(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152017
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】発泡シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20241018BHJP
C08G 18/30 20060101ALI20241018BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20241018BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20241018BHJP
B29C 39/18 20060101ALI20241018BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241018BHJP
B29C 44/24 20060101ALI20241018BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20241018BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/30 020
C08G18/10
B29C39/24
B29C39/18
B29C44/00 A
B29C44/24
B29C44/36
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065904
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 淳志
【テーマコード(参考)】
4F204
4F214
4J034
【Fターム(参考)】
4F204AA42
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4J034HC61
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4J034JA30
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4J034QB15
4J034QC01
4J034RA01
4J034RA02
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】 優れた性能を有する発泡シートを連続生産することが可能な、発泡シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 本開示のある形態は、ウレタンプレポリマーを含む第1液と、水を含む第2液とを含む組成物を所定のライン速度で流れるラインに向けて吐出する吐出工程と、前記ラインの上に吐出された前記組成物が所定の厚み及び幅となるように調整する調整工程と、前記調整工程を経た前記組成物を乾燥炉内で乾燥させる乾燥工程とを含み、前記組成物のゲルタイムTGが式1を満たすことを特徴とする、発泡シートの製造方法である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーを含む第1液と、水を含む第2液とを含む組成物を所定のライン速度で流れるラインに向けて吐出する吐出工程と、
前記ラインの上に吐出された前記組成物が所定の厚み及び幅となるように調整する調整工程と、
前記調整工程を経た前記組成物を乾燥炉内で乾燥させる乾燥工程と
を含み、
前記組成物のゲルタイムTGが下記式1を満たすことを特徴とする、発泡シートの製造方法。
(式1)
0.7≦TG/TT<1.2
TTは、前記組成物が、吐出された位置から前記乾燥炉の出口まで搬送されるのに要する時間である。
【請求項2】
前記組成物のクリームタイムTCが、下記で定義される滞留時間TSよりも長い、請求項1記載の発泡シートの製造方法。
(滞留時間TS)
前記組成物が吐出されてから前記調整工程を経て所定の幅となるまでの時間を滞留時間TSとする。
【請求項3】
前記組成物のクリームタイムTCが、15秒以上60秒以下である、請求項1記載の発泡シートの製造方法。
【請求項4】
前記調整工程は、前記組成物の幅が300mm以上となるように調整する工程である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性ウレタンフォームは、初期創傷被覆材、化粧用品、失禁製品、ワイプ材、育苗培地等の吸水性(吸水量や吸水速度)が求められる用途で、ウレタンフォームが広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、特定のイソシアネート成分等を含む反応性成分を用いて得られる親水性イソシアネート末端プレポリマーを用いた、熱的な快適性等の優れた親水性のウレタンフォームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、発泡シートを連続生産することが難しい場合があった。
【0006】
そこで本発明は、優れた性能を有する発泡シートを連続生産することが可能な、発泡シートの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行い、発泡シートの製造条件が特定の条件を満たすことで上記課題を解決可能なことを見出した。即ち、本発明は以下の通りである。
【0008】
本開示のある形態は、
ウレタンプレポリマーを含む第1液と、水を含む第2液とを含む組成物を所定のライン速度で流れるラインに向けて吐出する吐出工程と、
前記ラインの上に吐出された前記組成物が所定の厚み及び幅となるように調整する調整工程と、
前記調整工程を経た前記組成物を乾燥炉内で乾燥させる乾燥工程と
を含み、
前記組成物のゲルタイムTGが下記式1を満たすことを特徴とする、発泡シートの製造方法である。
(式1)
0.7≦TG/TT<1.2
TTは、前記組成物が、吐出された位置から前記乾燥炉の出口まで搬送されるのに要する時間である。
【0009】
前記組成物のクリームタイムTCが、下記で定義される滞留時間TSよりも長いことが好ましい。
(滞留時間TS)
前記組成物が吐出されてから前記調整工程を経て所定の幅となるまでの時間を滞留時間TSとする。
前記組成物のクリームタイムTCが、15秒以上60秒以下であることが好ましい。
前記調整工程は、前記組成物の幅が300mm以上となるように調整する工程であることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、優れた性能を有するウレタンフォームを提供することができる。特に、本発明によれば、親水性フォームとして好ましく使用可能な、優れた性能を有するウレタンフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、発泡シートの製造方法に係る生産ラインの概略図である。
【
図2】
図2(1)は、調整工程における組成物の様子を示す概念側面図であり、
図2(2)は、その概念上面図である。
【
図3】
図3(1)及び
図3(2)は、吐出工程及び調整工程の変更例を示す概念上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、上限値と下限値とが別々に記載されている場合、任意の上限値と任意の下限値とを組み合わせた数値範囲が実質的に開示されているものとする。
【0013】
以下において、特に断らない限り、各種測定は、環境温度を室温(23℃)として実施する。
【0014】
<<<発泡シートの製造方法>>>
【0015】
本開示に係る発泡シートの製造方法は、ウレタンプレポリマーと水とを反応させ、発泡シートを得る工程を含む。
【0016】
より具体的には、発泡シートの製造方法は、
ウレタンプレポリマーを含む第1液と、水を含む第2液とを含む組成物を所定のライン速度で流れるラインに向けて吐出する吐出工程と、
前記ラインの上に吐出された前記組成物が所定の厚み及び幅となるように調整する調整工程と、
前記調整工程を経た前記組成物を乾燥炉内で乾燥させる乾燥工程と
を含むことが好ましい。
【0017】
以下、発泡シートの製造方法に係る生産ライン(以下、単にラインと表現する。)の概略図である
図1を主に参照しながら、各工程について説明する。
【0018】
<<吐出工程>>
吐出工程は、所定のライン速度で流れるラインの上に、ウレタンプレポリマーを含む第1液と、水を含む第2液と、を含む組成物110を吐出部15から吐出する工程である。なお、ここで示す「ラインの上に組成物を吐出する」工程とは、「ラインに沿って流れる基材の上に組成物を吐出する」工程も含む。基材とは、例えば、後述するアンダーキャリア21等である。
【0019】
本開示の製造方法においては、第2液に含まれる水が第1液に含まれるウレタンプレポリマーと反応することで炭酸ガスが発生し、その炭酸ガスによって発泡が行われる。ウレタンプレポリマーを含む第1液や、水を含む第2液の具体例については、後述する。
【0020】
ウレタンプレポリマーを含む第1液は、第1液タンク11に貯蔵されている。水を含む第2液は、第2液タンク12に貯蔵されている。第1液タンク11に貯蔵されている第1液が、ポンプ(図示せず)によって混合部13に送られる。同様に、第2液タンク12に貯蔵されている第2液が、ポンプ(図示せず)によって混合部13に送られる。このようにして、混合部13に第1液と第2液とが充填される。混合部13内で、必要に応じてミキサー等の公知の撹拌手段を用いて第1液と第2液とを撹拌し、第1液と第2液との混合物が形成される。この混合物が、組成物110として、ポンプ(図示せず)によって吐出部15に送られる。
【0021】
撹拌工程は、ミキサー等の公知の撹拌手段を用いて実施することができる。
【0022】
撹拌工程の撹拌条件は、組成物の粘度や配合する成分等に応じて適宜選択すればよい。
【0023】
第1液と第2液との反応性を制御しやすいことから、第1液タンク11、第2液タンク12及び混合部13における各内容物の保温温度は、10℃以上、15℃以上、20℃以上、又は、25℃以上であることが好ましく、また、40℃以下、又は、35℃以下であることが好ましい。具体的な保温温度は、例えば、30℃である。
【0024】
第1液と第2液との混合比率は、使用する原料等に応じて適宜調整すればよい。例えば、第2液に対する第1液の比率(第1液/第2液)は、100/50~100/10、又は、100/40~100/20等である。
【0025】
次に、第1液と第2液との混合物である組成物110が、吐出部15からラインの上に吐出される。本開示においては、吐出部15はシリンダ状或いはチューブ状の部材となっており、組成物110は略円柱状にラインの上に送り出される。また、本開示に係る吐出工程では、連続したアンダーキャリア21の上に組成物110が吐出され、組成物110はアンダーキャリア21の移動に沿ってラインの上流から下流に移動していく。なお、吐出工程において、可動式の部材(ローラーやコンベア等、図示せず)の上にアンダーキャリア21が設けられ、更に組成物110がアンダーキャリア21の上に吐出され、アンダーキャリア21とアンダーキャリア21上に吐出された組成物110とが、可動式の部材の移動に沿って所定の速度でラインの上流からライン下流に移動してもよい。このような、アンダーキャリア21の送り出しの速度や、可動式の部材の移動速度(組成物110がラインに沿って移動する際の速度)を、ライン速度とする。
【0026】
図1に示すように、本開示に係る吐出工程において、アンダーキャリア21は、アンダーキャリア21をロール状にしたアンダーキャリア送り出し部31から引き出され、ラインの上に提供される。
【0027】
アンダーキャリア21は、通常、フィルム状の部材である。アンダーキャリア21は、組成物110が浸透し難く、且つ、伸縮性の低いものを使用することが好ましい。アンダーキャリア21は、離型処理、サンドマット処理、ケミカルマット処理等の適宜の表面処理がされていてもよい。アンダーキャリア21としては特に限定されず、PETシート、PPシート、PEシート、紙系シート(例えば離型紙)等を用いることができる。
【0028】
ライン速度は、後述する調整工程や乾燥工程における諸条件を考慮して設定すればよい。ライン速度は、例えば、0.1m/min以上、0.5m/min以上、1.0m/min以上、又は、2.0m/min以上であることが好ましく、また、50m/min以下、20m/min以下、又は、10m/min以下であることが好ましい。このような条件であると、優れた性能を有する発泡シートが得やすく、また、発泡シートの生産性を高めることができる。
【0029】
なお、本開示では、混合部13にて予め第1液と第2液とを混合する方法を示したが、混合部13を設けずに、吐出部15に直接的に第1液と第2液とを送りこみ、吐出部15の内部で第1液と第2液との混合物を形成させ、吐出部15から吐出させてもよい。
【0030】
組成物110の粘度(25℃粘度)は、100mPa・s以上、200mPa・s以上、500mPa・s以上、1,000mPa・s以上、又は、1,500mPa・s以上であることが好ましく、また、5,000mPa・s以下、4,500mPa・s以下、4,000mPa・s以下、3,500mPa・s以下、又は、3,000mPa・s以下であることが好ましい。組成物110の粘度をこのようは範囲とすることで、発泡体の成形が容易となり、優れた性能を有する発泡シートが得やすい。
【0031】
図1では、吐出部15から組成物が吐出された位置(吐出位置S)におけるラインの角度が、水平方向に対して、傾斜角度θである傾斜を有する形態を示している。換言すれば、
図1においては、アンダーキャリア21は上坂状に傾斜したラインに沿って吐出位置Sまで送りこまれる(吐出位置Sでは組成物の吐出面となるアンダーキャリア21が水平方向に対して傾斜している)。その後、吐出位置Sを超えた付近からラインの傾斜が排除され、ラインは水平方向に移動するように構成されている。この際、ラインの傾斜角度θ(水平方向と、ラインの傾斜とが成す角度)は、特に限定されない。吐出部15から吐出された組成物110が吐出部15に逆流することを防止するという観点からは、傾斜角度θは、+15°以下、+10°以下、+5°以下、+1°以下、又は、+0°以下であることが好ましい。傾斜角度θが0°であるとは、吐出位置Sにおいて、ラインが傾斜を有しないことを表す。
図1においては、吐出位置Sにおいて、アンダーキャリア送り出し部31側が下方であり、吐出位置S側が上方である形態(上坂状の形態)を示したが、アンダーキャリア送り出し部31側が上方であり、吐出位置S側が下方である形態(下坂状の形態)であってもよい。この場合の傾斜角度θは、0°未満となる。具体的には、傾斜角度θを、0°未満、1°以下、2°以下、又は、5°以下等としてもよく、また、-15°以上、又は、-10°以上等としてもよい。即ち、傾斜角度θは、水平方向を基準として自由な範囲(例えば、-15~+15°等)としてもよい。
【0032】
また、
図1では、上方から下方に向かって組成物110の吐出を行う方法を示したが、吐出方法はこれには限定されない。例えば、組成物110が高粘度の組成物である場合、アンダーキャリア21が垂直方向に移動している状況下、吐出部15を横向きにして組成物110を水平方向に吐出させることで吐出工程を実施すること等も可能である。
【0033】
なお、発泡シートの原料として、ウレタンプレポリマー及び水以外の成分(その他の成分)を用いてもよい。その他の成分を用いる場合、第1液に予めその他の成分を含有させることが好ましいが、第2液にその他の成分を含有させる形態や、第1液及び第2液とは別の組成物としてその他の成分を含む第3液を準備して、混合部13の内部で、第1液、第2液、及び第3液を混合して混合物(組成物110)を形成する形態であってもよい。
【0034】
<<調整工程>>
調整工程は、高さ調整手段40を用いて、ラインの上(アンダーキャリア21上)に吐出された組成物110の厚み及び幅を調整して、調整組成物120を得る工程である。このように、本開示においては、調整工程を経た後の組成物110を調整組成物120としている。
【0035】
本開示に係る調整工程では、
図1に示すように、組成物110の高さ調整手段40として、下ローラー41及び上ローラー42を有する。即ち、本開示に係る調整工程では、吐出部15から吐出された組成物110を、下ローラー41及び上ローラー42の間隙に通過させることで、所定の厚みに調整している。
【0036】
図2(1)は、下ローラー41と上ローラー42との間隙に組成物110を通過させることで、組成物110の高さを調整している様子を示す概念側面図であり、
図2(2)は、その概念上面図である。なお、本図では、アンダーキャリ21及びトップキャリア22は図示していない。
【0037】
図2(1)に示すように、下ローラー41及び上ローラー42の間隙は吐出部15から吐出した後の組成物110の厚みH
1よりも薄くなるように調整されている。アンダーキャリア21及びトップキャリア22に挟まれた組成物110は、この間隙を通過することで、下ローラー41と上ローラー42との間隙の幅と同じ厚み(或いは、当該間隙の幅に近い厚み)である厚みH
2となるように圧延される。この際、下ローラー41及び上ローラー42の位置まで到達した組成物110は、上ローラー42及び下ローラー41によってせき止められ、その一部が上ローラー42の近辺に滞留する。
図2(2)に示されるように、上ローラー42及び下ローラー41によってせき止められた組成物110は、ラインに沿って送りこまれる後続の組成物110の圧力により、ライン方向(MD方向)と直交する方向(CD方向、幅方向)に押し出され広がっていく。なお、上ローラー42及び下ローラー41によってせき止められた組成物110がライン方向の上流側に逆流する条件(組成物110の吐出量が多すぎる、或いは、ライン速度が速すぎて、調整工程の処理に遅延が生じる等の条件)ではない限り、吐出部150から吐出される組成物110の流量(吐出量)と、下ローラー41及び上ローラー42を通過した後の調整組成物120の流量と、は略同一となる。そのため、調整組成物120の幅W
2は、組成物110の流量、調整組成物120の高さH
2、ライン速度等に基づいて決定される。
【0038】
以上説明したように、高さ調整手段40(下ローラー41及び上ローラー42で形成される間隙)を通過することで形成される調整組成物120は、その厚みH2が吐出部15から吐出した後の組成物110の厚みH1よりも小さくなり、その幅W2が吐出部15から吐出した後の組成物110の幅W1よりも大きくなる。即ち、調整組成物120は、組成物110よりも、薄く、且つ、幅広くなるように調整された状態で、ライン下流に移動していく。
【0039】
調整組成物120の厚みH
2は、高さ調整手段40で設定する条件(
図1においては、下ローラー41と上ローラー42との間隙の幅)等を変更することで調整可能である。また、調整組成物120の幅H
2は、高さ調整手段40で設定する条件(
図1においては、下ローラー41と上ローラー42との間隙の幅)、ライン速度、組成物110の吐出量等を変更することで調整可能である。
【0040】
以上説明したように、調整工程は、厚みH1であり幅W1である組成物110を変形させ、組成物110の厚みH1よりも少ない厚みH2を有し、且つ、組成物110の幅W1よりも大きい幅W2を有する調整組成物110を得る工程である、と表現することもできる。
【0041】
また、本開示に係る調整工程では、
図1に示されるように、高さ調整手段40(上ローラー42)に組成物110が接触する直前に、組成物110の上側にトップキャリア22を積層させている。即ち、本開示に係る調整工程では、組成物110がトップキャリア22とアンダーキャリア21とに挟まれた状態で、調整工程が実施される。このように、調整工程に際して、アンダーキャリア21のみならずトップキャリア22を用いることで、組成物110がトップキャリア22及びアンダーキャリア21に密着するように挟まれた状態で高さが調整されることから、得られる調整組成物120の、高さH
2や表面状態が均質化されやすくなる。
【0042】
図1に示すように、本開示に係る調整工程においては、トップキャリア22は、トップキャリア22をロール状にしたトップキャリア送り出し部32から引き出され、ラインの上に提供される。
【0043】
トップキャリア22は、通常、フィルム状の部材である。トップキャリア22は、組成物110が浸透し難く、且つ、伸縮性の低いものを使用することが好ましい。トップキャリア22は、離型処理、サンドマット処理、ケミカルマット処理等の適宜の表面処理がされていてもよい。トップキャリア22としては特に限定されず、PETシート、PPシート、PEシート、紙系シート(例えば離型紙)等を用いることができる。
【0044】
調整工程は、トップキャリア22を用いない工程であってもよい。トップキャリア22を用いずに発泡シート130を製造する場合、トップキャリア送り出し部32は不要である。
【0045】
ここで、組成物110は、ウレタンプレポリマーを含む第1液と、水を含む第2液とを含む混合物であり、この混合物は、ウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基と水とによる硬化反応が経時的に生じる。
【0046】
この際、組成物110のクリームタイムTCが、下記で定義される滞留時間TSよりも長いことが好ましい。
【0047】
滞留時間TSとは、組成物110がラインの上に吐出されてから調整工程を経て所定の幅(幅W2)となるまでの時間を滞留時間TSである。前述したように、調整工程に際しては、高さ調整手段40にせき止められた組成物110が、ラインに沿って次々に送られる後続の組成物110の圧力によりCD方向に広がっていく。この際、滞留時間TSとは、組成物110が吐出された時点から、組成物110が高さ調整手段40のCD方向における最外部(調整組成物120のCD方向の縁部に対応する。)に到達する時点までに要する時間と言い換えることも可能である。滞留時間は、調整組成物120の高さH2(或いは下ローラー41と上ローラー42との間隙の幅)、ライン速度、組成物110の吐出量、組成物110の粘度等をパラメーターとして計算することも可能であるが、目視による実測値として容易に計測することができる。
【0048】
組成物110のクリームタイムTCとは、原料温度を30℃、環境温度を23℃として、第1液と第2液とを混合し、吐出部15から吐出された100gの混合物を1Lカップに採取した際に、混合物の採取時点から、これらの混合物が発泡を開始してカップ内の混合物の液面が上昇してくる(膨張し始める)までの時間を指す。
また、組成物110がその他の成分を含む場合、予め第1液に混合するものとする。
【0049】
クリームタイムTCが滞留時間TSよりも長い構成とすることで、調整工程が完了するまでに組成物110の硬化反応が生じ難いことから、得られる発泡シートにおけるひび割れやセルの破壊等が生じ難く、優れた性能を有する発泡シートを得ることができる。
【0050】
なお、滞留時間TSに対する組成物110のクリームタイムTCの比(TC/TS)は、1.0超、1.1以上、又は、1.2以上であることが好ましく、また、1.6以下、又は、1.5以下、又は、1.4以下であることが好ましい。このような条件であると、優れた性能を有する発泡シートが得やすく、また、発泡シートの生産性を高めることができる。
【0051】
組成物110のクリームタイムTCは、具体的には、15秒以上、20秒以上、又は、25秒以上であることが好ましく、また、60秒以下、55秒以下、又は、50秒以下であることが好ましい。組成物110のクリームタイムTCをこのような範囲とすることで、優れた性能の発泡シートを得やすい。組成物110のクリームタイムTCは、第2液のpHによって容易に調整することができ、第2液のpHは、後述するようにpH調整剤によって調整することができる。このように、本開示に係る発泡シートの製造方法は、第2液にpH調整剤を添加して、第2液のpHを調整するpH調整工程を有することが好ましい。換言すれば、ウレタンプレポリマーを含む第1液と、水を含む第2液とを含む組成物(発泡体製造用の組成物)において、第2液は、pH調整剤を含むことが好ましい。
【0052】
本開示の調整工程では、組成物110の高さ調整手段40として下ローラー41及び上ローラー42を用いる形態を説明したが、組成物110の粘度等に応じた公知の手段(例えば、スリット状の部材やナイフ状の部材等)を組成物110の高さ調整手段40として用いてもよい。
【0053】
調整組成物120の高さH2は、製造したい発泡シートの高さに合わせて調整すればよい。具体的には、調整組成物120の高さH2は、1.0mm以上、1.5mm以上、又は、2.0mm以上であることが好ましく、また、10.0mm以下、8.0mm以下、又は、5.0mm以下であることが好ましい。
【0054】
調整組成物120の幅W2は、製造したい発泡シートの幅に合わせて調整すればよい。具体的には、調整組成物120の幅W2は、100mm以上、200mm以上、300mm以上、又は、500mm以上であることが好ましい。調整組成物120の幅W2の上限値は、特に限定されないが、例えば、10m、5m、又は、1m等である。
【0055】
<<吐出工程及び調整工程の変更例>>
ここで、
図1においては、吐出部15をシリンダ状或いはチューブ状の部材の部材とし、ラインの上にこの部材を1つのみ設けた構成を示したが、吐出部15の構成はこれには限定されない。
【0056】
図3(1)及び
図3(2)は、吐出工程及び調整工程の変更例を示す概念上面図である。
【0057】
図3(1)に示すように、吐出工程は、複数の吐出部(吐出部15-1、吐出部15-2及び吐出部15-3)を並列的に設け、それぞれの吐出部から組成物(組成物110-1、組成物110-2、組成物110-3)を吐出させる工程であってもよい。この場合、各吐出部から吐出される組成物(組成物110-1、組成物110-2、組成物110-3)は、高さ調整手段40によってせき止められ、隣接する組成物110が合流して一体化した上で高さが調整され、幅広な調整組成物120が形成される。このように、複数の吐出部15を設けて、調整工程に送り込まれる組成物110をCD方向に分散させることで、調整工程に際して高さ調整手段(上ローラー42)近辺で滞留する組成物120がライン方向の上流側へ逆流し難くなる、或いは、前述した滞留時間T
Sを短くすることができる等の点で有利である。他方、吐出部15を1つのみ設けた場合、調整工程に際して、組成物110は連続した組成物としてCD方向に均等に広がっていく(組成物同士の合流点が存在しない)ことから、得られる調整組成物120に筋等が生じ難い等の点で有利である。
【0058】
複数の吐出部15を設ける場合、その数は特に限定されない。また、複数の吐出部15を設ける場合、各吐出部15における組成物110の吐出量は同一でなくともよく、各吐出部15の設置位置がCD方向に並列的に並んでおらずともよい(高さ調整手段40までの距離が、吐出部15毎に異なっていてもよい)。更に、吐出部15を3つ以上設ける場合に、各吐出部15同士の距離は一定でなくともよい。
【0059】
また、
図2(2)に示すように、吐出部15は、CD方向に広い範囲で吐出が可能な部材であってもよい。具体的には、
図2(2)に示すように吐出部15をダイ15Aとした場合、ダイ15Aから吐出された組成物110は高さ調整手段40によってせき止められてCD方向(CD方向)に広がり、均一な高さを有する幅広な調整組成物120が形成される。このように、吐出部15を、ダイ15A等のCD方向に広い範囲で吐出が可能な部材とすることで、より幅広い調整組成物120を得やすい、或いは、前述した滞留時間T
Sを短くすることができる等の点で有利である。
【0060】
<<乾燥工程>>
乾燥工程は、調整工程を経て得られた調整組成物120を乾燥炉50に送りこみ、調整組成物120を乾燥させ、発泡シート130を得る工程である。
【0061】
乾燥炉50は、例えば、ライン方向に沿って伸びる箱状の乾燥炉である。図示しないが、乾燥炉50には入口と出口が設けられた筒状構造となっており、アンダーキャリア21及びトップキャリア22に挟み込まれた状態の調整組成物120が、乾燥炉50の内部を流下可能となっている。
【0062】
乾燥炉50における乾燥方法は、熱乾燥、風乾燥、減圧乾燥、及び、これらを組み合わせた乾燥方法等で実施可能であり特に限定されない。乾燥工程に用いられる乾燥炉は、例えば、マイクロ波オーブン、高周波誘導加熱、熱風乾燥炉等である。
【0063】
乾燥炉50における乾燥条件は、調整組成物120の高さH2、ライン速度等に応じて適宜変更可能である。乾燥温度は、例えば、15℃以上、25℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、80℃以上等である。乾燥温度の条件は、例えば、120℃等である。なお、乾燥炉50の内部にて乾燥温度を変化させてもよい。例えば、乾燥炉50の入口付近においては乾燥温度を低くし、乾燥炉50の出口付近では乾燥温度を高くしてもよい。
【0064】
乾燥工程が実施された後に、或いは、乾燥炉50内で、トップキャリア22を除去するフィルム除去工程を実施してもよい。フィルム除去工程では、例えば、トップキャリア巻取り部33等のフィルム除去手段を用いて、発泡シート130から、アンダーキャリア21やトップキャリア22を巻き取って除去すればよい。
また、このようなフィルム除去工程を実施せずに、フィルム付きの発泡シート130を製造してもよい。また、トップキャリア22を用いずに発泡シート130を製造する場合、或いは、フィルム付きの発泡シート130を製造する場合、トップキャリア巻取り部33等のフィルム除去手段は不要である。
【0065】
ここで、組成物110のゲルタイムTGは、下記式1を満たすことが好ましい。
(式1)
0.7≦TG/TT<1.2
【0066】
組成物110のゲルタイムTGとは、原料温度を30℃、環境温度を23℃として、第1液と第2液とを混合し、吐出部15から吐出された100gの混合物を1Lカップに採取した際に、混合物の採取時点から、混合物の反応が停止するまでの時間(混合物が硬化し、形成された発泡体の上側表面のタックが無くなるまでの時間)を表す。
なお、発泡樹脂形成用組成物がその他の成分を含む場合、予め第1液に混合するものとする。
【0067】
総時間TTとは、吐出された位置(吐出位置S)から(調整工程及び乾燥工程を経て)乾燥炉50の出口の位置(出口位置E)まで組成物110が搬送されるのに要する時間である。実際のラインにおける総時間TTは、吐出位置Sから出口位置Eまでの距離(吐出位置Sから調整手段までの長さ、調整手段から乾燥炉50までの距離、乾燥炉50自体の長さ)、滞留時間TS、及び、ライン速度によって定まる。
【0068】
組成物110のゲルタイムTGと総時間TTとがこのような関係であると、調整組成物120の反応が十分に行われると共に十分な乾燥が実施され、優れた性能を有する発泡シートが得やすくなる。
【0069】
組成物110のゲルタイムTGは、160秒以上、170秒以上、又は、180秒以上であることが好ましく、また、320秒以下、300秒以下、又は、250秒以下であることが好ましい。組成物110のゲルタイムTGは、第2液のpHによって容易に調整するこができる。
【0070】
総時間TTは、製造設備によっても異なるが、例えば、170秒以上、180秒以上、又は、200秒以上であり、また、320秒以下、300秒以下、又は、250秒以下である。
【0071】
なお、組成物110のクリームタイムTCに対する組成物110のゲルタイムTGの比率(TG/TC)は、3.0以上、4.5以上、5.0以上、5.2以上、又は、5.5以上であることが好ましく、また、12.0以下、10.0以下、8.0以下、又は、6.5以下であることが好ましい。このような組成物110を用いることで、連続的に発泡シートを生産する際の生産性等を高めることができる。
【0072】
乾燥工程を実施した後に、発泡シート130を巻き取る工程や、発泡シート130を加工する(例えば、切断する)工程を更に設けてもよい。
【0073】
<<<<発泡シート>>>>
以上のようにして得られた発泡シートは、製造条件が調整された結果、優れた性能(例えば、優れた親水性)を有するものとなる。
【0074】
以下、本開示の製造方法によって得られる発泡シートの、構造/物性/性質、原料(吐出工程で用いられる第1液及び第2液)、用途等について説明する。
【0075】
<<<発泡シートの物性/性質>>>
<<密度>>
発泡シートの密度は、特に限定されないが、50kg/m3以上、60kg/m3以上、70kg/m3以上、80kg/m3以上であることが好ましく、また、150kg/m3以下、120kg/m3以下、又は、100kg/m3以下であることが好ましい。
【0076】
発泡シートの密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に従い測定することができる。具体的には、発泡シートの密度は、発泡シートを長さ50mm×幅50mmに加工し、厚み及び質量を測定し、測定した質量を体積で除した値として得ることができる。
【0077】
<<吸水速度>>
発泡シートは、以下の方法によって測定される吸水速度が、3sec以下、1.5sec未満、又は、1sec未満であることが好ましい。
(測定方法)
塩化ナトリウム8.4g及び塩化カリウム0.4gを蒸留水で希釈し、1Lの溶液としたものを評価液とする。
環境温度25℃にて、発泡シート(厚みは、例えば3mm)に37℃の評価液を高さ1cmから0.2cc落とし、評価液が滴下されてから評価液が発泡シートに完全に吸収されるまでの時間を吸水速度とする。
【0078】
<<吸水量>>
発泡シートは、以下の方法で測定される吸水量が、15g/g超、17g/g超、18g/g超、又は、20g/g以上であることが好ましい。
【0079】
(測定方法)
塩化ナトリウム8.4g及び塩化カリウム0.4gを蒸留水で希釈し、1Lの溶液としたものを評価液とする。
50mm×50mmの発泡シート(厚みは、例えば3mm)を試験片とする。
乾燥状態の試験片の質量Aを測定する。
試験片を質量Aの40倍の評価液に37℃で30分間浸漬する。
評価液に30分間浸漬した後の試験片を評価液から取り出し、20秒間吊るした後、試験片の質量Bを測定する。
以下の式より、吸水量を求める。
吸水量=(質量B-質量A)/質量A
【0080】
<<保水率>>
発泡シートは、以下の方法によって測定される保水率が、50%超、又は、60%超であることが好ましい。
【0081】
(測定方法)
塩化ナトリウム8.4g及び塩化カリウム0.4gを蒸留水で希釈し、1Lの溶液としたものを評価液とする。
50mm×50mmの発泡シート(厚みは、例えば3mm)を試験片とする。
乾燥状態の試験片の質量Aを測定する。
試験片を質量Aの40倍の評価液に37℃で30分間浸漬する。
評価液に30分間浸漬した後の試験片を評価液から取り出し、20秒間吊るした後、試験片の質量Bを測定する。
20秒間吊るした後の試験片に40mmHgとなるように荷重をかける。
荷重付加後、2分経過したときの、試験片の質量Cを測定する。
以下の式より、保水率を求める。
保水率=(質量C-質量A)/(質量B-質量A)×100
【0082】
<<膨潤率>>
発泡シートは、以下の方法によって測定される膨潤率が、300%以下、250%以下、又は、200%以下であることが好ましい。
(測定方法)
塩化ナトリウム8.4g及び塩化カリウム0.4gを蒸留水で希釈し、1Lの溶液としたものを評価液とする。
乾燥時の試験片の寸法を測定し、体積Aを算出する。
試験片を、試験片の質量(前述した質量A)の40倍の評価液に37℃で30分間浸漬する。
評価液に30分間浸漬した後の試験片を評価液から取り出し、試験片の寸法を測定し、体積Bを算出する。
以下の式より、膨潤率を求める。
膨潤率=体積B/体積A×100
【0083】
<<<発泡シートの原料>>>
前述したように、発泡シートは、ウレタンプレポリマーを含む第1液と、水を含む第2液と、から製造される。前述したように、発泡シートの原料として、ウレタンプレポリマーや水以外の成分(その他の成分)が用いられてもよい。その場合、その他の成分は、第1液に含まれることが好ましい。
以下、それぞれについて説明する。
【0084】
<<第1液>>
第1液は、ウレタンプレポリマーを含む。ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることで得られる。別の表現によれば、ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物である。より具体的には、ウレタンプレポリマーは、通常、ポリオールとポリイソシアネートとをポリイソシアネートが過剰となるようにウレタン反応させて得られる、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーである。
【0085】
<ポリオール>
ウレタンプレポリマーの製造に用いられるポリオールは、特に限定されず、自由に選択することができる。
【0086】
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール等を挙げることができる。
【0087】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等、芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等、脂環族ジカルボン酸、例えばヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びヘキサヒドロイソフタル酸等、又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等、もしくは、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリプロピレングリコール等のポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン、メチルバレロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等を挙げることができる。
【0088】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られるものを挙げることができる。
【0089】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテルが挙げられる。また、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、上記の環状エーテルを重合させて得ることもできる。
【0090】
ポリエステルエーテルポリオールとしては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等、芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等、脂環族ジカルボン酸、例えばヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びヘキサヒドロイソフタル酸等、又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、ジエチレングリコール、もしくはプロピレンオキシド付加物等のグリコール等、又は、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるものを挙げることができる。
【0091】
ポリオールは、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0092】
ポリオールは、ジオール及び/又はトリオールであることが好ましい。
【0093】
得られる発泡シートの吸水性等を向上させたい場合、ポリオールとして、ランダム型ポリエーテルポリオールを用いる方法が挙げられる。より具体的には、ウレタンプレポリマーを構成する全ポリオール中、ランダム型ポリエーテルポリオールを、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は、90質量%以上含むことで、より吸水性等に優れた発泡シートが得られる。
【0094】
ランダム型ポリエーテルポリオールは、エチレンオキシドを含む。ここで、ランダム型ポリエーテルポリオールのランダム型とは、ランダム共重合体であることを示している。即ち、ランダム型ポリエーテルポリオールとは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドがランダム共重合しているポリエーテルポリオールを示す。なお、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドがブロック共重合しているポリエーテルポリオールはブロック型ポリエーテルポリオールと称するものとする。
【0095】
ランダム型ポリエーテルポリオールは、ランダム型ポリエーテルポリオール1分子に占めるエチレンオキシドの割合(以降、ランダム型ポリエーテルポリオールEO含有率と表現する場合がある)が、20.0質量%以上、25.0質量%以上、又は、30.0質量%以上であることが好ましい。
【0096】
ランダム型ポリエーテルポリオールは、ジオール化合物及びトリオール化合物を含むことが好ましい。
【0097】
ランダム型ポリエーテルポリオール全体の水酸基の平均官能基数は、特に限定されないが、2.0超3.0未満、又は、2.4以上2.7以下であることが好ましい。
【0098】
ポリオールの数平均分子量、200~5000、300~4500、又は、400~4000であること好ましい。
【0099】
なお、ウレタンプレポリマーの原料は、発明の効果を阻害しない範囲で、ポリオール以外のモノオールをアルコール成分として含んでもよい。
【0100】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネートは、特に限定されず、自由に選択することができる。
【0101】
ポリイソシアネートは、2官能であってもよいし、3官能以上であってもよい。
【0102】
2官能のポリイソシアネートとしては、例えば、
2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)、m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジアネート(2,4’-MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、水素添加MDI、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、等の芳香族系のもの、
シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式のもの、
ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のアルキレン系のもの等が挙げられる。
【0103】
3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、ポリメリックMDI、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナトメチルオクタン等が挙げられる。
【0104】
また、ポリイソシアネートは、これらの変性体、誘導体等を含むことができる。
【0105】
ポリイソシアネートは、単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0106】
ポリイソシアネートは、脂肪族イソシアネート含むことが好ましい。より具体的には、ウレタンプレポリマーを構成する全ポリイソシアネート中、脂肪族イソシアネートを、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は、90質量%以上含むことが好ましい。
【0107】
ポリイソシアネートの配合量は、ポリオールの水酸基の平均官能基数、及び、ウレタンプレポリマーのNCO%が所望の範囲となるように配合することができる。ポリイソシアネートの配合量としては、例えば、ポリオール及びポリイソシアネートの全配合量を100質量%とした場合に、10~40質量%、又は、20~35質量%とすることができる。
【0108】
<その他の成分>
その他の成分としては、ウレタンプレポリマー以外の樹脂成分や公知の添加剤が挙げられる。公知の添加剤としては、例えば、触媒触媒(例えば、アミン系触媒、有機金属系触媒等)、界面活性剤(整泡剤等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0109】
<<第2液>>
第2液は、水を含む。第2液に含まれる水が第1液に含まれるウレタンプレポリマーと反応することで炭酸ガスが発生し、その炭酸ガスによって発泡が行われる。
【0110】
第2液のpHは、7.0未満、6.8以下、6.5以下、6.3以下、又は、6.0以下であることが好ましい。第2液のpHの下限値は、特に限定されないが、例えば、5.0、又は、5.5である。第2液のpHをこのような範囲とすることで、ゲルタイムTGやクリームタイムTCを所望の範囲とし易い。第2液のpHは、市販のpH測定装置(HORIBA社製、ハンディpHメーター)を用いて計測された値である。
【0111】
なお、第2液のpHは、適宜のpH調整剤(例えば、リン酸ナトリウム塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等)を用いることで調整することができる。
【0112】
なお、第2液は、水以外の発泡剤を含んでいてもよい。
【0113】
<<<発泡シートの用途>>>
本開示に係る発泡シートの好ましい形態は、親水性のウレタンフォームである。発泡シートは、より具体的には、ワイプ材、育苗培地、生理用品、医療用部材(特に、創傷被覆材等)等の吸水用として好ましく使用可能である。
【実施例0114】
以下、実施例及び比較例により、発泡シートの製造方法及び発泡シートを具体的に説明するが、本発明は以下には限定されない。
【0115】
<<<<実施例1>>>>
図1に示される製造ラインを用いて発泡シートを製造した。
【0116】
<<<原料>>>
<<第1液>>
原料として、以下に示す24.3質量部のポリオールIと、24.3質量部のポリオールIIと、25.8質量部のポリエチレングリコールと、25.6質量部のポリイソシアネートと、第1液全量の20ppmとなる触媒と、を反応槽に計量し、55℃±5℃の温度範囲となるように加熱し、4時間反応させ、プレポリマーを含む組成物を製造し、第1液とした。プレポリマーの粘度を表1に示す。
<ポリオールI>
ランダム型ポリオール
エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドの共重合体
平均官能基数2
数平均分子量1000
EO含有量50質量%
水酸基価112.1mgKOH/g
<ポリオールII>
ランダム型ポリオール
エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドの共重合体
平均官能基数3
数平均分子量1500
EO含有量70質量%
水酸基価112.1mgKOH/g
<PEG100>
ポリエチレングリコール
平均官能基数2
数平均分子量1000
EO含有量100質量%
水酸基価113mgKOH/g
<ポリイソシアネート>
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)
<触媒>
TIB Chemical社製 KAT 716LA
【0117】
<<第2液>>
第2液として、水を用いた。なお、pH調整剤を微量添加し、表1に示す数値となるように第2液のpHを調整した。
【0118】
<<<吐出工程>>>
表1に示す配合比率にて第1液と第2液とを撹拌及び混合し、組成物を形成した。
次に、シリンダ状の吐出部を1つのみ用い、吐出部の傾斜角度を10°として、吐出部から、アンダーキャリア上に組成物を吐出した。ライン速度、組成物の吐出量、組成物のクリームタイム及びゲルタイムは表1に示す通りである。アンダーキャリアとして、離型紙を用いた。
【0119】
<<<調整工程>>>
表1に示す成形品の厚さとなるように、上下に並ぶロール部材の間にアンダーキャリア上の組成物を通過させ、組成物の厚み及び幅を調整した。ロール部材の間隙の幅は0.25mmであった。なお、組成物をロール部材間に通過させる前に、組成物の上にトップキャリアを配した。トップキャリアとして、離型紙を用いた。
【0120】
<<<乾燥工程>>>
調整工程を経た後の組成物を乾燥炉に送りこみ、80-100℃で加熱乾燥させ、乾燥後にトップキャリアを除去し、発泡シートを製造した。得られた発泡シート(成形品)の厚み及び密度を表1に示す。
【0121】
なお、組成物が、吐出された位置から乾燥炉の出口まで移動するのに要する総時間TTは、247.5秒であった。
【0122】
<<<<実施例2-3、比較例1、比較例2>>>>
製造条件を表1に示したものに変更した以外は実施例1と同様に、実施例2-3、比較例1、比較例2に係る発泡シートを製造した。
【0123】
<<<<実施例4-6>>>>
組成物の吐出方法及び吐出量を表1に示したものに変更した以外は実施例1と同様に、実施例4-6に係る発泡シートを製造した。具体的には、実施例4では間隔を空けた2点の吐出部を用い、実施例5では間隔を空けた2点の吐出部を用い、実施例6ではダイ状の幅広の吐出部を用いた。実施例4及び5については、全ての吐出部の合計の吐出量を表1に示した。
【0124】
<<<<評価>>>>
得られた発泡体シート(成形品)について、成形品の幅、成形品の外観、吸水速度、吸水量、保水率、膨潤率を評価した。なお、成形品の密度、吸水速度、吸水量、保水率、膨潤率の測定方法は、前述の通りである。
【0125】
また、成形品の幅、成形品の外観、吸水量、保水率について、以下の基準に基づき点数付けして、それらの点数を合計して総合判定を行った。
【0126】
<<<幅>>>
(評価基準)
1点:500mm未満
2点:500mm以上
【0127】
<<<吸水量>>>
(評価基準)
0点:15g/g以下(又は評価できず)
1点:15g/g超
【0128】
<<<保水率>>>
(評価基準)
0点:50%以下(又は評価できず)
1点:50%超
【0129】
<<<外観>>>
発泡シートの表面を確認した。
(評価基準)
0点:セルが不揃い、抜けがある、硬化不良
1点:発泡ムラなく、セルが均一
【0130】
<<<総合評価>>>
×:合計点2点以下
△:合計点3~4点
○:合計点5点
【0131】