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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015195
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20240125BHJP
   B68G 7/052 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B60N2/68
B68G7/052 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205230
(22)【出願日】2023-12-05
(62)【分割の表示】P 2021097000の分割
【原出願日】2017-02-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】溝井 健介
(57)【要約】
【課題】部材をクッションフレームに取り付ける際の工数を減らすことができる乗物用シートを提供する。
【解決手段】乗物用シートは、左右に離間して配置された左右のサイドフレーム11を有するクッションフレームF1と、左右のサイドフレーム11の間に配置されてクッションパッドを支持する支持ワイヤ20と、樹脂からなり、サイドフレーム11の後端部の少なくとも左右方向内側を覆う左右のカバー部材80と、支持ワイヤ20の左右両側に配置されて支持ワイヤ20とともにクッションパッドを支持する左右のサイド支持部材30とを備える。サイド支持部材30は、カバー部材80に設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に離間して配置された左右のサイドフレームを有するクッションフレームと、
前記左右のサイドフレームの間に配置されてクッションパッドを支持するパッド支持部材と、
前記クッションフレームに被せられた前記クッションパッドと、
前記クッションパッドに被せられた表皮材と、
前記パッド支持部材の左右両側に配置されて前記パッド支持部材とともに前記クッションパッドを支持する左右のサイド支持部材と、を備え、
前記クッションパッドは、前記表皮材を吊り込むための吊り込み溝を有し、
前記サイド支持部材は、
左右方向において、前記吊り込み溝をまたぐように配置され、
左右方向において、前記吊り込み溝より内側の部分が、前記吊り込み溝より外側の部分よりも大きいことを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの乗物に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートとして、例えば、特許文献1には、クッションフレームと、クッションフレームの内側に架け渡されたS字ばねと、S字ばねとともにパッドを支持する左右の傾斜板とを備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-117406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の乗物用シートは、左右の傾斜板を他の部材とは別にクッションフレームに配置してねじにより固定する必要があったので、部材をクッションフレームに取り付ける際の工数が多いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、部材をクッションフレームに取り付ける際の工数を減らすことができる乗物用シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、長時間座っても疲労感を少なくすることを目的とする。
また、本発明は、人がシートに座ったときに快適な座り心地を実現することを目的とする。
また、本発明は、シートを製造する際の工数を減らすことを目的とする。
また、本発明は、シートの軽量化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明の乗物用シートは、左右に離間して配置された左右のサイドフレームを有するクッションフレームと、前記左右のサイドフレームの間に配置されてクッションパッドを支持するパッド支持部材と、樹脂からなり、前記サイドフレームの後端部の少なくとも左右方向内側を覆う左右のカバー部材と、前記パッド支持部材の左右両側に配置されて前記パッド支持部材とともに前記クッションパッドを支持する左右のサイド支持部材と、を備え、前記サイド支持部材は、前記カバー部材に設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、カバー部材をサイドフレームに取り付けることで、カバー部材とサイド支持部材の両方をクッションフレームに取り付けることができるので、カバー部材とは別にサイド支持部材を取付位置に配置したり、サイド支持部材をねじで固定したりする必要がなくなる。これにより、部材をクッションフレームに取り付ける際の工数を減らすことができる。
【0008】
前記した乗物用シートにおいて、前記左右のサイド支持部材は、着座者のヒップポイントの左右に配置されており、各サイド支持部材は、前後方向において前記ヒップポイントを含む範囲に配置されている構成とすることができる。
【0009】
これによれば、シートに人が座ると、左右のサイド支持部材によって着座者の臀部および大腿部の側部を支持することができるので、坐骨周辺の圧力が相対的に下がり、坐骨周辺と臀部および大腿部の全体で着座者をバランス良く支持することができる。これにより、着座者の坐骨周辺の血行が悪くなりにくくなるので、長時間座っても疲労感を少なくすることができる。
【0010】
前記した乗物用シートにおいて、前記サイド支持部材は、前記サイドフレームよりも左右方向内側に位置する支持面を有し、前記支持面は、左右方向外側にいくほど上に位置している構成とすることができる。
【0011】
これによれば、前後方向から見てパッド支持部材と左右のサイド支持部材の支持面とによって人体の形状に沿った凹形状が形成されるので、人がシートに座ったときに快適な座り心地を実現することができる。
【0012】
前記した乗物用シートにおいて、前記サイド支持部材は、前記カバー部材と一体に形成されている構成とすることができる。
【0013】
これによれば、シートを製造する際の工数を減らすことができる。
【0014】
前記した乗物用シートにおいて、前記カバー部材は、前記サイドフレームの後端部の左右方向内側を覆うインナカバー部を有し、前記サイド支持部材は、前記サイドフレームよりも左右方向内側に位置し、前記インナカバー部に隣接して設けられた支持部を有し、前記インナカバー部と前記支持部との間に、左右方向内側の縁から外側に向けて切れ込んだスリットを有する構成とすることができる。
【0015】
これによれば、カバー部材とサイド支持部材が一体に形成された構成で、インナカバー部と支持部がスリットによって分離されることになるので、支持部が撓みやすくなり、人がシートに座ったときに快適な座り心地を実現することができる。
【0016】
前記した乗物用シートにおいて、前記支持部は、前後方向の幅が10cm以上である構成とすることができる。
【0017】
これによれば、荷重を幅の大きい支持部で支持することができるので、人がシートに座ったときにより快適な座り心地を実現することができる。
【0018】
前記した乗物用シートにおいて、前記サイド支持部材は、前記サイドフレームよりも左右方向内側に位置する板状の支持部を有し、前記支持部は、少なくとも一部の前後方向の幅が、左右方向内側にいくほど大きくなっている構成とすることができる。
【0019】
これによれば、支持部の左右方向外側の前後幅が相対的に小さくなるので、支持部を適度に撓ませることが可能となり、また、支持部の左右方向内側の前後幅が相対的に大きくなるので、荷重を幅の大きい部分で支持することができる。これにより、人がシートに座ったときに快適な座り心地を実現することができる。
【0020】
前記した乗物用シートにおいて、前記クッションフレームは、前記左右のサイドフレームを連結する前後のクロスメンバを有し、前記パッド支持部材は、左右に離間して配置され、前記前後のクロスメンバに架設された左右の線状部材を含み、前記サイド支持部材は、左右方向内側の端部が、前記線状部材に連結されている構成とすることができる。
【0021】
これによれば、サイド支持部材によって線状部材が下方へ沈み込みすぎるのを抑制できるので、人がシートに座ったときに快適な座り心地を実現することができる。
【0022】
前記した乗物用シートにおいて、前記サイド支持部材は、前記サイドフレームよりも左右方向内側に位置する支持部を有し、前記支持部は、貫通穴を有する構成とすることができる。
【0023】
これによれば、サイド支持部材を軽量化できるので、サイド支持部材を備えるシートの軽量化を図ることができる。また、他の部材を貫通穴を通して配置することが可能となるので、シート内の限られたスペースを有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、部材をクッションフレームに取り付ける際の工数を減らすことができる。
【0025】
また、本発明によれば、左右のサイド支持部材を着座者のヒップポイントの左右に配置し、各サイド支持部材を前後方向においてヒップポイントを含む範囲に配置することで、長時間座っても疲労感を少なくすることができる。
【0026】
また、本発明によれば、サイド支持部材の支持面を左右方向外側にいくほど上に位置する構成とすることで、人がシートに座ったときに快適な座り心地を実現することができる。
【0027】
また、本発明によれば、サイド支持部材をカバー部材と一体に形成することで、シートを製造する際の工数を減らすことができる。
【0028】
また、本発明によれば、カバー部材のインナカバー部とサイド支持部材の支持部との間にスリットを設けることで、人がシートに座ったときに快適な座り心地を実現することができる。
【0029】
また、本発明によれば、支持部の前後方向の幅を10cm以上とすることで、人がシートに座ったときにより快適な座り心地を実現することができる。
【0030】
また、本発明によれば、サイド支持部材の支持部の少なくとも一部の前後方向の幅を左右方向内側にいくほど大きくすることで、人がシートに座ったときに快適な座り心地を実現することができる。
【0031】
また、本発明によれば、パッド支持部材がクッションフレームの前後のクロスメンバに架設された左右の線状部材を含む構成で、サイド支持部材の左右方向内側の端部を線状部材に連結することで、人がシートに座ったときに快適な座り心地を実現することができる。
【0032】
また、本発明によれば、サイド支持部材の支持部に貫通穴を設けることで、シートの軽量化を図ることができる。また、他の部材を貫通穴を通して配置可能となるので、シート内の限られたスペースを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る乗物用シートとしての車両用シートの斜視図である。
図2】シートクッションに内蔵されるクッションフレームの斜視図である。
図3】シートクッションの断面図である。
図4】クッションフレームとカバー部材を後から見た図である。
図5】クッションパッドを上から見た図である。
図6】人が座った状態のシートクッションの断面図である。
図7】第1の変形例に係るサイド支持部材を備えるクッションフレームの斜視図である。
図8】第2の変形例に係るサイド支持部材を備えるシートクッションの断面図(a),(b)である。
図9】第3の変形例に係るサイド支持部材を備えるクッションフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照しながら、発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、乗物用シートに座った者(着座者)から見た、前後、左右、上下を基準とする。
図1に示すように、本実施形態の乗物用シートは、自動車に搭載される車両用シートSとして構成されており、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを備えている。
【0035】
シートクッションS1の内部には、図2に示すようなクッションフレームF1が内蔵されている。クッションフレームF1は、シートクッションS1の骨格を構成する部材である。図3に示すように、シートクッションS1は、クッションフレームF1に、ウレタンフォームなどからなるクッションパッドC1と、布地や皮革などからなる表皮材U1を被せることで構成されている。
【0036】
図2に示すように、クッションフレームF1は、左右のサイドフレーム11と、前後のクロスメンバの一例としてのフロントフレーム12およびリアフレーム13と、パンフレーム14とを有している。
【0037】
左右のサイドフレーム11は、金属板から形成されたフレームであり、左右に離間して配置されている。各サイドフレーム11は、略前後方向に延びるサイドフレーム本体11Aと、サイドフレーム本体11Aの後端部から略上方に延びるバック取付部11Bとを有し、周縁部が左右方向内側に延出した断面形状をなしている。バック取付部11Bには、シートバックS2の骨格を構成する図示しないバックフレームがリクライニング機構を介して回動可能に取り付けられる。なお、シートバックS2は、シートクッションS1と同様に、バックフレームに、ウレタンフォームなどからなるパッド材と、表皮材を被せることで構成されている。
【0038】
フロントフレーム12とリアフレーム13は、金属製のパイプ材から形成されたフレームであり、前後に離間して配置されている。フロントフレーム12は、左右のサイドフレーム11(サイドフレーム本体11A)の前部同士を連結しており、リアフレーム13は、左右のサイドフレーム11(サイドフレーム本体11A)の後部同士を連結している。
パンフレーム14は、金属板から形成されたフレームであり、左右のサイドフレーム11の前端部同士を連結するように配置されている。
【0039】
左右のサイドフレーム11の間には、クッションパッドC1(図3参照)を下から支持するパッド支持部材の一例として、3つの支持ワイヤ20が配置されている。各支持ワイヤ20は、フロントフレーム12とリアフレーム13に架設されて前後方向に延びるように配置されている。支持ワイヤ20は、金属製の線材から形成されている。支持ワイヤ20の前端は、前斜め上方に屈曲して延びた後、フロントフレーム12の外周面に沿うように略円弧状に曲げられている。また、支持ワイヤ20の後端は、上方に屈曲して延びた後、リアフレーム13の外周面に沿うように略円弧状に曲げられている。
【0040】
支持ワイヤ20は、1つの第1支持ワイヤ21と、左右の線状部材の一例としての2つの第2支持ワイヤ22とを含んでいる。第1支持ワイヤ21は、クッションフレームF1の内側の左右方向中央に配置されている。また、左右の第2支持ワイヤ22は、クッションフレームF1の内側で第1支持ワイヤ21の左右両側に1つずつ配置されている。言い換えると、左右の第2支持ワイヤ22は、左右に離間して配置されており、その間に第1支持ワイヤ21が配置されている。
【0041】
本実施形態において、3つの支持ワイヤ20は、前後に並ぶ複数のワイヤ連結部材50によって連結されている。ワイヤ連結部材50は、樹脂からなる略板状の部材である。各ワイヤ連結部材50は、左右方向中央部が、第1支持ワイヤ21の一部の全周を覆った状態で、第1支持ワイヤ21の一部を包むように設けられている。また、各ワイヤ連結部材50は、左右方向両端部が、第2支持ワイヤ22の一部の全周を覆った状態で、第2支持ワイヤ22の一部を包むように設けられている。これにより、第1支持ワイヤ21は、各ワイヤ連結部材50の左右方向中央部を貫通するように配置され、第2支持ワイヤ22は、各ワイヤ連結部材50の左右方向両端部を貫通するように配置されている。
【0042】
なお、ワイヤ連結部材50には、上下に貫通した略矩形の貫通孔(符号省略)が形成されている。本実施形態の車両用シートSは、ワイヤ連結部材50の貫通孔に、ワイヤハーネスなどを留めるためのクリップを係合させることで、ワイヤハーネスなどを取付可能となっている。言い換えると、ワイヤ連結部材50は、ワイヤハーネスなどが取り付けられる取付座となっている。
【0043】
3つの支持ワイヤ20の前部には、それぞれ被覆部材60が配置されている。被覆部材60は、樹脂からなり、支持ワイヤ20の前端の略円弧状に曲げられた部分を覆って包むように設けられて支持ワイヤ20と一体に形成されている。被覆部材60は、左右方向にわたって切れ目が形成されたような略C字の筒状をなしている。各支持ワイヤ20の前端は、被覆部材60に覆われた状態でフロントフレーム12に掛止されている。
【0044】
また、3つの支持ワイヤ20の後部には、リア支持部材70が配置されている。リア支持部材70は、支持ワイヤ20などとともにクッションパッドC1を支持する部材であり、樹脂からなる。リア支持部材70は、左右の第2支持ワイヤ22を含む支持ワイヤ20の後端部を覆って包むように設けられて支持ワイヤ20と一体に形成されている。リア支持部材70は、リア支持部71と、掛止部72とを有している。
【0045】
リア支持部71は、後側のクロスメンバであるリアフレーム13よりも前側に位置する板状の部分であり、左右方向から見て略L字形状をなしている。
掛止部72は、支持ワイヤ20の後端を覆う部分であり、左右方向から見て略U字形状をなしている。
リア支持部71と掛止部72の後端部とは、左右に延びており、左右の第2支持ワイヤ22を含む3つの支持ワイヤ20の後端部同士を連結している。
【0046】
各支持ワイヤ20の後端は、リア支持部材70の掛止部72に覆われた状態でリアフレーム13に掛止されている。本実施形態の車両用シートSにおいては、金属製の支持ワイヤ20の前端が樹脂製の被覆部材60に覆われた状態で金属製のフロントフレーム12に掛止され、後端が樹脂製の掛止部72に覆われた状態で金属製のリアフレーム13に掛止されているので、金属製の部材同士の接触音が発生しないようになっている。
【0047】
以上説明した、金属からなる支持ワイヤ20と、樹脂からなるワイヤ連結部材50、被覆部材60およびリア支持部材70とは、例えば、インサート成形により一体に形成されている。
【0048】
各サイドフレーム11の後端部は、例えば、人が金属製のサイドフレーム11に触れることができないように、それぞれカバー部材80によって覆われている。左右のカバー部材80は、樹脂からなり、それぞれインナカバー部81と、アッパカバー部82と、リアカバー部83とを有している。
【0049】
インナカバー部81は、サイドフレーム11の後端部の左右方向内側を覆う部分である。インナカバー部81は、バック取付部11Bの下側の位置であって、サイド支持部材30の後側の位置からサイドフレーム本体11Aの後縁部までの範囲にわたるように配置されている。
【0050】
アッパカバー部82は、サイドフレーム11の後端部のバック取付部11Bよりも前側の部分を上側から覆う部分であり、インナカバー部81の上端の前側部分から左右方向外側に延びるように設けられている。本実施形態において、アッパカバー部82は、左右方向外側の端部がサイドフレーム11の側面に沿うように下方に延びていることで略L字の断面形状をなしており、インナカバー部81とともにフック形状を形成している。カバー部材80は、インナカバー部81およびアッパカバー部82によって形成されるフック形状部分がサイドフレーム11の上端部に上から引っ掛かることにより、サイドフレーム11に係合している。
【0051】
リアカバー部83は、図4に示すように、サイドフレーム11の後端を後側から覆う部分であり、インナカバー部81の後端から左右方向外側に延びるように設けられている。
【0052】
図2に示すように、支持ワイヤ20の左右両側には、サイド支持部材30が配置されている。左右のサイド支持部材30は、支持ワイヤ20やリア支持部材70などとともにクッションパッドC1(図3参照)を支持する部材であり、樹脂からなる。各サイド支持部材30は、左右の対応するカバー部材80に設けられている。本実施形態において、サイド支持部材30は、樹脂の一体成形により、カバー部材80の一部分としてカバー部材80と一体に形成されている。詳しくは、サイド支持部材30は、アッパカバー部82の前端部の左右方向内側の端から左右方向内側に向けて延出するように形成されている。
【0053】
図5に示すように、左右のサイド支持部材30は、着座者のヒップポイントHPの左右に1つずつ配置されている。各サイド支持部材30は、前後方向においてヒップポイントHPを含む範囲に配置されている。言い換えると、サイド支持部材30は、ヒップポイントHPの左右両側で、上下方向から見てヒップポイントHPを挟むように配置されている。なお、本明細書において、ヒップポイントHPは、SAE J-826に基づく3Dマネキンをシートに着座させたときのヒップポイントの位置である。図2に示すように、各サイド支持部材30は、支持部の一例としてサイド支持部31と、延出部35とを有している。
【0054】
サイド支持部31は、サイドフレーム11よりも左右方向内側に位置する板状の部分であり、インナカバー部81の前側に隣接して設けられている。言い換えると、本実施形態において、サイド支持部材30が一体に形成されたカバー部材80は、インナカバー部81とサイド支持部31との間にスリット81Aを有しており、このスリット81Aによってサイドフレーム11の左右内側に位置する部分がインナカバー部81とサイド支持部31とに分離されている。スリット81Aは、カバー部材80の、サイドフレーム11の左右内側に位置する部分の左右方向内側の縁から左右方向外側に向けて、具体的には、インナカバー部81の下縁81Bから上側に向けて切れ込むように形成されている。
【0055】
サイド支持部31は、左右方向外側にいくほど上に位置するように傾斜した状態で配置されている。言い換えると、サイド支持部31は、アッパカバー部82の前端部の左右方向内側の端から左右方向内側の斜め下方に向けて延出している。各サイド支持部31は、前後方向の幅が、左右方向内側にいくほど大きくなる略台形状をなしている(図5も参照)。サイド支持部31は、一例として、前後方向の幅が10cm以上であることが望ましい。詳しくは、サイド支持部31は、前後方向の幅が最も小さい上端の幅が10cm以上であることが望ましい。
【0056】
各サイド支持部31は、上側の面である第1支持面31Aを有している。第1支持面31Aは、支持面の一例である。本実施形態において、第1支持面31Aは、板状のサイド支持部31が左右外側にいくほど上に位置するように傾斜して配置されていることで、左右方向外側にいくほど上に位置する傾斜面となっている。
【0057】
延出部35は、サイド支持部31の下端から左右方向内側に延びるように設けられている。各延出部35は、左右の対応する第2支持ワイヤ22の上に載るように配置されている。
【0058】
図5に示すように、クッションパッドC1は、中央部C10と、中央部C10の左右両側に設けられて中央部C10よりも上側に張り出した左右の側部C20とを有している。また、クッションパッドC1は、表皮材U1(図3参照)を吊り込むための吊り込み溝C30を有している。
【0059】
吊り込み溝C30は、前後方向に延びる左右の第1溝C31と、左右方向に延びる第2溝C32および第3溝C33とを含んでいる。
左右の第1溝C31は、ヒップポイントHPの左右両側において、中央部C10と各側部C20との境界部に沿って延びるように形成されている。
第2溝C32は、ヒップポイントHPの前側において、左右の第1溝C31の前後方向中央部付近同士をつなぐように形成されている。
第3溝C33は、ヒップポイントHPの後側において、左右の第1溝C31の後部同士をつなぐように形成されている。
【0060】
また、クッションパッドC1には、表皮材U1を吊り込み溝C30内に吊り込むための図示しない吊りワイヤがインサート成形により埋設されている。吊りワイヤは、吊り込み溝C30に沿うように配置され、吊り込み溝C30の底部に形成された複数の穴C50から部分的に露出している。表皮材U1は、当該表皮材U1に設けられた図示しないフックを、吊りワイヤの穴C50から露出した部分に係合させることでクッションパッドC1に留められている。
【0061】
サイド支持部材30のサイド支持部31は、左右方向において、対応する第1溝C31をまたぐように、第1溝C31の下に配置されている。すなわち、サイド支持部31と第1溝C31とは、交差するように配置されている。また、サイド支持部31は、前後方向において、第2溝C32と第3溝C33の間の位置に配置されている。
【0062】
次に、以上のように構成された車両用シートSの作用効果について説明する。
図6に示すように、車両用シートSに人(着座者P)が座ると、ヒップポイントHPの左右両側でヒップポイントHPを挟むように配置された左右のサイド支持部材30のサイド支持部31によって着座者Pの臀部および大腿部の側部を左右外側から挟むように支持することができる。これにより、サイド支持部31が配置されていない場合と比較して、着座者Pの臀部および大腿部の側部をしっかりと支えることができる。その結果、坐骨P1(正確には、坐骨P1の最も下に突出したところ。以下同様。)の周辺の圧力が相対的に下がるので、坐骨P1の周辺と臀部および大腿部の全体で着座者Pをバランス良く支持することができる。これにより、着座者Pの坐骨P1の周辺の血行が悪くなりにくくなるので、長時間座っても着座者Pの疲労感を少なくすることができる。
【0063】
また、サイド支持部材30がカバー部材80に設けられているので、カバー部材80をサイドフレーム11に取り付けることで、カバー部材80とサイド支持部材30の両方をクッションフレームF1に取り付けることができる。これにより、カバー部材とは別にサイド支持部材を取付位置に配置したり、サイド支持部材をねじで固定したりする必要がなくなるため、部材をクッションフレームF1に取り付ける際の工数を減らすことができる。
【0064】
また、サイド支持部材30の第1支持面31Aが左右外側にいくほど上に位置する傾斜面なので、前後方向から見て、支持ワイヤ20と左右の第1支持面31Aとによって人体(着座者P)の形状に沿った凹形状を形成することができる。これにより、着座者Pが車両用シートSに座ったときに、着座者Pを安定して支持することができるので、快適な座り心地を実現することができる。
【0065】
また、サイド支持部材30がカバー部材80と一体に形成されているので、部材をクッションフレームF1に取り付ける前の工程で別部品として形成されたサイド支持部材とカバー部材を組み付ける場合と比較して、車両用シートSを製造する際の工数を減らすことができる。
【0066】
また、カバー部材80とサイド支持部材30が一体に形成された構成で、インナカバー部81とサイド支持部31がスリット81Aによって分離されているので、インナカバー部とサイド支持部が前後でつながっている場合と比較して、サイド支持部31が撓みやすくなる。これにより、着座者Pが車両用シートSに座ったときに、適度なクッション性を持たせることができるので、快適な座り心地を実現することができる。
【0067】
また、サイド支持部31の前後方向の幅が10cm以上であるので、荷重を幅の大きいサイド支持部31で支持することができる。これにより、着座者Pが車両用シートSに座ったときに、着座者Pを安定して支持することができるので、快適な座り心地を実現することができる。
【0068】
また、サイド支持部31の前後方向の幅が左右内側にいくほど大きくなっていることで、サイド支持部31の左右外側の前後幅が相対的に小さくなり、サイド支持部31を上下に適度に撓ませることが可能となるため、適度なクッション性を持たせることができる。また、サイド支持部31の左右内側の前後幅が相対的に大きくなるので、荷重を幅の大きい部分で支持することができるため、着座者Pを安定して支持することができる。これにより、着座者Pが車両用シートSに座ったときにより快適な座り心地を実現することができる。なお、サイド支持部31の前後幅が最も小さい上端の前後幅を10cm以上とすることで、サイド支持部31の、撓む際に大きな荷重がかかる上端付近の強度を向上させることができる。
【0069】
以上、発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。なお、以下では、先に説明した構成と同様の構成については同一符号を付して適宜説明を省略し、先に説明した構成と異なる点について詳細に説明する。
【0070】
例えば、図7に示すように、サイド支持部31は、貫通穴31Hを有していてもよい。なお、図7に示す形態では、貫通穴31Hは、一例として、前後方向に長い略台形状をなしており、サイド支持部31の下側部分に形成されている。サイド支持部31が貫通穴31Hを有することで、サイド支持部材30を軽量化できるので、サイド支持部材30を備える車両用シートSの軽量化を図ることができる。また、ワイヤハーネスや空調のためのダクトなどの他の部材を貫通穴31Hを通して配置することが可能となるので、車両用シートS内の限られたスペースを有効に利用することができる。なお、貫通穴の形や数、設ける位置などは、特に限定されず、適宜設定することができる。
【0071】
また、図8(a),(b)に示すように、サイド支持部材30は、左右方向内側の端部が、第2支持ワイヤ22に連結されていてもよい。例えば、図8(a)に示す形態では、サイド支持部材30は、延出部35の左右方向内側の端部が、第2支持ワイヤ22の一部の全周を覆った状態で、第2支持ワイヤ22の一部を包むように設けられていることで、第2支持ワイヤ22に連結されている。言い換えると、第2支持ワイヤ22は、延出部35の左右内側の端部を貫通するように配置されている。このような、金属製の第2支持ワイヤ22と樹脂製のサイド支持部材30とが一体に形成された構成は、第2支持ワイヤ22とサイド支持部材30を、例えば、インサート成形することにより形成することができる。
【0072】
また、図8(b)に示す形態では、サイド支持部材30は、延出部35の左右方向内側の端部に、フック状の係合部35Aを有し、この係合部35Aが第2支持ワイヤ22の一部に係合することで、第2支持ワイヤ22に連結されている。
このように、サイド支持部材30が第2支持ワイヤ22に連結されていることで、サイド支持部材30によって第2支持ワイヤ22が下方へ沈み込みすぎるのを抑制することができる。これにより、着座者が車両用シートSに座ったときに快適な座り心地を実現することができる。なお、左右のサイド支持部材30は、例えば、ワイヤ連結部材50(図2参照)と一体に形成されることで、第2支持ワイヤ22および第1支持ワイヤ21の両方に連結されていてもよい。さらに言えば、左右のサイド支持部材30は、ワイヤ連結部材50でつながって一体に形成されていてもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、サイド支持部材30がカバー部材80と一体に形成されていたが、これに限定されない。例えば、図9に示すように、サイド支持部材30は、カバー部材80とは別の部品として形成されていてもよい。図9に示す形態では、一例として、サイド支持部材30は、サイド支持部31の上端部がネジやリベットなどの取付部材91によってカバー部材80に固定されることで、カバー部材80に設けられている。
【0074】
また、前記実施形態では、カバー部材80が、インナカバー部81、アッパカバー部82およびリアカバー部83を有していたが、これに限定されない。例えば、カバー部材は、インナカバー部81とリアカバー部83を有し、アッパカバー部82を備えないものであってもよいし、インナカバー部81とアッパカバー部82を有し、リアカバー部83を備えないものであってもよい。また、カバー部材は、インナカバー部81を有し、アッパカバー部82およびリアカバー部83を備えないものであってもよい。すなわち、カバー部材は、サイドフレームの後端部の少なくとも左右方向内側を覆う部材であればよい。
【0075】
また、前記実施形態では、車両用シートSが支持ワイヤ20を連結するリア支持部材70を備えていたが、これに限定されない。例えば、車両用シートは、リア支持部材を備えないものであってもよい。この場合であっても、支持ワイヤの、リアフレームに掛止される後端は、樹脂製の部材で覆われていることが望ましい。これによれば、金属製の部材同士が接触することによって発生する接触音を防ぐことができる。
【0076】
また、前記実施形態では、サイド支持部31は、前後方向の幅が左右方向内側にいくほど大きくなる略台形状をなしていたが、これに限定されない。例えば、サイド支持部は、その全体ではなく、一部の前後方向の幅が左右方向内側にいくほど大きくなっている形状であってもよい。また、サイド支持部は、前後方向の幅がほとんど変化しない、例えば、略矩形状をなしていてもよい。
【0077】
また、前記実施形態では、第1支持面31Aを有するサイド支持部31が板状であったが、これに限定されない。例えば、サイド支持部は、前後方向に沿って見た断面で、略三角形状をなすような厚みを有するものであってもよい。
【0078】
また、前記実施形態では、第1支持面31Aが左右外側にいくほど上に位置する傾斜面であったが、これに限定されず、例えば、第1支持面は、上を向いた面などであってもよい。なお、第1支持面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0079】
また、前記実施形態では、第1支持ワイヤ21が左右方向中央に1つだけ配置されていたが、これに限定されず、例えば、左右方向に並んで複数配置されていてもよい。また、前記実施形態では、線状部材として第2支持ワイヤ22(支持ワイヤ20)を例示したが、これに限定されず、例えば、線状部材は、Sバネのような、少なくとも一部が左右方向に交互に屈曲した弾性変形可能な部材などであってもよい。また、前記実施形態では、パッド支持部材として、支持ワイヤ20のような、ワイヤ状の部材を例示したが、これに限定されず、例えば、パッド支持部材は、板状の部材であってもよい。また、前記実施形態の第2支持ワイヤ22の位置にワイヤ状のパッド支持部材を配置し、第1支持ワイヤ21の位置に板状のパッド支持部材を配置してもよい。すなわち、パッド支持部材は、複数配置される場合には、構成が異なるものであってもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、前後のクロスメンバとしてフロントフレーム12およびリアフレーム13を例示したが、これに限定されない。例えば、前側のクロスメンバは、図2に示したパンフレーム14などであってもよい。また、後側のクロスメンバは、パイプ材から形成された部材ではなく、金属板から形成された部材などであってもよい。また、前記実施形態では、サイドフレームとして、金属板から形成されたものを例示したが、これに限定されず、例えば、パイプ材などから形成されたものであってもよい。
【0081】
また、前記実施形態では、乗物用シートとして自動車に搭載される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載されるシートであってもよい。
【0082】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0083】
11 サイドフレーム
12 フロントフレーム
13 リアフレーム
20 支持ワイヤ
22 第2支持ワイヤ
30 サイド支持部材
31 サイド支持部
31A 第1支持面
80 カバー部材
81 インナカバー部
81A スリット
81B 下縁
C1 クッションパッド
F1 クッションフレーム
HP ヒップポイント
S 車両用シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9