(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152003
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】非水電解質デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/195 20210101AFI20241018BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20241018BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20241018BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20241018BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20241018BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20241018BHJP
H01G 11/78 20130101ALN20241018BHJP
H01G 11/20 20130101ALN20241018BHJP
【FI】
H01M50/195
H01M50/105
H01M50/186
H01M50/178
H01M50/562
H01M50/55 301
H01G11/78
H01G11/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065880
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 里駆
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 文義
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃
(72)【発明者】
【氏名】小川 一道
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078AB01
5E078EA04
5E078EA16
5E078HA02
5H011AA10
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC05
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG01
5H011HH02
5H011HH09
5H011HH12
5H011JJ03
5H043AA19
5H043BA18
5H043BA20
5H043CA13
5H043DA10
5H043DA11
5H043DA13
5H043HA12D
5H043HA32D
5H043JA15D
5H043KA06D
5H043KA07D
5H043KA08D
5H043KA09D
5H043KA14D
5H043KA22D
5H043KA38D
(57)【要約】
【課題】ラミネート材の内部に持ち込まれた水分による劣化を軽減し非水電解質デバイスの長寿命化を図る。
【解決手段】袋状にされ少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート材と、リード端子と、リード端子とラミネート材との隙間を封止するフィルム部とを有するタブリードと、内部に乾燥剤が分散された捕水部材とを備え、捕水部材がラミネート材とタブリードによって囲まれた領域に位置された。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状にされ少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート材と、
リード端子と、前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止するフィルム部とを有するタブリードと、
内部に乾燥剤が分散された捕水部材とを備え、
前記捕水部材が前記ラミネート材と前記タブリードによって囲まれた領域に位置された
非水電解質デバイス。
【請求項2】
前記捕水部材が前記電解液又は固体電解質と接する
請求項1に記載の非水電解質デバイス。
【請求項3】
前記捕水部材が前記リード端子に取り付けられた
請求項1又は請求項2に記載の非水電解質デバイス。
【請求項4】
前記リード端子が金属材料によって形成された端子本体と前記端子本体の表面を覆う樹脂被膜とを有し、
前記捕水部材が前記樹脂被膜のベース樹脂と同じ成分を含む樹脂材料によって形成された
請求項3に記載の非水電解質デバイス。
【請求項5】
前記捕水部材によって前記リード端子が覆われた
請求項1又は請求項2に記載の非水電解質デバイス。
【請求項6】
前記捕水部材と前記フィルム部とが同じ成分を含む樹脂材料によって形成された
請求項5に記載の非水電解質デバイス。
【請求項7】
前記捕水部材が前記ラミネート材の内面に取り付けられた
請求項1又は請求項2に記載の非水電解質デバイス。
【請求項8】
前記ラミネート材の外周部が封止部として形成され、
前記捕水部材が前記電極より前記封止部の近くに位置された
請求項7に記載の非水電解質デバイス。
【請求項9】
前記捕水部材の少なくとも一部が前記電極と対向する
請求項7に記載の非水電解質デバイス。
【請求項10】
前記ラミネート材の内面が樹脂材料によって形成され、
前記捕水部材が前記ラミネート材の内面と同じ系統の樹脂材料によって形成された
請求項7に記載の非水電解質デバイス。
【請求項11】
前記乾燥剤として合成ゼオライト又は天然ゼオライトが用いられた
請求項1又は請求項2に記載の非水電解質デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕水部材を備えたラミネート型の非水電解質デバイスについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車載電池や蓄電池等として使用されるリチウムイオン電池等の非水電解質デバイスには、袋状にされたラミネート材の内部に電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスがある。ラミネート型の非水電解質デバイスにおいては、一端部が電極に接続され他端部がラミネート材の外部に露出されたタブリードによって電力の取り出しが行われる。
【0003】
タブリードには、電力を取り出すための端子部材として機能するリード端子と、リード端子とラミネート材の間に両者の隙間を封止すると共に両者を絶縁するためのフィルム部とが設けられている。フィルム部が熱圧着されることにより、リード端子とラミネート材との隙間が封止される。
【0004】
このような非水電解質デバイスにおいて、ラミネート材の内部に水分が浸入すると、水分が電解液と反応することによるフッ酸(フッ化水素酸)の発生や、水分による電解液溶媒の加水分解や電極の不働態膜の溶解を来し、出力の低下等の劣化を招くおそれがある。そのため、非水電解質デバイスにおいては、タブリードにおけるフィルム部の内部に乾燥剤が分散され、乾燥剤によってフィルム部を透過してラミネート材の内部に侵入する空気中の水分が吸着されることにより、ラミネート材の内部への水分の侵入が抑制されたものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-096952号公報
【特許文献2】特開2022-061268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような非水電解質デバイスにおいては、例えば、タブリード、電極、電解液、ラミネート材又はセパレータの表面に付着していた水分が、非水電解質デバイスの組立工程においてラミネート材の内部に持ち込まれてしまうことがある。
【0007】
特許文献1及び特許文献2のような非水電解質デバイスにあっては、フィルム部を透過しラミネート材の内部に侵入しようとする水分に対しては十分な捕水性能を有しているが、既にラミネート材の内部に持ち込まれた水分については十分に捕水することができないおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、ラミネート材の内部に持ち込まれた水分による劣化を軽減し非水電解質デバイスの長寿命化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る非水電解質デバイスは、袋状にされ少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート材と、リード端子と、前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止するフィルム部とを有するタブリードと、内部に乾燥剤が分散された捕水部材とを備え、前記捕水部材が前記ラミネート材と前記タブリードによって囲まれた領域に位置されたものである。
【0010】
これにより、捕水部材の内部に分散された乾燥剤によってラミネート材の内部に持ち込まれた水分が吸着される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、捕水部材の内部に分散された乾燥剤によってラミネート材の内部に持ち込まれた水分が吸着されるため、水分による劣化が軽減され非水電解質デバイスの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図2と共に本発明の第1の実施の形態を示すものであり、本図は、非水電解質デバイスの正面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態を示すものであり、本図は、捕水部材がリード端子を覆う被膜として設けられた例を示す断面図である。
【
図4】
図5と共に本発明の第3の実施の形態を示すものであり、本図は、非水電解質デバイスの正面図である。
【
図6】本発明の第4の実施の形態を示すものであり、本図は、非水電解質デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の非水電解質デバイスを実施するための形態について、添付図面を参照して説明する(
図1乃至
図6参照)。
【0014】
以下の説明にあっては、非水電解質デバイス(リチウムイオン電池)においてタブリードが突出される方向を上方とし、上下左右の方向を示すものとする。ただし、以下に示す上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0015】
また、以下の説明においては、非水電解質デバイスの組立工程においてラミネート材の内部に持ち込まれた水分を内在水分とし、組立後にラミネート材の内部に侵入する水分を外来水分として表すことがある。
【0016】
<第1の実施の形態に係る非水電解質デバイス>
まず、第1の実施の形態に係る非水電解質デバイス1について説明する(
図1及び
図2参照)。
【0017】
非水電解質デバイス1は、袋状にされたラミネート材2と一部がラミネート材2の内部に位置されたタブリード4とを有している(
図1参照)。
【0018】
ラミネート材2は、外周部が封止部3として設けられ、左右両端部と下端部が閉塞され上方に開口された袋状にされている。ラミネート材2は上端部が封入口部2aとして形成され、内部に所要の各部が封入された状態で封入口部2aが封止されることにより密閉される。ラミネート材2は三層構造にされ、それぞれ樹脂材料によって形成された外面層2bと内面層2cが金属層2dの両側に積層されている(
図2参照)。外面層2bとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが用いられ、内面層2cとしては、ポリオレフィン系の樹脂、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレンが用いられ、金属層2dとしては、例えば、アルミニウムが用いられている。
【0019】
タブリード4は、リード端子5と、リード端子5を両側から覆う一対のフィルム部6とから成る(
図2参照)。タブリード4は、一部が封入口部2aに密着された状態にされ、上端側の部分がラミネート材2から突出されている。
【0020】
リード端子5は、金属材料によって形成された端子本体7と端子本体7の表面を覆う樹脂被膜8とを有している。端子本体7としては、例えば、アルミニウム、銅、純ニッケル又はステンレス鋼が用いられている。樹脂被膜8のベース樹脂としては、例えば、アクリル樹脂が用いられている。リード端子5の下端部は電極接続部5aとして形成され、後述する電極(正極又は負極)に接続されている。リード端子5の上端部はラミネート材2から外部に露出された外部端子部5bとして形成され、外部端子部5bに外部機器の図示しない接続端子が接続されることにより非水電解質デバイス1から電力が取り出される。なお、リード端子5は電極及び外部機器の接続端子と超音波溶接によって接続される。超音波溶接時の負荷により電極接続部5a及び外部端子部5bにおける樹脂被膜8が消失された状態で端子本体7が電極又は接続端子と接触されることにより、リード端子5と電極及びリード端子5と外部機器の導通が確保される。
【0021】
フィルム部6は、電極接続部5aと外部端子部5bの中間部において左右両側の端部がリード端子5からはみ出した状態でリード端子5の厚み方向における両面を覆っている。フィルム部6は、水分を透過しにくい酸変性されたポリオレフィン系の樹脂、例えば、ポリプロピレン(酸変性ポリプロピレン)によって形成されている。なお、フィルム部6は単層の樹脂フィルムとして構成されていてもよく、複数の樹脂フィルムが積層されていてもよい。また、フィルム部6の内部には、乾燥剤や架橋剤や酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0022】
上記のように構成された非水電解質デバイス1にあっては、フィルム部6の厚み方向における外面がそれぞれラミネート材2の内面層2cに接した状態でラミネート材の封入口部2aが熱圧着される。加熱によりフィルム部6が溶融された状態でラミネート材の封入口部2aが加圧されることによって、リード端子5と内面層2cとの隙間が封止されラミネート材2が密封される。
【0023】
ラミネート材2が密封された状態において、ラミネート材2とタブリード4によって囲まれた領域は封止域9として形成される。
【0024】
封止域9には、電解液10と正極11と負極12とセパレータ13と捕水部材14が封入されている(
図1及び
図2参照)。正極11と負極12は電解液10に浸されており、セパレータ13によって正極11が配置された空間と負極12が配置された空間とが仕切られている。正極11としては、例えば、アルミニウムが用いられ、負極12としては、例えば、銅が用いられている。正極11と負極12は上端部がそれぞれリード端子5の電極接続部5aと接続されている。なお、電解液10に代えて固体電解質が用いられていてもよい。
【0025】
捕水部材14は樹脂材料によって形成され、内部に乾燥剤が分散されている。捕水部材14は、例えば、シート状に形成され、乾燥剤が分散された捕水層14aとリード端子5に密着されるリード密着層14bとが厚み方向において積層されている(
図2参照)。リード密着層14bは溶融層として設けられており、捕水部材14は熱圧着によって樹脂被膜8の上からリード端子5に取り付けられている。捕水部材14はリード端子5における電極接続部5aとフィルム部6との間の部分に位置され、全体が電解液10に浸された状態にされている。
【0026】
捕水部材14は、少なくともリード密着層14bのベース樹脂として、樹脂被膜8のベース樹脂と同系統の変性部を含む樹脂材料、例えば、アクリル酸変性ポリオレフィンが用いられている。なお、捕水部材14はリード密着層14bが粘着性を有する粘着層として設けられ、リード端子5に接着されていてもよい。また、捕水層14aが溶融層や粘着層としての機能を有する単層の構成にされていてもよく、捕水層14aが接着材等によってリード端子5に接着されていてもよい。捕水層14aがリード端子5と密着される場合には、捕水層14aのベース樹脂として樹脂被膜8のベース樹脂と同系統の変性部を含む樹脂材料が用いられる。さらに、捕水部材が内部に乾燥剤が分散されたペースト状にされ、捕水部材がリード端子5に塗布される構成にされていてもよい。
【0027】
捕水部材14に分散される乾燥剤は粒径が50nmから10μmにされ、例えば、300nmにされている。乾燥剤としては、例えば、合成ゼオライトが用いられている。ゼオライトとしては、例えば、国際ゼオライト学会が定める構造コードがLTAのゼオライトが用いられ、ゼオライトの細孔径は、例えば、4オングストロームにされている。捕水層14aに対する合成ゼオライトの添加量は10wt%から50wt%にされ、例えば、20wt%にされている。乾燥剤として上記のような合成ゼオライトを用いることにより、水分を効率よく吸着することができる。ただし、捕水部材14に分散される乾燥剤は合成ゼオライトに限られることはなく、水分を物理吸着又は化学吸着する捕水性の高い材料が使用される。具体的には、例えば、天然ゼオライト、シリカゲル、塩化カルシウム、酸化カルシウム、五酸化リン、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化バナジウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム又はこれらの混合物等が用いられる。なお、乾燥剤として、水分を物理吸着する材料と化学吸着する材料の両方が共に用いられてもよい。
【0028】
上記のように構成された非水電解質デバイス1においては、捕水部材14がラミネート材2とタブリード4によって囲まれた封止域9に位置されている。これにより、捕水部材14の内部に分散された乾燥剤によって封止域9に持ち込まれた水分が吸着されるため、水分による劣化が軽減され非水電解質デバイス1の長寿命化を図ることができる。
【0029】
また、非水電解質デバイス1の組み立て時に捕水部材14を所定の位置に配置すればよく、タブリード4や電極(正極11及び負極12)の製造工程や保管工程において水分の吸着を抑制するための専用の工程や処理を設ける必要がない。したがって、非水電解質デバイス1の製造工程における作業負担の大幅な増加を来すことなく、非水電解質デバイス1に対して捕水部材14を取り付けることができる。
【0030】
さらに、捕水部材14は電解液10に浸された状態にされている。即ち、捕水部材14は電解液10と接している。したがって、封止域9に持ち込まれた水分が捕水部材14に分散された乾燥剤に吸着され易くなるため、捕水部材14の高い捕水効果を確保することができる。
【0031】
また、捕水部材14はリード端子5に取り付けられている。非水電解質デバイス1においては、ラミネート材2が密封された状態にあっても封入口部2aから封止域9へ空気中の水分が侵入する可能性がある。上記のように、捕水部材14がリード端子5に取り付けられることにより、捕水部材14が封入口部2aの近傍に位置されるため、封入口部2aから封止域9に侵入した空気中の水分が捕水部材14によって捕水され易くなる。したがって、外来水分に対しても非水電解質デバイス1の劣化を軽減することができる。加えて、封止域9において捕水部材14を取り付けるための専用の部材を新たに設ける必要がないため、製造コストの高騰を抑制すると共に製造性の向上を図ることができる。
【0032】
さらにまた、捕水部材14は樹脂被膜8のベース樹脂と同じ成分(同系統の変性部)を含む樹脂材料によって形成されている。したがって、捕水部材14がリード端子5に取り付けられた状態において、捕水部材14と樹脂被膜8との高い親和性が確保され、リード端子5に対する捕水部材14の高い密着強度を確保することができる。
【0033】
<第2の実施の形態に係る非水電解質デバイス>
次に、第2の実施の形態に係る非水電解質デバイス1Aについて説明する(
図3参照)。
【0034】
なお、以下に示す非水電解質デバイス1Aは、上記した非水電解質デバイス1と比較して、リード端子5代えてリード端子5Aが用いられること及び捕水部材14に代えて捕水部材14Aが用いられることのみが相違するため、非水電解質デバイス1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については非水電解質デバイス1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0035】
リード端子5Aは端子本体7のみから成り、樹脂被膜8に代えて捕水部材14Aによって略全面が覆われている。捕水部材14Aは樹脂材料によって形成された薄膜状にされ、ベースとなる樹脂材料として、例えば、アクリル樹脂が用いられている。フィルム部6としては、例えば、アクリル酸変性ポリオレフィンが用いられ、フィルム部6は捕水部材14Aの上からリード端子5の厚み方向における両面を覆っている。なお、捕水部材14Aにおいても、樹脂被膜8と同様に、超音波溶接時に捕水部材14Aにおける電極接続部5a及び外部端子部5bを覆う部分が消失されることにより、リード端子5と電極及びリード端子5と外部機器の導通が確保される。
【0036】
上記のように、非水電解質デバイス1Aにおいては、捕水部材14Aによってリード端子5Aが覆われている。これにより、捕水部材14Aの内部に分散された乾燥剤によって封止域9に持ち込まれた水分が吸着されると共に封入口部2aから封止域9への空気中の水分の侵入が抑制されるため、内在水分と外来水分の双方による非水電解質デバイス1の劣化を軽減することができる。また、捕水部材14Aは、フィルム部6の樹脂材料が持つ変性部と同系統の樹脂材料(フィルム部6と同じ成分を含む樹脂材料)によって形成されている。これにより、捕水部材14とフィルム部6の高い密着強度が確保され、ラミネート材2の封入口部2aにおける良好な封止状態を確保することができる。
【0037】
<第3の実施の形態に係る非水電解質デバイス>
次に、第3の実施の形態に係る非水電解質デバイス1Bについて説明する(
図4及び
図5参照)。
【0038】
なお、以下に示す非水電解質デバイス1Bは、上記した非水電解質デバイス1と比較して、捕水部材14に代えて捕水部材14Bが用いられることのみが相違するため、非水電解質デバイス1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については非水電解質デバイス1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0039】
捕水部材14Bは、ラミネート材2の内面層2cに取り付けられている。
【0040】
捕水部材14Bは枠状に形成され、乾燥剤が分散された捕水層14aとラミネート材2に密着されるラミネート材密着層14cとが厚み方向において積層されている(
図5参照)。ラミネート材密着層14cは溶融層として設けられており、捕水部材14Bは正極11及び負極12より封止部3の近くに位置された状態でラミネート材2の内面層2cに熱圧着によって取り付けられている。捕水部材14Bは、少なくともラミネート材密着層14cのベースとなる樹脂材料として、内面層2cと同じポリオレフィン系の樹脂材料、例えば、ポリプロピレンが用いられている。なお、捕水部材14Bは、ラミネート材密着層14cが粘着性を有する粘着層として設けられ、内面層2cに接着されていてもよい。また、捕水部材14Bは捕水層14aが溶融層や粘着層としての機能を有する単層の構成にされていてもよく、捕水層14aが接着材等によって直接内面層2cに接着されていてもよい。捕水層14aが内面層2cと密着される場合には、捕水層14aのベース樹脂として内面層2cと同じ系統の樹脂材料が用いられる。また、捕水部材が内部に乾燥剤が分散されたペースト状にされ、捕水部材が内面層2cに塗布される構成にされていてもよい。
【0041】
非水電解質デバイス1Bにおいては、封止部3から空気中の水分が封止域9に侵入する可能性がある。上記のように捕水部材14Bが封止部3の近くに取り付けられることにより、捕水部材14Bの内部に分散された乾燥剤によって封止域9に持ち込まれた水分が吸着されると共に、空気中の水分が封止部3から封止域9に侵入した場合に、捕水部材14Bによって捕水され易くなる。したがって、内在水分と外来水分の双方による非水電解質デバイス1Bの劣化を軽減することができる。また、圧迫時における捕水部材14Bと電極の接触が少なく、電極の変形が抑制されるため、電極活物質の破壊や剥離が生じず、非水電解質デバイス1Bの劣化を軽減することができる。さらに、捕水部材14Bがラミネート材2の内面層2cに取り付けられるため、封止域9において捕水部材14Bを取り付けるための専用の部材を新たに設ける必要がない。したがって、非水電解質デバイス1Bの製造コストの高騰を抑制すると共に製造性の向上を図ることができる。加えて、捕水部材14Bはラミネート材2の内面層2cと同じ系統の樹脂材料によって形成されている。したがって、捕水部材14Bが内面層2cに取り付けられた状態において、捕水部材14Bと内面層2cとの高い親和性が確保され、ラミネート材2に対する捕水部材14Bの高い密着強度を確保することができる。
【0042】
なお、捕水部材14Bは、枠状に限られることはなく、例えば、ラミネート材2の一端部に沿った直線状に形成されていてもよい。ただし、封止部3における封入口部2a以外の部分からラミネート材2の内部に侵入する空気中の水分量は封入口部2aからラミネート材2の内部に侵入する空気中の水分量と比較してごく僅かであるため、捕水部材14Bは、少なくとも正極11及び負極12より封入口部2a側(上方)に設けられていることが望ましい。
【0043】
<第4の実施の形態に係る非水電解質デバイス>
次いで、第4の実施の形態に係る非水電解質デバイス1Cについて説明する(
図6参照)。
【0044】
なお、以下に示す非水電解質デバイス1Cは、上記した非水電解質デバイス1と比較して、捕水部材14に代えて捕水部材14Cが用いられることのみが相違するため、非水電解質デバイス1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については非水電解質デバイス1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0045】
捕水部材14Cは、正極11及び負極12と略同じ大きさの平面状に形成され、乾燥剤が分散された捕水層14aとラミネート材2に密着されるラミネート材密着層14cとが厚み方向において積層されている。ラミネート材密着層14cは溶融層として設けられており、捕水部材14Cは正極11又は負極12と対向した状態でラミネート材2の内面層2cに熱圧着によって取り付けられている。捕水部材14Cは、捕水部材14Bと同様に、少なくともラミネート材密着層14cのベースとなる樹脂材料として、内面層2cと同じポリオレフィン系の樹脂材料が用いられている。
【0046】
なお、捕水部材14Cにおいても、捕水部材14Bと同様に、ラミネート材密着層14cが粘着層としての機能を有していてもよい。また、捕水層14aが溶融層や粘着層としての機能も有する単層の構成にされていてもよく、捕水層14aが粘着剤等によって内面層2cに接着されていてもよい。さらに、捕水部材が内部に乾燥剤が分散されたペースト状にされ、捕水部材が内面層2cに塗布される構成にされていてもよい。
【0047】
一般に、正極11や負極12はタブリード4と比較して表面積が大きくされており、表面に付着してラミネート材2の内部に持ち込まれる水分量が大きくなり易い。非水電解質デバイス1Bにおいては、捕水部材14Cの少なくとも一部が正極11又は負極12と対向した状態で取り付けられることにより、正極11や負極12の表面に付着して封止域9に持ち込まれた水分が乾燥剤に吸着され易くなるため、封止域9における捕水部材14Cの捕水効果を高めることができる。なお、捕水部材14Cをラミネート材2の内面層2cにおける封止部3を除いた略全面に設けることにより、捕水部材14Cが電解液10と接する面積が大きくなると共に封止部3の近くに位置されるため、内在水分と外来水分の双方に対して捕水部材14Cのより高い捕水効果を確保することができる。また、非水電解質デバイス1Bと同様に、封止域9において捕水部材14Cを取り付けるための専用の部材を新たに設ける必要がないため、非水電解質デバイス1Cの製造コストの高騰を抑制すると共に製造性の向上を図ることができる。さらに、捕水部材14Cはラミネート材2の内面層2cと同じ系統の樹脂材料によって形成されている。したがって、捕水部材14Cが内面層2cに取り付けられた状態において、捕水部材14Cと内面層2cとの高い親和性が確保され、ラミネート材2に対する捕水部材14Cの高い密着強度を確保することができる。
【0048】
なお、上記した非水電解質デバイス1、1A、1B、1Cにおいては、ラミネート材2の上端部が封入口部2aとして形成され、二つのタブリード4が共にラミネート材2から上方へ突出された例を示したが、ラミネート材2の上端部と下端部がそれぞれ封入口部2aとして形成され、二つのタブリード4のうち一方がラミネート材2から上方へ突出され、他方がラミネート材2から下方へ突出されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、1A、1B、1C 非水電解質デバイス
2 ラミネート材
2c 内面層
3 封止部
4 タブリード
5、5A リード端子
6 フィルム部
7 端子本体
8 樹脂被膜
9 封止域
10 電解液
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14、14A、14B、14C 捕水部材