(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151980
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】放電制御方法、及び、放電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241018BHJP
H02P 21/22 20160101ALI20241018BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02P21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065848
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 和俊
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB06
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE08
5H505EE32
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA06
5H505HA10
5H505HB01
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL55
5H505MM12
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770FA13
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA03Z
5H770HA07Z
5H770JA17W
5H770LA08W
5H770LA10W
5H770LB05
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】電動車両をシャットダウンするときに、電圧センサによらず、平滑コンデンサの放電異常を判定することができる放電制御方法及び放電制御装置を提供する。
【解決手段】電動車両100をシャットダウンするときに、インバータ13が平滑コンデンサ24に蓄積している電力を回転電機(11)で消費させることにより、平滑コンデンサ24を放電する。このとき、バッテリ10とインバータ13の接続を解除し、平滑コンデンサ24が蓄積している電力を用いて、回転電機(11)に交流電圧を印加し、交流電圧によって回転電機(11)に流れる電流である回転電機電流(I
ac,i
d等)を取得する。そして、回転電機電流(I
ac,i
d等)、または、回転電機電流をフィードバックした交流電圧の指令(v
d
*)、を異常判定パラメータとし、この異常判定パラメータに基づいて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力によって駆動する電動車両をシャットダウンするときに、インバータが平滑コンデンサに蓄積している電力を回転電機で消費させることにより、前記平滑コンデンサを放電する放電制御方法であって、
前記バッテリと前記インバータの接続を解除し、
前記インバータのスイッチング素子を制御することにより、前記平滑コンデンサが蓄積している電力を用いて、前記回転電機に交流電圧を印加し、
前記交流電圧によって前記回転電機に流れる電流である回転電機電流を取得し、
前記回転電機電流、または、前記回転電機電流をフィードバックした前記交流電圧の指令、を異常判定パラメータとし、
前記異常判定パラメータに基づいて、前記平滑コンデンサの放電異常を判定する、
放電制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放電制御方法であって、
前記平滑コンデンサの放電を開始したときに、前記異常判定パラメータに対して、初期値を設定し、
前記初期値に対する前記異常判定パラメータの変化に基づいて、前記放電異常を判定する、
放電制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の放電制御方法であって、
前記放電の開始後、応答時定数に応じて予め設定する過渡期間が経過したときの前記異常判定パラメータの値を前記初期値に設定する、
放電制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の放電制御方法であって、
前記異常判定パラメータとして前記回転電機電流を用いる場合、
前記回転電機電流が実質的にゼロとなったか否かを判定する閾値を設定し、
前記初期値の設定後、予め定める所定時間が経過した時点で前記回転電機電流の大きさが前記閾値以上であるときに、前記放電異常であると判定する、
放電制御方法。
【請求項5】
請求項3に記載の放電制御方法であって、
前記初期値と前記異常判定パラメータの比によって、前記平滑コンデンサの電力残存率を評価し、
前記比に対して閾値を設定し、
前記初期値の設定後、予め定める所定時間が経過した時点における前記比と前記閾値との比較により、前記放電異常を判定する、
放電制御方法。
【請求項6】
請求項3に記載の放電制御方法であって、
前記初期値と前記異常判定パラメータの差によって、前記平滑コンデンサにおける電力減少量を評価し、
前記差に対して閾値を設定し、
前記初期値の設定後、予め定める所定時間が経過した時点における前記差と前記閾値との比較により、前記放電異常を判定する、
放電制御方法。
【請求項7】
請求項3に記載の放電制御方法であって、
前記初期値が予め定める基準値を超えないときに、前記放電異常であると判定する、
放電制御方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の放電制御方法であって、
前記交流電圧は、前記回転電機を脱調させる周波数を有する高周波電圧であり、
前記異常判定パラメータとして、前記高周波電圧によって生じる前記回転電機電流である高周波電流を用い、
前記高周波電流の大きさの変化に基づいて、前記放電異常を判定する、
放電制御方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の放電制御方法であって、
前記交流電圧の指令は、予め定める一定のd軸電流を生じさせ、かつ、q軸電流を生じさせないd軸電圧指令及びq軸電圧指令によって構成され、
前記回転電機電流として、前記d軸電流を取得し、
前記d軸電流をフィードバックすることによって前記d軸電圧指令を生成し、
前記異常判定パラメータとして、前記d軸電流、前記d軸電圧指令、または、前記d軸電流及び前記d軸電圧指令を用いる、
放電制御方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の放電制御方法であって、
前記インバータが前記平滑コンデンサの電圧を検出する電圧センサを備える場合、
前記バッテリが前記インバータに入力する電圧と、前記電圧センサの検出値と、を比較することにより、前記電圧センサの異常を判定し、
前記電圧センサが正常に動作していると判定したときには、前記電圧センサの検出値に基づいて、前記平滑コンデンサの前記放電異常を判定し、
前記電圧センサに異常が生じていると判定したときに、前記異常判定パラメータに基づいて、前記平滑コンデンサの前記放電異常を判定する、
放電制御方法。
【請求項11】
バッテリの電力によって駆動する電動車両をシャットダウンするときに、インバータが平滑コンデンサに蓄積している電力を回転電機で消費させることにより、前記平滑コンデンサを放電する放電制御装置であって、
前記バッテリと前記インバータの接続を解除する車両コントローラと、
前記車両コントローラが前記バッテリと前記インバータの接続を解除したときに、前記インバータのスイッチング素子を制御することにより、前記平滑コンデンサが蓄積している電力を用いて、前記回転電機に交流電圧を印加するモータコントローラと、
を備え、
前記モータコントローラが、
前記交流電圧によって前記回転電機に流れる電流である回転電機電流を取得し、
前記回転電機電流、または、前記回転電機電流をフィードバックした前記交流電圧の指令、を異常判定パラメータとし、
前記異常判定パラメータに基づいて、前記平滑コンデンサの放電異常を判定する、
放電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両をシャットダウンするときに、インバータが含む平滑コンデンサを放電させる放電制御方法、及び、放電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気車のキースイッチをオフにしたときに、q軸電流指令値及びd軸電流指令値を車両挙動が起きない大きさに制限して電動機の巻線に電流を流すことにより、平滑用コンデンサの電荷を消費させる制御装置を開示している。この制御装置では、平滑用コンデンサの電圧が放電完了電圧以下に減少したことを電圧センサで感知したときに、放電処理を終了する。また、この制御装置は、電動機の制御が正常に行えない場合、制御を続けると機器を破損させる場合、または、ハードによってPWMが停止されてしまう場合に放電を停止し、及び、平滑用コンデンサの電荷が一定時間下がらない場合に放電を中止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車両をシャットダウンするときに、インバータが平滑コンデンサに蓄積している電力を電動機で消費させることにより、平滑コンデンサを放電させる放電制御が知られている。平滑コンデンサの放電が正常に完了したか否かの判定は、通常、平滑コンデンサの電圧を検出することによって行われる。このため、平滑コンデンサの電圧を検出する電圧センサが故障した場合、あるいは、平滑コンデンサの電圧を検出する電圧センサを有しない場合には、放電異常(及び放電完了)を判定できない。
【0005】
本発明は、電動車両をシャットダウンするときに、電圧センサに依らず、平滑コンデンサの放電異常を判定することができる放電制御方法及び放電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、バッテリの電力によって駆動する電動車両をシャットダウンするときに、インバータが平滑コンデンサに蓄積している電力を回転電機で消費させることにより、平滑コンデンサを放電する放電制御方法である。この放電制御方法では、バッテリとインバータの接続を解除し、インバータのスイッチング素子を制御することにより、平滑コンデンサが蓄積している電力を用いて、回転電機に交流電圧を印加し、交流電圧によって回転電機に流れる電流である回転電機電流を取得する。そして、回転電機電流、または、回転電機電流をフィードバックした交流電圧の指令、を異常判定パラメータとし、異常判定パラメータに基づいて、平滑コンデンサの放電異常を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動車両をシャットダウンするときに、電圧センサによらず、平滑コンデンサの放電異常を判定することができる放電制御方法及び放電制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、電動車両の駆動システムを示す説明図である。
【
図2】
図2は、モータコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、放電異常がないときに高周波電圧を印加したモータに流れる電流等の推移を示すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、放電異常判定のフローチャートの例である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係るモータコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、放電異常がないときに、q軸電流をゼロとしたままd軸電流を流す交流電圧をモータに印加する場合のdq軸電圧指令等を示すタイムチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る放電異常判定のフローチャートの例である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係るモータコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る放電異常判定のフローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、電動車両100の駆動システムを示す説明図である。電動車両100は、バッテリ10の電力で電動機(以下、モータ11という)を駆動することによって走行する車両である。電動車両100は、例えば、ハイブリッド車両や電気自動車である。
【0011】
バッテリ10は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池である。バッテリ10が出力する直流電圧(以下、バッテリ電圧Vdc-batという)は、図示しない電圧センサによって適宜に取得可能である。
【0012】
モータ11は、電動車両100の動力源であり、例えば三相同期電動機等によって構成される。本実施形態では、モータ11は三相同期電動機である。
【0013】
リレー12は、バッテリ10とインバータ13を接続する。リレー12がオンであるとき、バッテリ10はインバータ13に電力を供給する。このため、バッテリ10の電力によってモータ11が駆動し得る状態となる。一方、リレー12をオフにすることによって、バッテリ10とインバータ13の接続は解除される。
【0014】
本実施形態では、リレー12は、第1リレー12aと第2リレー12bとからなる。第1リレー12aは、バッテリ10とインバータ13の一方の接続端に設けられたリレーであり、第2リレー12bは、他方の接続端に設けられたリレーである。第1リレー12a及び第2リレー12bの両方をオンにすることにより、リレー12はオンとなる。一方、第1リレー12aまたは第2リレー12bの少なくとも一方をオフにすることにより、リレー12はオフとなる。本実施形態では、簡単のため、第2リレー12bは常時オンとなっており、リレー12のオン/オフは、第1リレー12aによって切り替えるものとする。
【0015】
インバータ13は、バッテリ10から入力される直流電力を交流電力に変換してモータ11に供給することにより、モータ11を回転させ、トルクを生じさせる。このとき、モータ11で生じたトルクは、ギヤボックス14を介して車輪15に伝達される。また、いわゆる回生制御により、モータ11で回生電力を生じさせるときには、インバータ13は、交流電力である回生電力を直流電力に変換して、バッテリ10に入力する。これにより、バッテリ10が充電される。
【0016】
インバータ13は、電力変換部21、電圧センサ22、及び、モータコントローラ23を含む。
【0017】
電力変換部21は、直流電力と交流電力の変換を行う回路である。電力変換部21は、スイッチング素子uu~wlと、平滑コンデンサ24と、を含む。電力変換部21は、スイッチング素子uu~wlのオン/オフを制御することにより、直流電力を交流電力に変換し、または、交流電力を直流電力に変換する。スイッチング素子uuはU相の上アームを構成し、スイッチング素子ulはU相の下アームを構成する。スイッチング素子vuはV相の上アームを構成し、スイッチング素子vlはV相の下アームを構成する。同様に、スイッチング素子wuはW相の上アームを構成し、スイッチング素子wlはW相の下アームを構成する。
【0018】
平滑コンデンサ24は、バッテリ10とモータ11で相互に入出力する電力を平滑化する。
【0019】
電圧センサ22は、平滑コンデンサ24の電圧によって、電力変換部21における直流電圧(以下、電力変換部電圧Vdc-invという)を検出する。電力変換部電圧Vdc-invは、バッテリ10からインバータ13に入力された直流電圧を表す。
【0020】
モータコントローラ23は、電力変換部21を制御することにより、モータ11の動作を制御する制御装置である。モータコントローラ23は、例えば1または複数のコンピュータによって構成され、以下のような処理を行うようにプログラムされている。
【0021】
モータコントローラ23は、リレー12がオンのとき、スイッチング素子uu~wlを制御する。これにより、モータコントローラ23は、電力変換部21において、適切に直流電力と交流電力の変換を行わせる。また、リレー12がオフになったときには、モータコントローラ23は、スイッチング素子uu~wlを制御することにより、平滑コンデンサ24が蓄積している電力をモータ11で消費させる。これにより、平滑コンデンサ24が放電される。
【0022】
車両コントローラ25は、運転者による操作部30の操作に応じて、電動車両100の動作を統括的に制御する上位の制御装置である。車両コントローラ25は、例えば1または複数のコンピュータによって構成され、以下のような処理を行うようにプログラムされている。
【0023】
車両コントローラ25は、リレー12のオン/オフを切り替えるリレー制御信号(図示しない)を出力する。具体的には、車両コントローラ25は、電動車両100の駆動システムを起動するときに、リレー12をオンにする。また、車両コントローラ25は、電動車両100の駆動システムを停止(以下、シャットダウンという)するときに、リレー12をオフにする。車両コントローラ25は、例えば、キースイッチ31が押圧されたことを検知した場合に、リレー12をオンまたはオフに切り換える。車両コントローラ25は、リレー12をオフにし、電動車両100をシャットダウンするときに、平滑コンデンサ24の放電を指令する放電指令Dcomをモータコントローラ23(インバータ13)に入力する。そして、モータコントローラ23は、放電指令Dcomにしたがって、平滑コンデンサ24の放電制御を行う。したがって、車両コントローラ25及びモータコントローラ23は、電動車両100の放電制御装置を構成する。なお、車両コントローラ25とモータコントローラ23は、実質的に一体の1つのコントローラとして構成される場合がある。
【0024】
車両コントローラ25は、アクセルペダル34、ブレーキペダル33、及び/または、シフト32の各操作状態に応じて、電動車両100の駆動を制御する。例えば、車両コントローラ25は、アクセルペダル34の操作量等に応じて、モータ11が出力すべきトルクを指令するトルク指令T*を生成する。モータコントローラ23は、トルク指令T*等にしたがって、スイッチング素子uu~wlをスイッチングさせることにより、モータ11にトルク指令T*に対応するトルクを出力させる。
【0025】
図2は、モータコントローラ23の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、モータコントローラ23は、電流指令演算部41、電流制御部42、二相三相変換部43、及び、制御切替部44を備える。
【0026】
電流指令演算部41は、トルク指令T*、モータ11の電気角速度ω、及び、インバータ13への入力直流電圧HVに基づいて、モータ11にトルク指令T*に応じたトルクを出力させるd軸電流指令id
*及びq軸電流指令iq
*を生成する。電流指令演算部41は、電気角速度ωを回転検出部46から取得し、入力直流電圧HVを制御切替部44から取得する。d軸電流指令id
*は、モータ11に流れる電流のうち、磁束を生じさせる電流成分についての指令であり、q軸電流指令iq
*は、モータ11に流れる電流のうち、トルクを生じさせる電流成分についての指令である。以下では、d軸電流指令id
*及びq軸電流指令iq
*を、必要に応じてdq軸電流指令id
*,iq
*と総称する。
【0027】
本実施形態では、電流指令演算部41は、トルク指令T*、電気角速度ω、及び、入力直流電圧HVと、dq軸電流指令id
*,iq
*と、を実験またはシミュレーション等に応じて予め対応付けたマップを有する。このため、電流指令演算部41は、このマップを参照することにより、トルク指令T*、電気角速度ω、及び、入力直流電圧HVに対応するdq軸電流指令id
*,iq
*を演算する。
【0028】
但し、モータコントローラ23が放電指令Dcomを受けたときには、電流指令演算部41は、トルク指令T*、電気角速度ω、及び、入力直流電圧HVによらず、平滑コンデンサ24の放電制御のために予め定めたdq軸電流指令id
*,iq
*を生成する。具体的には、放電指令Dcomを受けた場合、電流指令演算部41は、モータ11を回転させない(トルクを生じさせない)ように、平滑コンデンサ24が蓄積している電力を放電させるためのdq軸電流指令id
*,iq
*を生成することができる。放電制御用のdq軸電流指令id
*,iq
*は、例えば、id
*=Idx(一定値)、かつ、iq
*=0である。すなわち、放電制御用のdq軸電流指令id
*,iq
*は、モータ11を回転させずに、平滑コンデンサ24の電力を巻線の銅損により消費させるように、d軸電流idを流しつつ、q軸電流iqをゼロにさせる。放電制御用のd軸電流指令id
*の大きさ(Idx)は、例えば、平滑コンデンサ24が蓄積している電力が、予め定められた時間(例えば数秒程度)のうちに消費されるように、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0029】
電流制御部42は、dq軸電流指令id
*,iq
*と、実際のd軸電流id及びq軸電流iq(以下、dq軸電流id,iqという)と、の差がゼロとなるように、d軸電圧指令vd
*及びq軸電圧指令vq
*(以下、dq軸電圧指令vd
*,vq
*という)を生成する。すなわち、電流制御部42は、dq軸電流id,iqをフィードバックすることにより、dq軸電流id,iqがdq軸電流指令id
*,iq
*に追従するように、dq軸電圧指令vd
*,vq
*を生成する。なお、d軸電圧指令vd
*はd軸電圧vdについての指令であり、q軸電圧指令vq
*はq軸電圧vqについての指令である。
【0030】
具体的には、電流制御部42は、例えば下記の式(1)で表されるPI(Proportional Integral)制御により、dq軸電流指令id
*,iq
*及びdq軸電流id,iqに基づいて、dq軸電圧指令vd
*,vq
*を演算することができる。式(1)において、Kpdはd軸比例ゲインであり、Kidはd軸積分ゲインである。同様に、Kpqはq軸比例ゲインであり、Kiqはq軸積分ゲインである。これらのゲインは実験またはシミュレーション等によって予め定められる。また、式(1)において、Ldはd軸インダクタンスであり、Lqはq軸インダクタンスであり、φは永久磁石鎖交磁束数である。これらの各値は、モータ11に固有の特性であるため、制御においては既知である。
【0031】
【0032】
二相三相変換部43は、dq軸電圧指令vd
*,vq
*に対して、dq軸座標系からUVW座標系への座標変換処理(いわゆる二相三相変換処理)を施すことにより、U相電圧指令vu
*、V相電圧指令vv
*、及び、W相電圧指令vw
*(以下、三相交流電圧指令vu
*,vv
*,vw
*という)を演算する。
【0033】
制御切替部44は、二相三相変換部43が演算した三相交流電圧指令vu
*,vv
*,vw
*またはその他の三相交流電圧指令を電力変換部21に入力することにより、電動車両100の駆動システムが実行する制御を切り替える。以下では、制御切替部44が電力変換部21に入力する三相交流電圧指令を最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*という。
【0034】
具体的には、最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*の切り替えによって、制御切替部44は、電動車両100の駆動システムが実行する制御を、モータ駆動制御と、放電制御と、で切り替える。モータ駆動制御は、電動車両100の走行等のために、モータ11を駆動(回転)させる通常の制御である。放電制御は、電動車両100のシャットダウン時に、平滑コンデンサ24が蓄積している電力をモータ11で消費させることにより、平滑コンデンサ24を放電させる制御である。
【0035】
また、制御切替部44は、モータ駆動制御及び放電制御を適切に実行するために、電圧センサ22に、故障その他の異常が生じているか否かを判定する処理(以下、電圧センサ異常判定という)を行う。制御切替部44は、電圧センサ異常判定の結果に応じて、インバータ13への入力直流電圧HVを設定する。入力直流電圧HVは、電流指令演算部41及び電力変換部21における処理で使用される。
【0036】
電圧センサ22が正常に動作しており、電圧センサ22に異常がないと判定したときには、制御切替部44は、インバータ13への入力直流電圧HVを、電圧センサ22によって検出した電力変換部電圧Vdc-invに設定する。これは、インバータ13への入力直流電圧HVが電圧センサ22によって正常に検出されているからである。
【0037】
一方、電圧センサ22に異常が生じていると判定したときには、電圧センサ22の出力に基づく電力変換部電圧Vdc-invが不正確である。このため、電圧センサ22に異常が生じていると判定したときには、制御切替部44は、インバータ13への入力直流電圧HVを予め定める固定値(以下、最小入力電圧HVminという)に設定する。最小入力電圧HVminは、例えばバッテリ電圧Vdc-batの下限値である。
【0038】
この他、制御切替部44は、放電制御において、平滑コンデンサ24の放電制御を正常に完了できたか否か、換言すれば、平滑コンデンサ24の放電において異常が生じているか否か、を判定する処理(以下、放電異常判定という)を行う。なお、制御切替部44は、電圧センサ異常判定の結果に応じて、放電異常判定の方法を切り替える。すなわち、制御切替部44は、電圧センサ22が正常に動作している場合と電圧センサ22に異常が認められる場合で、異なる判定方法によって放電異常を判定する。
【0039】
モータ駆動制御及び放電制御における具体的な最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*の設定、電圧センサ異常判定、及び、放電異常判定については、詳細を後述する。
【0040】
なお、電力変換部21は、制御切替部44から入力される最終三相交流電圧vu1
*,vv1
*,vw1
*及び入力直流電圧HVに基づいて、スイッチング素子uu~wlをスイッチングさせる。これにより、電力変換部21は、バッテリ10の電力、または、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって、モータ11に交流電圧を印加する。その結果、モータ11が駆動され、または、平滑コンデンサ24が放電される。
【0041】
具体的には、電力変換部21は、最終三相交流電圧vu1
*,vv1
*,vw1
*を、相電圧ピークの最大値(HV/2)で正規化し、搬送波と比較することにより、スイッチング素子uu~wlをスイッチングするタイミングを決定する。搬送波は、例えば、数kHzから10数Hz程度の周波数を有する三角波である。
【0042】
上記の他、モータコントローラ23は、回転検出部46、三相二相変換部47、及び、全波整流演算部48を備える。
【0043】
回転検出部46は、レゾルバ等の回転位置検出器51が出力する信号を用いて、モータ11の電気角速度ω及び磁極位置θを検出する。電気角速度ωは、電流指令演算部41で使用される。磁極位置θは、二相三相変換部43及び三相二相変換部47で使用される。
【0044】
三相二相変換部47は、電流センサ52によって検出された三相交流電流iu,iv,iwに対して、UVW座標系からdq軸座標系への座標変換処理(いわゆる三相二相変換処理)を施すことにより、dq軸電流id,iqを演算する。dq軸電流id,iqは、電流制御部42で使用される。
【0045】
全波整流演算部48は、電流センサ52によって検出された三相交流電流iu,iv,iwを用いて、全波整流を演算する。全波整流は、モータ11に流れる電流の大きさを表す指標となる。全波整流演算部48は、三相交流電流iu,iv,iwのうちいずれか一相についての全波整流(一相全波整流)を演算することができる。また、全波整流演算部48は、各相の全波整流の合計である三相全波整流を演算することができる。さらに、全波整流演算部48は、位相全波整流や三相全波整流を、必要に応じて平滑化する場合がある。本実施形態では、全波整流演算部48は、平滑化した三相全波整流(以下、単に全波整流Iacという)を演算する。全波整流Iacは制御切替部44に入力される。
【0046】
本実施形態では、制御切替部44は、全波整流Iacを、放電制御において異常(放電異常)を判定するためのパラメータ(以下、異常判定パラメータという)として用いる。
【0047】
以下、制御切替部44が行うモータ駆動制御、平滑コンデンサ24の放電制御、並びに、平滑コンデンサ24の放電制御における放電異常判定について説明する。
【0048】
<モータ駆動制御>
モータコントローラ23が放電指令Dcomを受信していない場合、制御切替部44は、モータ駆動制御を行う。具体的には、制御切替部44は、二相三相変換部43が演算した三相交流電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*として電力変換部21に入力する。すなわち、放電指令Dcomが受信されておらず、バッテリ10の電力によってモータ11を駆動するシーンにおいては、(vu1
*,vv1
*,vw1
*)=(vu
*,vv
*,vw
*)である。これにより、モータ11はトルク指令T*に対応するトルクを生じさせる。
【0049】
<電圧センサ異常判定>
制御切替部44は、バッテリ電圧Vdc-batと電力変換部電圧Vdc-invを比較することにより、電圧センサ22に故障その他の異常が生じているか否かを判定する。例えば、制御切替部44は、バッテリ電圧Vdc-batと電力変換部電圧Vdc-invの差の大きさ(絶対値)に対して閾値ΔVを設定する。そして、制御切替部44は、バッテリ電圧Vdc-batと電力変換部電圧Vdc-invの差の大きさが継続的に閾値ΔVを超えた時間が、予め設定する時間Γerr以上となったときに、電圧センサ22に故障その他の異常が生じたと判定する。すなわち、|Vdc-bat-Vdc-inv|>ΔVの状態がΓerr以上の長時間継続したときに、電圧センサ22に異常が生じたと判定する。
【0050】
通常、バッテリ電圧Vdc-batと電力変換部電圧Vdc-invはほぼ同じ値となるので、これらの値の間に、閾値ΔVを超える有意な差異が継続的に生じているときには、電圧センサ22に異常が生じていると考えられる。このため、制御切替部44は、上記のように電圧センサ22の異常を判定する。この電圧センサ22の異常判定は、例えば、放電指令Dcomが受信されておらず、バッテリ10の電力によってモータ11を駆動するシーンにおいて予め行われる。なお、閾値ΔV及び時間Γerrは、実験またはシミュレーション等に基づいて予め設定される。
【0051】
<電圧センサに異常がない場合の放電制御>
制御切替部44は、モータコントローラ23が放電指令Dcomを受信したときに、平滑コンデンサ24の放電制御を行う。特に、電圧センサ22に異常が生じていない場合にモータコントローラ23が放電指令Dcomを受信したときには、制御切替部44は、二相三相変換部43が演算した三相交流電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*として電力変換部21に入力することにより、放電制御を行う。すなわち、(vu1
*,vv1
*,vw1
*)=(vu
*,vv
*,vw
*)である。
【0052】
但し、前述のように、モータコントローラ23が放電指令Dcomを受信したときには、dq軸電流指令id
*,iq
*は(id
*,iq
*)=(Idx,0)となるので、このシーンにおける最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*は、モータ11に、q軸電流iqを流さず、d軸電流idを選択的に流す。また、モータコントローラ23が放電指令Dcomを受信したときには、リレー12はオフにされているので、このd軸電流idのエネルギー源は、平滑コンデンサ24が蓄積していた電力である。
【0053】
したがって、電圧センサ22に異常が生じていない場合にモータコントローラ23が放電指令Dcomを受信したときには、制御切替部44は、平滑コンデンサ24が蓄積している電力によってモータ11に交流電圧(vu1
*,vv1
*,vw1
*)を印加する。そして、制御切替部44は、この交流電圧によってモータ11にd軸電流idを流すことによって、平滑コンデンサ24を放電させる。
【0054】
そして、制御切替部44は、インバータ13への入力直流電圧HVが放電制御終了判定閾値HVempよりも小さくなったときに(HV<HVemp)、平滑コンデンサ24の放電制御を終了する。放電制御終了判定閾値HVempは、平滑コンデンサ24が蓄積している電力が十分に小さくなったことを判定するための閾値であり、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。ここでは、電圧センサ22に異常が生じていないので、入力直流電圧HVは電圧センサ22によって検出された電力変換部電圧Vdc-invである。このため、電圧センサ22に異常が生じていない場合、放電制御の終了(正常終了)は、実質的に、電圧センサ22の電圧Vcに基づいて判定される。
【0055】
なお、電圧センサ22に異常が生じていない場合、制御切替部44は、予め定める所定の時間(例えば数秒程度)が経過した時点で、入力直流電圧HVが放電制御終了判定閾値HVemp以上であるときに、平滑コンデンサ24の放電制御に異常がある(放電異常)と判定する。
【0056】
<電圧センサに異常がある場合の放電制御>
電圧センサ22に異常が生じていると判定した場合に、その後、モータコントローラ23が放電指令Dcomを受信したときには、制御切替部44は、以下のように、平滑コンデンサ24の放電制御を行う。
【0057】
すなわち、電圧センサ22に異常が生じているときにモータコントローラ23が放電指令Dcomを受信した場合、制御切替部44は、二相三相変換部43が演算した三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*は用いず、下記の式(2)で表される高周波の最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*を電力変換部21に入力する。以下では、式(2)による最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*に応じた交流電圧を、高周波電圧という。
【0058】
【0059】
式(2)において、周波数fHは、モータ11を脱調に至らせる程度に十分に高い周波数である。すなわち、本実施形態において、高周波あるいは高周波数とは、モータ11を脱調させる周波数をいう。モータ11を脱調させる周波数fHは、モータ11の極対数等によっても異なるが、概ね、モータ11を通常に駆動する場合におけるスイッチング素子uu~wlのスイッチング周波数の1/3程度かそれ以下である。したがって、周波数fHは、スイッチング周波数との比較では十分に低い周波数であるため、式(2)にしたがった高周波の三相交流電圧指令を用いることにより、モータ11を脱調させた状態で、モータ11に高周波の交流電流(以下、高周波電流という)を流すことができる。本実施形態では、電圧センサ22に異常がある場合の放電制御において、三相交流電流iu,iv,iwは高周波電流となる。
【0060】
なお、式(2)における振幅V及び周波数fHの値は、モータ11等の具体的な構成に応じて、予め定められた時間のうちに平滑コンデンサ24が蓄積した電力が消費されるように、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0061】
電圧センサ22に異常がある場合の放電制御では、入力直流電圧HVは最小入力電圧HVminに固定されているので、入力直流電圧HVと放電制御終了判定閾値HVempの比較によって、放電異常判定を行うことができない。このため、電圧センサ22に異常がある場合の放電制御においては、制御切替部44は、以下の要領で、放電異常判定を行う。
【0062】
電圧センサ22に異常があるときには、制御切替部44は、モータ11に流れる電流、または、モータ11に流れる電流をフィードバックした交流電圧の指令、を異常判定パラメータとし、この異常判定パラメータに基づいて放電異常判定を行う。モータ11に流れる電流(以下、モータ電流という)は、三相交流電流iu,iv,iw、dq軸電流id,iq、または、これらの全波整流等である。モータ電流をフィードバックした交流電圧の指令とは、dq軸電圧指令vd
*,vq
*、または、これを変換した三相交流電圧指令vu
*,vv
*,vw
*等である。
【0063】
本実施形態では、制御切替部44は、最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*によってモータ11に流れた三相交流電流iu,iv,iwの全波整流Iacを、異常判定パラメータとして用いる。
【0064】
より具体的には、制御切替部44は、平滑コンデンサ24の放電を開始したときに、異常判定パラメータに対して、初期値を設定する。特に、制御切替部44は、放電の開始後、異常判定パラメータに関連する応答の時定数に応じて予め設定する過渡期間が経過したときの異常判定パラメータの値を、初期値に設定する。そして、制御切替部44は、設定した初期値に対する異常判定パラメータの変化に基づいて、放電異常を判定する。
【0065】
本実施形態では、制御切替部44は、放電の開始後、モータ11の時定数(以下、モータ時定数τmという)の3倍の時間を過渡期間(以下、過渡期間3τmという)とする。そして、制御切替部44は、平滑コンデンサ24の放電制御を開始した後、この過渡期間3τmを経過したときの全波整流Iacの値を初期値(以下、初期値Iac[3τm]という)に設定する。モータ時定数τmは、モータ11の巻線インダクタンスLと巻線抵抗Rを用いて、τm=L/Rで表される。
【0066】
なお、本実施形態では、一例として、全波整流Iacを異常判定パラメータとする場合の過渡期間を、放電の開始後、モータ時定数τmの3倍の期間(3τm)としているが、これに限らない。モータ11やインバータ13等の具体的な応答特性に応じて、過渡期間の長さは、実験またはシミュレーション等に基づいて適合により定められる。但し、過渡期間の長さは、典型的には応答時定数の数倍程度であり、多くの場合、概ね応答時定数の3倍程度である。したがって、本実施形態のように、異常判定パラメータに関連する応答時定数の3倍の時間を過渡期間とするのが、簡便で、概ね正確である。
【0067】
制御切替部44は、次の(1)~(4)のいずれかの方法によって、または、これらの方法の全部または一部を組み合わせて、放電異常を判定する。
【0068】
(1) モータ電流を異常判定パラメータとして用いる場合、制御切替部44は、モータ電流に対し、モータ電流が実質的にゼロとなったか否かを判定する閾値(以下、電流閾値という)を設定する。そして、初期値の設定後、予め定める所定時間taが経過した時点でモータ電流の大きさが、この電流閾値以上であるときに、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。
【0069】
所定時間taは、放電異常がない状態において高周波交流電圧をモータ11に印加したときに、過渡期間3τmが経過して初期値を設定した後、平滑コンデンサ24が蓄積する電力がほぼゼロとなるまでの目安時間である。所定時間taは、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。また、電流閾値も、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0070】
本実施形態では、制御切替部44は、異常判定パラメータである全波整流Iacに対して、電流閾値αを設定する。そして、制御切替部44は、初期値Iac[3τm]を設定した後、さらに所定時間taが経過したときの全波整流Iac[3τm+ta]をこの電流閾値αと比較する。そして、所定時間taが経過したときの全波整流Iac[3τm+ta]が電流閾値α以上であり、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が残留しているときに、制御切替部44は、放電異常であると判定する。
【0071】
(2) 制御切替部44は、初期値に対する異常判定パラメータの比によって、平滑コンデンサ24の電力残存率を評価する。また、制御切替部44は、この電力残存率評価に対して閾値(以下、残存率評価閾値という)を設定する。そして、制御切替部44は、初期値の設定後、予め定める所定時間taが経過した時点における電力残存率評価と、残存率評価閾値と、の比較によって、放電異常を判定することができる。残存率評価閾値は、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0072】
本実施形態では、制御切替部44は、初期値Iac[3τm]に対する全波整流Iac[t]の比Iac[t]/Iac[3τm]によって、平滑コンデンサ24における電力残存率を評価する。「t」は、初期値Iac[3τm]の設定後における任意時間である。また、制御切替部44は、比Iac[t]/Iac[3τm]による電力残存率評価に対して、残存率評価閾値βを設定する。そして、制御切替部44は、初期値Iac[3τm]の設定後、さらに所定時間taが経過した時点の比Iac[3τm+ta]/Iac[3τm]を残存率評価閾値βと比較する。放電異常がなければ、比Iac[t]/Iac[3τm]による電力残存率評価は、時間の経過によって減少し、ゼロに漸近する。したがって、所定時間taが経過した時点の比Iac[3τm+ta]/Iac[3τm]が残存率評価閾値β以上であり、ほぼゼロになっているはずの電力残存率評価が未だ有意な値に維持されているときに、制御切替部44は、放電異常であると判定する。
【0073】
(3) 制御切替部44は、初期値と異常判定パラメータの差によって、平滑コンデンサ24の電力減少量を評価する。また、制御切替部44は、この電力減少量評価に対して閾値(以下、減少量評価閾値という)を設定する。そして、制御切替部44は、初期値の設定後、予め定める所定時間taが経過した時点における電力減少量評価と、減少量評価閾値と、の比較によって、放電異常を判定することができる。減少量評価閾値は、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0074】
本実施形態では、制御切替部44は、初期値Iac[3τm]と全波整流Iac[t]の差|Iac[t]-Iac[3τm]|によって、平滑コンデンサ24における電力減少量を評価する。「t」は、初期値Iac[3τm]の設定後における任意時間である。また、制御切替部44は、差|Iac[t]-Iac[3τm]|による電力減少量評価に対して、減少量評価閾値ε1を設定する。そして、制御切替部44は、初期値Iac[3τm]の設定後、所定時間taが経過し、さらに予め定める所定の時間tbが経過した時点の差|Iac[3τm]-Iac[3τm+ta+tb]|を減少量評価閾値ε1と比較する。所定時間tbは、誤った放電異常判定を特に確実に防止するための待ち時間である。所定時間tbは、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0075】
放電異常がなければ、差|Iac[t]-Iac[3τm]|による電力減少量評価は、時間の経過によって増加する。したがって、過渡期間3τm、所定時間ta及び所定時間tbが経過した時点の差|Iac[3τm]-Iac[3τm+ta+tb]|が減少量評価閾値ε1よりも小さく、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が未だ有意な値に維持されている場合、制御切替部44は、放電異常であると判定する。
【0076】
本実施形態では、制御切替部44は、例えば、減少量評価閾値ε1をほぼゼロに設定する(ε1≒0)。このため、制御切替部44は、過渡期間3τm、所定時間ta及び所定時間tbが経過した時点において、全波整流Iac[3τm+ta+tb]が初期値Iac[3τm]から実質的に減少していないときに(|Iac[3τm]-Iac[3τm+ta+tb]|≒0)、放電異常であると判定する。
【0077】
(4) 制御切替部44は、初期値に対して基準値を予め設定する。そして、初期値が予め定める基準値を超えないときに、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。基準値は、放電異常がないときに、過渡期間の経過後に異常判定パラメータが超えるべき値の目安である。基準値は、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0078】
本実施形態では、制御切替部44は、初期値Iac[3τm]に対して、基準値Iac-refを設定する。そして、制御切替部44は、過渡期間3τmの経過によって初期値Iac[3τm]を設定するときに、その初期値Iac[3τm]を基準値Iac-refと比較する。そして、初期値Iac[3τm]が基準値Iac-refを超えず(Iac[3τm]≦Iac-ref)、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できていないときに、制御切替部44は、放電異常であると判定する。
【0079】
特に、本実施形態では、以下に説明するように、制御切替部44は、上記の(1)~(4)の方法を組み合わせて放電異常を判定する。
【0080】
図3は、放電異常がないときに、高周波電圧を印加したモータ11に流れる三相交流電流i
u,i
v,i
w等の推移等を示すタイムチャートである。
図3(A)は、平滑コンデンサ24の電圧V
cを示す。
図3(B)は、高周波の最終U相電圧指令v
u1
*を示す。
図3(C)は、高周波の最終電圧指令v
u1
*,v
v1
*,v
w1
*にしたがって高周波電圧を印加したときに、モータ11に流れる三相交流電流i
u,i
v,i
w(高周波電流)を示す。
図3(D)は、高周波の三相交流電流i
u,i
v,i
wの全波整流I
acを示す。
図3の横軸は、いずれも時間tである。また、
図3では、t=0において平滑コンデンサ24の放電制御が開始される。
【0081】
図3(A)に示すように、平滑コンデンサ24の放電制御がt=0から開始されると、その後、平滑コンデンサ24の電圧V
cは時間の経過とともに減少し、ゼロに漸近する。このため、放電制御を開始してから過渡期間3τ
m及び所定時間t
aが経過すると、平滑コンデンサ24の電圧V
cは放電制御終了判定閾値HV
empよりも小さくなる。
【0082】
電圧センサ22に異常がなく、電圧センサ22によって平滑コンデンサ24の電圧Vcが正しく検出されているときには、入力直流電圧HVは、平滑コンデンサ24の電圧Vcを表す電力変換部電圧Vdc-invである。このため、制御切替部44は、入力直流電圧HV(=Vc)と放電制御終了判定閾値HVempの比較によって、放電完了、または、放電異常を判定することができる。
【0083】
一方、電圧センサ22に異常があるときには、電圧センサ22によって平滑コンデンサ24の電圧Vcは正しく検出されないので、入力直流電圧HVは、最小入力電圧HVminに固定される。このため、制御切替部44は、入力直流電圧HVによって、単純に、放電完了、または、放電異常を判定することができない。
【0084】
そこで、本実施形態では、
図3(B)に示すようにモータ11に高周波電圧を印加すると、これに応じて、
図3(C)に示すようにモータ11に高周波電流が流れることを利用して、制御切替部44は、放電完了、または、放電異常を判定する。
【0085】
すなわち、
図3(B)に示すように、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって、概ね振幅が一定の高周波電圧をモータ11に印加するように指令したとしても、平滑コンデンサ24が蓄積した電力が時間の経過とともに消費され、平滑コンデンサ24の電圧V
cが減少すると、これにともなって、モータ11に流れる高周波電流は減衰する。したがって、本実施形態では、全波整流I
acを異常判定パラメータとし、放電開始後の時間経過による全波整流I
acの減衰に基づいて、放電完了、または、放電異常を判定する。
【0086】
具体的には、制御切替部44は、放電制御の開始後、過渡期間3τmの経過を待って、全波整流Iacの初期値Iac[3τm]を設定する。そして、初期値Iac[3τm]を基準値Iac-refと比較する。このとき、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって、正常にモータ11に高周波電圧を印加できていれば、初期値Iac[3τm]が基準値Iac-refを超える。したがって、制御切替部44は、さらに所定時間taの経過を待って、全波整流Iac[3τm+ta]と電流閾値αとの比較、及び/または、比Iac[3τm+ta]/Iac[3τm]と残存率評価閾値βとの比較によって、制御切替部44は、放電完了、または、放電異常を判定することができる。また、さらに所定時間tbの経過を待って、差|Iac[3τm]-Iac[3τm+ta+tb]|と減少量評価閾値ε1との比較によって、制御切替部44は、放電完了、または、放電異常を判定することができる。
【0087】
図4は、放電異常判定のフローチャートの例である。
図4に示すように、ステップS10では、制御切替部44は、初期値I
ac[3τ
m]が未設定であるか否かを確認する。ステップS10において、初期値I
ac[3τ
m]が未設定であるときには、ステップS11の処理に進む。一方、ステップS10において、初期値I
ac[3τ
m]が既に設定されているとき、すなわち、既に放電制御を開始して過渡期間3τ
mが経過した後であるときには、制御切替部44は、ステップS11~S13及びステップS16を省略してステップS17の処理に進む。
【0088】
ステップS11では、制御切替部44は、最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*を切り替えることによって、モータ11に高周波電圧を入力する。その後、ステップS12では、制御切替部44は、過渡期間3τmの経過を待つ。そして、過渡期間3τmが経過すると、制御切替部44は、ステップS13の処理に進み、全波整流Iac[3τm]を基準値Iac-refと比較する。
【0089】
ステップS13において、全波整流Iac[3τm]が基準値Iac-refよりも小さいときには、ステップS14に進み、制御切替部44は、所定時間taの経過を待つ。そして、ステップS15に進み、制御切替部44は、放電異常であると判定する。ステップS15で判定する放電異常(以下、第1放電異常という)は、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できていないことに起因する放電異常である。
【0090】
一方、ステップS13において、全波整流Iac[3τm]が基準値Iac-refよりも大きければ、少なくとも平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できている。このため、制御切替部44は、ステップS16の処理に進み、過渡期間3τmの経過時の全波整流Iac[3τm]を初期値Iac[3τm]に設定する。
【0091】
その後、ステップS17では、制御切替部44は、所定時間taの経過を待つ。そして、初期値Iac[3τm]の設定後、所定時間taが経過すると、制御切替部44は、ステップS18の処理に進み、過渡期間3τm及び所定時間taが経過したあとの全波整流Iac[3τm+ta]を電流閾値αと比較する。
【0092】
ステップS18において、全波整流Iac[3τm+ta]が電流閾値α以上であり、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が残留しているときには、制御切替部44は、放電異常と判定し、さらに放電異常の要因を峻別するために、ステップS19の処理に進む。
【0093】
一方、ステップS18において、全波整流Iac[3τm+ta]が電流閾値αよりも小さくなっていたときには、制御切替部44は、ステップS20の処理に進む。ステップS20では、初期値Iac[3τm]に対する全波整流Iac[3τm+ta]の比Iac[3τm+ta]/Iac[3τm]による電力残存率評価を、残存率評価閾値βと比較する。
【0094】
ステップS20において、比Iac[3τm+ta]/Iac[3τm]が残存率評価閾値β以上であり、ほぼゼロになっているはずの電力残存率評価が未だ有意な値に維持されているときには、制御切替部44は、放電異常と判定し、さらに放電異常の要因を峻別するために、ステップS19の処理に進む。
【0095】
一方、ステップS20において、比Iac[3τm+ta]/Iac[3τm]が残存率評価閾値βよりも小さく、電力残存率評価の観点においても、平滑コンデンサ24の電力が消費されていることが確認されたときには、ステップS21に進み、制御切替部44は、平滑コンデンサ24が正常に放電完了したと判定する。
【0096】
ステップS19では、制御切替部44は、さらに所定時間tbの経過を待つ。そして、所定時間tbが経過すると、制御切替部44は、ステップS22の処理に進み、初期値Iac[3τm]と、過渡期間3τm、所定時間ta及び所定時間tbが経過した時点の全波整流Iac[3τm+ta+tb]と、の差|Iac[3τm]-Iac[3τm+ta+tb]|による電力減少量評価を、減少量評価閾値ε1と比較する。
【0097】
ステップS22において、差|Iac[3τm]-Iac[3τm+ta+tb]|が減少量評価閾値ε1よりも小さく、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が未だ有意な値に維持されているときには、制御切替部44は、ステップS23の処理に進み、その放電異常が第3放電異常であると判定する。第3放電異常は、リレー12が溶着異常等によってオフになっておらず、バッテリ10から電力が供給され続けていることに起因した放電異常である。
【0098】
一方、ステップS22において、差|Iac[3τm]-Iac[3τm+ta+tb]|が減少量評価閾値ε1以上であるときには、制御切替部44は、ステップS24の処理に進み、その放電異常が、第2放電異常であると判定する。第2放電異常は、平滑コンデンサ24の電力によって十分にモータ11に交流電圧が印加されない第1放電異常やリレー12の溶着異常等による第3放電異常に該当しない、その他の要因による放電異常である。
【0099】
なお、上記のように、平滑コンデンサ24の放電制御において、正常放電完了(ステップS21)、第1放電異常(ステップS15)、第2放電異常(ステップS24)、または、第3放電異常(ステップS23)のいずれかの判定をしたときには、制御切替部44は、ステップS25の処理に進み、モータ11に対する高周波電圧の印可を停止させ、放電制御を終了する。
【0100】
このように、制御切替部44は、電圧センサ22の異常によって、電力変換部電圧Vdc-invが得られないときでも、全波整流Iacに基づいて平滑コンデンサ24の放電異常を判定することができる。
【0101】
なお、上記第1実施形態では、制御切替部44は、電圧センサ22に故障その他の異常が生じたときに、全波整流Iacに基づいて平滑コンデンサ24の放電異常を判定しているが、これに限らない。制御切替部44は、電圧センサ22を有しない電動車両100においても、上記第1実施形態と同様に、全波整流Iacに基づいて平滑コンデンサ24の放電異常を判定することができる。
【0102】
また、上記第1実施形態では、全波整流I
acを異常判定パラメータとしているが、これに限らない。制御切替部44は、全波整流I
acの代わりに、相電流のピーク値またはその絶対値を異常判定パラメータとして用いることができる。相電流のピーク値は、例えば、
図3(C)に示したU相交流電流i
u、V相交流電流i
vまたはW相交流電流i
wの包絡線である。このため、相電流のピーク値またはその絶対値(正側の包絡線)は、
図3(D)の全波整流I
acと同様に、平滑コンデンサ24の電圧V
cが減少すると、これにともなって減衰する。このため、制御切替部44は、全波整流I
acの代わりに、相電流のピーク値またはその絶対値を異常判定パラメータとして用いた場合も、上記第1実施形態と同様に、平滑コンデンサ24の放電異常を判定することができる。
【0103】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、モータ電流の一形態である全波整流Iacを異常判定パラメータとして用いる例を説明したが、これに限らない。制御切替部44は、モータ電流をフィードバックした交流電圧の指令を、異常判定パラメータとして用いることができる。以下、第2実施形態では、制御切替部44が、モータ電流をフィードバックした交流電圧の指令を、異常判定パラメータとして用いる例を説明する。
【0104】
図5は、第2実施形態に係るモータコントローラ23の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、第2実施形態のモータコントローラ23は、全波整流演算部48を省略している。第2実施形態のモータコントローラ23のうち、制御切替部44以外の構成は、第1実施形態のモータコントローラ23と同様である。
【0105】
第2実施形態の制御切替部44は、電圧センサ22に異常が生じていると判定した場合であっても、電圧センサ22に異常が生じていないと判定した場合と同様に、二相三相変換部43が演算した三相交流電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*として電力変換部21に入力することにより、放電制御を行う。すなわち、第2実施形態の制御切替部44は、式(2)の高周波電圧の代わりに、dq軸電圧指令vd
*,vq
*に基づく三相交流電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*として電力変換部21に入力することにより、放電制御を行う。
【0106】
そして、
図5に示すように、第2実施形態の制御切替部44は、電圧センサ22に異常が生じたときに、d軸電圧指令v
d
*の他、d軸電流i
d、及び、d軸電流指令i
d
*を取得する。そして、制御切替部44は、これらを用いて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定する。
【0107】
より具体的には、制御切替部44は、電流制御部42においてモータ電流をフィードバックした交流電圧指令であるd軸電圧指令vd
*を、異常判定パラメータとして用いる。また、第2実施形態の制御切替部44は、d軸電圧指令vd
*と併せて、モータ電流の一形態であるd軸電流idを、異常判定パラメータとして用いる。
【0108】
但し、本実施形態では、簡単のため、異常判定パラメータの初期値は、d軸電圧指令vd
*についてのみ設定する。具体的には、制御切替部44は、放電の開始後、d軸電流指令id
*からd軸電流idまでの応答の時定数(以下、電流制御時定数τcという)の3倍の時間を過渡期間(以下、過渡期間3τcという)とする。そして、制御切替部44は、平滑コンデンサ24の放電制御を開始した後、この過渡期間3τcを経過したときのd軸電圧指令vd
*の値を初期値(以下、初期値vd
*[3τc]という)に設定する。
【0109】
なお、本実施形態では、一例として、d軸電圧指令vd
*を異常判定パラメータとする場合の過渡期間を、放電の開始後、電流制御時定数τcの3倍の期間(3τc)としているが、これに限らない。モータ11やインバータ13等の具体的な応答特性に応じて、過渡期間の長さは、実験またはシミュレーション等に基づいて適合により定められる。但し、d軸電圧指令vd
*を異常判定パラメータとする場合においても、過渡期間の長さは、典型的には電流制御時定数τcの数倍程度であり、多くの場合、概ね電流制御時定数τcの3倍程度である。したがって、本実施形態のように、d軸電圧指令vd
*を異常判定パラメータとする場合、過渡期間は、電流制御時定数τcの3倍の時間とするのが、簡便で、概ね正確である。
【0110】
第2実施形態の制御切替部44は、次の(1)~(4)のいずれかの方法によって、または、これらの方法の全部または一部を組み合わせて、放電異常を判定する。
【0111】
(1) 制御切替部44は、モータ電流の一形態であるd軸電流idに対し、d軸電流が実質的にゼロになったか否かを判定する閾値(以下、電流閾値δという)を設定する。そして、d軸電圧指令vd
*についての初期値vd
*[3τc]の設定後、予め定める所定時間tcが経過した時点でのd軸電流id[3τc+tc]の大きさが、この電流閾値δ以上であるときに、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。
【0112】
所定時間tcは、放電異常がない状態において、dq軸電流id,iqのうち実質的にd軸電流idのみを選択的に流す交流電圧をモータ11に印加したときに、過渡期間3τcが経過して初期値vd
*[3τc]を設定した後、平滑コンデンサ24が蓄積する電力がほぼゼロとなるまでの目安時間である。所定時間tcは、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。また、電流閾値δは、平滑コンデンサ24が蓄積した電力が十分に消費され、実質的にd軸電流idを流すことができなくなったタイミングを、d軸電流idによって判別するための閾値である。電流閾値δは、実験またはシミュレーション等に基づいて、適合により予め定められる。電流閾値δは、例えば、概ねゼロに近い小さい値である。
【0113】
(2) 制御切替部44は、d軸電圧指令vd
*[t]に対する初期値vd
*[3τc]の比vd
*[3τc]/vd
*[t]によって、平滑コンデンサ24の電力残存率を評価する。「t」は、初期値vd
*[3τc]の設定後における任意時間である。また、制御切替部44は、この比vd
*[3τc]/vd
*[t]による電力残存率評価に対して残存率評価閾値η1を設定する。そして、制御切替部44は、初期値vd
*[3τc]の設定後、さらに所定時間tcが経過した時点の比vd
*[3τc]/vd
*[3τc+tc]を残存率評価閾値η1と比較する。放電異常がなければ、比vd
*[3τc]/vd
*[t]による電力残存率評価は、時間の経過によって減少し、ゼロに漸近する。したがって、所定時間tcが経過した時点の比vd
*[3τc]/vd
*[3τc+tc]が残存率評価閾値η1以上であり、ほぼゼロになっているはずの電力残存率評価が未だ有意な値に維持されているときに、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。残存率評価閾値η1は、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0114】
(3) 制御切替部44は、初期値vd
*[3τc]とd軸電圧指令vd
*[t]の差|vd
*[3τc]-vd
*[t]|によって、平滑コンデンサ24における電力減少量を評価する。「t」は、初期値vd
*[3τc]の設定後における任意時間である。また、制御切替部44は、差|vd
*[3τc]-vd
*[t]|による電力減少量評価に対して、減少量評価閾値ε2を設定する。そして、制御切替部44は、初期値vd
*[3τc]の設定後、所定時間tcが経過し、さらに予め定める所定時間tbが経過した時点の差|vd
*[3τc]-vd
*[3τc+tc+tb]|を減少量評価閾値ε2と比較する。所定時間tbは、第1実施形態と同様であり、誤った放電異常判定を特に確実に防止するための待ち時間であり、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0115】
放電異常がなければ、差|vd
*[3τc]-vd
*[t]|による電力減少量評価は、時間の経過によって増加する。したがって、過渡期間3τc、所定時間tc及び所定時間tbが経過した時点の差|vd
*[3τc]-vd
*[3τc+tc+tb]|が減少量評価閾値ε2よりも小さく、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が未だ有意な値に維持されているときには、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。
【0116】
本実施形態では、制御切替部44は、例えば、減少量評価閾値ε2をほぼゼロに設定する(ε2≒0)。このため、制御切替部44は、過渡期間3τc、所定時間ta及び所定時間tbが経過した時点において、d軸電圧指令vd
*[3τc+tc+tb]が初期値vd
*[3τc]から実施質的に減少していないときに(|vd
*[3τc]-vd
*[3τc+tc+tb]|≒0)、放電異常であると判定する。
【0117】
(4) 制御切替部44は、過渡期間3τcの経過時点におけるd軸電流指令id
*[3τc]とd軸電流id[3τc]の差|id
*[3τc]-id[3τc]|に対して、閾値γを設定する。閾値γは、d軸電流指令id
*とd軸電流idが実質的に一致したことを判定するための閾値であり、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。制御切替部44は、差|id
*[3τc]-id[3τc]|が閾値γ未満とならず、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できていないときに、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。なお、制御切替部44は、第1実施形態に倣って初期値vd
*[3τc]に対して基準値を設定し、初期値vd
*[3τc]とその基準値の比較によって、放電異常を判定してもよい。
【0118】
特に、本第2実施形態では、以下に説明するように、制御切替部44は、上記の(1)~(4)の方法を組み合わせて放電異常を判定する。
【0119】
図6は、放電異常がないときに、q軸電流i
qをゼロとしたままd軸電流i
dを流す交流電圧をモータ11に印加する場合のdq軸電圧指令v
d
*,v
q
*等を示すタイムチャートである。
図6(A)は、平滑コンデンサ24の電圧V
cを示す。
図6(B)は、dq軸電流i
d,i
qを示す。
図6(C)は、dq軸電圧指令v
d
*,v
q
*を示す。
図6の横軸は、いずれも時間tである。また、
図6では、t=0において平滑コンデンサ24の放電制御が開始される。
【0120】
図6(A)に示すように、平滑コンデンサ24の放電制御がt=0から開始されると、平滑コンデンサ24の電圧V
cは時間の経過とともに減少し、ゼロに漸近する。すなわち、放電制御を開始してから過渡期間3τ
c及び所定時間t
cが経過すると、平滑コンデンサ24の電圧V
cはほぼゼロとなる。
【0121】
図6(B)に破線で示すように、q軸電流指令i
q
*はゼロに維持されるので、q軸電流i
qもまたこれに追従してゼロに維持される。このため、モータ11は回転しない。一方、
図6(B)に実線で示すように、放電制御が開始されると、d軸電流指令i
d
*は、一定のd軸電流I
dxを流すように設定される。このため、d軸電流i
dは、d軸電流指令i
d
*に追従するように変化する。そして、放電異常がなければ、過渡期間3τ
cが経過すると、d軸電流指令i
d
*[3τ
c]とd軸電流i
d[3τ
c]の差|i
d
*[3τ
c]-i
d[3τ
c]|は閾値γよりも小さくなり、d軸電流i
d[3τ
c]はほぼd軸電流指令i
d
*[3τ
c]に一致する。
【0122】
その後、モータ11にd軸電流idを流し続けることによって、平滑コンデンサ24の電力が、一定のd軸電流Idxを維持できない程度にまで消費されると、d軸電流指令id
*は一定であるにもかかわらず、d軸電流idの大きさは減少し、ゼロに近づく。このため、過渡期間3τc及び所定時間tcが経過した時点のd軸電流id[3τc+tc]の大きさは、電流閾値δよりも小さく(ゼロに近く)なる。
【0123】
このとき、d軸電圧指令v
d
*は、d軸電流i
dのフィードバックによって、
図6(C)に示すように変化する。すなわち、d軸電圧指令v
d
*は、過渡期間3τ
cが経過すると、概ね一定の値(v
d
*[3τ
c])に収束する。このため、制御切替部44は、この値を、d軸電圧指令v
d
*の初期値v
d
*[3τ
c]に設定する。その後、モータ11にd軸電流i
dを流し続けることによって、平滑コンデンサ24の電力が、一定のd軸電流I
dxを維持できない程度にまで消費され、d軸電流i
dの大きさが減少し始まると、電流制御部42は、一定のd軸電流I
dxに対する不足を補うように、d軸電流i
dの減少に応じて、d軸電圧指令v
d
*の大きさを増加させる。
【0124】
これらのことから、制御切替部44は、過渡期間3τc及び所定時間tcの経過を待って、d軸電流id[3τc]と電流閾値δとの比較、または、比vd
*[3τc]/vd
*[3τc+tc]と残存率評価閾値η1の比較、によって、制御切替部44は、放電完了、または、放電異常を判定することができる。また、さらに所定時間tbの経過を待って、差|vd
*[3τc]-vd
*[3τc+tc+tb]|と減少量評価閾値ε2の比較によって、制御切替部44は、放電完了、または、放電異常を判定することができる。
【0125】
図7は、第2実施形態に係る放電異常判定のフローチャートの例である。
図7に示すように、ステップS30では、制御切替部44は、d軸電圧指令v
d
*に対する初期値v
d
*[3τ
c]が未設定であるか否かを確認する。ステップS30において、初期値v
d
*[3τ
c]が未設定であるときには、ステップS31に進む。一方、ステップS30において、初期値v
d
*[3τ
c]が既に設定されているときには、制御切替部44は、ステップSS31~S33及びステップS36を省略してステップS37の処理に進む。
【0126】
ステップS31では、制御切替部44は、最終三相交流電圧vu1
*,vv1
*,vw1
*を切り替えることによって、q軸電流iqをゼロとし、d軸電流idをIdxとする交流電圧をモータ11に入力する。その後、ステップS32では、制御切替部44は、過渡期間3τcの経過を待つ。そして、過渡期間3τcが経過すると、制御切替部44はステップS33の処理に進み、d軸電流指令id
*[3τc]とd軸電流id[3τc]の差|id
*[3τc]-id[3τc]|と閾値γを比較する。これにより、制御切替部44は、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できているか否かを判定する。
【0127】
ステップS33において、d軸電流指令id
*[3τc]とd軸電流id[3τc]の差|id
*[3τc]-id[3τc]|が閾値γ以上であるときには、ステップS34に進み、制御切替部44は、所定時間tcの経過を待つ。そして、ステップS35に進み、制御切替部44は、第1放電異常であると判定する。
【0128】
一方、ステップS33において、d軸電流指令id
*[3τc]とd軸電流id[3τc]の差|id
*[3τc]-id[3τc]|が閾値γよりも小さいときには、少なくとも平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できている。このため、制御切替部44は、ステップS36の処理に進み、過渡期間3τcの経過時のd軸電圧指令vd
*[3τc]を初期値vd
*[3τc]に設定する。
【0129】
その後、ステップS37では、制御切替部44は、所定時間tcの経過を待つ。そして、初期値vd
*[3τc]の設定後、所定時間tcが経過すると、制御切替部44は、ステップS38の処理に進み、過渡期間3τc及び所定時間tcが経過した後のd軸電流id[3τc+tc]を電流閾値δと比較する。
【0130】
ステップS38において、d軸電流id[3τc+tc]が電流閾値δ以上であり、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が残留しているときには、制御切替部44は、放電異常と判定し、さらに放電異常の要因を峻別するために、ステップS39の処理に進む。
【0131】
一方ステップS38において、d軸電流id[3τc+tc]が電流閾値δよりも小さくなっていたときには、制御切替部44は、ステップS40の処理に進む。ステップS40では、d軸電圧指令vd
*[3τc]に対する初期値vd
*[3τc+tc]の比vd
*[3τc]/vd
*[3τc+tc]による電力残存率評価を、残存率評価閾値η1と比較する。
【0132】
ステップS40において、比vd
*[3τc]/vd
*[3τc+tc]が残存率評価閾値η1以上であり、ほぼゼロになっているはずの電力残存率評価が未だ有意な値に維持されているときには、制御切替部44は、放電異常と判定し、さらに放電異常の要因を峻別するために、ステップS39の処理に進む。
【0133】
一方、ステップS40において、比vd
*[3τc]/vd
*[3τc+tc]が残存率評価閾値η1よりも小さく、電力残存率評価の観点においても、平滑コンデンサ24の電力が消費されていることが確認されたときには、ステップS41に進み、制御切替部44は、平滑コンデンサ24が正常に放電完了したと判定する。
【0134】
ステップS39では、制御切替部44は、さらに所定時間tbの経過を待つ。そして、所定時間tbが経過すると、制御切替部44は、ステップS42の処理に進み、初期値vd
*[3τc]と、過渡期間3τc、所定時間tc及び所定時間tbが経過した時点のd軸電圧指令vd
*[3τc+tc+tb]と、の差|vd
*[3τc]-vd
*[3τc+tc+tb]|による電力減少量評価を、減少量評価閾値ε2と比較する。
【0135】
ステップS42において、差|vd
*[3τc]-vd
*[3τc+tc+tb]|が減少量評価閾値ε2よりも小さく、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が未だ有意な値に維持されているときには、制御切替部44は、ステップS43の処理に進み、その放電異常が第3放電異常であると判定する。
【0136】
一方、ステップS42において、差|vd
*[3τc]-vd
*[3τc+tc+tb]|が減少量評価閾値ε2以上であるときには、制御切替部44は、ステップS44の処理に進み、その放電異常が第2放電異常であると判定する。
【0137】
なお、上記のように、平滑コンデンサ24の放電制御において、正常放電完了(ステップS41)、第1放電異常(ステップS35)、第2放電異常(ステップS44)、または、第3放電異常(ステップS43)のいずれかの判定をしたときには、制御切替部44は、ステップS45の処理に進み、モータ11に対する交流電圧の印可を停止させ、放電制御を終了する。
【0138】
このように、第2実施形態に係る制御切替部44は、電圧センサ22の異常によって、電力変換部電圧Vdc-invが得られないときでも、d軸電圧指令vd
*等の異常判定パラメータの変化に基づいて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定することができる。
【0139】
なお、上記第2実施形態では、制御切替部44が、モータ電流の一形態であるd軸電流idと、d軸電流idをフィードバックした交流電圧指令であるd軸電圧指令vd
*と、を異常判定パラメータとして用いる例を説明したが、これに限らない。制御切替部44は、モータ電流をフィードバックした交流電圧指令だけを用いて、放電異常を判定してもよい。例えば、制御切替部44は、上記第2実施形態において、d軸電圧指令vd
*を用いた放電異常の判定を残し、d軸電流idを用いた放電異常の判定を省略することができる。
【0140】
[第3実施形態]
上記第2実施形態では、d軸電流idを流すことによって平滑コンデンサ24が蓄積した電力をモータ11で消費させるときに、モータ電流をフィードバックした交流電圧の指令(d軸電圧指令vd
*)と、モータ電流(d軸電流id)と、を組み合わせて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定しているが、これに限らない。d軸電流idを流すことによって平滑コンデンサ24が蓄積した電力をモータ11で消費させる場合においても、異常判定パラメータとしてモータ電流だけを用いて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定することができる。以下、第3実施形態では、制御切替部44が、平滑コンデンサ24の放電異常を判定するときに、モータ電流だけを異常判定パラメータとして用いる例を説明する。
【0141】
図8は、第3実施形態に係るモータコントローラ23の構成を示すブロック図である。
図8に示すように、第3実施形態のモータコントローラ23は、全波整流演算部48を省略している。また、第3実施形態のモータコントローラ23のうち、制御切替部44以外の構成は、第1実施形態及び第2実施形態のモータコントローラ23と同様である。
【0142】
第3実施形態の制御切替部44は、前述の第2実施形態と同様に、電圧センサ22に異常が生じていると判定した場合であっても、電圧センサ22に異常が生じていないと判定した場合と同様に、二相三相変換部43が演算した三相交流電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*として電力変換部21に入力することにより、放電制御を行う。すなわち、第3実施形態の制御切替部44は、式(2)の高周波電圧の代わりに、dq軸電圧指令vd
*,vq
*に基づく三相交流電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を最終三相交流電圧指令vu1
*,vv1
*,vw1
*として電力変換部21に入力することにより、放電制御を行う。
【0143】
但し、
図8に示すように、第3実施形態の制御切替部44は、電圧センサ22に異常が生じたときに、d軸電流i
d及びd軸電流指令i
d
*を取得する。そして、制御切替部44は、これらを用いて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定する。すなわち、第3実施形態では、モータ電流の一形態であるd軸電流i
dを異常判定パラメータとして用いる。したがって、第2実施形態と比較すれば、第3実施形態は、d軸電圧指令v
d
*を異常判定パラメータとして用いない点が異なる。本実施形態では、制御切替部44は、異常判定パラメータであるd軸電流i
dについて初期値i
d-refを設定する。制御切替部44は、d軸電流指令i
d
*とd軸電流i
dが実質的に一致したときのd軸電流i
dを初期値i
d-refに設定する。
【0144】
第3実施形態の制御切替部44は、次の(1)~(4)のいずれかの方法によって、または、これらの方法の全部または一部を組み合わせて、放電異常を判定する。
【0145】
(1) 制御切替部44は、モータ電流の一形態であるd軸電流idに対し、d軸電流が実質的にゼロになったか否かを判定する電流閾値δを設定する。そして、d軸電流idについて初期値id-refを設定した後、予め定める所定時間tc′が経過した時点でのd軸電流id[tc′]の大きさが、この電流閾値δ以上であるときに、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。
【0146】
所定時間tc′は、放電異常がない状態において、dq軸電流id,iqのうち実質的にd軸電流idのみを選択的に流す交流電圧をモータ11に印加したときに、d軸電流指令id
*とd軸電流idが実質的に一致したことによって初期値id-refを設定した後、平滑コンデンサ24が蓄積する電力がほぼゼロとなるまでの目安時間である。所定時間tc′は、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。また、電流閾値δは、第2実施形態と同様であり、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0147】
(2) 制御切替部44は、初期値id-refに対するd軸電流idの比id[t]/id-refによって、平滑コンデンサ24の電力残存率を評価する。「t」は、初期値id-refの設定後における任意時間である。また、制御切替部44は、この比id[t]/id-refによる電力残存率評価に対して残存率評価閾値η2を設定する。そして、制御切替部44は、初期値id-refの設定後、さらに所定時間tc′が経過した時点の比id[tc′]/id-refを残存率評価閾値η2と比較する。放電異常がなければ、比id[t]/id-refによる電力残存率評価は、時間の経過によって減少し、ゼロに漸近する。したがって、所定時間tc′が経過した時点の比id[tc′]/id-refが残存率評価閾値η2以上であり、ほぼゼロになっているはずの電力残存率評価が未だ有意な値に維持されているときに、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。残存率評価閾値η2は、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0148】
(3) 制御切替部44は、初期値id-refとd軸電流id[t]の差|id-ref-id[t]|によって、平滑コンデンサ24における電力減少量を評価する。「t」は、初期値id-refの設定後における任意時間である。また、制御切替部44は、差|id-ref-id[t]|による電力減少量評価に対して、減少量評価閾値ε3を設定する。そして、制御切替部44は、初期値id-refの設定後、所定時間tc′が経過し、さらに予め定める所定時間tbが経過した時点の差|id-ref-id[tc′+tb]|を減少量評価閾値ε3と比較する。所定時間tbは、第1実施形態及び第2実施形態と同様であり、誤った放電異常判定を特に確実に防止するための待ち時間であり、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。
【0149】
放電異常がなければ、差|id-ref-id[t]|による電力減少量評価は、時間の経過によって増加する。したがって、初期値id-refの設定後、所定時間tc′及び所定時間tbが経過した時点の差|id-ref-id[tc′+tb]|が減少量評価閾値ε3よりも小さく、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が未だ有意な値に維持されているときには、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。
【0150】
本実施形態では、制御切替部44は、例えば、減少量評価閾値ε3をほぼゼロに設定する(ε3≒0)。このため、制御切替部44は、初期値id-refの設定後、所定時間tc′及び所定時間tbが経過した時点において、d軸電流id[tc′+tb]が初期値id-refから実施質的に減少していないときに(|id-ref-id[tc′+tb]|≒0)、放電異常であると判定する。
【0151】
(4) 制御切替部44は、d軸電流指令id
*とd軸電流idの差|id
*-id|に対して、閾値γを設定する。閾値γは、d軸電流指令id
*とd軸電流idが実質的に一致したことを判定するための閾値であり、実験またはシミュレーション等によって予め定められる。制御切替部44は、差|id
*-id|が閾値γ未満とならず、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できていないときに、制御切替部44は、放電異常であると判定することができる。なお、制御切替部44は、第1実施形態に倣って初期値id-refに対して基準値を設定し、初期値id-refとその基準値の比較によって、放電異常を判定してもよい。
【0152】
特に、本第3実施形態では、以下に説明するように、制御切替部44は、上記の(1)~(4)の方法を組み合わせて放電異常を判定する。
【0153】
図9は、第3実施形態に係る放電異常判定のフローチャートである。
図9に示すように、ステップS50では、制御切替部44は、d軸電流i
dについての初期値i
d-refが未設定であるか否かを確認する。ステップS50において、初期値i
d-refが未設定であるときには、ステップS51に進む。一方、ステップS5において、初期値i
d-refが既に設定されているときには、制御切替部44は、ステップS51~S52及びステップS55を省略してステップS56の処理に進む。
【0154】
ステップS51では、制御切替部44は、最終三相交流電圧vu1
*,vv1
*,vw1
*を切り替えることによって、q軸電流iqをゼロとし、d軸電流idをIdxとする交流電圧をモータ11に入力する。その後、ステップS52では、放電制御の開始から過渡期間の3倍程度の時間をおいて、d軸電流指令id
*とd軸電流idの差|id
*-id|と閾値γを比較する。これにより、制御切替部44は、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できているか否かを判定する。
【0155】
ステップS52において、d軸電流指令id
*とd軸電流idの差|id
*-id|が閾値γ以上であるときには、ステップS53に進み、制御切替部44は、所定時間tc′の経過を待つ。そして、ステップS54に進み、制御切替部44は、第1放電異常であると判定する。
【0156】
一方、ステップS52において、d軸電流指令id
*とd軸電流idの差|id
*-id|が閾値γよりも小さいときには、少なくとも平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できている。このため、制御切替部44は、ステップS55の処理に進み、その時のd軸電流idを初期値id-refに設定する。
【0157】
その後、ステップS56では、制御切替部44は、所定時間tc′の経過を待つ。そして、初期値id-refの設定後、所定時間tc′が経過すると、制御切替部44は、ステップS57の処理に進み、所定時間tc′が経過した後のd軸電流id[tc′]を電流閾値δと比較する。
【0158】
ステップS57において、d軸電流id[tc′]が電流閾値δ以上であり、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が残留しているときには、制御切替部44は、放電異常と判定し、さらに放電異常の要因を峻別するために、ステップS58の処理に進む。
【0159】
一方ステップS57において、d軸電流id[tc′]が電流閾値δよりも小さくなっていたときには、制御切替部44は、ステップS59の処理に進む。ステップS59では、初期値id-refに対するd軸電流id[tc′]の比id[tc′]/id-refによる電力残存率評価を、残存率評価閾値η2と比較する。
【0160】
ステップS59において、比id[tc′]/id-refが残存率評価閾値η2以上であり、ほぼゼロになっているはずの電力残存率評価が未だ有意な値に維持されているときには、制御切替部44は、放電異常と判定し、さらに放電異常の要因を峻別するために、ステップS58の処理に進む。
【0161】
一方、ステップS59において、比id[tc′]/id-refが残存率評価閾値η2よりも小さく、電力残存率評価の観点においても、平滑コンデンサ24の電力が消費されていることが確認されたときには、ステップS60に進み、制御切替部44は、平滑コンデンサ24が正常に放電完了したと判定する。
【0162】
ステップS58では、制御切替部44は、さらに所定時間tbの経過を待つ。そして、所定時間tbが経過すると、制御切替部44は、ステップS61の処理に進み、初期値id-refと、所定時間tc′及び所定時間tbが経過した時点のd軸電流id[tc′+tb]と、の差|id-ref-id[tc′+tb]|による電力減少量評価を、減少量評価閾値ε3と比較する。
【0163】
ステップS61において、差|id-ref-id[tc′+tb]|が減少量評価閾値ε3よりも小さく、ほぼゼロになっているはずの平滑コンデンサ24の電力が未だ有意な値に維持されているときには、制御切替部44は、ステップS62の処理に進み、その放電異常が第3放電異常であると判定する。
【0164】
一方、ステップS61において、差|id-ref-id[tc′+tb]|が減少量評価閾値ε3以上であるときには、制御切替部44は、ステップS63の処理に進み、その放電異常が第2放電異常であると判定する。
【0165】
なお、上記のように、平滑コンデンサ24の放電制御において、正常放電完了(ステップS60)、第1放電異常(ステップS54)、第2放電異常(ステップS63)、または、第3放電異常(ステップS62)のいずれかの判定をしたときには、制御切替部44は、ステップS64の処理に進み、モータ11に対する交流電圧の印可を停止させ、放電制御を終了する。
【0166】
このように、第3実施形態に係る制御切替部44は、電圧センサ22の異常によって、電力変換部電圧Vdc-invが得られないときでも、d軸電流idに基づいて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定することができる。
【0167】
なお、上記第1~第3実施形態では、電動車両100をシャットダウンするときに、インバータ13の平滑コンデンサ24が蓄積した電力を、駆動用のモータ11(電動機)で消費させる例を説明したが、これに限らない。電動車両100が発電機を備える場合には、電動車両100をシャットダウンするときに、その発電機またはモータ11に接続するインバータの平滑コンデンサが蓄積した電力を、発電機またはモータ11で消費させることができる。この場合も、上記第1~第3実施形態と同様にして、平滑コンデンサの放電異常を判定することができる。すなわち、上記第1~第3実施形態は、電動機または発電機である回転電機を備える電動車両において好適である。
【0168】
以上のように、第1~第3実施形態に係る放電制御方法は、バッテリ10の電力によって駆動する電動車両100をシャットダウンするときに、インバータ13が平滑コンデンサ24に蓄積している電力を回転電機(11)で消費させることにより、平滑コンデンサ24を放電する放電制御方法である。この放電制御方法では、バッテリ10とインバータ13の接続を解除し、インバータ13のスイッチング素子uu~wlを制御することにより、平滑コンデンサ24が蓄積している電力を用いて、回転電機(11)に交流電圧を印加し、交流電圧によって回転電機(11)に流れる電流である回転電機電流(Iac,id等)を取得する。そして、回転電機電流(Iac,id等)、または、回転電機電流をフィードバックした交流電圧の指令(vd
*)、を異常判定パラメータとし、この異常判定パラメータに基づいて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定する。
【0169】
このように、電動車両100をシャットダウンするときに、平滑コンデンサ24が蓄積している電力によって回転電機(モータ11)に交流電圧を印加し、これにより回転電機に流れる電流を取得し、取得した電流、または、取得した電流をフィードバックした交流電圧の指令(vd
*)、を異常判定パラメータとして用いることにより、平滑コンデンサ24の放電異常を判定すれば、平滑コンデンサ24の電圧を直接に検出等しなくても、正常な放電完了または放電異常を適切に判定することができる。
【0170】
上記第1~第3実施形態に係る放電制御方法では、特に、平滑コンデンサ24の放電を開始したときに、異常判定パラメータに対して、初期値(Iac[3τm],vd
*[3τc],id-ref)を設定し、初期値に対する異常判定パラメータの変化に基づいて、放電異常を判定する。
【0171】
このように、異常判定パラメータに対して、初期値を設定し、この初期値を基準とした異常判定パラメータの変化に基づいて平滑コンデンサ24の放電異常判定を行うと、特に正確に、放電完了または放電異常を判定することができる。
【0172】
上記第1~第3実施形態に係る放電制御方法では、放電の開始後、応答時定数(τm,τc)に応じて予め設定する過渡期間(3τm,3τc等)が経過したときの異常判定パラメータの値を初期値(Iac[3τm],vd
*[3τc],id-ref等)に設定する。
【0173】
このように、異常判定パラメータに関連する応答の時定数を基準として過渡期間を定め、この過渡期間の経過後の異常判定パラメータの値を、その異常判定パラメータの初期値とすれば、放電制御開始直後における異常判定パラメータの過渡的な変化に左右されず、特に正確に、放電完了または放電異常を判定することができる。
【0174】
上記第1~第3実施形態に係る放電制御方法では、異常判定パラメータとして回転電機電流(Iac,id)を用いる場合、回転電機電流が実質的にゼロとなったか否かを判定する閾値(α,δ)を設定し、初期値(Iac[3τm],vd
*[3τc],id-ref)の設定後、予め定める所定時間(ta,tc)が経過した時点で回転電機電流(Iac,id等)の大きさが閾値(α,δ)以上であるときに、放電異常であると判定する。
【0175】
平滑コンデンサ24を放電させる場合、平滑コンデンサ24が蓄積していた電力が消費されると、回転電機(モータ11)に流れる電流は減少し、最終的にはゼロになる。したがって、上記のように、回転電機(モータ11)に流れる電流が実質的にゼロとなったか否かによって放電異常を判定すれば、電圧センサ22の検出値によらず、放電完了または放電異常を判定することができる。
【0176】
上記第1~第3実施形態に係る放電制御方法では、初期値(Iac[3τm],vd
*[3τc],id-ref)と異常判定パラメータの比によって、平滑コンデンサ24の電力残存率を評価し、この比に対して閾値(β,η1,η2)を設定し、初期値の設定後、予め定める所定時間(ta,tc,tc′)が経過した時点における上記の比と閾値との比較により、放電異常を判定する。
【0177】
平滑コンデンサ24の電力残存率は、電圧センサ22の検出値によらず、例えば、初期値と異常判定パラメータの比によって評価することができる。すなわち、平滑コンデンサ24が蓄積していた電力の消費率に応じて、初期値と異常判定パラメータの比が変化する。このため、上記のように、初期値と異常判定パラメータの比の変化によって放電異常を判定すれば、電圧センサ22の検出値によらず、放電完了または放電異常を判定することができる。
【0178】
上記第1~第3実施形態に係る放電制御方法では、初期値(Iac[3τm],vd
*[3τc],id-ref)と異常判定パラメータの差によって、平滑コンデンサ24の電力減少量を評価し、この差に対して閾値(ε1,ε2,ε3)を設定し、初期値の設定後、予め定める所定時間(3τm+ta+tb,3τc+tc+tb,tc′+tb)が経過した時点における上記の差と閾値との比較により、放電異常を判定する。
【0179】
放電制御時の平滑コンデンサ24の電力減少量は、電圧センサ22の検出値によらず、例えば、初期値と異常判定パラメータの差によって評価することができる。なわち、平滑コンデンサ24が蓄積していた電力の消費量に応じて、初期値と異常判定パラメータの差が変化する。このため、上記のように、初期値と異常判定パラメータの差の変化によって放電異常を判定すれば、電圧センサ22の検出値によらず、放電完了または放電異常を判定することができる。特に、第1~第3実施形態のとおり、初期値と異常判定パラメータの差に基づいて放電異常を判定すれば、第3放電異常、すなわち、リレー12が溶着異常等によってオフになっておらず、バッテリ10から電力が供給され続けていることに起因した放電異常を峻別できる。
【0180】
上記第1~第3実施形態に係る放電制御方法では、初期値(例えばIac[3τm])が予め定める基準値(例えばIac-ref)を超えないときに、放電異常であると判定する。
【0181】
このように、異常判定パラメータの初期値が基準値を超えないことを放電異常の判定基準の一つとすれば、第1放電異常、すなわち、平滑コンデンサ24が蓄積した電力によって十分にモータ11に交流電圧を印加できていないことに起因する放電異常を判定することができる。
【0182】
上記第1実施形態に係る放電制御方法では、交流電圧は、回転電機(11)を脱調させる周波数を有する高周波電圧であり、異常判定パラメータとして、高周波電圧によって生じる回転電機電流である高周波電流(iu,iv,iw)を用い、高周波電流の大きさ(Iac)の変化に基づいて、放電異常を判定する。
【0183】
このように、平滑コンデンサ24を放電させるときに、回転電機(モータ11)を脱調させる高周波電圧を印加すれば、回転電機は回転せず、トルクも生じない。そして、高周波電圧を印加したときに回転電機に流れる高周波電流は、異常判定パラメータとして使用し得る。したがって、上記のように、平滑コンデンサ24を放電させるときに、回転電機(モータ11)を脱調させる高周波電圧を印加し、これにより回転電機に流れる高周波電流を異常判定パラメータとして用いれば、音や振動を生じさせずに、平滑コンデンサ24が蓄積している電力を回転電機で消費させつつ、正確に、放電完了または放電異常を判定することができる。
【0184】
上記第2~第3実施形態に係る放電制御方法では、交流電圧の指令は、予め定める一定のd軸電流id(=Idx)を生じさせ、かつ、q軸電流iqを生じさせないd軸電圧指令vd
*及びq軸電圧指令vq
*によって構成され、回転電機電流として、d軸電流idを取得し、d軸電流idをフィードバックすることによってd軸電圧指令vd
*を生成し、異常判定パラメータとして、d軸電流id、d軸電圧指令vd
*、または、d軸電流id及びd軸電圧指令vd
*を用いる。
【0185】
このように、平滑コンデンサ24を放電させるときに、トルクの発生に寄与しないd軸電流idだけを流すように電圧指令を調整すれば、回転電機は回転せず、トルクも生じない。そして、このときに流れるd軸電流idや、d軸電流idをフィードバックしたd軸電圧指令vd
*は、異常判定パラメータとして使用し得る。したがって、上記のように、平滑コンデンサ24を放電させるときに、回転電機(モータ11)にd軸電流idだけを流し、d軸電流id及び/またはd軸電圧指令vd
*を異常判定パラメータとして使用すれば、音や振動を生じさせずに、平滑コンデンサ24が蓄積している電力を回転電機で消費させつつ、正確に、放電完了または放電異常を判定することができる。
【0186】
上記第1~第3実施形態に係る放電制御方法では、インバータ13が平滑コンデンサ24の電圧を検出する電圧センサ22を備える場合、バッテリ10がインバータ13に入力する電圧(Vdc-bat)と、電圧センサ22の検出値(Vdc-inv)と、を比較することにより、電圧センサ22の異常を判定する。そして、電圧センサ22が正常に動作していると判定したときには、電圧センサ22の検出値(Vdc-inv=HV)に基づいて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定し、電圧センサ22に異常が生じていると判定したときに、異常判定パラメータに基づいて、平滑コンデンサの放電異常を判定する。
【0187】
このように、放電すべき平滑コンデンサ24の電圧を検出する電圧センサ22があるときには、電圧センサ22に故障等の異常が生じたときに、異常判定パラメータに基づいて、平滑コンデンサの放電異常を判定すれば、電圧センサ22に故障等の異常が生じたとしても、正確に、放電完了または放電異常を判定することができる。
【0188】
上記第1~第3実施形態に係る放電制御装置は、バッテリ10の電力によって駆動する電動車両100をシャットダウンするときに、インバータ13が平滑コンデンサ24に蓄積している電力を回転電機(11)で消費させることにより、平滑コンデンサ24を放電する放電制御装置である。この放電制御装置は、バッテリ10とインバータ13の接続を解除する車両コントローラ25と、車両コントローラ25がバッテリ10とインバータ13の接続を解除したときに、インバータ13のスイッチング素子uu~wlを制御することにより、平滑コンデンサ24が蓄積している電力を用いて、回転電機(11)に交流電圧を印加するモータコントローラ23と、を含む。そして、モータコントローラ23は、交流電圧によって回転電機に流れる電流である回転電機電流(Iac,id等)を取得し、回転電機電流(Iac,id等)、または、回転電機電流をフィードバックした交流電圧の指令(vd
*)、を異常判定パラメータとし、異常判定パラメータに基づいて、平滑コンデンサ24の放電異常を判定する。
【0189】
このように、電動車両100をシャットダウンするときに、平滑コンデンサ24が蓄積している電力によって回転電機(モータ11)に交流電圧を印加し、これにより回転電機に流れる電流を取得し、取得した電流、または、取得した電流をフィードバックした交流電圧の指令(vd
*)、を異常判定パラメータとして用いることにより、平滑コンデンサ24の放電異常を判定すれば、平滑コンデンサ24の電圧を直接に検出等しなくても、正常な放電完了または放電異常を適切に判定することができる。
【0190】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び各変形例で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0191】
10:バッテリ,11:モータ,12:リレー,12a:第1リレー,12b:第2リレー,13:インバータ,14:ギヤボックス,15:車輪,21:電力変換部,22:電圧センサ,23:モータコントローラ,24:平滑コンデンサ,25:車両コントローラ,30:操作部,31:キースイッチ,32:シフト,33:ブレーキペダル,34:アクセルペダル,41:電流指令演算部,42:電流制御部,43:二相三相変換部,44:制御切替部,46:回転検出部,47:三相二相変換部,48:全波整流演算部,51:回転位置検出器,52:電流センサ,100:電動車両