(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152072
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】オイルパルスユニット及びオイルパルス工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B25B21/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066002
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】原田 哲祐
(57)【要約】
【課題】製造コストを抑えたオイルパルスユニット、及びこのオイルパルスユニットを備えたオイルパルス工具を提供する。
【解決手段】ライナ41は、前部にブレード43、44と当接可能なブレード摺動面62を有する一方、後部にはブレード43、44と当接せずオイル(作動油)を収容するオイル室76を有する。ライナ41の後部にはブレード摺動面62に相当する構成、すなわちシャフト42に対するライナ41の回転の全周に渡りブレード43、44に当接し摺動する部分がない。こうした構成のため、ライナ41は、オイル室76の内周面66より後方に、内周面66より径方向内側に突出する部分を有さない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる略円筒形状のライナと、
前記ライナに対して回転可能に支持されたシャフトであって、前記ライナの内部に位置するブレード支持部と、前記ライナの前方において先端工具を保持する先端工具保持部と、を有するシャフトと、
前記ブレード支持部に支持されたブレードと、
前記ブレードを前記ライナの内周部に向けて付勢するバネと、
前記ライナの後部において前記ライナに一体的に支持されるキャップであって、前記シャフトの後部を前記キャップに対して回転可能に支持するキャップと、
を備えたオイルパルスユニットであって、
前記ライナの前部に前記ブレードと当接可能な摺動部を設け、前記ライナの後部に前記ブレードと当接せずオイルを収容するオイル室を設けた、
ことを特徴とするオイルパルスユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルパルスユニットであって、
前記ライナと前記摺動部が単一の部品として構成された、
ことを特徴とするオイルパルスユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のオイルパルスユニットであって、
前記ライナは前記シャフトの中間部を支持するシャフト支持部を有し、
前記ライナと前記シャフト支持部とが単一の部品として構成された、
ことを特徴とするオイルパルスユニット。
【請求項4】
請求項1に記載のオイルパルスユニットであって、
前記ライナは前記キャップを支持するキャップ支持部を有し、
前記ライナと前記キャップ支持部とが単一の部品として構成された、
ことを特徴とするオイルパルスユニット。
【請求項5】
請求項1に記載のオイルパルスユニットであって、
前後方向における前記バネの存在範囲が、前後方向における前記摺動部の存在範囲と少なくとも部分的に重なり、前記バネが前記ブレードを前記摺動部に向けて付勢する、
ことを特徴とするオイルパルスユニット。
【請求項6】
請求項1に記載のオイルパルスユニットであって、
前後方向における前記ブレードの重心位置が、前後方向における前記バネの存在範囲内にある、
ことを特徴とするオイルパルスユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のオイルパルスユニットであって、
前記ブレードは、前記バネの存在範囲よりも後方に肉抜き部を有する、
ことを特徴とするオイルパルスユニット。
【請求項8】
請求項1に記載のオイルパルスユニットであって、
前記ライナは、前記ブレードとの係合により打撃トルクを発生させる第1係合部を有し、
前記摺動部は、前記ライナの周方向において前記第1係合部に近いほど前後方向において長くなる部分がある、
ことを特徴とするオイルパルスユニット。
【請求項9】
請求項1に記載のオイルパルスユニットであって、
前記ライナは、前記ブレードと係合したときに前記バネが最も圧縮された状態となる第2係合部を有し、
前記摺動部は、前記ライナの周方向において前記第2係合部に近いほど前後方向において長くなる部分がある、
ことを特徴とするオイルパルスユニット。
【請求項10】
モータと、
前記モータにより駆動される請求項1から9のいずれか一項に記載されたオイルパルスユニットと、
を備えたオイルパルス工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルパルスユニット及びオイルパルス工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、オイルパルス工具を開示する。このオイルパルス工具は、製造コストを低減するため、ドライビングブレードの基部であってドライビングブレードの長さ方向略中央部に1個のバネ挿入孔を設け、バネ挿入孔に、ドライビングブレードを外方に付勢するバネを配設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のオイルパルス工具は、ライナの加工は容易になるものの、ライナを収容するライナケースが別途必要となる。このため、構造の複雑化や製造コスト抑制の観点で改良の余地がある。
【0005】
本発明は、次の課題1~3の少なくとも1つの解決を目的とする。
・課題1…製造コストを抑えたオイルパルスユニット、及びこのオイルパルスユニットを備えたオイルパルス工具を提供すること。
・課題2…構造がシンプルなオイルパルスユニット、及びこのオイルパルスユニットを備えたオイルパルス工具を提供すること。
・課題3…動作の安定したオイルパルスユニット、及びこのオイルパルスユニットを備えたオイルパルス工具を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、オイルパルスユニットである。このオイルパルスユニットは、
前後方向に延びる略円筒形状のライナと、
前記ライナに対して回転可能に支持されたシャフトであって、前記ライナの内部に位置するブレード支持部と、前記ライナの前方において先端工具を保持する先端工具保持部と、を有するシャフトと、
前記ブレード支持部に支持されたブレードと、
前記ブレードを前記ライナの内周部に向けて付勢するバネと、
前記ライナの後部において前記ライナに一体的に支持されるキャップであって、前記シャフトの後部を前記キャップに対して回転可能に支持するキャップと、
を備えたオイルパルスユニットであって、
前記ライナの前部に前記ブレードと当接可能な摺動部を設け、前記ライナの後部に前記ブレードと当接せずオイルを収容するオイル室を設けた、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の別の態様は、モータと、前記モータにより駆動される前記オイルパルスユニットと、を備えたオイルパルス工具である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記の課題1~3の少なくとも1つを解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る作業機1の側断面図。
【
図2】作業機1のオイルパルスユニット40の側断面図。
【
図4】オイルパルスユニット40を前方側から見た分解斜視図。
【
図5】オイルパルスユニット40を後方側から見た分解斜視図。
【
図6】オイルパルスユニット40の動作を示す模式図。
【
図7】ライナ41を平面的に展開して内周部を見た模式図。
【
図8】本発明の実施形態2に関し、ライナ41Aを平面的に展開して内周部を見た模式図。
【
図9】本発明の実施形態3に係るオイルパルスユニット40Bの側断面図。
【
図10】各実施形態のバネ45に替えて利用可能なバネ45Aを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
図1~
図7は、本発明の実施形態1に関する。本実施形態は、作業機1及びオイルパルスユニット40に関する。作業機1は、オイルパルス工具(オイルパルスドライバ)である。作業機1は、静音インパクトドライバやソフトインパクトドライバとも呼ばれる。
図1により、作業機1における互いに直交する前後、上下方向を定義する。
【0011】
作業機1は、ハウジング10を有する。ハウジング10は、例えば左右二分割構造の樹脂成形体である。ハウジング10は、モータ収容部11、ハンドル部12、及び電池パック装着部13を含む。
【0012】
モータ収容部11は、中心軸が前後方向と略平行な筒状部である。ハンドル部12は、上端がモータ収容部11の前後方向の中間部に接続され、前記中間部から下方に延びる。ハンドル部12の上端部に、ユーザがモータ30の駆動、停止を切り替えるためのトリガスイッチ14が設けられる。電池パック装着部13は、ハンドル部12の下端に設けられ、電池パック18を着脱可能に装着できる。作業機1は、電池パック18の電力で動作する。
【0013】
作業機1は、ハンマケース19を有する。ハンマケース19は、例えば金属製であり、モータ収容部11に保持されてモータ収容部11から前方に延びる。作業機1は、プロテクタ20を有する。プロテクタ20は、ハンマケース19の外面(表面)を覆うエラストマ等の保護部材である。
【0014】
作業機1は、モータ収容部11及びハンマケース19の内側に、モータ30、減速機構38、及びオイルパルスユニット40を有する。モータ30は、インナーロータ型のブラシレスモータであり、前後方向と平行なモータ軸31を有する。減速機構38は、モータ30の前方に設けられ、モータ30の回転を減速してオイルパルスユニット40(オイルパルス機構部)に伝達する。オイルパルスユニット40は、ハンマケース19に収容され、モータ30により駆動される。
【0015】
図2~
図5に示すように、オイルパルスユニット40は、筒部材としてのライナ41、軸部材としてのシャフト42、往復動部材としてのブレード43、44、付勢部材としてのバネ45、キャップとしてのライナアッパープレート47、プレート保持部材48(ライナキャップ)を有する。
【0016】
ライナ41は、モータ30の回転力で駆動する。具体的にはライナ41は、減速機構38を介してモータ30により、モータ軸31と同軸に回転駆動される。ライナ41は、例えば金属製であり、モータ30の軸方向に延びる筒状、具体的にはモータ軸31と同軸の略円筒状に構成され、内部に作動油が充填される。モータ30の軸方向は、前後方向と平行かつライナ41の軸方向及びシャフト42の軸方向と互いに平行であり、以下「軸方向」と表記する。
【0017】
ライナ41は、前部にブレード43、44と当接可能なブレード摺動面62を有する。ライナ41とブレード摺動面62は単一の部品として構成される。ブレード摺動面62は、ライナ41の径方向内側に臨む面である。ライナ41の径方向とシャフト42の径方向は互いに同じ方向であり、以下「径方向」と表記する。ブレード摺動面62は、ブレード43、44の前部の径方向外側部分に対して摺動する摺動部であって、シャフト42に対するライナ41の回転の全周に渡りブレード43、44に当接し摺動する。
【0018】
ライナ41は、後部にブレード43、44と当接せずオイル(作動油)を収容するオイル室76を有する。ライナ41の内周面であってブレード摺動面62より後方かつライナアッパープレート47より前方の内周面66は、オイル室76の内周面を構成する。軸方向においてオイル室76は、ブレード摺動面62の後端からブレード43、44の後端(ライナアッパープレート47の前端)までの範囲に設けられる。前述のブレード摺動面62に相当する構成、すなわちシャフト42に対するライナ41の回転の全周に渡りブレード43、44に当接し摺動する部分は、ライナ41の後部には設けられない。
【0019】
ライナ41は、ライナ側第1突起部52、53及びライナ側第2突起部54、55を有する。ライナ側第1突起部52、53及びライナ側第2突起部54、55はそれぞれ、ライナ41の内周面66に設けられ、内周面66から径方向内側に突出する。ライナ側第1突起部52、53は、ブレード43、44との係合により打撃トルクを発生させる第1係合部である。ライナ側第2突起部54、55は、ブレード43、44と係合したときにバネ45が最も圧縮された状態となる第2係合部である。
【0020】
ライナ41は、前端部(ブレード摺動面62よりも前方)にシャフト42の中間部外周面を支持するシャフト支持部77を有する。ライナ41とシャフト支持部77は単一の部品として構成される。
【0021】
ライナ41は、ライナアッパープレート47の外周部を支持するライナアッパープレート支持部72を有する。ライナ41とライナアッパープレート支持部72は単一の部品として構成される。
【0022】
シャフト42は、例えば金属製であり、ライナ41に対して相対的に回転可能に支持されて軸方向に延びる。シャフト42は、後端から所定長の範囲がライナ41の内側に収容され、ライナ41の内側で回転される。シャフト42は、前端がライナ41の外側かつ前方に突出する。シャフト42は、モータ軸31と同軸であり、
図1に示すように前端部に先端工具保持部としての先端工具保持穴51を有する。先端工具保持穴51は、シャフト42の前端に開口し、ビット等の先端工具15を保持する。
【0023】
シャフト42は、ブレード支持部としてのブレード支持孔70、及びバネ支持部としてのバネ挿通孔71を有する。ブレード支持孔70及びバネ挿通孔71は、ライナ41の内部に位置する。図示の例では、ブレード支持孔70及びバネ挿通孔71はそれぞれシャフト42を径方向に貫通する貫通孔であるが、ブレード支持孔70及びバネ挿通孔71の一方又は両方は非貫通孔でもよい。バネ挿通孔71を非貫通孔とする場合、バネ45はブレード43用とブレード44用で分ければよい。ブレード支持孔70及びバネ挿通孔71の延出方向は互いに平行である。
【0024】
シャフト42は、シャフト側突起部56~59を有する。シャフト側突起部56~59は、それぞれシャフト42の外面から径方向外側に突出する。
【0025】
ブレード43、44は、それぞれシャフト42のブレード支持孔70に支持され、シャフト42と一体的に回転可能かつシャフト42に対して第1位置と第2位置の間で往復動可能である。第1位置は径方向内側の位置であり、第2位置は径方向外側の位置である。ブレード43、44は、ライナ41の内側に収容される。
【0026】
ブレード43、44はそれぞれ、L字状であり、径方向に延びる第1部分74と、軸方向に延びる第2部分75と、を有する。第1部分74の径方向外側の端部から第2部分75が後方に延びる。第1部分74の径方向内側部分がブレード支持孔70内に位置する。第2部分75は、径方向内側の面に、バネ係止部としての突起部67を有する。突起部67にバネ45の端部が係合し、バネ45がブレード43、44に対して係止される。第2部分75は、溝部68を有する。溝部68は、突起部67の後方に位置する。溝部68は、第2部分75の径方向内側の面に軸方向に延びる凹部として形成される。溝部68は、第2部分75の径方向内側の面に開口する穴部(非貫通孔)に替えてもよい。
【0027】
軸方向におけるブレード43、44の重心位置は、
図2のIII-III断面線の位置であって、軸方向におけるバネ45の存在範囲内かつ軸方向におけるブレード摺動面62の存在範囲内にある。溝部68は、軸方向におけるブレード43、44の重心位置が軸方向におけるバネ45の存在範囲内かつ軸方向におけるブレード摺動面62の存在範囲内となるように調整する肉抜き部(減肉部)である。
【0028】
バネ45は、例えば圧縮コイルばねであり、シャフト42のバネ挿通孔71に挿入支持され、シャフト42と一体的に回転可能かつシャフト42に対して伸縮可能である。バネ45は、ブレード43、44を第1位置から第2位置に向けて付勢、すなわちブレード43、44を径方向外側に向けて付勢(ライナ41の内周部に向けて付勢)する。軸方向におけるバネ45の存在範囲は、軸方向におけるブレード摺動面62の存在範囲と少なくとも部分的に重なる。
図2の例では、軸方向におけるバネ45の存在範囲は、軸方向におけるブレード摺動面62の存在範囲内に収まる。バネ45は、ブレード43、44をブレード摺動面62に向けて付勢する。
【0029】
ライナアッパープレート47は、ライナ41の後部においてライナ41に一体的に支持される。ライナアッパープレート47は、ライナ41の後端開口部に接続されて後端開口部を閉じる。ライナアッパープレート47は、シャフト42の後部を回転可能に支持する。プレート保持部材48は、ライナ41の後端開口部に螺着され、ライナアッパープレート47の後方への抜けを防止する。なお、プレート保持部材48の外周面のねじ山とそれに螺合するライナ41の内周面(係合部73)のねじ山の図示は省略している。
【0030】
図4及び
図5に示すように、ピン60は、ライナアッパープレート47のピン層通孔63及びライナ41のピン層通孔65に挿通される。ピン60は、ライナアッパープレート47及びライナ41を一体に回転させるための部材である。
【0031】
Oリング49は、ライナアッパープレート47の外周面とそれに対向するライナ41の内周面(ライナアッパープレート支持部72)との間に設けられてオイル漏れを防止する。Oリング50は、ライナ41の前部内周面とそれに対向するシャフト42の外周面との間に設けられてオイル漏れを防止する。
【0032】
オイルパルスユニット40は、ライナ41とシャフト42とにより作動油を間欠的に高圧状態として打撃力(回転打撃力)を発生させる。油圧を利用して打撃力を発生する構成は周知であり、様々な構成を採用できる。以下、一例を簡単に説明する。
【0033】
図6(A)~(D)は、オイルパルスユニット40の動作を示す模式図である。オイルパルスユニット40において、油圧による打撃力は、
図6(A),(D)の状態で発生する。すなわち、ブレード43、44とライナ側第1突起部52、53との当接、及び、シャフト側突起部56~59とライナ側第2突起部54、55との係合の相互作用で、油圧による打撃力が発生する。ブレード43、44とライナ側第1突起部52、53との当接力は、バネ45によって付与される。
【0034】
図7は、ライナ41を平面的に展開して内周部を見た模式図である。
図7の例では、ブレード摺動面62は、全周に渡って軸方向の長さが等しい。
【0035】
本実施形態は、下記の作用効果を奏する。
【0036】
(1) ライナ41は、前部にブレード43、44と当接可能なブレード摺動面62を有する一方、後部にはブレード43、44と当接せずオイル(作動油)を収容するオイル室76を有する。ライナ41の後部にはブレード摺動面62に相当する構成、すなわちシャフト42に対するライナ41の回転の全周に渡りブレード43、44に当接し摺動する部分がない。こうした構成のため、ライナ41は、オイル室76の内周面66より後方に、内周面66より径方向内側に突出する部分を有さない。このため、内周面66の加工(オイル室76の加工)には例えばエンドミルを利用でき、Tスロット等を利用した中ぐり加工が不要となる。これにより内周面66の加工(オイル室76の加工)が容易となり、加工時間が短くて済むとともに加工精度が高められる。よって、製造コストを抑えると共に加工品質を高めることができる。また、中ぐり加工と比較してオイル室76を大きく確保でき、オイル室76に充填する作動油の量を増やせると共にライナ41の重量を抑制できる。他方、内周面66を含むライナ41全体をロストワックス製法で製作する場合と比較して、巣(空洞)による不良発生リスクを低減できる。
【0037】
(2) ライナ41とブレード摺動面62が単一の部品として構成されるため、ライナ41とブレード摺動面62が別体の部品である場合と比較して、構造がシンプルで製造コストを抑えることができ、また別体の部品間の隙間からオイルが漏れ出すことを抑制できる。
【0038】
(3) ライナ41とシャフト支持部77が単一の部品として構成されるため、ライナ41とシャフト支持部77が別体の部品である場合と比較して、構造がシンプルで製造コストを抑えることができる。
【0039】
(4) ライナ41とライナアッパープレート支持部72が単一の部品として構成されるため、ライナ41とライナアッパープレート支持部72が別体の部品である場合と比較して、構造がシンプルで製造コストを抑えることができる。
【0040】
(5) 軸方向におけるバネ45の存在範囲が、軸方向におけるブレード摺動面62の存在範囲と少なくとも部分的に重なり、バネ45はブレード43、44をブレード摺動面62に向けて付勢する。このため、軸方向におけるバネ45の存在範囲が軸方向におけるブレード摺動面62の存在範囲外にある場合と比較して、ライナ41の後部にブレード摺動面が無い構成において、バネ45の付勢力によりブレード43、44が傾くことが抑制され、動作が安定する。
【0041】
(6) 軸方向におけるブレード43、44の重心位置が、軸方向におけるバネ45の存在範囲内にある。このため、軸方向におけるブレード43、44の重心位置が軸方向におけるバネ45の存在範囲外にある場合と比較して、バネ45の付勢力によりブレード43、44が傾くことが抑制され、動作が安定する。
【0042】
(7) ブレード43、44は、バネ45の存在範囲よりも後方に溝部68を有する。溝部68は、軸方向におけるブレード43、44の重心位置が軸方向におけるバネ45の存在範囲内かつ軸方向におけるブレード摺動面62の存在範囲内となるように調整する肉抜き部として機能する。このため、軸方向におけるブレード43、44の長さを十分に確保しながらブレード43、44の重心位置を前方に寄せることができる。よって、上記のようにブレード43、44が傾くことを抑制して動作の安定化を図ることができ、設計上好ましい。
【0043】
(8)
図7に示すようにブレード摺動面62は全周に渡って軸方向の長さが等しいため、ライナ41の加工が容易である。
【0044】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2に関し、ライナ41Aを平面的に展開して内周部を見た模式図である。ライナ41Aは、ライナ41と比較して、軸方向におけるブレード摺動面62Aの長さが場所によって異なる点で相違し、その他の点で一致する。ブレード摺動面62Aは、ライナ側第1突起部52、53に近いほど軸方向において長くなる部分があり、またライナ側第2突起部54、55に近いほど軸方向において長くなる部分がある。
【0045】
ブレード摺動面62Aは、ライナ41Aの周方向(
図8中の横方向)において、ライナ側第1突起部52とライナ側第2突起部54の間の中央部で軸方向に最も短くなり、当該中央部からライナ側第1突起部52に近いほど軸方向に長くなり、また当該中央部からライナ側第2突起部54に近いほど軸方向に長くなる。
【0046】
同様に、ブレード摺動面62Aは、ライナ41Aの周方向において、ライナ側第1突起部53とライナ側第2突起部54の間の中央部で軸方向に最も短くなり、当該中央部からライナ側第1突起部53に近いほど軸方向に長くなり、また当該中央部からライナ側第2突起部54に近いほど軸方向に長くなる。
【0047】
図示省略するが、ライナ41Aの周方向における、ライナ側第1突起部52とライナ側第2突起部55の間、及びライナ側第1突起部53ライナ側第2突起部55の間においても、ブレード摺動面62Aは中央部で軸方向に最も短くなり、当該中央部からライナ側第1突起部52、53又はライナ側第2突起部55に近いほど軸方向に長くなる。
【0048】
ブレード摺動面62Aは、軸方向に長い部分では、軸方向に短い部分と比較して、ブレード43、44の傾きを抑制する効果が高い。本実施形態では、ライナ側第1突起部52、53の近傍においてブレード摺動面62Aを軸方向に長くすることで、打撃トルク発生の前後におけるブレード43、44の傾きを効果的に抑制して動作を安定化できる。また、ライナ側第2突起部54、55の近傍においてブレード摺動面62Aを軸方向に長くすることで、バネ45が最も圧縮された状態となる前後におけるブレード43、44の傾きを効果的に抑制して動作を安定化できる。
【0049】
(実施形態3)
図9は、本発明の実施形態3に係るオイルパルスユニット40Bの側断面図である。以下、実施形態1との相違点を中心に説明する。ブレード43B、44Bは、径方向に延びる第1部分74Bに、バネ係止部としての穴部69を有する。穴部69は、第1部分74Bの径方向内側の端部に開口する非貫通孔である。ブレード43B、44Bの穴部69にそれぞれバネ45の端部が位置する。第1部分74Bの径方向内側部分がシャフト42Bのブレード支持孔70B内に位置する。本実施形態のその他の点は実施形態1と同様である。本実施形態も実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0050】
以上、実施形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されない。実施形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。例えば、モータ30はブラシ付きモータであってもよい。また、作業機の電源は、商用電源等の外部交流電源であってもよい。オイルパルスユニットにおける1回転当たりの打撃数は、2回に限らず、1回または3回以上でもよい。
【0051】
図10は、各実施形態のバネ45に替えて利用可能なバネ45Aを示す図である。バネ45が径方向(バネ45の軸方向)から見て正円であったのに対し、バネ45Aは径方向(バネ45Aの軸方向)から見て楕円、長円、あるいは長方形である。バネ45Aの長手方向が前後方向と平行になるように配置することで、ブレードの傾きを抑制できる。
【符号の説明】
【0052】
1…作業機、10…ハウジング、11…モータ収容部、12…ハンドル部、13…電池パック装着部、14…トリガスイッチ、15…先端工具、18…電池パック、19…ハンマケース、20…プロテクタ(保護部材)、30…モータ、31…モータ軸、38…減速機構、40、40B…オイルパルスユニット(オイルパルス機構部)、41、41A、41B…ライナ(筒部材)、42、42B…シャフト(軸部材)、43、43B、44、44B…ブレード(往復動部材)、45、45A…バネ(付勢部材)、47…ライナアッパープレート(蓋部)、48…プレート保持部材(ライナキャップ)、49、50…Oリング、51…先端工具保持穴(先端工具保持部)、52、53…ライナ側第1突起部、54、55…ライナ側第2突起部、56~59…シャフト側突起部、60…ピン、62…ブレード摺動面(摺動部)、63、65…ピン層通孔、66…内周面、67…突起部(バネ係止部)、68…溝部(肉抜き部)、69…穴部(バネ係止部)、70、70B…ブレード支持孔(ブレード支持部)、71…バネ挿通孔(バネ支持部)、72…ライナアッパープレート支持部、73…係合部、74、74B…第1部分、75、75B…第2部分、76…オイル室、77…シャフト支持部。