(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152022
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリートの成形方法、この方法に用いる水硬性組成物及びプレキャストコンクリート
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20241018BHJP
C04B 14/04 20060101ALI20241018BHJP
C04B 24/08 20060101ALI20241018BHJP
C04B 24/02 20060101ALI20241018BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20241018BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20241018BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20241018BHJP
C04B 24/22 20060101ALI20241018BHJP
B28B 3/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/04 Z
C04B24/08
C04B24/02
C04B24/32 A
C04B24/12 A
C04B24/26 E
C04B24/22 A
B28B3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065919
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】古田 章宏
【テーマコード(参考)】
4G054
4G112
【Fターム(参考)】
4G054AA01
4G054BA29
4G112MD01
4G112PA04
4G112PB18
4G112PB20
4G112PB31
4G112PB36
4G112PE03
(57)【要約】
【課題】表面美観性が改善されたプレキャストコンクリートの成形方法を提供する。
【解決手段】水硬性粉体、骨材及び水を混合して水硬性組成物を製造する水硬性組成物製造工程と、前記水硬性組成物を型枠に充填して振動成形する振動工程と、を有し、前記水硬性組成物製造工程において、前記水硬性粉体100質量部に対して0.0001~0.01質量部のオキシアルキレン変性ロジン誘導体を混合することを特徴とするプレキャストコンクリートの成形方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性粉体、骨材及び水を混合して水硬性組成物を調製する水硬性組成物製造工程と、
前記水硬性組成物を型枠に充填して振動成形する振動工程と、を有し、
前記水硬性組成物製造工程において、前記水硬性粉体100質量部に対して0.0001~0.01質量部のオキシアルキレン変性ロジン誘導体である成分(A)を混合することを特徴とするプレキャストコンクリートの成形方法。
【請求項2】
前記水硬性組成物製造工程において、更に、下記一般式(2)で示される成分(B1)、及び、下記一般式(3)で示される成分(B2)から選ばれる少なくともの1つの成分(B)を混合する、請求項1に記載のプレキャストコンクリートの成形方法。
【化1】
(但し、一般式(2)において、R
3は、炭素数4~22のアルキル基、又は炭素数4~22のアルケニル基であり、R
4は、水素原子、又は、炭素数1~4のアルキル基である。A
2Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)であり、mは、A
2Oの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【化2】
(但し、一般式(3)において、R
5は、炭素数1~22のアルキル基、又は炭素数2~22のアルケニル基であり、A
3O、A
4Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)であり、pは、A
3Oの平均付加モル数であり、1~100の数であり、qは、A
4Oの平均付加モル数であり、0~100の数である(但し、p+q=2~150を満たす)。)
【請求項3】
前記水硬性組成物製造工程において、更に、ポリカルボン酸系分散剤、及び、ナフタレン系分散剤から選ばれる少なくとも1つである成分(C)を混合する、請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリートの成形方法。
【請求項4】
前記水硬性組成物製造工程における前記水硬性組成物のスランプが、5~25cmである、請求項1または2に記載のプレキャストコンクリートの成形方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のプレキャストコンクリートの成形方法で用いる水硬性組成物であって、
水硬性粉体、当該水硬性粉体100質量部に対して0.0001~0.01質量部のオキシアルキレン変性ロジン誘導体である成分(A)、骨材、及び、水を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の水硬性組成物の硬化物であることを特徴とするプレキャストコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリートの成形方法、この方法に用いる水硬性組成物及びプレキャストコンクリートに関する。更に詳しくは、コンクリート製品の肌面(表面)における表面美観性が改善されたプレキャストコンクリートの成形方法及びこの方法に用いる水硬性組成物及びその硬化物であるプレキャストコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物の構築方法としては、場所打ち工法、プレキャスト工法が知られている。場所打ち工法は、コンクリート構造物を配置する所定の場所(現場)に組み立てられた型枠内に直接コンクリートを打ち込む工法である。そして、プレキャスト工法は、工場等で予め所定の形に成形されたコンクリート(プレキャストコンクリート)を現場まで運搬し、それらを接合して組み立てる工法である。
【0003】
場所打ち工法は、型枠設置、コンクート打設、更に、養生期間が必要になり、現場において長い施工期間を必要とする。一方、プレキャスト工法は、プレキャストコンクリートの製造は工場等で行われ、設置も比較的簡単であるため工期を短縮することができ、短期での施工が要求される場合などで採用される傾向があった。
【0004】
更に、近年では、人口減少を背景にして、建築及び土木従事者が減少していることに起因して、プレキャスト工法が多く採用されるようになってきている。
【0005】
このようなプレキャスト工法としては、遠心成形装置を用いてプレキャストコンクリートを製造する方法と、水硬性組成物を成形用型枠に流し込み、この水硬性組成物が硬化した後に脱型する流し込み成形の2つの成形方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法であっても、プレキャストコンクリート(硬化物)の表面美観性は未だ改良の余地がある。特に、プレキャストコンクリート(硬化物)の肌面の表面美観性を更に高めることは、プレキャストコンクリートの肌面の補修作業を省略することもできるようになる。その結果、作業の効率化を図ることができ、上記のように最近生じている建築従事者及び土木従事者が減少している背景からすると、その価値は大きい。このようなことから、プレキャストコンクリートの表面美観性を向上させた(肌面における気泡占有率(表面気泡占有率)を低下させた)プレキャストコンクリートの成形方法の開発が求められている。
【0008】
そこで、本発明の課題は、上記実情に鑑み、プレキャストコンクリートの表面美観性を向上させた(表面気泡占有率を低下させた)プレキャストコンクリートの成形方法、この方法に用いる水硬性組成物及びその硬化物であるプレキャストコンクリートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、プレキャストコンクリートの成形方法において所定割合の成分(A)を用いることによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下のプレキャストコンクリートの成形方法、この方法に用いる水硬性組成物及びその硬化体であるプレキャストコンクリートが提供される。
【0010】
[1] 水硬性粉体、骨材及び水を混合して水硬性組成物を調製する水硬性組成物製造工程と、
前記水硬性組成物を型枠に充填して振動成形する振動工程と、を有し、
前記水硬性組成物製造工程において、前記水硬性粉体100質量部に対して0.0001~0.01質量部のオキシアルキレン変性ロジン誘導体である成分(A)を混合することを特徴とするプレキャストコンクリートの成形方法。
【0011】
[2] 前記水硬性組成物製造工程において、更に、下記一般式(2)で示される成分(B1)、及び、下記一般式(3)で示される成分(B2)から選ばれる少なくともの1つの成分(B)を混合する、前記[1]に記載のプレキャストコンクリートの成形方法。
【0012】
【化1】
(但し、一般式(2)において、R
3は、炭素数4~22のアルキル基、又は炭素数4~22のアルケニル基であり、R
4は、水素原子、又は、炭素数1~4のアルキル基である。A
2Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)であり、mは、A
2Oの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【0013】
【化2】
(但し、一般式(3)において、R
5は、炭素数1~22のアルキル基、又は炭素数2~22のアルケニル基であり、A
3O、A
4Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)であり、pは、A
3Oの平均付加モル数であり、1~100の数であり、qは、A
4Oの平均付加モル数であり、0~100の数である(但し、p+q=2~150を満たす)。)
【0014】
[3] 前記水硬性組成物製造工程において、更に、ポリカルボン酸系分散剤、及び、ナフタレン系分散剤から選ばれる少なくとも1つである成分(C)を混合する、前記[1]または[2]に記載のプレキャストコンクリートの成形方法。
【0015】
[4] 前記水硬性組成物製造工程における前記水硬性組成物のスランプが、5~25cmである、前記[1]または[2]に記載のプレキャストコンクリートの成形方法。
【0016】
[5] 前記[1]または[2]に記載のプレキャストコンクリートの成形方法で用いる水硬性組成物であって、
水硬性粉体、当該水硬性粉体100質量部に対して0.0001~0.01質量部のオキシアルキレン変性ロジン誘導体である成分(A)、骨材、及び、水を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【0017】
[6] 前記[5]に記載の水硬性組成物の硬化物であることを特徴とするプレキャストコンクリート。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプレキャストコンクリートの成形方法によれば、プレキャストコンクリートの表面気泡占有率を低下させることができ、表面美観性を向上させることができるという効果を奏するものである。
【0019】
本発明の水硬性組成物は、プレキャストコンクリートの成形方法に用いることによって、得られるプレキャストコンクリートの肌面(表面)における表面気泡占有率が低く、表面美観性が向上されたものを得ることができるという効果を奏するものである。
【0020】
本発明のプレキャストコンクリートは、本発明の水硬性組成物の硬化物であり、その肌面(表面)における表面気泡占有率が低く、表面美観性が向上されているという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0022】
(1)プレキャストコンクリートの成形方法:
本発明のプレキャストコンクリートの成形方法は、水硬性粉体、骨材及び水を混合して水硬性組成物を調製する水硬性組成物製造工程と、水硬性組成物を型枠に充填して振動成形する振動工程と、を有する。そして、水硬性組成物製造工程において、水硬性粉体100質量部に対して0.0001~0.01質量部のオキシアルキレン変性ロジン誘導体である成分(A)を混合する。
【0023】
このようなプレキャストコンクリートの成形方法によれば、プレキャストコンクリートの表面気泡占有率を低下させることができ、表面美観性を向上させることができる。つまり、硬化したコンクリートは、その表面に気泡痕(空洞)が生じる。この気泡痕が占める面積が大きいと、コンクリートの表面美観が劣ると判断される。そして、気泡痕が占める面積が小さいと、即ち、コンクリートの表面が平滑であると、表面美観が良好と判断される。
【0024】
このようにプレキャストコンクリートの表面美観性が良好であると、プレキャストコンクリートの製造後にこのプレキャストコンクリートの表面を補修する作業(補修作業)を省略することができる。即ち、当該作業を省略することによって、プレキャストコンクリートの製造における作業の効率化を図ることができる。
【0025】
ここで、プレキャストコンクリートの成形方法(プレキャスト工法)には、遠心成形装置を用いてプレキャストコンクリートを製造する方法(遠心成形)と、水硬性組成物を成形用型枠に流し込み、この水硬性組成物が硬化した後に脱型する流し込み成形の2つの成形方法がある。これらのうち、遠心成形では、プレキャストコンクリートの表面に気泡痕が生じ難い。一方、流し込み成形では、遠心成形に比べて、プレキャストコンクリートの表面に気泡痕が生じ易い傾向がある。そのため、補修作業が必要となるため、特に、上述の通り作業人員が減少している状況において、補修作業が不要な程度にプレキャストコンクリートの表面美観性を向上させることは重要である。
【0026】
「プレキャスト」とは、工場や製造ヤードなどのように現場とは異なる場所で予め製品や部材等を製造しておくことである。そして、「プレキャストコンクリート」は、このプレキャストによって製造されたコンクリートのことである。
【0027】
(1-1)水硬性組成物製造工程:
水硬性組成物製造工程は、水硬性粉体、骨材及び水を混合して水硬性組成物を調製する工程である。そして、本工程では、水硬性粉体100質量部に対して0.0001~0.01質量部のオキシアルキレン変性ロジン誘導体である成分(A)を混合する。
【0028】
(1-1a)成分(A):
成分(A)は、オキシアルキレン変性ロジン誘導体である。ここで、「オキシアルキレン変性ロジン誘導体」は、ロジンの構成成分(主として樹脂酸)がオキシアルキレン(ポリオキシアルキレン)で変性されたものである。
【0029】
ロジンとは、樹脂酸(ロジン酸)と称されるジテルペン酸系化合物を含むものである。このようなロジンとしては、例えば、天然ロジン、変性ロジン、重合ロジンなどがある。
【0030】
天然ロジンは、マツ科植物から得られる樹脂油から、精油等の揮発性物質を留去した残留物中に存在する樹脂酸の混合物であり、製造方法により、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン(トールロジン)に分類される。
【0031】
ガムロジンは、松の木に切り傷をつけ、そこから流出する生松脂をろ過精製し、水蒸気蒸留によりテレビン油を除去して得られる。ウッドロジンは、松の切株のチップを溶剤抽出して得られる。トール油ロジンは、松材からクラフトパルプ法でパルプを製造する工程で副生する粗トール油を蒸留精製して得られる。
【0032】
変性ロジンとは、天然ロジンを変性したものをいう。この変性ロジンとしては、例えば、天然ロジンを高圧下でニッケル触媒、白金触媒、パラジウム触媒等の貴金属触媒等を使用して水素添加して、分子内の二重結合を消失若しくは減少させた水添ロジン、天然ロジンを貴金属触媒又はハロゲン触媒の存在下に高温加熱することにより分子内の不安定な共役二重結合を消失させた不均化ロジンが挙げられる。
【0033】
ロジンに含まれる樹脂酸は、主としてアビエチン酸であるが、このアビエチン酸以外に、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、レボピマール酸等がある。このようにロジンは、主として樹脂酸を含む様々な化合物の混合物であることが一般的である。
【0034】
このようにロジンは樹脂酸などのカルボン酸を含んでおり、このロジン中のカルボン酸の量については、酸価を測定することで定量化される。酸価は、日本工業規格JIS K 0070により測定することで求めることができる。
【0035】
成分(A)である「オキシアルキレン変性ロジン誘導体」は、上述の通り、ロジンの構成成分(主として樹脂酸)がオキシアルキレンで変性されたものであり、具体的には、ロジンを構成する樹脂酸(例えばアビエチン酸)のアシル残基及びオキシアルキレン基を有する化合物ということができる。なお、この化合物は、末端のオキシアルキレン基における末端に置換基を有していても良い。
【0036】
「ロジンの構成成分(主として樹脂酸)がオキシアルキレンで変性されたもの」は、その製造方法に特に制限はなく、ロジンの構成成分にオキシアルキレンを付加させて得られる化合物であってもよいし、ロジンの構成成分とポリアルキレングリコール(PAG)とをエステル化させて得られる化合物であってもよい。なお、形成されるPAG末端には置換基を有していても良い。
【0037】
なお、成分(A)は、その製造時にロジンを用いるため、製造時の入手の容易さの観点から、天然ロジンが好ましい。そして、天然ロジンの中でも、より好ましくは、ガムロジン、トールロジンである。
【0038】
「ロジンの構成成分(主として樹脂酸)がオキシアルキレンで変性されたもの」は、化学式を用いて示すとすれば、一般式(1)で表すこともできる。なお、一般式(1)で示される化合物は、ロジンポリオキシアルキレン付加物とも称することができる。
【0039】
一般式(1)中、「ロジンを構成するカルボン酸のアシル残基」は、ロジンを構成する樹脂酸などのカルボン酸のアシル残基を意味する。つまり、一般式(1)で示される化合物は、例えば、アビエチン酸のアシル残基を有する化合物、パラストリン酸のアシル残基を有する化合物などが該当する。このようなことから、オキシアルキレン変性ロジン誘導体(成分(A))には、通常、2種以上の一般式(1)で示される化合物が含まれるが、1種の化合物(例えば、アビエチン酸のアシル残基を有する化合物)が含まれるものであってもよい。
【0040】
【化3】
(但し、一般式(1)において、R
1はロジンを構成するカルボン酸のアシル残基であり、R
2は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数2~20のアルケニル基であり、A
1Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)であり、nはA
1Oの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【0041】
一般式(1)中のR1は、ロジンを構成するカルボン酸のアシル残基である。このロジンを構成するカルボン酸は、例えば、樹脂酸などであり、樹脂酸としては、具体的には、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、レボピマール酸等を挙げることができる。
【0042】
一般式(1)中のR2は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数2~20のアルケニル基である。これらの中でも、水素原子、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。このようなものであると、気泡占有率がより低くなる。
【0043】
一般式(1)中のA1Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。なお、A1Oは、2種類以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であってもよい。
【0044】
一般式(1)において、A1O全体のうち、炭素数2のオキシアルキレン基が50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。このようにすると、気泡占有率がより低くなる。
【0045】
一般式(1)中のnは、A1Oの平均付加モル数を表し、1~150の数である。nは、好ましくは、5~150の数であり、更に好ましくは、10~100の数である。
【0046】
成分(A)の使用割合は、水硬性粉体100質量部に対して0.0001~0.01質量部であり、0.0001~0.005質量部であることが更に好ましい。このような配合量とすることによって、気泡占有率が低くなる。
【0047】
(1-1b)成分(B):
水硬性組成物製造工程において、更に、下記一般式(2)で示される成分(B1)、及び、下記一般式(3)で示される成分(B2)から選ばれる少なくともの1つの成分(B)を混合することができる。この成分(B)を更に混合することによって、プレキャストコンクリートの肌面の気泡占有率がより低くなる。その結果、表面美観性が更に向上する。
【0048】
【化4】
(但し、一般式(2)において、R
3は、炭素数4~22のアルキル基、又は炭素数4~22のアルケニル基であり、R
4は、水素原子、又は、炭素数1~4のアルキル基である。A
2Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)であり、mは、A
2Oの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【0049】
【化5】
(但し、一般式(3)において、R
5は、炭素数1~22のアルキル基、又は炭素数2~22のアルケニル基であり、A
3O、A
4Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)であり、pは、A
3Oの平均付加モル数であり、1~100の数であり、qは、A
4Oの平均付加モル数であり、0~100の数である(但し、p+q=2~150を満たす)。)
【0050】
(1-1b1)成分(B1):
一般式(2)におけるR3は、炭素数4~22のアルキル基、又は炭素数4~22のアルケニル基である。
【0051】
一般式(2)におけるR4は、水素原子、又は、炭素数1~4のアルキル基であり、これらのうち、水素原子、メチル基が好ましい。
【0052】
一般式(2)におけるA2Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。なお、A2Oは、2種類以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であってもよい。
【0053】
一般式(2)において、A2O全体のうち、炭素数2のオキシアルキレン基が50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
【0054】
一般式(2)におけるmは、A2Oの平均付加モル数であり、1~150の数であり、2~100の数であることが好ましく、5~90の数であることが更に好ましい。
【0055】
(1-1b2)成分(B2):
一般式(3)におけるR5は、炭素数1~22のアルキル基、又は炭素数2~22のアルケニル基であり、これらのうち、炭素数4~22のアルキル基、又は炭素数4~22のアルケニル基が好ましい。これらのアルキル基、アルケニル基は直鎖でも分岐鎖でもよく、1種でも2種以上でもよい。
【0056】
一般式(3)におけるA3O、A4Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。なお、A3O、A4Oのそれぞれは、2種類以上存在する場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であってもよい。
【0057】
一般式(3)において、A3O、A4Oの合計の総量のうち、炭素数2のオキシアルキレン基が50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
【0058】
一般式(3)におけるpは、A3Oの平均付加モル数であり、1~100の数であり、1~80の数であることが好ましく、2~50の数であることが更に好ましい。
【0059】
一般式(3)におけるqは、A4Oの平均付加モル数であり、0~100の数であり、0~80の数であることが好ましく、0~50の数であることが更に好ましい。
【0060】
但し、pとqは、これらの和(p+q)が2~150を満たすものであり、2~100であることが好ましく、3~80であることがより好ましい。
【0061】
成分(B)の使用割合は、水硬性粉体100質量部に対して0.00001~0.01質量部であることが好ましい。このような配合量とすることによって、気泡占有率が低くなる。
【0062】
(1-1c)成分(C):
水硬性組成物製造工程において、更に、ポリカルボン酸系分散剤、及び、ナフタレン系分散剤から選ばれる少なくとも1つである成分(C)を混合することができる。この成分(C)を更に混合することによって、プレキャストコンクリートの肌面の気泡占有率がより低くなる。その結果、表面美観性が更に向上する。
【0063】
ポリカルボン酸系分散剤としては、公知のものを使用することができる。ポリカルボン酸系分散剤としては例えば、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸(塩)等のカルボン酸(塩)との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸(塩)等のカルボン酸(塩)との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸(塩)等のジカルボン酸(塩)との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸(塩)は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸またはそれらの塩の意味である。
【0064】
ナフタレン系分散剤としては、公知のものを使用することができ、ナフタレンスルホン酸(塩)ホルムアルデヒド縮合物等を挙げることができる。
【0065】
ポリカルボン酸系分散剤、ナフタレン系分散剤は、製品用の高性能減水剤として市販されているものをそのまま用いても良い。
【0066】
成分(C)の使用割合は、水硬性粉体100質量部に対して0.01~3質量部であることが好ましく、0.01~2.5質量部であることが更に好ましく、0.02~2質量部であることが特に好ましい。このような配合量とすることによって、気泡占有率が低くなる。
【0067】
(1-1d)水硬性粉体、骨材、その他の成分:
水硬性粉体は、コンクリートなどの水硬性組成物に配合され、この水硬性粉体とともに水硬性組成物に加えられる水と反応し、大気中または水中で固まる性質を有する粉体であり、結合材とも呼ばれているものである。このような水硬性粉体としては、例えば、セメント、石膏、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、火山ガラス等を挙げることができる。
【0068】
セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種の混合セメントを挙げることができる。
【0069】
なお、水硬性粉体は、セメントだけでなく、石膏、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、火山ガラス、膨張材等の各種水硬性粉体や石粉や石灰石微粉末等の各種混和材を併用してもよい。
【0070】
骨材は、細骨材、粗骨材等がある。本工程における骨材は、これらの一方を採用してもよいし、両方を採用してもよい。
【0071】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材、再生骨材等が挙げられるが、粘土質等の微粒成分等を含むものであってもよい。
【0072】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材、再生骨材等が挙げられる。
【0073】
なお、本工程においては、水硬性粉体、骨材、水、及び、成分(A)以外に、上述した成分(B)及び成分(C)を更に配合することが好ましい。また、本発明の効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。
【0074】
このようなその他の成分としては、例えば、糖類やオキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延剤、各種減水剤、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、ポリオキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0075】
その他の成分の含有割合としては、例えば、水硬性粉体100質量部に対して、0~10質量部とすることができる。
【0076】
水硬性組成物は、そのスランプが5~25cmであるものとすることができ、15~25cmとすることが好ましい。このようなスランプの範囲とすることによって、表面美観性を向上させることができる。なお、スランプは、JIS A1101:2020に準拠して測定される値である。
【0077】
水硬性組成物は、その流動性についてスランプに代えてスランプフローで示しても良い。スランプが21cmを超え、流動性が高い水硬性組成物の場合、スランプフローで管理されることもある。スランプフローは、JIS A1105:2020に準拠して測定される値である。そのスランプフローは、分離が見られない範囲であればよく、例えば300~800mmとすることができる。
【0078】
本工程における水硬性組成物は、その水と水硬性粉体の比率(水/水硬性粉体比)としては従来公知の割合を適宜採用することができるが、例えば、20~70質量%とすることができる。
【0079】
(1-2)振動工程:
振動工程は、水硬性組成物を型枠に充填して振動成形する工程である。本工程は、従来公知のプレキャストコンクリートの成形方法における振動工程を適宜採用することができる。
【0080】
即ち、従来公知の型枠を適宜採用することができる。そして、この型枠には従来公知の方法で水硬性組成物を充填することができる。更に、振動成形の方法には、水硬性組成物内部に振動機を挿入する「内部振動方式」、型枠外側に振動機が取り付けられ、この振動機を接触させて振動を与える「型枠振動方式」、水硬性組成物表面に振動機をあてる「表面振動方式」、テーブル状の振動台上に型枠を載せて型枠全体を振動させる「テーブル振動方式」がある。これらを単独で採用してもよいし、2つ以上の方法を併用することもできる。
【0081】
振動成形の条件は、特に制限はなく従来公知の条件で振動させることができる。例えば、振動数は、大きい方が効果的であるが500~300000vpm程度とすることができ、振動時間は5~300秒程度とすることができる。
【0082】
(1-3)その他の工程:
本発明のプレキャストコンクリートの成形方法は、水硬性組成物製造工程及び振動工程以外に、養生工程などを有することができる。この養生工程では、従来公知の方法を適宜採用することができ、振動が加えられた水硬性組成物について蒸気養生も行うことができる。
【0083】
(2)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、本発明のプレキャストコンクリートの成形方法で用いる水硬性組成物であって、水硬性粉体、当該水硬性粉体100質量部に対して0.0001~0.01質量部の上記成分(A)、骨材、及び、水を含有するものである。
【0084】
このような水硬性組成物は、プレキャストコンクリートの成形方法に用いることによって、得られるプレキャストコンクリートの肌面(表面)における表面気泡占有率が低く、表面美観性が向上されたものを得ることができる。
【0085】
成分(A)は、上述した本発明のプレキャストコンクリートの成形方法で説明した成分(A)と同じものを用いることができる。
【0086】
水硬性粉体は、コンクリートなどの水硬性組成物に配合され、この水硬性粉体とともに水硬性組成物に加えられる水と反応し、大気中または水中で固まる性質を有する粉体であり、結合材とも呼ばれているものである。このような水硬性粉体としては、例えば、セメント、石膏、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、火山ガラス等を挙げることができる。
【0087】
セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種の混合セメントを挙げることができる。
【0088】
なお、水硬性粉体は、石膏、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、火山ガラス、膨張材等の各種水硬性粉体や石粉や石灰石微粉末等の各種混和材を併用してもよい。
【0089】
骨材は、細骨材、粗骨材等がある。
【0090】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材、再生骨材等が挙げられるが、粘土質等の微粒成分等を含むものであってもよい。
【0091】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材、再生骨材等が挙げられる。
【0092】
なお、水硬性組成物には、水硬性粉体、骨材、水、及び、成分(A)以外に、上述した成分(B)及び成分(C)を更に配合することが好ましい。また、本発明の効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。
【0093】
このようなその他の成分としては、例えば、糖類やオキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延剤、各種減水剤、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0094】
その他の成分の含有割合としては、例えば、水硬性粉体100質量部に対して、0~10質量部とすることができる。
【0095】
水硬性組成物は、そのスランプが5~25cmであるものとすることができ、15~25cmとすることが好ましい。このようなスランプの範囲とすることによって、表面美観性を向上させることができる。なお、スランプは、JIS A1101:2020に準拠して測定される値である。
【0096】
なお、水硬性組成物は、その流動性についてスランプに代えてスランプフローで示されることがある。つまり、スランプが21cmを超え流動性が高い水硬性組成物の場合、スランプフローで管理されることもある。スランプフローは、JIS A1105:2020に準拠して測定される値である。本発明の水硬性組成物のスランプフローは、分離が見られない範囲であればよく、例えば300~800mmとすることができ、上限についてはスランプ25cmに相当するものとすることがよい。
【0097】
本工程における水硬性組成物は、その水と水硬性粉体の比率(水/水硬性粉体比)としては従来公知の割合を適宜採用することができるが、例えば、20~70質量%とすることができる。
【0098】
(3)プレキャストコンクリート:
本発明のプレキャストコンクリートは、本発明の水硬性組成物の硬化物である。このプレキャストコンクリートは、その肌面(表面)における表面気泡占有率が低く、表面美観性が向上されている。このプレキャストコンクリートは、本発明の水硬性組成物を用いて本発明のプレキャストコンクリートの成形方法を採用して製造されるものである。
【実施例0099】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
まず、以下の合成例1~8のようにしてオキシアルキレン変性ロジン誘導体である成分(A)(化合物(A-1)~(A-8))の合成を行った。得られた化合物(A-1)~(A-8)について、表1に示す。
【0101】
(合成例1)化合物(A-1)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、中華人民共和国産(以降、単に「中国産」と記す)の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を328.1gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃に加熱した。その後、この温度を維持しつつ撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、150~160℃の温度範囲(設定温度155℃)でエチレンオキサイド660gとプロピレンオキサイド58gを同時に0.4MPaの条件で圧入した後、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製の商品名:キョーワード600)を20g添加した。更に、120℃にて減圧脱水を行った後、加圧濾過を行い、化合物(A-1)を得た。
【0102】
(合成例2)化合物(A-2)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を328.1gと、水酸化カリウム1.6gを仕込み、120℃に加熱した。その後、この温度を維持しつつ撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、150~160℃の温度範囲(設定温度155℃)でエチレンオキサイド1320gを0.4MPaの条件で圧入した後、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、冷却後、85%リン酸を用いてpH6に調整した。その後、120℃にて減圧脱水を行った後、加圧濾過を行い、化合物(A-2)を得た。
【0103】
(合成例3)化合物(A-3)の合成:
プロピレンオキシドを1,2-ブチレンオキシドに変え、エチレンオキシドと1,2-ブチレンオキシドの仕込量を変化させたこと以外は、化合物(A-1)と同様にして、化合物(A-3)を得た。
【0104】
(合成例4)化合物(A-4)の合成:
ガムロジンをトールロジンのXグレード(ハリマ化成製、酸価169mg/g)に変え、仕込量を変化させたこと以外は、化合物(A-2)と同様にして、化合物(A-4)を得た。
【0105】
(合成例5)化合物(A-5)の合成:
1Lのガラス製の反応容器にα-メトキシ-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=15)オキシエチレン692.0gと中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を328.0g、メタンスルホン酸9.6gを仕込み、窒素置換を行った。その後、150℃、0.5kPaで減圧脱水を行い、エステル化反応を行った。エステル化率が99%以上となったところで反応を終了した。その後、精製して化合物(A-5)を得た。
【0106】
(合成例6)化合物(A-6)の合成:
α-メトキシ-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=15)オキシエチレンを、1-ブタノールにプロピレンオキシド4モルとエチレンオキシド30モルをブロック付加したものに変更し、仕込み量を変化させたこと以外は、化合物(A-5)と同様にして、化合物(A-6)を得た。
【0107】
(合成例7、8)化合物(A-7)、(A-8)の合成:
エチレンオキシドとプロピレンオキシドの仕込量を変化させたこと以外は、化合物(A-1)と同様にして、化合物(A-7)、(A-8)をそれぞれ得た。
【0108】
【0109】
表1中、「R1」の欄における「ガムロジンアシル残基」は、ガムロジンを構成するカルボン酸のアシル残基であることを示し、「トールロジンアシル残基」は、トールロジンを構成するカルボン酸のアシル残基であることを示す。ガムロジン、トールロジンを構成するカルボン酸は、アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸などである。なお、ガムロジン、トールロジンは、これらを構成するカルボン酸の組成割合が異なる。化合物(A-1)~(A-8)は、アビエチン酸のアシル残基を有するもの、パラストリン酸のアシル残基を有するものなどの複数種が存在するものである。
【0110】
次に、以下の合成例9~25のようにして成分(B)である成分(B1)(化合物(B1-1)~(B1-3)、化合物(B1-5)~(B1-10))及び成分(B2)(化合物(B2-1)~(B2-7))の合成を行った。得られた化合物(B1-1)~(B1-10)について表2に示し、化合物(B2-1)~(B2-7)について表3に示す。なお、化合物(B1-4)は、ソフタノール90(日本触媒社製)をそのまま用いた。
【0111】
(合成例9)化合物(B1-1)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、ソフタノール30(日本触媒社製)を332.0gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃まで加熱した。その後、この温度を維持しつつ撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、110~130℃の温度範囲(設定温度120℃)でエチレンオキサイド1188gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製、商品名:キョーワード600)を添加し、更に、120℃にて減圧脱水を行った。その後、加圧濾過を行い、化合物(B1-1)を得た。
【0112】
(合成例10)化合物(B1-2)の合成:
原料アルコールの種類、エチレンオキシド等の仕込量を変化させたこと以外は、化合物(B1-1)と同様にして、化合物(B1-2)を得た。なお、化合物(B1-2)の合成では、原料アルコールとしてISOFOL16(サソール社製)を用いた。
【0113】
(合成例11)化合物(B1-3)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、オレイルアルコール(アンジェコール85AN、日本理化社製)を134.3gと、水酸化カリウム1.9gを仕込み、120℃まで加熱した。この温度を維持しつつ撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、110~130℃の温度範囲(設定温度120℃)でエチレンオキサイド1760gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、水酸化カリウムを28.1g加えた。その後、120℃にて減圧脱水を行った後、更に、120℃でメチルクロライドを26g圧入してメチル化を行った。その後、脱塩・濾過を行い、化合物(B1-3)を得た。
【0114】
(合成例12)化合物(B1-5)の合成:
原料アルコールの種類、エチレンオキシド等の仕込量を変化させたこと以外は、化合物(B1-1)と同様にして、化合物(B1-5)を得た。なお、化合物(B1-5)の合成では、原料アルコールとしてEXXAL9S(エクソンモービル社製)を用いた。
【0115】
(合成例13)化合物(B1-6)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、SAFOL23(サソール社製)を193.0gと、水酸化カリウム1.0gを仕込み、120℃まで加熱した。この温度を維持しつつ撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、110~130℃の温度範囲(設定温度120℃)でエチレンオキサイド660gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、150~160℃の温度範囲(設定温度155℃)でプロピレンオキシド116gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製の商品名:キョーワード600)を添加し、120℃にて減圧脱水を行った。その後、加圧濾過を行い、化合物(B1-6)を得た。
【0116】
(合成例14)化合物(B1-7)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、トリデシルアルコール(KHネオケム社製)を200.4gと、水酸化カリウム2.5gを仕込み、120℃まで加熱した。この温度を維持しつつ撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、140~160℃の温度範囲(設定温度150℃)でエチレンオキサイド1496gとプロピレンオキシド696gを同時に0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製の商品名:キョーワード600)を添加し、120℃にて減圧脱水を行った。その後、加圧濾過を行い、化合物(B1-7)を得た。
【0117】
(合成例15、16)化合物(B1-8)、(B1-9)の合成:
原料アルコールの種類、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド等の仕込量を変化させたこと以外は、化合物(B1-6)と同様にして、化合物(B1-8)、(B1-9)をそれぞれ得た。なお、化合物(B1-8)の合成では、原料アルコールとして1-デカノール(試薬、東京化成社製)を用い、化合物(B1-9)の合成では、原料アルコールとしてアンジェコール85AN(新日本理化社製)を用いた。
【0118】
(合成例17)化合物(B1-10)の合成:
原料アルコールを2-エチルヘキサノールにかえ、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド等の仕込量を変化させたこと以外は、化合物(B1-6)と同様にして、化合物(B1-10)を得た。
【0119】
(合成例18)化合物(B2-1)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、ファーミンCS(花王社製)を185.4g仕込み、減圧窒素置換により窒素雰囲気とした。その後、150~160℃の温度範囲(設定温度155℃)でエチレンオキサイド88gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、水酸化カリウム1.9gを仕込み、撹拌しながら減圧脱水を120℃で1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、120~140℃の温度範囲(設定温度130℃)でエチレンオキサイド1672gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製 商品名:キョーワード600)を添加し、120℃にて減圧脱水を行った。その後、加圧濾過を行い、化合物(B2-1)を得た。
【0120】
(合成例19)化合物(B2-2)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、Fentamine AHT(Solvay社製)を539.0gと水酸化カリウム1.4gを仕込み、撹拌しながら減圧脱水を120℃で1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、120~140℃の温度範囲(設定温度130℃)でエチレンオキサイド880gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製 商品名:キョーワード600)を添加し、120℃にて減圧脱水を行った。その後、加圧濾過を行い、化合物(B2-2)を得た。
【0121】
(合成例20)化合物(B2-3)の合成:
原料アミンを試薬のステアリルアミンとし、エチレンオキシド等の仕込量を変化させたこと以外は、化合物(B2-1)と同様にして、化合物(B2-3)を得た。
【0122】
(合成例21)化合物(B2-4)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、Fentamine AHT(Solvay社製)を269.5g仕込み、減圧窒素置換により窒素雰囲気とした。その後、150~160℃の温度範囲(設定温度155℃)でエチレンオキサイド88gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、水酸化カリウム1.7gを仕込み、撹拌しながら減圧脱水を120℃で1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、140~150℃の温度範囲(設定温度145℃)でエチレンオキサイド968gとプロピレンオキサイド348gを同時に0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、同じ条件でプロピレンオキシド116gを圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製 商品名:キョーワード600)を添加し、120℃にて減圧脱水を行った。その後、加圧濾過を行い、化合物(B2-4)を得た。
【0123】
(合成例22)化合物(B2-5)の合成:
原料アミンを試薬のヘキシルアミンとし、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の仕込量を変化させたこと以外は、化合物(B2-4)と同様にして、化合物(B2-5)を得た。
【0124】
(合成例23)化合物(B2-6)の合成:
ステンレス製の耐圧容器に、オレイルアミン(東京化成社製、試薬)を267.5g仕込み、減圧窒素置換により窒素雰囲気とした。その後、150~160℃の温度範囲(設定温度155℃)でエチレンオキサイド88gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、水酸化カリウム1.7gを仕込み、撹拌しながら減圧脱水を120℃で1時間行った。その後、窒素にて常圧に戻し、110~130℃の温度範囲(設定温度120℃)でエチレンオキサイド440gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、150~160℃の温度範囲(設定温度155℃)でプロピレンオキシド348gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製 商品名:キョーワード600)を添加し、120℃にて減圧脱水を行った。その後、加圧濾過を行い、化合物(B2-6)を得た。
【0125】
(合成例24)化合物(B2-7)の合成:
原料アミンをFentamine AHT(Solvay社製)とし、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の仕込量を変化させたこと以外は、化合物(B2-6)と同様にして、化合物(B2-7)を得た。
【0126】
【0127】
なお、表2中、「EO%」は、A2O中のEO(エチレンオキサイド)の割合(%)を示す。また、「A2Oの付加形態」は、A2Oがランダム付加であるか、或いは、ブロック付加であるかを示している。
【0128】
【0129】
なお、表3中、「EO%」は、A3O及びA4Oの合計中のEO(エチレンオキサイド)の割合(%)を示す。また、「A3O/A4Oの付加形態」は、A3O及びA4Oがランダム付加であるか、或いは、ブロック付加であるかを示している。
【0130】
(実施例1~34、比較例1~9)
次に、実施例1~34、比較例1~9におけるプレキャストコンクリートの成形方法について以下に説明する。
【0131】
(水硬性組成物製造工程)
まず、以下の配合1~配合4に基づいて水硬性組物を調製した(水硬性組成物製造工程)。
【0132】
なお、得られた水硬性組成物は、配合1では、目標スランプが18±1cmであり、目標空気量が4.5±0.5%である。また、配合2では、目標スランプが15±1.5cmであり、目標空気量が2.0%以下である。配合4では、目標スランプが8±1cmであり、目標空気量が4.5±0.5%である。スランプは、JIS A1101:2020に準拠して測定した。空気量は、JIS A1128:2019に準拠して測定した。なお、配合3における目標スランプフロー(20℃)は650±25mmであり、これは、JIS A 1150:2020に準拠して測定した。また、配合3における目標空気量は2.0%以下である。なお、スランプ及び空気量を測定時に水硬性組成物の温度も測定した。水硬性組成物の温度は、JIS A1156:2014に準拠して測定した。
【0133】
(配合1)
温度20℃、湿度80%の恒温室内において、55Lのパン型強制練りミキサーに、表4に示す所定割合の成分及び表8に示す成分(A)~成分(C)を所定の割合で一括投入して90秒間練り混ぜた。このとき、市販のポリカルボン酸系分散剤(チューポールNV-80)を固形分20%とした水溶液である「PCE1」をセメントに対して0.7質量%、AE剤(AE-200)をセメントに対して0.0025質量%、消泡剤(AFK-2)をセメントに対して0.0005質量%を練り混ぜ水の一部として使用した。
【0134】
このようにして、30Lの水硬性組成物(コンクリート)を調製した。調製したコンクリートの温度は20℃であった。調製したコンクリートは、練り混ぜてから15分以内に鋼製の型枠に充填して、後述する振動工程を行った。
【0135】
【0136】
表4中、「セメント」は、水硬性粉体であり、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、UBE三菱セメント株式会社製及び住友大阪セメント株式会社製の等量混合物)密度3.16g/cm3である。「水」は蒲郡市上水道水である。「細骨材」は、大井川水系陸砂(密度2.58g/cm3)である。「粗骨材」は、岡崎産砕石(密度2.68g/cm3)である。
【0137】
(配合2)
温度20℃、湿度80%の恒温室内において、55Lのパン型強制練りミキサーに、表5に示す所定割合の成分及び表9に示す成分(A)~成分(C)を所定の割合で一括投入して45秒間練り混ぜた。このとき、市販のナフタレン系分散剤(ポールファイン510AN)を固形分で40%とする水溶液である「NSF」を用い、セメント×1.0質量%を練り混ぜ水の一部として使用した。
【0138】
このようにして、30Lの水硬性組成物(コンクリート)を調製した。調製したコンクリートの温度は20℃であった。調製したコンクリートは、練り混ぜてから15分以内に鋼製の型枠に充填して、後述する振動工程を行った。
【0139】
【0140】
表5中、「セメント」は、水硬性粉体であり、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、UBE三菱セメント株式会社製及び住友大阪セメント株式会社製の等量混合物)密度3.16g/cm3である。「水」は蒲郡市上水道水である。「細骨材」は、大井川水系陸砂(密度2.58g/cm3)である。「粗骨材」は、岡崎産砕石(密度2.66g/cm3)である。
【0141】
(配合3)
1.5m3の容量の強制二軸ミキサーに、表6に示す所定割合の成分及び表9に示す成分(A)~成分(C)を所定の割合で一括投入し、60秒練り混ぜた。このとき、ポリカルボン酸系分散剤(チューポールNV-80E)を固形分で20%とする水溶液である「PCE2」をセメントに対して1.2質量%、消泡剤(AFK-2)をセメントに対して0.001質量%を練り混ぜ水の一部として使用した。
【0142】
このようにして、0.5m3の水硬性組成物(コンクリート)を調製した。外気温23℃、調製したコンクリートの温度は21℃であった。調製したコンクリートは、練り混ぜてから15分以内に鋼製の型枠に充填して、後述する振動工程を行った。
【0143】
【0144】
表6中、「セメント」は、水硬性粉体であり、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)密度3.16g/cm3である。「石灰石微粉末」は混和材の一種であり、タンカル200メッシュ(イナサス社製)密度2.72g/cm3である。「細骨材」は砕砂 密度2.57g/cm3である。「粗骨材」は、砕石2005 密度2.66g/cm3である。
【0145】
(配合4)
温度20℃、湿度80%の恒温室内において、55Lのパン型強制練りミキサーに、表7に示す所定割合の成分及び表9に示す成分(A)~成分(C)を所定の割合で一括投入して90秒間練り混ぜた。このとき、市販のポリカルボン酸系分散剤(チューポールNV-G5)を固形分20%とした水溶液である「PCE3」をセメントに対して0.60質量%、AE剤(AE-300)をセメントに対して0.0015質量%、を練り混ぜ水の一部として使用した。
【0146】
このようにして、30Lの水硬性組成物(コンクリート)を調製した。調製したコンクリートの温度は20℃であった。調製したコンクリートは、練り混ぜてから15分以内に鋼製の型枠に充填して、後述する振動工程を行った。
【0147】
【0148】
表7中、「セメント」は、水硬性粉体であり、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、UBE三菱セメント株式会社製及び住友大阪セメント株式会社製の等量混合物)密度3.16g/cm3である。「水」は蒲郡市上水道水である。「細骨材」は、大井川水系陸砂(密度2.58g/cm3)である。「粗骨材」は、岡崎産砕石(密度2.66g/cm3)である。
【0149】
(振動工程)
次に、調製した水硬性組成物を用いて、振動工程を行った。
【0150】
具体的には、ジョッキを用いて、内面にコンクリート用剥離剤(ポリゾンS:竹本油脂社製)を塗布した直径10cm、高さ20cmの円柱供試体用鋼製型枠内に、この型枠が満たされるようにコンクリート(水硬性組成物)を1度の操作で流し込んだ。その後、テーブルバイブレータ(丸東製作所製 テーブル・バイブレータ「CF-1033」)を用いて、水硬性組成物を充填した上記型枠に振動成形した。振動条件は、振動数2800vpm、全振幅0.8mm、振動時間30秒間とした。その後、20℃、湿度80%の恒温室に上記型枠を立てた状態で静置した。そして、24時間後に脱型を行い、プレキャストコンクリートのテスト品である円柱状のコンクリート硬化物を得た。
【0151】
なお、配合3の場合は、以下のように振動工程を行った。
【0152】
まず、剥離剤を塗布した落ちふた式U形側溝300B(幅500mm×奥行2000mm×高さ400mm)の鋼製型枠に、コンクリートバケットを用いてコンクリート(水硬性組成物)を打ち込んだ。その後、この鋼製型枠を型枠振動機(150W、振動数60Hz)で30秒間振動させ、そのまま蒸気養生を行った。この蒸気養生の条件は、以下のようにした。具体的には、打ち込み後2時間は外気温で静置し、その後、昇温速度15℃毎時で50℃まで昇温させた。その後、50℃で30分保持した。その後、そのままゆっくり温度を室温まで戻した。次に、打ち込みから15時間後に脱型を行い、プレキャストコンクリートのテスト品であるコンクリート硬化物を得た。
【0153】
<表面気泡占有率(%)>
(配合1、2、4)
配合1、2、4における円柱状のコンクリート硬化物は、以下のようにして表面気泡占有率(%)を算出した。
【0154】
具体的には、得られた円柱状のコンクリート硬化物の側面(曲面)をハンディスキャナー(サンワダイレクト社製の「400-SCN032」、解像度900dpi)でスキャンし、スキャン画像をビットマップ画像編集・加工ソフトウェア「GIMP 2.10.20」を用いて、2値化処理した。2値化処理をする際の閾値は、元のスキャン画像の気泡痕数と処理画像の気泡痕数が同等となるように設定した。なお、2値化処理をする際には、コンクリート硬化物に残った型枠の境界線や、硬化不良や油じみによる黒ずみなどの色むらが「黒」として認識されることがある。そのため、これらの部分は削除して「白」とした。このようにして、黒として認識される気泡痕と白として認識される気泡痕以外の部分とに分けた。
【0155】
その後、気泡占有率、即ち、スキャン画像におけるコンクリート硬化物の側面全体に対する気泡痕に相当する部分の割合(%)を算出した。そして、基準となる試験品である比較例1、5、8の各コンクリート硬化物(基準品)の気泡占有率に対する各コンクリート硬化物の気泡占有率の割合(式:各コンクリート硬化物の気泡占有率/基準品の気泡占有率×100(%))を算出した。算出した数値(%)に基づいて表面美観(即ち、気泡痕の発生の程度)を評価した。評価基準を以下に示す。なお、基準品の表面美観評価の欄には「基準」と記す。
【0156】
(配合3)
また、配合3におけるコンクリート硬化物は、以下のようにして表面気泡占有率(%)を算出した。
【0157】
具体的には、コンクリート硬化物の側面(曲面)部分の写真を16Mサイズ(4608×3456ピクセル)で片側7分割し、合計14枚撮影して画像を得た。得られた画像をビットマップ画像編集・加工ソフトウェア「GIMP 2.10.20」を用いて、2値化処理した。2値化処理をする際の閾値は、元の画像の気泡痕数と処理画像の気泡痕数が同等となるように設定した。なお、2値化処理をする際には、コンクリート硬化物に残った型枠の境界線、硬化不良や油じみによる黒ずみなどの色むらが「黒」として認識されることがある。これらの部分は削除して「白」とした。そして、黒として認識される気泡痕と白として認識される気泡痕以外の部分とに分けた。
【0158】
その後、気泡占有率、即ち、スキャン画像におけるコンクリート硬化物の側面全体に対する気泡痕に相当する部分の割合(%)を算出した。そして、基準となる試験品である比較例7のコンクリート硬化物(基準品)の気泡占有率に対する各コンクリート硬化物の気泡占有率の割合(式:各コンクリート硬化物の気泡占有率/基準品の気泡占有率×100(%))を算出した。算出した数値(%)に基づいて表面美観(即ち、気泡痕の発生の程度)を評価した。評価基準を以下に示す。なお、基準品(比較例7)の表面美観評価の欄には「基準」と記す。
【0159】
(評価基準)
S:基準品の気泡占有率に対する各コンクリート硬化物の気泡占有率の割合が、30%未満である場合
A:基準品の気泡占有率に対する各コンクリート硬化物の気泡占有率の割合が、30%以上で50%未満である場合
B:基準品の気泡占有率に対する各コンクリート硬化物の気泡占有率の割合が、50%以上で70%未満である場合
C:基準品の気泡占有率に対する各コンクリート硬化物の気泡占有率の割合が、70%以上で90%未満である場合
D:基準品の気泡占有率に対する各コンクリート硬化物の気泡占有率の割合が、90%以上である場合
【0160】
【0161】
【0162】
なお、表8中、「PCE1」は、市販のポリカルボン酸系分散剤(チューポールNV-80)を固形分20%とした水溶液である。表9中、「PCE2」は、市販のポリカルボン酸系分散剤(チューポールNV-80E)を固形分で20%とする水溶液である。「PCE3」は、市販のポリカルボン酸系分散剤(チューポールNV-G5)を固形分20%とした水溶液である。「NSF」は、市販のナフタレン系分散剤(ポールファイン510AN)を固形分40%とする水溶液である。配合3の条件では、流動性が高い水硬性組成物であったため、スランプフローを測定し、併せてスランプを測定した。
【0163】
(結果)
表8、表9に示すように、本実施例のプレキャストコンクリートの成形方法によれば、表面気泡占有率を低くすること、即ち、表面美観性を向上させることができることが確認された。
本発明のプレキャストコンクリートの成形方法は、プレキャストコンクリートを成形する方法として採用することができる。また、本発明の水硬性組成物は、プレキャストコンクリートを形成するものとして利用することができる。本発明のプレキャストコンクリートは、コンクリート製品として利用することができる。