(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151968
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】筒状構造体および乾燥状態維持方法
(51)【国際特許分類】
E04H 12/00 20060101AFI20241018BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20241018BHJP
F03D 80/00 20160101ALI20241018BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E04H12/00 Z
F03D13/25
F03D80/00
E02D27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065823
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】田口 浩己
(72)【発明者】
【氏名】清水 光
(72)【発明者】
【氏名】室橋 一彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 昌史
(72)【発明者】
【氏名】神田 真一
(72)【発明者】
【氏名】森 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】武廣 絵里子
【テーマコード(参考)】
2D046
3H178
【Fターム(参考)】
2D046DA31
2D046DA61
3H178AA03
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB41
3H178CC23
3H178DD12Z
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】作業を安全に行うことができるとともに筒状構造体の内部の乾燥状態を維持できる筒状構造体および乾燥状態維持方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る筒状構造体は、水面Tから上方に突出するトランジションピース3である。トランジションピース3は、トランジションピース3の内部空間Sにおける水面Tよりも上方に設けられており、内部空間Sを上部内部空間S1と下部内部空間S2とに仕切るエアタイトプラットフォーム30と、トランジションピース3の上部内部空間S1を上から密閉するカバー構造50と、を備える。上部内部空間S1は、エアタイトプラットフォーム30とカバー構造50との間に位置する密閉空間とされ、トランジションピース3は、上部内部空間S1に配置された除湿部材70を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面から上方に突出する筒状構造体であって、
前記筒状構造体の内部空間における前記水面よりも上方に設けられており、前記内部空間を上部内部空間と下部内部空間とに仕切るプラットフォームと、
前記筒状構造体の前記上部内部空間を上から密閉するカバー構造と、
を備え、
前記上部内部空間は、前記プラットフォームと前記カバー構造との間に位置する密閉空間とされ、
前記上部内部空間に配置された除湿部材を備える、
筒状構造体。
【請求項2】
複数の前記除湿部材を備え、
複数の前記除湿部材の少なくともいずれかは、前記上部内部空間において吊り下げられている、
請求項1に記載の筒状構造体。
【請求項3】
複数の前記除湿部材を備え、
複数の前記除湿部材は、ポリマー系除湿部材と、塩化カルシウム系除湿部材とを含む、
請求項1又は2に記載の筒状構造体。
【請求項4】
筒状構造体の内部空間を上部内部空間と下部内部空間とに仕切るプラットフォームと、前記上部内部空間を上から密閉するカバー構造とを備えた筒状構造体の乾燥状態維持方法であって、
水面から上方に突出するように前記筒状構造体を設置する工程と、
前記上部内部空間に1回目の除湿部材を配置する工程と、
前記1回目の除湿部材を配置した後に、前記上部内部空間にケーブルを敷設する工程と、
前記ケーブルを敷設した後に、前記上部内部空間の気密を確保する工程と、
前記気密を確保した後に、前記上部内部空間に2回目の除湿部材を配置する工程と、
を備える乾燥状態維持方法。
【請求項5】
前記上部内部空間に前記上部内部空間の温度および湿度を測定する温湿度計を配置する工程と、
前記筒状構造体から離隔した遠隔地から前記温湿度計によって測定された前記上部内部空間の温度および湿度をモニタリングする工程と、
を備える、
請求項4に記載の乾燥状態維持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筒状構造体、および筒状構造体の乾燥状態維持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半密閉構造を有する鋼構造物内部の防食方法および防食設備が記載されている。防食設備は、橋梁の鋼製箱桁に適用される。鋼製箱桁は、直線状に並ぶ複数の部屋と、複数の部屋を貫通するように配置されたダクトとを有する。ダクトの一端は、直線状に並ぶ複数の部屋のうちの端部の部屋に配置されており、この端部の部屋には除湿機が設置されている。複数の部屋の空気は、除湿機によって乾燥され、乾燥された空気がダクトを通って流れることにより、複数の部屋が除湿される。
【0003】
特許文献2には、バラストタンクの防食方法が記載されている。バラストタンクの上方には、空気流路と、当該空気流路に配置された除湿器および送風機とが設けられる。送風機からは、バラストタンクに貯留されたバラスト海水に向かって空気が供給され、当該空気は空気流路を循環する。除湿機は、空気流路を循環する空気に対して除湿を行う。これにより、バラストタンクの乾燥状態が維持される。
【0004】
特許文献3には、温湿度調整器を備えた海苔建屋が記載されている。海苔建屋の天井には、屋上扇が固定されており、且つ高温高湿排気を排出する天井開放部が設けられている。建屋の内部には、海苔乾燥機と、燃焼釜とが設けられている。海苔乾燥機と燃焼釜との間には間仕切り空間部が形成されている。間仕切り空間部には高温高湿排気が排気され、高温高湿排気の流れが生じることによって、海苔建屋の内部の結露が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-350907号公報
【特許文献2】特開平8-216979号公報
【特許文献3】特許第5762921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、水中に構築されると共に水上に突出する筒状構造体では、越冬等、一定期間残置しておくことが必要な場合がある。このような場合に、筒状構造体は水に囲まれて配置されているため、筒状構造体の内部空間を水分から保護する必要がある。筒状構造体の内部は、外部から電力が供給されない上に高湿度環境となることがあり、カビが発生する可能性がある。筒状構造体の内部には分電盤、収納ボックスまたは精密機器が設置されている場合があるので、筒状構造体の内部の乾燥状態を維持することが求められる。
【0007】
筒状構造体の内部の乾燥状態を維持する方法として、筒状構造体の内部に発電機および除湿機を設置する方法が考えられる。しかしながら、発電機には、運転のために定期的な給油が必要な場合がある。筒状構造体の周囲で強風または高波等が生じたときには、人員輸送および給油作業が困難となりうる。さらに、人員輸送または給油作業のときに落雷または火災が生じる可能性もあるため、作業の安全性の点で問題がある。したがって、作業の安全性を確保しつつ筒状構造体の内部の乾燥状態を維持することが求められる。
【0008】
本開示は、作業を安全に行うことができるとともに筒状構造体の内部の乾燥状態を維持できる筒状構造体および乾燥状態維持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る筒状構造体は、(1)水面から上方に突出する筒状構造体である。筒状構造体は、筒状構造体の内部空間における水面よりも上方に設けられており、内部空間を上部内部空間と下部内部空間とに仕切るプラットフォームと、筒状構造体の上部内部空間を上から密閉するカバー構造と、を備える。上部内部空間は、プラットフォームとカバー構造との間に位置する密閉空間とされ、筒状構造体は、上部内部空間に配置された除湿部材を備える。
【0010】
この筒状構造体はプラットフォームを有し、プラットフォームによって筒状構造体の内部空間は上部内部空間と下部内部空間とに仕切られている。筒状構造体はカバー構造を有し、上部内部空間はカバー構造によって密閉されている。さらに、上部内部空間は、プラットフォームとカバー構造との間に位置する密閉空間とされている。よって、外部から電力が供給されない環境下であっても上部内部空間を水分から保護することができ、筒状構造体の内部におけるカビの発生を抑制できる。したがって、筒状構造体の内部にある分電盤、収納ボックスおよび精密機器を湿気およびカビから保護できる。さらに、筒状構造体は、上部内部空間に配置された除湿部材を備える。よって、密閉空間とされた上部内部空間を除湿部材によって除湿できるので、筒状構造体の内部を容易に乾燥状態に維持できる。除湿部材が配置されることにより、定期的な給油作業等を不要にできるので、筒状構造体の内部における作業を安全に行うことができる。したがって、作業を安全に行うことができるとともに筒状構造体の内部の乾燥状態を維持できる。
【0011】
(2)上記(1)において、複数の除湿部材を備えてもよく、複数の除湿部材の少なくともいずれかは、上部内部空間において吊り下げられていてもよい。この場合、複数の除湿部材の少なくともいずれかが吊り下げられることにより、上部内部空間に多くの除湿部材を容易に配置することができる。したがって、上部内部空間の乾燥状態をより効果的に維持できる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)において、複数の除湿部材を備えてもよく、複数の除湿部材は、ポリマー系除湿部材と、塩化カルシウム系除湿部材とを含んでもよい。ポリマー系除湿部材は、塩化カルシウム系除湿部材と比較して高価だが除湿効果が高い。したがって、精密機器の周辺等、高湿度化の抑制を強く求められる箇所にはポリマー系除湿部材を配置し、それ以外の箇所には塩化カルシウム系除湿部材を配置することによって、複数の除湿部材を効率よく配置できる。その結果、筒状構造体の内部の乾燥状態をより効果的に維持できる。
【0013】
本開示に係る乾燥状態維持方法は、(4)筒状構造体の内部空間を上部内部空間と下部内部空間とに仕切るプラットフォームと、上部内部空間を上から密閉するカバー構造とを備えた筒状構造体の乾燥状態維持方法である。乾燥状態維持方法は、水面から上方に突出するように筒状構造体を設置する工程と、上部内部空間に1回目の除湿部材を配置する工程と、1回目の除湿部材を配置した後に、上部内部空間にケーブルを敷設する工程と、ケーブルを敷設した後に、上部内部空間の気密を確保する工程と、気密を確保した後に、上部内部空間に2回目の除湿部材を配置する工程と、を備える。
【0014】
この乾燥状態維持方法では、筒状構造体が水面から上方に突出するように設置され、プラットフォームによって仕切られた筒状構造体の内部空間のうち上部内部空間に1回目の除湿部材の配置が行われる。カバー構造により上から密閉された上部内部空間に除湿部材が配置されるので、外部から電力が供給されない環境下であっても上部内部空間を水分から保護することができ、筒状構造体の内部におけるカビの発生を抑制できる。したがって、筒状構造体の内部にある分電盤、収納ボックスおよび精密機器を湿気およびカビから保護できる。さらに、乾燥状態維持方法では、上部内部空間にケーブルが設置された後に、上部内部空間の気密が確保され、かつ上部内部空間に2回目の除湿部材が配置される。よって、ケーブルが設置された後に気密が確保された上部内部空間をさらに除湿部材によって除湿できるので、筒状構造体の内部を効果的に乾燥状態に維持できる。さらに、除湿部材が配置されることにより、定期的な給油作業等を不要にできるので、筒状構造体の内部における作業を安全に行うことができる。よって、作業を安全に行うことができるとともに筒状構造体の内部の乾燥状態を維持できる。
【0015】
(5)上記(4)において、乾燥状態維持方法は、上部内部空間に上部内部空間の温度および湿度を測定する温湿度計を配置する工程と、筒状構造体から離隔した遠隔地から温湿度計によって測定された上部内部空間の温度および湿度をモニタリングする工程と、を備えてもよい。この場合、遠隔地から筒状構造体の上部内部空間の温度および湿度をモニタリングすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、作業を安全に行うことができるとともに筒状構造体の内部の乾燥状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る筒状構造体が構築される環境の例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る筒状構造体を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の筒状構造体の内部構造を示す筒状構造体の断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の筒状構造体のカバー構造を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のカバー構造における高気密化構造の例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図2の筒状構造体のプラットフォームを示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、塩化カルシウム系除湿部材の例を示す図である。
図7(b)は、除湿部材の配置態様の例を示す図である。
図7(c)は、除湿部材の配置態様の別の例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る乾燥状態維持方法の工程の例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、温度および相対湿度とカビの発生との関係の例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、変形例に係る筒状構造体を示す筒状構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る筒状構造体および乾燥状態維持方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
本実施形態に係る筒状構造体は、洋上構造物の基礎に設置された筒状のトランジションピースである。洋上構造物は、例えば、風力発電機である。
図1は、本実施形態に係る風力発電機1を備える洋上風力発電施設Aの概要を示している。風力発電機1は、基礎2と、本実施形態に係る筒状構造体であるトランジションピース3とを備える。
【0020】
例えば、洋上風力発電施設Aは、風力発電機1と、風力発電機1から沿岸に向かって延びる海底ケーブルA1と、海底ケーブルA1における風力発電機1とは反対の端部に設けられた陸上変電所A2とを有する。例えば、洋上風力発電施設Aは複数の風力発電機1を備え、陸上変電所A2は海底ケーブルA1を介して複数の風力発電機1から発電された電力の供給を受ける。
【0021】
例えば、洋上風力発電施設Aは、海底ケーブルA1が通される渚マンホールA3と、渚マンホールA3および陸上変電所A2の間に位置する運転監視施設A4とを有する。運転監視施設A4は、風力発電機1の運転状況を監視するための施設である。例えば、陸上変電所A2の風力発電機1とは反対側には電力系統A5が設けられる。以上、洋上風力発電施設Aの構成の例について説明した。しかしながら、洋上風力発電施設Aの構成は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0022】
風力発電機1は、例えば、海底Bに設けられており、洋上風力発電を行う。但し、風力発電機1は、海洋に限られず、例えば、湖または河川等、海洋とは異なる水中に設けられていてもよい。風力発電機1は、基礎2と、基礎2に設置されるトランジションピース3と、トランジションピース3に固定されるタワー4と、タワー4の上部に取り付けられたナセル5と、ナセル5に取り付けられたブレード6とを備える。
【0023】
タワー4は、例えば、コンクリート製または鋼製である。ナセル5の内部には発電機および増速器等が収容されており、例えば、増速器からはローター軸がナセル5の外部に突出している。ブレード6は、ナセル5のローター軸に固定されている。風力発電機1は、例えば、3枚のブレード6を備える。ブレード6が風を受けて回転すると、この回転はナセル5の内部の増幅器により一定の回転数に上げられて、この回転運動はナセル5の内部の発電機によって電力に変換される。例えば、ナセル5は、風向風速計を備えており、風速および風向に対応してローターの向きとブレード6の角度を制御することにより、効率的な発電を行う。
【0024】
風力発電機1は、例えば、モノパイルの基礎形式を備えており、モノパイルである基礎2の上方にトランジションピース3が設けられる。風力発電機1は、水中Wに打設されたモノパイルである基礎2と、基礎2から上方に延びると共にタワー4の下端に接続されたトランジションピース3とを備える。なお、基礎2は、モノパイルの基礎形式に代えて、トリパイル式の洋上風力基礎、またはジャケット式の洋上風力基礎を備えていてもよく、基礎2の形式は特に限定されない。
【0025】
例えば、海底Bにおける基礎2の周辺には、洗掘防止工7が設けられており、洗掘防止工7により海底Bの基礎2の周辺における地盤の洗掘が防止されている。例えば、水平面で切断したときの基礎2の断面形状は円形状とされている。一例として、基礎2は筒状を呈する。
【0026】
図2は、トランジションピース3を示す斜視図である。
図1および
図2に示されるように、トランジションピース3は、水面Tから上方に突出する筒状構造体である。トランジションピース3は、風力発電機1の鉛直度を確保するために設けられる。トランジションピース3は、鉛直方向D1に沿って延びる筒状の柱状部分3bと、柱状部分3bの上端に位置する外部プラットフォーム10とを有する。
【0027】
図3は、トランジションピース3に外部プラットフォーム10が設置されていない状態を示すトランジションピース3の縦断面図である。
図2および
図3に示されるように、柱状部分3bは、例えば、外部プラットフォーム10が載せられる上部3dと、上部3dの下端から下方に向かうに従って徐々に拡径する下部3fとを有する。外部プラットフォーム10は、柱状部分3bの上端から水平方向に突出するように柱状部分3bに設置されている。
【0028】
トランジションピース3の下部3fは基礎2の上部が通される部位である。例えば、下部3fと基礎2の上部との間にグラウトが充填されることによって基礎2にトランジションピース3が接合(グラウト接合)する。なお、基礎2にトランジションピース3を接合する手段は、上記のグラウト接合に限られない。基礎2にトランジションピース3を接合する手段は、例えば、ボルト接合であってもよく特に限定されない。また、予め(例えば海底Bに打ち込まれる前に)基礎とトランジションピース3が一体化されていてもよい。
【0029】
例えば、トランジションピース3は、柱状部分3bに作業者が乗り降りするための梯子3hを備える。梯子3hは、例えば、柱状部分3bの下部3fから柱状部分3bの上端まで延在している。トランジションピース3は柱状部分3bに着船設備3gを有する。着船設備3gには、トランジションピース3に上ってトランジションピース3で作業をする作業者が乗る船が到着する。着船設備3gは、例えば、鉛直方向D1に沿って延びる2本のポール3pと、ポール3pを柱状部分3bに接合する複数の接合部材3qとを備える。
【0030】
2本のポール3pの間には、作業者を乗せた船の船首が入り込む。例えば、2本のポール3pの間隔は、当該船から作業者がアクセスできる程度の広さとされている。2本のポール3pの間には梯子3hが設けられる。よって、船から下りた作業者が梯子3hを使ってトランジションピース3の外部プラットフォーム10に上ることが可能である。
【0031】
例えば、着船設備3gの複数の接合部材3qは、ポール3pに沿って並ぶように配置されている。接合部材3qは、例えば、柱状部分3bから突出する柱状とされており、各ポール3pと柱状部分3bとを互いに接続する。ポール3p及び複数の接合部材3qは、例えば、一体化されている。
【0032】
外部プラットフォーム10は、上部プラットフォームとも称される。外部プラットフォーム10は、タワー4の下端が接合されると共に、荷物が載置されるプラットフォームである。外部プラットフォーム10は、例えば、クレーンと、電源装置とを有する。外部プラットフォーム10は梯子3hの上端に設けられており、作業者が梯子3hを上って外部プラットフォーム10に入ることが可能である。例えば、外部プラットフォーム10のクレーンはダビッドクレーンであり、外部プラットフォーム10の電源装置はクレーンに電力を供給するクレーン電源装置である。
【0033】
トランジションピース3の内部には、トランジションピース3、および前述したタワー4の各機器を操作するコンピュータ等が配置されている。トランジションピース3は、水平方向に延在する部位を有する複数のプラットフォーム3cを備える。複数のプラットフォーム3cは、例えば、前述した外部プラットフォーム10と、複数のケーブルがまとめられるケーブルターミネーションプラットフォーム20と、鉛直上方への空気の流入を遮断するエアタイトプラットフォーム30と、基礎2が接合される接合部の上側に位置する下部プラットフォーム40とを備える。トランジションピース3の内部には梯子3xが設けられており、梯子3xを用いて外部プラットフォーム10からケーブルターミネーションプラットフォーム20、およびエアタイトプラットフォーム30に降りることが可能である。
【0034】
ケーブルターミネーションプラットフォーム20は、外部プラットフォーム10の下方且つエアタイトプラットフォーム30の上方に設けられる。ケーブルターミネーションプラットフォーム20は、水中Wにある海底ケーブルA1につながるケーブルがタワー4のケーブルに接続されるプラットフォームである。
【0035】
エアタイトプラットフォーム30は、トランジションピース3の内部空間Sにおける水面Tよりも上方に設けられたプラットフォームである。エアタイトプラットフォーム30は、トランジションピース3の内部空間Sを上部内部空間S1と下部内部空間S2とに仕切っている。
【0036】
例えば、上部内部空間S1にはケーブルターミネーションプラットフォーム20が設けられており、下部内部空間S2には下部プラットフォーム40が設けられている。例えば、下部内部空間S2は、水面Tの上方に位置する開放空間とされている。よって、下部内部空間S2は比較的湿度が高い。一方、上部内部空間S1は、後述するように密閉空間とされている。したがって、上部内部空間S1は低湿度空間とされている。
【0037】
例えば、トランジションピース3は、上部内部空間S1に配置された温湿度計35を有する。温湿度計35は、一定時間ごとに上部内部空間S1の温度および湿度を測定する。温湿度計35によって測定された上部内部空間S1の温度および湿度は、例えば、運転監視施設A4に送信される。この場合、トランジションピース3から離隔した陸上の運転監視施設A4において上部内部空間S1の温度および湿度をモニタリングすることができる。
【0038】
エアタイトプラットフォーム30は、ケーブルターミネーションプラットフォーム20の下方かつ下部プラットフォーム40の上方に設けられる。エアタイトプラットフォーム30は、トランジションピース3の上部と下部との空気流通を遮断するプラットフォームである。エアタイトプラットフォーム30は、海水からの空気を遮断する機能を有する。
【0039】
エアタイトプラットフォーム30は、例えば、炭素鋼で構成されており、錆が生じないように塗装されている。このエアタイトプラットフォーム30が海水からの空気を遮断することにより、エアタイトプラットフォーム30より上方におけるトランジションピース3の上部内部空間S1を腐食しにくい(錆やカビ等が生じにくい)環境とすることが可能である。
【0040】
下部プラットフォーム40は、例えば、基礎2にトランジションピース3を設置する作業が行われるプラットフォームである。一例として、下部プラットフォーム40では、基礎2の上部とトランジションピース3の下部3fとの間(接合部)にグラウトが充填され、当該グラウトが硬化することによって基礎2にトランジションピース3をグラウト接合させる作業が行われる。例えば、トランジションピース3の下部プラットフォーム40より下方の部位が基礎2に接合される接合部に相当する。
【0041】
トランジションピース3は、トランジションピース3の内部空間Sを上から密閉するカバー構造50を備える。
図4は、カバー構造50を示す斜視図である。
図3および
図4に示されるように、カバー構造50によってトランジションピース3の上部は封止されている。カバー構造50によって、トランジションピース3の上部からトランジションピース3の内部への空気は遮断される。
【0042】
これにより、トランジションピース3の内部への腐食因子の侵入を遮断できるので、例えば、海洋環境からトランジションピース3の内部を保護することが可能となる。カバー構造50は、平面視におけるカバー構造50の中央に向かって斜め上方に延在する複数の傾斜部52と、複数の傾斜部52の上端に位置する頂部53とを備える。
【0043】
一例として、平面視において、複数の傾斜部52は六角形状を呈し、頂部53は複数の傾斜部52の内側において六角形状を呈する。例えば、カバー構造50は6つの傾斜部52を有し、各傾斜部52は台形状を呈する。傾斜部52は、鉛直上方に位置する上底部52bと、鉛直下方に位置する下底部52cと、上底部52bおよび下底部52cを互いに接続する一対の脚部52dとを有する。頂部53は、複数の傾斜部52の上底部52bによって画成されている。例えば、頂部53は水平方向に延在している。
【0044】
カバー構造50は、複数の扉55を備える。例えば、傾斜部52及び頂部53のそれぞれに扉55が設けられる。一例として、互いに隣接する複数の傾斜部52及び頂部53のそれぞれに扉55が設けられる。扉55は、例えば、両開きの扉であり、扉55を構成する一対の板部のそれぞれに取っ手が設けられている。この取っ手を持って当該取っ手を引くことにより、扉55を開放することが可能である。例えば、各扉55は、カバー構造50の外部からカバー構造50の内部への水分の進入を抑制する気密構造を有する。
【0045】
例えば、複数の扉55は、傾斜部52に設けられた第1扉56、頂部53に設けられた第2扉57、および第1扉56が設けられた傾斜部52とは別の傾斜部52に設けられた第3扉58を含む。例えば、第1扉56は作業者がトランジションピース3の内部に出入りするための扉であり、第2扉57はトランジションピース3の内部に物(備品等)の出し入れをするための扉である。例えば、第3扉58は、ケーブルをトランジションピース3の内部に入れるための扉である。この場合、第3扉58は、外部プラットフォーム10に設けられるウインチによって海底Bから引き上げられたケーブルが通される。
【0046】
例えば、カバー構造50は、トランジションピース3の内部空間Sの気密を確保するための高気密化構造を有する。
図5は、一例としての高気密化構造60を模式的に示す断面図である。
図4および
図5に示されるように、例えば、高気密化構造60は、トランジションピース3の上端3kに設けられる。
【0047】
例えば、トランジションピース3は、上端3kに向かって上方に延び出す筒状部3rと、平面視において筒状部3rの上面から筒状部3rの径方向外側に延在するフランジ3sとを有する。この場合、トランジションピース3の上端3kは、筒状部3rの上面、およびフランジ3sの上面によって構成されている。
【0048】
カバー構造50は、平面視において、各傾斜部52からカバー構造50の外側に延在するフランジ部51を有する。例えば、平面視においてフランジ部51は円形状を呈する。フランジ部51には、フランジ部51をその板厚方向に延在する貫通孔51bが形成されている。フランジ3sには、フランジ3sをその板厚方向に貫通する貫通孔3tが形成されている。
【0049】
例えば、高気密化構造60は、貫通孔51bおよび貫通孔3tに挿通されるボルト61と、ボルト61をフランジ部51およびフランジ3sに締め付けるナット62と、ナット62およびフランジ3sの間に介在するOリング63と、傾斜部52および筒状部3rの間に介在する気密用ゴムガスケット64とを有する。この高気密化構造60によって、カバー構造50とトランジションピース3の上端3kとの間の気密が確保される。
【0050】
次に、上部内部空間S1の下部に位置するエアタイトプラットフォーム30について説明する。
図6は、エアタイトプラットフォーム30を示す斜視図である。エアタイトプラットフォーム30は梯子3xの下端に設けられる。例えば、エアタイトプラットフォーム30は円形状を呈する。
【0051】
図3および
図6に示されるように、例えば、エアタイトプラットフォーム30は、鋼製であり、エアタイトプラットフォーム30の外周31はトランジションピース3の内面3vに溶接によって固定されている。例えば、エアタイトプラットフォーム30は、扉32と、ケーブル配置部33と、穴部34とを有する。
【0052】
本実施形態では、扉32、ケーブル配置部33および穴部34が気密処理されている。具体例として、扉32は閉鎖され、ケーブル配置部33はケーブルが配置された後に密閉され、穴部34は封止手段8によって封止されている。上記の閉鎖、密閉および封止は、例えば、間にガスケット等を介在させて行われてもよい。
【0053】
前述したように、エアタイトプラットフォーム30の上方には上部内部空間S1が形成されている。上部内部空間S1は、下部内部空間S2とは異なり、ケーブル、分電盤、精密機器または収納ボックス等、高湿度な環境下に配置することが好ましくない機器が配置される空間である。したがって、上部内部空間S1の気密を確保して上部内部空間S1の乾燥状態を維持することが重要である。
【0054】
例えば、トランジションピース3は、タワー4、ナセル5およびブレード6が設置されず、一定期間水面Tから突出する状態で残置されることがある。トランジションピース3の残置期間は、例えば数ヶ月であることもあり、トランジションピース3の残置期間中に越冬することもある。前述したように、トランジションピース3は、内部が空洞とされた筒状構造体であるため、一定期間残置された状態でもケーブル等が設置された上部内部空間S1の乾燥状態を確実に維持する必要がある。
【0055】
しかしながら、前述したように発電機および除湿機を上部内部空間S1に配置する方法では、発電機に対する定期的な給油が必要であり、そのために作業者が船に乗ってトランジションピース3に向かう必要がある。特に冬期にはトランジションピース3の周囲では強風が吹き荒れていたり落雷があったりするので、給油のために定期的にトランジションピース3に向かうのは安全なことではない。したがって、発電機および除湿機を上部内部空間S1に配置する方法以外の方法で上部内部空間S1の乾燥状態を維持することが好ましい。
【0056】
そこで、本実施形態では、上部内部空間S1に除湿部材70を配置することによって上部内部空間S1の乾燥状態を少なくとも一定期間維持し、作業者が定期的にトランジションピース3に出向く手間を解消している。例えば、除湿部材は除湿剤である。以下では、除湿部材70、および除湿部材70の配置方法について説明する。
【0057】
図7(a)は、除湿部材70の一例である塩化カルシウム系除湿部材71を示す図である。
図7(b)は、塩化カルシウム系除湿部材71の配置態様の例を示す図である。
図7(c)は、除湿部材70の他の例であるポリマー系除湿部材72を示す図である。
図7(a)、
図7(b)および
図7(c)に示されるように、上部内部空間S1には複数の除湿部材70が配置され、複数の除湿部材70は塩化カルシウム系除湿部材71およびポリマー系除湿部材72を含む。
【0058】
塩化カルシウム系除湿部材71は、例えば、塩化カルシウムを含む除湿剤である。塩化カルシウム系除湿部材71は、例えば、塩化カルシウムの潮解力によってシリカゲルの5倍以上かつ7倍以下の吸湿力を有する。塩化カルシウム系除湿部材71は、自重の300%以下の水分を吸収する。塩化カルシウム系除湿部材71は、水分を吸収して得た潮解液を高分子による粘化によってゲル化する。
【0059】
例えば、塩化カルシウム系除湿部材71は、帯状を呈する。塩化カルシウム系除湿部材71は、例えば、並設方向D2に沿って並ぶ複数の袋部71bと、並設方向D2に並ぶ2つの袋部71bを互いに連結する連結部71cと、並設方向D2の端部に位置する袋部71bからU字状に延び出すように当該袋部71bに固定された紐状部71dとを有する。袋部71bは、その内部に塩化カルシウムを有する。塩化カルシウム系除湿部材71は、袋部71bに連結された紐状部71dを有することにより、容易に吊り下げることが可能である。
【0060】
例えば、トランジションピース3は、塩化カルシウム系除湿部材71を吊り下げて塩化カルシウム系除湿部材71を支持する支持部材73を上部内部空間S1に備える。トランジションピース3は複数の支持部材73を備えており、例えば、複数の支持部材73は第1支持部材74および第2支持部材75を含む。
【0061】
例えば、第1支持部材74は、天井に固定された複数の固定部材74bと、複数の固定部材74bの下端同士の間で水平方向に延在する紐状部材74cとを有する。複数の塩化カルシウム系除湿部材71は、折り曲げた状態で紐状部材74cに掛けられることにより、第1支持部材74に吊り下げられる。
【0062】
例えば、第2支持部材75は、複数の柱部75bと、複数の柱部75bの間において水平方向に延在する棒状部75cとを有する。複数の塩化カルシウム系除湿部材71は、折り曲げられた状態で棒状部75cに掛けられることにより、第2支持部材75に吊り下げられる。
【0063】
ポリマー系除湿部材72は、例えば、ポリマー材料を含む除湿剤である。ポリマー系除湿部材72は、例えば、相対湿度が一定値以上であるときに吸湿するとともに、相対湿度が当該一定値以上でないときに放湿することによって湿度の上下変動を抑制する。当該一定値は、例えば、50%である。ポリマー系除湿部材72は、例えば、塩化カルシウム系除湿部材71より高価であるが、塩化カルシウム系除湿部材71より吸湿能力が高い。
【0064】
例えば、ポリマー系除湿部材72は、シート状を呈する。例えば、複数種類のポリマー系除湿部材72が上部内部空間S1に配置される。複数種類のポリマー系除湿部材72は、例えば、第1ポリマー系除湿部材72bと、第1ポリマー系除湿部材72bよりも小さい第2ポリマー系除湿部材72cと、第2ポリマー系除湿部材72cよりも小さい第3ポリマー系除湿部材72dと、第3ポリマー系除湿部材72dよりも小さい第4ポリマー系除湿部材72fとを含む。このように互いに大きさが異なる複数種類のポリマー系除湿部材72を備えることにより。複数種類のポリマー系除湿部材72の効果的な配置が可能となる。
【0065】
第1ポリマー系除湿部材72b、第2ポリマー系除湿部材72c、第3ポリマー系除湿部材72dおよび第4ポリマー系除湿部材72fは、例えば、長方形状を呈する。例えば、第1ポリマー系除湿部材72bは、第1ポリマー系除湿部材72bの長手方向に沿って並ぶ複数の袋部72gと、複数の袋部72gに対してシート状に延在する延在部72hとを有する。例えば、延在部72hは、袋部72gが形成された面とは反対の面に粘着部を有し、当該粘着部を介して壁等に貼り付け可能とされている。
【0066】
例えば、第2ポリマー系除湿部材72cは、第1ポリマー系除湿部材72bと同様、複数の袋部72gと延在部72hとを有し、袋部72gおよび延在部72hの大きさが第1ポリマー系除湿部材72bとは異なっている。第3ポリマー系除湿部材72dは、例えば、1つの袋部72gと延在部72hとを有する。第4ポリマー系除湿部材72fは、第3ポリマー系除湿部材72dと同様に1つの袋部72gと延在部72hとを有し、袋部72gおよび延在部72hの大きさが第3ポリマー系除湿部材72dとは異なっている。
【0067】
例えば、ポリマー系除湿部材72は、上部内部空間S1に配置された電気機器9cに対向する位置に配置される。一例として、ポリマー系除湿部材72は、分電盤9の内部に配置される。具体例として、ポリマー系除湿部材72は、分電盤9の扉9bの内側に貼り付けられる。例えば、扉9bには複数のポリマー系除湿部材72が貼り付けられる。この場合、分電盤9の内部の電気機器9cをより効果的に湿気から保護できる。
【0068】
次に、本実施形態に係る乾燥状態維持方法について、
図8のフローチャートを参照しながら説明する。
図8は、本実施形態に係る乾燥状態維持方法の工程の例を示している。本実施形態に係る乾燥状態維持方法の各工程は、トランジションピース3の上にタワー4を構築する前までに実行される。
【0069】
まず、
図2および
図3に示されるように、水中Wに基礎2を打ち込んで基礎2を構築する(基礎を構築する工程)。その後、基礎2の上にトランジションピース3を設置する(筒状構造体を設置する工程、ステップP1)。このとき、トランジションピース3が鉛直方向D1に沿って延びるようにトランジションピース3の傾斜が調整される。そして、基礎2の上部とトランジションピース3の下部3fとの間にグラウトが充填されて当該グラウトが硬化することにより、基礎2にトランジションピース3が接合する。
【0070】
トランジションピース3の設置が完了した後、例えば、上部内部空間S1に温湿度計35を配置する(温湿度計を配置する工程)。より具体的には、作業者が船から下りて梯子3hを登り、外部プラットフォーム10に設けられたカバー構造50の扉55から上部内部空間S1に入って上部内部空間S1に温湿度計35を配置する。温湿度計35を配置した後には、トランジションピース3から離隔した遠隔地から温湿度計35によって測定された上部内部空間S1の温度および湿度をモニタリングする(モニタリングする工程)。例えば、陸上の運転監視施設A4から温湿度計35によって測定された上部内部空間S1の温度および湿度のモニタリングを実行する。
【0071】
そして、上部内部空間S1への1回目の除湿部材70の配置が行われる(1回目の除湿部材を配置する工程、ステップP2)。より具体的には、作業者が船から下りて梯子3hを登り、外部プラットフォーム10に設けられたカバー構造50の扉55から上部内部空間S1に入って上部内部空間S1に除湿部材70を配置する。
【0072】
除湿部材70は、例えば、段ボールに梱包された状態で船によってトランジションピース3まで搬送され、段ボールから複数の除湿部材70を吊りバッグに移して当該吊りバッグをクレーンによって外部プラットフォーム10に移動させる。そして、複数の除湿部材70を吊りバッグから縦長のバッグに移して当該縦長のバッグを上部内部空間S1に移動させる。
【0073】
上部内部空間S1における除湿部材70の配置は、例えば、第1支持部材74の紐状部材74cに複数の塩化カルシウム系除湿部材71をかけるとともに、第2支持部材75の棒状部75cに複数の塩化カルシウム系除湿部材71をかけることによって行う。そして、上部内部空間S1における分電盤9の扉9bを開けて、扉9bの内側に複数のポリマー系除湿部材72を貼り付ける。
【0074】
上部内部空間S1に除湿部材70を配置した後には、上部内部空間S1においてケーブルの設置が行われる(ケーブルを敷設する工程、ステップP3)。このとき、作業者がカバー構造50の扉55から上部内部空間S1に入って海底ケーブルA1につながるケーブルを上部内部空間S1に敷設する。
【0075】
ケーブルの敷設の後には、上部内部空間S1の気密を確保する工程が行われる(気密を確保する工程)。具体的には、エアタイトプラットフォーム30において扉32、ケーブル配置部33および穴部34を封止し、高気密化構造60を配置してカバー構造50を封止する。
【0076】
上部内部空間S1の気密を確保した後には、上部内部空間S1への2回目の除湿部材70の配置が行われる(2回目の除湿部材を配置する工程、ステップP4)。2回目の除湿部材70の配置は、例えば、冬を迎える前に行われる。例えば、2回目の除湿部材70の配置において、配置する除湿部材70の種類は、1回目の除湿部材70の配置のときと同一である。例えば、2回目の除湿部材70の配置方法は、1回目の除湿部材70の配置方法と同一である。
【0077】
しかしながら、2回目の除湿部材70の配置において、配置する除湿部材70の数は、1回目の除湿部材70の配置のときよりも多い。これは、1回目の除湿部材70の配置から2回目の除湿部材70の配置までの期間よりも、2回目の除湿部材70の配置からタワー4の構築までの期間の方が長いためである。このように期間の長さに応じて配置する除湿部材70の量が変更されることにより、上部内部空間S1の乾燥状態をより確実に維持できる。
【0078】
なお、トランジションピース3への除湿部材70の船による運搬は、1回目の除湿部材70の配置の前に、1回目の除湿部材70の分、および2回目の除湿部材70の分をまとめて行っておいてもよい。この場合、除湿部材70の運搬回数を減らすことができる。そして、トランジションピース3に運搬した2回目の除湿部材70を密封してトランジションピース3に仮置きしておいてもよい。
【0079】
以上のように、2回目の除湿部材70の配置を終えた後には、本実施形態に係る乾燥状態維持方法の工程が終了する。そして、一定期間経過後にトランジションピース3の上部にタワー4、ナセル5およびブレード6の構築が行われて、風力発電機1が完成する。
【0080】
次に、本実施形態に係るトランジションピース3および乾燥状態維持方法から得られる作用効果について説明する。
図3に示されるように、トランジションピース3はエアタイトプラットフォーム30を有し、エアタイトプラットフォーム30によってトランジションピース3の内部空間Sは上部内部空間S1と下部内部空間S2とに仕切られている。トランジションピース3はカバー構造50を有し、上部内部空間S1はカバー構造50によって密閉されている。さらに、上部内部空間S1は、エアタイトプラットフォーム30とカバー構造50との間に位置する密閉空間とされている。よって、外部から電力が供給されない環境下であっても上部内部空間S1を水分から保護することができ、トランジションピース3の内部におけるカビの発生を抑制できる。
【0081】
図9は、カビの成長のシミュレーションの結果を示している。
図9のグラフにおける横軸は日にちを示しており、
図9のグラフの縦軸は温度、相対湿度またはカビ成長下限相対湿度を示している。カビ成長下限相対湿度は、カビが成長しうる相対湿度の下限値を示している。
図9に示されるように、冬期(12月~3月頃)には、ほとんどの場合において、相対湿度がカビ成長下限相対湿度を下回っているので、カビはほとんど成長しないことが分かる。また、カビ成長下限相対湿度は常に70%を上回っているため、相対湿度が70%以下であればカビはほとんど成長しないことが分かる。本実施形態では、前述したように上部内部空間S1に除湿部材70を配置することにより、上部内部空間S1の湿度を70%以下に抑えることができる。
【0082】
さらに、上部内部空間S1の乾燥状態の維持にあたり、上部内部空間S1の換気を行う方法も考えられる。しかしながら、トランジションピース3の外部には、トランジションピース3の内部と比較して空中に浮遊しているカビが多く、さらに、海の風にはカビが好む塩分等のミネラルが含まれている。また、海の風は、高い湿度であることも多い。したがって、カビの発生を抑制するためには外気をトランジションピース3に流入させるのは望ましくない。よって、本実施形態では、上部内部空間S1を密閉空間とし、さらに上部内部空間S1に除湿部材70を配置することにより、より確実に上部内部空間S1の乾燥状態を維持してカビの発生を抑制している。
【0083】
よって、トランジションピース3の内部にある分電盤9、電気機器9c、収納ボックスおよび精密機器を湿気およびカビから保護できる。さらに、
図3に示されるように、トランジションピース3は、上部内部空間S1に配置された除湿部材70を備える。よって、密閉空間とされた上部内部空間S1を除湿部材70によって除湿できるので、トランジションピース3の内部を容易に乾燥状態に維持できる。除湿部材70が配置されることにより、定期的な給油作業等を不要にできるので、トランジションピース3の内部における作業を安全に行うことができる。したがって、作業を安全に行うことができるとともにトランジションピース3の内部の乾燥状態を維持できる。
【0084】
本実施形態において、トランジションピース3は、
図7(a)、
図7(b)または
図7(c)に示されるように、複数の除湿部材70を備えており、複数の除湿部材70の少なくともいずれかは、上部内部空間S1において吊り下げられている。例えば、塩化カルシウム系除湿部材71が吊り下げられている。この場合、複数の除湿部材70のいずれかが吊り下げられることにより、上部内部空間S1に多くの除湿部材70を容易に配置することができる。したがって、上部内部空間S1の乾燥状態をより効果的に維持できる。
【0085】
本実施形態において、複数の除湿部材70は、ポリマー系除湿部材72と、塩化カルシウム系除湿部材71とを含んでいる。ポリマー系除湿部材72は、塩化カルシウム系除湿部材71と比較して高価だが除湿効果が高い。したがって、精密機器の周辺等、高湿度化の抑制を強く求められる箇所にはポリマー系除湿部材72を配置し、それ以外の箇所には塩化カルシウム系除湿部材71を配置することによって、複数の除湿部材70を効率よく配置できる。その結果、トランジションピース3の内部の乾燥状態をより効果的に維持できる。
【0086】
本実施形態に係る乾燥状態維持方法では、トランジションピース3が水面Tから上方に突出するように設置され、エアタイトプラットフォーム30によって仕切られたトランジションピース3の内部空間Sのうち上部内部空間S1に1回目の除湿部材70の配置が行われる。カバー構造50により上から密閉された上部内部空間S1に除湿部材70が配置されるので、外部から電力が供給されない環境下であっても上部内部空間S1を水分から保護することができ、トランジションピース3の内部におけるカビの発生を抑制できる。したがって、トランジションピース3の内部にある分電盤9、電気機器9c、収納ボックスおよび精密機器を湿気およびカビから保護できる。さらに、乾燥状態維持方法では、上部内部空間S1にケーブルが設置された後に、上部内部空間S1の気密が確保され、かつ上部内部空間S1に2回目の除湿部材が配置される。よって、ケーブルが設置された後に気密が確保された上部内部空間S1をさらに除湿部材70によって除湿できるので、トランジションピース3の内部を効果的に乾燥状態に維持できる。
【0087】
本実施形態に係る乾燥状態維持方法は、上部内部空間S1に上部内部空間S1の温度および湿度を測定する温湿度計35を配置する工程と、トランジションピース3から離隔した遠隔地から温湿度計35によって測定された上部内部空間S1の温度および湿度をモニタリングする工程と、を備える。したがって、遠隔地からトランジションピース3の上部内部空間S1の温度および湿度をモニタリングすることができる。
【0088】
以上、本開示に係る筒状構造体および乾燥状態維持方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る筒状構造体および乾燥状態維持方法は、前述した実施形態の内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変形することが可能である。すなわち、本開示に係る筒状構造体の形状、大きさ、材料、数および配置態様、ならびに、本開示に係る乾燥状態維持方法の工程の内容および順序は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0089】
続いて、変形例に係る筒状構造体であるトランジションピース3Aについて
図10を参照しながら説明する。ところで、シミュレーションの結果により、上部内部空間S1では、エアタイトプラットフォーム30がある下部と比較して、カバー構造50に近い上部の方が結露が生じやすいことが分かっている。したがって、上部内部空間S1の上部における結露の発生を抑制することが求められる。
【0090】
図10に示されるように、トランジションピース3Aは、トランジションピース3Aの上部内部空間S1を除湿する除湿構造80を備える。除湿構造80は、上部内部空間S1の上部の除湿を行うことによって、上部内部空間S1の上部における結露の発生を抑制する。除湿構造80は、例えば、カバー構造50の周辺に配置された除湿装置81を備える。
【0091】
例えば、除湿構造80は、除湿装置81からカバー構造50まで延びる第1管部82と、除湿装置81から突出する第2管部83と、カバー構造50から突出する第3管部84とを有する。第1管部82は、除湿装置81をカバー構造50に接続するための接続管部であり、第1管部82の内部空間は、除湿装置81の内部空間81b、およびカバー構造50の内部空間S(上部内部空間S1)に連通している。
【0092】
第2管部83は、除湿装置81に空気K1を流入させるための管部である。空気K1は、例えば、湿潤空気である。第2管部83の内部空間は、除湿装置81の内部空間81bに連通している。例えば、第2管部83は、逆止弁85を有し、除湿装置81への空気K1の流入は許容されるが、除湿装置81から第2管部83の外部への空気の流出は規制される。これにより、第2管部83を介して効果的に空気K1を取り込むことができる。
【0093】
第3管部84は、カバー構造50から空気K2を排出させるための管部である。第3管部84の内部空間は、カバー構造50の内部空間Sに連通している。例えば、第3管部84は、逆止弁86を有し、カバー構造50の外部への空気K2の流出は許容されるが、カバー構造50の内部への空気の流入は規制される。これにより、カバー構造50の内部への湿潤空気の流入を抑制できる。
【0094】
除湿装置81は、除湿装置81の内部空間81bに除湿部材90を備える。除湿部材90は、例えば、塩化カルシウムが含有されたフィルタとされている。第2管部83から除湿装置81の内部空間81bに流入した空気K1は、除湿部材90を通るときに除湿されて乾燥空気K3となり、乾燥空気K3が第1管部82を介してカバー構造50の内部空間Sに流入する。したがって、カバー構造50の内部空間S、およびトランジションピース3の上部内部空間S1の乾燥状態を維持できる。そして、内部空間Sに配置する除湿部材70の量を減らすことができるので、除湿部材70の配置作業を容易に行うことができる。
【0095】
また、変形例として、トランジションピース3の上部内部空間S1の内面3v(
図3参照)に断熱材が設置されてもよい。断熱材は、カバー構造50の内側に設置されてもよい。この場合、カバー構造50の内側を含む上部内部空間S1において、結露の発生をより確実に抑制できる。
【0096】
前述した実施形態では、除湿部材70が塩化カルシウム系除湿部材71およびポリマー系除湿部材72を含む例について説明した。しかしながら、配置する除湿部材の種類は特に限定されない。例えば、除湿部材は、塩化カルシウムそのものであってもよいし、塩化カルシウムにゼオライトが添加された除湿剤であってもよい。さらに、除湿部材が吸水性を有する除湿剤である場合、除湿剤の吸水状況を把握するためのインジケータが設けられてもよい。このインジケータは、例えば、シリカゲルまたは水分検知シートである。この場合、シリカゲルまたは水分検知シートの色彩の変化を見ることによって除湿剤の吸水状況を把握できる。
【0097】
前述した実施形態では、上部内部空間を画成するプラットフォームがエアタイトプラットフォーム30である例について説明した。しかしながら、プラットフォームは、エアタイトプラットフォーム以外のプラットフォームであってもよく、例えば
図6と同等の高気密化構造によって筒状構造体の内部空間を上部内部空間と下部内部空間とに仕切るプラットフォームであればよい。
【0098】
前述した実施形態では、筒状構造体が風力発電機1のトランジションピース3である例について説明した。しかしながら、本開示に係る筒状構造体は、風力発電機1のトランジションピース3以外の構造物であってもよい。本開示に係る筒状構造体は、例えば、石油プラットフォーム等の他の洋上構造物の筒状構造物、又は洋上構造物以外の筒状構造物であってもよい。このように、本開示に係る筒状構造体および乾燥状態維持方法は、種々の筒状構造物に適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1…風力発電機、2…基礎、3,3A…トランジションピース(筒状構造体)、3b…柱状部分、3c…プラットフォーム、3g…着船設備、3h…梯子、3k…上端、3p…ポール、3q…接合部材、3r…筒状部、3s…フランジ、3t…貫通孔、3v…内面、3x…梯子、4…タワー、5…ナセル、6…ブレード、7…洗掘防止工、8…封止手段、9…分電盤、9b…扉、9c…電気機器、10…外部プラットフォーム、20…ケーブルターミネーションプラットフォーム、30…エアタイトプラットフォーム(プラットフォーム)、31…外周、32…扉、33…ケーブル配置部、34…穴部、35…温湿度計、40…下部プラットフォーム、50…カバー構造、51…フランジ部、51b…貫通孔、52…傾斜部、52b…上底部、52c…下底部、52d…脚部、53…頂部、55…扉、56…第1扉、57…第2扉、58…第3扉、60…高気密化構造、61…ボルト、62…ナット、63…Oリング、64…気密用ゴムガスケット、70…除湿部材、71…塩化カルシウム系除湿部材、71b…袋部、71c…連結部、71d…紐状部、72…ポリマー系除湿部材、72b…第1ポリマー系除湿部材、72c…第2ポリマー系除湿部材、72d…第3ポリマー系除湿部材、72f…第4ポリマー系除湿部材、72g…袋部、72h…延在部、73…支持部材、74…第1支持部材、74b…紐状部材、75…第2支持部材、75b…柱部、75c…棒状部、80…除湿構造、81…除湿装置、81b…内部空間、82…第1管部、83…第2管部、84…第3管部、85,86…逆止弁、90…除湿部材、A…洋上風力発電施設、A1…海底ケーブル、A2…陸上変電所、A3…渚マンホール、A4…運転監視施設、A5…電力系統、B…海底、D1…鉛直方向、D2…並設方向、K1…空気、K2…空気、K3…乾燥空気、S…内部空間、S1…上部内部空間、S2…下部内部空間、T…水面、W…水中。