改修費用は大きくなりがちである。上述した平準化に基づいて設備能力の過不足を評価すれば、必要最小限の負荷に基づくプラント設計を行うことができる。すなわち、増産後の生産量を製造可能なスケジュールを作成し、当該スケジュールにおける最大負荷に耐えられるようにデボトルネッキングを行うようにしてもよい。
【0030】
また、制御支援部143は、上流側の複数のプラント3のステップを用いた説明変数によって、下流側のプラント3のプロセスデータを予測する回帰モデルを作成してもよい。図12は、回帰モデルの説明変数の一例を説明するための図である。図12の(1)は、1つのプラント3において、所定の時点の複数のプロセスデータに基づいて特定されたステップを、One-hot表現で表すテーブルである。図12の(2)は、所定の時点における当該プラント3から下流側のプラントへの、測定された仕込量(単位時間当たりの流量)を表すテーブルである。図12の(3)は、回帰分析の説明変数を表すテーブルである。説明変数は、One-hot表現で表されたステップと仕込量との積である。すなわち、例えば仕込量の値のような1つのセンサが出力するプロセスデータは、上流側のプラントの運転状態(特定されたステップ)に応じて異なる説明変数として用いられる。図13は、回帰モデルの一例を説明するための図である。回帰モデルは、例えば下流のプラント3に流入する所定の物質の量を目的変数とする。図13の左側のグラフは、プラント3Bからプラント3Dにおいて、ある時点において特定されたステップと当該ステップにおいて排出される廃液又は排水の流量x(t)及びこれに含まれる所定の物質の濃度wを模式的に表している。ここでは、例えば図12に示した複数のステップの候補のうち、特定されたステップのみを示している。また、図13の右側に示す式は、下流のプラント3Fへ流入する所定の物質の量を表す。そして、例えば回帰分析により、濃度wのパラメータを決定しておく。例えばこのように上流側のプラントの運転状態を用いることで、回帰モデルの予測精度を向上させることができる。なお、上述した所定の物質を、回収プラント3Fにおける回収対象とすれば、回帰モデルにより回収プラント3Fにおける処理不可を予測できるようになる。また、所定の物質が後のプロセスにおける温度低下の原因物質であれば、回帰モデルにより後のプロセスの温度変化を予測できるようになる。
【0031】
また、制御支援部143は、複数のプラント3のステップの組合せのパターンに基づいて、複数のプラント3の何れかにおいて生じる変調の原因を予測してもよい。例えば、複数のプラント3の動作の履歴を用いて、原因が判明している変調と、変調が生じた際の複数のプラント3のステップに応じた説明変数との関係を機械学習する。機械学習の手法は、回帰分析に限らず変調の原因を教師値とする様々な教師あり学習を利用することができる。そして、制御支援部143は、何らかの変調が生じた場合に、当該時点の複数のプラ
ント3のステップの組合せのパターンに基づいて、変調の原因の候補を特定する。
【0032】
そして、情報処理装置1は、図10の処理を終了する。以上のように、複数のプラント3のステップの組合せのパターンに基づいて処理を行うことにより、複数のプラント間における影響を反映させた処理を行うための技術を提供することができる。例えば、共通の溶剤を利用した複数のプラント3であって、各プラント3においては製造する製品を切り替えて生産可能な複数のプラント3を含むシステム100においては、プラント3の運転の段階(ステップ)の組合せが比較的多い。このような場合にも、ステップの組合せのパターンを用いることで、複数のプラント間における影響を考慮した処理を行うことができるようになる。なお、複数のプラント3から得られるプロセスデータの組合せに基づいて処理を場合分けしようとすると、パターンが膨大になり汎用的なシステムの実現性が低い。本実施形態においては、多くのプロセスデータを予め定められたプラント3の運転の段階の組合せパターンに次元削減して、システム100全体の状態を評価することにより、実際的な処理を行うことができるようにした。
【0033】
<変形例>
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0034】
図3に示したシステム100の構成は一例であり、本開示は回収プラント3Fを含む態様には限定されない。例えば、上流側に複数のプラントが位置し、これらの運転状態の影響を受ける製造プラント等が下流側に位置する場合、下流側のプラントの制御を支援するために上流側の複数のプラントの運転の段階の組合せに応じた処理を行うことは有用である。また、複数のプラント3に代えて、1つのプラント3が備える上流側の複数の系列の生産設備から取得されるプロセスデータを用いて、上述した処理を行うようにしてもよい。すなわち、上流側の複数の系列の生産設備から取得されるプロセスデータを用いて、運転の段階(ステップ)を判別し、判別された運転の段階を用いて、下流側の生産設備に流入する所定の物質、又は下流側の生産設備において生じる所定の反応中間体、生成物若しくは排出物の状態を予測すること、並びに上流側の複数の系列の生産設備及び下流側の生産設備の何れかにおいて生じる変調の原因を予測することの少なくとも何れかを実行する。
【0035】
また、情報処理装置1の機能の少なくとも一部は、複数の装置に分散して実現するようにしてもよいし、同一の機能を複数の装置が並列に提供するようにしてもよい。情報処理装置1の機能の少なくとも一部は、いわゆるクラウド上に設けるようにしてもよい。
【0036】
また、本開示は、上述した処理を実行する方法やコンピュータプログラム、当該プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。当該プログラムが記録された記録媒体は、プログラムをコンピュータに実行させることにより、上述の処理が可能となる。
【0037】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、HDDやSSD(Solid State Drive)、ROM等がある。
【符号の説明】
【0038】
100 :システム
1 :情報処理装置
2 :制御ステーション
3(3A-3F):プラント
11 :通信I/F
12 :記憶装置
13 :入出力装置
14 :処理部(プロセッサ)
141 :プロセスデータ取得部
142 :運転状態判定部
143 :制御支援部
図1
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