(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151981
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】提案装置、提案方法、電極用混合物の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20241018BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241018BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065849
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】姉川 莉央
(72)【発明者】
【氏名】井端 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 佑磨
(72)【発明者】
【氏名】山崎 穣輝
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光平
(72)【発明者】
【氏名】石野 雄太
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050DA11
5H050EA24
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】物性値が目標値を満たす電極用混合物の配合を提案する。
【解決手段】電極用混合物の配合を提案する制御部を有する提案装置が、電極用混合物の候補配合を生成し、候補配合に基づいて電極用混合物の物性値を予測し、物性値が目標値を満たす候補配合を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極用混合物の配合を提案する制御部を有する提案装置であって、
前記制御部は、
前記電極用混合物の候補配合を生成し、
前記候補配合に基づいて前記電極用混合物の物性値を予測し、
前記物性値が目標値を満たす前記候補配合を出力する、
提案装置。
【請求項2】
前記制御部は、
学習済みモデルに基づいて前記物性値を予測する、
請求項1に記載の提案装置。
【請求項3】
前記電極用混合物は、活物質と導電部材とバインダーとを含有する混合物である、
請求項1に記載の提案装置。
【請求項4】
前記バインダーは、高分子を含む、
請求項3に記載の提案装置。
【請求項5】
前記高分子は、フッ素樹脂を含む、
請求項4に記載の提案装置。
【請求項6】
前記制御部は、
2種以上の前記物性値を予測し、
前記2種以上の前記物性値がいずれも目標値を満たす前記候補配合を出力する、
請求項1から5のいずれかに記載の提案装置。
【請求項7】
電極用混合物の配合を提案する提案装置が有する制御部が、
前記電極用混合物の候補配合を生成し、
前記候補配合に基づいて前記電極用混合物の物性値を予測し、
前記物性値が目標値を満たす前記候補配合を出力する、
処理を実行する提案方法。
【請求項8】
請求項7に記載の提案方法により出力された候補配合に従って活物質と導電部材とバインダーとを混合する工程を含む電極用混合物の製造方法。
【請求項9】
電極用混合物の配合を提案する提案装置が有する制御部に、
前記電極用混合物の候補配合を生成し、
前記候補配合に基づいて前記電極用混合物の物性値を予測し、
前記物性値が目標値を満たす前記候補配合を出力する、
処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、提案装置、提案方法、電極用混合物の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習モデルを用いて物質の特性が向上する配合を提案する技術がある。例えば、特許文献1には、機械学習モデルを用いて特性の評価値がより向上する特定物質のスペクトル特性の予測範囲を特定し、そのスペクトル特性の予測範囲を有する特定物質を探索する物質探索装置が開示されている。特許文献2には、機械学習の手法により、調整前の塗料に、塗料性状調整用の原料を加えた際の、調整後の塗料性状を予測する予測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-149449号公報
【特許文献2】国際公開第2022/131180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、電極の作製に用いる電極用混合物の配合を提案する技術ではない。
【0005】
本開示は、物性値が目標値を満たす電極用混合物の配合を提案する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る提案装置は、電極用混合物の配合を提案する制御部を有する提案装置であって、前記制御部は、前記電極用混合物の候補配合を生成し、前記候補配合に基づいて前記電極用混合物の物性値を予測し、前記物性値が目標値を満たす前記候補配合を出力する。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、物性値が目標値を満たす電極用混合物の配合を提案することができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様に係る提案装置であって、前記制御部は、学習済みモデルに基づいて前記物性値を予測する。
【0009】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様に係る提案装置であって、前記電極用混合物は、活物質と導電部材とバインダーを混合した混合物である。
【0010】
本開示の第4の態様は、第3の態様に係る提案装置であって、前記バインダーは、高分子を含む。
【0011】
本開示の第5の態様は、第4の態様に係る提案装置であって、前記高分子は、フッ素樹脂を含む。
【0012】
本開示の第6の態様は、第1から第5の態様のいずれかに係る提案装置であって、前記制御部は、2種以上の前記物性値を予測し、前記2種以上の前記物性値がいずれも目標値を満たす前記候補配合を出力する。
【0013】
本開示の第7の態様に係る提案方法は、電極用混合物の配合を提案する提案装置が有する制御部が、前記電極用混合物の候補配合を生成し、前記候補配合に基づいて前記電極用混合物の物性値を予測し、前記物性値が目標値を満たす前記候補配合を出力する。
【0014】
本開示の第8の態様に係る電極用混合物の製造方法は、第7の態様に係る提案方法により出力された候補配合に従って活物質と導電部材とバインダーとを混合する工程を含む。
【0015】
本開示の第9の態様に係るプログラムは、電極用混合物の配合を提案する提案装置が有する制御部に、前記電極用混合物の候補配合を生成し、前記候補配合に基づいて前記電極用混合物の物性値を予測し、前記物性値が目標値を満たす前記候補配合を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】電極シートの製造工程の一例を示す図である。
【
図2】提案装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】学習方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】1日後粘度変化率モデルの一例を示す図である。
【
図5】7日後粘度変化率モデルの一例を示す図である。
【
図9】提案方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0018】
[実施形態]
本開示の一実施形態は、電極用混合物の配合を提案する提案装置である。本実施形態における電極用混合物は、例えば、電極スラリーである。
【0019】
電極スラリーは、例えばリチウムイオン電池等の二次電池で用いられる電極シートを作製するために用いられる物質である。電極スラリーは、活物質と導電助剤とバインダーとを含有するスラリーである。バインダーは、複数種類のバインダーを混合したものでもよい。
【0020】
例えばリチウムイオン電池は、正極となる電極シートと負極となる電極シートとでセパレータを挟んだ積層体を容器内に充填し、電解液を注入して密閉することで製造される。以下、電極シートを指して、単に「電極」と呼ぶことがある。なお、本実施形態における電極スラリーは、正極となる電極シート又は負極となる電極シートのいずれを作成するために用いられてもよい。
【0021】
図1は、電極シートの製造工程の一例を示す図である。
図1に示されているように、電極シートの製造工程は、スラリー作製工程と電極作製工程とに大別できる。スラリー作製工程では、活物質と導電助剤とバインダーとを混錬して電極スラリーを作製する。電極作製工程では、スラリー作製工程で作製された電極スラリーを用いて電極シートを作製する。
【0022】
スラリー作製工程では、まず、バインダー溶液と導電助剤とを攪拌器に投入し、混錬を行う。次に、活物質と溶剤とを攪拌器に追加し、再び混錬を繰り返す。溶剤は、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)が用いられる。そして、溶剤を攪拌器にさらに投入し、混錬を行う。
【0023】
電極作製工程では、まず、アルミ箔等の集電体に電極スラリーを塗工する。次に、電極スラリーが塗工された集電体に対して熱処理を加え乾燥させる。熱処理温度は、例えば、90℃、110℃、120℃と段階的に上昇させてもよい。完成した電極シートは、用途に応じた形状に裁断され、二次電池の製造に用いられる。
【0024】
電極用混合物の配合は、その電極用混合物を用いた電極の物性、及びその電極を用いた二次電池の性能に大きく影響する。ここで、電極用混合物の配合には、材料(すなわち、活物質、導電助剤及びバインダー)の混合比、及びバインダーの混合比が含まれる。
【0025】
従来、電極用混合物の配合は、設計者の知見に基づいて決定されていた。例えば、設計者は、まず、自身の経験又は知識等に基づいて、要求仕様を満たす配合の仮説を立てる。次に、設計者は、その配合で電極用混合物を試作し、実験を通じて物性値を測定する。設計者は、その電極用混合物を用いて電極又は二次電池を試作し、その性能等を測定することもある。そして、設計者は、要求仕様を満たす電極用混合物が得られるまで、試作及び実験を繰り返す。
【0026】
本実施形態では、要求仕様を満たす電極用混合物の配合を提案することを目的とする。特に、本実施形態では、電極用混合物に関する物性値を予測することで、試作及び実験を行うことなく、物性値が目標値を満たす電極用混合物の配合を提案する。
【0027】
本実施形態では、1以上の学習済みモデルを用いて電極用混合物に関する物性値を予測する。電極用混合物に関する物性値は、電極用混合物から測定される物性値、及び電極用混合物を用いた電極から測定される物性値を含む。
【0028】
電極用混合物から測定される物性値は、スラリー安定性を示す物性値を含む。スラリー安定性を示す物性値は、例えば、粘度変化率、レオロジー及び沈降評価等が挙げられる。本実施形態では、一例として、1日後粘度変化率及び7日後粘度変化率を予測する機械学習モデルについて説明する。
【0029】
電極から測定される物性値は、分散性を示す物性値を含む。分散性を示す物性値は、例えば、塗膜抵抗及び黒色度等が挙げられる。本実施形態では、一例として、塗膜抵抗を予測する機械学習モデルについて説明する。
【0030】
電極から測定される物性値は、柔軟性を示す物性値を含む。柔軟性を示す物性値は、例えば、3点曲げ試験結果及びマンドレル試験結果等が挙げられる。本実施形態では、一例として、3点曲げ強度を予測する機械学習モデルについて説明する。
【0031】
電極から測定される物性値は、密着性を示す物性値を含む。密着性を示す物性値は、例えば、剥離試験結果等が挙げられる。本実施形態では、一例として、剥離強度を予測する機械学習モデルについて説明する。
【0032】
一の側面では、本実施形態によれば、要求仕様を満たす電極用混合物の配合を効率よく決定することができる。これにより、電極用混合物、電極及び二次電池の開発におけるリードタイムを短縮することができる。
【0033】
<ハードウェア構成>
図2は、本実施形態における提案装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2に示されているように、提案装置100は、プロセッサ101、メモリ102、補助記憶装置103、操作装置104、表示装置105、通信装置106、ドライブ装置107を有する。提案装置100の各ハードウェアは、バス108を介して相互に接続されている。
【0034】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ101は、補助記憶装置103にインストールされている各種プログラムをメモリ102上に読み出して実行する。
【0035】
メモリ102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ101とメモリ102とは、いわゆるコンピュータ(以下、「制御部」ともいう)を形成し、プロセッサ101が、メモリ102上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは各種機能を実現する。
【0036】
補助記憶装置103(以下、「記憶部」ともいう)は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ101によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0037】
操作装置104は、提案装置100のユーザが各種操作を行うための操作デバイスである。表示装置105は、提案装置100により実行される各種処理の処理結果を表示する表示デバイスである。
【0038】
通信装置106は、通信ネットワークを介して外部装置と通信を行うための通信デバイスである。
【0039】
ドライブ装置107は、記憶媒体109をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体109には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記憶する媒体が含まれる。また、記憶媒体109には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記憶する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0040】
なお、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体109がドライブ装置107にセットされ、記憶媒体109に記憶された各種プログラムがドライブ装置107により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、通信装置106を介してネットワークからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0041】
<学習方法の流れ>
図3は、本実施形態における提案装置100が実行する学習方法の流れの一例を示すフローチャートである。学習方法は、電極用混合物の提案に用いる予測モデルを学習する方法である。
【0042】
ステップS1において、提案装置100の制御部は、学習データを記憶部に記憶する。学習データは、予測モデルを学習するために用いるデータである。予測モデルは、電極用混合物に関する物性値を予測するための機械学習モデルである。本実施形態における予測モデルは、一例として、1日後粘度変化率モデル、7日後粘度変化率モデル、塗膜抵抗モデル、3点曲げ強度モデル及び剥離強度モデルを含む。
【0043】
学習データには、予測モデルの説明変数となるパラメータ及び予測モデルの目的変数となるパラメータが含まれる。学習データは、様々な配合で作製した電極用混合物を用いて実験を行うことで収集することができる。学習データは、論文又はデータベース等で公開された情報を収集してもよい。
【0044】
本実施形態における学習データは、以下のデータ項目を有する。
(1)材料組成比
(2)バインダー配合比
(3)固形分濃度
(4)初期粘度
(5)バインダー基礎物性
(6)電極情報
(7)1日後粘度変化率
(8)7日後粘度変化率
(9)塗膜抵抗
(10)3点曲げ強度
(11)剥離強度
【0045】
(1)材料組成比は、さらに以下のデータ項目を有する。
(1-1)活物質の重量比率
(1-2)導電助剤の重量比率
(1-3)バインダーの重量比率
【0046】
(2)バインダー配合比は、電極用混合物の作製に用いるバインダーにおける種類ごとの重量比率である。(3)固形分濃度は、電極用混合物が電極スラリーである場合の固形分濃度である。(4)初期粘度は、電極用混合物を作製した直後に測定した粘度である。
【0047】
(5)バインダー基礎物性は、さらに以下のデータ項目を有する。
(5-1)固有粘度
(5-2)弾性率
(5-3)重合方法
(5-4)官能基変性の有無
(5-5)Mw/Mn
(5-6)溶液粘度
(5-7)変性量
(5-8)分岐度
(5-9)異常結合度
(5-10)ランダム率
【0048】
(6)電極情報は、さらに以下のデータ項目を有する。
(6-1)スラリー塗布量
(6-2)プレス工程前の密度
(6-3)プレス工程後の密度
【0049】
(7)1日後粘度変化率は、初期粘度と1日後に測定した粘度との比である。(8)7日後粘度変化率は、初期粘度と1日後に測定した粘度との比である。(9)塗膜抵抗は、電極用混合物を用いて作製した電極シートに対して計測器を用いて測定すればよい。(10)3点曲げ強度は、電極用混合物を用いて作製した電極シートに対して3点曲げ試験を行って測定すればよい。(11)剥離強度は、電極用混合物を用いて作製した電極シートに対して剥離試験を行って測定すればよい。
【0050】
(1)材料組成比、(2)バインダー配合比、(3)固形分濃度、(4)初期粘度、(5)バインダー基礎物性、(6)電極情報は、予測モデルの説明変数として用いられる。(7)1日後粘度変化率、(8)7日後粘度変化率、(9)塗膜抵抗、(10)3点曲げ強度、(11)剥離強度は、予測モデルの目的変数として用いられる。
【0051】
学習データの収集においては、想定される要求仕様に基づいて、電極用混合物又はバインダーの配合に関する制約条件を設けてもよい。電極用混合物及びバインダーの組み合わせは膨大である一方、実際に二次電池の製造に用いられ得る組み合わせは限定される。実際に用いられる可能性が低い領域の学習データを制限することで、学習に要する計算量を低減し、予測精度を向上することができる。
【0052】
本実施形態では、活物質及び導電助剤は1種類に固定する。バインダーは、2種類のバインダーを混合する。2種類のバインダーのうち一方のバインダーは、予め定めた複数種類のバインダー候補から1種類を選択する。バインダー候補の数は限定されないが、本実施形態では一例として10種類とする。
【0053】
2種類のバインダーのうち他方のバインダーは、高分子を有するバインダーとする。高分子の一例は、フッ素樹脂である。以下、フッ素樹脂を含有するバインダーを「フッ素樹脂バインダー」と呼ぶ。
【0054】
活物質の重量比率は、96.0~98.0wt%の範囲とする。導電助剤の重量比率は、1.0~3.0wt%の範囲とする。バインダーの重量比率は、1.0~3.0wt%の範囲とする。フッ素樹脂バインダーのバインダー全体に対する重量比率は、0~20wt%とする。
【0055】
ステップS2において、提案装置100の制御部は、記憶部に記憶された学習データに基づいて、1日後粘度変化率モデルを学習する。1日後粘度変化率モデルは、電極用混合物の1日後粘度変化率を予測する機械学習モデルである。提案装置100の制御部は、学習済みの1日後粘度変化率モデルを記憶部に記憶する。
【0056】
図4は、1日後粘度変化率モデルの一例を示す図である。
図4に示されているように、1日後粘度変化率モデル300は、材料組成比、バインダー混合比、初期粘度、固形分濃度及びバインダー物性を入力とし、1日後粘度変化率を出力する。1日後粘度変化率は、「A:0~120%」、「B:121~150%」、「C:151~300%」、「D:301%~」の4クラスに分類される。
【0057】
なお、1日後粘度変化率モデル300に入力されるバインダー物性は、学習データに含まれるバインダー物性の各項目のうち、固有粘度、弾性率、重合方法及び官能基変性の有無である。
【0058】
1日後粘度変化率モデル300は、分類モデル301及び回帰モデル302を含む。分類モデル301は、材料組成比、バインダー混合比、初期粘度、固形分濃度及びバインダー物性を入力とし、1日後粘度変化率を「300%以下」又は「301%以上」に分類する。分類モデル301の構造は、例えば、ランダムフォレストとすることができる。
【0059】
分類モデル301において1日後粘度変化率が「300%以下」に分類された配合は、回帰モデル302に入力される。一方、分類モデル301において1日後粘度変化率が「301%以上」に分類された配合は、「D:301%~」のクラスに分類される。
【0060】
1日後粘度変化率は、電極用混合物の作製後の経過時間が短いため、粘度変化率の絶対値が小さくなる傾向がある。そのため、1日後粘度変化率が300%以上となるような学習データは少なく、予測精度が低下するおそれがある。1日後粘度変化率モデル300は、回帰モデル302による予測を行う前に、1日後粘度変化率が現実的な範囲となる配合であるか否かを検証するように構成されている。
【0061】
回帰モデル302は、材料組成比、バインダー混合比、初期粘度、固形分濃度及びバインダー物性を入力とし、1日後粘度変化率を出力する。回帰モデル302は、1日後粘度変化率を「A:0~120%」、「B:121~150%」、「C:151~300%」に分類する。回帰モデル302の構造は、例えば、ガウス過程回帰とすることができる。
【0062】
図3に戻って説明する。ステップS3において、提案装置100の制御部は、記憶部に記憶された学習データに基づいて、7日後粘度変化率モデルを学習する。7日後粘度変化率モデルは、電極用混合物の7日後粘度変化率を予測する機械学習モデルである。提案装置100の制御部は、学習済みの7日後粘度変化率モデルを記憶部に記憶する。
【0063】
図5は、7日後粘度変化率モデルの一例を示す図である。
図5に示されているように、7日後粘度変化率モデル310は、材料組成比、バインダー混合比、初期粘度、固形分濃度及びバインダー物性を入力とし、7日後粘度変化率を出力する。7日後粘度変化率は、「A:0~120%」、「B:121~150%」、「C:151~300%」、「D:301%~」の4クラスに分類される。7日後粘度変化率モデル310の構造は、例えば、ガウス過程回帰とすることができる。
【0064】
なお、7日後粘度変化率モデル310に入力されるバインダー物性は、1日後粘度変化率モデル300と同様に、学習データに含まれるバインダー物性の各項目のうち、固有粘度、弾性率、重合方法及び官能基変性の有無である。
【0065】
7日後粘度変化率は、電極用混合物の作製後の経過時間が長いため、粘度変化率の絶対値が大きくなる傾向がある。そのため、7日後粘度変化率モデル310では、1日後粘度変化率モデル300とは異なり、すべての配合について、7日後粘度変化率を直接予測するように構成すればよい。
【0066】
図3に戻って説明する。ステップS4において、提案装置100の制御部は、記憶部に記憶された学習データを用いて、塗膜抵抗モデルを学習する。塗膜抵抗モデルは、電極用混合物を用いて作製される電極の塗膜抵抗を予測する機械学習モデルである。提案装置100の制御部は、学習済みの塗膜抵抗モデルを記憶部に記憶する。
【0067】
図6は、塗膜抵抗モデルの一例を示す図である。
図6に示されているように、塗膜抵抗モデル320は、材料組成比、バインダー混合比、バインダー物性及び電極情報を入力とし、塗膜抵抗を出力する。塗膜抵抗モデル320の構造は、例えば、ガウス過程回帰とすることができる。
【0068】
なお、塗膜抵抗モデル320に入力されるバインダー物性は、学習データに含まれるバインダー物性の各項目のうち、固有粘度、弾性率、重合方法及び官能基変性の有無である。また、塗膜抵抗モデル320に入力される電極情報は、学習データに含まれる電極情報の各項目のうち、プレス工程前の密度である。
【0069】
図3に戻って説明する。ステップS5において、提案装置100の制御部は、記憶部に記憶された学習データを用いて、3点曲げ強度モデルを学習する。3点曲げ強度モデルは、電極用混合物を用いて作製される電極の3点曲げ強度を予測する機械学習モデルである。提案装置100の制御部は、学習済みの3点曲げ強度モデルを記憶部に記憶する。
【0070】
図7は、3点曲げ強度モデルの一例を示す図である。
図7に示されているように、3点曲げ強度モデル330は、材料組成比、バインダー混合比、バインダー物性及び電極情報を入力とし、3点曲げ強度を出力する。3点曲げ強度モデル330の構造は、例えば、ガウス過程回帰とすることができる。
【0071】
なお、3点曲げ強度モデル330に入力されるバインダー物性は、学習データに含まれるバインダー物性の各項目のうち、固有粘度、弾性率、Mw/Mn、溶液粘度、変性量、分岐度、異常結合度及びランダム率である。また、3点曲げ強度モデル330に入力される電極情報は、学習データに含まれる電極情報の各項目のうち、スラリー塗布量、プレス工程前の密度及びプレス工程後の密度である。
【0072】
図3に戻って説明する。ステップS6において、提案装置100の制御部は、記憶部に記憶された学習データを用いて、剥離強度モデルを学習する。剥離強度モデルは、電極用混合物を用いて作製される電極の剥離強度を予測する機械学習モデルである。提案装置100の制御部は、学習済みの剥離強度モデルを記憶部に記憶する。
【0073】
図8は、剥離強度モデルの一例を示す図である。
図8に示されているように、剥離強度モデル340は、材料組成比、バインダー混合比、バインダー物性及び電極情報を入力とし、剥離強度を出力する。剥離強度モデル340の構造は、例えば、ガウス過程回帰とすることができる。
【0074】
なお、剥離強度モデル340に入力されるバインダー物性は、学習データに含まれるバインダー物性の各項目のうち、固有粘度、弾性率、Mw/Mn、溶液粘度、変性量、分岐度、異常結合度及びランダム率である。また、剥離強度モデル340に入力される電極情報は、学習データに含まれる電極情報の各項目のうち、スラリー塗布量、プレス工程前の密度及びプレス工程後の密度である。
【0075】
<提案方法の流れ>
図7は、本実施形態における提案装置100が実行する提案方法の流れの一例を示すフローチャートである。提案方法は、学習済みの予測モデルを用いて電極用混合物の配合を提案する方法である。
【0076】
ステップS11において、提案装置100の制御部は、条件情報の入力を受け付ける。条件情報は、電極用混合物の配合を提案するときの前提条件を示す情報である。条件情報は、電極用混合物又は電極に対する要求仕様を表す情報であるとも言える。条件情報は、例えば、CSV(Comma-Separated Values)形式又は所望の表計算ソフトウェアのデータ形式等で入力してもよい。
【0077】
図10は、条件情報の一例を示す図である。
図10に示されているように、条件情報は、配合条件、固定条件及び目標値を含む。
【0078】
配合条件は、活物質比率、導電助剤比率、バインダー比率、フッ素樹脂バインダー割合及び固形分濃度を含む。各配合条件は、最小値、最大値及び間隔を含む。最小値、最大値及び間隔は、電極用混合物の候補配合を生成するために用いられる。
【0079】
固定条件は、スラリー塗布量、プレス工程後の密度、プレス工程前の密度、初期粘度を含む。固定条件は、各予測モデルの説明変数に設定する値を指定するために用いられる。
【0080】
目標値は、剥離強度、3点曲げ強度、1日後粘度変化率、7日後粘度変化率及び塗膜抵抗を含む。目標値は、各予測モデルにより予測された物性値が満たすべき値を指定するために用いられる。
【0081】
図9に戻って説明する。ステップS12において、提案装置100の制御部は、ステップS11で受け付けた条件情報に従って、電極用混合物の候補配合を生成する。具体的には、提案装置100の制御部は、まず、条件情報に含まれる配合条件に従って、各材料の配合比の選択肢を生成する。例えば、活物質比率に対する配合条件が、最小97、最大98、間隔1に設定されている場合、活物質の選択肢は、97wt%又は98wt%となる。また、例えば、導電助剤比率に対する配合条件が、最小1、最大3、間隔1に設定されている場合、導電助剤の選択肢は、1wt%、2wt%、3wt%となる。
【0082】
次に、提案装置100の制御部は、各材料の配合比のすべての組み合わせのうち、各材料の配合比の総和が100wt%となる組み合わせを抽出する。例えば、活物質の配合比が97wt%であり、導電助剤の配合比が1wt%であり、バインダーの配合比が2wt%である配合は、配合比の総和が100wt%であるため、抽出される。また、例えば、活物質の配合比が98wt%であり、導電助剤の配合比が2wt%であり、バインダーの配合比が2wt%である配合は、配合比の総和が102wt%であるため、抽出されない。
【0083】
続いて、提案装置100の制御部は、抽出された各配合について、候補バインダーの選択肢、フッ素樹脂バインダー割合の選択肢及び固形分濃度の選択肢のすべての組み合わせを生成する。これにより、電極用混合物の候補配合が生成される。
【0084】
ステップS13において、提案装置100の制御部は、ステップS12で生成した各候補配合について、各予測モデルの説明変数に設定するバインダー物性を計算する。本実施形態では、2種類のバインダーを混合するため、バインダー配合比に従って、各バインダーの基礎物性を加重平均することで、バインダー物性を計算する。なお、基礎物性は、バインダー単体での物性値である。基礎物性は、予め測定し、記憶部に記憶しておけばよい。
【0085】
1種類のバインダーを混合せずに用いる配合では、バインダー物性は、基礎物性をそのまま利用すればよい。3種類以上のバインダーを混合する配合では、2種類のバインダーを混合する場合と同様に、バインダー配合比に従って加重平均すればよい。
【0086】
ステップS14において、提案装置100の制御部は、記憶部から学習済みの1日後粘度変化率モデル300を読み出す。次に、提案装置100の制御部は、各候補配合について、学習済みの1日後粘度変化率モデル300に基づいて、1日後粘度変化率を予測する。
【0087】
具体的には、提案装置100の制御部は、各候補配合について、材料組成比、バインダー混合比、初期粘度、固形分濃度、バインダー物性(固有粘度、弾性率、重合方法及び官能基変性の有無)を、1日後粘度変化率モデル300の分類モデル301に入力する。分類モデル301は、各候補配合を、1日後粘度変化率が「300%以下」のクラス又は「301%以上」のクラスに分類する。
【0088】
提案装置100の制御部は、分類モデル301により1日後粘度変化率が「301%以上」のクラスに分類された候補配合について、1日後粘度変化率の予測結果として「D:301%~」のクラスを出力する。
【0089】
提案装置100の制御部は、分類モデル301により1日後粘度変化率が「300%以下」のクラスに分類された候補配合について、材料組成比、バインダー混合比、初期粘度、固形分濃度、バインダー物性(固有粘度、弾性率、重合方法及び官能基変性の有無)を、1日後粘度変化率モデル300の回帰モデル302に入力する。回帰モデル302は、各候補配合について、1日後粘度変化率の予測値を出力する。そして、提案装置100の制御部は、回帰モデル302から出力された1日後粘度変化率の予測値を「A:0~120%」、「B:121~150%」、「C:151~300%」のいずれかのクラスに分類し、1日後粘度変化率の予測結果として出力する。
【0090】
ステップS15において、提案装置100の制御部は、記憶部から学習済みの7日後粘度変化率モデル310を読み出す。次に、提案装置100の制御部は、各候補配合について、学習済みの7日後粘度変化率モデル310に基づいて、7日後粘度変化率を予測する。
【0091】
具体的には、提案装置100の制御部は、各候補配合について、材料組成比、バインダー混合比、初期粘度、固形分濃度、バインダー物性(固有粘度、弾性率、重合方法及び官能基変性の有無)を、7日後粘度変化率モデル310に入力する。7日後粘度変化率モデル310は、各候補配合について、7日後粘度変化率の予測値を出力する。そして、提案装置100の制御部は、7日後粘度変化率モデル310から出力された7日後粘度変化率の予測値を「A:0~120%」、「B:121~150%」、「C:151~300%」、「D:301%~」のいずれかに分類し、7日後粘度変化率の予測結果として出力する。
【0092】
ステップS16において、提案装置100の制御部は、記憶部から学習済みの塗膜抵抗モデル320を読み出す。次に、提案装置100の制御部は、各候補配合について、学習済みの塗膜抵抗モデル320に基づいて、塗膜抵抗を予測する。
【0093】
具体的には、提案装置100の制御部は、各候補配合について、材料組成比、バインダー混合比、バインダー物性(固有粘度、弾性率、重合方法及び官能基変性の有無)及び電極情報(プレス工程前の密度)を、塗膜抵抗モデル320に入力する。塗膜抵抗モデル320は、各候補配合について、塗膜抵抗の予測値を出力する。そして、提案装置100の制御部は、塗膜抵抗モデル320から出力された塗膜抵抗の予測値を塗膜抵抗の予測結果として出力する。
【0094】
ステップS17において、提案装置100の制御部は、記憶部から学習済みの3点曲げ強度モデル330を読み出す。次に、提案装置100の制御部は各候補配合について、学習済みの3点曲げ強度モデル330に基づいて、3点曲げ強度を予測する。
【0095】
具体的には、提案装置100の制御部は、各候補配合について、材料組成比、バインダー混合比、バインダー物性(固有粘度、弾性率、Mw/Mn、溶液粘度、変性量、分岐度、異常結合度及びランダム率)及び電極情報(スラリー塗布量、プレス工程前の密度及びプレス工程後の密度)を、3点曲げ強度モデル330に入力する。3点曲げ強度モデル330は、各候補配合について、3点曲げ強度の予測値を出力する。そして、提案装置100の制御部は、3点曲げ強度モデル330から出力された3点曲げ強度の予測値を3点曲げ強度の予測結果として出力する。
【0096】
ステップS18において、提案装置100の制御部は、記憶部から学習済みの剥離強度モデル340を読み出す。次に、提案装置100の制御部は、各候補配合について、学習済みの剥離強度モデル340に基づいて、剥離強度を予測する。
【0097】
具体的には、提案装置100の制御部は、各候補配合について、材料組成比、バインダー混合比、バインダー物性(固有粘度、弾性率、Mw/Mn、溶液粘度、変性量、分岐度、異常結合度及びランダム率)及び電極情報(スラリー塗布量、プレス工程前の密度及びプレス工程後の密度)を、剥離強度モデル340に入力する。剥離強度モデル340は、各候補配合について、剥離強度の予測値を出力する。そして、提案装置100の制御部は、剥離強度モデル340から出力された剥離強度の予測値を剥離強度の予測結果として出力する。
【0098】
ステップS19において、提案装置100の制御部は、各候補配合のうち、ステップS14からステップS18で予測した電極用混合物に関する物性値が、条件情報で指定された目標値を満たす候補配合を抽出する。そして、提案装置100の制御部は、抽出した候補配合を含む提案情報を出力する。提案情報は、例えば、CSV形式又は所望の表計算ソフトウェアのデータ形式等で出力してもよい。
【0099】
図11は、提案情報の一例を示す図である。
図11に示されているように、提案情報は、材料組成比、バインダー混合比、1日後粘度変化率、7日後粘度変化率、塗膜抵抗、3点曲げ強度、剥離強度を含む。材料組成比は、活物質比率、導電助剤比率及びバインダー比率を含む。バインダー混合比は、バインダーの種類並びに比率、及びフッ素樹脂バインダーの種類並びに比率を含む。1日後粘度変化率は、予測値、標準偏差及びクラスを示すラベルを含む。7日後粘度変化率は、予測値、標準偏差及びクラスを示すラベルを含む。塗膜抵抗、3点曲げ強度及び剥離強度は、それぞれ予測値及び標準偏差を含む。
【0100】
提案装置100のユーザは、提案装置100が出力した提案情報に基づいて、要求仕様を満たす電極用混合物を製造することができる。具体的には、提案装置100のユーザは、提案情報に含まれる電極用混合物の配合のうち、所望の配合に従って活物質と導電助剤とバインダーとを混合し、電極用混合物を製造することができる。このようにして製造される電極用混合物は、物性値が目標値を満たすことが予測されるため、要求仕様を満たす電極用混合物となる可能性が高い。
【0101】
<変形例>
本実施形態では、1日後粘度変化率、7日後粘度変化率、塗膜抵抗、3点曲げ強度及び剥離強度を、学習済みモデルを用いて予測する構成を説明したが、これらの物性値は一例であって提案装置100が予測する物性値はこれらに限定されない。本実施形態は、電極用混合物又は電極用混合物を用いた電極の物性値であれば、任意の物性値を予測するように構成してもよい。また、複数の物性値を予測する構成に限定されることはなく、1つの物性値を予測するように構成してもよい。
【0102】
<まとめ>
以上、本開示の一実施形態によれば、物性値が目標値を満たす電極用混合物の配合を提案することができる。例えば、提案装置100は、電極用混合物の候補配合に基づいて電極用混合物に関する物性値を予測し、物性値が目標値を満たす候補配合を出力する。したがって、本開示の一実施形態によれば、物性値が目標値を満たす電極用混合物の配合を提案することができる。
【0103】
電極用混合物は、活物質と導電部材とバインダーとを含有する混合物であり、バインダーは、フッ素樹脂等の高分子を含有するバインダーを含んでもよい。したがって、本開示の一実施形態によれば、フッ素樹脂を含むバインダーと活物質と導電部材とを含有する電極用混合物の配合を提案することができる。
【0104】
提案装置100は、電極用混合物の2種以上の物性値を予測し、2種以上の物性値がいずれも目標値を満たす候補配合を出力してもよい。したがって、本開示の一実施形態によれば、複数の物性値が同時に目標値を満たす電極用混合物の配合を提案することができる。
【0105】
提案装置100のユーザは、提案装置100から出力された提案情報に含まれる候補配合に従って、活物質と導電部材とバインダーとを混合することで、電極用混合物を製造してもよい。提案情報に含まれる候補配合は、物性値が目標値を満たすことが予測されているため、候補配合に従って製造された電極用混合物は要求仕様を満たすものと考えられる。したがって、本開示の一実施形態によれば、要求仕様を満たす電極用混合物、電極又は二次電池を短いリードタイムで製造することができる。
【0106】
[補足]
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)のようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等の機器を含むものとする。
【0107】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0108】
100 提案装置
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極用混合物の配合を提案する制御部を有する提案装置であって、
前記制御部は、
前記電極用混合物の候補配合を生成し、
学習済みモデル及び前記候補配合に基づいて前記電極用混合物を用いて製造される電極の物性値を予測し、
前記物性値が目標値を満たす前記候補配合を出力する、
提案装置。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、前記候補配合及び前記電極の製造条件を説明変数に含む、
請求項1に記載の提案装置。
【請求項3】
前記電極用混合物は、活物質と導電部材と複数のバインダーとを含有する混合物であり、
前記学習済みモデルは、前記候補配合に含まれる前記複数のバインダーの配合比に従って前記複数のバインダーの物性値を加重平均した物性値を説明変数に含む、
請求項1又は2に記載の提案装置。
【請求項4】
前記バインダーは、高分子を含む、
請求項3に記載の提案装置。
【請求項5】
前記高分子は、フッ素樹脂を含む、
請求項4に記載の提案装置。
【請求項6】
前記制御部は、
2種以上の前記物性値を予測し、
前記2種以上の前記物性値がいずれも目標値を満たす前記候補配合を出力する、
請求項1又は2に記載の提案装置。
【請求項7】
電極用混合物の配合を提案する提案装置が有する制御部が、
前記電極用混合物の候補配合を生成し、
学習済みモデル及び前記候補配合に基づいて前記電極用混合物を用いて製造される電極の物性値を予測し、
前記物性値が目標値を満たす前記候補配合を出力する、
処理を実行する提案方法。
【請求項8】
請求項7に記載の提案方法により出力された候補配合に従って活物質と導電部材とバインダーとを混合する工程を含む電極用混合物の製造方法。
【請求項9】
電極用混合物の配合を提案する提案装置が有する制御部に、
前記電極用混合物の候補配合を生成し、
学習済みモデル及び前記候補配合に基づいて前記電極用混合物を用いて製造される電極の物性値を予測し、
前記物性値が目標値を満たす前記候補配合を出力する、
処理を実行させるためのプログラム。