(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152080
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】衝突被害軽減機構を備える乗用自動車
(51)【国際特許分類】
B60R 21/0134 20060101AFI20241018BHJP
B60R 21/04 20060101ALI20241018BHJP
B60R 21/08 20060101ALI20241018BHJP
B60R 21/20 20110101ALI20241018BHJP
【FI】
B60R21/0134 310
B60R21/0134 311
B60R21/0134 312
B60R21/0134 313
B60R21/04
B60R21/08 Z
B60R21/08 P
B60R21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066014
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】511187753
【氏名又は名称】ライフラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】596006835
【氏名又は名称】大田 徹
(72)【発明者】
【氏名】大田 徹
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054EE02
3D054EE18
3D054EE26
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】 衝突前に衝突を予測して、特別な機構によって衝突の影響を軽減することによって高度な安全性を車両に与える。
【解決手段】 処理ユニット(130)と、複数の方向の複数の箇所に配置された外部物体を感知する物体センサー(132など)と、複数の方向の複数の箇所に配置された緩衝体形成装置(134など)とを備える乗用自動車(100)である。処理ユニットは、各物体センサーと各緩衝体形成装置に接続されており、物体センサーからの入力によってこの自動車と外部物体との衝突を予測し、処理ユニットは、衝突を予測する際に、衝突の方向ないし箇所を予測し、その衝突の方向ないし箇所に対応する緩衝体形成装置に対して緩衝体を形成させ、この緩衝体によって乗員に対する衝突の影響を軽減させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用自動車(100)であって、
処理ユニット(130)と、
複数の方向の複数の箇所に配置された外部物体を感知する物体センサー(132、154、156、158、162、164、165)と、
複数の方向の複数の箇所に配置された緩衝体形成装置(134、136、138、142、144、146、148、152、171~174、202、204、206、212、214、216)とを備え、
処理ユニットは、各物体センサーと各緩衝体形成装置に接続されており、物体センサーからの入力によってこの自動車と外部物体との衝突を予測し、
処理ユニットは、衝突を予測する際に、衝突の方向ないし箇所を予測し、その衝突の方向ないし箇所に対応する緩衝体形成装置に対して緩衝体を形成させ、
この緩衝体によって乗員に対する衝突の影響を軽減させる
ことを特徴とする乗用自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突被害軽減機構を備える乗用自動車の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、他車にぶつけられること、自車がぶつけてしまうことを防ぐために、安全装置によって、エアバッグ装置、衝突軽減ブレーキ、レーンキープアシスト、ブラインドスポットモニターが実装されている。これを実現するために、距離センサー、カメラの画像解析によって、情報を得て、処理ユニットによって危険な状況を察知し、制動、操舵に安全装置が介入している。
【0003】
また、乗用車においては、衝突後にエアバッグ装置が作動して、乗員を保護している。自動運転のために、自車とその乗員を保護しつつ、他車や歩行者を保護することも重要性が増している。また、バッテリー駆動電気自動車のように、内燃機関による自動車と比べて車両内における利用可能な空間が大きい車両が今後増えてくることが予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、衝突前に衝突を予測して、特別な機構によって衝突の影響を軽減することによって高度な安全性を車両に与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、
処理ユニットと、
複数の方向の複数の箇所に配置された外部物体を感知する物体センサーと、
複数の方向の複数の箇所に配置された緩衝体形成装置とを備える乗用自動車であって、
処理ユニットは、各物体センサーと各緩衝体形成装置に接続されており、物体センサーからの入力によってこの自動車と外部物体との衝突を予測し、
処理ユニットは、衝突を予測する際に、衝突の方向ないし箇所を予測し、その衝突の方向ないし箇所に対応する緩衝体形成装置に対して緩衝体を形成させ、
この緩衝体によって乗員に対する衝突の影響を軽減させる。
【0006】
乗用自動車は、四輪の自動車、トラック、軍用車両(戦車など)、自動三輪車、自動二輪車などであり、車輪を備えるものであるが、特に四輪の自動車が好ましい。動力源の種類は問わないが、電気自動車の場合、利用することができる空間が内燃機関式自動車と比べて多いので、特に効果的である。
【0007】
物体センサーは、カメラ、ミリ波センサー、距離センサーなどであり、車両の複数の方向の複数の箇所に配置される。
【0008】
処理ユニットは、例えば、安全制御ユニットであり、プロセッサー、メモリーなどを備える。
【0009】
緩衝体形成装置は、好ましくは車両の前側、左サイド側、右サイド前、後ろ側の4つ以上であり、より好ましくは車両の前側、左サイド前側、左サイド後ろ側、右サイド前側、右サイド後ろ側、後ろ側の6つ以上であり、より好ましくは車両の前側左、前側右、左サイド前側、左サイド後ろ側、右サイド前側、右サイド後ろ側、後ろ側左、後ろ側右の8つ以上である。
【0010】
緩衝体形成装置としては、火薬を内蔵して外側にエアバッグを形成するエアバッグ装置、外側に固形物を形成するもの、流動体と別の物質との反応によって固形物を形成するもの、液体窒素の低温の作用によって瞬時に固形物を形成するものなどがある。
【0011】
緩衝体としては、エアバッグ、固形物、発泡性高分子のような弾性体などがある。
【0012】
本発明の1つの態様において、緩衝体形成装置は、ドアの外側を含む車両の外側に緩衝体を形成する。
【0013】
本発明の1つの態様において、ルーフ上に設置する付加型装置を備え、この付加型装置は、複数の緩衝体形成装置を備え、衝突予想時に、対応する緩衝体形成装置が車両の外側の衝突を予想した方向に緩衝体を形成する。
【0014】
本発明の1つの態様において、車両には、ドアの内側を含む複数の箇所に複数の空洞があり、各空洞には、対応する緩衝体形成装置が複数あり、衝突予想時には、衝突を予想した方向に対応する一部の緩衝体形成装置が作動して空洞内に緩衝体を形成する。
【0015】
本発明の1つの態様において、車両には、ドアの内側を含む複数の箇所に複数の空洞があり、車両には、槽と、複数の弁と、送り装置とを備える緩衝体形成装置があり、緩衝体形成装置の各弁と各空洞は、通路(管)によって連通しており、衝突予想時には、緩衝体形成装置の対応する弁が開き(又は対応する弁以外の弁が閉まる)、槽の中の送り装置における火薬が爆発して、槽に入っていた流動体が管へと送り出されて、開いた弁に対応する空洞に到達して、流動体の反応によって固体の緩衝体を形成して、衝突の被害を軽減する。
【0016】
本発明の1つの態様において、車内には、複数のコンパートメントがあり、各コンパートメントには、乗員用のシートがあり、衝突を予測すると、対応する乗員のコンパートメント自体を、衝突とは反対側に、すなわち、衝突の影響を緩和させる方向に、移動させる。
【0017】
また、コンパートメントが緩衝体形成装置を備え、コンパートメント側から緩衝体を出して、緩衝体を形成して、衝突の被害を軽減する。乗員保護装置によってエアバッグを形成して、衝突の被害を軽減する。
【0018】
コンパートメントは、収縮可能であることが好ましく、これによって、衝突が予想されるコンパートメントが移動する距離を大きくすることができる。
【0019】
さらに、好ましくは車両幅方向の反対側のドアを自動的に開けて、車両幅方向の反対側のコンパートメントを動かして、好ましくはその一部又は全部を左側の外に出して、衝突が予想されるコンパートメントをさらに左側に待避させる。
【0020】
本発明の1つの態様において、衝突予想時に上方に座席を動かす。車内には、複数のコンパートメントがあり、各コンパートメントには、乗員用のシートやシートベルトがあり、衝突を予測すると、対応する乗員のコンパートメント自体を、上方に、すなわち、ルーフの上に、動かす。
【0021】
ルーフは、開閉機構や部分的に外れることなどによって、開くことができるルーフである。
【0022】
各コンパートメントの下には、発射装置、方向誘導機構がある。
【0023】
衝突を予測すると、発射装置が、方向誘導機構が誘導する方向に沿って、コンパートメント自体を、上方に射出する。
【0024】
弾性があるひもが、方向誘導機構とコンパートメントに接続されていて、方向誘導機構は、ひもによってコンパートメントが遠くへ行くことを防ぎ、ひもの弾性によってコンパートメントに強い衝撃が加わることを防ぐ。
【0025】
方向誘導機構が、コンパートメントを支えるための支持メンバーを形成することによってコンパートメントの自由落下を避けることができる。支持メンバーは、例えば、望遠鏡タイプの伸縮機構によって伸びたり格納したりすることができるものである。
【0026】
本発明の1つの態様において、衝突予想時にルーフ上の緩衝体を動かす。ルーフ上には、緩衝体駆動機構が固定されており、その上に緩衝体が配置されている。衝突を予測すると、緩衝体駆動機構によって緩衝体を衝突が予想される方向に動かす。
【0027】
本発明の1つの態様において、ルーフ上の緩衝体形成装置が拡大して緩衝体を形成する。ルーフ上に、拡大することができる複数の緩衝体形成装置があり、衝突予想時には衝突方向に対応する緩衝体形成装置のみが緩衝位置に動いて拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】伝統的な四輪の乗用車である車両を示しており、
図1Aは、前側から見た図、
図1Bは、後ろ側から見た図、
図1Cは、左側から見た図、
図1Dは、上側から見た図である。以降の図において、前の図に描かれた要素が存在することが多いが、簡潔にするために特に描かず説明しない。
【
図2】緩衝体を外側に形成する実施形態に係る車両を示しており、
図2Aは、前側から見た図、
図2Bは、後ろ側から見た図、
図2Cは、左側から見た図、
図2Dは、上側から見た図である。
【
図3】付加型装置がルーフの上にある実施形態に係る車両を左側から見た図である。
【
図4】車体内にて緩衝体を形成する実施形態に係る車両を上側から見た図である。
【
図5】槽から各空洞に流動体を送る実施形態に係る車両を上側から見た図である。
【
図6】衝突予想時に座席を動かす実施形態に係る車両を示しており、
図6Aは、左側から見た図、
図6Bは、上側から見た図である。
【
図7】衝突予想後に座席を動かした後の車両を上側から見た図である。
図7Bにおいては、コンパートメントが収縮可能となっている。
【
図8】衝突予想時に上方に座席を動かす実施形態に係る車両を示しており、
図8Aは、左側から見た図、
図8Bは、上側から見た図である。
【
図9】衝突予想時にルーフ上の緩衝体を動かす実施形態に係る車両を示しており、
図9Aは、上側から見た図、
図9Bは、前側から見た図である。
【
図10】複数の緩衝体形成装置を備える車両を上側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1A~Dは、伝統的な四輪の乗用車である車両100を示している。
【0030】
この車両100には、ヘッドライト104、ナンバープレート108、114、フロントバンパー106、サイドミラー104、テールライト112、車輪116、乗り込み用ドア122、124、ルーフ118などがある。車両100は、内燃機関を備える自動車であってもよく、また、電気自動車であってもよい。以下の図における車両はこの車両をベースとしており、この車両の要素をすべて備える。
【0031】
(1)緩衝体を外側に形成
図2A~Dは、
図1A~Dの車両をベースとする、緩衝体を外側に形成する実施形態に係る車両を示している。
【0032】
この車両には、
図1A~Dの車両と比べて、処理ユニット130、物体センサー132、154、156、158、162、164、165、緩衝体形成装置134、136、138、142、144、146、148、152を備える。
【0033】
処理ユニット130は、プロセッサー、メモリーなどによって構成しており、各物体センサー、各緩衝体形成装置に接続されている。
【0034】
物体センサーは、カメラ、ミリ波レーダーによる距離センサーなどによって構成している。この車両においては、フロントガラスの内側の上側に、カメラが2つある物体センサー132があり、車両前面にミリ波レーダー式の距離センサーである物体センサー154がある。物体センサーからの情報を処理ユニット130が処理して、衝突の発生と、衝突方向ないし衝突箇所を予測する。
【0035】
緩衝体形成装置134、136、138、142、144、146、148、152は、前側左、前側右、左サイド前側、左サイド後ろ側、右サイド前側、右サイド後ろ側、後ろ側左、後ろ側右の8つある。この車両において、緩衝体形成装置は、作動すると車両の外側にエアバッグを形成して、衝突してしまっても、この車両と相手方を保護するエアバッグ装置である。このエアバッグ装置は、車内で使われている伝統的なエアバッグ装置と同様な機構を有し、内部に火薬があり、火薬が爆発することによって瞬時にエアバッグを形成する。エアバッグの形と大きさは、衝突の被害を軽減するために適宜決める。
【0036】
処理ユニット130が特定の方向からの衝突を予測すると、対応する緩衝体形成装置が作動して、この場合はエアバッグである緩衝体を車両の外側に形成して、衝突の被害を軽減する。例えば、処理ユニット130が車両右側から右前の座席の方への衝突を予測すると、右サイド前側の緩衝体形成装置144が作動して(典型的には、他の緩衝体形成装置も作動する)、緩衝体を右サイド前側の車両の外側に形成して、衝突の被害を軽減する。
【0037】
また、処理ユニット130は、通常時から、乗員センサー(図示せず)によってどの席に乗員が乗っているかを把握しており、緩衝体をどこに形成するかは、その乗員の乗り込み状態に応じて決める。このことは、下記の他の実施形態においても同様である。
【0038】
(2)緩衝体を外側に形成(付加型装置)
図3は、付加型装置170によって緩衝体を外側に形成することを実現する実施形態を示している。付加型装置170は、ルーフ118の上に固定される。
【0039】
物体センサー182、183は、付加型装置において、前側、左サイド前側、左サイド後ろ側、右サイド前側、右サイド後ろ側、後ろ側の6箇所にある。
【0040】
緩衝体形成装置は、同様に、前側左171、前側右、左サイド前側172、左サイド後ろ側173、右サイド前側、右サイド後ろ側、後ろ側左174、後ろ側右の8つある。
【0041】
処理ユニット130が特定の方向からの衝突を予測すると、対応する緩衝体形成装置が作動して、この場合はエアバッグである緩衝体を車両の外側に形成して、衝突の被害を軽減する。例えば、処理ユニット130が車両左側から左前の座席の方への衝突を予測すると、左サイド前側の緩衝体形成装置172が作動して(典型的には、他の緩衝体形成装置171、173、174も作動する)、緩衝体を左サイド前側の車両の外側のドアの前に形成して、衝突の被害を軽減する。
【0042】
このように、ルーフ118の上に固定される付加型装置170を用いることによって、車両の下側を単純化しつつ、安全性の必要性が増した場合や安全装置を備えていない車両の場合などに対しても、安全装備を設けることができる。
【0043】
付加型装置170には、太陽光電池、格納式の延長屋根(板状体が格納されていて水平方向に移動して屋根を形成するもの)、ポップアップタイプの就寝床、ポップアップタイプの折りたたみ型テントを備えることによってユーザーに利便性を提供することができる。「ポップアップタイプ」とは、上側の板状体の全体又は主に一方が上側に移動して、その上側の板状体と底面との間で空間が発生するようなもののことである。
【0044】
(3)車体内にて緩衝体を形成する(各空洞に緩衝体形成装置)
図4は、車体内にて緩衝体を形成する実施形態に係る車両を示している。
【0045】
車両には、前側201、後ろ側215、左サイド前側203、左サイド後ろ側211、右サイド前側205、右サイド後ろ側213に、空洞がある。メンテナンスなどのために、このような空洞が必要となっている。この空洞の空間は、閉じていることができ、また、閉じていないことができる。
【0046】
各空洞の壁には、緩衝体形成装置202、204、206、212、214、216がある。
【0047】
処理ユニット130が特定の方向からの衝突を予測すると、緩衝体形成装置が作動して、この場合はエアバッグである緩衝体を形成して、衝突の被害を軽減する。例えば、処理ユニット130が車両左側から左前の座席の方への衝突を予測すると、左サイド前側の緩衝体形成装置204が作動して(典型的には、他の緩衝体形成装置212、202なども作動する)、緩衝体を左サイド前側の車両の外側のドアの前に形成して、衝突の被害を軽減する。
【0048】
(4)車体内にて緩衝体を形成する(槽から各空洞に流動体を送る)
図5は、槽から各空洞に流動体を送って、車体内にて緩衝体を形成する実施形態に係る車両を示している。
【0049】
車両には、前側252、後ろ側255、左サイド前側251、左サイド後ろ側254、右サイド前側253、右サイド後ろ側256に、空洞がある。メンテナンスなどのために、このような空洞が必要となっている。この空洞は、閉じていることができ、また、閉じていないことができる。
【0050】
車両には、槽と、弁231~236と、送り装置とを備える緩衝体形成装置220があり、緩衝体形成装置220の弁と各空洞は、管241~246によって連通している。
【0051】
処理ユニット130が特定の方向からの衝突を予測すると、緩衝体形成装置の対応する弁が開き(又は対応する弁以外の弁が閉まる)、槽の中の送り装置における火薬が爆発して、槽に入っていた流動体が、開いた弁に対応する空洞に到達して、流動体の化学反応又は物理的反応によって固体の緩衝体を形成して、衝突の被害を軽減する。例えば、処理ユニット130が左サイド前側への衝突を予測すると、緩衝体形成装置220の弁231が開き(又は弁231以外の弁が閉まる)、槽の中の送り装置における火薬が爆発して、槽に入っていた流動体が、開いた弁231に対応する空洞251に到達して、流動体の化学反応又は物理的反応によって固体の緩衝体を形成する。
【0052】
このように集中化された緩衝体形成装置を用いることによって、使用する流動体の量を減らすことができ、また、設置を単純化したりすることができる。
【0053】
また、集中化された緩衝体形成装置を複数、典型的には2つ、配置することもできる。この場合、各緩衝体形成装置から各空洞に管が接続され、2つの緩衝体形成装置の一方にA剤を入れ、他方にB剤を入れて、衝突予想時にそれぞれA剤とB剤を空洞に送ることによって、A剤とB剤の反応によって、その空洞に緩衝体を形成する。
【0054】
(5)座席を水平方向に動かす
図6は、衝突予想時に座席を動かす実施形態に係る車両を示している。
【0055】
この車両は、4人乗りの自動車であり、車内には、乗員1人に対応する1つの、合計4つのコンパートメント301~304がある。各コンパートメントには、座面321と背もたれ322があるシートがあり、このシートに乗車時に乗員が座る。
【0056】
図7A、Bは、衝突予想後に座席を水平方向(左)に動かした後の車両を示している。
【0057】
処理ユニット130が車両右方向からの車両右前側に座っている乗員への矢印Pの方向の衝突を予測すると、この乗員の右上に装備されているエアバッグ装置が作動してエアバッグ353を形成しつつ、この乗員のコンパートメント302自体を、衝突とは反対側、すなわち、左側(車両幅方向の中央側の矢印Qの方向)に爆発物やモーターによって移動させる。これによって、衝突される部分とコンパートメント302の間の空間が大きくなり、緩衝体(例、エアバッグ)がその空間に入り、衝突の被害を軽減することができる(
図7A)。また、コンパートメント302が緩衝体形成装置を備えることで、コンパートメント側から緩衝体(例、エアバッグ)352を出して、緩衝体を形成して、衝突の被害を軽減する。また、乗員保護装置311、312によってエアバッグを形成して、衝突の被害を軽減することができる。
【0058】
衝突の被害をさらに軽減させるために、車両右前側に座っている乗員への矢印Pの方向の衝突を予測すると、この乗員の右上に装備されているエアバッグ装置が作動してエアバッグ353を形成しつつ、隣のコンパートメント301を左側に100mm程度動かして、コンパートメント302を左側に待避させる(
図7B)。隣のコンパートメント301を動かすことで衝突が予想されているコンパートメント302を動かせる距離が大きくなる。コンパートメント301~304は、部分的に折りたたまれることなどによって可逆的に収縮可能であることが好ましく、これによって、隣のコンパートメント301を動かしたときにドアなどとぶつかって隣のコンパートメント301の左側の収縮部分388が収縮し、また、衝突が予想されるコンパートメント302が押すことによって隣のコンパートメント301の右側の収縮部分388も収縮する。また、衝突が予想されるコンパートメント302も収縮可能であることによって、コンパートメント302の左側の収縮部分388が隣のコンパートメント301とぶつかって収縮して、結果として衝突が予想されるコンパートメント302を動かせる距離を非常に大きくすることができる。
【0059】
また、衝突を予想したときに、車両左前側のドアを自動的に開けて、車両左前側のコンパートメント301を左側に動かしてその一部又は全部を左側の外に出し、コンパートメント302をさらに左側に待避させることも好ましい。
【0060】
(6)座席を上方に動かす
図8は、衝突予想時に上方に座席を動かす実施形態に係る車両を示している。
【0061】
この実施形態は、通常時は
図6A、Bのように構成しており、4人乗りの自動車の車内には、乗員1人に対応する1つの、合計4つのコンパートメント301~304がある。各コンパートメントには、仕切りの内側に、座面321と背もたれ322があるシートがあり、このシートに乗車時に乗員が座る。各コンパートメントには、さらに、緩衝体形成装置311、312がある。ルーフは、開くことができるタイプのルーフとなっている。例えば、下方からの力によって開き、また、開閉機構によって開いたり閉じたりする。開閉機構としては、ルーフの大部分を占めるポリカーボネート製のサンルーフ(パノラマルーフ)があり、コンパートメントが衝突することによって外れるように構成している。また、サンルーフのルーフ部が瞬時に開くことによってコンパートメントが通るようにする。
【0062】
各コンパートメント301~304の下には、発射装置331、方向誘導機構502がある。発射装置331には、爆発物がある。
【0063】
処理ユニット130が車両右方向からの車両右前側に座っている乗員への衝突を予測すると、このコンパートメントの下にある発射装置331が、爆発物の爆発によって、方向誘導機構502が誘導する方向に沿って、この乗員のコンパートメント302自体を、上方(矢印Rの方向)に射出することで、乗員を衝突の影響を受けないところに待避させる。コンパートメント302が発射されるときに、緩衝体形成装置311が周囲にエアバッグを形成して、衝突から守りつつ、コンパートメント302が落下したときの乗員の衝撃を和らげる。なお、
図8においては乗員がシートベルト333を着用している姿を描いていないが、動作時には乗員がシートベルト333を着用している。また、好ましくは、音声で促された後で乗員が発射の肯定確認ボタン(図示せず)を押すことによって、発射装置331が実際に発射するようにし、これによって、不意の発射を防ぐことができる。
【0064】
ひも520には弾性があり、方向誘導機構502とコンパートメント302に接続されている。方向誘導機構502は、ひも520によってコンパートメント302が遠くへ行くことを防ぎ、ひも520の弾性によってコンパートメント302に強い衝撃が加わることを防ぐ。ひも520は強く引っ張られた後に破断するようにすることによって、乗員の負荷をさらに軽減させることができる。
【0065】
処理ユニット130は、その落下位置を予測して、問題ないと判断する場合にのみ、発射を実行する。また、コンパートメント302が上方に射出されたときに、コンパートメント302を自由落下させるのではなく、方向誘導機構502が、コンパートメント302を支えるための支持メンバー530を形成することによって自由落下を避けることができる。支持メンバー530は、例えば、望遠鏡タイプの伸縮機構によって伸びたり格納したりすることができる棒状の物である。また、発射時に、ポリカーボネート製のサンルーフをたたいてサンルーフを外す実施形態において、外したサンルーフが、緩衝体や支持メンバーとして機能するようにすることが好ましい。
【0066】
(7)ルーフ上の緩衝体を動かす
図9は、衝突予想時にルーフ上の緩衝体を動かす実施形態に係る車両を示している。ルーフ上には、緩衝体駆動機構612が固定されており、その上に緩衝体610が配置されている。緩衝体610は、太陽光電池、格納式の延長屋根、ポップアップタイプの就寝床、ポップアップタイプの折りたたみ型テントを備えることによってユーザーに利便性を提供することができる。
【0067】
処理ユニット130が車両右方向からの車両右側に座っている乗員への衝突を予測すると、処理ユニット130は緩衝体駆動機構612によって緩衝体610を車両右側の方に動かして、車両右側のドアの外側に移動させる。これによって、乗員に対する衝突の影響を軽減させることができる。
【0068】
(8)緩衝体形成装置が拡大して緩衝体を形成する
図10は、
図9Aと比べて、拡大することができる複数の緩衝体形成装置631~633があり、衝突予想時には衝突方向に対応する緩衝体形成装置のみが動いて拡大する実施形態に係る車両を示している。
【0069】
処理ユニット130が車両右方向からの車両右側に座っている乗員への衝突を予測すると、処理ユニット130は緩衝体駆動機構622によって複数の緩衝体形成装置631~633のうちの緩衝体形成装置631のみを車両右側の方に動かし、かつ、緩衝体形成装置631を拡大させて、緩衝体610(
図9B)のような緩衝体を形成して、
図9Bのように車両右側のドアの外側に移動させる。これによって、乗員に対する衝突の影響を軽減させることができる。
【0070】
この緩衝体形成装置は、展開機構を使ったり、エアバッグを用いたりして、機械的に拡大することができる。また、発泡体などの固形物を形成するなどして化学的に大きくすることもできる。さらに、
図9と
図10の実施形態において、緩衝体駆動機構と緩衝体形成装置は、ルーフ上ではなく、車体の下部にあることができる。この場合、緩衝体駆動機構は、上側への方向転換機構を備え、この方向転換機構によって、緩衝体を外側に出す際に、うまく車体に立ち上がるようにする。また、
図9と
図10の実施形態において、緩衝体駆動機構と緩衝体形成装置は、ルーフ上ではなく、ドア122、124、車体のバンパー(前側、後ろ側のバンパーなど)にあることができる。
【0071】
すべての実施形態において、緩衝体や緩衝体形成装置として、電動機能がある自動車(電気自動車やハイブリッド自動車)にある電池や電池ケースアセンブリーを用いることで、自動車に搭載する物の重量を減らしつつ、強い緩衝体を得ることができる。
【0072】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱せずに代替的形態を考えることができる。また、明示的に組み合わせることができると記載していなくても、別の実施形態における特徴を組み合わせて、当業者が理解することができる効果を発揮させることができる。
【符号の説明】
【0073】
100 乗用自動車
104 ヘッドライト
108、114 ナンバープレート
106 フロントバンパー
104 サイドミラー
112 テールライト
116 車輪
122、124 乗り込み用ドア
118 ルーフ
130 処理ユニット
132、154、156、158、162、164、165 物体センサー
134、136、138、142、144、146、148、152、171~174、202、204、206、212、214、216 緩衝体形成装置
170 付加型装置
201、215、203、211、205、213、252、255、251、254、253、256 空洞
231~236 弁
241~246 管
301~304 コンパートメント
321 座面
322 背もたれ
311、312 乗員保護装置
333 シートベルト
331 発射装置
388 コンパートメントの収縮部分
502 方向誘導機構
520 ひも
530 支持メンバー
610 緩衝体
612、622 緩衝体駆動機構