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特開2024-152037波形解析方法、波形解析装置、及び分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152037
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】波形解析方法、波形解析装置、及び分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20241018BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
G01N30/86 B
G01N27/62 D
G01N27/62 C
G01N27/62 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065939
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北嶋(吉山) 仁望
(72)【発明者】
【氏名】金澤 慎司
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041EA06
2G041HA01
2G041LA12
2G041LA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動でピーク検出を行う際により正確なピーク情報を提供する。
【解決手段】クロマトグラム等の信号波形を解析する方法であって、参照波形を分割することにより作成された複数の部分波形からなる組を機械学習によって、入力される波形に含まれるピーク部分を特定する学習済みモデルを作成するステップと、解析対象波形を複数の部分波形に分割し、複数の部分波形の各々がピーク部分であるか否かを判定し、解析対象波形における、重畳ピーク領域等を含む複数の異なる種類の領域を推定するステップと、重畳ピーク領域であると推定された領域に含まれる重畳ピークについて、複数のピークのうちのいずれか一つ若しくは複数のピークの高さ、隣接する二つピークの間の谷の深さ、谷の底部と谷を挟む一方のピークの頂部との間の横軸方向の幅、の少なくともいずれか一つの情報を用い、一つの成分による多峰性ピークであるか否かを判定するステップと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラム又はスペクトルである信号波形を解析する波形解析方法であって、
ピーク部分の位置が既知である参照波形を分割することにより作成された複数の部分波形からなる組を複数用いた機械学習によって、入力される波形に含まれるピーク部分を特定する学習済みモデルを作成するモデル作成ステップと、
解析対象波形を複数の部分波形に分割し、前記学習済みモデルを用いて該複数の部分波形のそれぞれがピーク部分であるか否かを判定し、該判定の結果に基いて、前記解析対象波形における、単一ピーク領域、重畳ピーク領域、及び非ピーク領域を含む複数の異なる種類の領域を推定する領域推定ステップと、
前記領域推定ステップにおいて重畳ピーク領域であると推定された領域に含まれる重畳ピークについて、複数のピークのうちのいずれか一つ若しくは複数のピークの高さ、複数のピークのうちの隣接する二つピークの間の谷の深さ、又は、該谷の底部と該谷を挟む一方のピークの頂部との間の横軸方向の幅、の少なくともいずれか一つの情報を用い、一つの成分による多峰性ピークであるか否かを判定する多峰性判定ステップと、
を有する波形解析方法。
【請求項2】
前記多峰性判定ステップにおいて多峰性ピークであると判定された場合に、該多峰性ピークを単一ピークとして扱えるように統合する統合ステップ、をさらに有する、請求項1に記載の波形解析方法。
【請求項3】
ユーザーの選択に応じて前記統合ステップによる統合の実行の有無を切り替える、請求項2に記載の波形解析方法。
【請求項4】
前記重畳ピーク領域は、重畳ピークの分割方法に応じて、垂直分割ピーク領域を含む複数種類の領域に細分化されており、前記多峰性判定ステップでは、垂直分割ピーク領域に対応するピークについて多峰性ピークであるか否かを判定する、請求項1に記載の波形解析方法。
【請求項5】
前記多峰性判定ステップでは、メインピーク又はショルダーピークの高さが所定の閾値以下であることを多峰性ピークである条件の一つとする、請求項1に記載の波形解析方法。
【請求項6】
前記多峰性判定ステップでは、メインピークとショルダーピークとの高さの比率、隣接する二つのピークの間の谷の深さとそのいずれか一方のピークの高さとの比率、又は、該谷の底部といずれか一方のピークの頂部との間の幅、の少なくともいずれか一つを用いて多峰性ピークの判定を行う、請求項1に記載の波形解析方法。
【請求項7】
前記多峰性判定ステップでは、重畳ピーク領域におけるSN比、分離度、シンメトリー係数、面積、又は、ピーク幅のうちのいずれか一つ以上を計算し、その計算結果を多峰性ピークの判定に併せて利用する、請求項1に記載の波形解析方法。
【請求項8】
前記信号波形はクロマトグラフ質量分析により得られたクロマトグラムであり、前記多峰性判定ステップでは、同一成分についての定量イオンのクロマトグラムに対する判定結果と確認イオンのクロマトグラムに対する判定結果との両方を利用して多峰性ピークを判定する、請求項1に記載の波形解析方法。
【請求項9】
前記多峰性判定ステップでは、目的化合物に関する化合物情報を多峰性ピークの判定に利用する、請求項1に記載の波形解析方法。
【請求項10】
前記多峰性判定ステップでは、重畳ピーク波形に対してスムージング処理を行う前後の波形の差異を多峰性ピークの判定に利用する、請求項1に記載の波形解析方法。
【請求項11】
クロマトグラム又はスペクトルである信号波形を解析する波形解析装置であって、
解析対象波形を複数の部分波形に分割し、ピーク部分の位置が既知である参照波形を分割することにより作成された複数の部分波形からなる組を複数用いた機械学習によって作成された学習済みモデルを使用して、前記解析対象波形の複数の部分波形のそれぞれがピーク部分であるか否かを判定し、該判定の結果に基いて、前記解析対象波形における、単一ピーク領域、重畳ピーク領域、及び非ピーク領域を含む複数の異なる種類の領域を推定する領域推定部と、
前記領域推定部により重畳ピーク領域であると推定された領域に含まれる重畳ピークについて、複数のピークのうちのいずれか一つ若しくは複数のピークの高さ、複数のピークのうちの隣接する二つピークの間の谷の深さ、又は、該谷の底部と該谷を挟む一方のピークの頂部との間の横軸方向の幅、の少なくともいずれか一つの情報を用い、一つの成分による多峰性ピークであるか否かを判定する多峰性判定部と、
を備える波形解析装置。
【請求項12】
前記多峰性判定部により多峰性ピークであると判定された場合に、該多峰性ピークを単一ピークとして扱えるように統合する統合部、をさらに備える、請求項11に記載の波形解析装置。
【請求項13】
前記統合部による統合の実行の有無を切り替えるためのユーザーによる選択操作を受け付ける操作部、をさらに備える請求項12に記載の波形解析装置。
【請求項14】
前記重畳ピーク領域は、重畳ピークの分割方法に応じて、垂直分割ピーク領域を含む複数種類の領域に細分化されており、
前記多峰性判定部は、垂直分割ピーク領域に対応するピークについて多峰性ピークであるか否かを判定する、請求項11に記載の波形解析装置。
【請求項15】
前記多峰性判定部は、メインピーク又はショルダーピークの高さが所定の閾値以下であることを多峰性ピークである条件の一つとする、請求項11に記載の波形解析装置。
【請求項16】
前記多峰性判定部は、メインピークとショルダーピークとの高さの比率、隣接する二つのピークの間の谷の深さとそのいずれか一方のピークの高さとの比率、又は、該谷の底部といずれか一方のピークの頂部との間の幅、の少なくともいずれか一つを用いて多峰性ピークの判定を行う、請求項11に記載の波形解析装置。
【請求項17】
前記多峰性判定部は、重畳ピーク領域におけるSN比、分離度、シンメトリー係数、面積、又は、ピーク幅のうちのいずれか一つ以上を計算し、その計算結果を多峰性ピークの判定に併せて利用する、請求項11に記載の波形解析装置。
【請求項18】
前記信号波形はクロマトグラフ質量分析により得られたクロマトグラムであり、前記多峰性判定部は、同一成分についての定量イオンのクロマトグラムに対する判定結果と確認イオンのクロマトグラムに対する判定結果との両方を利用して多峰性ピークを判定する、請求項11に記載の波形解析装置。
【請求項19】
前記多峰性判定部は、目的化合物に関する化合物情報を多峰性ピークの判定に利用する、請求項11に記載の波形解析装置。
【請求項20】
前記多峰性判定部は、重畳ピーク波形に対してスムージング処理を行う前後の波形の差異を多峰性ピークの判定に利用する、請求項11に記載の波形解析装置。
【請求項21】
請求項11~20のいずれか1項に記載の波形解析装置をデータ解析部として備える、クロマトグラフ装置、質量分析装置、分光測定装置のいずれか一つである分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置により取得された信号波形を解析する方法及び装置、並びに、そうした波形解析装置を備えた分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ(GC)や液体クロマトグラフ(LC)等の分析装置により取得されるクロマトグラムには、試料に含まれる成分由来のピークが現れる。そうした分析装置に備えられたデータ装置では、一般に、分析により得られたクロマトグラムに対する波形処理を行うことでピークが検出され、検出された複数のピークに対し同定処理を行うことで目的化合物のピークが同定される。また、同定されたピークの面積又は高さから、該ピークに対応する化合物の濃度や含有量が算出される。
【0003】
これまでピークを検出する方法として様々な方法が実用に供されているが、近年、新たなピーク検出方法として、機械学習を利用した方法が提案され実用化されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の記載に波形解析方法では、ピーク部分の位置が既知である参照波形を時間軸方向に細かく分割することで作成された複数の部分波形を含む組を参照波形毎に用意し、多数組の参照波形毎の部分波形を用いた機械学習によって、入力波形に含まれるピーク部分に相当する部分波形を特定する学習済みモデルを作成する。解析対象波形も参照波形と同様に複数の部分波形に分割し、学習済みモデルを用いてその複数の部分波形のそれぞれがピーク部分であるか否かを判定する。そして、その判定結果に基いて解析対象波形のうちのピーク領域とそれ以外の領域とを決定する。ピーク部分以外に、ピーク開始点、ピーク終了点に対応する部分波形を用いた機械学習を行うことで、解析対象波形における複数の部分波形の中で、ピーク開始点、ピーク終了点に対応する部分波形も見つけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/064924号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Peakintelligence for LCMS LabSolutions LCMS、LabSolutions Insight向け波形処理オプションソフトウェア」、[online]、[2023年3月16日検索]、株式会社島津製作所、インターネット<URL:https://www.an.shimadzu.co.jp/products/liquid-chromatograph-mass-spectrometry/lc-ms-software/peakintelligence/index.html>
【非特許文献2】Olaf Ronneberger、ほか2名、「U-Net: Convolutional Networks for Biomedical Image Segmentation」、[online]、[Submitted on 18 May 2015]、arXiv.org、インターネット<URL: https://arxiv.org/pdf/1505.04597.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クロマトグラム等の波形では、しばしば複数の成分由来のピークが重なって観測される。そのため、特許文献1に記載の波形解析方法においても、重畳ピークを分離するために、テーリング処理、完全分離、垂直分割等の処理を行い得ることが示されている。機械学習を利用したピーク検出では、様々な重畳ピークの波形形状とピーク開始点、終了点等を学習することで、解析対象の重畳ピークがいずれの分離手法で最も適切に分離されるものかを判定することができる。
【0008】
特に成分濃度が低いサンプルをガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)や液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)により分析して得られるクロマトグラムでは、目的成分由来のイオンの数が少ないためにピークが多峰形状で現れることがある。多峰形状のピーク(以下「多峰性ピーク」という)は、見かけ上、重畳ピークと区別がつきにくい。そのため、従来の機械学習を用いたピーク検出法では、多峰性ピークの谷部分をピークの終了点及び開始点と判断してしまうケースがあり、それがピーク誤検出の一つの要因となっていた。
【0009】
本発明の目的は、機械学習を利用したピーク検出処理において、特に成分濃度が低い等の理由によってピークが多峰形状になった場合であっても、重畳ピークであるとの誤判定を軽減し多峰性ピークを的確に認識することができる波形解析方法及び波形解析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る波形解析方法の一態様は、クロマトグラム又はスペクトルである信号波形を解析する波形解析方法であって、
ピーク部分の位置が既知である参照波形を分割することにより作成された複数の部分波形からなる組を複数用いた機械学習によって、入力される波形に含まれるピーク部分を特定する学習済みモデルを作成するモデル作成ステップと、
解析対象波形を複数の部分波形に分割し、前記学習済みモデルを用いて該複数の部分波形のそれぞれがピーク部分であるか否かを判定し、該判定の結果に基いて、前記解析対象波形における、単一ピーク領域、重畳ピーク領域、及び非ピーク領域を含む複数の異なる種類の領域を推定する領域推定ステップと、
前記領域推定ステップにおいて重畳ピーク領域であると推定された領域に含まれる重畳ピークについて、複数のピークのうちのいずれか一つ若しくは複数のピークの高さ、複数のピークのうちの隣接する二つピークの間の谷の深さ、又は、該谷の底部と該谷を挟む一方のピークの頂部との間の横軸方向の幅、の少なくともいずれか一つの情報を用い、一つの成分による多峰性ピークであるか否かを判定する多峰性判定ステップと、
を有する。
【0011】
本発明に係る波形解析装置の一態様は、クロマトグラム又はスペクトルである信号波形を解析する波形解析装置であって、
解析対象波形を複数の部分波形に分割し、ピーク部分の位置が既知である参照波形を分割することにより作成された複数の部分波形からなる組を複数用いた機械学習によって作成された学習済みモデルを使用して、前記解析対象波形の複数の部分波形のそれぞれがピーク部分であるか否かを判定し、該判定の結果に基いて、前記解析対象波形における、単一ピーク領域、重畳ピーク領域、及び非ピーク領域を含む複数の異なる種類の領域を推定する領域推定部と、
前記領域推定部により重畳ピーク領域であると推定された領域に含まれる重畳ピークについて、複数のピークのうちのいずれか一つ若しくは複数のピークの高さ、複数のピークのうちの隣接する二つピークの間の谷の深さ、又は、該谷の底部と該谷を挟む一方のピークの頂部との間の横軸方向の幅、の少なくともいずれか一つの情報を用い、一つの成分による多峰性ピークであるか否かを判定する多峰性判定部と、
を備える。
【0012】
さらに本発明に係る分析装置の一態様は、本発明に係る波形解析装置のいずれかの態様をデータ解析部として備える、クロマトグラフ装置、質量分析装置、光学測定装置のいずれか一つである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る波形解析方法及び波形解析装置の上記態様によれば、機械学習を利用したピーク検出処理によって異なる成分由来のピークが重なった重畳ピークであると判定された場合であっても、該ピーク検出処理後に実施する波形処理によってその重畳ピークが一つの成分に由来する多峰性ピークであるか否かを判定し、その判定結果をユーザーに知らせたり、或いは人手を掛けずに重畳ピークであることの推定結果を修正したりすることができる。それにより、例えば成分濃度が低いような場合に出現しがちである多峰性ピークも含め、自動化によるピーク検出の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る波形解析方法を実施する分析装置の一実施形態の概略構成図。
図2】本実施形態の分析装置における学習済みモデル作成処理の手順を示すフローチャート。
図3】本実施形態の分析装置における解析対象クロマトグラム波形上のピーク検出処理の手順を示すフローチャート。
図4】多峰性ピークの判定処理の一例を示す波形図。
図5】多峰性ピークの判定処理の一例を示す波形図。
図6】多峰性ピークの判定処理の一例を示す波形図。
図7】重畳ピークの分割方法を説明するための波形図。
図8】多峰性ピークの統合方法の一例を説明するための図。
図9】多峰性ピークの統合方法の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る上記態様の波形解析方法及び波形解析装置において、信号波形は、GC-MSを含むGC装置で得られるクロマトグラム、LC-MSを含むLC装置で得られるクロマトグラムのほか、電気泳動装置で得られるエレクトロフェログラムなども含む。検出器が質量分析装置であるGC装置、LC装置では、クロマトグラムは、トータルイオン(トータルイオンカレント)クロマトグラム、抽出イオンクロマトグラムを含む。また、スペクトルは、質量分析装置で得られるマススペクトル(セントロイド処理がなされていないプロファイルスペクトル)、飛行時間型質量分析装置で得られる、マススペクトルに変換する前の飛行時間スペクトル、分光測定装置や蛍光測定装置等の光学測定装置で得られる光強度スペクトル、X線分析装置で得られるX線強度スペクトルなどを含む。
【0016】
以下、本発明に係る波形解析方法が実施される波形解析装置を含む分析装置の一実施形態であるLCシステムについて、添付の図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のLCシステムA及び該システムに用いられる学習済みモデルを作成するシステムBの概略構成図である。
【0017】
本実施形態におけるLCシステムAは、LC測定部1、データ解析部2、入力部24、及び表示部25を備える。図示しないが、LC測定部1は、送液ポンプ、インジェクター、カラム、カラムオーブン、検出器などを含み、与えられたサンプルに対しLC分析を実行し、検出器で得られる信号強度の時間的な変化を示すクロマトグラムデータを取得する。検出器の種類や方式は特に問わないが、例えば質量分析装置、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器などを用いることができる。
【0018】
データ解析部2は、データ収集部20、ピーク検出処理部21、定性・定量解析部22、表示処理部23などの機能ブロックを含む。ピーク検出処理部21は、波形前処理部210、判定部211、学習済みモデル記憶部212、領域決定部213、多峰性ピーク候補抽出部214、多峰性ピーク判定部215、多峰性ピーク統合部216などの機能ブロックを含む。
【0019】
データ解析部2において、データ収集部20はLC測定部1で得られたクロマトグラムデータを収集しこれを記憶する。ピーク検出処理部21は、入力部24でユーザーから受けた指示に応じて、収集されたクロマトグラムデータにより構成されるクロマトグラム波形においてピークを自動的に検出し、検出したピークの開始位置及び終了位置(保持時間)、ピーク領域の範囲などを含むピーク情報を出力する。定性・定量解析部22は、ピーク検出処理部21から与えられたピーク情報に基いて、各ピークに対応する成分(化合物)を同定したり、ピーク高さ値やピーク面積値を計算し、その値から各成分の濃度又は含有量である定量値を算出したりする。表示処理部23は、ピーク検出結果やそれに基いて算出された定量値などの計算値を、所定の形式で表示部25に表示する。
【0020】
一般に、データ解析部2の実体は、所定のソフトウェア(コンピュータープログラム)がインストールされたパーソナルコンピューター若しくはより性能の高いワークステーション、又は、そうしたコンピュータと通信回線を介して接続された高性能なコンピューターを含むコンピューターシステムである。即ち、データ解析部2に含まれる各ブロックの機能は、コンピューター単体又は複数のコンピューターを含むコンピューターシステムに搭載されているソフトウェアを該コンピューターで実行することによって具現化される。勿論、それら機能のうちの一部を、デジタルシグナルプロセッサ―などの特定の演算に特化したハードウェア回路を用いて実行するようにしてもよい。
【0021】
上記コンピュータープログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、メモリーカード、USBメモリー(ドングル)などの、コンピューターが読み取り可能である非一時的な記憶媒体に格納されてユーザーに提供されるものとすることができる。また、上記プログラムは、インターネットなどの通信回線を介したデータ転送の形式で、ユーザーに提供されるようにすることもできる。さらにまた、上記プログラムは、ユーザーがシステムを購入する時点で、システムの一部であるコンピューター(厳密にはコンピューターの一部である記憶装置)にプリインストールしておくこともできる。
【0022】
図1において、LCシステムAとは別に設けられているシステムBはモデル作成部3を含み、モデル作成部3は、学習データ記憶部30、学習実行部31、及びモデル記憶部32を機能ブロックとして含む。このモデル作成部3において作成される学習済みモデルが、LCシステムAのデータ解析部2における学習済みモデル記憶部212に格納される。
【0023】
詳しくは後述するが、一般に、学習済みモデルを作成する作業には膨大な計算量が必要である。そのため、システムBの実体は高性能なコンピューターであり、該コンピューターにインストールされたソフトウェアを該コンピューターで実行することにより各ブロックの機能は具現化される。勿論、システムBをLCシステムAと一体化するようにしても構わない。
【0024】
次に、データ解析部2のピーク検出処理部21を中心として実行されるピーク検出処理について説明する。
ごく概略的にいうと、ピーク検出処理部21では、クロマトグラムデータにより構成されるクロマトグラム波形を画像化したうえで、画像上に存在する物体のカテゴリーと位置とを検出する機械学習の一手法である、ディープラーニング(Deep Learning)によるセマンティックセグメンテーションの手法を用いることによって、後述する複数種類の領域それぞれの位置又は範囲を検出している。
【0025】
[学習済みモデルの作成]
よく知られているように、機械学習法では、多数の学習データ(訓練データ及び検証データ)を用いて学習済みモデルを予め構築しておく必要がある。上述したように、この学習済みモデルの構築の作業は、LCシステムAの一部であるデータ解析部2において行われるのではなく、別のコンピュータシステムにより構成されるモデル作成部3で実施され、その結果が学習済みモデル記憶部212に格納される。図2は、モデル作成部3において実施される学習済みモデル作成処理の概略手順を示すフローチャートである。
【0026】
学習済みモデルを作成する際には、まず参照波形に基く学習データが準備される(ステップS1)。ここでは、多数の多様なクロマトグラム波形が参照波形として用いられる。ここでいう多様なクロマトグラム波形とは、好ましくは、実際にピーク検出を実施する際のクロマトグラム波形に現れる可能性がある、様々なノイズの混入、ベースラインの変動(ドリフト)、複数のピークの重なり、或いは、ピーク形状の変形、などの要素を含むクロマトグラム波形である。但し、このクロマトグラム波形データは、実際のLC分析によって収集されたデータでなく、シミュレーションによって作成されたデータであってもよい。
【0027】
参照波形であるクロマトグラム波形に対しては予めピーク検出が実施され、該波形上の一又は複数のピークについて開始点及び終了点が正確に求められている。このクロマトグラム波形は信号強度、つまりグラフにおける縦軸が規格化された状態で画像化され、さらに横軸つまり時間軸方向に所定数の部分元波形に分割されている。この分割数は、各部分波形の幅(時間軸方向の長さ)が少なくともピーク幅よりも小さくなるように定められる。従って、分割数は想定されるピーク幅の最小値に応じて適宜設定され得る。
【0028】
一つのクロマトグラム波形は多数の部分波形により構成される。各部分波形を構成するデータには、当該部分波形が複数種類の領域のいずれに該当するのかを示す特性情報が対応付けられている。ここでは、その複数種類の領域とは、クロマトグラム波形上のピーク部分に対応し且つそのピークが他のピークの重なりがない単一のピークである単一ピーク領域、クロマトグラム波形上のピーク部分に対応し且つそのピークが他のピークが重なっていてピークの分割方法としてテーリング処理が適しているテーリング処理ピーク領域、クロマトグラム波形上のピーク部分に対応し且つそのピークが他のピークが重なっていてピークの分割方法として完全分離が適している完全分離ピーク領域、クロマトグラム波形上のピーク部分に対応し且つそのピークが他のピークが重なっていてピークの分割方法として垂直分割が適している垂直分割ピーク領域、ピークの開始点を含むピーク開始領域、ピークの終了点を含むピーク終了領域、ピーク部分ではない(通常はベースラインである)非ピーク領域、の7種類である。なお、テーリング処理ピーク領域、完全分離ピーク領域、及び垂直分割ピーク領域は、複数のピークが重なっている領域であることから、それらを合わせて重畳ピーク領域と呼ぶ。
【0029】
ここで、ピークの分割方法について図7により簡単に説明する。
テーリング処理とは、図7(A)に示すように、対象とする重畳ピークの開始点から終了点までを一つのピークとし、そのピーク上にもう一つのピークを重ね合わせた形で二つのピークに分割する方法である。完全分離とは、図7(B)に示すように、対象とする重畳ピークの開始点、極小点、及び終了点を順に直線で結んで二つのピークに分離する方法である。垂直分割とは、図7(C)に示すように、対象である重畳ピークの極小点を通る垂線によって二つのピークを分離する方法である。これらは機械学習を用いたピーク検出法に限らず、従来の一般的なピーク検出で用いられている方法である。
【0030】
テーリング処理では、二つのピークの開始点と終了点が、保持時間が短い側から、一つ目のピーク開始点と二つ目のピーク開始点とが順に存在し、そのあとに一つ目のピーク終了点と二つ目のピーク終了点とが順に存在する。一方、完全分離や垂直分割では、保持時間が短い側から、一つ目のピーク開始点と終了点とが順に存在し、続いて二つ目のピーク開始点と終了点とが順に存在する。なお、これら分割方法以外に、ガウス関数等のモデル関数を用いたフィッティングによりピークを分離する場合もある。
【0031】
上記のような7種類の領域に分類するために、参照波形として、単一ピークを含む参照波形、テーリング処理、完全分離、垂直分割のそれぞれの方法によってピーク分離された重畳ピークを含む参照波形を用意し、その参照波形を分割することによって作成された複数の部分波形からなる参照波形毎の組を、複数組用意する。各部分波形にはそれぞれ、いずれの領域に対応するかを示す特性情報が付加される。学習データ記憶部30には、多数のクロマトグラム波形をそれぞれ構成する部分波形データとそれに対応付けられた特性情報とがまとめて記憶される。なお、学習データは、予め訓練用データと検証用データとに分けられていてもよいし、そうした区分けがなく学習実行時に適宜訓練用データ又は検証用データのいずれかとして使用されてもよい。
【0032】
学習モデルの作成開始が指示されると、学習実行部31は、未学習の学習モデルを準備する(ステップS2)。この学習モデルには、セマンティックセグメンテーションを実行可能な種々のものを用いることができる。セマンティックセグメンテーションは、一般に、2次元的に分布する画素データで構成された画像を解析するために用いられるが、ここでは、時間軸に沿って一次元的に並ぶデータで構成されるクロマトグラムの波形の解析に適用される。セマンティックセグメンテーションを実行可能な学習モデルとして、ここではU-Net(非特許文献2参照)を用いるが、SeGNet、PSPNetなどの他の学習モデルでもよい。
【0033】
次に学習実行部31は、学習データ記憶部30から学習データ(部分波形データ及び特性情報)を読み込む(ステップS3)。学習実行部31は、読み込んだ学習データを用いた機械学習を実施し、与えられた部分波形がいずれの領域に相当するのかを推定するための学習モデルを構築する(ステップS4)。ここでは、その学習手順については詳しく述べないが、例えば特許文献1に記載の手順に従って学習済みモデルを構築することができる。
【0034】
モデル記憶部32は、多数の学習データを用いた機械学習により作成された学習済みモデルを保存する(ステップS5)。LCシステムAにおける学習済みモデル記憶部212には、モデル記憶部32に保存された学習済みモデルが例えば通信回線を介して伝送され格納される。
【0035】
[解析対象波形に対するピーク検出処理]
次に、LCシステムAにおけるデータ解析部2で実行される、目的サンプルに対して得られたクロマトグラム波形上のピークの検出処理を説明する。図3はピーク検出処理部21において行われるピーク検出処理の概略的な流れを示すフローチャートである。
【0036】
まず、波形前処理部210は、解析対象であるクロマトグラム波形データをデータ収集部20から読み込む(ステップS11)。波形前処理部210は、読み込んだデータの信号強度を規格化したうえで画像化し、さらに画像化されたクロマトグラム波形を横軸(時間軸)方向に所定数の部分波形に分割する(ステップS12)。この分割数は上記学習データにおける分割数と同じであってもよいが、部分波形の幅がピーク幅よりも小さければ異なる数であってもよい。
【0037】
続いて、判定部211は、学習済みモデル記憶部212から学習済みモデルを読み出し、該学習済みモデルに部分波形を順次入力する。学習済みモデルは、入力された部分波形が、単一ピーク領域、テーリング処理ピーク領域、完全分離ピーク領域、垂直分割ピーク領域、ピーク開始領域、ピーク終了領域、非ピーク領域という7種類の、各領域に相当するものであるか否かを判定する。具体的には、ここでは、判定部211は学習済みモデルを用い、部分波形毎に各領域に相当する可能性を示す確度情報を数値として算出する(ステップS13)。この確度の数値が高いほど、その部分波形はその領域である可能性が高いことを示している。このようにして判定部211からは、入力されたクロマトグラム波形を構成する全ての部分波形について、それぞれ単一ピーク領域、ピーク開始領域等の各領域における確度情報が付与された状態で出力される。
【0038】
領域決定部213は、判定部211からの出力を受けて、部分波形毎に最も高い確度を示す領域をその部分波形に対応する領域であると判断し、各部分波形に相当する領域の種類を決定する(ステップS14)。これによって、クロマトグラム波形全体を構成する全ての部分波形がいずれかの領域に分類される。
【0039】
通常、学習済みモデルを用いた判定によってクロマトグラム上のピークはかなり正確に検出されるものの、一つの成分(化合物)に由来するピークが複数に割れる多峰性ピークは見かけ上、重畳ピークに類似しているため、多峰性ピークを重畳ピークであると誤って判定してしまう場合がある。本実施形態のシステムでは、ピークの検出精度を向上させるために、機械学習を用いた上述したような判定の後処理として、多峰性ピークであるか否かを判定し、多峰性ピークである場合にそれを統合して一つのピークに修正する機能を有している。
【0040】
多峰性ピークは例えば、検出器として質量分析装置を使用した場合であってサンプル中の成分濃度が低いような場合に出現し易い。何故なら、成分濃度が低いと、質量分析装置のイオン源において生成されるイオンの数が元々少ないために、該装置におけるイオン生成効率や通過効率、検出効率の変動などの影響が検出信号の変動に顕著に現れ易いためである。また、そのピーク波形形状は、本来は一つであるピークの一部分が欠損した(凹んだ)形状になり易い。そのため、ステップS13、S14においてテーリング処理ピーク領域や完全分離ピーク領域であると誤判定されるケースは少なく、多くは、垂直分割ピーク領域であると誤判定される傾向にある。
【0041】
そこでまず、多峰性ピーク候補抽出部214は、領域決定部213による領域の決定結果を受けて、垂直分割ピーク領域と判定されたピーク部分(通常は連続する複数の部分波形)を抽出する。さらに、抽出されたピーク部分のそれぞれにおいて、ショルダーピーク(他のより波高値の大きなピークの裾に乗っているピーク)の高さ(垂直分割におけるベースラインからピークトップまでの高さ)が所定の閾値以下であるか否かを判定し、該閾値以下であるショルダーピークを含むピーク部分を多峰性ピーク候補として抽出する(ステップS15)。後者は、濃度が或る程度低い成分に対応するピークを抽出するためである。
【0042】
次に、多峰性ピーク判定部215は、多峰性ピーク候補についてそれぞれ、以下の三つの条件を共に満たすか否かを判定し、三条件を満たすピークを多峰性ピークであると判断する(ステップS16)。
<条件1> 一つの多峰性ピークの中でショルダーピークPsの高さHsが、最も高いメインピークPmの高さHmの一定比率T以下である(図4参照)。ここで比率Tは適宜に決めることができるが、例えば60~95%程度の範囲に定めることができ、一例として90%とすることができる。
【0043】
<条件2> 時間方向につまりは横軸上で隣接する二つのピークの間の谷の深さが一方のピークの高さの一定比率以下である。ここでは、図5に示すように、メインピークPmとショルダーピークPsとの間の谷の深さ(谷の底部とショルダーピークPsのピークトップとの高さの差)Vが、ショルダーピークPsの高さHsの一定比率M以下であるか否かを判定している。この比率Mも適宜に決めることができるが、例えば5~30%程度の範囲に定めることができ、一例として10%とすることができる。
【0044】
<条件3> 上記条件2における谷の底部といずれか一方のピーク(ここではショルダーピークPs)のピークトップとの間の時間Wに得られたデータ点数が、所定の閾値N以下である(図6参照)。この閾値Nも適宜に決めることができるが、例えば3~10程度の範囲に定めることができ、一例として5とすることができる。
【0045】
検出器が質量分析装置である場合、多峰性ピークは、上述したように該装置におけるイオンの生成効率、通過効率等の変動に起因し、検出されるイオン数が一時的に減少することによって出現することが多い。そのため、多峰性ピークでは複数のピークの高さが同程度であるようなケースは稀である。そこで、条件1を課すことで、複数のピークの高さの差が或る程度以上あるものを抽出することができる。また、殆どの場合、多峰性ピークでは複数のピークの間の信号強度の落ち込みは小さい。そこで、条件2を課すことで、複数のピークの間の信号強度の落ち込みが小さいものを抽出することができる。また、通常、上記要因による信号強度の落ち込みは急に生じるとともにその回復も迅速である。そこで、条件3を課すことで、複数のピークの間の信号強度の落ち込みやその回復が急に生じるものを抽出することができる。
【0046】
なお、上記条件1~3はいずれか一つ又は二つのみでも構わないが、好ましくは三つとも課すとよい。また、ピークの高さ、複数のピークの間の谷の深さ、谷の底部とピークトップとの間の時間、の少なくともいずれかを利用し、上述したような特徴を捉えることができる方法であれば、ここで採用している以外の方法を利用することができる。
【0047】
上記条件1~3における判定基準であるT、M、Nの各値は、ユーザーが入力部24から変更できるようにしてもよい。
【0048】
続いて、多峰性ピーク統合部216は、多峰性ピークであると判定されたピークに対し、複数のピークを一つに統合する処理を実行する(ステップS17)。複数ピークを統合する方法としては様々な方法を採ることができる。
【0049】
図8は統合処理の一例を示す図である。図8(A)に示すピークがステップS14において垂直分割ピークであると判定された場合、通常、図8(B)に示すように、保持時間の順に沿って、ピーク開始領域→垂直分割ピーク領域→ピーク終了領域→ピーク開始領域→垂直分割ピーク領域→ピーク終了領域、と領域が決定された状態にある。いま、ステップS16においてこのピークが多峰性ピークであると判定されたとすると、多峰性ピーク統合部216は、二つの垂直分割ピーク領域で挟まれたピーク開始領域及びピーク終了領域を削除し、一つ目のピーク開始領域と二つ目のピーク終了領域との間を全て単一ピーク領域に置き換える(図8(C)参照)。その結果、ピーク形状自体は重畳ピークに見えるものの、このピークは単一ピークとして扱われ、これを見たユーザーはこれが一つの成分に由来する多峰性ピークであることを認識し得る。
【0050】
勿論、ピーク統合処理では、領域の変更に留まらず、図9に示すように、例えばスムージング処理などの適宜の波形処理によってピーク波形を整形するようにしてもよい。
【0051】
こうして必要に応じて多峰性ピークの統合処理がなされた後、表示処理部23はピーク検出処理部21によるピーク検出結果を表示部25の画面上に表示する(ステップS18)。また、ピーク検出結果に基いて定性分析が自動的に実行される設定である場合には、定性・定量解析部22は、検出されたピーク毎に例えばそのピークのピークトップの保持時間を求め、該保持時間に基いて該ピークに対応する成分を特定する。また、ピーク検出結果に基いて定量分析が自動的に実行される設定である場合には、定性・定量解析部22は、検出されたピーク毎にピーク面積値又は高さ値を求め、該面積値又は高さ値を予め作成してある検量線に照らして該ピークに対応する成分の濃度(含有量)を計算する。表示処理部23はこうした定性分析又は定量分析の結果をピーク検出結果と共に表示部25の画面上に表示する。
【0052】
以上のようにして、本実施形態のLCシステムでは、機械学習を用いて自動的に検出されたピークにおいて多峰性ピークが重畳ピークであると誤って判定されている場合に、これを検出し、必要に応じてピーク情報等を的確に修正してユーザーに提供することができる。
【0053】
なお、上記説明では、多峰性であると判定されたピークに対する統合処理を自動的に実施していたが、真に多峰性であるのかをユーザーが確認したうえで、必要に応じて統合処理やそれ以外の処理を実施したい場合もある。そこで、自動的に統合処理を行うのではなく、多峰性ピーク判定部215において多峰性ピークであると判定された場合にそのピーク波形をまず、表示部25に表示することでユーザーに通知するようにしてもよい。そして、その結果を確認したユーザーの指示に応じて、ピーク統合処理を実施したり、或いは多峰性ピークであるとの判定結果を削除して重畳ピークとして扱ったりするようにしてもよい。
【0054】
次に、いくつかの好ましい付加的構成を説明する。以下に説明する構成は上記実施形態で説明したものと適宜に組み合わせることができる。また、相反する処理を行うものでない限りにおいて、複数の付加的構成を組み合わせることもできる。
【0055】
例えば上記実施形態では、重畳ピークの一つである垂直分割ピークであると判定された複数の頂部を有するピークについて、ピークの高さ、複数のピークの間の谷の深さ、或いは、谷の底部とピークの頂部との間の幅などの、波形形状を反映した情報に基いて多峰性ピークであるか否かを判定している。これにさらに別の情報を参照して、多峰性ピークであるか否かの判定を行うようにしてもよい。
具体的には、垂直分割ピーク領域におけるSN比、分離度、シンメトリー係数、面積、又は、ピーク幅などの、ピークの形状や特性などを反映した数値情報を計算し、その数値が所定の閾値を超える又は下回ることを、多峰性ピークであると判定することの条件の一つとしてもよい。
【0056】
例えば、上述したように多峰性ピークは成分濃度が低い場合に出現し易く、そうした場合にはピークであってもSN比は比較的低いことが多い。そこで、垂直分割ピーク領域と非ピーク領域における信号強度から算出されるSN比が所定の閾値を超えているか否かを判定し、超えている場合には多峰性ピークでないと判定してもよい。
【0057】
また、シンメトリー係数はピークの左右対称性を示す指標であり、例えば1より大きい場合にはテーリングピークである。元々ピークの左右対称性が悪いことが既知である化合物に関して、検出したピークのシンメトリー係数が高かった場合には、そのピークのテーリング部分に発生した未分離ピークは他の成分由来ではなく一つの成分由来のピークである可能性が高いと想定される。そこで、そういったピークについては多峰性ピークであると判定して統合する、という判断基準としてシンメトリー係数を利用することも可能である。
【0058】
質量分析装置では、通常、一つの成分から生成されるm/z値が相違する複数種のイオン(それらは定量イオン、確認イオンと呼ばれる)の観察が可能である。そのため、GC-MSやLC-MSでは、同じ成分に対して定量イオンの抽出イオンクロマトグラムと1以上の確認イオンの抽出イオンクロマトグラムとを作成することができる。それらは同じ成分由来のクロマトグラムであるから波形は相似形状になる筈である。そこで、同一成分についての定量イオンのクロマトグラムにおける領域推定結果と確認イオンのクロマトグラムにおける領域推定結果とを比較し、その比較結果を多峰性ピークの判定に利用することも可能である。
【0059】
例えば、定量イオンのクロマトグラムに対するピーク判定結果と、同一成分の確認イオンのクロマトグラムに対するピーク判定結果とのいずれか一方で多峰性ピークであると判定された場合であっても、他方で多峰性ピークでないと判定された場合には、多峰性ピークであると判定された結果を修正するようにしてもよい。
【0060】
また、事前に知ることができる、サンプル中の目的化合物に関する化合物情報を多峰性ピーク判定の際の条件として付加的に利用することもできる。ここでいう化合物情報とは、例えば化合物の濃度のほか、化合物に異性体が存在するか否か等の構造的な情報、前処理の過程等で生成される誘導体が存在するか否か等の情報を含む。
【0061】
質量分析装置では化合物の特性によってイオン化され易いものとイオン化されにくいものとがあるため、同じ濃度であっても化合物の種類によってそのピークが多峰形状になり易いものとなりにくいものとがあり得る。従って、化合物の種類によって、多峰性ピークの判定基準を変更する基準を変更する等の処理を加えることも可能である。
【0062】
また、異性体が存在することが化合物情報として既知である場合、異性体同士は分子量は同じであっても構造の相違等のためにクロマトグラム上でピークが時間的にずれることが多い。そこで、その目的化合物に対応すると推定されるピークについては多峰性ピークである可能性は低いと判定することが可能である。
【0063】
また、所定のアルゴリズムに基くスムージング処理を実施した場合に、多峰性ピークと本来の垂直分割ピーク(及びそれ以外の重畳ピーク)とでは、スムージング処理前後の波形形状の差異の大きさや現れ方に明確な違いが生じることがある。そこで、この差異の大きさや現れ方の違いを多峰性ピークの判定に利用することも可能である。
【0064】
また、上述した多峰性ピークを対象とする波形解析処理は、未知サンプルを測定して得られたクロマトグラムのみならず、濃度が既知である標品サンプルや目的成分を含まないブランクサンプルを測定して得られたクロマトグラムに対しても同様に行うことができる。
【0065】
このように、本実施形態のLCシステムでは、取得されたピークの波形形状を反映した情報は勿論のこと、それ以外の様々な付加的な情報を組み合わせることにより、多峰性ピークの判定精度を向上させることができる。これによって、ユーザーに対し、より確度の高いピーク情報を提供することができる。
【0066】
上記実施形態や変形例はいずれも一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。上記実施形態ではピーク検出を行う波形解析装置を測定部と同じ測定システムAの一部に組み込んだ構成としたが、LCシステムAと独立した波形解析装置として構成することができる。その場合には、LC測定部1で予め取得したクロマトグラムデータを読み込んで解析を行えばよい。
【0067】
また、上記実施形態ではクロマトグラム波形を処理する場合を例に説明したが、電気泳動装置で得られたエレクトロフェログラム、質量分析装置で得られたマススペクトル(プロファイルスペクトル)、分光測定装置で得られた分光スペクトル、蛍光測定装置で得られた蛍光スペクトル、X線分析装置で得られたX線強度スペクトルなど、様々な分析装置で得られた、所定のパラメーターの値の変化に応じて信号強度が変化し得る信号波形の波形解析において本発明が適用可能であることは明らかである。
【0068】
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0069】
(第1項)本発明に係る波形解析方法の一態様は、クロマトグラム又はスペクトルである信号波形を解析する波形解析方法であって、
ピーク部分の位置が既知である参照波形を分割することにより作成された複数の部分波形からなる組を複数用いた機械学習によって、入力される波形に含まれるピーク部分を特定する学習済みモデルを作成するモデル作成ステップと、
解析対象波形を複数の部分波形に分割し、前記学習済みモデルを用いて該複数の部分波形のそれぞれがピーク部分であるか否かを判定し、該判定の結果に基いて、前記解析対象波形における、単一ピーク領域、重畳ピーク領域、及び非ピーク領域を含む複数の異なる種類の領域を推定する領域推定ステップと、
前記領域推定ステップにおいて重畳ピーク領域であると推定された領域に含まれる重畳ピークについて、複数のピークのうちのいずれか一つ若しくは複数のピークの高さ、複数のピークのうちの隣接する二つピークの間の谷の深さ、又は、該谷の底部と該谷を挟む一方のピークの頂部との間の横軸方向の幅、の少なくともいずれか一つの情報を用い、一つの成分による多峰性ピークであるか否かを判定する多峰性判定ステップと、
を有する。
【0070】
(第11項)本発明に係る波形解析装置の一態様は、クロマトグラム又はスペクトルである信号波形を解析する波形解析装置であって、
解析対象波形を複数の部分波形に分割し、ピーク部分の位置が既知である参照波形を分割することにより作成された複数の部分波形からなる組を複数用いた機械学習によって作成された学習済みモデルを使用して、前記解析対象波形の複数の部分波形のそれぞれがピーク部分であるか否かを判定し、該判定の結果に基いて、前記解析対象波形における、単一ピーク領域、重畳ピーク領域、及び非ピーク領域を含む複数の異なる種類の領域を推定する領域推定部と、
前記領域推定部により重畳ピーク領域であると推定された領域に含まれる重畳ピークについて、複数のピークのうちのいずれか一つ若しくは複数のピークの高さ、複数のピークのうちの隣接する二つピークの間の谷の深さ、又は、該谷の底部と該谷を挟む一方のピークの頂部との間の横軸方向の幅、の少なくともいずれか一つの情報を用い、一つの成分による多峰性ピークであるか否かを判定する多峰性判定部と、
を備える。
【0071】
第1項に記載の波形解析方法及び第11項に記載の波形解析装置によれば、機械学習を利用したピーク検出処理によって異なる成分由来のピークが重なった重畳ピークであると判定された場合であっても、該ピーク検出処理後に実施する波形処理によってその重畳ピークが一つの成分に由来する多峰性ピークであるか否かを判定し、その判定結果をユーザーに知らせたり、或いは人手を掛けずに重畳ピークであることの推定結果を修正したりすることができる。それにより、例えば成分濃度が低いような場合に出現しがちである多峰性ピークも含め、自動化によるピーク検出の精度を向上させることができる。
【0072】
(第2項)第1項に記載の波形解析方法では、前記多峰性判定ステップにおいて多峰性ピークであると判定された場合に、該多峰性ピークを単一ピークとして扱えるように統合する統合ステップ、をさらに有するものとし得る。
【0073】
(第12項)また第11項に記載の波形解析装置は、前記多峰性判定部により多峰性ピークであると判定された場合に、該多峰性ピークを単一ピークとして扱えるように統合する統合部、をさらに備えるものとし得る。
【0074】
第2項に記載の波形解析方法及び第12項に記載の波形解析装置によれば、機械学習を利用したピーク検出によって重畳ピークであると誤って判定された場合でも、そのピークを本来の単一ピークとしてユーザーにピーク情報を提供することができる。
【0075】
(第3項)第2項に記載の波形解析方法では、ユーザーの選択に応じて前記統合ステップによる統合の実行の有無を切り替えるものとし得る。
【0076】
(第13項)また第12項に記載の波形解析装置は、前記統合部による統合の実行の有無を切り替えるためのユーザーによる選択操作を受け付ける操作部、をさらに備えるものとし得る。
【0077】
第3項に記載の波形解析方法及び第13項に記載の波形解析装置によれば、多峰性ピークであると判定されたピークについての学習済みモデルを用いた推定結果を修正するのか否かをユーザーが決めることができる。それにより、例えば、多峰性ピークであると判定されたピークについて、ユーザー自身が波形形状を目視で確認し、さらにそれ以外の様々な情報を加味して多峰性ピークであるとの判定結果が正しいのか否かを判断し、その結果、多峰性ピークを統合したり統合せずにそのままにしたりすることができる。
【0078】
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の波形解析方法において、前記重畳ピーク領域は、重畳ピークの分割方法に応じて、垂直分割ピーク領域を含む複数種類の領域に細分化されており、前記多峰性判定ステップでは、垂直分割ピーク領域に対応するピークについて多峰性ピークであるか否かを判定するものとし得る。
【0079】
(第14項)また第11項~第13項のいずれか1項に記載の波形解析装置において、前記重畳ピーク領域は、重畳ピークの分割方法に応じて、垂直分割ピーク領域を含む複数種類の領域に細分化されており、前記多峰性判定部は、垂直分割ピーク領域に対応するピークについて多峰性ピークであるか否かを判定するものとし得る。
【0080】
ここいう重畳ピークの分割方法は、垂直分割のほか、例えばテーリング処理、完全分離などを含む。一つの成分由来のピークが複数に割れて生じる多峰性ピークは、信号強度が最大であるメインピークの近くに比較的信号強度が高いショルダーピークが観測されることが多く、垂直分割ピークとして誤判定され易い。第4項に記載の波形解析方法及び第14項に記載の波形解析装置によれば、多峰性ピークである可能性が低い重複ピークを除いたうえで多峰性ピークであるか否かの判定を行うことができるので、多峰性ピークの判定の正確性を向上させることができる。
【0081】
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載の波形解析方法において、前記多峰性判定ステップでは、メインピーク又はショルダーピークの高さが所定の閾値以下であることを多峰性ピークである条件の一つとするものとし得る。
【0082】
(第15項)第11項~第14項のいずれか1項に記載の波形解析装置において、前記多峰性判定部は、メインピーク又はショルダーピークの高さが所定の閾値以下であることを多峰性ピークである条件の一つとするものとし得る。
【0083】
また、多峰性ピークはサンプルに含まれる成分の濃度が比較的低い場合、つまりクロマトグラムにおいてはピークの高さが低い場合に生じ易い。第5項に記載の波形解析方法及び第15項に記載の波形解析装置によれば、濃度が比較的低い成分に絞ったうえで多峰性ピークの判定を行うので、多峰性ピークの判定の正確性を一層向上させることができる。
【0084】
(第6項)第1項~第5項のいずれか1項に記載の波形解析方法において、前記多峰性判定ステップでは、メインピークとショルダーピークとの高さの比率、隣接する二つのピークの間の谷の深さとそのいずれか一方のピークの高さとの比率、又は、該谷の底部といずれか一方のピークの頂部との間の幅、の少なくともいずれか一つを用いて多峰性ピークの判定を行うものとし得る。
【0085】
(第16項)第11項~第15項のいずれか1項に記載の波形解析装置において、前記多峰性判定部は、メインピークとショルダーピークとの高さの比率、隣接する二つのピークの間の谷の深さとそのいずれか一方のピークの高さとの比率、又は、該谷の底部といずれか一方のピークの頂部との間の幅、の少なくともいずれか一つを用いて多峰性ピークの判定を行うものとし得る。
【0086】
第6項に記載の波形解析方法及び第16項に記載の波形解析装置によれば、より的確に多峰性ピークを認識することができる。
【0087】
(第7項)第1項~第6項のいずれか1項に記載の波形解析方法において、前記多峰性判定ステップでは、重畳ピーク領域におけるSN比、分離度、シンメトリー係数、面積、又は、ピーク幅のうちのいずれか一つ以上を計算し、その計算結果を多峰性ピークの判定に併せて利用するものとし得る。
【0088】
(第17項)第11項~第16項のいずれか1項に記載の波形解析装置において、前記多峰性判定部は、重畳ピーク領域におけるSN比、分離度、シンメトリー係数、面積、又は、ピーク幅のうちのいずれか一つ以上を計算し、その計算結果を多峰性ピークの判定に併せて利用するものとし得る。
【0089】
第7項に記載の波形解析方法及び第17項に記載の波形解析装置によれば、ピークの高さや谷の深さ以外の波形の形状の特徴を反映した情報を利用して、多峰性ピークの判定精度を向上させることができる。
【0090】
(第8項)第1項~第7項のいずれか1項に記載の波形解析方法において、前記信号波形はクロマトグラフ質量分析により得られたクロマトグラムであり、前記多峰性判定ステップでは、同一成分についての定量イオンのクロマトグラムに対する判定結果と確認イオンのクロマトグラムに対する判定結果との両方を利用して多峰性ピークを判定するものとし得る。
【0091】
(第18項)第11項~第17項のいずれか1項に記載の波形解析装置において、前記信号波形はクロマトグラフ質量分析により得られたクロマトグラムであり、前記多峰性判定部は、同一成分についての定量イオンのクロマトグラムに対する判定結果と確認イオンのクロマトグラムに対する判定結果との両方を利用して多峰性ピークを判定するものとし得る。
【0092】
同一成分由来の定量イオンと確認イオンとでは、抽出イオンクロマトグラムにおいて概ね相似した形状のピークが出現する筈である。従って、第8項に記載の波形解析方法及び第18項に記載の波形解析装置によれば、例えば何らかの要因で一方のクロマトグラムにおいてピークが適切に検出されない場合であっても、他方のクロマトグラムにおけるピーク検出結果を利用して、精度の高いピーク情報を得ることができる。
【0093】
(第9項)第1項~第8項のいずれか1項に記載の波形解析方法において、前記多峰性判定ステップでは、目的化合物に関する化合物情報を多峰性ピークの判定に利用するものとし得る。
【0094】
(第19項)第11項~第18項のいずれか1項に記載の波形解析装置において、前記多峰性判定部は、目的化合物に関する化合物情報を多峰性ピークの判定に利用するものとし得る。
【0095】
ここでいう「化合物情報」とは、濃度値などのそのサンプルに含まれる化合物自体の情報のほか、例えばその化合物の異性体の情報、前処理などによって生成される誘導体の情報などを含むことができる。
【0096】
上述したようにサンプル中の成分濃度が低い場合に、該成分由来のピークは多峰形状になり易い。そこで、例えば化合物情報として濃度値が既知であれば、その濃度値が所定の閾値よりも低い場合にのみ多峰性ピークの判定を実施する等により、無駄に多峰性ピーク判定を行うことを回避しつつ、多峰性の判定の精度を向上させることができる。
【0097】
(第10項)第1項~第9項のいずれか1項に記載の波形解析方法において、前記多峰性判定ステップでは、重畳ピーク波形に対してスムージング処理を行う前後の波形の差異を多峰性ピークの判定に利用するものとし得る。
【0098】
(第20項)第11項~第19項のいずれか1項に記載の波形解析装置において、前記多峰性判定部は、重畳ピーク波形に対してスムージング処理を行う前後の波形の差異を多峰性ピークの判定に利用するものとし得る。
【0099】
第10項に記載の波形解析方法及び第20項に記載の波形解析装置によれば、スムージングによって形状変化が発生する程度の小さな多峰形状のピークを識別することができ、それによってより的確に多峰性ピークを判別することができる。
【0100】
(第21項)また本発明に係る分析装置の一態様は、第11項~第20項のいずれか1項に記載の波形解析装置をデータ解析部として備える、クロマトグラフ装置、質量分析装置、光学測定装置のいずれか一つであるものとすることができる。
【0101】
第21項に記載の分析装置によれば、精度の高いピーク情報を利用して、高い定性性能や定量性能を達成することができる。
【符号の説明】
【0102】
1…LC測定部
2…データ解析部
20…データ収集部
21…ピーク検出処理部
210…波形前処理部
211…判定部
212…モデル記憶部
213…領域決定部
214…多峰性ピーク候補抽出部
215…多峰性ピーク判定部
216…多峰性ピーク統合部
22…定性・定量解析部
23…表示処理部
24…入力部
25…表示部
3…モデル作成部
30…学習データ記憶部
31…学習実行部
32…モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9