(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152019
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ワーク配置方法及び移送装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065909
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】山中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平河 淳也
(72)【発明者】
【氏名】房村 隆斗
(72)【発明者】
【氏名】酒田 昂典
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707BS12
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EV23
3C707KS33
3C707KX06
3C707LV04
3C707LV05
(57)【要約】
【課題】 移送装置を用いてワークを工作機械に適切に配置するようにして、ワークや工作機械の損傷を防ぎつつ、自働化による加工作業の効率向上を図れ、且つ工作機械自体の大型化やそれに伴うコスト増を抑えられる、ワーク配置方法を提供する。
【解決手段】 ワーク90を保持した移送装置1でワーク90をワーク固定部71の基準面72aに近付け、ワーク90が基準面72aに接すると、基準面72aに徐々にワーク90を沿わせて面接触状態とする。これにより、ワーク90を基準面72aに対し手作業と同様に慎重に近付けて配置できることとなり、ワーク90の破損を抑えられる。そして、移送装置1で配置の自働化を無理なく実現できることで、工作機械70側の構造変更が不要となり、工作機械70の使用に係るコストを抑えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械における加工対象のワークを固定するワーク固定部に対し、所定の移送装置でワークを保持して動かし、ワークをワーク固定部に配置する、ワーク配置方法において、
前記移送装置で、前記ワーク固定部に設けられるワーク位置決め用の基準面に、当該基準面に対応するワークの面を面接触させ、ワークをワーク固定部に位置決めした配置状態とする配置工程を少なくとも含み、
前記移送装置が、保持するワークに生じた力及びモーメントを検出可能な力覚センサを有し、
前記ワークが、加工対象となる面及びワーク固定部に接する面をそれぞれ一又は複数有する立体であり、
前記配置工程で、前記移送装置により、ワークにおける一の面の少なくとも一部を前記ワーク固定部の基準面に接触させてから、前記力覚センサの検出結果に基づいて、ワークの一部と前記基準面との接触状態を維持しつつ、ワークの前記一の面全体が前記基準面に接するまでワークの位置及び向きを調整することを
特徴とするワーク配置方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載のワーク配置方法において、
前記ワーク固定部に、ワーク位置決め用の基準面が複数設けられ、
前記配置工程が、各基準面ごとに順次実行され、先に面接触状態とされた基準面とワークの対応する面との接触状態を維持しつつ、全ての基準面とワークの対応する面とを面接触させることを
特徴とするワーク配置方法。
【請求項3】
前記請求項1に記載のワーク配置方法において、
前記配置工程が、
ワークにおける一の面の一部が前記ワーク固定部の一の基準面に接触するのに伴って、ワークに生じた力のモーメントを力覚センサで検出すると、前記移送装置で前記モーメントと同じ向きのトルクを発生させてワークを傾動させると共に、ワークの一部の前記一の基準面への接触を維持するようにワークを前記一の基準面に近付ける作動を移送装置に継続させ、力覚センサで検出される力のモーメントが0になると、移送装置のワークを動かす作動を停止させる一連の手順を、
力のモーメントが0になった瞬間から実際に停止するまでの移送装置及びワークの動きにより、ワークの別の一部のみが前記一の基準面に接触して、ワークに新たに生じた、前とは異なる向きの力のモーメントを力覚センサで検出する状態となる度に繰り返し、
配置工程開始から所定時間が経過すると、工程終了とされることを
特徴とするワーク配置方法。
【請求項4】
前記請求項1に記載のワーク配置方法において、
前記移送装置が、複数自由度のロボットアームと、ロボットアーム先端側にワークを保持可能に設けられるハンド部とを有し、
前記力覚センサが、ロボットアーム先端とハンド部との間に介設されることを
特徴とするワーク配置方法。
【請求項5】
前記請求項4に記載のワーク配置方法において、
前記移送装置のハンド部が、
前記力覚センサの中心軸方向と平行となる向きに突出させて設けられ、力覚センサの中心軸方向と直角となる向きに移動してワークを把持可能とする少なくとも一対の指部を有し、
前記移送装置が、ハンド部で、ワークの重心位置が力覚センサの中心軸方向に位置するようにワークを把持することを
特徴とするワーク配置方法。
【請求項6】
前記請求項5に記載のワーク配置方法において、
前記移送装置のハンド部が、
前記力覚センサの中心軸方向と平行となる向きに進退可能に設けられ、前記指部で把持された状態のワークに接触可能とされる第一補助支持部と、
力覚センサの中心軸方向と直角で且つ前記指部の移動方向とも直角となる向きに進退可能に設けられ、前記指部で把持された状態のワークに接触可能とされる第二補助支持部とをさらに有し、
前記ハンド部が、ワークを前記指部で把持すると共に、前記第一補助支持部及び第二補助支持部をワークに接触させて、ワークを保持状態とすることを
特徴とするワーク配置方法。
【請求項7】
前記請求項1に記載のワーク配置方法において、
前記工作機械が、研削対象のワークを固定可能なテーブルを前記ワーク固定部として有する研削盤であり、
前記基準面の一つが、テーブルの上面とされ、
前記基準面の他の一つが、テーブル上面に固定された治具における、テーブル上面と直角をなす側面とされることを
特徴とするワーク配置方法。
【請求項8】
工作機械における加工対象のワークを固定するワーク固定部に対し、ワークを保持して動かし、ワークをワーク固定部に配置する、ワークの移送装置において、
前記ワークに生じた力やモーメントを検出可能な力覚センサを備え、
前記ワークが、加工対象となる面及びワーク固定部に接する面をそれぞれ一又は複数有する立体とされ、
前記ワーク固定部に設けられるワーク位置決め用の基準面と、ワークにおける一の面の少なくとも一部とを接触状態に維持しつつ、前記力覚センサの検出結果に基づいて、前記ワークの前記一の面全体が前記基準面に接するようにワークの位置及び向きを調整して、ワークをワーク固定部に位置決めした配置状態とすることを
特徴とする移送装置。
【請求項9】
前記請求項8に記載の移送装置において、
複数自由度のロボットアームと、ロボットアーム先端側にワークを保持可能に設けられるハンド部とを有し、
前記力覚センサが、ロボットアーム先端とハンド部との間に介設されることを
特徴とする移送装置。
【請求項10】
前記請求項9に記載の移送装置において、
前記ハンド部が、前記力覚センサの中心軸方向と平行となる向きに突出させて設けられ、力覚センサの中心軸方向と直角となる向きに移動してワークを把持可能とする少なくとも一対の指部を有し、
前記ハンド部で、ワークの重心位置が力覚センサの中心軸方向に位置するようにワークを把持することを
特徴とする移送装置。
【請求項11】
前記請求項10に記載の移送装置において、
前記ハンド部が、
前記力覚センサの中心軸方向と平行となる向きに進退可能に設けられ、前記指部で把持された状態のワークに接触可能とされる第一補助支持部と、
前記力覚センサの中心軸方向と直角で且つ前記指部の移動方向とも直角となる向きに進退可能に設けられ、前記指部で把持された状態のワークに接触可能とされる第二補助支持部とをさらに有し、
前記ハンド部が、ワークを前記指部で把持すると共に、前記第一補助支持部及び第二補助支持部をワークに接触させて、ワークを保持状態とすることを
特徴とする移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械にワークを配置するワーク配置方法に関し、特にワークを工作機械のワーク固定部における基準面に沿わせて配置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面研削盤は、ワークの外面を研削し、高精度の平面を形成できる特長を有している。
平面研削盤を用いた金属ワークの精密加工では、直方体等のワークを研削盤のテーブル上の適切な位置に熟練技術者が経験に基づいて載置し固定する作業を経て、加工が行われていた。
こうした平面研削盤における加工作業の効率化のために、手作業で行われていたワークのテーブル上への配置(セット)について、自働化が求められている。
【0003】
自働化の手法として、近年、種々の提案がなされている。
例えば、ワークを支えるテーブルを回転可能とすると共に、テーブルにおけるワークの配置位置を複数設定し、そのうち砥石から離れた箇所を未加工のワークの搬入位置と加工済みのワークの搬出位置にそれぞれ用いる。そして、テーブルを回転させると、搬入位置にあった未加工のワークが加工位置に達すると共に、加工位置にあった加工済みのワークが搬出位置に達するようにする。
【0004】
これにより、砥石によるワークの加工中に、テーブルにおける搬入位置に未加工のワークを所定の搬送手段で移送、載置できると共に、テーブルにおける搬出位置から加工済みのワークを所定の搬送手段で搬出できる。ワークの加工終了後、テーブルを回転させて、搬入位置の未加工のワークを加工位置に新たに配置すると共に、加工済みのワークを加工位置から搬出位置に移動させることとなる。こうして、ワークの加工と並行して自働的にワークのテーブルへの着脱が行え、手作業に頼っていたワークのテーブルへのセットの自働化が図れる。
こうした従来の平面研削盤においてワークをテーブル上に自働的に配置固定する手法の一例としては、特開平2-185357号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の平面研削盤におけるワーク配置の自働化の手法は、前記特許文献に例示される方法が典型的なものとなっている。
特許文献に示される従来の平面研削盤において、ワークを固定されるテーブルは、定角回転するインデックステーブル及びワークを固定されるロータリーテーブルに置き換えられる。そのため、それ以前のタイプのテーブルを有する平面研削盤に比べて構造が複雑化すると共に、大型化してコスト高となる。
【0007】
また、特許文献によれば、ワークをテーブル上に配置する作業は、ワークローダやロボットで行われている。この場合、熟練作業者の手作業ほど慎重さをもってテーブル上に配置されるわけではない。そのため、ワークがテーブル上に置かれる際にワークがテーブルに対し傾いていると、ワークの一部が浮き、ワークが解放されるとその一部が落下する状態となって、ワークがテーブルに接する際に衝撃が生じ、ワークやテーブルに損傷が発生するおそれがある。
【0008】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、移送装置を用いてワークを工作機械に適切に配置して、ワークの損傷を防ぐと共に、自働化による作業効率向上を図れる、ワーク配置方法、及び、これに用いる移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の開示に係るワーク配置方法は、工作機械における加工対象のワークを固定するワーク固定部に対し、所定の移送装置でワークを保持して動かし、ワークをワーク固定部に配置する、ワーク配置方法において、前記移送装置で、前記ワーク固定部に設けられるワーク位置決め用の基準面に、当該基準面に対応するワークの面を面接触させ、ワークをワーク固定部に位置決めした配置状態とする配置工程を少なくとも含み、前記移送装置が、保持するワークに生じた力及びモーメントを検出可能な力覚センサを有し、前記ワークが、加工対象となる面及びワーク固定部に接する面をそれぞれ一又は複数有する立体であり、前記配置工程で、前記移送装置により、ワークにおける一の面の少なくとも一部を前記ワーク固定部の基準面に接触させてから、前記力覚センサの検出結果に基づいて、ワークの一部と前記基準面との接触状態を維持しつつ、ワークの前記一の面全体が前記基準面に接するまでワークの位置及び向きを調整するものである。
【0010】
このように本発明の開示によれば、ワークを保持した移送装置でワークをワーク固定部の基準面に近付け、ワークが基準面に接すると、基準面に徐々にワークを沿わせて面接触状態とする。これにより、ワークを基準面に対し手作業と同様に慎重に近付けて配置できることとなり、ワークや工作機械の破損を抑えられる。そして、移送装置で配置の自働化を無理なく実現できることで、工作機械側の構造変更が不要となり、工作機械自体の複雑化、大型化を回避でき、工作機械の導入や使用に係るコストを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法を適用する工作機械の正面図であり、
図1(b)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法に用いる移送装置の斜視図である。
【
図2】
図2(a)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるハンド部のワーク位置到達直前状態説明図であり、
図2(b)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるハンド部の第二補助支持部のワークへの接触状態説明図である。
【
図3】
図3(a)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるハンド部の指部によるワーク把持状態説明図であり、
図3(b)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるハンド部の第一補助支持部のワークへの接触過程説明図である。
【
図4】
図4(a)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるワークと基準面との接触初期状態のz軸方向視説明図であり、
図4(b)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるワークの基準面への面接触状態のz軸方向視説明図であり、
図4(c)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるワークの過傾動状態のz軸方向視説明図である。
【
図5】
図5(a)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるワークと基準面との接触初期状態のx軸方向視説明図であり、
図5(b)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるワークの基準面への面接触状態のx軸方向視説明図であり、
図5(c)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるワークの過傾動状態のx軸方向視説明図である。
【
図6】
図6(a)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるハンド部の第一補助支持部のワークからの離隔過程説明図であり、
図6(b)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるハンド部の第二補助支持部のワークからの離隔過程説明図である。
【
図7】
図7(a)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるハンド部の指部によるワーク把持解除状態説明図であり、
図7(b)は本発明の一実施形態に係るワーク配置方法におけるハンド部のワーク位置からの離脱状態説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るワーク配置方法における配置工程のフローチャートである。
【
図9】
図9(a)は本発明の他の実施形態に係るワーク配置方法におけるワークの基準面への接近状態のz軸方向視説明図であり、
図9(b)は本発明の他の実施形態に係るワーク配置方法におけるワークと基準面との接触初期状態のz軸方向視説明図であり、
図9(c)は本発明の他の実施形態に係るワーク配置方法におけるワークの基準面への面接触状態のz軸方向視説明図である。
【
図10】
図10(a)は本発明の他の実施形態に係るワーク配置方法におけるワークの基準面への接近状態のy軸方向視説明図であり、
図10(b)は本発明の他の実施形態に係るワーク配置方法におけるワークと基準面との接触初期状態のy軸方向視説明図であり、
図10(c)は本発明の他の実施形態に係るワーク配置方法におけるワークの基準面への面接触状態のy軸方向視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るワーク配置方法を
図1~
図8に基づいて説明する。本実施形態においては、工作機械としての平面研削盤に対しワークを配置する方法の例について説明する。なお、
図1においては、後述する治具73の図示を省略している。
【0013】
各図において本実施形態に係るワーク配置方法は、工作機械70における加工対象のワーク90を固定するワーク固定部71に対し、移送装置1でワーク90を保持して動かし、ワーク90をワーク固定部71に配置するものである。このワーク配置方法における、ワーク90をワーク固定部71に配置する工程(配置工程)では、移送装置1により、ワーク固定部71に設けられるワーク位置決め用の基準面72a、73aにワーク90の面を面接触させる。これにより、ワーク90をワーク固定部71に位置決めした配置状態が得られることとなる。
【0014】
平面研削盤である工作機械70は、研削対象のワーク90をマグネットチャック72により固定可能なテーブルを、ワーク固定部71として有する。
ワーク固定部71には、ワーク位置決め用の基準面が複数設けられる。そのうちの一つの基準面72aは、テーブルの上面(マグネットチャック72の上面)である。
【0015】
また、ワーク固定部71としてのテーブル上面(マグネットチャック72の上面)に固定された治具73における、テーブル上面と直角をなす側面も、他の基準面73aとされる。配置工程では、これら基準面72a、73aにそれぞれ対応するワーク90の各面を面接触させることとなる。
【0016】
本実施形態に係るワーク配置方法で用いる移送装置1は、ロボットアーム10と、力覚センサ20と、ハンド部30と、制御部40とを備える構成である。
ロボットアーム10は、複数の関節を有し、ハンド部30及び力覚センサ20のある先端部を少なくとも6自由度(x軸、y軸、z軸の3軸方向、及び、x軸周り、y軸周り、z軸周りの3回転方向)で位置及び向き調整可能とされる。このロボットアーム10は、6以上の複数自由度を有する公知の垂直多関節ロボット装置であり、詳細な説明を省略する。
【0017】
ロボットアーム10は、制御部40による制御に基づいて作動し、先端部のハンド部30で保持したワーク90を工作機械70におけるワーク固定部71の基準面72a、73aに沿うように配置する配置工程を実行するものである。
なお、ロボットアームは、ワークを基準面に沿わせた状態に動かすのに必要な自由度を有しているものであれば、より自由度の少ない装置であってもかまわない。
【0018】
力覚センサ20は、ロボットアーム10先端とハンド部30との間に介設され、ハンド部30で保持するワーク90に生じた力及びモーメントを検出可能とされるものである。
力覚センサ20は、一方の端面にロボットアーム10先端への取付機構を有し、この一方の端面側でロボットアーム10先端に取り付けられる。一方、力覚センサ20は、一方の端面の反対側となる他方の端面にハンド部30の取付機構を有し、この他方の端面側にハンド部30を取り付けられる。
【0019】
力覚センサ20は、一方の端面側に対して他方の端面側に相対的に加わる、直交3軸(x軸、y軸、z軸)方向の力、及び直交3軸周りのモーメントを検出できる6軸力覚センサである。力覚センサ20における直交3軸方向の力、及び直交3軸周りのモーメントを検出できる仕組みについては、公知の力覚センサ(6軸力覚センサ)と同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0020】
ハンド部30は、力覚センサ20の他方の端面側に取り付けられることで、ロボットアーム10先端側に力覚センサ20を介して設けられ、ワーク90を保持可能とされるものである。
ハンド部30は、力覚センサ20の中心軸方向(ロボットアーム10先端部の延長方向)と平行となる向きに突出させて設けられ、力覚センサ20の中心軸方向と直角となる向きに移動してワークを把持可能とする少なくとも一対の指部31を有する。
【0021】
指部31で把持する機構は、公知のグリッパタイプのロボットハンドと同様のものであり、詳細な説明を省略する。
ハンド部30では、ワーク90の重心位置が力覚センサ20の中心軸方向に位置するように、ワーク90に対し指部31を位置させ、ワーク90を把持することとなる。
ワーク90の側面に対する指部31の当接位置は、指部31の上下方向の中心位置と、ワーク90側面の上下方向の中心位置とが一致するように調整して、指部31による把持がワーク90の重心位置を中心として安定的になされるようにすることが望ましい。
【0022】
さらに、ハンド部30は、指部31で把持された状態のワーク90にそれぞれ接触可能とされる、第一補助支持部32と、第二補助支持部33とを有する。
第一補助支持部32は、力覚センサ20の中心軸方向と平行となる向きに進退可能としてハンド部30に設けられ、指部31で把持された状態のワーク90のうち、力覚センサ20寄りに位置する面に、先端部を接触可能とされるものである。
【0023】
第二補助支持部33は、力覚センサ20の中心軸方向と直角で且つ指部31の移動方向とも直角となる向きに進退可能としてハンド部30に設けられるものである。第二補助支持部33は、指部31で把持された状態のワーク90のうち、指部31と第一補助支持部32に接触しない面であって、且つ基準面に接触させる対象とならない所定の面に、先端部を接触可能とされる。
【0024】
ハンド部30は、ワーク90を指部31で把持する際には、第一補助支持部32及び第二補助支持部33をワーク90に接触させて、ワーク90を四方向から支えて保持状態とする。
【0025】
制御部40は、ロボットアーム10やハンド部30における各アクチュエータ(図示を省略)と接続され、ロボットアーム10やハンド部30の作動を制御するものである。
また、制御部40は、力覚センサ20と接続され、力覚センサ20における力やモーメントの検出に伴って力覚センサ20から出力される信号を受け取り、信号から力やモーメントを把握して、それらをロボットアーム10やハンド部30の制御に利用する。
【0026】
制御部40は、配置工程に係る制御として、ロボットアーム10を作動させ、ワーク90における一の面の一部をワーク固定部71の基準面に接触させる。さらに、制御部40は、力覚センサ20の検出結果に基づいて、ロボットアーム10を作動させ、ワーク90の一部と基準面との接触状態を維持しつつ、ワーク90の一の面全体が基準面に接するまでワーク90の位置及び向きを調整する。
【0027】
この場合、制御部40は、力覚センサ20から受け取った信号から、ワーク90の一部が基準面上の一部に接触したか否かを判定する。具体的には、ワーク90と基準面との接触により、ワーク90に加わる力のモーメントが力覚センサ20で検出されることで、制御部40はワーク90と基準面との接触を認識する。
【0028】
制御部40は、力覚センサ20でモーメントが検出されると、このモーメントと同じ向きのトルクをワーク90に付加するようロボットアーム10を作動させ、一部での接触を維持したままワーク90の面を基準面に近付けていく。
そして、制御部40は、力覚センサ20で検出されるモーメントが0になったらロボットアーム10の作動を停止させる指令を出す。
【0029】
制御部40は、仮にロボットアーム10が停止指令後に慣性で動いて、力覚センサ20でそれまでとは逆向きのモーメントが検出された場合は、この検出したモーメントと同じ向きのトルクをワーク90に付加するようロボットアーム10を作動させる。
【0030】
制御部40はこうした手順をロボットアーム10に繰り返し実行させて、ワーク90を基準面に面接触するように近付けていく。最終的に力覚センサ20で検出されるモーメントが0となった状態のまま、工程開始から所定期間経過したら、制御部40はワーク90が基準面に面接触した状態が得られたと判断し、ロボットアーム10の作動を停止させる。
【0031】
移送装置1は、配置工程に先立って、所定の供給位置に置かれたワーク90をハンド部30で把持し、保持した状態で、ロボットアーム10を動かし、工作機械70のワーク固定部71上の、基準面72a、73a近傍の空間まで移動させる搬入工程を実行する。
【0032】
なお、搬入工程最初期の、ハンド部30によるワーク90の保持は、以下の手順で行われる。まず、ロボットアーム10を作動させてハンド部30の位置及び向きを調整し、供給位置に置かれたワーク90を、ハンド部30の一対の指部31間に位置させると共に、ハンド部30の第二補助支持部33とワーク90の所定面とを接触させるようにする(
図2(b)参照)。この時、第二補助支持部33の先端部の位置は固定されておらず、仮にワーク90に対し第二補助支持部33を近付けるようにハンド部30を動かした場合には、第二補助支持部33の先端部がワーク90に接しつつ後退して、ハンド部30とワーク90との間の相対位置関係の変化を許容する。
【0033】
次に、ハンド部30の全体の位置を保持した状態で、ハンド部30の一対の指部31を互いに近付く向きに動かし、指部31でワーク90を把持する(
図3(a)参照)。指部31による把持完了後、第二補助支持部33をワーク90の所定面と接触した状態で固定する。
【0034】
さらに、第一補助支持部32を動かして、先端部をワーク90の力覚センサ20寄りに位置する面に接触させ(
図3(b)参照)、接触状態で第一補助支持部32を固定すると、ハンド部30によるワーク90の保持は完了となる。
【0035】
この搬入工程は、制御部40がロボットアーム10及びハンド部30にあらかじめ教示した一連の手順に沿った作動を実行させるものであり、その実行に係る制御は、教示された動きを再現実行させる一般的なロボット制御の手法に基づくものであり、詳細な説明を省略する。
【0036】
次に、本実施形態に係るワーク配置方法における配置工程について説明する。
前提として、あらかじめ、移送装置1は搬入工程を実行している。すなわち、移送装置1は、所定の供給位置に置かれたワーク90をハンド部30で保持した状態で、ロボットアーム10を動かし、工作機械70のワーク固定部71上の、基準面73a近傍の空間までワーク90を移動させているものとする。
【0037】
そして、ハンド部30に対し、工作機械70上の治具73の側面である基準面73aが、力覚センサ20の中心軸方向に位置する状態とされ、ワーク90と基準面73aが対向する位置関係にあるものとする。
【0038】
配置工程としては、まず、ワーク90について、治具73の側面の基準面73aへの位置決めを行う。移送装置1がロボットアーム10先端部のハンド部30で保持したワーク90を、力覚センサ20の中心軸方向に位置するワーク固定部71の基準面73aに近付けていき、ワーク90における一の面の一部を基準面73aに接触させる(
図4(a)参照)。
【0039】
制御部40は、力覚センサ20から受け取った信号から、ワーク90の一部が基準面73a上の一部に接触したか否かを判定する。具体的には、ワーク90と基準面73aとの接触により、基準面73aと平行な軸として空間に定義されたz軸周りのモーメントがワーク90に加わる状態となる。このz軸周りのモーメントが力覚センサ20で検出されることで、制御部40がワーク90と基準面73aとの接触を認識する。
【0040】
制御部40は、ワーク90と基準面73aとの接触を認識したら、ロボットアーム10を動かし、検出されたモーメントと同じ向きのトルクが、ハンド部30を介してワーク90に加わるようにする。これによりワーク90の一の面の基準面73aに対する傾きが小さくなる。同時に、ロボットアーム10の作動状態を調整して、ワーク90の一部と基準面73aとの接触が維持されるよう、ワーク90を基準面73a側に所定の力で押す。なお、この押す力は、ワーク90及び治具73が互いの接触で損傷しない程度とされる。
トルクと力を加えられたワーク90は、基準面73aとの接触箇所を支点として基準面73aに対し相対的に傾動する状態となる。
【0041】
ロボットアーム10の作動により、ワーク90における一の面に含まれる所定の辺全体、又は、一の面全体、が基準面73aに接触する(
図4(b)参照)。そして、ワーク90に加わるモーメントが0となり、力覚センサ20でのモーメント検出が0となると、制御部40はロボットアーム10の作動停止指令を出す。
【0042】
しかし、通常は、ロボットアーム10は作動停止指令と同時に停止することはできず、制御部40がロボットアーム10の作動を停止させる指令を出してからロボットアーム10が実際に作動停止するまで、ロボットアーム10は慣性で動く。こうしてロボットアーム10が停止するまで動くことで、ワーク90にトルクが加わる状態がわずかな時間だけ継続する。
【0043】
このため、ワーク90の辺又は面が基準面73aに接した状態からそれまでと同じ向きにわずかに傾動して、基準面73aに対し当初とは異なる向きに傾く。そして、ワーク90は基準面73aと当初接触していた箇所と異なる他部分で接触し、それ以外では再び基準面73aから離れた状態となって停止する(
図4(c)参照)。こうしたワーク90の他部と基準面73aとの接触に伴い、ワーク90に基準面73aとの初期接触時とは逆向きのz軸周りのモーメントが加わる状態となり、このモーメントが力覚センサ20で検出される。
【0044】
力覚センサ20で逆向きのモーメントを検出した場合は、制御部40は、検出されたモーメントに対応して、ロボットアーム10を動かし、検出されたモーメントと同じ向きのトルクがワーク90に加わるようにする。トルクと力を加えられたワーク90は、あらためて基準面73aとの接触箇所を支点として基準面73aに対し相対的に傾動する状態となる。
【0045】
こうした手順を繰り返して、ワーク90の一部と基準面73aとの接触状態を維持しつつ、ワーク90の一の面全体が基準面73aに接した状態が継続するまで、ワーク90の位置及び向きが調整される。
具体的には、力覚センサ20でのz軸周りのモーメント検出が0となった状態が継続する中、配置工程開始から所定期間経過したら、制御部40はワーク90の一の面全体が基準面73aに接した状態が得られたと判断し、基準面73aに対しての配置工程を終了する。
【0046】
ワーク90と基準面73aとの面接触状態が得られたら、次の配置工程として、ワーク90について、テーブル上面(マグネットチャック72の上面)の基準面72aへの位置決めを行う。
この場合も、基準面73aへの位置決めの場合と同様、移送装置1がロボットアーム10先端部のハンド部30で保持したワーク90を基準面72aに近付けていき、ワーク90における他の面の一部を基準面72aに接触させる(
図5(a)参照)。
【0047】
制御部40は、力覚センサ20から受け取った信号から、ワーク90の一部が基準面72a上の一部に接触したか否かを判定する。具体的には、ワーク90と基準面72aとの接触により、基準面72aと平行な軸として空間に定義されたx軸周りのモーメントがワーク90に加わる状態となる。このx軸周りのモーメントが力覚センサ20で検出されることで、制御部40がワーク90と基準面72aとの接触を認識する。
【0048】
制御部40は、ワーク90と基準面72aとの接触を認識したら、ロボットアーム10を動かし、検出されたモーメントと同じ向きのトルクが、ハンド部30を介してワーク90に加わるようにする。これによりワーク90の他の面の基準面72aに対する傾きが小さくなる。同時に、ロボットアーム10の作動状態を調整して、ワーク90の一部と基準面72aとの接触が維持されるよう、ワーク90を基準面72a側に所定の力で押す。なお、この押す力も、ワーク90及びテーブル(マグネットチャック72)が互いの接触で損傷しない程度とされる。
トルクと力を加えられたワーク90は、基準面72aとの接触箇所を支点として基準面72aに対し相対的に傾動する状態となる。
【0049】
ロボットアーム10の作動により、ワーク90における他の面に含まれる所定の辺全体、又は、他の面全体、が基準面72aに接触する(
図5(b)参照)。そして、ワーク90に加わるモーメントが0となり、力覚センサ20でのモーメント検出が0となると、制御部40はロボットアーム10の作動停止指令を出す。
【0050】
この場合も、制御部40がロボットアーム10の作動停止指令を出してからロボットアーム10が実際に作動停止するまで、ロボットアーム10は慣性で動くことがある。ロボットアーム10がこうしてわずかな時間だけ動く間、ワーク90にトルクが加わる状態が継続する。
【0051】
これに伴い、ワーク90の辺又は面が基準面72aに接した状態からそれまでと同じ向きにわずかに傾動して、基準面72aに対し当初とは異なる向きに傾く。そして、ワーク90は基準面72aと当初接触していた箇所と異なる他部分で接触し、それ以外では再び基準面72aから離れた状態となって停止する(
図5(c)参照)。こうしたワーク90の他部と基準面72aとの接触に伴い、ワーク90に基準面72aとの初期接触時とは逆向きのx軸周りのモーメントが加わる状態となり、このモーメントが力覚センサ20で検出される。
【0052】
力覚センサ20で逆向きのモーメントを検出した場合は、制御部40は、検出されたモーメントに対応して、ロボットアーム10を動かし、検出されたモーメントと同じ向きのトルクがワーク90に加わるようにする。トルクと力を加えられたワーク90は、あらためて基準面72aとの接触箇所を支点として基準面72aに対し相対的に傾動する状態となる。
【0053】
こうした手順を繰り返して、ワーク90の一部と基準面72aとの接触状態を維持しつつ、ワーク90の他の面全体が基準面72aに接した状態が継続するまで、ワーク90の位置及び向きが調整される。そして、力覚センサ20でのx軸周りのモーメント検出が0となった状態が継続する中、今回の配置工程開始から所定期間経過すると、制御部40はワーク90の他の面全体が基準面72aに接したと判断し、基準面72aに対しての配置工程を終了する。
【0054】
続いて、こうした配置工程における各処理について、
図8に示すフローチャートを用いて説明する。
配置工程では、まず、制御部40がロボットアーム10の作動を開始させ、ハンド部30で保持したワーク90を基準面に近付けていく(ステップS001)。
【0055】
ワーク90の一部が基準面に接触すると、ワーク90に加わった力のモーメントが力覚センサ20で検出される仕組みとなっており、制御部40は、力覚センサ20での検出状況を監視している。制御部40は、力覚センサ20で新たにモーメントが検出されたか否か、すなわち、ワーク90の一部が基準面に接触したか否かを判定する(ステップS002)。ここで、力覚センサ20で力のモーメントが検出され、制御部40がワーク90の一部と基準面とが接触したと判定した場合、制御部40は、ロボットアーム10を動かし、検出されたモーメントと同じ向きのトルクをワーク90に加える(ステップS003)。
一方、力覚センサ20で力のモーメントが検出されておらず、制御部40がワーク90の一部と基準面とが接触していないと判定した場合、ステップS002に戻って処理を繰り返す。
【0056】
ワーク90にトルクが加わることで、ワーク90は、基準面との接触箇所を支点として基準面に対し相対的に傾動する状態となり、ワーク90の基準面に対する傾きは小さくなっていく。そして、基準面に対応するワーク90の面全体、又はこの面に含まれる所定の辺全体、が基準面に接触すると、力覚センサ20で検出されるモーメントが0となる。これに基づき、制御部40で力覚センサ20の検出状況を継続監視し、力覚センサ20で検出されるモーメントが0に到ったか否か、すなわち、ワーク90が基準面に対し面接触又は線接触したか否かを判定する(ステップS004)。
【0057】
ステップS004で、力覚センサ20で検出されるモーメントが0となり、制御部40でワーク90が基準面と面接触又は線接触したと判定した場合、制御部40は、ロボットアーム10に作動停止を指令する。この指令で、ロボットアーム10の作動とそれに伴うワーク90の動きを止めるようにする(ステップS005)。
【0058】
一方、ステップS004で、力覚センサ20で検出されるモーメントが0に到っておらず、制御部40でワーク90が未だ基準面と面接触又は線接触していないと判定した場合、ステップS003に戻って以降の処理を繰り返す。
【0059】
ステップS005で、制御部40がロボットアーム10の作動停止を指令しても、通常、ロボットアーム10は慣性で動き続けようとするため、指令と同時に停止させることは困難である。制御部40が作動停止の指令を出してからロボットアーム10が実際に作動停止するまで、仮にロボットアーム10が動き続けた場合、ワーク90にトルクが加わる状態も継続することとなる。
【0060】
こうしてワーク90に継続してトルクが加わると、ワーク90はその面又は辺が基準面に接した状態から、さらに傾動してから停止する。この場合、停止時点では、ワーク90は基準面に対し当初とは異なる向きに傾くと共に、基準面と当初接触していた一部とは異なる他部で基準面に接し、それ以外では再び基準面から離れた状態となる。このような停止状態では、ワーク90の他部のみで基準面との接触が生じていることに伴い、ワーク90と基準面との当初の接触時と同様に、ワーク90に加わった力のモーメントが力覚センサ20で検出される。ただし、この状態で検出されるモーメントの向きは、ワーク90と基準面との当初の接触時に検出されるモーメントの向きとは逆向きとなる。
【0061】
一方、例えばトルクがワーク90に加えられ始めた直後に、力覚センサ20で検出されるモーメントが0となる場合などは、ロボットアーム10のさらに動き続けようとする慣性力は極めて小さくなる。このようにロボットアーム10の慣性力が小さい場合には、制御部40がロボットアーム10の作動停止を指令してから間を置かずに停止状態となり、ワーク90が基準面と面接触又は線接触した状態をそのまま維持できる。
【0062】
このような作動停止指令後のロボットアーム10及びワーク90の挙動に基づき、制御部40は、作動停止指令後も力覚センサ20での検出状況を監視し、力覚センサ20で検出されるモーメントが0のままであるか否かを判定する(ステップS006)。すなわち、制御部40は、ワーク90がその面又は辺を基準面と接触させた状態に留まるか、あるいは留まらずにさらに傾動したか、を判定することとなる。
【0063】
ステップS006で、力覚センサ20により検出されるモーメントが0のままとならず、所定のモーメントが検出されたと判定した場合、制御部40は、ステップS003に戻って、以降の処理を繰り返す。すなわち、制御部40は、モーメントの検出に伴い、ロボットアーム10を動かし、ワーク90にモーメントと同じ向きのトルクが加わるようにして、ワーク90を基準面と面接触又は線接触させるようにする。こうしてステップS003以降の処理が繰り返されることで、ワーク90が基準面と面接触又は線接触し、ロボットアーム10の作動停止が指令されてからの、ロボットアーム10及びワーク90の動き続ける度合いは徐々に小さくなっていく。
【0064】
ステップS006で、力覚センサ20で検出されるモーメントが0のままであり、制御部40でワーク90が基準面と面接触又は線接触し続けていると判定した場合、制御部40は、時間の経過状況をさらに判定する。具体的には、制御部40は、配置工程の開始時点から、あらかじめ設定された所定時間が経過しているか否かを判定する(ステップS007)。
【0065】
ステップS007で、制御部40において配置工程の開始から所定時間(例えば、数秒)経過したと判定した場合、制御部40は、ワーク90を基準面に適切に接触させて位置決めした状態が得られたとみなして、一連の処理を終了する。
一方、ステップS007で、制御部40が配置工程の開始時点から所定時間経過していないと判定した場合、ステップS006に戻って、以降の処理を繰り返す。
【0066】
配置工程では、ロボットアーム10を作動させて、ワーク90を基準面72a、73aに近付けたり、ワーク90と基準面72a、73aとの接触を維持する。このワーク90を動かす際の力は、ワーク90を基準面72a、73aに押し付けてもワーク90や基準面72a、73aに不具合が生じない程度の大きさであって、且つワーク90の動く速度が十分なものとなるよう設定される。
【0067】
こうしたワーク90を基準面72a、73aに近付けたり、基準面72a、73aとの接触を維持するためにワーク90を動かす際の力は、ほぼ一定としているが、これにかぎられるものではない。例えば、基準面72a、73aとこれに対応するワーク90の面とが近付くほど力を小さくする制御を行うようにしてもよい。また、ワーク90を傾動させるトルクの大きさについても、基準面72a、73aとこれに対応するワーク90の面とが近付くほど小さくする制御を行ってもかまわない。
【0068】
さらに、配置工程後のワーク解放工程について説明する。
ワーク固定部71の各基準面72a、73aにワーク90を面接触させる配置工程が完了すると、続いてワーク解放工程として、ハンド部30によるワーク90の保持を解除する。このワーク解放工程は、以下の手順で行われる。
【0069】
まず、ハンド部30の第一補助支持部32を動かして後退させ、ワーク90に接触していた先端部をワーク90から離す(
図6(a)参照)。
次に、第二補助支持部33の固定状態を解除すると共に、ワーク90に接していた第二補助支持部33の先端部をワーク90から離す(
図6(b)参照)。それから、ハンド部30の一対の指部31を互いに離れる向きに動かし、指部31によるワーク90の把持状態を解除する(
図7(a)参照)。
【0070】
最後に、ロボットアーム10を作動させてハンド部30を動かし、ハンド部30の全体の位置を、ワーク90から離隔させる(
図7(b)参照)。この時、ハンド部30の各部がワーク90に当たらないようにハンド部30を動かすことはいうまでもない。
【0071】
ワーク90から離隔させたハンド部30を、次の加工対象となるワークに対し、搬入工程を実行する際の初期位置まで移動させれば、ワーク解放工程は完了となる。なお、ワーク90から離隔させたハンド部30の移動に関しては、これに限られるものではない。例えば、ワークの加工後に、ワークの位置や向きを変えて、ワークの他の面をさらに加工する必要がある場合は、ハンド部をその加工後のワークの保持に備えた待機位置に待避させるようにすればよい。また、ワークの加工後に、加工済みのワークを保持して工作機械のワーク固定部から取り出す搬出手段を搬送装置が兼ねている場合も、ハンド部を加工後のワークの保持に備えた所定の待機位置に待避させるようにしてもよい。
【0072】
このように、本実施形態に係るワーク配置方法は、ワーク90を保持した移送装置1でワーク90をワーク固定部の基準面に近付け、ワーク90が基準面に接すると、基準面に徐々にワーク90を沿わせて面接触状態とする。これにより、ワーク90を基準面に対し手作業と同様に慎重に近付けて配置できることとなり、ワーク90の破損を抑えられる。そして、移送装置1で配置の自働化を無理なく実現できることで、工作機械側の構造変更が不要となり、工作機械の使用に係るコストを抑えられる。
【0073】
なお、本実施形態に係るワーク配置方法においては、平面研削盤である工作機械70への適用例を示しているが、これに限られるものではなく、他の工作機械に適用してもよい。例えば、工作機械をマシニングセンタやフライス盤とし、これらに対するワークの配置に本発明を適用してもかまわない。
【0074】
また、本実施形態に係るワーク配置方法において、治具73側面の基準面73aに対する配置工程では、ワーク90全体を基準面73aに近付けつつ、ワーク90のz軸周りの向き調整のみで、ワーク90を基準面73aと面接触させられる例を示している。すなわち、治具73側面の基準面73aに対し位置決めしようとするワーク90の一の面が、空間に定義されたz軸周り及びx軸周りにのみ傾いている場合を例示し、これに対応した配置工程としている。
【0075】
しかし、配置工程はこのような限定的な場合への適用に制限されるものではない。例えば、
図9及び
図10に示すように、治具73側面の基準面73aに対し位置決めしようとするワーク90の一の面が、空間に定義されたz軸周り及びx軸周りだけでなく、y軸周りに傾いている場合にも対応できる。
【0076】
この場合、治具73側面の基準面73aに対する配置工程で、ワーク90全体を基準面73aに近付けつつ、力覚センサ20での各軸周りのモーメント検出に基づいて、ワーク90のz軸周りの向き調整とy軸周りの向き調整を同時並行で実行することとなる。そして、ワーク90の一の面全体が基準面73aに接して、力覚センサ20でのz軸周り及びy軸周りのモーメント検出が0となった状態が所定時間継続すると、本実施形態同様に基準面72aに対しての配置工程終了とすることができる。
【0077】
また、本実施形態に係るワーク配置方法においては、ワーク90を位置決めするための基準面として、ワーク固定部(テーブル)71上の基準面72aと、治具73の側面である基準面73aの二つを利用する場合を示している。しかし、こうした基準面が二つの場合だけでなく、ワークの配置にあたり一つの基準面のみを位置決めに利用する場合にも本発明を適用してよい。さらに、互いに直角となる二つの基準面の他に、これら二つの基準面の各々に対し直角となる別の基準面も位置決めに用いる場合、すなわち、三つの基準面をワークの位置決めに利用する場合に、本発明を適用してもかまわない。
【0078】
また、本実施形態に係るワーク配置方法において、配置工程でのワーク90の移動状態に関し、制御部40が力覚センサ20で検出されるモーメントが0である状態を続けて認定することを、配置工程の終了判定の条件としている。しかしながら、ワークと基準面との間にゴミ等の異物があると、ワークを基準面に沿うように動かしても、ワークが基準面に密着できないことで、力覚センサでのモーメントの検出が継続し、配置工程を終了できない事態が起り得る。このように力覚センサでモーメントを検出する状態が異常な長さで継続している場合、制御部がワークと基準面との間に異物があると判断し、ロボットアームの作動を停止させると共に、作業者に対し所定の報知を実行する制御を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 移送装置
10 ロボットアーム
20 力覚センサ
30 ハンド部
31 指部
32 第一補助支持部
33 第二補助支持部
40 制御部
70 工作機械
71 ワーク固定部(テーブル)
72 マグネットチャック
72a、73a 基準面
73 治具
90 ワーク