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特開2024-151958射出成形用ペレット及びペレット製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151958
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】射出成形用ペレット及びペレット製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/06 20060101AFI20241018BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20241018BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20241018BHJP
   B29B 9/16 20060101ALI20241018BHJP
   C08J 3/215 20060101ALI20241018BHJP
   B29K 1/00 20060101ALN20241018BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
B29B9/06
B29C45/00 ZBP
B29B9/12
B29B9/16
C08J3/215
B29K1:00
B29K67:00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065811
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
(72)【発明者】
【氏名】安在 和夫
(72)【発明者】
【氏名】荻原 春雄
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4F206
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AA66
4F070AB11
4F070DA55
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC06
4F201AA01
4F201AA24
4F201AG14
4F201AR12
4F201BA01
4F201BA02
4F201BA03
4F201BC01
4F201BC13
4F201BC15
4F201BC17
4F201BC19
4F201BC37
4F201BD04
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK26
4F201BL08
4F201BL12
4F201BL29
4F201BL33
4F201BL36
4F206AA24
4F206AB11
4F206AC01
4F206JA07
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】ポリ乳酸樹脂に木粉を配合してなる射出成形用樹脂材料であって、成形品の引張強度が大きく且つ金型内での流動性が良好な樹脂材料を提供する。
【解決手段】射出成形に供される粒状のペレットであって、このペレットは、母材がポリ乳酸樹脂であり、この母材に50μmを超えない粒径の木粒が混合されている。図9(e)に示すように、木粒25がトンネルゲート92に滞留しても、直ぐに図9(d)となり、圧力変動が是正される。結果、金型内での流動性が良好になる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形に供される粒状のペレットであって、
このペレットは、母材がポリ乳酸樹脂であり、この母材に50μmを超えない粒径の木粒が混合されていることを特徴とする射出成形用ペレット。
【請求項2】
射出成形に供される粒状のペレットであって、
このペレットは、母材がポリ乳酸樹脂であり、この母材に30μmを超えない粒径の木細粒が混合されていることを特徴とする射出成形用ペレット。
【請求項3】
請求項1記載の射出成形用ペレットを製造するペレット製造方法であって、
木片と、破砕機と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する工程と、
前記破砕機へ前記木片を投入し、前記破砕機で破砕することにより50μm以下の粒径の木粒を得る工程と、
前記二種配合機構へ前記木粒と前記ポリ乳酸樹脂粒を投入し、前記二種配合機構で配合粒を得る工程と、
前記ペレット製造装置へ前記配合粒を投入し、前記ペレット製造装置で混錬し、押し出し、得られたストランドを切断することでペレットを得る工程とからなるペレット製造方法。
【請求項4】
請求項2記載の射出成形用ペレットを製造するペレット製造方法であって、
木片と、破砕機と、分級網と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する工程と、
前記破砕機へ前記木片を投入し、前記破砕機で破砕することにより木粒を得る工程と、
得られた木粒を前記分級網で分級することで30μm以下の粒径の木細粒を得る工程と、
前記二種配合機構へ前記木細粒と前記ポリ乳酸樹脂粒を投入し、前記二種配合機構で配合粒を得る工程と、
前記ペレット製造装置へ前記配合粒を投入し、前記ペレット製造装置で混錬し、押し出し、得られたストランドを切断することでペレットを得る工程とからなるペレット製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に供する粒状のペレット技術に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックが、海洋へ流出し、ミクロンサイズに微細化し、魚などの海洋生物に害をなすことが知られている。
廃プラスチックが、生分解性プラスチックであれば、海洋生物に害をなすことはない。
そこで、プラスチックを生分解性プラスチックに置き換えることが望まれる。
【0003】
しかし、生分解性プラスチックは、それ以外の普通のプラスチックに比べ高価である。
対策として、鋸屑などの廃木材を生分解性プラスチックに混ぜることで増量して、コストを下げることが知られており、そのための装置が提案されてきた(例えば、特許文献1(図1)参照)。
【0004】
特許文献1の技術を図11に基づいて説明する。
図11に示すように、ホッパ101に、木粉102と、ポリ乳酸樹脂103を投入し、攪拌羽根104で攪拌する。攪拌後の混合物105を、成形機106で混錬しつつ押出して成形品を得る。
木粉102の粒径は、300μm以上である(特許文献1、段落0025)。
【0005】
しかし、特許文献1の技術には、次に述べる欠点がある。
第1に、特許文献1の技術で製造された成形品は、引張強度が小さい。
第2に、金型内部での樹脂材料の流動性が悪いことである。
【0006】
成形品の用途が多様化する中、引張強度の向上が求められる。
また、小型や超小型の成形品を射出成形する金型では、ゲートの径が必然的に小さくなる。ポリ乳酸樹脂103は混錬により液体に近くなるが、木粉102は固体のままである。ゲートの径が小さくなると、木粉102が流動化を妨げることがあり、その対策が求められる。
【0007】
よって、ポリ乳酸樹脂に木粉を配合してなる射出成形用樹脂材料であって、成形品の引張強度が大きく且つ金型内での流動性が良好な樹脂材料が、求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5321254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリ乳酸樹脂に木粉を配合してなる射出成形用樹脂材料であって、成形品の引張強度が大きく且つ金型内での流動性が良好な樹脂材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、射出成形に供される粒状のペレットであって、
このペレットは、母材がポリ乳酸樹脂であり、この母材に50μmを超えない粒径の木粒が混合されていることを特徴とする。
なお、ペレット(pellet)は、邦語で小球、小粒を意味する。
【0011】
請求項2に係る発明は、射出成形に供される粒状のペレットであって、
このペレットは、母材がポリ乳酸樹脂であり、この母材に30μmを超えない粒径の木細粒が混合されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の射出成形用ペレットを製造するペレット製造方法であって、
木片と、破砕機と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する工程と、
前記破砕機へ前記木片を投入し、前記破砕機で破砕することにより50μm以下の粒径の木粒を得る工程と、
前記二種配合機構へ前記木粒と前記ポリ乳酸樹脂粒を投入し、前記二種配合機構で配合粒を得る工程と、
前記ペレット製造装置へ前記配合粒を投入し、前記ペレット製造装置で混錬し、押し出し、得られたストランドを切断することでペレットを得る工程とからなる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2記載の射出成形用ペレットを製造するペレット製造方法であって、
木片と、破砕機と、分級網と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する工程と、
前記破砕機へ前記木片を投入し、前記破砕機で破砕することにより木粒を得る工程と、
得られた木粒を前記分級網で分級することで30μm以下の粒径の木細粒を得る工程と、
前記二種配合機構へ前記木細粒と前記ポリ乳酸樹脂粒を投入し、前記二種配合機構で配合粒を得る工程と、
前記ペレット製造装置へ前記配合粒を投入し、前記ペレット製造装置で混錬し、押し出し、得られたストランドを切断することでペレットを得る工程とからなる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、粒状のペレットは、射出機へ投入されると、射出機で混錬・可塑化される。可塑化により、ポリ乳酸樹脂は流動化するが、木粒は固体のままである。
金型内のゲートの径は種々であるが、トンネルゲートの最小径は0.50mm程度と言われている。従来の技術での木粉は300μm(0.30mm)であるため、0.50mmのトンネルゲートは通過しにくくなる。
対して、本発明の木粒は、トンネルゲートの最小径(0.50mm)より格段に小さな50μm(0.05mm)であるため、樹脂材料は0.50mmのトンネルゲートを遅滞なく通過する。
【0015】
また、詳細は後述するが、300μmの木粉に比較して、50μmの木粒であれば約1.4倍の引張強度の構造が見込める。
よって、請求項1によれば、成形品の引張強度が大きく且つ金型内での流動性が良好な樹脂材料(射出成形用ペレット)が提供される。
【0016】
請求項2に係る発明では、木粒は、トンネルゲートの最小径(0.50mm)より格段に小さな30μm(0.03mm)であるため、樹脂材料は0.50mmのトンネルゲートをより円滑に通過する。
【0017】
また、詳細は後述するが、300μmの木粉に比較して、30μmの木粒であれば約1.5倍の引張強度の構造が見込める。
よって、請求項2によれば、成形品の引張強度が大きく且つ金型内での流動性が良好な樹脂材料(射出成形用ペレット)が提供される。
【0018】
請求項3に係る発明は、ペレット製造方法であって、破砕機と、二種配合機構と、ペレット製造装置とでペレットを製造する。
破砕機、二種配合機構及びペレット製造装置は、比較的簡単な構造の装置であり、安価である。そのため、比較的低コストで射出成形用ペレットが製造可能となる。
【0019】
請求項4に係る発明は、ペレット製造方法であって、破砕機と、分級網と、二種配合機構と、ペレット製造装置とでペレットを製造する。
破砕機、二種配合機構及びペレット製造装置は、比較的簡単な構造の装置であり、安価であり、加えて分級網は極めて安価である。そのため、比較的低コストで射出成形用ペレットが製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明で用いる粉砕機の原理図である。
図2】分級網の原理図である。
図3】(a)は二種混合機構の平面図、(b)は(a)のb-b断面図、(c)は(b)のc-c断面図である。
図4】ペレット製造装置の平面図である。
図5】射出成形装置の正面図である。
図6】(a)~(c)はダイレクトゲートの原理を説明する図である。
図7】木粒の粒径と引張強度の相関を示すグラフである。
図8】木粒の配合割合と引張強度の相関を示すグラフである。
図9】(a)は木粒の粒径と圧力変動の関係を示すグラフであり、(b)~(e)は流動性を説明する原理図である。
図10】本発明のペレット製造方法を説明するフロー図である。
図11】従来の技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0022】
[粉砕機]
図1に示すように、粉砕機10は、床11に載せる脚12と、この脚12で支えられるメインチャンバー13と、このメインチャンバー13に内蔵される粉砕刃14と、この粉砕刃14を高速で回転するモータ15と、メインチャンバー13から上に延びる円錐筒16と、この円錐筒16から上に延びる縦筒17と、円錐筒16を囲うサブチャンバー18とからなる。
円錐筒16には、メインチャンバー13とサブチャンバー18とを繋ぐ穴19が複数個開けられており、サブチャンバー18には、出口21が設けられている。
【0023】
粉砕刃14は、毎分1000~20000回転(毎秒16.7~333回転)の速度で回される。
木片23が縦筒17に投入されると、木片23は粉砕刃14で粉砕される。粉砕された木片はメインチャンバー13に留まるうちに、粉砕刃14及び回転に伴う遠心力により繰り返し粉砕され、粒径が50μm以下の木粒25になり、この木粒25が竜巻(トルネード)状の旋回流26に載ってサブチャンバー18へ上がり、さらに出口21から排出される。
以上により、粒径が50μm以下の木粒25が得られる。
【0024】
[分級網]
図1の粉砕機10で得た木粒25を、さらに分級をする必要があるときに使用する。
図2に示すように、分級網28は、例えば、30μm以下の粒を通し、30μmを超える粒は通さない網目を有する金網である。金網は細かく往復移動させる。
【0025】
分級網28に上から木粒25を落下させると、30μmを超える粒径の木粒25は網上に残り、矢印(1)のように、排出される。
分級網28を通過して落下したものは、30μm以下の木細粒29となる。
【0026】
[二種配合機構]
図3(a)に示すように、二種配合機構30は、升31と、この升31から水平に延びる第1管32と、この第1管32に回転自在に収納される第1螺旋コイル33と、この第1螺旋コイル33を回す第1モータ34と、第1管32の途中に設けられる第1ホッパ35と、升31から水平に延びる第2管36と、この第2管36に回転自在に収納される第2螺旋コイル37と、この第2螺旋コイル37を回す第2モータ38と、第2管36の途中に設けられる第2ホッパ39とからなる。
【0027】
図3(b)に示すように、第1ホッパ35に投入されたポリ乳酸樹脂粒40は、第1管32へ落下し、第1螺旋コイル33で送られて、升31に至る。第1モータ34により第1螺旋コイル33の回転速度が制御され、ポリ乳酸樹脂粒40の送り量(配合量)が制御される。
【0028】
好ましくは、第1管32の先端は、升31の壁から突出させ、升31の中央まで突出させる。これにより、ポリ乳酸樹脂粒40は升31の壁に付着することなく、落下口に到達する。このとき、升31は、配合作用は発揮せずに、ポリ乳酸樹脂粒40の飛散を防止する。
【0029】
図3(c)に示すように、第2ホッパ39に投入された木粒25又は木細粒29は、第2管36へ落下し、第2螺旋コイル37で送られて、升31に至る。第2モータ38により第2螺旋コイル37の回転速度が制御され、木粒25又は木細粒29の送り量(配合量)が制御される。
【0030】
好ましくは、第2管36の先端は、升31の壁から突出させ、升31の中央付近まで突出させる。これにより、木粒25又は木細粒29は升31の壁に付着することなく、落下口に到達する。このとき、升31は、配合作用は発揮せずに、木粒25又は木細粒29の飛散を防止する。
【0031】
なお、第1螺旋コイル33は、軸に螺旋羽根を付したスクリューであってもよい。ただし、第1螺旋コイル33は、鋼線をつる巻コイル状に加工して得られるため、スクリューよりも格段に安価である。第2螺旋コイル37も同様である。
第1螺旋コイル33及び第2螺旋コイル37を採用することにより、二種配合機構30の製造コストを下げることができる。
【0032】
以上により、適量のポリ乳酸樹脂粒40に適量の木粒25又は木細粒29が配合された配合粒(図4、符号63)が得られる。
【0033】
[ペレット製造装置]
図4に示すように、ペレット製造装置50は、第1スクリュー51と、この第1スクリュー51に並べて設けられる第2スクリュー52と、第1スクリュー51及び第2スクリュー52を回転自在に収納するバレル53と、バレル53を囲うヒータ54と、バレル53の一端に設けられる落下口ブロック55と、第1スクリュー51及び第2スクリュー52を回す変換機56及び駆動モータ57と、バレル53の他端に設けられるダイス58と、ダイス58の外側に且つバレル53に直列に配置されるストランド冷却コンベア61と、このストランド冷却コンベア61の出口に配置されるストライドカッタ62とからなる。
【0034】
変換機56は、駆動モータ57の動力を、第1スクリュー51の回転力と、第2スクリュー52の回転力に配分する機器である。変換機56で、第1スクリュー51と第2スクリュー52を同速度で同方向へ回すことができる。変換機56の内部構造を変更することで、第1スクリュー51に対して第2スクリュー52を逆回転させることもできる。よって、第1スクリュー51と第2スクリュー52の回転方向は任意に設定できる。
【0035】
落下口ブロック55に、升31がボルト止めされる。
すなわち、二種配合機構30が、ペレット製造装置50にマウントされる。マウントすることで、二種配合機構30を床に置く必要がなくなると共に、配合直後の配合粒63をバレル53へ投入することができ、配合粒63の経時的劣化を抑制することができる。
【0036】
なお、経時的劣化が許容されるときは、二種配合機構30をペレット製造装置50から離して配置してもよい。このとき、配合粒63は、袋又はバケットで二種配合機構30からペレット製造装置50へ運搬される。配合粒63の造り置きが可能であるため、生産の自由度が高まるという利点がある。
【0037】
第1ホッパ35へ投入されるポリ乳酸樹脂粒40の粒径は、例えば3.0mmである。
第2ホッパ39へ投入される木粒25の粒径は、例えば50μmm以下である。又は、第2ホッパ39へ投入される木細粒29の粒径は、例えば30μmm以下である。
【0038】
升31の部位で配合される割合は、例えば、ポリ乳酸樹脂粒40:木粒25(又は木細粒29)=70~99質量%:30~1.0質量%である。
【0039】
配合粒63は、第1スクリュー51と第2スクリュー52の回転で混錬され、ヒータ54の熱を受けて溶融し、ダイス58から細い棒状のストランド64の形態で排出される。
ストランド64はストランド冷却コンベア61で搬送されつつ冷却され固形化され、ストライドカッタ62で切断され、射出成形用ペレット66になる。射出成形用ペレット66の粒径は、例えば2.0~3.0mmである。
【0040】
[射出成形装置]
図5に示すように、射出成形装置70は、ベッド71と、このベッド71に載せられる射出機構72及び型締機構82とからなる。
型締機構82で、金型83が固定盤84と可動盤85とトグル機構86とにより型締めされる。金型83は、例えば、固定型87と可動型88とからなる。
【0041】
射出機構72では、射出成形用ペレット66がホッパ73を介して加熱筒74へ投入される。投入された射出成形用ペレット66は、加熱筒74に内蔵させるスクリュー75の回転と加熱筒74からの熱とで混錬され可塑化状態になる。
【0042】
射出機構72は、加熱筒74の先端のノズル89が、固定盤84(又は固定型87)に設けられているスプルに接するように水平移動される。
可塑化状態の射出成形用ペレット66(以下、溶融樹脂材料という)は、加熱筒74の内部のノズル89側に溜まる。溜まり量の増加に伴ってスクリュー75は後退する。後退距離が所定値に達したらスクリュー75を高速で前進させる。この前進により、溶融樹脂材料は、金型83へ射出される。
【0043】
金型83の内部の状態及び以降の作業を、図6で説明する。
図6(a)に示すように、金型83内部において、ランナー91→トンネルゲート92→製品キャビティ93の順に溶融樹脂材料94が流れ、ランナー91、トンネルゲート92及び製品キャビティ93に溶融樹脂材料94が満たされる。この状態で溶融樹脂材料94を冷却する。冷却が終わったら、固定型87から可動型88を離す。
【0044】
すると、図6(b)に示すように、凝固した製品部96、ゲート部97及びランナー部98が可動型88側に残る。この状態で、突き出しピン99を前進させる。
【0045】
すると、図6(c)に示すように、製品部96が突き出しピン99で可動型88から離される。この製品部96には、ゲート跡97aが残るが、ゲート跡97aは小さい。ゲート跡97aを含め製品部96を仕上げることで、成形品が得られる。
【0046】
ダイレクトゲート方式などでは、製品部96にゲート部97が接続した形態で可動型88から離される。ゲートカッタでゲート部97を製品部96から切除する工程(ゲートカット工程)が不可欠となる。
【0047】
対して、トンネルゲート方式では、図6(b)、(c)で説明したように、製品突き出し工程でゲート部97がカットされるため、ゲートカッタによるゲートカット工程は、不要となるという利点がある。
【0048】
反面、製品突き出し工程でゲート部97がカットされるためには、図6(a)において、トンネルゲート92の先端のゲート径を、小さくする必要がある。ゲートの最小径は、例えば0.50mmである。
【0049】
(実験)
本発明の課題は、上述したように、ポリ乳酸樹脂に木粉を混合してなる射出成形用樹脂材料であって、成形品の引張強度が大きく且つ金型内での流動性が良好な樹脂材料を提供することである。そのために、ペレット製造装置(図4、符号50)及び射出成形装置(図5、符号70)を用いて、試験片を作成し、試験片の引張強度を調べた。なお、金型(図5、符号93)は試験片を得ることができる金型に替えた。
【0050】
(材料)
・ポリ乳酸樹脂粒:ハイケム社製FY201
・木片:カラマツ
【0051】
(木粒)
・木粒:比較するために、300μmと、212μmと、2μmの3種類を準備した。
【0052】
(配合比)
・配合割合は、ポリ乳酸樹脂粒粒90質量%とし、木粒10質量%とした。
【0053】
(試験片)
・試験片:ダンベル引張試験片
・試験片の数:測定値の信頼性を考慮して、5個の試験片を準備した。
【0054】
(試験装置)
・試験装置:島津製作所製 精密万能試験機AG-IS 250KN
【0055】
以上により、得た引張強度を、表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示す引張強度の平均を、グラフ化したものが図7である。
図7に示すように、木粒の粒径が小さい程、引張強度が大きくなる。
比較例1の粒径である300μmは、従来の技術で述べた特許文献1に相当する。
従来よりも引張強度を大きくすることが本発明の課題の1つであり、大きくする度合い(期待値)を1.5倍に設定する。横軸で30μm以下であれば1.5倍が達成される。粒径が50μm以下であってもほぼ達成される。
よって、木粒の粒径は、50μm以下が適当であり、30μm以下であれば尚よいことが確かめられた。
【0058】
(追加実験)
次に、配合比ついて追加実験を行った。
【0059】
(配合比)
・配合は、ポリ乳酸樹脂粒粒80質量%とし、木粒20質量%とした。
【0060】
(木粒)
・木粒:2μm
【0061】
その他の条件は上述した(実験)と同一である。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示す引張強度の平均を、グラフ化したものが図8である。
図8には、比較のために実施例1と比較例1を加えた。
図8によれば、木粒の割合が多くなる程、引張強度が小さくなる。
【0064】
推定値ではあるが、木粒の割合が40質量%になると、比較例1の0.95倍となり、本発明の課題が達成できない。
木粒の割合が30質量%であれば、比較例1の1.16倍となり、やや不満足ではあるが、引張強度の向上が見込める。
よって、配合は、木粒30質量%以下が好ましく、20質量%以下であれば尚よく、10質量%以下であれば、さらに引張強度の増加が見込める。
【0065】
(流動性の検討)
トンネルゲートの最小径は0.50mm、すなわち500μmで、木粒の配合は10質量%とし、図5に示すノズル89の射出時における圧力(内圧)を調べた。
すると、図9(a)に示す傾向が確認できた。
【0066】
図9(a)は、横軸が木粒の粒径(μm)、縦軸が圧力変動を示すグラフである。
図9(a)に示すように、木粒の粒径が50μmを超えると圧力変動が大きくなる。一方、木粒の粒径が50μm以下では圧力変動が僅かであった。
【0067】
圧力変動の発生理由を、図9(b)~(e)で推定する。
図9(b)に示すように、150μmの木粒25は、ゲートの最小径(500μm)の約1/3であって、ゲートの最小径より小さいので、矢印(←)のごとく流れる。このとき、圧力は所定圧になる。
【0068】
図9(c)に示すように、150μmの木粒25であっても複数個が固まるとゲートを塞ぎ、圧力は急上昇する。少し時間が経過すると、固まりが崩れる。
すなわち、図9(b)と図9(c)が繰り返されて、圧力変動は大きくなる。
【0069】
図9(d)に示すように、50μmの木粒25は、ゲートの最小径(500μm)の1/10であって、ゲートの最小径より極めて小さいので、矢印(←)のごとく流れる。このとき、圧力は所定圧になる。
発生頻度はごく小さいが、50μmの木粒25が多数個固まると、図9(e)のゲートを塞ぐ。しかし、この固まりは直ぐに崩壊して、図9(d)に戻る。結果、圧力変動は小さくなる。
【0070】
以上から、トンネルゲートであっても、木粒の粒径が50μm以下、好ましくは30μm以下であれば、図9(d)で示すような安定した流れが維持でき、流動性が高まることが確認できた。
【0071】
以上の知見から、次に述べるペレット製造方法が導き出される。
図10のステップ番号(以下、STと記載する)01で、木片と、破砕機と、分級網と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する。
ST02で、破砕機へ木片を投入して、破砕する。この破砕により、1~50μm(すなわち、50μm以下)の木粒が得られる。
【0072】
ST03で、分級するか否かを判断する。
分級する必要が無ければST01で分級網の準備を省くことができる。
また、破砕機における粉砕刃(図1、符号14)の回転速度を、より高めることで40μm以下(又は30μm以下)の木細粒が得られる場合は、分級工程を省くことができる。
【0073】
分級が必要であれば、ST04で、分級網により分級を行う。この分級により、1~30μm(すなわち、30μm以下)の木細粒が得られる。
ST05で、二種配合機構へ木粒(又は木細粒)とポリ乳酸樹脂粒を投入し、配合する。結果、配合粒が得られる。
ST06で、ペレット製造装置へ配合粒を投入し、混錬し、押し出し、得られたストランドを切断する。結果、射出成形用ペレットが得られる。
【0074】
尚、実施例で説明した破砕機10、二種配合機構30、ペレット製造装置50は、一例を示すものであり、構造や原理を変更することは差し支えない。
【0075】
また、本発明に係る射出成形用ペレットは、トンネルゲートに好適であるが、その他のゲートを有する金型への射出に用いることは差し支えない。その他のゲートには、ダイレクトゲート、サイドゲート、ピンゲートなどがある。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、ポリ乳酸樹脂と木粒(又は木細粒)からなる射出成形用ペレットに好適である。
【符号の説明】
【0077】
10…破砕機、23…木片、25…木粒、29…木細粒、30…二種配合機構、40…ポリ乳酸樹脂粒、50…ペレット製造装置、63…配合粒、66…射出成形用ペレット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
請求項1記載の射出成形用ペレットを製造するペレット製造方法であって、
木片と、粉砕機と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する工程と、
前記粉砕機へ前記木片を投入し、前記粉砕機で粉砕することにより50μm以下の粒径の木粒を得る工程と、
前記二種配合機構へ前記木粒と前記ポリ乳酸樹脂粒を投入し、前記二種配合機構で配合粒を得る工程と、
前記ペレット製造装置へ前記配合粒を投入し、前記ペレット製造装置で混錬し、押し出し、得られたストランドを切断することでペレットを得る工程とからなるペレット製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
請求項2記載の射出成形用ペレットを製造するペレット製造方法であって、
木片と、粉砕機と、分級網と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する工程と、
前記粉砕機へ前記木片を投入し、前記粉砕機で粉砕することにより木粒を得る工程と、
得られた木粒を前記分級網で分級することで30μm以下の粒径の木細粒を得る工程と、
前記二種配合機構へ前記木細粒と前記ポリ乳酸樹脂粒を投入し、前記二種配合機構で配合粒を得る工程と、
前記ペレット製造装置へ前記配合粒を投入し、前記ペレット製造装置で混錬し、押し出し、得られたストランドを切断することでペレットを得る工程とからなるペレット製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の射出成形用ペレットを製造するペレット製造方法であって、
木片と、粉砕機と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する工程と、
前記粉砕機へ前記木片を投入し、前記粉砕機で粉砕することにより50μm以下の粒径の木粒を得る工程と、
前記二種配合機構へ前記木粒と前記ポリ乳酸樹脂粒を投入し、前記二種配合機構で配合粒を得る工程と、
前記ペレット製造装置へ前記配合粒を投入し、前記ペレット製造装置で混錬し、押し出し、得られたストランドを切断することでペレットを得る工程とからなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2記載の射出成形用ペレットを製造するペレット製造方法であって、
木片と、粉砕機と、分級網と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する工程と、
前記粉砕機へ前記木片を投入し、前記粉砕機で粉砕することにより木粒を得る工程と、
得られた木粒を前記分級網で分級することで30μm以下の粒径の木細粒を得る工程と、
前記二種配合機構へ前記木細粒と前記ポリ乳酸樹脂粒を投入し、前記二種配合機構で配合粒を得る工程と、
前記ペレット製造装置へ前記配合粒を投入し、前記ペレット製造装置で混錬し、押し出し、得られたストランドを切断することでペレットを得る工程とからなる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
請求項3に係る発明は、ペレット製造方法であって、粉砕機と、二種配合機構と、ペレット製造装置とでペレットを製造する。
粉砕機、二種配合機構及びペレット製造装置は、比較的簡単な構造の装置であり、安価である。そのため、比較的低コストで射出成形用ペレットが製造可能となる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
請求項4に係る発明は、ペレット製造方法であって、粉砕機と、分級網と、二種配合機構と、ペレット製造装置とでペレットを製造する。
粉砕機、二種配合機構及びペレット製造装置は、比較的簡単な構造の装置であり、安価であり、加えて分級網は極めて安価である。そのため、比較的低コストで射出成形用ペレットが製造可能となる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図1】本発明で用いる粉砕機の原理図である。
図2】分級網の原理図である。
図3】(a)は二種混合機構の平面図、(b)は(a)のb-b断面図、(c)は()のc-c断面図である。
図4】ペレット製造装置の平面図である。
図5】射出成形装置の正面図である。
図6】(a)~(c)はトンネルゲートの原理を説明する図である。
図7】木粒の粒径と引張強度の相関を示すグラフである。
図8】木粒の配合割合と引張強度の相関を示すグラフである。
図9】(a)は木粒の粒径と圧力変動の関係を示すグラフであり、(b)~(e)は流動性を説明する原理図である。
図10】本発明のペレット製造方法を説明するフロー図である。
図11】従来の技術を説明する図である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
以上の知見から、次に述べるペレット製造方法が導き出される。
図10のステップ番号(以下、STと記載する)01で、木片と、粉砕機と、分級網と、ポリ乳酸樹脂粒と、二種配合機構と、ペレット製造装置とを準備する。
ST02で、粉砕機へ木片を投入して、粉砕する。この粉砕により、1~50μm(すなわち、50μm以下)の木粒が得られる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
ST03で、分級するか否かを判断する。
分級する必要が無ければST01で分級網の準備を省くことができる。
また、粉砕機における粉砕刃(図1、符号14)の回転速度を、より高めることで40μm以下(又は30μm以下)の木細粒が得られる場合は、分級工程を省くことができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
尚、実施例で説明した粉砕機10、二種配合機構30、ペレット製造装置50は、一例を示すものであり、構造や原理を変更することは差し支えない。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
10…粉砕機、23…木片、25…木粒、29…木細粒、30…二種配合機構、40…ポリ乳酸樹脂粒、50…ペレット製造装置、63…配合粒、64…ストランド、66…射出成形用ペレット。
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正の内容】
図10