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特開2024-152073軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ
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  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図1
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図2
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図3
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図4
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図5
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図6
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図7
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図8
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図9
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図10
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図11
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図12
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図13
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図14
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図15
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図16
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図17
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図18
  • 特開-軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ 図19
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152073
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】軽量形鋼に木質材を固定する固定方法及びその固定構造並びにそれらに用いられる金属製アンカーブッシュ
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241018BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20241018BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20241018BHJP
   E04F 15/20 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E04B1/58 509E
E04B1/58 601A
E04B1/82 A
E04B5/43 H
E04F15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066004
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】593207787
【氏名又は名称】ツカ・カナモノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500129694
【氏名又は名称】茨木ナミテイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】針谷 義昭
(72)【発明者】
【氏名】中川 修
(72)【発明者】
【氏名】村尾 智昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 繁夫
【テーマコード(参考)】
2E001
2E125
2E220
【Fターム(参考)】
2E001DF07
2E001EA06
2E001FA11
2E001GA12
2E001GA52
2E001GA63
2E001HA03
2E001HC01
2E001HC02
2E001HC04
2E001HD03
2E001HD11
2E001HE01
2E001KA04
2E125AA14
2E125AA20
2E125AA57
2E125AB01
2E125AB12
2E125AC17
2E125AC23
2E125AC24
2E125AE16
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG31
2E125BB08
2E125BE07
2E125CA77
2E125EA25
2E125EA33
2E220AA19
2E220CA03
2E220CA05
2E220DA19
2E220DB09
2E220GA25X
2E220GA32Y
2E220GB45X
2E220GB46X
2E220GB47X
(57)【要約】
【課題】 木質の床板や梁等の木質材を軽量鉄骨造の骨組みを構成する軽量形鋼に固定する際に手間を減らして作業性の向上を図る。
【解決手段】 金属製アンカーブッシュ3を軽量形鋼1に形成した係止孔2に打ち込み、係止孔2と同一位置に軸孔4を形成した木質材を設置し、軸孔4を介して金属製アンカーブッシュ3に釘6を打ち込む。金属製アンカーブッシュ3は、抜け止めの膨出部3eを有し、釘6が打ち込まれることにより、圧力嵌め状態となって、軽量形鋼1と木質材5とを固定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量形鋼に所定径の係止孔を所定位置に穿設する工程と、
金属製アンカーブッシュを、前記係止孔に打ち込み、前記軽量形鋼に係止する工程と、
釘又は有頭ピンの軸を通すための軸孔が所定位置に形成された木質材を、前記軸孔と前記係止孔との位置が合致するようにして、前記軽量形鋼に配置する工程と、
所定長の釘又は有頭ピンを、前記木質材の前記軸孔を通じて前記金属製アンカーブッシュに打ち込み、前記木質材を前記軽量形鋼に固定する工程と、
を含み、
前記金属製アンカーブッシュは、環状の鍔部と、前記鍔部の中央孔の周囲に前記鍔部の一側面から延びる複数のスナップフィット片とを備え、
前記スナップフィット片は、前記中央孔と連通する筒体を軸方向に延びる割り溝で分割するようにして形成され、径方向外側へ膨出するとともに先細り状の膨出部を備え、
前記膨出部は、前記金属製アンカーブッシュを前記軽量形鋼の前記係止孔に打ち込むことにより、前記係止孔を貫通して前記軽量形鋼に係止する抜け止めを構成し、
前記スナップフィット片は、前記釘又は前記有頭ピンが打ち込まれることにより、前記係止孔と前記釘又は前記有頭ピンとの間で圧接され、前記係止孔に前記金属製アンカーブッシュと前記釘又は前記有頭ピンとが締結されるように構成されている、
軽量形鋼に木質材を固定する方法。
【請求項2】
前記木質材は、前記鍔部が嵌るとともに前記木質材の前記軽量形鋼に対する位置決めとなるザグリ部が前記軸孔の端部に形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記係止孔の内径は、前記筒体の外径と同じか、または、前記筒体の外径より最大で1mm小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記膨出部は、前記スナップフィット片の中間部に設けられ、
前記スナップフィット片の前記膨出部より先端側部分は、前記係止孔に挿入することにより、前記金属製アンカーブッシュを前記軽量形鋼に自立可能に構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記軽量形鋼と前記木質材との間に制振材が介在され、
前記制振材は、前記鍔部が収容される開口部が形成されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記制振材は、前記木質材に予め固定されており、
前記開口部に前記鍔部を収容することにより、前記木質材が前記軽量形鋼に対して位置決めされるように構成されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所定径の係止孔が形成された軽量形鋼と、
前記係止孔に打ち込まれた金属製アンカーブッシュと、
前記金属製アンカーブッシュに打ち込まれた釘又は有頭ピンによって前記軽量形鋼に固定された木質材と、を含み、
前記金属製アンカーブッシュは、環状の鍔部と、前記鍔部の中央孔の周囲に前記鍔部の一側面から延びる複数のスナップフィット片とを備え、
前記スナップフィット片は、前記中央孔と連通する筒体を軸方向に延びる割り溝で分割するようにして形成され、径方向外側へ膨出するとともに先細り状の膨出部を備え、
前記膨出部は、前記軽量形鋼の前記係止孔を貫通して、前記軽量形鋼に係止する抜け止めを構成し、
前記スナップフィット片は、前記係止孔と前記釘又は前記有頭ピンの軸との間で圧接され、前記係止孔に前記金属製アンカーブッシュと前記釘又は前記有頭ピンとが締結されるように構成されている、
軽量形鋼に木質材を固定する固定構造。
【請求項8】
前記木質材は、前記鍔部が嵌るとともに前記木質材の前記軽量形鋼に対する位置決めとなるザグリ部が前記軸孔の端部に形成されている、請求項7に記載の固定構造。
【請求項9】
前記膨出部は、前記スナップフィット片の中間部に設けられている、請求項7に記載の固定構造。
【請求項10】
前記軽量形鋼と前記木質材との間に制振材が介在され、
前記制振材は、前記鍔部が収容される開口部が形成されている、
請求項7に記載の固定構造。
【請求項11】
前記制振材は、前記木質材に予め固定されており、
前記開口部に前記鍔部を収容することにより、前記木質材が前記軽量形鋼に対して位置決めされるように構成されている、請求項10に記載の固定構造。
【請求項12】
環状の鍔部と、前記鍔部の中央孔の周囲に前記鍔部の一側面から延びる複数のスナップフィット片とを備え、前記スナップフィット片は、前記中央孔と連通する筒体を軸方向に延びる割り溝で分割するようにして形成され、径方向外側へ膨出するとともに先細り状の膨出部を備える、金属製アンカーブッシュ。
【請求項13】
前記膨出部は、前記スナップフィット片の中間部に設けられている、請求項12に記載の金属製アンカーブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量鉄骨造の骨組みに使用される軽量形鋼に、根太等の下地材や合板製床パネル等の、木質材を固定する固定方法、固定構造、及びそれらに用いる金属製アンカーブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量鉄骨造の一般建築物では、骨組みに使用されるH形鋼等の軽量形鋼に床パネルや根太等を固定する場合、例えば図19に示すように、軽量形鋼1のフランジ1aとフランジ1aに載せる木製の床材10とにボルト孔を穿孔しておき、そのボルト孔に通したボルトBにナットNを螺諦することにより、軽量形鋼1に床材10を固定している(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-20967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の固定方法では、ボルトとナットのネジ締め等に手間がかかり、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、軽量鉄骨造の骨組みを構成する軽量形鋼に、木質の床板や根太等の木質材を固定する際に、手間を減らして作業性を向上し得る固定方法、固定構造、及びそられに用いる金属製アンカーブッシュを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係る軽量形鋼に木質材を固定する固定方法は、軽量形鋼に所定径の係止孔を所定位置に穿設する工程と、金属製アンカーブッシュを、前記係止孔に打ち込み、前記軽量形鋼に係止する工程と、釘又は有頭ピンの軸を通すための軸孔が所定位置に形成された木質材を、前記軸孔と前記係止孔との位置が合致するようにして、前記軽量形鋼に沿って配置する工程と、所定長の釘又は有頭ピンを、前記木質材の前記軸孔を通じて前記金属製アンカーブッシュに打ち込み、前記木質材を前記軽量形鋼に固定する工程と、を含み、前記金属製アンカーブッシュは、環状の鍔部と、前記鍔部の中央孔の周囲に前記鍔部の一側面から延びる複数のスナップフィット片とを備え、前記スナップフィット片は、前記中央孔と連通する筒体を軸方向に延びる割り溝で分割するようにして形成され、径方向外側へ膨出するとともに先細り状の膨出部を備え、前記膨出部は、前記金属製アンカーブッシュを前記軽量形鋼の前記係止孔に打ち込むことにより、前記係止孔を貫通して前記軽量形鋼に係止する抜け止めを構成し、前記スナップフィット片は、前記釘又は前記有頭ピンが打ち込まれることにより、前記係止孔と前記釘又は前記有頭ピンとの間で圧接され、前記係止孔に前記金属製アンカーブッシュと前記釘又は前記有頭ピンとが締結されるように構成されている。
【0007】
前記木質材は、前記鍔部が嵌るとともに前記木質材の前記軽量形鋼に対する位置決めとなるザグリ部が前記軸孔の端部に形成されていることが好ましい。
【0008】
前記係止孔の内径は、前記筒体の外径と同じか、または、前記筒体の外径より最大で1mm小さいことが好ましい。
【0009】
前記膨出部が前記スナップフィット片の中間部に設けられ、前記スナップフィット片の前記膨出部より先端側部分を前記係止孔に挿入することにより、前記金属製アンカーブッシュを前記軽量形鋼に自立可能に構成されていることが好ましい。
【0010】
前記軽量形鋼と前記木質材との間に制振材が介在され、前記制振材は、前記鍔部が収容される開口部が形成され得る。
【0011】
前記制振材は、前記木質材に予め固定されており、前記開口部に前記鍔部を収容することにより、前記木質材が前記軽量形鋼に対して位置決めされるように構成され得る。
【0012】
本発明の一実施形態に係る軽量形鋼に木質材を固定する固定構造は、所定径の係止孔が形成された軽量形鋼と、前記係止孔に打ち込まれた金属製アンカーブッシュと、前記金属製アンカーブッシュに打ち込まれた釘又は有頭ピンによって前記軽量形鋼に固定された木質材と、を含み、前記金属製アンカーブッシュは、環状の鍔部と、前記鍔部の中央孔の周囲に前記鍔部の一側面から延びる複数のスナップフィット片とを備え、前記スナップフィット片は、前記中央孔と連通する筒体を軸方向に延びる割り溝で分割するようにして形成され、径方向外側へ膨出するとともに先細り状の膨出部を備え、前記膨出部は、前記軽量形鋼の前記係止孔を貫通して、前記軽量形鋼に係止する抜け止めを構成し、前記スナップフィット片は、前記係止孔と前記釘又は前記有頭ピンの軸との間で圧接され、前記係止孔に前記金属製アンカーブッシュと前記釘又は前記有頭ピンとが締結されるように構成されている。
【0013】
本発明に係る軽量形鋼に木質材を固定する固定構造において、前記木質材は、前記鍔部が嵌るとともに前記木質材の前記軽量形鋼に対する位置決めとなるザグリ部が前記軸孔の端部に形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る軽量形鋼に木質材を固定する固定構造において、前記軽量形鋼と前記木質材との間に制振材が介在され、前記制振材は、前記鍔部が収容される開口部が形成され得る。
【0015】
本発明に係る軽量形鋼に木質材を固定する固定構造において、前記制振材は、前記木質材に予め固定されており、前記開口部に前記鍔部を収容することにより、前記木質材が前記軽量形鋼に対して位置決めされるように構成され得る。
【0016】
また、本発明の一態様に係る金属製アンカーブッシュは、環状の鍔部と、前記鍔部の中央孔の周囲に前記鍔部の一側面から延びる複数のスナップフィット片とを備え、前記スナップフィット片は、前記中央孔と連通する筒体を軸方向に延びる割り溝で分割するようにして形成され、径方向外側へ膨出するとともに先細り状の膨出部を備える。前記膨出部は、前記スナップフィット片の先端部又は中間部に設けられ得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属製アンカーブッシュを軽量形鋼に打ち込んでおき、木質材の軸孔を介して釘又は有頭ピンを金属製アンカーブッシュに打ち込むだけで、軽量形鋼に木質材を固定することができるため、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る軽量形鋼に木質材を固定する方法の第1実施形態を示す斜視図である。
図2図1の実施形態の変更態様を示す斜視図である。
図3】本発明の構成要素である金属製アンカーブッシュを拡大して示す斜視図である。
図4図3の金属製アンカーブッシュを反対方向(下側)から視た斜視図である。
図5図3の金属製アンカーブッシュを示し、(a)正面図、(b)右側面図、(c)底面図、(d)平面図、(e)A-A断面図である。
図6図1に示す本発明の各構成要素を示す断面図である。
図7図6の断面図に続く工程を示す断面図である。
図8図7の断面図に続く工程を示す断面図である。
図9図8の断面図に続く工程を示す断面図である。
図10図9の断面図に続く工程を示す断面図である。
図11図10の断面図に続く工程を示す断面図である。
図12】本発明に係る金属製アンカーブッシュの第2実施形態を示す断面図である。
図13図12の金属製アンカーブッシュの使用状態を示す断面図である。
図14図12の金属製アンカーブッシュの使用状態を示す断面図である。
図15図12の金属製アンカーブッシュの使用状態を示す断面図である。
図16図12の金属製アンカーブッシュを用いて軽量形鋼に木質材を固定する固定構造を示す断面図である。
図17図16に示す工程構造の変更態様を示す断面図である。
図18】本発明に係る金属製アンカーブッシュの他の実施形態を示す断面図である。
図19】軽量形鋼に木質材を固定する従来の工法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る軽量形鋼に木質材を固定する方法の実施形態について、以下に図1図18を参照して説明する。なお、全図及び全実施形態を通じて同一又は類似の構成部分に同符号を付した。
【0020】
先ず、本発明に係る軽量形鋼に木質材を固定する固定方法の第1実施形態について、図1図11を参照して工程順に説明する。図1図2を参照して、軽量形鋼1に所定径の複数の係止孔2が、所定位置に穿設される。係止孔2は、所定のピッチで穿設することができる。軽量形鋼1は、図示例では、H形鋼であるが、C形鋼、I形鋼等の他の軽量形鋼であってもよい。図示例では、軽量H形鋼のフランジ部に係止孔2が形成される。軽量鉄骨造に用いられる軽量H形鋼のフランジ部の厚さは例えば3~6mmである。
【0021】
金属製アンカーブッシュ3が、係止孔2に打ち込まれ、軽量形鋼1に係止される。金属製アンカーブッシュ3は、図3図5に示すように、環状の鍔部3aと、鍔部3aの中央孔3bの周囲に鍔部3aの一側面から延びる複数のスナップフィット片3cとを備える。スナップフィット片3cは、中央孔3bと連通する筒体を軸方向に延びる割り溝3dで分割するようにして形成されている。スナップフィット片3cは、径方向外側へ膨出するとともに先端側へ先細りする先細り状の膨出部3eを先端部に備えている。
【0022】
金属製アンカーブッシュ3は、図7に示すように、膨出部3eの先細り状部分を係止孔2に挿して金属製アンカーブッシュ3を軽量形鋼1に自立させた状態にしておいて、ハンマー等で上から叩いて打ち込むことができる。係止孔2の内径D1(図6)は、前記筒体の外径(鍔部3aと膨出部3eとの間の胴部3fの外径)D2と同じか、または、前記筒体の外径D2より最大で1mm小さく設定されている(D2-1mm≦D1≦D2)。金属製アンカーブッシュ3を軽量形鋼1の係止孔2に打ち込むと、図8に示すように、スナップフィット片3cが内側に変形しながら、膨出部3eが係止孔2を通り、図9に示すように、膨出部3eが係止孔2を貫通する。スナップフィット片3cは、膨出部3eが係止孔2を貫通した直後、図9に示すように、僅かに内側に塑性変形するが、スナップフィット片3cの弾性復元力により膨出部3eが外側にある程度復帰し、係止孔2を貫通した膨出部3eが軽量形鋼1に係止して抜け止めを構成する。
【0023】
なお、予め工場で軽量形鋼1に係止孔2を穿設し、金属製アンカーブッシュ3を係止孔2に予め打ち込んだ状態で、軽量形鋼1を建築現場に搬入することができる。金属製アンカーブッシュ3は、膨出部3eによって抜け止めされているため、搬送時に軽量形鋼1の係止孔2から脱落することが防がれる。
【0024】
係止孔2と同一位置に複数の軸孔4が形成された木質材5を、軸孔4と係止孔2との位置が合致するようにして、軽量形鋼1に沿って配置し、所定長の釘6を、木質材5の軸孔4を通じて金属製アンカーブッシュ3に打ち込み、木質材5を軽量形鋼1に固定する(図10図11)。釘6に代えて有頭ピン(図示せず。)を用いることもできる。軽量形鋼1に固定する木質材5は、例えば、根太板等の下地材、或いは、床パネル、壁パネル等である。木質材5は、工場において予め軸孔4を形成したものを、建築現場へ搬入することができる。
【0025】
図1に例示した木質材5は、いずれも根太等の棒状(角材)の木質部材でなる下地材であり、例えば、軽量形鋼1の上面に固定される下地材としての木質材5は、その上面5aが釘打ち面となって、下地材を構成する木質材5の上面5aに床パネルPを載せて釘打ちされて固定される。軽量形鋼1の下面に固定される下地材としての木質材5は、その側面5bが釘打ち面となって、下地材を構成する木質材5の側面5bに壁パネルWが釘打ちされて固定される。床パネルを軽量形鋼1に固定する場合に、図2に示すように、下地材を使用せず、床パネル等を構成する構造用合板、パーティクルボード、OSB(オリエンテッド・ストランド・ボード)、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)などの板状の木質材5を軽量形鋼1に直接固定することもできる。
【0026】
木質材5は、鍔部3aが嵌るとともに木質材5の軽量形鋼1に対する位置決めとなるザグリ部8(図6等)が軸孔4の端部に形成されていることが好ましい。ザグリ部8を設けることにより、木質材5を軽量形鋼1に設置する際に、ザグリ部8が金属製アンカーブッシュ3の鍔部3aに案内され、容易に位置決めできる(図10)。
【0027】
図10に示されるように、軽量形鋼1の上に木質材5が位置決めされたら、木質材5の軸孔4に釘6を挿入する。釘6は、金属製アンカーブッシュ3の中央孔3bの内径と同じ寸法の釘が使用される。軸孔4の内径D4(図6)も中央孔3bの内径と同じ寸法に設定される。釘6を軸孔4に挿入すると、上記したようにスナップフィット片3cが僅かに内側に塑性変形しているため、図10に示す状態のように釘6の頭部が木質材5から突き出た状態となり、釘6の頭をハンマー等で叩いて打ち込めば、図11に示されるように、金属製アンカーブッシュ3に釘6が打ち込まれ、釘6の頭部が木質材5の表面に埋没する。
【0028】
金属製アンカーブッシュ3に釘6が打ち込まれることにより、スナップフィット片3cは、係止孔2と釘6との間で圧接され、係止孔2に金属製アンカーブッシュ3と釘6の軸6aとが圧力嵌め状態で締結され、木質材5が軽量形鋼1に固定される。
【0029】
工場において、軽量形鋼1に金属製アンカーブッシュ3を予め取り付けておき、木質材5に予め軸孔4を形成しておけば、建築現場では軸孔4に釘6を挿入して打ち込むだけで済み、作業性が向上する。また、釘又は有頭ピンを打ち込んで固定するため、電動工具を使用しなくても施工可能である。
【0030】
図12図17は、第2実施形態に係る金属製アンカーブッシュを示している。第2実施形態の金属製アンカーブッシュ3Aは、膨出部3eがスナップフィット片3cの先端部から離れた中間部に設けられている。図13に示すように、スナップフィット片3cの膨出部3eより先端側部分3gは、係止孔2に挿入されることにより、金属製アンカーブッシュ3Aを軽量形鋼1に自立させることができる自立ガイド部を構成し、金属製アンカーブッシュ3を軽量形鋼1の係止孔2に釘打ちする作業が行い易くなる。先端側部分3gは、スナップフィット片3cの胴部3f(膨出部3eと鍔部3aとの間の部分)と同じ外径となっている。金属製アンカーブッシュ3Aのスナップフィット片3cは、先端部がテーパー状に形成されている。第2実施形態の金属製アンカーブッシュ3Aのその他の構成は、上記した金属製アンカーブッシュ3と同様である。図13の状態から金属製アンカーブッシュ3Aをハンマー等で係止孔2に打ち込むと、図14のようにスナップフィット片3cが内側に変形しつつ係止孔2に入り、図15に示すように、スナップフィット片3cが若干内側に塑性変形しつつも外側に弾性復帰して、係止孔2を貫通した膨出部3eが軽量形鋼1に係止して抜け止めを構成する。金属製アンカーブッシュ3Aを軽量形鋼1の係止孔2に打ち込んだら、図16に示すように、鍔部3aにザグリ部8を嵌めるようにして、軽量形鋼1に木質材5を位置決めし、木質材5の軸孔4を介して釘6を金属製アンカーブッシュ3Aに打ち込み、係止孔2に釘6とスナップフィット片3cとを圧力嵌め状態として、木質材5を軽量形鋼1に固定する。
【0031】
図17は、本発明の他の実施形態を示している。図17に示す例では、軽量形鋼1と木質材5との間に制振材7が介在されており、制振材7は、鍔部3aを収容する開口部7aが形成されている。開口部7aに鍔部3aを収容するため、制振材7の厚さは、鍔部3aが埋没する寸法であり、実質的に鍔部3aの厚さと同等の板厚か、或いは、鍔部3aの厚さよりやや厚めの厚さとされ得る。また、開口部7aの直径は、鍔部3aの直径と実質的に同じが僅かに小さい寸法とすることができる。開口部7aの中心部に木質材5の軸孔4が連通する。このような開口部7aを制振材7に設けることにより、木質材5にザグリ部を設けなくて済む。また、制振材7を木質材5に予め接着剤、釘打ち等により固定しておくことにより、開口部7aが、軽量形鋼1に対する木質材5の位置決めの役割を果たすことができる。制振材7は、例えば、軽量形鋼1と木質材5とが重なる部分にのみ設けることができる。
【0032】
制振材7は、公知の材質のものを使用できる。制振材は、音源等に貼り付けて、音により振動が伝播する物体の振動を減衰させて振動そのものを抑え込み、いわゆる固体伝播音を低減するものである。建築分野における制振材としては、例えば、ゴム系制振材、樹脂系制振材、アスファルト系制振材、石膏ボード等が知られている。ゴム系或いは樹脂系の制振材の材質としては、例えば、ブチルゴム、硬質ポリウレタンフォーム、酢酸ビニル等が知られている。アスファルト系制振材としては、例えば、金属等の無機材料を混入した帯状のアスファルトシートであって高密度で粘弾性を有するものを用いることができる。制振材7は、例えば、厚さ3~10mmのものを用いることができる。
【0033】
本発明は、上記の実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、スナップフィット片は2本であったが、3本または4本のスナップフィット片を設けることもできる。また、例えば、図18に示すように、膨出部3eの形状を、膨出部3eの全長に亘ってテーパー状とすることもできる。また、例えば、軽量形鋼と木質材との間に、ALC板等の更に他の板材を介在させることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 軽量形鋼
2 係止孔
3 金属製アンカーブッシュ
3a 鍔部
3b 中央孔
3c スナップフィット片
3d 割り溝
3e 膨出部
4 軸孔
5 木質材
6 釘
7 制振材
図1
図2
図3
図4
図5
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