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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151946
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電線固定構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/32 20060101AFI20241018BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20241018BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H02G3/32
F16B2/08 B
B60R16/02 623H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065786
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊東 宏明
【テーマコード(参考)】
3J022
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA16
3J022EA16
3J022EB14
3J022ED28
3J022FA01
3J022FA05
3J022FB03
3J022FB22
3J022HA03
3J022HB03
5G363BA02
5G363DA15
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、放熱性能を確保しつつ小型化および軽量化を図った電線固定構造を提供することを目的とする。
【解決手段】電線Cを車体Pに固定するための電線固定構造1、1Aは、電線Cが設置されるクランプ本体2と、電線の熱を車体に伝導させる熱伝導部3と、電線をクランプ本体に押し付ける押付け部材4と、を備え、クランプ本体は、電線が設置可能な曲面8aを有する電線設置部5、5Aと、該電線設置部から車体に沿って延びて形成された板延在部6と、を備え、熱伝導部は、クランプ本体に支持される熱伝導部本体301と、該熱伝導部本体から車体に沿って延びて形成された熱伝導延出部302と、板延在部と車体との間に設けられる金属板31と、を備え、熱伝導延出部は、金属板31に接触するように板延在部と金属板31との間に挟まった状態で、車体にボルト固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を車体に固定するための電線固定構造であって、
前記電線が設置されるクランプ本体と、
前記電線の熱を前記車体に伝導させる熱伝導部と、
前記電線を前記クランプ本体に押し付ける押付け部材と、を備え、
前記クランプ本体は、前記電線が設置可能な曲面を有する電線設置部と、該電線設置部から前記車体に沿って延びて形成された板延在部と、を備え、
前記熱伝導部は、前記クランプ本体に支持される熱伝導部本体と、
該熱伝導部本体から前記車体に沿って延びて形成された熱伝導延出部と、
前記板延在部と前記車体との間に設けられる金属板と、を備え、
前記熱伝導延出部は、前記金属板に接触するように前記板延在部と前記金属板との間に挟まった状態で、前記車体にボルト固定されることを特徴とする電線固定構造。
【請求項2】
前記電線設置部は、
前記電線が設置可能な曲面を有する板状に形成された被設置部と、
該被設置部を挿入可能な挿入口を有し、前記挿入口の周縁に連続して前記被設置部における前記曲面に連続する面を覆う覆い部と、を備え、
前記被設置部は金属製であり、前記覆い部は樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の電線固定構造。
【請求項3】
前記被設置部は、一対の分割部を有し、
前記一対の分割部は、それぞれが前記曲面を有し、
前記一対の分割部の間に前記熱伝導部本体が挟んで保持されていることを特徴とする請求項2に記載の電線固定構造。
【請求項4】
前記被設置部は、一対の前記電線を設置可能とするように前記曲面を一対有し、
前記熱伝導部本体を一対有し、
前記各曲面に、前記各熱伝導部本体を介して前記各電線が設置されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電線固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、多種多様な電子機器が搭載され、電子機器に電力や制御信号等を伝えるために、ワイヤハーネスが配索されている。このようなワイヤハーネスが、例えば、高電圧のバッテリとインバータ等の電気機器間に配索される場合には、当該ワイヤハーネスを構成する電線に大電流が流れる場合がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、複数の導電路と、該導電路の両端部に取り付けられた一対のコネクタと、複数の導電路を一括して包囲して各導電路に発生した熱を放散する放熱機能を有する保護管と、を備えて構成されたワイヤハーネスが開示されている。
【0004】
保護管は、下側のケースと上側のカバーとが組み付けられて一体化されている。この保護管には、車体への取り付け位置毎に1つずつバネ部材(放熱部材)が設置されている。この構成によれば、車体への取り付け位置にバネ部材が設置されるため、各バネ部材から保護管を通じて車体等に熱を逃がしやすくなり、放熱性が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-91940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今般、電気自動車やハイブリッド自動車における電動駆動系の大電流化が進みつつあり、これに伴って電線等の長尺導電部材は大径化する傾向にある。また長尺導電部材の大径化により、車体配索スペースの確保が困難となる場合があった。
【0007】
本発明は、放熱性能を確保しつつ小型化および軽量化を図った電線固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、電線を車体に固定するための電線固定構造であって、前記電線が設置されるクランプ本体と、前記電線の熱を前記車体に伝導させる熱伝導部と、前記電線を前記クランプ本体に押し付ける押付け部材と、を備え、前記クランプ本体は、前記電線が設置可能な曲面を有する電線設置部と、該電線設置部から前記車体に沿って延びて形成された板延在部と、を備え、前記熱伝導部は、前記クランプ本体に支持される熱伝導部本体と、該熱伝導部本体から前記車体に沿って延びて形成された熱伝導延出部と、前記板延在部と前記車体との間に設けられる金属板と、を備え、前記熱伝導延出部は、前記金属板に接触するように前記板延在部と前記金属板との間に挟まった状態で、前記車体にボルト固定されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、放熱性能を確保しつつ小型化および軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る電線固定構造を示す断面図である。
図2】前記電線固定構造を下方から見た底面図である。
図3】前記電線固定構造を示す分解斜視図である。
図4】前記電線固定構造を構成するクランプ本体および押し付け部材を示す斜視図である。
図5】前記電線固定構造が用いられて前記電線を車体に固定する手順を説明するための図である。
図6】前記電線固定構造の作用効果を説明するための図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る電線固定構造を示す断面図である。
図8】本発明の参考例に係る電線固定構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1~6に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る電線固定構造1を示す断面図である。図2図1に示された電線固定構造1を下方から見た底面図である。図3図1に示された電線固定構造1を示す分解斜視図である。
【0012】
本実施形態の電線固定構造1は、図1に示すように、一対の電線C、Cを車体パネルP(車体)に固定するためのものであり、一対の電線C、Cが設置されるクランプ本体2と、各電線Cの熱を車体パネルP(車体)に伝導させる熱伝導部3と、各電線Cをクランプ本体2に押し付ける一対のカバー4、4(押付け部材)と、を備える。また電線固定構造1は、クランプ本体2に各電線Cおよび各カバー4が設置された状態で、該クランプ本体2、各電線C、及び各カバー4は、一対の結束バンド12、12によって結束されて車体パネルPに固定される。図1、6では、一対の電線C、C、ボルトB、ナットN、及び車体パネルPの断面を示すハッチングは省略されている。
【0013】
本実施形態では、電線Cの軸方向をX方向(前後方向)とし、X方向に直交する2方向をそれぞれ左右方向Y及び高さ方向Zとする。高さ方向Zのうち一方を「上方Z1」と記し、他方を「下方Z2」と記す場合がある。
【0014】
クランプ本体2は、図1、2に示すように、各電線Cの周面に接触可能な一対の曲面8a、8a(図1に示す)を有する電線設置部5と、該電線設置部5から車体パネルPに沿って延びて形成された板延在部6と、を備える。またクランプ本体2には、電線設置部5に設けられて熱伝導部3の一部である金属板31を収容するための金属板収容部7が設けられている。金属板収容部7は、後述する電線設置部5に設けられた第1金属板収容室811と、後述する板延在部6に設けられた第2金属板収容室63と、を備えて構成されている。
【0015】
この電線設置部5は、図3、4に示すように、一対の電線C、Cを設置可能な一対の曲面8a、8aを有する金属製の被設置部8と、該被設置部8における一対の曲面8a、8aを露出させつつ曲面8aに連続する面(上面80(図3に示す)および一対の第1側面82、82(図3に示す))を覆う合成樹脂製(樹脂製)の覆い部9と、を有して構成されている。
【0016】
被設置部8は、図3に示すように、後述する熱伝導部3の一部であるグラファイトシート30を挟んで保持可能な一対の分割部8A、8Bを有して構成されている。即ち、被設置部8は2部材で構成されている。以下では、一対の分割部8A、8Bのうち一方を「第1分割部8A」と記し、他方を「第2分割部8B」と記す場合がある。本実施形態では、第1分割部8Aは、左右方向Yにおいて、電線設置部5に対する板延在部6と同じ側に位置し、第2分割部8Bは、板延在部6とは反対側に位置している。
【0017】
各分割部8A、8Bは、図3に示すように、平坦な面から構成された上面80、下面81、前後方向Xに位置する平坦な面から構成された一対の第1側面82、82、左右方向Yに位置するとともに、各電線Cを設置可能な曲面8aを有する第2側面83、及び該第2側面83の左右方向Yの裏側に位置する平坦な面から構成された第3側面84と、を有する略板状に形成されている。
【0018】
また各分割部8A、8Bの下面81には、図2、3に示すように、前後方向Xの中央部に位置するとともに後述する金属板収容部7の一部を構成する第1金属板収容室811と、該第1金属板収容室811の前後方向Xの両側に位置して、後述する各カバー4それぞれに設けられた一対の第1係止部42に係止される一対の第1係止受け部812と、該一対の第1係止受け部812を挟んで第1金属板収容室811から離れた位置にあって、後述する結束バンド設置部10の一部を構成する一対の下側凹溝813、813と、が設けられている。また、各分割部8A、8Bの下面81は、平坦な面に、第1金属板収容室811と、一対の第1係止受け部812と、及び一対の下側凹溝813、813と、が形成されて構成されている。
【0019】
第1金属板収容室811は、図2に示すように、第1分割部8Aおよび第2分割部8Bそれぞれの下面81に形成された凹みから構成されている。第1金属板収容室811は、後述する板延在部6に形成された後述する第2金属板収容室63に連続して設けられているとともに、第1分割部8Aから第2分割部8Bまで延びて形成されて、後述する熱伝導部3の一部である金属板31が収容されるように構成されている。
【0020】
一対の第1係止受け部812は、図2、3に示すように、左右方向Yに並んで設けられている。各第1係止受け部812は、図2に示すように、第1分割部8Aおよび第2分割部8Bそれぞれの下面81に形成された凹みの底から突出する凸部81Aを有して構成されている。このような各第1係止受け部812は、カバー4に設けられた第1係止部42のコ字型の内部に凸部81Aを位置付けることにより第1係止部42を係止するように構成されている。
【0021】
各下側凹溝813は、図2、3に示すように、所定の幅寸法(結束バンド12と略同じ幅寸法)を有して構成されているとともに、下面81の左右方向Yの各端縁を切り欠いて凹溝状に左右方向Yに延在して構成されている。
【0022】
また各分割部8A、8Bの第2側面83は、図3に示すように、各電線Cを設置可能な曲面8aと、該曲面8aの下方Z2に連続する平坦面831と、を備える。平坦面831は、第2側面83の下端部に設けられているとともに、覆い部9の第2側壁93に対向して接触するように構成されている。
【0023】
覆い部9は、図3、4に示すように被設置部8を挿入可能な挿入開口部90(図3に示す)を有し、該挿入開口部90の上方Z1に対向して設けられた上壁91と、前後方向Xに対向する一対の第1側壁92、92と、該一対の第1側壁92、92の下端部に連続するとともに左右方向Yに対向する一対の第2側壁93、93と、を備える。挿入開口部90は、図3に示すように、一対の第1側壁92、92および一対の第2側壁93、93によって矩形枠状に構成されている。また、覆い部9は、図4に示すように、被設置部8が挿入開口部90から挿入された状態で、被設置部8における一対の曲面8a、8aが露出されるように構成されている。
【0024】
上壁91には、図3、4に示すように、後述する各カバー4に設けられた第2係止部43それぞれに係止される一対の第2係止受け部911、911と、後述する結束バンド設置部10の一部を構成する一対の上側凹溝912、912と、が設けられている。
【0025】
一対の第2係止受け部911、911は、図3、4に示すように、上壁91の前後方向Xの中央部において、左右方向Yに並んで設けられている。各第2係止受け部911は、上壁91の上面に設けられた凹みの底から突出する凸部91Aを有して構成されている。このような各第2係止受け部911は、カバー4に設けられた第2係止部43のコ字型の内部に凸部91Aを位置付けることにより第2係止部43を係止するように構成されている。
【0026】
一対の上側凹溝912、912は、図3、4に示すように、上壁91の前後方向Xの両端部に設けられている。各上側凹溝912は、各下側凹溝813と上下方向Zに背向する位置に設けられている。また各上側凹溝912は、所定の幅寸法(結束バンド12と略同じ幅寸法)を有して構成されているとともに、上壁91の左右方向Yの各端縁を切り欠いて凹溝状に左右方向Yに延在して構成されている。
【0027】
一対の第2側壁93、93それぞれには、図3、4に示すように、第1切欠き931と、第2切欠き932と、が設けられている。第1切欠き931は、被設置部8における第1係止受け部812の凹みの底面に連続するように、各第2側壁93の下方Z2の端縁を切り欠いて構成されている。第2切欠き932は、被設置部8における各下側凹溝813の底面に連続するように、各第2側壁93の下方Z2の端縁を切り欠いて構成されている。
【0028】
板延在部6は、図3、4に示すように、一対の第2側壁93、93のうち一方(第1分割部8Aと同じ側)において、前後方向Xの中央部に連続して、車体パネルPに沿って左右方向Yに延在する帯板状に形成されている。この板延在部6は、左右方向Yに延びて形成された帯板状の延在部本体61と、左右方向Yにおける該延在部本体61から離れた端部に設けられてボルトBの軸部が挿通される第1ボルト挿通孔62と、を備える。
【0029】
また、板延在部6には、図1、2に示すように、第2金属板収容室63が設けられている。第2金属板収容室63は、板延在部6の下面に設けられた凹みから構成されているとともに、被設置部8の下面81に設けられた第1金属板収容室811に連続して設けられている。第1金属板収容室811および第2金属板収容室63は、金属板収容部7を構成し、熱伝導部3を構成する金属板31を収容可能に構成されている。
【0030】
熱伝導部3は、図3に示すように、グラファイトシート30と、金属板31と、を備え、電線Cに発生した熱をグラファイトシート30および金属板31を介して車体パネルPに伝導するように構成されている。
【0031】
グラファイトシート30は、柔軟性のある薄いシート状に形成され、銅の2倍程度の熱伝導率を有して構成されている。グラファイトシート30は、図3に示すように、長方形状のシート本体301(熱伝導部本体)と、該シート本体301から延出されるとともに、車体パネルPに沿って延びて形成された帯板状のシート延在部302(熱伝導延出部)と、該シート延在部302のシート本体301から離れた端部に設けられてボルトBの軸部が挿通される第2ボルト挿通孔303と、を備える。シート延在部302は、金属板31とともに、金属板収容部7に収容されるように構成されている。
【0032】
金属板31は、図3に示すように、帯板状に形成されて左右方向Yに延びて形成された金属板本体310と、該金属板本体310の左右方向Yの端部に設けられてボルトBの軸部が挿通される第3ボルト挿通孔311と、を備える。この金属板31は、左右方向Yにおいて、グラファイトシート30のシート延在部302より大きい寸法を有して構成されているとともに、金属板収容部7に収容可能に構成されている。
【0033】
一対のカバー4、4は、それぞれ、図3、4に示すように、各電線Cを覆うことが可能な半円筒状に形成されたカバー本体41と、該カバー本体41に設けられているとともに、電線設置部5の被設置部8に設けられた第1係止受け部812を係止可能な一対の第1係止部42、42と、該カバー本体41に設けられているとともに、電線設置部5の覆い部9に設けられた第2係止受け部911を係止可能な第2係止部43と、後述する結束バンド設置部10の一部を構成する一対のバンド設置部本体44、44と、を備える。カバー本体41は、前後方向Xを延在方向(筒の軸方向)とするように構成されている。
【0034】
一対の第1係止部42、42は、カバー本体41の径方向の下端縁において、前後方向Xの中央部を挟んだ両側に設けられ、第2係止部43は、カバー本体41の径方向の上端縁において、前後方向Xの中央部に設けられている。
【0035】
一対のバンド設置部本体44、44は、クランプ本体2の被設置部8の下側凹溝813および覆い部9の上側凹溝912に連続する位置に設けられたバンド設置面441と、該バンド設置面441の前後方向Xの両端部に設けられた一対の突条部442、442と、を備えて構成されている。各突条部442は、カバー本体41の周方向に延在して設けられて、バンド設置面441に設置された結束バンド12の前後方向Xの位置ずれを規制するように構成されている。このような各バンド設置部本体44、電線設置部5の被設置部8に設けられた各下側凹溝813、及び電線設置部5の覆い部9に設けられた各上側凹溝912は、各結束バンド設置部10を構成する。
【0036】
各結束バンド12は、図1、5に示すように、クランプ本体2および一対のカバー4、4に巻かれる紐状のバンド本体12Aと、該バンド本体12Aの一端部に設けられてバンド本体12Aの他端を挿入させて係止する結束部12Bと、を備えて構成されている。
【0037】
次に、このような電線固定構造1を車体パネルPに固定する場合の手順について、図3~5を参照して説明する。
【0038】
まず、図3、4に示すように、グラファイトシート30のシート本体301を一対の分割部8A、8Bで挟んで、シート延在部302を一対の分割部8A、8Bから引き出しておく。この後、一対の分割部8A、8Bを覆い部9の挿入開口部90から覆い部9の内部に挿入する。そして、一対の電線C、Cの所定位置をクランプ本体2の電線設置部5の一対の曲面8a、8aに設置し、一対のカバー4、4を一対の電線C、Cに近付ける。これによりカバー4の第1係止部42が電線設置部5の第1係止受け部812に近付いて、第1係止部42が第1係止受け部812に係止される。また、カバー4の第2係止部43が電線設置部5の第2係止受け部911に近付いて、第2係止部43が第2係止受け部911に係止される。このようにして、各カバー4が電線設置部5に設置される。この際、各カバー4によって、各電線Cは電線設置部5の被設置部8に押し付けられている。
【0039】
続いて、各結束バンド12のバンド本体12Aを、結束バンド設置部10の上側凹溝912、バンド設置部本体44、及び下側凹溝813に巻き付けて締め付ける。この状態で、バンド本体12Aの他端を結束部12Bに挿入させて係止する。これにより、各電線Cが各カバー4を介して電線設置部5の被設置部8に押し付けられ、各電線Cが被設置部8の各曲面8aに接触して、各電線Cに発生した熱が各曲面8aに伝導されるようになる。
【0040】
この後、クランプ本体2の金属板収容部7に、一対の分割部8A、8Bから引き出されたシート延在部302を収容し、当該シート延在部302を挟んで板延在部6の反対側に金属板31を収容する。このようにシート延在部302が板延在部6と金属板31との間に挟まった状態で、車体パネルPから突出するボルトBの軸部に、第1ボルト挿通孔62、第2ボルト挿通孔303、及び第3ボルト挿通孔311を挿通させて、板延在部6、シート延在部302、金属板31を、ナットNを用いて車体パネルPにボルト固定する(共締めする)。これにより、電線固定構造1の車体パネルPへの固定が完了する。
【0041】
これによれば、本実施形態の電線固定構造1は、図6に示すように、電線Cに大電流が通電されることにより生じる熱が、電線設置部5、シート本体301、シート延在部302、及び金属板31を介して、車体パネルPに伝達されることとなる。
【0042】
上述した実施形態によれば、電線Cが設置されるクランプ本体2と、電線Cの熱を車体パネルP(車体)に伝導させる熱伝導部3と、電線Cをクランプ本体2に押し付けるカバー4(押付け部材)と、を備え、クランプ本体2は、電線Cを設置可能な曲面8aを有する電線設置部5と、該電線設置部5から車体パネルPに沿って延びて形成された板延在部6と、を備え、熱伝導部3は、クランプ本体2に支持されるシート本体301(熱伝導部本体)と、該シート本体301から車体パネルPに沿って延びて形成されたシート延在部302(熱伝導延出部)と、板延在部6と車体パネルPとの間に設けられる金属板31と、を備え、シート延在部302は、金属板31に接触するように板延在部6と金属板31との間に挟まった状態で、車体パネルPにボルト固定される。これによれば、電線Cに大電流が通電されることにより生じる熱が、電線設置部5、シート本体301、シート延在部302、及び金属板31を介して、車体パネルPに効率よく伝達されることとなる。即ち、従来技術の如く放熱部材として機能するバネ部材を設けずとも、電線Cに発生した熱を効率よく車体パネルPに放熱される構成が得られることにより、放熱性能を確保しつつ小型化および軽量化を図ることができる。これにより、限られた車体配索スペースへの配索を可能とすることができる。
【0043】
また、電線設置部5は、電線Cを設置可能な曲面8aを有する板状に形成された被設置部8と、該被設置部8を挿入可能な挿入開口部90(挿入口)を有し、挿入開口部90の周縁に連続して被設置部8における曲面8aに連続する上面80および一対の第1側面82、82(曲面に連続する面)を覆う覆い部9と、を備え、被設置部8は金属製であり、覆い部9は合成樹脂製(樹脂製)である。これによれば、電線Cが設置される被設置部8が金属から構成されていることにより、電線Cに発生した熱が、被設置部8、シート本体301、シート延在部302、及び金属板31を介して、より一層、車体パネルPに効率よく伝達される。
【0044】
また被設置部8は2部材で構成され、それぞれが曲面8aを有する一対の分割部8A、8Bを有し、一対の分割部8A、8Bの間にシート本体301(熱伝導部本体)が挟んで保持されている。これによれば、被設置部8の内部にシート本体301が保持されていることによって、電線Cに発生した熱が、シート本体301に伝導され易くなり、電線Cに発生した熱が、被設置部8、シート本体301、シート延在部302、及び金属板31を介して、より一層効率よく車体パネルPに伝達されることとなる。
【0045】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0046】
前記実施形態では、電線設置部5は、一対の電線C、Cを設置可能なように一対の曲面8a、8aを有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。電線設置部5は、1本の電線Cを設置可能なように、1つの曲面8aを有して構成されていてもよい。その場合には、カバー4(押付け部材)は1つ有していればよい。
【0047】
また前記実施形態では、グラファイトシート30のシート本体301(熱伝導部3)が被設置部8を構成する一対の分割部8A、8Bの間に挟んで保持されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被設置部8が1部材から構成されているとともに、シート本体301を内部に収容可能なシート本体収容部を有して構成されていてもよい。
【0048】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を図7に基づいて説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る電線固定構造1Aを示す断面図である。第1実施形態の電線固定構造1および第2実施形態の電線固定構造1Aは、被設置部18A(8)の構成および熱伝導部3A(3)の構成が異なっている。第2実施形態において、第1実施形態と同一形状乃至構成を有する部分には、第1実施形態と同一符号を付与してその部分の説明を省略する。
【0049】
本実施形態の電線固定構造1Aは、図7に示すように、一対の電線C、Cを車体パネルP(車体)に固定するためのものであり、一対の電線C、Cが設置されるクランプ本体2Aと、各電線Cの熱を車体に伝導させる熱伝導部3Aと、各電線Cをクランプ本体2Aに押し付ける一対のカバー4、4(押付け部材)と、を備える。また電線固定構造1Aは、クランプ本体2Aに各電線Cおよび各カバー4が設置された状態で、該クランプ本体2A、各電線C、及び各カバー4は、一対の結束バンド12、12によって結束されている。図7では、一対の電線C、C、ボルトB、ナットN、及び車体パネルPの断面を示すハッチングは省略されている。
【0050】
クランプ本体2Aは、各電線Cの周面にグラファイトシート30のシート本体301を介して当接可能な一対の曲面8a、8aを有する電線設置部5Aと、該電線設置部5Aから車体パネルPに沿って延びて形成された板延在部6と、を備える。またクランプ本体2Aには、電線設置部5Aに設けられて熱伝導部3Aの一部である金属板31を収容するための金属板収容部7が設けられている。
【0051】
この電線設置部5Aは、一対の電線C、Cを設置可能な一対の曲面8a、8aを有する金属製の被設置部18Aと、該被設置部18Aにおける一対の曲面8a、8aを露出させつつ曲面8aに連続する面を覆う合成樹脂製(樹脂製)の覆い部9と、を有して構成されている。
【0052】
被設置部18Aは、本実施形態では、一つの部材から構成されているとともに、各曲面8aに、後述する熱伝導部3Aの一部であるグラファイトシート30のシート本体301が接触するように重なって設けられて、被設置部18Aにシート本体301を介して各電線Cが設置されるように構成されている。
【0053】
熱伝導部3Aは、一対のグラファイトシート30、30と、金属板31と、を備え、電線Cに発生した熱を各グラファイトシート30および金属板31を介して車体パネルPに伝導するように構成されている。
【0054】
各グラファイトシート30は、長方形状のシート本体301(熱伝導部本体)と、該シート本体301から延出されるとともに、車体パネルPに沿って延びて形成された帯板状のシート延在部302(熱伝導延出部)と、を備える。一対のグラファイトシート30、30それぞれのシート本体301は、一対の曲面8a、8aそれぞれに重なって設けられている。
【0055】
このような電線固定構造1Aを車体パネルPに固定する場合には、一対のグラファイトシート30、30のシート本体301それぞれを、一対の曲面8a、8aそれぞれに重ね、そして、被設置部18Aを覆い部9の挿入開口部90から覆い部9の内部に挿入する。その後、一対の電線C、Cの所定位置をクランプ本体2Aの電線設置部5Aの一対の曲面8a、8aそれぞれに設置する。この際、各電線Cは、グラファイトシート30に直に接触して設けられているとともに、各電線Cは、各グラファイトシート30を介して、電線設置部5Aの各曲面8aに設置される。
【0056】
この後、一対のカバー4、4を電線設置部5Aに近付けて、各カバー4を電線設置部5Aに設置する。これにより、各電線Cは、各カバー4によって、電線設置部5Aの被設置部18Aに押し付けられる。そして、各結束バンド12のバンド本体12Aを、結束バンド設置部10の上側凹溝912、バンド設置部本体44、下側凹溝813に巻き付け締め付けて、バンド本体12Aの他端を結束部12Bに挿入させて係止する。これにより、各電線Cが各カバー4を介して電線設置部5Aの被設置部18Aに押し付けられ、各電線Cが各グラファイトシート30を介して被設置部18Aの各曲面8aに当接して、各電線Cに発生した熱が各曲面8aに伝導されるようになる。
【0057】
この後、クランプ本体2Aの金属板収容部7に、一対のシート延在部302、302を収容し、当該シート延在部302を挟んで板延在部6の反対側に金属板31を収容する。このように一対のシート延在部302が板延在部6と金属板31との間に挟まった状態で、車体パネルPに、板延在部6、一対のシート延在部302、金属板31を、ナットNを用いて車体パネルPにボルト固定する(共締めする)。これにより、電線固定構造1Aの車体パネルPへの固定が完了する。
【0058】
上述した実施形態によれば、シート本体301(熱伝導部本体)を一対有し、各曲面8aに、各シート本体301を介して各電線Cが設置されるように構成されている。これによれば、電線Cに発生した熱が、シート本体301に直接伝達されることにより、電線Cに発生した熱が、シート本体301、シート延在部302、及び金属板31を介して、より一層、車体パネルPに効率よく伝達されることとなる。
【0059】
(参考例)
以下、本発明の参考例を図8に基づいて説明する。図8は、本発明の参考例に係る電線固定構造100を示す断面図である。上述した実施形態では、熱伝導部3は、グラファイトシート30と、金属板31と、を備えて構成されているが、参考例では、グラファイトシート30を有しておらず、金属板31のみを有して構成されている。即ち、グラファイトシート30は省略されている。この場合には、電線Cに発生した熱が、電線設置部5A、即ち被設置部18および金属板31を介して、車体パネルPに伝達される。参考例において、第2実施形態と同一形状乃至構成を有する部分には、第2実施形態と同一符号を付与してその部分の説明を省略する。図8では、一対の電線C、C、ボルトB、ナットN、及び車体パネルPの断面を示すハッチングは省略されている。
【0060】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1、1A 電線固定構造
2 クランプ本体
3、3A 熱伝導部
31 金属板
301 シート本体(熱伝導部本体)
302 シート延在部(熱伝導延出部)
4 カバー(押付け部材)
5、5A 電線設置部
6 板延在部
8、18A 被設置部
8A、8B 一対の分割部
8a 曲面
80 上面(曲面に連続する面)
82、82 一対の第1側面(曲面に連続する面)
9 覆い部
90 挿入開口部(挿入口)
C 電線
P 車体パネル(車体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8