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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152040
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】スラブの接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
E04B5/02 S
E04B5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065947
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウサレム ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】掛 悟史
(57)【要約】
【課題】梁にスラブの端部が配置される場合において、スラブに作用する曲げモーメントに抵抗できるスラブの接合構造を提供する。
【解決手段】スラブの接合構造は、梁14と、梁14の上面において梁幅方向の両側にそれぞれ端部が配置された2つのプレキャストコンクリート製のスラブ16と、それぞれのスラブ16の端面に互いに対向して形成された複数の凹部20Aと、梁14の上面から突出し、凹部20Aへ挿入された剪断力伝達部材(ジベル22)と、凹部20Aへ充填された充填材(グラウトG)と、一方のスラブ16の表面から端面へ抜け、他方のスラブ16の端面から表面へ抜ける貫通孔32へ挿入され、2つのスラブ16を接合してスラブ16に作用する曲げモーメントに抵抗する接合部材30と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁と、
前記梁の上面において梁幅方向の両側にそれぞれ端部が配置された2つのプレキャストコンクリート製のスラブと、
それぞれの前記スラブの端面に互いに対向して形成された複数の凹部と、
前記梁の上面から突出し、前記凹部へ挿入された剪断力伝達部材と、
前記凹部へ充填された充填材と、
一方の前記スラブの表面から前記端面へ抜け、他方の前記スラブの前記端面から表面へ抜ける貫通孔へ挿入され、2つの前記スラブを接合して前記スラブに作用する曲げモーメントに抵抗する接合部材と、
を備えたスラブの接合構造。
【請求項2】
梁と、
前記梁の上面において梁幅方向の両側にそれぞれ端部が配置された2つのプレキャストコンクリート製のスラブと、
それぞれの前記スラブの端面に互いに対向して形成された複数の凹部と、
前記梁の上面から突出し、前記凹部へ挿入された剪断力伝達部材と、
前記凹部へ充填された充填材と、
前記スラブの端部に形成された貫通孔へ挿通されて前記スラブを前記梁に接合し、前記スラブに作用する曲げモーメントに抵抗する接合部材と、
を備えたスラブの接合構造。
【請求項3】
梁と、
前記梁の梁幅方向の一方側において前記梁の上面から突出し、前記梁と一体的に形成された突出部と、
前記梁の上面において梁幅方向の他方側に端部が配置されたプレキャストコンクリート製のスラブと、
前記突出部の側面と対向する前記スラブの端面に形成された凹部と、
前記梁の上面から突出し、前記凹部へ挿入された剪断力伝達部材と、
前記凹部へ充填された充填材と、
前記スラブの表面から前記端面へ抜け、前記突出部の前記側面から対向する側面へ抜ける貫通孔へ挿入され、前記スラブと前記突出部とを接合して前記スラブに作用する曲げモーメントに抵抗する接合部材と、
を備えたスラブの接合構造。
【請求項4】
梁と、
前記梁の梁幅方向の一方側において前記梁の上面から突出し、前記梁と一体的に形成された突出部と、
前記梁の上面において梁幅方向の他方側に端部が配置されたプレキャストコンクリート製のスラブと、
前記突出部の側面と対向する前記スラブの端面に形成された凹部と、
前記梁の上面から突出し、前記凹部へ挿入された剪断力伝達部材と、
前記凹部へ充填された充填材と、
前記スラブの端部に形成された貫通孔へ挿通されて前記スラブを前記梁に接合して前記スラブに作用する曲げモーメントに抵抗する接合部材と、
を備えたスラブの接合構造。
【請求項5】
前記凹部は、水平断面積が前記スラブの下面から上面に向かって増える形状である、
請求項1~4に記載のスラブの接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブの接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、梁上に載置されたスラブの貫通孔に、下端部が梁に埋設された剪断力伝達部材の上端部を挿入し、充填材を充填したスラブの接合構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-69920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようなスラブの接合構造によると、梁とスラブとの間で剪断力を伝達できる。しかし、このスラブの接合構造では、一つのスラブを梁上全面に架けて接合する構造なので、スラブは梁上面で生じる曲げモーメントに対して抵抗し易い。
【0005】
しかし、梁の梁幅方向の両側に2つのプレキャストコンクリート製のスラブを配置する場合や、梁の梁幅方向の一方側に1つのスラブを配置する場合、すなわち、梁にスラブの端部が配置される場合、スラブは、端部の拘束が少ないため、梁上面で生じる曲げモーメントに対して抵抗することが難しい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、梁にスラブの端部が配置される場合において、スラブに作用する曲げモーメントに抵抗できるスラブの接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のスラブの接合構造は、梁と、前記梁の上面において梁幅方向の両側にそれぞれ端部が配置された2つのプレキャストコンクリート製のスラブと、それぞれの前記スラブの端面に互いに対向して形成された複数の凹部と、前記梁の上面から突出し、前記凹部へ挿入された剪断力伝達部材と、前記凹部へ充填された充填材と、一方の前記スラブの表面から前記端面へ抜け、他方の前記スラブの前記端面から表面へ抜ける貫通孔へ挿入され、2つの前記スラブを接合して前記スラブに作用する曲げモーメントに抵抗する接合部材と、を備える。
【0008】
請求項1のスラブの接合構造では、梁とスラブとが、梁の上面から突出した剪断力伝達部材と、スラブの凹部へ充填された充填材とで接合される。すなわち、スラブと充填材との付着力、充填材と剪断力伝達部材との付着力により、梁とスラブとの間で剪断応力を伝達できる。これにより、梁に対してスラブが剛接合される。
【0009】
また、梁の梁幅方向の両側に配置された2つのスラブは、接合部材で互いに接合されている。この接合部材により、スラブは曲げモーメントに抵抗できる。
【0010】
さらに、接合部材を貫通孔から引き出せば、プレキャストコンクリート製のスラブを容易に解体できる。このためスラブを再利用し易い。これにより、建物取壊し時や改築時の廃棄物を削減できる。
【0011】
請求項2のスラブの接合構造は、梁と、前記梁の上面において梁幅方向の両側にそれぞれ端部が配置された2つのプレキャストコンクリート製のスラブと、それぞれの前記スラブの端面に互いに対向して形成された複数の凹部と、前記梁の上面から突出し、前記凹部へ挿入された剪断力伝達部材と、前記凹部へ充填された充填材と、前記スラブの端部に形成された貫通孔へ挿通されて前記スラブを前記梁に接合し、前記スラブに作用する曲げモーメントに抵抗する接合部材と、を備える。
【0012】
請求項2のスラブの接合構造では、梁とスラブとが、梁の上面から突出した剪断力伝達部材と、スラブの凹部へ充填された充填材とで接合される。すなわち、スラブと充填材との付着力、充填材と剪断力伝達部材との付着力により、梁とスラブとの間で剪断応力を伝達できる。これにより、梁に対してスラブが剛接合される。
【0013】
また、梁の梁幅方向の両側に架けられた2つのスラブは、接合部材で梁に接合されている。この接合部材により、スラブは曲げモーメントに抵抗できる。
【0014】
さらに、接合部材による接合状態を解除すれば、プレキャストコンクリート製のスラブを容易に解体できる。このためスラブを再利用できる。これにより、建物取壊し時や改築時の廃棄物を削減できる。
【0015】
請求項3のスラブの接合構造は、梁と、前記梁の梁幅方向の一方側において前記梁の上面から突出し、前記梁と一体的に形成された突出部と、前記梁の上面において梁幅方向の他方側に端部が配置されたプレキャストコンクリート製のスラブと、前記突出部の側面と対向する前記スラブの端面に形成された凹部と、前記梁の上面から突出し、前記凹部へ挿入された剪断力伝達部材と、前記凹部へ充填された充填材と、前記スラブの表面から前記端面へ抜け、前記突出部の前記側面から対向する側面へ抜ける貫通孔へ挿入され、前記スラブと前記突出部とを接合して前記スラブに作用する曲げモーメントに抵抗する接合部材と、を備える。
【0016】
請求項3のスラブの接合構造では、梁とスラブとが、梁の上面から突出した剪断力伝達部材と、スラブの凹部へ充填された充填材とで接合される。すなわち、スラブと充填材との付着力、充填材と剪断力伝達部材との付着力により、梁とスラブとの間で剪断応力を伝達できる。これにより、梁に対してスラブが剛接合される。
【0017】
また、梁の梁幅方向の一方側に形成された突出部と、他方側に配置されたスラブとが、接合部材で互いに接合されている。この接合部材により、スラブは曲げモーメントに抵抗できる。
【0018】
さらに、接合部材を貫通孔から引き出せば、プレキャストコンクリート製のスラブを容易に解体できる。このためスラブを再利用できる。これにより、建物取壊し時や改築時の廃棄物を削減できる。
【0019】
請求項4のスラブの接合構造は、梁と、前記梁の梁幅方向の一方側において前記梁の上面から突出し、前記梁と一体的に形成された突出部と、前記梁の上面において梁幅方向の他方側に端部が配置されたプレキャストコンクリート製のスラブと、前記突出部の側面と対向する前記スラブの端面に形成された凹部と、前記梁の上面から突出し、前記凹部へ挿入された剪断力伝達部材と、前記凹部へ充填された充填材と、前記スラブの端部に形成された貫通孔へ挿通されて前記スラブを前記梁に接合して前記スラブに作用する曲げモーメントに抵抗する接合部材と、を備える。
【0020】
請求項4のスラブの接合構造では、梁とスラブとが、梁の上面から突出した剪断力伝達部材と、スラブの凹部へ充填された充填材とで接合される。すなわち、スラブと充填材との付着力、充填材と剪断力伝達部材との付着力により、梁とスラブとの間で剪断応力を伝達できる。これにより、梁に対してスラブが剛接合される。
【0021】
また、スラブは接合部材で梁に接合されている。この接合部材により、スラブは曲げモーメントに抵抗できる。
【0022】
さらに、接合部材による接合状態を解除すれば、プレキャストコンクリート製のスラブを容易に解体できる。このためスラブを再利用できる。これにより、建物取壊し時や改築時の廃棄物を削減できる。
【0023】
請求項5のスラブの接合構造は、請求項1~4に記載のスラブの接合構造において、前記凹部は、水平断面積が前記スラブの下面から上面に向かって増える形状である。
【0024】
請求項5のスラブの接合構造では、凹部の水平断面積が下面から上面に向かって増える形状である。このため、水平断面積が一様の場合と比較して、梁に対してスラブが上方へ移動しようとした際に、凹部に充填された充填材とスラブとの間の抵抗力が大きい。このため、スラブの浮き上がりを抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、梁にスラブの端部が配置される場合において、スラブに作用する曲げモーメントに抵抗できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るスラブの接合構造が適用される建物の概略を示した平面図である。
図2】(A)は本発明の第一実施形態に係るスラブの接合構造を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
図3】(A)は本発明の第一実施形態に係るスラブの接合構造におけるジベルを示す斜視図であり、(B)は梁の変形例を示す斜視図であり、(C)は接合部材の変形例を示す斜視図である。
図4】(A)は本発明の第二実施形態に係るスラブの接合構造を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
図5】(A)は本発明の第三実施形態に係るスラブの接合構造を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
図6】(A)は本発明の第三実施形に係るスラブの接合構造の変形例を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
図7】(A)は本発明の第四実施形態に係るスラブの接合構造を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
図8】(A)は本発明の第四実施形に係るスラブの接合構造の変形例を示す平面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るスラブの接合構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0028】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0029】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0030】
<第一実施形態>
(建物)
本発明の第一実施形態に係るスラブの接合構造は、図1に示す建物10に適用されている。建物10は、一例として、鉄筋コンクリート製の柱12にプレキャストコンクリート製の梁14を架け渡して形成された建築物であり、梁14にはプレキャストコンクリート製のスラブ16が架け渡されている。
【0031】
図2(A)に示すように、スラブ16の端部は、梁14の上面に配置されている。具体的には、2つのスラブ16の端部が、梁14の上面において梁幅方向の両側にそれぞれ配置されている。それぞれのスラブ16の端面は、梁14の延設方向に沿って配置されている。また、それぞれのスラブ16は、互いに隙間をあけて配置されている。
【0032】
(スラブの接合構造-剪断力伝達機構)
スラブ16の端面には、複数の凹部20Aが形成されている。凹部20Aは、上面視において半円状に形成され、水平断面積がスラブ16の下面から上面に向かって増える擂り鉢形状である。また、複数の凹部20Aは、梁14の延設方向に間隔をあけて配置されている。
【0033】
互いに隣り合うスラブ16における凹部20Aは、それぞれ対向して配置されている。このため、スラブ16の対向部分には、2つの凹部20Aにより、平面視で略円形の貫通孔20が形成される。この貫通孔20は、スラブ16の下面から上面に向かって拡径するテーパー形状の貫通孔である。
【0034】
貫通孔20の内側には、剪断力伝達部材としてのジベル22が配置されている。ジベル22は、図3(A)に示すように、下端部が梁14に埋設され、上端部が梁14の上面から突出して貫通孔20(換言すると、2つのスラブ16における凹部20Aのそれぞれ)へ挿入されている。
【0035】
貫通孔20には、充填材としてのグラウトGが充填されている。また、グラウトGは、梁幅方向に隣り合うスラブ16同士の隙間にも充填されている。
【0036】
(スラブの接合構造-曲げモーメント伝達機構)
図2(A)に示すように、梁14の延設方向において互いに隣り合う貫通孔20の間には、接合部材30が配置されている。
【0037】
この接合部材30を配置するために、図2(B)に示すように、スラブ16には、貫通孔32が形成されている。貫通孔32は、梁幅方向に隣り合うスラブ16のうち、一方のスラブ16の表面から端面へ抜ける貫通孔32Aと、他方のスラブ16の端面から表面へ抜ける貫通孔32Aと、が連通して形成された貫通孔である。
【0038】
貫通孔32は、円周に沿う形状に形成され、上向きに凸形状とされている。貫通孔32の端部は、接合部材30のナット30Bを係止させるために拡径している。また、2つの貫通孔32A同士の間には、リング状のシール部材34が配置されている。
【0039】
なお、スラブの「表面」とは、本実施形態においてはスラブの「下面」を示している。しかし、本発明の実施形態はこれに限らず、貫通孔32は、一方のスラブ16の「上面」から端面へ抜ける貫通孔と、他方のスラブ16の端面から「上面」へ抜ける貫通孔と、が連通して形成された貫通孔としてもよい。この場合、貫通孔32は下向きに凸形状となる。
【0040】
接合部材30は、この貫通孔32に挿入されたボルト30A及びナット30Bであり、2つのスラブ16を接合して、スラブ16に作用する曲げモーメントに抵抗している。ボルト30Aは貫通孔32の曲率と等しい曲率で湾曲している。スラブ16をリユースするために、貫通孔32にはグラウトGは充填されていない。すなわち、接合部材30は2つのスラブ16を乾式接合している。
【0041】
<効果>
本実施形態に係るスラブの接合構造では、図2(C)に示すように、梁14とスラブ16とが、梁14の上面から突出してスラブ16の凹部20Aへ挿入された剪断力伝達部材としてのジベル22と、凹部20Aへ充填された充填材としてのグラウトGとで接合される。
【0042】
すなわち、スラブ16とグラウトGとの付着力、グラウトGとジベル22との付着力により、梁14とスラブ16との間で剪断応力を伝達できる。これにより、梁14に対してスラブ16が剛接合される。
【0043】
また、図2(B)に示すように、梁14の梁幅方向の両側に配置された2つのスラブ16は、接合部材30で互いに接合されている。この接合部材30により、スラブ16は梁14上面で生じる曲げモーメントに対して抵抗することができる。
【0044】
なお、スラブ16には、積載荷重及びスラブ16の自重によって、梁14の上方において曲げモーメントが作用する。このため、スラブ16には、上面寄りの部分に大きな引張力が生じる。
【0045】
これに対して、貫通孔32に上向きに凸形状の接合部材30を通すことにより、接合部材30の中央部が、スラブ16の上面寄りの部分に配置される。これにより、曲げモーメントによって生じる引張力に効率的に抵抗できる。
【0046】
また、接合部材30は2つのスラブ16を乾式接合している。このため、接合部材30は貫通孔32から引き出し易く、これを引き出せば、スラブ16を容易に解体できる。
【0047】
すなわち、接合部材30による接合を解除すれば、スラブ16は梁幅方向へスライド可能となるため、スラブ16を容易に解体できる。また、貫通孔20へ充填されたグラウトGをコア抜きビットで斫り取れば、スラブ16とグラウトGとの付着力を無くすこともできる。
【0048】
このように、このスラブの接合構造によると、スラブ16を再利用し易い。これにより、建物10の取壊し時や改築時の廃棄物を削減できる。なお、スラブ16の再利用を検討しない場合、貫通孔32にグラウトGを充填してもよい。
【0049】
また、本実施形態に係るスラブの接合構造では、図2(C)に示すように、凹部20Aの水平断面積が下面から上面に向かって増える形状であり、貫通孔20がテーパー状に形成されている。このため、凹部20Aの水平断面積が上下方向で一様の場合と比較して、梁14に対してスラブ16が上方へ移動しようとした際に、凹部20Aに充填されたグラウトGとスラブ16との間の抵抗力が大きい。このため、スラブ16の浮き上がりを抑制できる。
【0050】
<第二実施形態>
図4に示す第二実施形態では、曲げモーメント伝達機構として、第一実施形態における接合部材30及び貫通孔32に代えて、接合部材40及び貫通孔42を用いる。
【0051】
なお、以下に示す各実施形態において、先に説明する実施形態と同様の構成については、各図に同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0052】
図4(B)に示すように、貫通孔42は、梁幅方向の両側に配置されたスラブ16それぞれの端部において、スラブ16の上面から下面に亘って形成された貫通孔である。貫通孔42において、スラブ16の上面側は、接合部材40におけるボルト40Aのボルト頭を係止するために拡径している。
【0053】
接合部材40は、ボルト40A及びインサートナット40Bを備えている。インサートナット40Bは、梁14に埋設され、梁14の上面に開口している雌ねじ部材である。ボルト40Aは、スラブ16の貫通孔42へ挿通されてスラブ16を梁14に接合し、スラブ16に作用する曲げモーメントに抵抗することができる。
【0054】
このように、本実施形態においては、曲げモーメント伝達機構として、スラブ16を梁14に接合する接合部材を用いて、スラブ16に作用する曲げモーメントに抵抗することができる。
【0055】
なお、貫通孔42の拡径部分には、グラウトGを充填してもよいし、しなくてもよいが、少なくともボルト40Aの軸部が通される部分にはグラウトGを充填しないことが好ましい。
【0056】
拡径部分にグラウトGを充填する場合でも、コア抜きビットを用いてグラウトGを斫り取れば、接合部材40を容易に取り外すことができる。
【0057】
なお、スラブ16の再利用を検討しない場合、貫通孔42の全長に亘ってグラウトGを充填してもよい。
【0058】
<第三実施形態>
図5に示す第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。本実施形態においては、梁14の梁幅方向の「一方側」のみにスラブ16が配置されている。
【0059】
本実施形態においては、梁14に突出部14Aが設けられている。突出部14Aは、梁14の梁幅方向の一方側において、梁14の上面から突出し、梁14と一体的に形成された突起である。図5(A)に示すように、突出部14Aは、梁14の延設方向に沿って形成されている。
【0060】
突出部14Aには、スラブ16と同様に凹部20Aが形成されている。そして、突出部14Aの凹部20Aとスラブ16の凹部20Aとで、貫通孔20が形成されている。
【0061】
また、本実施形態における貫通孔36は、スラブ16の表面から端面へ抜ける貫通孔36Aと、突出部14Aの側面から対向する側面へ抜ける貫通孔36Bと、が連通して形成された貫通孔である。
【0062】
貫通孔36は、円周に沿う形状に形成され、上向きに凸形状とされている。貫通孔36の端部は、接合部材30のナット30Bを係止させるために拡径している。また、2つの貫通孔36A及び36B同士の間には、リング状のシール部材34が配置されている。
【0063】
梁14の突出部14Aとスラブ16とは、接合部材30で互いに接合されている。この接合部材30により、スラブ16は曲げモーメントに対して抵抗することができる。
【0064】
<第四実施形態>
図7に示す第四実施形態は、第二実施形態の変形例である。本実施形態においては、第三実施形態と同様、梁14の梁幅方向の「一方側」のみにスラブ16が配置されている。
【0065】
また、本実施形態においても、梁14に突出部14Aが設けられている。突出部14Aは、梁14の梁幅方向の一方側において、梁14の上面から突出し、梁14と一体的に形成された突起である。図7(A)に示すように、突出部14Aは、梁14の延設方向に沿って形成されている。
【0066】
梁14とスラブ16とは、接合部材40で互いに接合されている。この接合部材40により、スラブ16は曲げモーメントに対して抵抗することができる。
【0067】
第三実施形態及び第四実施形態に示したように、梁14の梁幅方向の一方側のみにスラブ16が配置される場合でも、当該スラブ16は曲げモーメントに対して抵抗することができる。
【0068】
なお、第三実施形態及び第四実施形態においては、突出部14Aに凹部20Aを形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図6及び図8に示すように、突出部14Aに凹部を形成しなくても、スラブ16は曲げモーメントに対して抵抗することができる。
【0069】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、梁14をプレキャストコンクリート製の梁として説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図3(B)の梁18のように、本発明の梁は鉄骨製の梁としてもよい。この場合、剪断力伝達部材は、ジベル24のように、梁18の上面に溶接すればよい。
【0070】
また、図4、7及び8に示したボルト40A及びインサートナット40Bを有する接合部材40に代えて、図3(C)に示すように、梁14から突出したボルト44Aを用いてもよい。この場合、当該ボルト44Aをスラブ16の貫通孔42に挿通して、ナット44Bを螺合すればよい。なお、ボルト44A及びナット44Bは、鉄骨製の梁18にも適用できる。
【0071】
また、上記各実施形態においては、凹部20Aを、水平断面積がスラブ16の下面から上面に向かって増える形状としているが、本発明の実施形態はこれに限らない。凹部20Aに充填されたグラウトGとスラブ16との付着強度が十分に確保できれば、このような形状とする必要はない。
【0072】
例えば凹部20Aの壁部を目荒らしして凹凸を形成してもよい。また、凹部20Aの大きさを大きくして付着面積を大きくすれば、凹凸を形成しない鉛直な壁面としてもよい。このように、本発明は様々な態様で実施できる。
【符号の説明】
【0073】
14 梁
14A 突出部
16 スラブ
18 梁
20A 凹部
22 ジベル(剪断力伝達部材)
24 ジベル(剪断力伝達部材)
30 接合部材
32 貫通孔
32A 貫通孔
36 貫通孔
36A 貫通孔
36B 貫通孔
40 接合部材
40A ボルト(接合部材)
40B インサートナット(接合部材)
42 貫通孔
44A ボルト(接合部材)
44B ナット(接合部材)
G グラウト(充填材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8