(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152001
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】キャスト編成装置、キャスト編成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B22D 46/00 20060101AFI20241018BHJP
B22D 11/16 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B22D46/00
B22D11/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065878
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山本 政
(72)【発明者】
【氏名】里見 佑太
(72)【発明者】
【氏名】稲田 利亀
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004MC30
(57)【要約】
【課題】複数の鋼種からなる中間製品のキャスト編成を、効率よく行う。
【解決手段】キャスト編成装置(1)は、複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する中間製品の巾に関する情報を入力するデータ入力部(110)と、情報に基づいて、中間キャスト編成案を生成する粗キャスト編成部(120)と、を備える。粗キャスト編成部(120)は、鋼種毎に巾順に配列された中間製品について、鋼種毎に、複数のストランドの各々に分配する中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成する生成部、及び生成された複数の組み合わせの各々について、中間製品の巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した評価値を参照して中間製品の製造順を生成する評価部、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ、ブルームまたはビレットのいずれかの中間製品の製造順を決定するキャスト編成装置であって、
複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する前記中間製品の巾に関する情報を入力するデータ入力部と、
前記情報に基づいて、中間キャスト編成案を生成する粗キャスト編成部と、を備え、
前記粗キャスト編成部は、
鋼種毎に巾順に配列された前記中間製品について、鋼種毎に、前記複数のストランドの各々に分配する前記中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の前記分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成する生成部、及び
生成された前記複数の組み合わせの各々について、前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した前記評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成する評価部、を含む、
キャスト編成装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記組み合わせの繋ぎ部分の前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、前記繋ぎ部分の評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成する、請求項1に記載のキャスト編成装置。
【請求項3】
前記評価部は、さらに他の制約条件を考慮した評価値を導出し、当該評価値を参照して、前記中間製品の製造順を生成する、請求項1又は2に記載のキャスト編成装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記巾順に配列された前記中間製品の前記巾が変わる箇所で分配する分配パターンを生成する、請求項1又は2に記載のキャスト編成装置。
【請求項5】
前記生成部は、分配された前記中間製品を巾の昇順と降順とを考慮した組み合わせを生成する、請求項1又は2に記載のキャスト編成装置。
【請求項6】
スラブ、ブルームまたはビレットのいずれかの中間製品の製造順を決定するキャスト編成方法であって、
複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する前記中間製品の巾に関する情報を入力するステップと、
鋼種毎に巾順に配列された前記中間製品について、鋼種毎に、前記複数のストランドの各々に分配する前記中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の前記分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成するステップと、
生成された前記複数の組み合わせの各々について、前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した前記評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成するステップと、
を含むキャスト編成方法。
【請求項7】
スラブ、ブルームまたはビレットのいずれかの中間製品の製造順を決定するキャスト編成プログラムであって、
コンピュータに、
複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する前記中間製品の巾に関する情報を入力する処理と、
鋼種毎に巾順に配列された前記中間製品について、鋼種毎に、前記複数のストランドの各々に分配する前記中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の前記分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成する処理と、
生成された前記複数の組み合わせの各々について、前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した前記評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成する処理と、
を実行させるキャスト編成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスト編成装置、キャスト編成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の製造工程では、高炉で製造された銑鉄を転炉に輸送し、転炉で鍋(チャージ)単位に成分調整がなされた後、タンディッシュに流し込まれた溶鋼を連続的に鋳造および切断し、スラブ、ブルーム、またはビレットなどと称される中間製品を製造する。この時、上記の連続的に鋳造、切断を行う工程を連続鋳造工程と称し、連続鋳造工程において連続的な溶鋼の鋳造を中断することなく、中間製品を連続的に製造する単位(製造ロット)をキャストと称している。また、各製造ロット内における中間製品の鋳造順序(製造スケジュール)を、中間製品のサイズ、品質および納期などに基づいて決定することをキャスト編成と称している。連続鋳造工程によって製造された中間製品は、次工程である熱間圧延工程に運ばれ、加熱炉にて圧延可能な温度まで加熱された後、薄板、厚板、または形鋼などに圧延される。
【0003】
例えば、特許文献1には、キャスト編成対象のオーダーに対応して製造されるスラブとなる予定の仮スラブの情報と仮スラブと同一のチャージで吹錬可能な鋼種に関する情報とを読み込み、仮スラブの鋼種毎に、仮スラブと同一のチャージで吹錬可能な鋼種の量を加味して出鋼要求日が鋳造予定日から要求日範囲内にある仮スラブの量を集計した鋼種別優先度評価表を作成し、鋼種別優先度評価表に基づいて、製造の優先度が最も高い鋼種を選択し、選択された鋼種について、制約条件を充足するキャストを作成するキャスト編成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、あくまで1つの鋼種のキャスト編成を行うものであり、複数の鋼種を一括してキャスト編成を行うものではない。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、複数の鋼種からなる中間製品のキャスト編成を、効率よく行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るキャスト編成装置は、スラブ、ブルームまたはビレットのいずれかの中間製品の製造順を決定するキャスト編成装置であって、複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する前記中間製品の巾に関する情報を入力するデータ入力部と、前記情報に基づいて、中間キャスト編成案を生成する粗キャスト編成部と、を備え、前記粗キャスト編成部は、鋼種毎に巾順に配列された前記中間製品について、鋼種毎に、前記複数のストランドの各々に分配する前記中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の前記分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成する生成部、及び生成された前記複数の組み合わせの各々について、前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した前記評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成する評価部、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係るキャスト編成方法は、スラブ、ブルームまたはビレットのいずれかの中間製品の製造順を決定するキャスト編成方法であって、複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する前記中間製品の巾に関する情報を入力するステップと、鋼種毎に巾順に配列された前記中間製品について、鋼種毎に、前記複数のストランドの各々に分配する前記中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の前記分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成するステップと生成された前記複数の組み合わせの各々について、前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した前記評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成するステップと、を含む。
【0009】
本発明の各態様に係るキャスト編成装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記キャスト編成装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記キャスト編成装置をコンピュータにて実現させるキャスト編成装置のキャスト編成プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、複数の鋼種からなる中間製品のキャスト編成を、効率よく行う技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るキャスト編成装置を含む製造スケジュール決定装置の概略的な構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るキャスト編成装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】巾順に配列された鋼種に含まれる11個のスラブを2つのストランドに分配する方法を説明する模式図である。
【
図4】巾順に配列された鋼種に含まれる11個のスラブを2つのストランドに分配する他の方法を説明する模式図である。
【
図5】鋼種1から鋼種3について、鋼種ごとに分配したスラブの組み合わせの生成方法を示す模式図である。
【
図6】選択された鋼種の組み合わせを示す模式図である。
【
図7】
図6に示す全鋼種の組み合わせを繋げたものである。
【
図8】本実施形態に係るキャスト編成方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態は、鉄鋼の製造工程、特にスラブ、ブルーム、又はビレットを含む中間製品の製造工程において用いられるキャスト編成装置及びキャスト編成方法に関する。
【0013】
本実施形態において、キャストとは、中間製品を連続的に製造(鋳造)する単位であり、この単位を1製造ロットに対応させている。つまり、1キャストからは、1回の連続操業で製造される複数の中間製品からなる中間製品群が製造される。通常、各中間製品は、顧客からの要求に沿って、それぞれ異なる成分組成と大きさを有している。それを、成分組成が所定の許容範囲ごとにまとめたものを「材質」又は「鋼種」とも称する。つまり、任意の鋼種に属する複数の中間製品は、その少なくとも1つにおいて、他の成分組成と異なる場合がある。1つの鋼種のグループに含まれる中間製品は、その鋼種の許容範囲内に成分調整がなされた1つ又は複数のチャージから製造される。
【0014】
本実施形態において、キャスト編成とは、各キャスト(製造ロット)に含まれる、複数の鋼種からなり様々な大きさを有する中間製品群の製造順を、中間製品のサイズ、鋼種および納期などに基づいて決定することを指す。
【0015】
本実施形態において、スラブとは、鉄鋼を鋳造する際の中間製品として製造されるものであり、溶鋼が、その断面の形状が矩形の長尺体に鋳造されて切断されたものをいう。スラブは、次の工程で圧延され、コイル状に巻き取られた後、さらに別の工程で処理されて各種製品となる。
【0016】
スラブの大きさとは、本実施形態ではスラブを平面視した場合の短片と長辺の長さをいうが、特に重要となるのは短辺の長さである。短辺の長さとは、鋳造されたスラブがストランドを搬送される方向に直交する方向の長さであり、以下、この長さを巾と称する。なお、長辺はスラブの長さに相当する。
【0017】
なお、ブルームとは、スラブよりも小型で、断面の巾と厚さの比率が1に近い(正方形に近い)ものを指す。また、ビレットとは、断面が矩形であり、大きさがブルームよりもさらに小さいものを指す。ブルーム及びビレットの巾は、スラブと同様に定義される。
【0018】
また、ストランドとは、鋳造ラインであり、タンディッシュから溶鋼が流し込まれる鋳型と、鋳型から引き出された鋳片を搬送しながら成型する一連の成型ロールとを含む。
【0019】
多数の顧客から要求される中間製品の鋼種と大きさの組み合わせは非常に数が多い。さらに、鋳造ラインの運転上の制約もあるため、多種の中間製品の効率的な製品配列を決定することは容易ではない。すべての組み合わせを評価することは時間的に困難であるため、効率の良さそうな製造順の組み合わせを選んで評価することが求められる。本実施形態に係るキャスト編成装置及びキャスト編成方法は、スラブ、ブルームまたはビレットのいずれかの中間製品の製造順を、できるだけ製造効率が良くなるように決定するための装置と方法である。
【0020】
(製造スケジュール決定装置)
以下に、本実施形態に係るキャスト編成装置1について説明するが、まず、キャスト編成装置1の位置付けについて説明する。以下では、中間製品がスラブの場合を例にとって説明する。
図1は、本実施形態に係るキャスト編成装置1を含む製造スケジュール決定装置100の概略的な構成を示す構成図である。製造スケジュール決定装置100の各部は、例えば、専用のコンピュータシステムにおいて実装されてもよいし、パーソナルコンピュータなどの汎用のコンピュータシステムにおいてアプリケーションソフトウェアとして実装されてもよい。あるいは、製造スケジュール決定装置100の各構成要素は、LAN(Local Area Network)やインターネットなどのネットワークを介して接続された複数のコンピュータに分散して実装されてもよい。また、製造スケジュール決定装置100の各構成要素は、一部又は全部がクラウド上に配置され、互いに情報通信可能に接続されていてもよい。
【0021】
製造スケジュール決定装置100は、キャスト編成装置1および制約違反解消部130を含む。キャスト編成装置1は、データ入力部110および粗キャスト編成部120を含む。以上のように、キャスト編成装置1は、製造スケジュール決定装置100の一部を構成する装置である。なお、製造スケジュール決定装置100は、一次製品(中間製品)を製造する第1の工程と、一次製品から二次製品を製造する第2の工程とを含む、鉄鋼製品を製造する工程において、第1の工程での一次製品の製造スケジュールを決定する装置である。
図1に示す実施形態の製造スケジュール決定装置100の各部の機能は、プログラムに従って動作する1又は複数のプロセッサ、および当該プロセッサにデータを入出力するためのインターフェースによって実現される。
【0022】
製造スケジュール決定装置100が処理に用いるスラブ情報ファイル101、同鋼種キャスト情報ファイル102、およびコイル情報ファイル103は、オペレータによる操作や、定時での自動取り込み指示などによって読み込まれる。製造スケジュール決定装置100は、これらのファイルに記録された情報に基づいて実行した処理の結果を、キャスト編成結果ファイル104に記録する。また、製造スケジュール決定装置100は、粗キャスト編成部120および制約違反解消部130で実行する処理において編成条件ファイル105を読み込む。
【0023】
これらのファイルは、例えばコンピュータに内蔵されたメモリ、またはコンピュータに接続可能なリムーバブル記録媒体に記録される。また、上記のファイルのうちのいずれか、または全部が、製造スケジュール決定装置100とは異なる情報処理装置において記憶されていてもよい。その場合、これらのファイルの内容は、LANやインターネットなどの電気通信回線を用いた通信を介して製造スケジュール決定装置100に読み込まれたり、製造スケジュール決定装置100によって書き込まれたりしてもよい。
【0024】
スラブ情報ファイル101は、製造しようとする各スラブについての少なくともスラブ巾を含む情報を格納するためのファイルである。具体的には、スラブ情報ファイル101には、1つのスラブ毎に、一例として、スラブID(スラブを特定する情報)、スラブ巾、スラブ長さ、スラブ重量、材質等の製造仕様と、工程の通過希望日時、通過期限日時等の工程情報とが含まれている。スラブ巾(巾に関する情報)は、顧客から指定された巾と、スラブを製造する段階で許容される範囲の巾と、が含まれている。後者の巾の範囲をスラブ製造時の目標としてもよい。スラブの巾は、スラブを製造した後の圧延工程等で、顧客が指定した巾の範囲内に調整することが可能だからである。ただし、巾に関する情報は、顧客から指定された巾や、スラブを製造する段階で許容される範囲の巾など、スラブの巾を示すような情報の少なくとも一つを含んでいれば良い。
【0025】
同鋼種キャスト情報ファイル102は、キャストに含まれる同鋼種ごとのチャージに関する情報を格納するためのファイルである。具体的には、同鋼種キャスト情報ファイル102には、1つの同鋼種キャスト毎に、一例として、同鋼種キャストID、チャージ数、重量下限、重量上限、材質、製造順等が含まれている。これらのうち、予め定められた製造順に関する情報は必須である。コイル情報ファイル103は、圧延されるコイルの予定情報を格納するためのファイルである。具体的には、コイル情報ファイル103には、1つのコイル毎に、一例として、スラブID、コイル巾、コイル長さ、コイル厚み、加熱炉温度等が含まれている。
【0026】
(制約条件)
編成条件ファイル105には、一例として、連続鋳造工程におけるスラブの製造スケジュールに関する制約条件、および熱間圧延工程におけるコイルの製造スケジュールに関する制約条件等が含まれている。スラブの製造スケジュールに関する制約条件には、巾移行条件と部位配置条件とが含まれる。
【0027】
本実施形態において、巾移行とは、製造するスラブの巾を変化させることである。また一例として、連続鋳造工程における巾移行に関する制約条件は2つあり、第1の巾移行条件は、製造順が隣接するスラブの巾の変化量が所定の巾(閾値)よりも小さいことである。ストランドの設備的な制約から、連続鋳造工程において、スラブの巾を所定の巾より大きく変化させることは難しいためである。
【0028】
また、第2の巾移行条件は、巾の移行方向の変化回数が少ないことである。巾の移行方向には、巾を大きくする方向と巾を小さくする方向とが含まれる。ストランドの設備的な制約などから、巾の移行方向はできるだけ1方向であることが好ましいためである。つまり、巾を大きくする操作をした場合は、次の操作も巾を大きくすることが好ましい。同様に、巾を小さくする操作をした場合は、次の操作も巾を小さくすることが好ましい。その理由は、例えば巾の移行方向を変える操作には手間がかかるためである。
【0029】
本実施形態において、部位配置条件とは、一例として、各ストランドにおける所定の製造順序位置では、スラブの組成の許容範囲が、相対的に又は所定の範囲よりも大きいスラブを配置する必要があるということである。例えば、キャストの先頭と末尾と、チャージ(取鍋)又は鋼種が変わる前後とでは、組成の許容範囲が広いスラブを配置することが求められる。このような位置では、異なる組成の溶鋼が混じりやすいため、スラブの組成が設定した値からぶれやすいためである。組成の許容範囲が十分に広ければ、組成の設定値からのぶれが生じたとしても、許容範囲に入り得る。
【0030】
(キャスト編成装置)
以上を前提として、本実施形態に係るキャスト編成装置1について、図面を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係るキャスト編成装置1の構成を示すブロック図である。図示するように、キャスト編成装置1は、データ入力部110および粗キャスト編成部120を備えている。粗キャスト編成部120は、生成部121と評価部122を備えている。粗キャスト編成部120は、キャストの中間キャスト編成案(1次解)を生成する装置である。前述のように、粗キャスト編成部120が生成した中間キャスト編成案は、制約違反解消部130によって制約条件違反を解消したキャストに修正される。つまり、粗キャスト編成部120は、データ入力部110から入力された情報に基づいて、中間キャスト編成案を生成する。この段階での中間キャスト編成案は、必ずしもすべての制約条件を満たさなくてもよい。
【0031】
データ入力部110は、複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する中間製品(スラブ)の複数の鋼種間の並び順に関する情報を粗キャスト編成部120に入力する。複数の鋼種間の並び順に関する情報は、複数の中間製品の製造順に対応する中間製品の鋼種の並び順に関する情報と言い換えることができる。前述のように、スラブの鋼種が大きく変化しないような順に鋳造することが好ましいため、鋼種間の並び順が予め決められている。鋼種間の並び順に関する情報は、データ入力部110が同鋼種キャスト情報ファイル102から読み出し、粗キャスト編成部120に入力する。なお、データ入力部110が入力するデータは、キャスト編成装置1が備える図示しない図示しないメモリに記録されてもよい。
【0032】
また、前述のように、スラブの巾も大きく変化しないような順に製造することが好ましい。そのため、データ入力部110は、複数のストランドを用いた連続鋳造で製造するスラブの巾に関する情報を粗キャスト編成部120に入力する。スラブの巾に関する情報とは、スラブの製造仕様に関する情報であり、具体的には、スラブ巾、スラブ長さ、スラブ重量、材質等の製造仕様などである。スラブの巾に関する情報は、データ入力部110がスラブ情報ファイル101から読み出し、粗キャスト編成部120に入力する。なお、データ入力部110が、鋼種内のスラブの暫定的な製造順を粗キャスト編成部120に入力してもよい。
【0033】
(生成部)
粗キャスト編成部120の生成部121は、鋼種毎に巾順に配列されたスラブ(中間製品)について、鋼種毎に、複数のストランドの各々に分配するスラブを特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成する。
【0034】
1回の連続鋳造で製造する複数個のスラブのうち、1つの鋼種に含まれるスラブから構成される集合を鋼種別スラブ集合と称する。分配パターンとは、鋼種別スラブ集合に含まれる複数個のスラブのそれぞれについて、複数のストランドに分配することを前提としたパターンである。即ち、生成部121は、複数のストランドの各々に分配するスラブを特定する情報を生成する。この場合の分配パターンは、鋼種別スラブ集合に含まれる複数個のスラブをストランドの数で等分することにより生成したものである必要はない。生成部121は、巾移行条件を考慮せずに分配パターンを生成してもよい。
【0035】
分配パターンによって特定されるスラブの集合であって、キャスト内のある特定の鋼種について、取りうる分配パターン候補の集合を選択分配パターンと称する。組み合わせとは、選択分配パターンを、1つのストランドで製造する場合に、どのような順序で組み合わせるかを示す組み合わせである。言い換えれば、組み合わせは、選択分配パターンを組み合わせて製造順を示すパターンである。生成部121は、巾移行条件を考慮せずにすべての組み合わせを生成してもよい。あるいは、生成部121は、所定の条件を考慮して組み合わせを生成してもよい。分配パターンの生成方法例と組み合わせの生成方法例については後述する。
【0036】
多くの場合、中間製品を製造する連続鋳造工程では、1つのタンディッシュから2つのストランドが分岐して設けられている。そのため、以下では、ストランドが2つの場合を例にとって説明する。しかし、ストランドの数は2に限定されず、複数であればよい。例えば、1つのタンディッシュから3以上のストランドが設けられていてもよく、また複数のタンディッシュを設けて3以上のストランドを構成してもよい。3以上のストランドを用いる例については後述する。
【0037】
(評価部)
次に、評価部122について説明する。粗キャスト編成部120の評価部122は、生成された複数の組み合わせの各々について、スラブの巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した評価値を参照してスラブの製造順を生成する。換言すれば、評価部122は、導出した評価値に基づいて、上記の複数の組み合わせの中から、少なくとも1つの組み合わせを選択することにより、スラブの製造順を生成する。具体的には、評価部122は、編成条件ファイル105から取得したスラブの製造スケジュールに関する制約条件のうち、スラブの巾移行条件を参照して、製造順の各々について、巾移行条件に抵触する箇所が少ないほど高い評価値を導出する。巾移行条件に抵触する箇所が少ないほど、編成したキャストの製造可否及び操業しやすさが高まるためである。
【0038】
評価部122は、組み合わせの繋ぎ部分(つまり、鋼種間)のスラブの巾の変化量に関する評価値を導出し、当該評価値の例えば合計値などを参照してスラブの製造順を生成してもよい。1つの鋼種のスラブは予め巾順に配列されているので、1つの鋼種内では巾移行条件は高い確率で満たされている。そのため、スラブの鋼種間の巾の変化量に関する評価値だけで判断しても、すべてのスラブ間の巾の変化量に関する評価値に基づく結論と大きな誤差は生じないためである。
【0039】
次に、評価部122は、導出した評価値を参照してスラブの製造順を生成する。評価部122は、スラブの鋼種間の巾移行条件を満たすか否かを判断すればよいため、1つの組み合わせの評価値を短時間で導出することができる。そのため、多くの組み合わせがあってもそれらの評価値を導出する時間は、巾移行条件に加えて他の制約条件を考慮して評価値を導出する場合に比べて短くすることができる。
【0040】
評価値は、一例として、巾移行条件に抵触する箇所にコストを与えることにより導出される。例えば、評価部122は、製造するスラブをノードとし、製造順にノードとノードを繋ぐルートをエッジとして、製造順の各々について、エッジのコストを評価する。具体的には、最初に製造するスラブから2番目に製造するスラブの巾の大きさの変化量から、巾移行条件に抵触するか否かのコスト評価を行う。最初のスラブと2番目のスラブの巾の差が、巾移行条件に抵触する場合は、そのエッジに大きなコストを与え、巾移行条件に抵触しない場合は、そのエッジに小さいコストを与える。以下、n番目のスラブと(n+1)番目のスラブとの巾の差についても同様に評価する(ただし、nは2以上の整数)。
【0041】
なお、巾の差はプラスとマイナスがあり、プラスの場合は巾が増加していることを示し、マイナスの場合は巾が減少していることを示す。巾の変化方向が一定であるかどうかもコスト評価の対象となる。つまり、プラスからマイナスに変わるエッジ、又はマイナスからプラスに変わるエッジは、コストは大きく評価される。なお、コストは、巾移行条件に抵触する箇所の数だけでなく、抵触する程度(重み)を考慮して評価されてもよいし、接触する程度(重み)を考慮する場合複数範囲を定め重み付けを変更してもよい。
【0042】
以上のように、評価部122は、生成部121が生成した組み合わせ(製造順)の各々に対して、巾の変化量に関する評価値を導出する。巾の変化量に関する評価値は比較的容易に導出できるため、評価箇所あたりの処理時間も比較的少ない。そのため、評価箇所が増加しても処理時間としては他の多くの制約条件を加味して評価する場合に比べて低減することができる。さらに、評価箇所を例えば鋼種間に限定する等により、さらに処理時間を削減することができる。
【0043】
評価部122は、さらに他の制約条件を考慮した評価値を導出し、当該評価値を参照して、スラブの製造順を生成してもよい。他の制約条件とは、例えば、部位配置条件、余剰スラブ使用条件等である。「余剰スラブ」とは、顧客からの注文とは紐付けされていないスラブを指す。部位配置条件は前述した通りである。余剰スラブ使用条件について説明する。後述するように、ストランドAとストランドBに分配されるスラブ数が異なる場合、余剰スラブを配置してスラブ数を調整する。その場合、余剰スラブとして本来のキャストに含まれない別の製品を充当できる場合は問題ないが、そのような製品がない場合は、余剰スラブの使用は歩留まり低下の一因となる。そのため、余剰スラブの量の大小で評価値を増減してもよい。
【0044】
(分配パターンと組み合わせの生成方法)
次に、生成部121が分配パターンと組み合わせを生成する方法の一例について説明する。
図3は、巾順に配列された鋼種1に含まれる11個のスラブを2つのストランドに分配する方法を説明する模式図である。データ入力部110は、スラブの巾に関する情報をスラブ情報ファイル101から読み出して入力する。また、データ入力部110は、同じ鋼種のスラブ情報を同鋼種キャスト情報ファイル102から読み出して入力する。入力したスラブの巾に関する情報と同じ鋼種のスラブ情報は、キャスト編成装置1が備える図示しないメモリ、又はキャスト編成結果ファイル104等の記憶部に一時的に記録される。
【0045】
図3の左側に示すように、鋼種1は巾の降順に図示されている。鋼種1を、2つのストランドA、Bに分配する場合を考える。一例として、生成部121は、鋼種1を次の分配パターンで分配してもよい。まず、スラブを巾の大きい順に1つ選択してストランドAに割り当て、残りをストランドBに割り当てる。これを分配パターンD1とする。次に、生成部121は、スラブを巾の大きい順に2つ選択してストランドAに割り当て、残りをストランドBに割り当てる。これを分配パターンD2とする。同様に、生成部121は、スラブを巾の大きい順に1つ増やしてストランドAに割り当て、残りをストランドBに割り当てる。こうして分配パターンD1からD10まで生成される。
【0046】
図3に示す模式図は、1つの矩形は1つのスラブを模式的に表したものである。矩形の横幅は、スラブの巾の大きさを相対的に表している。現実には、スラブ情報ファイル101等に一時的に記録された各スラブのデータに、スラブ明細データを巾順ソートした結果を示すデータが含まれていることを示している。あるいは、キャスト編成結果ファイル104等に、分配したスラブが巾のデータとともに含まれており、そのスラブを製造するストランドとして、ストランドA又はストランドBが紐付けされた状態で記録されていることを示している。以下、スラブ情報ファイル101、キャスト編成結果ファイル104等にデータが記録されている状態を、図示のような態様で説明する。
【0047】
生成部121は、分配されたスラブを巾の昇順と降順とを考慮した組み合わせを生成してもよい。分配されたスラブを巾の昇順と降順とを考慮して組み合わせることで、巾移行条件を満たす最適な組み合わせを生成することが容易となる。ストランドAとストランドBを巾の昇順と降順とで区別すると、4とおりのパターンができる。
図3では、ストランドA、ストランドBとも降順の巾順パターンXと、ストランドAが降順、ストランドBが昇順の巾順パターンYと示している。これ以外のストランドA、ストランドBとも昇順の巾順パターンと、ストランドAが昇順、ストランドBが降順の巾順パターンは図示していないが、同じ方法で生成される。分配パターンはこのような巾順パターンも含んでもよい。
【0048】
図3に示す方法で分配すると、巾順パターンを含めた分配パターンは10×4=40とおり存在する。これを複数の鋼種の全てで同じように分配パターンを生成すると、その組合せ数が大きくなる。そのため、より少ない分配パターンを生成してもよい。そのような分配パターンの生成方法を、次に
図4を用いて説明する。
【0049】
生成部121は、巾順に配列されたスラブの巾が変わる箇所で区切って分配する分配パターンを生成してもよい。
図4は、巾順に配列された鋼種1に含まれる11個のスラブをこの方法で2つに分配する例を説明する模式図である。
図4に示す分配方法は、巾が実質的に同じスラブをまとめて分配する方法である。巾が実質的に同じスラブとは、スラブ巾が同じものとして扱うことができるものとして定めたスラブを指す。
図4の左側に示すように、鋼種1に含まれるスラブは、同じスラブ巾を有するグループP,Q,R,S,Tの5グループに分けることができる。各グループを
図3で説明した方法で分配すると、PD1,PD2,PD3,PD4で示す4つの分配パターンがあり、それぞれに4つの巾順パターンX,Y,V,Wがあるので、巾順パターンを含めた分配パターンは合計4×4=16とおり存在する。このように分配することで、巾順パターンを含めた分配パターン数を絞り込むことができる。そのため、巾順パターンを含めた分配パターンの中から、最も評価値が高いパターンを選択する時間も少なくすることができる。本実施形態では、できるだけ巾移行条件を満たす製造順を探索することを目標としているため、巾が同じスラブをまとめることができる。
【0050】
次に、分配した複数のパターンを組み合わせてストランドAとストランドBに分配する方法について説明する。
図5は、鋼種1から鋼種3について、鋼種ごとに分配したスラブの組み合わせの生成方法を示す模式図である。
図5の左側に、鋼種1から鋼種3の全体のスラブをそれぞれ巾の降順で表し、その右側に、生成部121が生成した各鋼種の分配パターンを例示している。例えば、鋼種1にはX個の分配パターン、鋼種2にはY個の分配パターン、鋼種3にはZ個の分配パターンがあるとする。なお、分配パターンの方法は各鋼種で共通であってもよく、異なってもよい。
【0051】
図示するように、鋼種1について、一例として、分配パターンD11からD1xまでX個の分配パターンがある。分配パターンD11は、ストランドAに最初の3個のスラブを降順で配し、残りの9個のスラブをストランドBに降順で配した分配パターンである。分配パターンD12は、ストランドAに最初の4個のスラブを降順で配し、残りの8個のスラブをストランドBに降順で配した分配パターンである。分配パターンD1kまではストランドA、ストランドBとも降順に配したパターンであるが、分配パターンD1mからは、ストランドAは降順、ストランドBは昇順に配した分配パターンを示している。このように、分配パターンは、ストランドA、ストランドBの降順と昇順を区別して生成されている。分配パターンは、
図3を用いて説明した方法で生成した分配パターンでもよく、
図4を用いて説明した方法で生成した分配パターンでもよい。あるいは、分配パターンはそれ以外の方法で生成した分配パターンでもよい。鋼種2,3についても同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0052】
次に、生成部121は、
図5に示すように、組み合わせを生成する。まず、鋼種1について複数の分配パターンD11からD1Xが生成され、鋼種2について複数の分配パターンD21からD2Yが生成され、鋼種3について複数の分配パターンD31からD3Zが生成されているとする。この状態で、
図5のスタートから終了まで矢印で示すように、鋼種1から鋼種3までの分配パターンを組み合わせて、複数の組み合わせを生成する。製造順序は鋼種1、鋼種2、鋼種3の順であるので、組み合わせは全部でX×Y×Zパターンである。これらのすべての組み合わせについて、後述する評価部122がスラブの巾の変化量に関する評価値を導出する。さらに、評価部122は、導出した評価値を参照して、全体のスラブの製造順を生成する。具体的には、評価部122は、組み合わせのそれぞれについて導出した評価値のうち、最も大きい評価値を有する組み合わせを選択する。選択された組み合わせが処理順となる。
【0053】
図5では、太線で示した、鋼種1の分配パターンD11と、鋼種2の分配パターンD2Pと、鋼種3の分配パターンD3Qとの組み合わせが、最も大きい評価値を有する組み合わせとして選択された例を示している。この選択された組み合わせをまとめたものを
図6に示す。
図6に示すように、ストランドAでは、点線で示すように、鋼種1の最後のスラブと鋼種2の最初のスラブの巾がほぼ同程度である。そして、鋼種2の最後のスラブと鋼種3の最初のスラブの巾がほぼ同程度である。また、ストランドBでも、点線で示すように、鋼種1の最後のスラブと鋼種2の最初のスラブの巾がほぼ同程度であり、鋼種2の最後のスラブと鋼種3の最初のスラブの巾がほぼ同程度である。このように、鋼種の繋ぎ目のスラブの巾の変化量が小さい組み合わせが選択されていることがわかる。鋼種の繋ぎ目のスラブの巾の変化量とは、第1の分配パターンと当該第1の分配パターンの次に位置する第2の分配パターンとを少なくとも含む複数の分配パターンを順番に組み合わせたパターンにおける、前記第1の分配パターンの最後に示されるスラブの巾と、前記第2の分配パターンの最初に示されるスラブの巾との差分を意味する。
【0054】
ただし、鋼種ごとの分配パターンは、スラブの個数は考慮していないため、ストランドAとストランドBとでスラブの個数が合わない場合がある。
図7は、
図6に示す全鋼種の組み合わせを繋げたものである。
図7に示すように、鋼種1では、ストランドBのスラブ個数が多く、鋼種2,3ではストランドAのスラブ個数が多い。実際の製造段階では、1つのタンディッシュからストランドAとストランドBに並行して溶鋼が供給され同程度のスラブが製造されるため、ストランドAとストランドBとでスラブの重量が近づくようにスラブ個数を調整する必要がある。そこで、生成部121は、ストランドAとストランドBとでスラブの個数を調整するために、余剰スラブを配置してもよい。
【0055】
図7に示すように、生成部121は、鋼種1でスラブが不足するストランドAに、余剰スラブ1Aを配置する。また、生成部121は、鋼種2でスラブが不足するストランドBに、余剰スラブ2Bを配置する。同様に、生成部121は、鋼種3でスラブが不足するストランドBに、余剰スラブ3Bを配置する。余剰スラブは、前後のスラブの巾に合わせることが好ましい。余剰スラブは、他の製造キャストに含まれるスラブであって、余剰スラブとして適した組成と巾を有するスラブを割り当ててもよい。このように、他の製造キャストのスラブを割り当てることで、歩留まりの低下を小さくすることができる。そのため、組み合わせ生成段階で余剰スラブが発生しても大きな問題は生じない。なお、余剰スラブの配置は、ユーザが行ってもよい。
【0056】
図5から
図7で説明した例では、鋼種数が3であったが、鋼種数がより大きい場合であっても手順は同じである。
【0057】
以上説明したキャスト編成装置によれば、複数の鋼種からなるスラブ等の中間製品のキャスト編成を、効率よく行うことができる。つまり、中間製品のキャスト編成を、比較的短時間で行うことができる。
【0058】
従来では、組み合わせごとに繰り返し計算して最適な製造順(配列)を導出する処理を行っていた。それに対して、本実施形態では、組み合わせを作ってその組み合わせが部位配置制約を満たすか否かをまず簡易計算で確認し、部位配置制約をある程度満たす組み合わせだけを詳細に計算して最適な配列を導出することで、部位制約を含めた時間のかかる最適組合せ計算処理は1回だけで済むようにすることができる。これにより、計算時間を短くしながら、複数鋼種の巾移行制約を十分満たすキャスト編成を行うことができる。
【0059】
次に、本実施形態に係るキャスト編成方法について説明する。
図8は、本実施形態に係るキャスト編成方法S1の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、キャスト編成方法S1は、ステップS11からステップS13を含む。
【0060】
ステップS11において、少なくとも1つのプロセッサ(例えばデータ入力部110)が、複数のストランドを用いた連続鋳造で製造するスラブ(中間製品)の巾に関する情報を入力する。
【0061】
ステップS12は、少なくとも1つのプロセッサ(例えば生成部121)が、鋼種毎に巾順に配列された中間製品について、鋼種毎に、複数のストランドの各々に分配する中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成する。
【0062】
ステップS13は、少なくとも1つのプロセッサ(例えば評価部122)が、生成された複数の組み合わせの各々について、中間製品の巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した評価値を参照して中間製品の製造順を生成する。
【0063】
以上のキャスト編成方法S1によれば、複数の鋼種からなるスラブ等の中間製品のキャスト編成を、効率よく行うことができる。つまり、中間製品のキャスト編成を、比較的短時間で行うことができる。
【0064】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0065】
上述の実施形態では、ストランドが2つの場合を例にとって説明した。しかし、ストランドが3つ以上であってもよい。その場合でも、分配パターンと組み合わせの生成方法は上述の方法と同じである。例えば、ストランドが3つである場合は、生成部121は、1つの鋼種に含まれるスラブを3つのストランドに分配する分配パターンを、鋼種ごとに複数生成する。この際、巾順が降順又は昇順に配列されたスラブを順に3つに分配する。つまり、元の巾順は保存したまま3分配する。分配位置は、スラブ単位で決めてもよく、巾が変化する位置を分配位置としてもよい。1つの分配パターン中のスラブ個数は1以上であればよい。
【0066】
次に、生成部121は、3つに分配した鋼種ごとの複数の分配パターンを鋼種の順に組み合わせた組み合わせを複数生成する。組み合わせる場合は、分配したスラブの巾の降順と昇順とを分けて組み合わせる。すべての組み合わせを生成してもよく、あるいは所定の条件に基づいてパターン数を減らしてもよい。ただし、組み合わせの前後の繋がりが良いパターン同士を繋いで、組み合わせを生成することが好ましい。
【0067】
次に、評価部122は、生成された複数の組み合わせの各々について、スラブの巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した評価値を参照してスラブの製造順を生成する。評価値は、分配パターン同士の繋がりが良い(制約条件をより満たす)組み合わせがより高くなるように導出される。以上の手順は、ストランドが増えても同様である。このようにして、3以上のストランドに分配して組み合わせることにより、複数の鋼種からなるスラブ等の中間製品のキャスト編成を、効率よく行うことができる。つまり、中間製品のキャスト編成を、比較的短時間で行うことができる。
【0068】
〔ソフトウェアによる実現例〕
キャスト編成装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に粗キャスト編成部120に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0069】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0070】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0071】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0072】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0073】
〔まとめ〕
態様1に係るキャスト編成装置は、スラブ、ブルームまたはビレットのいずれかの中間製品の製造順を決定するキャスト編成装置であって、複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する前記中間製品の巾に関する情報を入力するデータ入力部と、前記情報に基づいて、中間キャスト編成案を生成する粗キャスト編成部と、を備え、前記粗キャスト編成部は、鋼種毎に巾順に配列された前記中間製品について、鋼種毎に、前記複数のストランドの各々に分配する前記中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の前記分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成する生成部、及び生成された前記複数の組み合わせの各々について、前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した前記評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成する評価部、を含む。
【0074】
態様2に係るキャスト編成装置は、態様1に係るキャスト編成装置において、前記評価部は、前記組み合わせの繋ぎ部分の前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、前記繋ぎ部分の評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成する。
【0075】
態様3に係るキャスト編成装置は、態様1又は2に係るキャスト編成装置において、前記評価部は、さらに他の制約条件を考慮した評価値を導出し、当該評価値を参照して、前記中間製品の製造順を生成する。
【0076】
態様4に係るキャスト編成装置は、態様1から3のいずれか一つに記載のキャスト編成装置において、前記生成部は、前記巾順に配列された前記中間製品の前記巾が変わる箇所で分配する分配パターンを生成する。
【0077】
態様5に係るキャスト編成装置は、態様1から4のいずれか一つに記載のキャスト編成装置において、前記生成部は、分配された前記中間製品を巾の昇順と降順とを考慮した組み合わせを生成する。
【0078】
態様6に係るキャスト編成方法は、スラブ、ブルームまたはビレットのいずれかの中間製品の製造順を決定するキャスト編成方法であって、複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する前記中間製品の巾に関する情報を入力するステップと、鋼種毎に巾順に配列された前記中間製品について、鋼種毎に、前記複数のストランドの各々に分配する前記中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の前記分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成するステップと、生成された前記複数の組み合わせの各々について、前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した前記評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成するステップと、
を含む。
【0079】
態様7に係るキャスト編成プログラムは、スラブ、ブルームまたはビレットのいずれかの中間製品の製造順を決定するキャスト編成プログラムであって、コンピュータに、複数のストランドを用いた連続鋳造で製造する前記中間製品の巾に関する情報を入力する処理と、鋼種毎に巾順に配列された前記中間製品について、鋼種毎に、前記複数のストランドの各々に分配する前記中間製品を特定する分配パターンを生成し、生成した鋼種毎の前記分配パターンの鋼種間での複数の組み合わせを生成する処理と、生成された前記複数の組み合わせの各々について、前記中間製品の前記巾の変化量に関する評価値を導出し、導出した前記評価値を参照して前記中間製品の製造順を生成する処理と、を実行させる。
【0080】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1…キャスト編成装置
100…製造スケジュール決定装置
101…スラブ情報ファイル
102…同鋼種キャスト情報ファイル
103…コイル情報ファイル
104…キャスト編成結果ファイル
105…編成条件ファイル
110…データ入力部
120…粗キャスト編成部
121…生成部
122…評価部
130…制約違反解消部
S1…キャスト編成方法の流れを示すフローチャート