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特開2024-151944文字作成システム、文字作成プログラム、及び文字作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151944
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】文字作成システム、文字作成プログラム、及び文字作成方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/24 20060101AFI20241018BHJP
   G09G 5/26 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G09G5/24 630H
G09G5/24 690
G09G5/26 630C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065784
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】523139869
【氏名又は名称】有限会社プラス銘板工業
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(72)【発明者】
【氏名】福富 忠信
【テーマコード(参考)】
5C182
【Fターム(参考)】
5C182AC02
5C182CB13
5C182CB15
5C182FA31
5C182FA32
5C182FA61
(57)【要約】
【課題】レーザー彫刻機により彫刻された銘板の文字について、長体率や平体率の影響を受けることなく文字の横線と縦線の線幅を一定にすることができる文字作成システム、文字作成プログラム、及び文字作成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】文字作成システム1は、レーザー彫刻機3に対して出力する文字データの生成を支援するシステムであり、極細の線幅からなる正体文字である第1書体データ11が格納されたデータベース10、第1書体データ11を所定の長体率で変形した第1変形文字である第2書体データ21を生成する第2書体データ生成部20、及び第2書体データ21の線幅を拡大した第2変形文字である第3書体データ31を生成する第3書体データ生成部30から構成され、見た目上、変形率の影響を受けることなく文字を構成する横線と縦線の線幅が略均一な文字を生成することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一線幅の横線、及び縦線から構成された所定の文字の大きさを100%とした場合、前記線幅が前記文字の大きさの5%以下である正体文字からなる第1書体データが登録されたデータベースと、
前記正体文字を所定の長体率または平体率の何れか一方の変形率で変形した第1変形文字からなる第2書体データを生成する第2書体データ生成部と、
前記第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を前記第1変形文字の大きさの略8%を上限として前記変形率に応じて所定に拡大した第2変形文字からなる第3書体データを生成する第3書体データ生成部と、を備える
文字作成システム。
【請求項2】
前記第3書体データ生成部は、前記変形率をX%(Xは100以下の自然数)、前記第2変形文字の大きさに対する横線、及び縦線の各線幅をY%とした場合に、以下の定義式で規定された線幅に基づいて、前記第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を拡大する
請求項1に記載の文字作成システム。
Y%=(100%+X%)/25
【請求項3】
前記第2書体データ生成部において、所定の長体率を前記第1書体データに適用して前記第2書体データが生成された場合、
前記第3書体データ生成部で生成された前記第2変形文字の横線と縦線との比率は略100:100~100:58の範囲である
請求項1または請求項2に記載の文字作成システム。
【請求項4】
前記第2書体データ生成部において、所定の平体率を前記第1書体データに適用して前記第2書体データが生成された場合、
前記第3書体データ生成部で生成された前記第2変形文字の横線と縦線との比率は略100:100~58:100の範囲である
請求項1または請求項2に記載の文字作成システム。
【請求項5】
前記第3書体データ生成部は、前記第1変形文字の横線、及び縦線の中央部を認識し、該中央部から幅方向に均等に線幅を拡大する
請求項1または請求項2に記載の文字作成システム。
【請求項6】
同一線幅の横線、及び縦線から構成された所定の文字の大きさを100%とした場合、前記線幅が前記文字の大きさの5%以下である正体文字からなる第1書体データを選択するステップと、
前記正体文字を所定の長体率または平体率の何れか一方の変形率で変形した第1変形文字からなる第2書体データを生成するステップと、
前記第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を前記第1変形文字の大きさの略8%を上限として前記変形率に応じて所定に拡大した第2変形文字からなる第3書体データを生成するステップと、をコンピュータに実行させるための
文字作成プログラム。
【請求項7】
同一線幅の横線、及び縦線から構成された所定の文字の大きさを100%とした場合、前記線幅が前記文字の大きさの5%以下である正体文字からなる第1書体データを選択する工程と、
前記正体文字を所定の長体率または平体率の何れか一方の変形率で変形した第1変形文字からなる第2書体データを生成する工程と、
前記第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を前記第1変形文字の大きさの略8%を上限として前記変形率に応じて所定に拡大した第2変形文字からなる第3書体データを生成する工程と、を備える
文字作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字作成システム、文字作成プログラム、及び文字作成方法に関する。詳しくは、レーザー彫刻機により彫刻された銘板の文字について、長体率や平体率の影響を受けることなく文字の横線と縦線の線幅を一定にすることができる文字作成システム、文字作成プログラム、及び文字作成方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用の装置等に貼付する名称、定格、或いは機番等を表示した銘板は、アクリル板やステンレス板などの彫刻用材料に、彫刻機で予め準備した文字、線、図等の所定の情報を彫り、形成された凹凸に塗料を流し込むことにより生産していた。彫刻機としては、彫刻盤を用いて母型をなぞりながら回転する刃物で彫刻用材料の表面に凹凸を形成する機械彫刻機が普及している。
【0003】
機械彫刻機は、深く彫刻することができるため耐久性に優れ、彫刻精度も高いという利点があり、現在でも銘板の製造に使用される彫刻方式である。一方で、機械彫刻機により形成される凹凸は、使用する刃先のサイズに準じるため、例えば小さな文字や長体率75%未満の文字については加工することができず、彫刻できる文字種にも制限がある。さらに、機械彫刻機は彫刻速度が比較的遅いため、少量生産には適しているが大量生産には不向きなものとなっている。
【0004】
そこで、近年では、加工工数を大幅に低減することができるレーザー彫刻機が開発されている(特許文献1)。レーザー彫刻機は、レーザ発信器から出力されたレーザー光を集めてテーブルに照射する装置であり、レーザー発信器からレーザー光を伝送する伝送系と、伝送されたレーザー光を集光して被加工物に照射する集光系から構成されている。レーザー彫刻機は、機械彫刻機の数倍の速さで加工ができるため、加工工数を大幅に低減し、大量生産を実現する技術として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-019389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、銘板に使用される彫刻用の文字の太さについては、例えばJIS規格の機械彫刻用標準書体において、正体文字の大きさの8%と規定されている。一方、彫刻する文字列が所定の刻印範囲に収めるために、正体文字に対して所定の長体率をかけた場合、文字の横線幅に対して縦線幅が大幅に小さくなる。
【0007】
このとき、機械彫刻機は刃先のサイズに準じて彫刻されるため、元となる文字データによらず文字の横線と縦線の線幅は均一な幅で彫刻できる。しかしながらレーザー彫刻機は、文字データを判別してレーザー照射を行うため、元となる文字データの横線と縦線の線幅が不均一であると、そのまま彫刻されてしまい、完成した銘板に刻印された文字の横線と縦線の線幅が不均一なものとなり、見た目上の違和感が生じるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、長体率や平体率の影響を受けることなく文字の横線と縦線の線幅を一定にすることができる文字作成システム、文字作成プログラム、及び文字作成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の文字作成システムは、同一線幅の横線、及び縦線から構成された所定の文字の大きさを100%とした場合、前記線幅が前記文字の大きさの5%以下である正体文字からなる第1書体データが登録されたデータベースと、前記正体文字を所定の長体率または平体率の何れか一方の変形率で変形した第1変形文字からなる第2書体データを生成する第2書体データ生成部と、前記第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を前記第1変形文字の大きさの略8%を上限として前記変形率に応じて所定に拡大した第2変形文字からなる第3書体データを生成する第3書体データ生成部とを備える。
【0010】
ここで、同一線幅の横線、及び縦線から構成された所定の文字の大きさを100%とした場合、線幅が文字の大きさの5%以下である正体文字からなる第1書体データが登録されたデータベースを備えることにより、極細の線幅の正体文字からなる第1書体データを基本データとして使用することで、正体文字を所定の長体率または平体率の変形率で変形した場合でも、横線と縦線の線幅の誤差を最小限にすることができる。
【0011】
また、正体文字を所定の長体率または平体率の何れか一方の変形率で変形した第1変形文字からなる第2書体データを生成する第2書体データ生成部を備えることにより、前記した通り、極細の線幅からなる正体文字を所定の長体率または平体率で変形した場合でも、横線と縦線の線幅の比率が略均一な第1変形文字を生成することができる。
【0012】
また、第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を第1変形文字の大きさの略8%を上限として、変形率に応じて所定に拡大した第2変形文字からなる第3書体データを生成する第3書体データ生成部を備えることにより、第1変形文字の線幅を所定に拡大することで、横線と縦線が略均一かつ所定の線幅からなる第2変形文字を生成することができる。そして、この第2変形文字からなる第3書体データをレーザー彫刻機が受信することで、所定の変形率で変形された文字であっても、横線と縦線とが略均一で、かつ明瞭に認識可能な文字からなる銘板を作成することができる。
【0013】
また、第3書体データ生成部は、変形率をX%(Xは100以下の自然数)、第2変形文字の大きさに対する横線、及び縦線の各線幅をY%とした場合に、「Y%=(100%+X%)/25」の定義式で規定された線幅に基づいて、第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を拡大する場合には、所定の変形率で変形した場合でも、横線と縦線の線幅の比率が均衡し、かつ明瞭に判別できる文字を生成することができる。
【0014】
また、第2書体データ生成部において、所定の長体率を第1書体データに適用して第2書体データが生成された場合、第3書体データ生成部で生成された第2変形文字の横線と縦線との比率は略100:100~100:58の範囲である場合には、所定の長体率で変形した場合でも、横線と縦線の線幅の比率が最も最も均衡し、かつ明瞭に判別できる文字を生成することができる。
【0015】
また、第2書体データ生成部において、所定の平体率を第1書体データに適用して第2書体データが生成された場合、第3書体データ生成部で生成された第2変形文字の横線と縦線との比率は略100:100~58:100の範囲である場合には、所定の平体率で変形した場合でも、横線と縦線の線幅の比率が最も最も均衡し、かつ明瞭に判別できる文字を生成することができる。
【0016】
また、第3書体データ生成部は、第1変形文字の横線、及び縦線の中央部を認識し、中央部から幅方向に均等に線幅を拡大する場合には、第1変形文字の横線と縦線の線幅を幅方向に均等に拡大させることができるため、第2変形文字がバランスのとれたものとなる。
【0017】
前記の目的を達成するために、本発明の文字作成プログラムは、同一線幅の横線、及び縦線から構成された所定の文字の大きさを100%とした場合、前記線幅が前記文字の大きさの5%以下である正体文字からなる第1書体データを選択するステップと、前記正体文字を所定の長体率または平体率の何れか一方の変形率で変形した第1変形文字からなる第2書体データを生成するステップと、前記第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を前記第1変形文字の大きさの略8%を上限として前記変形率に応じて所定に拡大した第2変形文字からなる第3書体データを生成するステップと、をコンピュータに実行させるためのものである。
【0018】
また、前記の目的を達成するために、本発明の文字作成方法は、同一線幅の横線、及び縦線から構成された所定の文字の大きさを100%とした場合、前記線幅が前記文字の大きさの5%以下である正体文字からなる第1書体データを選択する工程と、前記正体文字を所定の長体率または平体率の何れか一方の変形率で変形した第1変形文字からなる第2書体データを生成する工程と、前記第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を前記第1変形文字の大きさの略8%を上限として前記変形率に応じて所定に拡大した第2変形文字からなる第3書体データを生成する工程とを備える。
【0019】
ここで、同一線幅の横線、及び縦線から構成された所定の文字の大きさを100%とした場合、線幅が文字の大きさの5%以下である正体文字からなる第1書体データを選択するステップ(工程)を備えることにより、極細の線幅の正体文字からなる第1書体データを基本データとして使用することで、正体文字を所定の長体率または平体率の変形率で変形した場合でも、横線と縦線の線幅の誤差を最小限にすることができる。
【0020】
また、正体文字を所定の長体率または平体率の何れか一方の変形率で変形した第1変形文字からなる第2書体データを生成するステップ(工程)を備えることにより、前記した通り、極細の線幅からなる正体文字を所定の長体率または平体率で変形した場合でも、横線と縦線の線幅の比率が略均一な第1変形文字を生成することができる。
【0021】
また、第1変形文字の横線、及び縦線の線幅を第1変形文字の大きさの略8%を上限として変形率に応じて所定に拡大した第2変形文字からなる第3書体データを生成するステップ(工程)を備えることにより、横線と縦線の線幅の比率が略一定の第1変形文字の線幅を所定に拡大することで、横線と縦線が略均一かつ所定の線幅からなる第2変形文字を生成することができる。そして、この第2変形文字からなる第3書体データをレーザー彫刻機が受信することで、所定の変形率で変形された文字であっても、横線と縦線が略均一で、かつ明瞭に認識可能な文字からなる銘板を作成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る文字作成システム、文字作成プログラム、及び文字作成方法は、レーザー彫刻機により彫刻された銘板の文字について、長体率や平体率の影響を受けることなく文字の横線と縦線の線幅を一定にすることができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る文字生成システムと各装置とがインターネット回線を介して接続された状態を示す図である。
図2】文字作成システムの内部構成を示すブロック図である。
図3】長体率が100%の場合における文字データを生成する説明図である。
図4】長体率が50%の場合における文字データを生成する説明図である。
図5】文字作成プログラムの処理フローを示す図である。
図6】実施例と比較例の対比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、文字作成システム、文字作成プログラム、及び文字作成方法に関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0025】
まず、本発明の実施形態に係る文字作成システムを含むネットワーク構成全体の概略について図1を用いて説明する。本発明の実施形態に係る文字作成システム1は、文字作成プログラムを動作させるためのコンピュータであり、インターネット回線4を介して利用者端末2、及びレーザー彫刻機3との間で互いに通信可能に接続されている。
【0026】
利用者は、利用者端末2から文字作成システム1にアクセスし、銘板に彫刻する文字を選択する。選択された文字は文字生成プログラムに従って、所定に加工された文字データ(第3書体データ)としてレーザー彫刻機3に出力される。レーザー彫刻機3は受信した文字データを認識してレーザー彫刻を実行し、所定の文字を彫刻材料に彫刻することができる。
【0027】
ここで、必ずしも、文字作成システム1と利用者端末2、及びレーザー彫刻機3とはインターネット回線4を介して互いに接続されている必要はなく、いかなる通信手段により接続されていてもよい。さらに利用者端末2に文字作成プログラムをインストールすることで、インターネット回線4を介することなく、利用者端末2にて文字作成プログラムを実行することも可能である。
【0028】
また、本発明の実施形態では、彫刻装置としてレーザー彫刻機3を例に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではなく、自動で彫刻可能な装置であればいかなる彫刻装置に適用することも可能である。
【0029】
図2は、文字作成システム1の内部構成を示すブロック図である。文字作成システム1は、第1書体データをはじめとする各データが登録されたデータベース10、第2書体データを生成する第2書体データ生成部20、及び第3書体データを生成する第3書体データ生成部30から主に構成されている。
【0030】
[データベース]
データベース10は、OSや、文字作成プログラム等のアプリケーションソフト、設定データなどが格納される不揮発性メモリである。データベース10には、前記した文字作成プログラムで実行される基本データとなる第1書体データが登録されている。第1書体データは、銘板に使用する各種文字が登録されており、文字の大きさを100%とした場合に、横線と縦線の各線幅が略1%の範囲である極細の正体文字からなるものである。
【0031】
ここで、必ずしも、第1書体データの正体文字の横線と縦線は、文字の大きさを100%とした場合に略1%の線幅である必要はなく、5%以下の範囲の線幅で任意に設定することができる。
【0032】
なお、データベース10に登録されている第1書体データは、一般的に使用頻度の高い文字が予め登録されているが、利用者は、利用者端末2を通じて任意の文字を随時追加、或いは削除することができる。
【0033】
[第2書体データ生成部]
第2書体データ生成部20は、第1書体データの正体文字を所定の長体率で変形した第1変形文字を生成する機能を有している。利用者は、銘板の用途に応じて、例えば正体文字のままでは所定の横幅内に全ての文字が収まりきらない場合には、利用者端末2を通じて、第1書体データに対して任意の長体率(例えば「50%」)を設定する。第2書体データ生成部20は、設定された長体率に基づいて正体文字が変形された長体文字である第1変形文字としての第2書体データが生成され、生成された第2書体データはデータベース10に一時的に登録される。
【0034】
なお、第1書体データを変形することなく正体文字のまま銘板に彫刻する場合には、第2書体データ生成部20では、長体率を「100%」に設定すればよい。このように長体率を100%に設定することで、第1書体データの正体文字がそのまま第2書体データの第1変形文字として扱われ、後続の処理に供することができる。なお、長体率が100%の場合は、第2書体データ生成部20による処理を経由することなく、第1書体データをそのまま後記する第3書体データ生成部30に供してもよい。
【0035】
ここで、必ずしも、第2書体データ生成部20で生成される第1変形文字は、任意の長体率で変形された長体文字に限らない。例えば、銘板のスペース上、文字列の縦幅を抑制する必要がある場合には、任意の平体率に基づいて正体文字を変形させた平体文字を生成することもできる。即ち、利用者は銘板に彫刻する文字形態に応じて、長体率、或いは平体率を利用者端末2を通じて設定することができる。
【0036】
以上のように、本発明の実施形態においては、第1書体データとして極細の線幅からなる正体文字である第1書体データを基準に所定の変形率で変形させるため、横線と縦線の線幅の誤差を最小限に抑えることができる。
【0037】
[第3書体データ生成部]
第3書体データ生成部30は、極細の線幅からなる第1変形文字の横線と縦線とを所定に拡大した第2変形文字である第3書体データを生成する機能を有している。一般に銘板の正体文字における線幅は、文字大きさを100%とした場合に8%とすることがJIS規格(JIS Z 8304)にて規定されている。本発明の実施形態においても、係るJIS規格の規定に沿って、線幅が文字大きさの8%を上限として、長体率に応じて線幅が規定される。
【0038】
ここで、第2書体データ生成部20で適用される長体率をX%(Xは100以下の自然数)とした場合、生成される第2変形文字の線幅Y%は以下の式(1)に従って規定される。
Y(%)=(100%+X%)/25 (1)
【0039】
例えば、第1変形文字の長体率が100%の正体文字の場合には、Y=8%となり、前記したJIS規格の通り、文字大きさに対して8%の線幅となるように第1変形文字の横線と縦線の線幅を拡大して第2変形文字が生成される。また、第1変形文字が長体率50%の長体文字の場合には、Y=6%となり、文字大きさに対して6%の線幅となるように第1変形文字の横線と縦線の線幅が拡大される。
【0040】
図3図4は、レーザー彫刻機に出力される第3書体データを生成するための説明図である。ここでは、代表的なサンプル文字として「機」を使用した場合の文字作成例を示す。なお、図3は長体率が100%、図4は長体率が50%の例を示す。
【0041】
まず、図3(a)、及び図4(a)は、データベースに予め登録されている正体文字からなる第1書体データ11であり、文字大きさに対して1%の線幅からなる横線と縦線から構成されている。具体的には、文字大きさが50mmに対して、横線と縦線の線幅は0.5mmの極細の線幅からなる正体文字である。
【0042】
図3において、長体率が100%の場合は、第1書体データ11の正体文字がそのまま第2書体データ21としての第1変形文字となり、この第2書体データ21が第3書体データ生成部30において、横線と縦線の線幅について拡大処理が行われる。
【0043】
拡大処理は、前記した式(1)に基づいて8%の線幅となるように、1%の線幅の横線と縦線にそれぞれ7%の線幅が追加され、線幅8%(4mm)の横線、及び縦線から構成された第2変形文字としての第3書体データ31が生成される(図3(b)参照)。なお、拡大処理は、第2書体データ21の線幅の略中央部が認識され、その中央部から幅方向に均等に線幅を拡大することで、バランスのとれた文字とすることができる。
【0044】
一方、長体率が50%の場合には、図4(a)に示す線幅1%の正体文字からなる第1書体データ11は、第2書体データ生成部20において第1変形文字である第2書体データ21に変形される(図4(b)参照)。即ち、第1変形文字は、横線の線幅が1%(0.5mm)、縦線の線幅は長体率50%により0.5%(0.25mm)の長体文字となる。
【0045】
次に、第2書体データ21は第3書体データ生成部30において、線幅の拡大処理が行われる。拡大処理は、長体率の影響を受けない横線を基準とした拡大処理が行われる。即ち、前記した式(1)に基づけば、長体率が50%の場合には、線幅は6%となる。この線幅6%は、長体率の影響を受けない横線の線幅であり、このとき、1%の横線に5%の線幅が追加されて6%(4mm)の線幅となる。そして、長体率の影響により0.5%となっている縦線についても、横線と同じく5%の線幅が追加され5.5%(2.75mm)の線幅となる。
【0046】
なお、本発明の実施形態では、第3書体データ生成部30における第2書体データ21の拡大処理においては、横線、及び縦線の何れも一律に5%で拡大処理しているが、例えば横線と縦線の線幅がともに6%となるように、縦線について5.5%の線幅を追加する処理を行ってもよい。但し、前記したように、追加する線幅を横線と縦線ともに5%として定義することで、第3書体データ生成部30の演算処理を単純化し、計算負荷を低減することができる。
【0047】
以上のように、長体文字については、第3書体データ31の横線と縦線とが異なる線幅となるが、極細の線幅からなる第1書体データからなる正体文字を長体文字に変形し、その後に所定の線幅を追加する拡大処理を行うことで、横線と縦線の長体率による誤差が吸収され、見た目は略同一の線幅からなる長体文字として認識できるレベルととなる。
【0048】
その後、第3書体データ生成部で生成された第3書体データ31がレーザー彫刻機3に出力され、レーザー彫刻機3は、受信した第3書体データに基づいてレーザー彫刻が実行される。
【0049】
以上が、本発明の実施形態に係る文字作成システム1の構成である。次に、文字作成システム1で実行される文字作成プログラムについて図5のフロー図に基づいて説明する。
【0050】
まず、利用者は利用者端末2を通じて、データベース10に登録されている正体文字からなる第1書体データを選択する(STEP1)。第1書体データの選択は、銘板に彫刻する文字数が複数である場合には、1文字毎に選択してもよく、或いは銘板に彫刻する文字をまとめて選択するようにしてもよい。
【0051】
次に、選択した第1書体データに対する変形率を設定する(STEP2)。変形率の設定は、例えば利用者端末2の入力画面を通じて、長体または平体の別、或いは変形率(長体率または平体率)を入力することで自動的に設定される。ここで設定した変形率は第2書体データ生成部20で受信され、設定した変形率に応じて第1書体データが変形された第1変形文字からなる第2書体データが生成される(STEP3)。
【0052】
次に、第3書体データ生成部30において第2書体データについて拡大処理が行われて第3書体データが生成される(STEP4)。拡大処理は前記した式(1)に基づいて、所定の変形率に応じた線幅が第2書体データの第1変形文字に追加される。拡大処理が完了した第3書体データはレーザー彫刻機3に出力され、レーザー彫刻機3により彫刻用材料に対して彫刻加工される(STEP5)。以上の演算を繰り返すことによって、彫刻用材料に所定の文字を彫刻し銘板を製造することができる。
【0053】
次に、本発明の実施形態に係る文字作成システム1の実施例と比較例について説明する。実施例、及び比較例については、サンプル文字「電」について、文字大きさを100%とした場合の線幅8%を上限とした範囲で第1書体データの線幅を変化させ、長体率50%の第3書体データの見映えについて評価した(図6参照)。
【0054】
評価方法は、第3書体データについて評価者10人が横線と縦線の線幅の均一性について評価し、「均一に見える」と回答した評価者の数に基づいて評価した(「◎」は評価者全員、「○」は8名、「△」は6名が「均一に見える」と評価し、「×」は「均一に見える」と評価した評価者が0名であることを示す。)。
【0055】
図6の結果に示す通り、第1書体データの線幅が5%以下の実施例1~4では、第2変形文字の横線と縦線との比率は100:99~100:58の範囲(平体文字の場合は99:100~58:100の範囲)となり、見た目上、横線と縦線とは略同一の線幅となる長体文字として認識できる。
【0056】
一方、比較例1~3のように第1書体データの線幅が6%を超えると、第2変形文字の横線と縦線との比率は100:50(平体文字の場合には50:100)となり、見た目上、縦線の線幅が横線の線幅に対して明らかに細くなることが確認できる。
【0057】
以上のように、横線と縦線の線幅が0.1%~5%の範囲内である正体文字である第1書体データをを基準として長体文字を生成した場合でも、その長体率による誤差を吸収して、横線と縦線の線幅の誤差を小さくし、見た目上も違和感のない長体文字を生成することができる。
【0058】
以上、本発明に係る文字作成システム、文字作成プログラム、及び文字作成方法は、レーザー彫刻機により彫刻された銘板の文字について、長体率や平体率の影響を受けることなく文字の縦横線の線幅を一定にすることができるものとなっている。
【符号の説明】
【0059】
1 文字作成システム
10 データベース
11 第1書体データ
20 第2書体データ生成部
21 第2書体データ
30 第3書体データ生成部
31 第3書体データ
2 利用者端末
3 レーザー彫刻機
4 インターネット回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6