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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151984
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20241018BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60C11/00 G
B60C11/03 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065852
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】森 一真
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC34
3D131BC44
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB31V
3D131EB31X
3D131EB76X
3D131EC12V
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】 偏摩耗を抑制しつつ、ノイズ性能を向上することができるタイヤを提供する。
【解決手段】 トレッド部2を有するタイヤ1である。トレッド部2は、タイヤ周方向に延びる周方向溝3と、周方向溝3に隣接する陸部4とを含む。周方向溝3は、陸部4の側壁面を画定する第1溝壁17を含む。陸部4は、第1溝壁17に連なる接地面5を含む。陸部4には、縦孔19と、2以上の横孔とが設けられている。縦孔19は、接地面5上に閉じた輪郭の縦孔開口21を有し、かつ、縦孔開口21からタイヤ半径方向内側に延びている。2以上の横孔は、それぞれ、第1溝壁17面上に閉じた輪郭の横孔開口を有し、かつ、横孔開口からタイヤ軸方向に延びて縦孔19に連通する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、前記周方向溝に隣接する陸部とを含み、
前記周方向溝は、前記陸部の側壁面を画定する第1溝壁を含み、
前記陸部は、前記第1溝壁に連なる接地面を含み、
前記陸部には、縦孔と、2以上の横孔とが設けられており、
前記縦孔は、前記接地面上に閉じた輪郭の縦孔開口を有し、かつ、前記縦孔開口からタイヤ半径方向内側に延びており、
前記2以上の横孔は、それぞれ、前記第1溝壁面上に閉じた輪郭の横孔開口を有し、かつ、前記横孔開口からタイヤ軸方向に延びて前記縦孔に連通する、
タイヤ。
【請求項2】
前記2以上の横孔の前記横孔開口の合計面積は、前記縦孔開口の面積の20~60%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記横孔開口の最大径は、2.0~6.0mmである、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記縦孔を前記第1溝壁に投影した形状は矩形であり、
前記2以上の横孔の前記横孔開口の離隔距離は、前記矩形の対角線の長さの15~30%である、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記2以上の横孔は、それぞれ、前記矩形の対角線上に配置されている、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記2以上の横孔は、第1横孔と、前記第1横孔よりもタイヤ半径方向の内側に設けられた第2横孔を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記陸部は、タイヤ軸方向に延びる横溝によって区画されるブロックである、請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1溝壁と、前記縦孔の溝壁とのタイヤ軸方向の最短距離は、前記ブロックのタイヤ軸方向の幅の10~30%である、請求項7に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッド部には、排水のために、タイヤ周方向に延びる周方向溝が設けられている。一方、周方向溝は、乾燥路面を走行する際に気柱共鳴を生じさせることが知られている。この気柱共鳴を抑制するために、トレッド部に、気室と狭窄ネックとからなる共鳴器を有する空気入りタイヤが提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5013731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような共鳴器がトレッド部に設けられると、トレッド部のブロック剛性等が低下し、ひいては、ヒールアンドトゥ摩耗等の偏摩耗が生じやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、偏摩耗を抑制しつつ、ノイズ性能を向上することができるタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、前記周方向溝に隣接する陸部とを含み、前記周方向溝は、前記陸部の側壁面を画定する第1溝壁を含み、前記陸部は、前記第1溝壁に連なる接地面を含み、
前記陸部には、縦孔と、2以上の横孔とが設けられており、
前記縦孔は、前記接地面上に閉じた輪郭の縦孔開口を有し、かつ、前記縦孔開口からタイヤ半径方向内側に延びており、
前記2以上の横孔は、それぞれ、前記第1溝壁面上に閉じた輪郭の横孔開口を有し、かつ、前記横孔開口からタイヤ軸方向に延びて前記縦孔に連通する、
タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことにより、陸部の偏摩耗を抑制しつつ、ノイズ性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2】トレッド部の部分斜視図である。
図3図2を第1溝壁側から見た側面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5図1のV-V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、空気入りタイヤであって、好ましくは、静粛性が求められる車両用タイヤ、とりわけ乗用車用の空気入りタイヤである。図1に示されるように、トレッド部2は、一対のトレッド端Te、Teと、一対のトレッド端Te、Teの間をタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝3と、周方向溝3に区分された陸部4とを含んでいる。
【0011】
一対のトレッド端Te、Teは、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%の荷重を負荷し、かつ、キャンバー角0°でトレッド部2を平面に接地させたときの接地面5のタイヤ軸方向の最外端に相当する。
【0012】
前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムに装着され、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0013】
前記「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0014】
前記「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0015】
前記「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0016】
本実施形態では、周方向溝3は、一対のショルダー周方向溝6と、一対のショルダー周方向溝6の間に配された1又は複数本のクラウン周方向溝7とを含む。各周方向溝3の溝幅Wは、特に制限されないが、十分な排水性を確保して耐ハイドロプレーニング性能を高めるために、例えば、3.0mm以上、好ましくは4.0mm以上とされる。なお、溝幅Wは、トレッド部2の接地面5での溝幅である。また、周方向溝3の深さD(図5に示す)も、特に制限されないが、例えば、5.0mm以上、好ましくは6.0mm以上とされる。本実施形態の周方向溝3は、タイヤ周方向に沿って直線状に延びているが、このような態様に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態では、陸部4は、一対のショルダー陸部8と、それらの間に配された一対のクラウン陸部9とを含む。各陸部4には、それぞれ、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝10が設けられている。これにより、各陸部4は、複数のブロック11がタイヤ周方向に並ぶブロック列12として構成される。すなわち、本実施形態のショルダー陸部8及びクラウン陸部9は、ぞれぞれ、ショルダーブロック13がタイヤ周方向に並ぶショルダーブロック列14及びクラウンブロック15がタイヤ周方向に並ぶクラウンブロック列16として構成されている。他の態様では、ショルダー陸部8及び/又はクラウン陸部9は、タイヤ周方向に連続して延びるリブとして構成されても良い(図示省略)。
【0018】
図2には、図1の右側のショルダー周方向溝6と、それに隣接する一つのショルダーブロック13とを含むトレッド部2の部分斜視図を示す。図2に示されるように、本実施形態では、周方向溝3としてのショルダー周方向溝6は、第1溝壁17と、溝底18とを含んでいる。第1溝壁17は、陸部4としてのショルダーブロック13の側壁面を画定している。すなわち、第1溝壁17は、ショルダーブロック13のショルダー周方向溝6側の側壁面でもある。また、ショルダーブロック13の接地面5は、第1溝壁17に連なっている。
【0019】
図3は、図2を第1溝壁17側から見た側面図である。図4は、図3のIV-IV線断面図である。図4において、矢印は空気の流れの一態様を示す。図2ないし4に示されるように、ショルダーブロック13には、1つの縦孔19と、それに連なる2以上の横孔20とが設けられている。本実施形態では、1つの縦孔19に2つの横孔20が連通している。
【0020】
縦孔19は、ショルダーブロック13の接地面5上に閉じた輪郭の縦孔開口21を有する。本実施形態の縦孔開口21は、ショルダーブロック13の接地面5の周囲エッジのいずれとも連通することなく独立した閉曲線として形成されている。また、縦孔19は、縦孔開口21からタイヤ半径方向内側に延びる空間として形成されている。
【0021】
2以上の横孔20は、それぞれ、第1溝壁17面上に閉じた輪郭の横孔開口22を有する。本実施形態の横孔開口22は、それぞれ、互いに連通することなく独立した閉曲線として形成されている。また、各横孔20は、それぞれの横孔開口22からタイヤ軸方向に延び、縦孔19に連通する空間として形成されている。
【0022】
以上のように構成された本実施形態のタイヤ1の作用は次の通りである。まず、2以上の横孔20のそれぞれは、横孔開口22からタイヤ軸方向に延びて縦孔19に連通しているため、タイヤ走行中、周方向溝3(ショルダー周方向溝6)を流れる空気の一部は、横孔開口22から横孔20を通って縦孔19に流入する。また、縦孔19に流入した空気には、圧力損失が生じる。この圧力損失により、周方向溝3での音エネルギーが消失し、ひいては、走行時の気柱共鳴音が低減する。上記作用は、縦孔19が地面で完全に閉じられていないときに生じ得る。
【0023】
また、本実施形態のタイヤ1では、縦孔19及び2以上の横孔20は、それぞれ、陸部4(ショルダーブロック13)の接地面5及び第1溝壁17に閉じた輪郭の縦孔開口21及び横孔開口22を有する。さらに、1つの縦孔19には、横孔20を2以上に分散して接続することにより、それぞれの横孔開口22を小さくすることが可能である。これらの構成により、縦孔19及び横孔20が設けられた陸部4の剛性低下が抑制され、ひいては、陸部4の偏摩耗を抑制することができる。
【0024】
したがって、本実施形態のタイヤ1は、陸部4(ショルダーブロック13)の偏摩耗を抑制しつつ、ノイズ性能を向上させることができる。なお、上記実施形態では、陸部4としてショルダーブロック13が、また、周方向溝3としてショルダー周方向溝6がそれぞれ対象として説明されたが、これらに制限されるものではない。例えば、縦孔19及び横孔20が設けられる陸部4は、ショルダーブロック13に代えて、又は、ショルダーブロック13とともに、クラウンブロック15であっても良い。同様に、横孔20が設けられる周方向溝3は、クラウン周方向溝7であっても良い。さらに、陸部4は、リブとされても良い。
【0025】
以下、本発明のさらに好ましい態様について述べる。
【0026】
図1に示されるように、縦孔開口21は、タイヤ軸方向の幅L1がタイヤ周方向の長さL2よりも小さい縦長状が望ましい。とりわけ、縦孔開口21は、縦長の矩形状が望ましい。このような縦孔開口21は、陸部4としてのショルダーブロック13の剛性低下を抑制し、さらに耐偏摩耗性能を向上するのに役立つ。
【0027】
縦孔開口21のタイヤ軸方向の幅L1は、周方向溝3の溝幅Wよりも小さく設定されるのが望ましい。より望ましい態様として、縦孔開口21のタイヤ軸方向の幅L1は、例えば、1.5~2.5mmに設定される。このような縦孔開口21は、陸部4としてのショルダーブロック13の剛性低下を抑制し、さらに耐偏摩耗性能を向上するのに役立つ。
【0028】
図5は、図1のV-V線断面図である。図2及び図5に示されるように、縦孔19は、抜け勾配等を除いて、実質的に縦孔開口21の輪郭でタイヤ半径方向内側に延びるスリット状とされている。このような縦孔形状は、陸部4としてのショルダーブロック13の剛性低下を抑制し、さらに耐偏摩耗性能を向上するのに役立つ。図3に示されるように、本実施形態の縦孔19は、タイヤ軸方向と平行に第1溝壁17に投影した形状が、破線で示されるように矩形24とされる。
【0029】
図5に示されるように、第1溝壁17と、縦孔19の溝壁23とのタイヤ軸方向の最短距離L3は、ショルダーブロック13のタイヤ軸方向の幅L4の10~30%であるのが望ましい。本実施形態では、ショルダーブロック13のタイヤ軸方向の幅L4は、ショルダーブロック13(陸部4)の接地面5の最大のタイヤ軸方向の幅とされる。縦孔19の溝壁23とのタイヤ軸方向の最短距離L3が、ショルダーブロック13のタイヤ軸方向の幅L4の10%以上とされることにより、ショルダー周方向溝6とショルダーブロック13との間のゴムの厚さが十分に確保され、ひいては、ショルダーブロック13の偏摩耗を抑制することができる。一方、縦孔19の溝壁23とのタイヤ軸方向の最短距離L3が、ショルダーブロック13のタイヤ軸方向の幅L4の30%以下とされることにより、接地面5の接地圧が相対的に高くなるショルダーブロック13の中央に縦孔19が配されることがなく、操縦安定性の低下も抑制することができる。
【0030】
図2及び図3に示されるように、横孔開口22は、例えば、円形状に形成されている。また、横孔20は、横孔開口22から真っ直ぐに延びて縦孔19に連通している。したがって、本実施形態の横孔20は、それぞれ、円柱状の空間とされている。ただし、横孔20は、このような態様に限定されるものではなく、直方体や立方体の空間であっても良い。
【0031】
図3及び図4に示されるように、本実施形態の横孔20は、第1横孔26と、第1横孔26よりもタイヤ半径方向の内側に設けられた第2横孔27を含んでいる。タイヤ1の走行によりトレッド部2が摩耗すると、第1横孔26が消失する場合がある。このような場合でも、周方向溝3を流れる空気の一部は、第2横孔27を通って縦孔19に流入することができる。したがって、本実施形態によれば、トレッド部2が摩耗しても上述の効果を持続させることができる。また、周方向溝3の周方向及び深さ方向の異なる位置からそれぞれ空気を排出することから、排気性が向上し、より一層、気柱共鳴によるノイズを抑制することができる。
【0032】
第1横孔26の容積は、第2横孔27の容積に等しく設定されるのがより望ましい。このような実施態様では、それぞれの横孔20を通って縦孔19に流入するそれぞれの空気の量に差が出にくいため、空気が縦孔19内においてバランスよく広がりやすい。したがって、圧力損失が効果的に生じるため、周方向溝3での音エネルギーが消失し、ひいては、気柱共鳴音が低減する効果も大きくなる。
【0033】
2以上の横孔20(すなわち、一つの縦孔19に連通する全ての横孔20)の横孔開口22の合計面積は、縦孔開口21(図2に示す)の面積の20~60%であるのが望ましい。横孔開口22の合計面積が縦孔開口21の面積の20%以上とされることで、周方向溝3から十分な量の空気を縦孔19に流入させることができ、気柱共鳴音をより効果的に低減することができる。また、横孔開口22の合計面積が、縦孔開口21の面積の60%以下とされることで、圧力損失を維持しながら、陸部4の剛性を十分に確保して偏摩耗を抑制することができる。
【0034】
第1横孔26の横孔開口22の最大径D1及び第2横孔27の横孔開口22の最大径D2は、空気が横孔20を通過する際の摩擦による圧力損失を考慮して定められても良い。図4に示されるように、周方向溝3からの空気には、横孔20を通過する際、横孔20の内周面25との摩擦による圧力損失も発生する。第1横孔26の横孔開口22の最大径D1及び第2横孔27の横孔開口22の最大径D2は、この摩擦による圧力損失の発生に影響を与える。このような観点では、第1横孔26の横孔開口22の最大径D1及び第2横孔27の横孔開口22の最大径D2は、例えば、2.0~6.0mmとされる。これにより、横孔20の内周面25との摩擦による圧力損失を効果的に利用して、気柱共鳴音をさらに効果的に低減することができる。
【0035】
図3及び図4に示されるように、2以上の横孔20の横孔開口22の離隔距離L5は、縦孔19を第1溝壁17にタイヤ軸方向と平行に投影した前記矩形24の対角線28の長さL6の15~30%であるのが望ましい。離隔距離L5は、隣接する横孔開口22の図心間の距離として定義される。離隔距離L5が長さL6の15%以上とされることにより、2以上の横孔20から縦孔19に流入した空気が互いに干渉しにくくなり、圧力損失が効果的に生じる。一方、離隔距離L5が長さL6の30%以下とされることにより、第1横孔26の横孔開口22の最大径D1及び第2横孔27の横孔開口22の最大径D2が、上述の大きさの範囲に設定されうる。これにより、周方向溝3から十分な量の空気を縦孔19に流入させることができ、気柱共鳴音をより効果的に低減することができる。
【0036】
上述のように2以上の横孔20の横孔開口22の離隔距離L5をより長く設定するという観点では、2以上の横孔20は、それぞれ、矩形24の対角線28上に配置されているのが望ましい。より好ましい例として、第1横孔26及び第2横孔27の中心が、対角線28上に配置されている。これにより、2つの横孔20を通って縦孔19に流入する空気が、それぞれ、縦孔19内においてバランスよく広がりやすい。したがって、圧力損失が大きくなり、周方向溝3での音エネルギーが消失し、ひいては、気柱共鳴音が低減する効果も大きくなる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0038】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0039】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、前記周方向溝に隣接する陸部とを含み、
前記周方向溝は、前記陸部の側壁面を画定する第1溝壁を含み、
前記陸部は、前記第1溝壁に連なる接地面を含み、
前記陸部には、縦孔と、2以上の横孔とが設けられており、
前記縦孔は、前記接地面上に閉じた輪郭の縦孔開口を有し、かつ、前記縦孔開口からタイヤ半径方向内側に延びており、
前記2以上の横孔は、それぞれ、前記第1溝壁面上に閉じた輪郭の横孔開口を有し、かつ、前記横孔開口からタイヤ軸方向に延びて前記縦孔に連通する、
タイヤ。
[本発明2]
前記2以上の横孔の前記横孔開口の合計面積は、前記縦孔開口の面積の20~60%である、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記横孔開口の最大径は、2.0~6.0mmである、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記縦孔を前記第1溝壁に投影した形状は矩形であり、
前記2以上の横孔の前記横孔開口の離隔距離は、前記矩形の対角線の長さの15~30%である、本発明1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明5]
前記2以上の横孔は、それぞれ、前記矩形の対角線上に配置されている、本発明1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明6]
前記2以上の横孔は、第1横孔と、前記第1横孔よりもタイヤ半径方向の内側に設けられた第2横孔を含む、本発明1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明7]
前記陸部は、タイヤ軸方向に延びる横溝によって区画されるブロックである、本発明1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明8]
前記第1溝壁と、前記縦孔の溝壁とのタイヤ軸方向の最短距離は、前記ブロックのタイヤ軸方向の幅の10~30%である、本発明7に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0040】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 周方向溝
4 陸部
5 接地面
17 第1溝壁
19 縦孔
21 縦孔開口
図1
図2
図3
図4
図5