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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151979
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】自動弁
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/16 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F16T1/16 H
F16T1/16 J
F16T1/16 K
F16T1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065847
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛士
(57)【要約】
【課題】流体の合流に起因して生じる弁体手段の振動の偏りを抑え、確実に弁体手段の片減りを防止することができる自動弁の提供。
【解決手段】
弁座15に形成されている中心合流空間17内には、中心線L1に沿ってガイドピン40が直立して設けられている。このため、上部入口流路4a、4bを通過して中心合流空間17に流れ込んだ空気、ドレン又は蒸気は、コアンダ効果によってガイドピン40に引き寄せられ、中心線L1に沿って流れた上で合流する。このため、合流空間部において上部入口流路4a、4bから流れる空気、ドレン又は蒸気が合流する際、これらの流体の流れに生じる乱れを抑制することができる。したがって、流体の通過にともなって生じる弁ディスク9の振動に偏りが発生することはなく、確実に弁ディスク9の片減りを防止することができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入口、流体が流出する流出口、及び、弁室を有する本体部と、
中心軸を有する弁座部であって、前記弁室へ流体を流入させる複数の流入流路、及び、前記弁室から流体を流出させる流出流路が形成された弁座部と、
前記弁座部に開口し、前記複数の流入流路から流れ込む流体を合流させる合流路と、
前記弁室に収容され、前記合流路及び前記流出流路を開閉する弁体と、
前記合流路に位置し、前記複数の流入流路からそれぞれ流れ込む流体の流れを、前記中心軸に沿った方向に規制するように案内する案内手段とを備える自動弁。
【請求項2】
請求項1に係る自動弁において、
前記複数の流入流路は、前記中心軸を中心として回転対称になる位置にそれぞれ形成されている自動弁。
【請求項3】
請求項1又は2に係る自動弁において、
前記弁座部は、複数の流出流路を有し、
前記複数の流出流路は、前記中心軸を中心として回転対称になる位置にそれぞれ形成されている自動弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る自動弁は、スチームトラップ等の自動弁であって、弁室に浮動可能に位置した弁体によって弁の開閉を行う自動弁の構成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気等を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されている。この配管系統で蒸気を移送しようとする初期の段階においては、スムーズな蒸気移送を実現するため、配管内の空気を外部に排出しながら蒸気を移送する必要がある。また、蒸気移送を継続して行う過程で、蒸気が液化してドレン(蒸気の凝縮水)が発生する。このドレンが配管内で滞留すると蒸気移送の障害となるため、適宜、ドレンを外部に排出する必要がある。
【0003】
このような空気の排出やドレンの排出を行うために、配管系統にはディスク式スチームトラップが設けられることがある。ディスク式スチームトラップは、円盤状のディスク弁を弁室に内蔵しており、このディスク弁は浮動自在に配置されている。そして、通常時はこのディスク弁が流路上に設けられた弁座に密着して弁口を塞ぐことによって閉弁し、蒸気漏れが生じないようになっている。
【0004】
蒸気移送の初期の段階においては、温度に応じて伸縮するバイメタル環が伸長してディスク弁を押し上げているためディスク弁と弁座の間には僅かな隙間が形成されており、この隙間から配管内の空気が弁口を通じて排出され、初期段階における蒸気移送がスムーズに行われる。その後、ディスク式スチームトラップ内に蒸気が流入すると、高温の蒸気にさらされたバイメタル環が縮小し、ディスク弁は自重によって下降し弁座の弁口を塞いで閉弁する。
【0005】
続いて、蒸気移送にともなってドレンが発生し、ディスク式スチームトラップがドレンで満たされると、その水圧によってディスク弁が押し上げられ開弁して流路が開放され、ドレンが排出される。
【0006】
ドレンが排出された後は、同じ流路をたどって蒸気がディスク式スチームトラップに流入する。そして、この蒸気が高速でディスク弁の下部を流れることによって、ディスク弁の下面に低圧域が形成されてディスク弁が弁口に向けて引き寄せられ、これととともに、ディスク弁の上面に回り込んだ蒸気の高圧によってディスク弁が弁口に向けて押し下げられて閉弁する。
【0007】
こうして、ディスク弁が閉弁して流路の弁座を塞ぎ、蒸気漏れが防止される。この後、蒸気移送にともなってドレンが発生し、このドレンが弁室に流入した際、ディスク弁の上面に回り込んだ蒸気が冷却されて圧力が低下し、ディスク弁は再び開弁してドレンを排出する。
【0008】
このようなディスク式スチームトラップとして、後記特許文献1に開示されている技術がある。この特許文献1に開示されているディスク式自動弁は、ディスク型弁体の片減りを防止することを目的としており、下部入口流路2a及び上部入口流路4aと、下部入口流路2b及び上部入口流路4bを、ディスク弁9のディスク面に直交する中心線L1を中心として回転対称に配置している。また、出口流路6aと出口流路6bについても、中心線L1を中心として回転対称に配置している。
【0009】
これによって、ドレンや蒸気の流出にともなって生じるディスク弁9の振動に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じることを抑えることができる。このため、ディスク弁9の片減りを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-131147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された技術においては、ディスク弁9の直下に中心噴出空間17が形成されており、この中心噴出空間17内で2本の上部入口流路4a、4bから導かれる空気、ドレン又は蒸気といった流体が合流してディスク弁9に働きかけ、ディスク弁9に開閉動作を行わせる。
【0012】
この中心噴出空間17内において流体が合流する際、流量や圧力条件によっては、流体の流れに乱れが生じる虞があり、ディスク弁9の動作が不安定になる可能性がある。このような場合、ディスク弁9の振動に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じ、ディスク弁9に片減りが発生してしまう虞がある。
【0013】
そこで、本願に係る自動弁は、流体の合流に起因して生じる弁体の振動の偏りを抑え、確実に弁体の片減りを防止することができる自動弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願に係る自動弁は、流体が流入する流入口、流体が流出する流出口、及び、弁室を有する本体部と、中心軸を有する弁座部であって、前記弁室へ流体を流入させる複数の流入流路、及び、前記弁室から流体を流出させる流出流路が形成された弁座部と、前記弁座部に開口し、前記複数の流入流路から流れ込む流体を合流させる合流路と、前記弁室に収容され、前記合流路及び前記流出流路を開閉する弁体と、前記合流路に位置し、前記複数の流入流路からそれぞれ流れ込む流体の流れを、前記中心軸に沿った方向に規制するように案内する案内手段とを備える自動弁である。
【発明の効果】
【0015】
本願に係る自動弁においては、案内手段は、複数の流入流路からそれぞれ流れ込む流体の流れを、中心軸に沿った方向に規制するように案内する。
【0016】
このため、合流路において複数の流入流路から流れ込む流体が合流する際、流体の流れに生じる乱れを抑制することができる。したがって、流入流路における流体の通過にともなって生じる弁体の振動に偏りが発生することはなく、確実に弁体の片減りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願に係る自動弁の第1の実施形態であるディスク式スチームトラップ1を示す側面断面図である。
図2図1に示すディスク式スチームトラップ1の正面断面図である。
図3図1に示すガイドピン40の斜視図である。
図4図1に示す弁座15を上方から見た平面図である。
図5図1に示す弁座15を下方から見た底面図である。
図6】本願に係るディスク式自動弁の第2の実施形態であるディスク式スチームトラップに用いられるガイドピン240の斜視図である。
図7】本願に係るディスク式自動弁の第2の実施形態であるディスク式スチームトラップに用いられる弁座215を上方から見た平面図である。
図8図7に示す弁座215を下方から見た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態における用語説明]
以下の実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る自動弁の下記の構成要素に対応している。
【0019】
ディスク式スチームトラップ1・・・自動弁
上部入口流路4a、4b、204a、204b、204c・・・流入流路
出口流路6a、6b、206a、206b、206c・・・流出流路
弁室7・・・弁室
ディスク弁9・・・弁体
ボディー11及び蓋12・・・本体部
弁座15・・・弁座部
中心合流空間17、217・・・合流路
ガイドピン40、240・・・案内手段
中心線L1・・・中心軸
空気、ドレン又は蒸気・・・流体
【0020】
[第1の実施形態]
本願に係る自動弁の第1の実施形態であるディスク式スチームトラップ1を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態におけるディスク式スチームトラップ1の側面断面図(図4に示すI―I方向の矢視断面図)、図2はディスク式スチームトラップ1の正面断面図(図4に示すII―II方向の矢視断面図)であり、図1図2とは互いに直交する断面である。また、図3はガイドピン40の斜視図であり、図4は弁座15を上方から見た平面図、図5は弁座15を下方から見た底面図である。
【0021】
(ディスク式スチームトラップ1の構成の説明)
産業プラントに配置される配管系統の主管(図示せず)には、ボイラーで生成された蒸気が供給先に向けて移送される。蒸気移送を開始する段階では、配管内に空気が充満しているため、蒸気移送の初期にこの空気を速やかに排出する必要がある。また、蒸気移送を行う過程で、蒸気が液化してドレンが発生する。このドレンも適宜、配管系統から排出する必要がある。
【0022】
このような、蒸気移送の初期における空気や、蒸気移送の進行にともなって発生するドレンを適切に排出するために、配管系統の主管の随所には枝管が連通しており、この枝管にディスク式スチームトラップ1が接続されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、ディスク式スチームトラップ1のボディー11の上部に形成された凹み部には、蓋12が螺入して取り付けられている。ボディー11の凹み部と蓋12の内部空間とによって囲まれた領域が弁室7である。ボディー11と蓋12との間にはガスケット71が介在しており、弁室の気密性が保たれる。なお、蓋12には、さらに上部にキャップ13が取り付けられている。このキャップ13は、蓋12の外面との間にキャップ空間13Sを形成する。
【0024】
ボディー11の一方の側部には流入口51が形成されており、ここに枝管81が接続され、流入口51から蒸気やドレンが流入する。また、ボディー11の他方の側部には流出口52が形成されており、ここに排出管82が接続され、ドレンが排出管82を通じて排出される。流入口51と流出口52とは同軸上に位置するよう形成されている。
【0025】
ボディー11の下部に形成されたスクリーン空間32には、錆やスケール等の異物を捕捉するためのスクリーン25が設けられている。スクリーン空間32は中間流路31を介して流入口51と連通しており、流入口51から流入した蒸気やドレンはスクリーン25を透過する。ボディー11の下部に螺入されているスクリーン固定キャップ26を外すことによって、スクリーン25をボディー11から取り出し、スクリーン25に付着した異物を除外して清掃することができる。なお、図2では、スクリーン25の図示は省略されている。
【0026】
ボディー11の上部の凹み部には、略円柱形状をなす弁座15が設けられている。よって、弁座15の上面は、外周が円形状をなすシート面16として構成される。また、弁室7には浮動自在にディスク弁9が配置されている。通常時においては、ディスク弁9は自重によって弁座15のシート面16に着座し当接した状態に位置する。
【0027】
ボディー11の上部と弁座15の下面にはそれぞれ対応する環状空間3a、3bが形成されており、ボディー11に弁座15が取り付けられることによって環状空間3a、3bが連続して入口環状空間3を形成する。ボディー11と弁座15との間には環状のガスケット72、73が介在している。このガスケット72、73は、それぞれ入口環状空間3の内側と外側に配置され、入口環状空間3の気密性を保つ。
【0028】
そして、ボディー11にはスクリーン空間32と入口環状空間3とを連通させる2本の下部入口流路2a、2b(図2)が形成されている。この2本の下部入口流路2a、2bは、中心線L1を中心として回転対称に配置されている。中心線L1は、弁座15のシート面16に直交し、シート面16の中心(円形状の中心)を通る中心軸である。なお、本実施形態における中心線L1は、ボディー11、蓋12、弁座15及び出口中間流路36の中心軸でもある。
【0029】
また、弁座15のシート面16の中心部分には、上側に向けて開口する中心合流空間17が形成されている。中心合流空間17の中心軸は、ディスク弁9の中心線L1に一致している。そして、図2に示すように、弁座15にはこの中心合流空間17と入口環状空間3とを連通させる2本の上部入口流路4a、4bが形成されている。この2本の上部入口流路4a、4bも、中心線L1を中心として回転対称に配置されている(図4)。
【0030】
また、弁座15のシート面16には、前述の中心合流空間17の周辺を囲むように、環状の凹部である出口環状空間5が形成されている。そして、図1に示すように、弁座15にはこの出口環状空間5に連通する2本の出口流路6a、6bが形成されている。この2本の出口流路6a、6bは、中心線L1を中心として回転対称に配置されている(図5)。
【0031】
さらに、出口流路6a、6bは、ボディー11の中心部分に形成された出口中間流路36に連通している。この出口中間流路36は流出口52に連通している。
【0032】
本実施形態においては、中心合流空間17内にガイドピン40が設けられている。このガイドピン40は、弁座15の下方から貫通穴を貫通して中心合流空間17内で直立して固定されており、ガイドピン40の中心軸は中心線L1に一致している。
【0033】
図3に示すように、ガイドピン40は頭部41及びバー42によって構成されている。このバー42は中心線L1方向に長く延びる直方体の形状を備えている。そして、面積のより大きい側面がガイド平坦面42aとして構成され、ガイド平坦面42aが上部入口流路4a、4bに対向するように配置されている。ガイドピン40が貫通する弁座15下方の貫通穴はバー42の横断面形状に対応する形状を有しており、バー42がこの貫通穴に圧入されて貫通することによって、ガイドピン40は弁座15に固定されている。
【0034】
ディスク弁9が自重によって弁座15のシート面16に着座し当接することによって、中心合流空間17と出口環状空間5は塞がれ、上部入口流路4a、4b等の入口側の流路と、出口流路6a、6b等の出口側の流路との連通は遮断される。そして、ディスク弁9が浮上して弁座15のシート面16から離隔したとき、中心合流空間17と出口環状空間5は開かれ、上部入口流路4a、4b等の入口側の流路と、出口流路6a、6b等の出口側の流路との連通が開放される。
【0035】
弁座15の外周には斜面15aが形成されており、斜面15aを覆うようにしてバイメタル環22が載置されている。このバイメタル環22は環状部材の一部を切り欠いたC形の形状を有しており、周辺温度に応じて環の径長さが伸縮するようになっている。すなわち、周辺温度が所定の基準温度以上になった場合、バイメタル環22の環の径長さは伸長して拡開し、周辺温度が所定の基準温度を下回った場合、バイメタル環22の環の径長さは収縮して縮閉する。なお、バイメタル環22の上部には、ディスク弁9の下面に当接可能にリング21が配置されており、バイメタル環22はこのリング21を下方から支持している。
【0036】
(ディスク式スチームトラップ1の動作の説明)
続いて、ディスク式スチームトラップ1の動作を説明する。蒸気が流入していない初期の段階では、ディスク式スチームトラップ1は低温であるため、バイメタル環22は縮閉しており、弁座15の斜面15aに沿って上方にスライドして、リング21を介してディスク弁9を押し上げている。図1及び図2はこの状態を示しており、弁座15のシート面16とディスク弁9との間には僅かな隙間が生じている。
【0037】
蒸気移送の初期段階においては、配管内に空気が充満しているが、蒸気移送に従ってこの空気は押し出され、弁座15のシート面16とディスク弁9との隙間を通って、出口環状空間5から出口流路6a、6b、出口中間流路36を通過し、流出口52から排出管82に排出される。
【0038】
初期段階における空気の排出が行われた後、低温のドレンが流入口51から矢印91方向に沿ってディスク式スチームトラップ1に流入する。流入したドレンはスクリーン空間32から下部入口流路2a、2bを通って入口環状空間3に一旦、流入し、この入口環状空間3から上部入口流路4a、4bを通って図2に示す矢印92、93方向に進み、中心合流空間17で合流した上、弁室7に向かって噴出する。
【0039】
このドレンの噴出によってディスク弁9は弁座15のシート面16から大きく押し上げられて完全に開弁し(図示せず)、ドレンは弁室7に流入する。そして、流入したドレンは、出口環状空間5から出口流路6a、6bに流れ込んで図1に示す矢印94、95方向に進み、出口中間流路36、流出口52を通じて排出管82に矢印96方向に沿って排出される。
【0040】
この後、ディスク式スチームトラップ1には高温のドレンが矢印91方向に沿って流入する。この高温のドレンによってディスク式スチームトラップ1の温度が上昇し、バイメタル環22は拡開して、弁座15の斜面15aに沿って下方にスライドして沈み込む。これによって、バイメタル環22に支持されたリング21も下方に移動してディスク弁9に対する干渉が解除される。なお、この時点ではディスク弁9はドレンの通過によって押し上げられ、開弁したままの開放状態を維持する。
【0041】
高温のドレンが排出された後、引き続き高温の蒸気が矢印91方向に沿ってディスク式スチームトラップ1に流入し、この蒸気はディスク弁9の下面を高速で通過して排出される。この際、ディスク弁9の下面を高速で流れる蒸気のジェット流がベルヌーイの定理により低圧域を生じさせ、これによってディスク弁9が弁座15のシート面16に引き寄せられる。また、これと同時に蒸気はディスク弁9の側面からディスク弁9の上面に形成される弁室7の上側空間に回り込み、蒸気の再圧縮によって弁室7を高圧にする。
【0042】
このディスク弁9の下方の低圧化と上方の高圧化によって、ディスク弁9は下降し弁座15のシート面16に密着して閉弁する。そして、弁室7の高圧の持続によって、ディスク弁9による閉塞状態が維持され、蒸気の漏洩が防止される。
【0043】
この後、ディスク式スチームトラップ1には再び高温のドレンが流入するが、この際、弁室7の蒸気が放熱して圧力が低下し、ディスク弁9はドレンに押し上げられて開弁してドレンを流出口52から排出する。なお、弁室7の圧力変化については、キャップ空間13S内の空気が保温材として機能することによって外気温の影響を回避し、弁室7の放熱速度は一定に保たれる。このため、ディスク弁9の安定した動作を確保することができる。
【0044】
高温のドレンを排出した後、ディスク式スチームトラップ1には再度、高温の蒸気が流入してディスク弁9は閉弁する。以上のようなディスク弁9の上昇又は下降の反復動作によって閉弁又は開弁が繰り返され、ドレンは適宜排出される。
【0045】
ここで本実施形態では、前述のように中心合流空間17内に、中心線L1に沿って配置されたガイドピン40が直立して設けられており、ガイドピン40のガイド平坦面42aは上部入口流路4a、4bに対向するように位置している。このため、上部入口流路4a、4bを通過して中心合流空間17に流れ込んだ空気、ドレン又は蒸気は、コアンダ効果によって中心線L1に沿った方向に規制されて流れる。
【0046】
このコアンダ効果とは、粘性流体のジェット流が近傍の壁面へ引き寄せられる性質をいい、本実施形態では、上部入口流路4a、4bを通過した空気、ドレン又は蒸気といった粘性流体が中心合流空間17で合流する際、図2に示す矢印92、93のようにガイドピン40のガイド平坦面42aに引き寄せられ、ガイド平坦面42aに沿って流れた上で合流する。
【0047】
このため、合流空間部において上部入口流路4a、4bから流れる空気、ドレン又は蒸気が合流する際、これらの流体の流れに生じる乱れを抑制することができる。したがって、流体の通過にともなって生じる弁ディスク9の振動に偏りが発生することはなく、確実に弁ディスク9の片減りを防止することができる。なお、本実施形態では、ガイドピン40にガイド平坦面42aを形成しているため、ガイド平坦面42aの平らな面に沿わせ、確実に流体を直線状に導くことができる。
【0048】
また、ディスク式スチームトラップ1に流入する高圧の蒸気にはドレンが混入した状態であり、弁ディスク9は常時、細かな振動を繰り返す傾向にある。しかし、前述のように、下部入口流路2a及び上部入口流路4aと、下部入口流路2b及び上部入口流路4bとは、中心線L1を対称軸として回転対称に配置されている。このため、中心合流空間17から噴出するドレンや蒸気の噴出方向が対称的になり、噴出によって押し上げられるディスク弁9に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じることはない。このため、確実にディスク弁9の片減りを防止することができる。
【0049】
また、本実施形態においては、さらに出口流路6aと出口流路6bとは、中心線L1を対称軸として回転対称に配置されており、ドレンや蒸気の弁室7からの流出にともなって生じるディスク弁9の振動に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じることはない。このため、確実にディスク弁9の片減りを防止することができる。
【0050】
[第2の実施形態]
本願に係る自動弁の第2の実施形態であるディスク式スチームトラップを図面に基づいて説明する。図6は本実施形態で用いられるガイドピン240の斜視図であり、図7は本実施形態のディスク式スチームトラップに用いられる弁座215を上方から見た平面図であり、図8は弁座215を下方から見た底面図である。本実施形態においては、第1の実施形態で示した弁座15に代えて弁座215を用いる。弁座215以外の構成は、第1の実施形態で示したディスク式スチームトラップ1と同様である。
【0051】
第1の実施形態においては、案内手段としてガイドピン40(図3)を掲げたが、本実施形態ではガイドピン40の代わりにガイドピン240が弁座215の中心合流空間217に直立して設けられている。図6に示すように、ガイドピン240は頭部241及びバー242から構成されている。このバー242は中心線L1方向に長く延びる円柱形状を備えている。
【0052】
また、第1の実施形態においては、弁座15に2本の上部入口流路4a、4bが形成されていたが(図2図4)、本実施形態の弁座215には3本の上部入口流路204a、204b、204cが形成されている。そしてこれら上部入口流路204a、204b、204cは、中心軸L1を中心として回転対称になる位置にそれぞれ形成されている。
【0053】
すなわち、ディスク式スチームトラップに流入した蒸気やドレンは、ボディー11に形成された下部入口流路2a、2bから環状空間3aに入り(図2参照)、図8に示す環状空間203bに連通して形成されている3本の上部入口流路204a、204b、204cに流入する。そして、この蒸気やドレンは、弁座215の上面であるシート面216の中心に形成されている中心合流空間217(図7)において合流する。
【0054】
このとき、中心合流空間217には中心線L1に沿って配置されたガイドピン240が設けられている。このため、上部入口流路204a、204b、204cを通過して中心合流空間217に流れ込んだ空気、ドレン又は蒸気は、コアンダ効果によって中心線L1に沿った方向に規制されて流れる。
【0055】
すなわち、上部入口流路204a、204b、204cを通過した空気、ドレン又は蒸気といった粘性流体が中心合流空間217で合流する際、ガイドピン240のバー242の外周曲面に引き寄せられバー242に沿って流れた上で合流する。
【0056】
このため、合流空間部217において上部入口流路204a、204b、204cから流れる空気、ドレン又は蒸気が合流する際、これらの流体の流れに生じる乱れを抑制することができる。したがって、流体の通過にともなって生じる弁ディスク9の振動に偏りが発生することはなく、確実に弁ディスク9の片減りを防止することができる。なお、本実施形態においては、ガイドピン240のバー242は円柱形状を有しているが、上部入口流路204a、204b、204cに対応させ、中心線L1方向に延びる3つのガイド平坦面を形成して、より確実に流体を直線状に導くこともできる。
【0057】
3本の上部入口流路204a、204b、204cは、中心軸L1を対称軸として回転対称になる位置にそれぞれ形成されているため、中心合流空間217から噴出するドレンや蒸気の噴出方向が対称的になり、噴出によって押し上げられるディスク弁9(図1図2)に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じることはない。このため、確実にディスク弁9の片減りを防止することができる。なお、図8に示すように弁座215には、入口環状空間3(図2)の気密性を保つためのガスケット272、273が設けられている。
【0058】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、ボディー11に2本の下部入口流路2a、2bが形成されている例を示したが、弁座215に設けられている上部入口流路204a、204b、204cに対応するように3本の下部入口流路を形成することもできる。
【0059】
また、第1の実施形態においては、弁座15に2本の出口流路6a、6bが形成されていたが(図1参照)、本実施形態の弁座215には3本の出口流路206a、206b、206cが形成されている。そしてこれら出口流路206a、206b、206cは、中心軸L1を中心として回転対称になる位置にそれぞれ形成されている(図8)。
【0060】
すなわち、中心合流空間217から噴出したドレンや蒸気は、弁座215のシート面216に形成されている出口環状空間205に連通した出口流路206a、206b、206cに流れ込み、出口中間流路36、流出口52を通じて排出管82に排出される(図1参照)。
【0061】
このとき、3本の出口流路206a、206b、206cは、中心軸L1を対称軸として回転対称になる位置にそれぞれ形成されているため、ドレンや蒸気の流出にともなって生じるディスク弁9(図1図2)の振動に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じることはない。このため、確実にディスク弁9の片減りを防止することができる。
【0062】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、自動弁、弁座部、本体部、流入流路、合流路、弁室、流出流路、中心軸、弁体、案内手段及び流体のそれぞれについて例を掲げたが、これらは単なる例示であり、各々について異なる構成を採用することもできる。
【0063】
すなわち、たとえば前述の実施形態においては、案内手段としてガイドピン40、240を例示したが、合流空間部(中心合流空間17、217等)に位置し、複数の流入側流路(上部入口流路4a、4b、204a、204b、204c等)からそれぞれ流入する流体(空気、ドレン又は蒸気等)の流れを、弁体中心軸(中心線L1等)に沿った方向に規制するように案内するものであれば他の形状、構造を用いることができる。
【0064】
また、前述の実施形態においては、自動弁としてディスク式スチームトラップ1を例示したが、弁室部(弁室7等)に浮動自在に位置する弁体手段(ディスク弁9等)によって流入側流路(上部入口流路4a、4b、204a、204b、204c等)と弁室部(弁室7等)とのの連通を開放又は遮断するものであれば他の自動弁に本願に係る自動弁を適用することもできる。弁体手段は、前述の実施形態において例示したディスク9に限るものではなく、他の形状、構造を用いてもよい。
【0065】
さらに、前述の実施形態においては、流入側流路として、2本の上部入口流路4a、4bや3本の上部入口流路204a、204b、204cを例示したが、中心線L1(基準軸)を中心として、回転対称に位置するものである限り、4本以上の上部入口流路を設けることができ、さらに他の形状、構造を採用することもできる。なお、4本以上の上部入口流路を設けた場合、上部入口流路に対応させて案内手段(ガイドピン40、240等)に4か所以上のガイド平坦面を形成することもできる。
【0066】
また、前述の実施形態においては、流出側流路として、2本の出口流路6a、6bや3本の出口流路206a、206b、206cを例示したが、中心線L1(基準軸)を中心として、回転対称に位置するものである限り、4本以上の出口流路を設けることができ、さらに他の形状、構造を採用することもできる。
【0067】
さらに、前述の各実施形態を組み合わせて新たな実施形態とすることもできる。なお、本願に係るディスク式自動弁においては、中心軸を通る単一の流路も、中心軸に対し回転対称に位置するものとする。
【符号の説明】
【0068】
1:ディスク式スチームトラップ 4a、4b、204a、204b、204c:上部入口流路
6a、6b、206a、206b、206c:出口流路 7:弁室 9:ディスク弁
11:ボディー 12:蓋 15:弁座 16:シート面 17、217:中心合流空間
40、240:ガイドピン L1:中心線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8