(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151947
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電線冷却装置
(51)【国際特許分類】
H02G 3/03 20060101AFI20241018BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241018BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20241018BHJP
F16L 53/70 20180101ALI20241018BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H02G3/03
H02G3/30
F28F1/40 A
F16L53/70
F16L3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065787
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊東 宏明
【テーマコード(参考)】
3H023
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3H023AC08
3H023AD08
3H023AE07
5G357AA07
5G363AA20
5G363BA01
5G363DA13
5G363DA15
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、冷却性能を確保しつつ小型化および軽量化を図った電線冷却装置1を提供することを目的とする。
【解決手段】電線冷却装置1は、互いに間隔をあけて延在する一対の電線C、Cが設置されるものであって、一対の電線の間に位置するクランプ本体2と、一対の電線をクランプ本体に押し付ける押付け部材3、3と、を備え、クランプ本体は、一対の電線が設置可能な一対の曲面4a、4aと、各電線の熱を冷却するため冷媒を循環させる流通路20と、を一体に有し、流通路は、一対の電線が並ぶ方向Yにおいて、一対の曲面4a、4aの間に設けられているとともに、各電線Cと同じ方向Xに延在して設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて延在する一対の電線が設置される電線冷却装置であって、
前記一対の電線の間に位置するクランプ本体と、
前記一対の電線を前記クランプ本体に押し付ける押付け部材と、を備え、
前記クランプ本体は、前記一対の電線が設置可能な一対の曲面と、前記各電線の熱を冷却するため冷媒を循環させる流通路と、を一体に有し、
前記流通路は、前記一対の電線が並ぶ方向において、前記一対の曲面の間に設けられているとともに、前記各電線と同じ方向に延在して設けられていることを特徴とする電線冷却装置。
【請求項2】
前記流通路を構成する周面は、冷媒に対する接触面積を増加させるための凹凸形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の電線冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、多種多様な電子機器が搭載され、電子機器に電力や制御信号等を伝えるために、ワイヤハーネスが配索されている。このようなワイヤハーネスが、例えば、高電圧のバッテリとインバータ等の電気機器間に配索される場合には、当該ワイヤハーネスを構成する電線に大電流が流れる場合がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1にはワイヤハーネスの放熱構造が開示されている。特許文献1に開示されたワイヤハーネスの放熱構造は、ワイヤハーネスが熱伝導可能に接触する放熱体と、熱伝導性が向上された熱伝導シートと、を備える。
【0004】
ワイヤハーネスは、2本の高圧のワイヤハーネスである第1ワイヤハーネスと、第2ワイヤハーネスと、を備えて構成されている。これらの第1ワイヤハーネスおよび第2ワイヤハーネスは、放熱体を構成する筒状部材内に挿通状態で収容されている。
【0005】
放熱体は、各ワイヤハーネスに沿って延出して冷媒が挿通される1本の冷却管と、ワイヤハーネスが挿通状態で収容される筒状部材と、を備える。
【0006】
冷却管は、第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスとの間において、各ワイヤハーネスに沿って平行に延び出している。冷却管は円筒形状を有しており、冷却管の内部は図示しない冷媒が挿通される冷却通路となっている。
【0007】
筒状部材は、上方開口部を有し、樋形状で長さ方向に延びる筒状部本体と、該筒状部本体の上方開口部を覆う蓋体と、筒状部本体を、車両等の所望の位置に固定するための固定用脚部と、を備える。
【0008】
熱伝導シートは、第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスの長さ方向に離隔する3箇所において、第1ワイヤハーネスと第2ワイヤハーネスと冷却管の外周面に巻き付けられて密着されている。
【0009】
このような従来のワイヤハーネスの放熱構造は、ワイヤハーネスと冷却管の間に熱伝導シートを介在させてワイヤハーネスと冷却管を相互に押し当てることにより、ワイヤハーネスで生じた熱が冷却管に伝熱され、これにより冷却管への放熱(吸熱)が実現されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
今般、電気自動車やハイブリッド自動車における電動駆動系の大電流化が進みつつあり、これに伴ってワイヤハーネス等の長尺導電部材は大径化する傾向にある。また長尺導電部材の大径化により、車体配索スペースの確保が困難となる場合があった。
【0012】
本発明は、冷却性能を確保しつつ小型化および軽量化を図った電線冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、互いに間隔をあけて延在する一対の電線が設置される電線冷却装置であって、前記一対の電線の間に位置するクランプ本体と、前記一対の電線を前記クランプ本体に押し付ける押付け部材と、を備え、前記クランプ本体は、前記一対の電線が設置可能な一対の曲面と、前記各電線の熱を冷却するため冷媒を循環させる流通路と、を一体に有し、前記流通路は、前記一対の電線が並ぶ方向において、前記一対の曲面の間に設けられているとともに、前記各電線と同じ方向に延在して設けられている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、冷却性能を確保しつつ小型化および軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電線冷却装置を用いて電線が車体パネルに固定された状態を示す断面図である。
【
図3】前記電線冷却装置の内部に位置する流通路に冷媒が循環される様子を示す側面図である。
【
図4】前記電線冷却装置を用いて前記電線を車体パネルに固定する手順を説明するための図である。
【
図5】前記電線冷却装置の作用効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を
図1~5に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る電線冷却装置1を用いて電線Cが車体パネルPに固定された状態を示す断面図である。
図2は電線冷却装置1を示す分解斜視図である。
図3は電線冷却装置1の内部に位置する流通空間20に冷媒が循環される様子を示す断面図である。
図4は電線冷却装置1を用いて電線Cを車体パネルPに固定する手順を説明するための図である。
図5は電線冷却装置1の作用効果を説明するための図である。
【0017】
本実施形態の電線冷却装置1は、
図1に示すように、一対の電線C、Cの軸方向の所定位置において、当該一対の電線C、Cを冷却するものであり、一対の電線C、Cが設置されるクランプ本体2と、各電線Cをクランプ本体2に押し付ける一対のカバー3、3(押付け部材)と、を備える。また電線冷却装置1は、クランプ本体2に各電線Cおよび各カバー3が設置された状態で、該クランプ本体2、各電線C、及び各カバー3は、一対の結束バンド11、11によって結束されて車体パネルPに固定される。
図1、5では、一対の電線C、C、ボルトB、ナットN、及び車体パネルPの断面を示すハッチングは省略されている。
【0018】
本実施形態では、電線Cの軸方向をX方向(前後方向)とし、X方向に直交する2方向をそれぞれ左右方向Y及び高さ方向Zとする。高さ方向Zのうち一方を「上方Z1」と記し、他方を「下方Z2」と記す場合がある。
【0019】
クランプ本体2は、
図1、2に示すように、各電線Cの周面が接触可能な一対の曲面4a、4a(
図1に示す)を有し、内部に冷媒が循環される流通空間20(流通路)が設けられた金属製の電線設置部4と、該電線設置部4から車体パネルPに沿って延びて形成された帯板状の板延在部5(
図1に示す)と、を備える。
図2では、板延在部5は省略されている。
【0020】
この電線設置部4は、内部に流通空間20を有して構成されているとともに、流通空間20に連通するように、電線設置部4における前後方向Xの両側に延出する一対の配管6A、6Bが連続して設けられている。以下では、一対の配管6A、6Bのうち、前後方向Xの一方(上流側)に位置する配管を「上流側配管6A」と記し、前後方向Xの一方(下流側)に位置する配管を「下流側配管6B」と記す場合がある。また流通空間20は、電線設置部4の内部において、該電線設置部4の前後方向Xに連続して設けられている。流通空間20は、本実施形形態では前後方向Xの全長に亘って径寸法が一定となるように形成されている。
【0021】
電線設置部4は、
図2、3に示すように、内部に流通空間20(
図3に示す)を有する一対の分割部4A、4Bを有して構成されている。即ち、電線設置部4は2部材で構成されている。流通空間20は、一対の分割部4A、4Bの一方の分割部4Aから他方の分割部4Bに亘って設けられている。
【0022】
各分割部4A、4Bは、
図2、3に示すように、上面40、下面41、前後方向Xに位置する平坦な面から構成された一対の第1側面42、42、左右方向Yに位置するとともに、各電線Cを設置可能な曲面4aを有する第2側面43、及び該第2側面43に背向して互いに当接する当接面44と、を有する略板状に形成されている。
【0023】
また各分割部4A、4Bの上面40には、
図2、3に示すように、後述する各カバー3に設けられた上側係止部33に係止される上側係止受け部401と、後述する各結束バンド設置部10の一部を構成する一対の上側凹溝402、402と、が設けられている。
【0024】
上側係止受け部401は、
図2、3に示すように、上面40の前後方向Xの中央部に設けられている。上側係止受け部401は、電線設置部4の上面40に設けられた凹みの底から突出する凸部40Aを有して構成されている。このような上側係止受け部401は、カバー3に設けられた上側係止部33のコ字型の内部に凸部40Aを位置付けることにより上側係止部33を係止するように構成されている。
【0025】
一対の上側凹溝402、402は、
図2、3に示すように、上面40の前後方向Xの両端部に設けられている。各上側凹溝402は、各下側凹溝412と上下方向Zに対向する位置に設けられている。また各上側凹溝402は、所定の幅寸法(結束バンド11と略同じ幅寸法)を有して構成されているとともに、上面40の左右方向Yの各端縁を切り欠いて凹溝状に左右方向Yに延在して構成されている。
【0026】
また各分割部4A、4Bの下面41には、それぞれ、
図2、3に示すように、前後方向Xの中央部に位置するとともに後述する板延在部5を収容する板収容室410と、該板収容室410の前後方向Xの両側に位置して、後述するカバー3に設けられた一対の下側係止部32に係止される一対の下側係止受け部411と、一対の下側係止受け部411の左右方向Yの両側にあって、後述する各結束バンド設置部10の一部を構成する一対の下側凹溝412、412と、が設けられている。
【0027】
一対の下側係止受け部411は、
図2、3に示すように、左右方向Yに並んで設けられている。各下側係止受け部411は、第1分割部4Aおよび第2分割部4Bそれぞれの下面41に形成された凹みの底から突出する凸部41A(
図3に示す)を有して構成されている。このような各下側係止受け部411は、カバー3に設けられた下側係止部32のコ字型の内部に凸部41Aを位置付けることにより下側係止部32を係止するように構成されている。
【0028】
各下側凹溝412は、
図2、3に示すように、所定の幅寸法(結束バンド11と略同じ幅寸法)を有して構成されているとともに、下面41の左右方向Yの各端縁を切り欠いて凹溝状に左右方向Yに延在して構成されている。
【0029】
また各分割部4A、4Bの第2側面43は、
図2に示すように、各電線Cを設置可能な曲面4aと、該曲面4aの上方Z1および下方Z2それぞれに連続する一対の平坦面431、431と、を備える。
【0030】
また各分割部4A、4Bの当接面44は、
図3に示すように、流通空間20を構成する凹溝状の弧状面441(周面)と、該弧状面441の上方Z1および下方Z2に連続する一対の平坦面442、442と、を備える。この弧状面441は、本実施形形態では、前後方向Xの全長に亘って、曲率が一定となるような円弧面から構成されている。また、弧状面441には、
図3に示すように、冷媒に対する接触面積を増加させるための凹部44A(凹凸形状)が設けられている。
【0031】
上流側配管6Aは、
図3に示すように、樋状に形成された一対の上流側分割部61、61を有し、これらの上流側分割部61、61によって円筒状に構成されている。各上流側分割部61は、各分割部4A、4Bの弧状面441における前後方向Xの一端に連続する上流側第1分割部611と、左右方向Yにおいて、該上流側第1分割部611の各分割部4A、4Bから離れた側に連続する上流側第2分割部612と、を備える。上流側第1分割部611は、前後方向Xの一方(上流側)に向かうにしたがって、径寸法が徐々に小さくなるような樋状に形成され、各上流側第2分割部612は、前後方向Xの全長に亘って、径寸法が一定となるような樋状に形成されている。
【0032】
下流側配管6Bは、
図3に示すように、樋状に形成された一対の下流側分割部62、62を有し、これらの下流側分割部62、62によって円筒状に構成されている。各下流側分割部62は、各分割部4A、4Bの弧状面441における前後方向Xの他端に連続する下流側第1分割部621と、左右方向Yにおいて、該下流側第1分割部621の各分割部4A、4Bから離れた側に連続する下流側第2分割部622と、を備える。下流側第1分割部621は、前後方向Xの他方(下流側)に向かうにしたがって、径寸法が徐々に小さくなるような樋状に形成され、各下流側第2分割部622は、前後方向Xの全長に亘って、径寸法が一定となるような樋状に形成されている。
【0033】
このような電線設置部4は、該電線設置部4を構成する一対の分割部4A、4Bと、上流側配管6Aを構成する一対の上流側分割部61、61と、下流側配管6Bを構成する一対の下流側分割部62、62と、を備える。また、本実施形態では、分割部4A(分割部4B)、上流側分割部61、及び下流側分割部62は連続する一部材から構成されている。
【0034】
板延在部5は、
図4に示すように、合成樹脂から構成されている。板延在部5は、帯板状に形成されているとともに、電線設置部4の板収容室410に収容された状態で、例えばネジ止めされて、車体パネルPに沿って左右方向Yに延在して設けられている。この板延在部5は、左右方向Yに延びて形成された帯板状の延在部本体51と、左右方向Yにおける該延在部本体51から離れた端部に設けられてボルトBの軸部が挿通されるボルト挿通孔52と、を備える。
【0035】
一対のカバー3、3は、
図2に示すように、各電線Cを覆うことが可能な半円筒状に形成されたカバー本体31と、該カバー本体31に設けられているとともに、電線設置部4に設けられた下側係止受け部411を係止可能な一対の下側係止部32、32と、該カバー本体31に設けられているとともに、電線設置部4に設けられた上側係止受け部401を係止可能な上側係止部33と、後述する各結束バンド設置部10の一部を構成する一対のバンド設置部本体34、34と、を備える。カバー本体31は、前後方向Xを延在方向(筒の軸方向)とするように構成されている。
【0036】
一対の下側係止部32、32は、カバー本体31の径方向の下端縁において、前後方向Xの中央部を挟んだ両側に設けられ、上側係止部33は、カバー本体31の径方向の上端縁において、前後方向Xの中央部に設けられている。
【0037】
一対のバンド設置部本体34、34は、クランプ本体2の電線設置部4の下側凹溝412および上側凹溝402に連続する位置に設けられたバンド設置面341と、該バンド設置面341の前後方向Xの両端部に設けられた一対の突条部342、342と、を備えて構成されている。各突条部342は、カバー本体31の周方向に延在して設けられて、バンド設置面341に設置された結束バンド11の前後方向Xの位置ずれを規制するように構成されている。このような各バンド設置部本体34、電線設置部4に設けられた各下側凹溝412、及び電線設置部4に設けられた各上側凹溝402は、各結束バンド設置部10を構成する。
【0038】
各結束バンド11は、
図1に示すように、クランプ本体2および一対のカバー3、3に巻かれる紐状のバンド本体11Aと、該バンド本体11Aの一端部に設けられてバンド本体11Aの他端を挿入させて係止する結束部11Bと、を備えて構成されている。
【0039】
次に、このような電線冷却装置1を車体パネルPに固定する手順について
図4を参照して説明する。
【0040】
まず、
図4に示すように、一対の分割部4A、4Bにおける当接面44同士を重ねて、内部に流通空間20が形成された電線設置部4を形成する。この後、電線設置部4の下面41に設けられた板収容室410に板延在部5を収容して、板延在部5を電線設置部4の下面41にビス固定する。このようにしてクランプ本体2を形成する。
【0041】
続いて、一対の電線C、Cの所定位置をクランプ本体2の電線設置部4の一対の曲面4a、4aに近付けて設置し、一対のカバー3、3を一対の電線C、Cに近付ける。これによりカバー3の下側係止部32が電線設置部4の下側係止受け部411に近付いて、下側係止部32が下側係止受け部411に係止される。また、カバー3の上側係止部33が電線設置部4の上側係止受け部401に近付いて、上側係止部33が上側係止受け部401に係止される。このようにして、各カバー3が電線設置部4に設置される。この際、各カバー3によって、各電線Cは電線設置部4に押し付けられている。
【0042】
続いて、各結束バンド11のバンド本体11Aを、結束バンド設置部10の上側凹溝402、バンド設置部本体34、下側凹溝412に巻き付けて締め付ける。この状態で、バンド本体11Aの他端を結束部11Bに挿入させて係止する。これにより、各電線Cが各カバー3を介して電線設置部4に押し付けられ、各電線Cが電線設置部4の各曲面4aに接触して、各電線Cに発生した熱が各曲面4aに伝導されるようになる。
【0043】
この後、車体パネルPから突出するボルトBの軸部に、ボルト挿通孔52を挿通させて、板延在部5を、ナットNを用いて車体パネルPに固定する。この後、上流側配管6A、及び下流側配管6Bを、冷却水(冷媒)が循環する不図示の循環回路に接続する。このようにして電線冷却装置1の車体パネルPへの固定が完了する。
【0044】
これによれば、本実施形態の電線冷却装置1は、
図5に示すように、電線Cに大電流が通電されることにより生じる熱が、クランプ本体2を介して、流通空間20(流通路)を循環する冷却水(冷媒)により冷却されることとなる。
【0045】
上述した実施形態によれば、互いに間隔をあけて延在する一対の電線C、Cが設置される電線冷却装置1であって、一対の電線C、Cの間に位置するクランプ本体2と、一対の電線C、Cをクランプ本体2に押し付ける押付け部材と、を備え、クランプ本体2は、一対の電線C、Cが設置可能な一対の曲面4a、4aと、各電線の熱を冷却するため冷媒を循環させる流通空間20(流通路)と、を一体に有し、流通路は、左右方向Y(一対の電線C、Cが並ぶ方向)において、一対の曲面4a、4aの間に設けられているとともに、前後方向X(各電線Cと同じ方向)に延在して設けられている。これによれば、電線Cに大電流が通電されることにより生じる熱が、電線設置部4を介して、流通空間20の内部を循環する冷媒によって冷却されることとなる。また、従来技術の如く、冷却管が独立して設けられている場合に対して、本実施形態における流通空間20は、クランプ本体2の内部において、一対の電線C、Cが設置される一対の曲面4a、4aと一体に設けられていることにより、冷却性能を確保しつつ小型化および軽量化を図ることができる。これにより、限られた車体配索スペースへの配索を可能とすることができる。
【0046】
また、流通空間20(流通路)を構成する弧状面441(周面)は、冷媒に対する接触面積を増加させるための凹部44A(凹凸形状)を有している。これによれば、電線Cに大電流が通電されることにより生じる熱が、効率よく、流通空間20の内部を循環する冷媒によって冷却されることとなる。即ち、より一層、冷却性能の向上が図られる。
【0047】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0048】
前記実施形態では、電線冷却装置1は、一対の電線C、Cが設置されるクランプ本体2と、各電線Cをクランプ本体2に押し付ける一対のカバー3、3(押付け部材)と、を備え、クランプ本体2に各電線Cおよび各カバー3が設置された状態で、該クランプ本体2、各電線C、及び各カバー3は、一対の結束バンド11、11によって結束されて車体パネルPに固定されるが本発明はこれに限定されるものではない。電線冷却装置1は、車体パネルPに固定されなくともよい。その場合には、板延在部5は省略されていてもよい。
【0049】
前記実施形態では、クランプ本体2において、電線設置部4は、一対の分割部4A、4Bを有し、流通空間20(流通路)は、一対の分割部4A、4Bの一方の分割部4Aから他方の分割部4Bに亘って設けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。クランプ本体2において、電線設置部は、ひとつの部材から構成されているとともに、内部に流通空間20が形成されるように構成されていればよい。
【0050】
また前記実施形態では、板延在部5は合成樹脂から構成されているが本発明はこれに限定されるものではない。板延在部は金属から構成されていてもよい。板延在部の材質は、電線サイズ等の板延在部に加わる荷重により、電線設置部4を適切に車体パネルPに固定するという機能に基づき、適宜選択される。
【0051】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 電線冷却装置
2 クランプ本体
20 流通空間(流通路)
3、3 カバー(押付け部材)
4A、4B 一対の分割部
4a、4a 一対の曲面
441 弧状面(周面)
44A 凹部(凹凸形状)
C、C 一対の電線
X 前後方向(各電線と同じ方向)
Y 左右方向(一対の電線が並ぶ方向)