(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152082
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】撹拌翼及び洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 17/10 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
D06F17/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066017
(22)【出願日】2023-04-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】三角 勝
(72)【発明者】
【氏名】公文 ゆい
【テーマコード(参考)】
3B168
【Fターム(参考)】
3B168AA15
3B168AE01
3B168AE02
3B168AE07
3B168BA09
3B168BA52
3B168CE04
3B168CE05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】撹拌槽内で洗濯される洗濯物の洗浄効果を向上できる撹拌翼及び洗濯機の提供を提供する。
【解決手段】回転軸Oを中心とする回転によって流体を撹拌可能な撹拌翼70であって、前記回転軸Oの径方向内側から径方向外側に延びるように、前記撹拌翼70の一面から突出する羽根部100と、前記一面において、前記羽根部100と前記撹拌翼70の周方向に隣り合う第一凹部110とを備え、前記羽根部100は、前記第一凹部110の底面から前記羽根部100の稜線側に延びる第一側面101を含み、前記第一側面101の傾斜角度は、前記径方向内側よりも前記径方向外側のほうが大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心とする回転によって流体を撹拌可能な撹拌翼であって、
前記回転軸の径方向内側から径方向外側に延びるように、前記撹拌翼の一面から突出する羽根部と、
前記一面において、前記羽根部と前記撹拌翼の周方向に隣り合う第一凹部とを備え、
前記羽根部は、前記第一凹部の底面から前記羽根部の稜線側に延びる第一側面を含み、
前記第一側面の傾斜角度は、前記径方向内側よりも前記径方向外側のほうが大きい、
撹拌翼。
【請求項2】
第一羽根部と第二羽根部とを含む複数の前記羽根部を備え、
前記周方向は、互いに反対方向である第一方向と第二方向とを含み、
前記第一羽根部の前記第一側面は、前記第一方向を向き、
前記第二羽根部の前記第一側面は、前記第二方向を向く、
請求項1に記載の撹拌翼。
【請求項3】
前記第一羽根部と前記第二羽根部とは、一つの前記第一凹部を挟んで前記周方向に隣り合い、
前記第一羽根部の前記第一側面と、前記第二羽根部の前記第一側面とは、前記一つの第一凹部から延びて、互いに前記周方向に対向する、
請求項2に記載の撹拌翼。
【請求項4】
前記稜線は、前記径方向内側から前記径方向外側に延びる第一稜線と、前記第一稜線の端部から更に前記径方向外側に延びる第二稜線とを含み、
前記第一羽根部の前記稜線では、前記第二稜線が前記第一稜線から前記第二方向側に曲がって延びる部分を含み、
前記第二羽根部の前記稜線では、前記第二稜線が前記第一稜線から前記第一方向側に曲がって延びる部分を含む、
請求項3に記載の撹拌翼。
【請求項5】
前記一面において、前記羽根部を挟んで前記第一凹部の反対側に設けられ、前記羽根部と前記周方向に隣り合う第二凹部を備え、
前記羽根部は、前記第一凹部の底面から前記稜線側に延びる前記第一側面と、前記第二凹部の底面から前記稜線側に延びる第二側面とを含み、
前記第一側面は、第一緩斜面と、前記第一緩斜面よりも前記径方向外側に設けられ、且つ前記傾斜角度が前記第一緩斜面よりも大きい第一急斜面とを含み、
前記第二側面は、前記第一急斜面と前記周方向に並ぶ位置に設けられた第二緩斜面を含み、
前記第二緩斜面の傾斜角度は、前記第一急斜面の傾斜角度よりも小さい、
請求項1から4の何れかに記載の撹拌翼。
【請求項6】
前記第二緩斜面から突出し、且つ前記周方向と交差する方向に延びる凸部を備える、
請求項5に記載の撹拌翼。
【請求項7】
前記第二側面は、前記第二緩斜面よりも前記径方向内側に設けられた第二急斜面を含み、
前記第二急斜面の傾斜角度は、前記第二緩斜面の傾斜角度よりも大きい、
請求項5に記載の撹拌翼。
【請求項8】
第一羽根部と第三羽根部とを含む複数の前記羽根部を備え、
前記第一羽根部と前記第三羽根部とは、一つの前記第二凹部を挟んで前記周方向に隣り合い、
前記第一羽根部の前記第二緩斜面と、前記第三羽根部の前記第二緩斜面とは、前記一つの第二凹部から延びて、互いに前記周方向に対向する、
請求項5に記載の撹拌翼。
【請求項9】
第一羽根部と第二羽根部とを含む複数の前記羽根部を備え、
前記第一羽根部と前記第二羽根部とは、一つの前記第一凹部を挟んで前記周方向に隣り合い、
前記第一凹部の底面は、前記底面の最下部から前記径方向内側に向かって、連続的に上側に変位するように湾曲又は傾斜する、
請求項1に記載の撹拌翼。
【請求項10】
請求項1から4の何れかに記載の撹拌翼を備えた洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撹拌翼及び洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撹拌翼を備えた洗濯機が知られている。例えば、特許文献1に開示の洗濯機では、撹拌翼が撹拌槽の底部に回転自在に配置されている。洗濯時において、洗濯物を収容した撹拌槽に水を貯留し、撹拌翼の回転によって流体である水を撹拌して洗濯物を洗濯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撹拌槽内で洗濯される洗濯物の洗浄効果を向上できる撹拌翼が望まれている。
【0005】
本開示の一態様は、撹拌槽内で洗濯される洗濯物の洗浄効果を向上できる撹拌翼及び洗濯機の提供を目的とする。なお、本開示の一態様は、イルカの尾びれに着目した技術的思想を含んでいるため、バイオミメティクスに関係するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、回転軸を中心とする回転によって流体を撹拌可能な撹拌翼であって、前記回転軸の径方向内側から径方向外側に延びるように、前記撹拌翼の一面から突出する羽根部と、前記一面において、前記羽根部と前記撹拌翼の周方向に隣り合う第一凹部とを備え、前記羽根部は、前記第一凹部の底面から前記羽根部の稜線側に延びる第一側面を含み、前記第一側面の傾斜角度は、前記径方向内側よりも前記径方向外側のほうが大きい。
【0007】
本開示の一態様は、前記撹拌翼を備えた洗濯機である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】平面視で撹拌翼の略半分を拡大した図である。
【
図7】
図4のIII-III線矢視方向断面図である。
【
図12A】洗濯運転中における洗濯機の模式的な縦断面図である。
【
図12B】洗濯運転中における洗濯機の模式的な縦断面図である。
【
図12C】洗濯運転中における洗濯機の模式的な縦断面図である。
【
図12D】洗濯運転中における洗濯機の模式的な縦断面図である。
【
図12E】洗濯運転中における洗濯機の模式的な縦断面図である。
【
図12F】洗濯運転中における洗濯機の模式的な縦断面図である。
【
図13A】洗濯物が配置された撹拌翼の上面の一部を拡大した模式的な側面図である。
【
図13B】洗濯物が配置された撹拌翼の上面の一部を拡大した模式的な側面図である。
【
図13C】洗濯物が配置された撹拌翼の上面の一部を拡大した模式的な側面図である。
【
図14】洗濯物が配置された撹拌翼の上面の模式的な平面図である。
【
図15A】洗濯物が配置された第一凹部の模式的な縦断面図である。
【
図15B】洗濯物が配置された第二凹部の模式的な縦断面図である。
【
図16】洗濯物が配置された撹拌翼の上面の一部を拡大した模式的な側面図である。
【
図17】撹拌翼の下面の一部を拡大した模式的な底面図である。
【
図18】撹拌翼の下面の一部を拡大した模式的な底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
[洗濯機]
図1は、洗濯機1の概略構造を示す正面断面図である。以下の説明では、
図1の上側、下側、左側、右側、紙面手前側、及び紙面奥側を、洗濯機1の上側、下側、左側、右側、前側、及び後側とする。
【0011】
本実施形態の洗濯機1は、上下方向に長い直方体状の外箱10を備えた縦型洗濯機である。外箱10の上面開口には、操作パネル等を有する上面板11が固定されている。外箱10の底面開口には、複数の脚部13を有するベース12が固定される。上面板11には、撹拌槽30に対して洗濯物を出し入れするための投入口14と、投入口14を開閉するための上蓋15とが設けられている。
【0012】
外箱10の内部には、撹拌槽30と、撹拌槽30を収納する水槽20とが収容されている。撹拌槽30は、洗剤を溶かした水や濯ぎ用の水を溜める。水槽20及び撹拌槽30は、何れも上面が開口した有底筒状であり、互いの軸線が略一致するように上下に延びる。撹拌槽30は底壁30Aと周壁30Bを有する。周壁30Bは、底壁30Aから上方に向かってテーパ状に広がる円筒状である。周壁30Bの下端は、底壁30Aの周縁と連続する湾曲面である。周壁30Bの上端縁に、環状に配置した複数の脱水孔31が設けられている。
【0013】
撹拌槽30の上部開口の周縁には、脱水時の振動を抑制するための環状のバランサ32が装着される。撹拌槽30の内部底面には、回転軸Oを中心とする回転によって流体を撹拌可能な撹拌翼70が配置される。本例では、回転軸Oは、水槽20及び撹拌槽30の軸線と略一致するように上下方向に延びる。撹拌翼70は、回転軸Oを中心とする円盤状である。撹拌翼70の周縁部と周壁30Bとの間には、隙間34が形成されている。
【0014】
水槽20の下側には、駆動ユニット40が設けられている。駆動ユニット40は、モータ41、ベルト伝導機構42、クラッチ・ブレーキ機構43、脱水軸44、撹拌翼軸45等を含む。脱水軸44及び撹拌翼軸45は、脱水軸44が外側に配置され、且つ撹拌翼軸45が内側に配置された二重軸構造であり、駆動ユニット40から上側に突出する。脱水軸44は、上方に向かって水槽20の底面を貫通して、撹拌槽30を支持する。撹拌翼軸45は、上方に向かって水槽20を貫通し、更に撹拌槽30の底壁30Aを貫通して、撹拌翼70を支持する。
【0015】
上面板11内には、洗濯機1の制御部が設けられている。制御部は、ユーザが操作パネルを用いて入力した指示に応じて、駆動ユニット40、給水弁、及び排水弁等を制御して、洗濯、濯ぎ、脱水などの運転動作を実行する。例えば撹拌翼70は、55~300rpmで回転して洗濯又は濯ぎを行い、撹拌槽30と共に0~1200rpmで回転して脱水を行う。
【0016】
[撹拌翼の上面構造]
羽根部100の詳細を説明する。
図2は、撹拌翼70の斜め上方から視た斜視図である。
図3は、撹拌翼70の平面図である。
図4は、平面視で撹拌翼70の略半分を拡大した図である。
図5は、
図4のI-I線矢視方向断面図である。
図6は、
図4のII-II線矢視方向断面図である。
図7は、
図4のIII-III線矢視方向断面図である。
図8は、
図4のIV-IV線矢視方向断面図である。
【0017】
図2~
図4に示すように、撹拌翼70は、回転軸Oの径方向内側から径方向外側に延びるように、撹拌翼70の一面から突出する羽根部100を備える。本例では、撹拌翼70の上面71から上側に突出する複数の羽根部100が、周方向Cに並んで設けられる。周方向Cは、回転軸Oを中心とした撹拌翼70の回転方向と平行である。回転軸Oは、平面視で撹拌翼70の中央部を通る。撹拌翼70の径方向外側の端部近傍を、撹拌翼70の外周縁という。四つの羽根部100が、略90度間隔で周方向Cに並び、且つ撹拌翼70の中央部近傍から外周縁まで回転軸Oの径方向に延びる。
【0018】
撹拌翼70は、撹拌翼70の一面において、羽根部100と撹拌翼70の周方向Cに隣り合う第一凹部110を備える。本例では、上面71の中央部を挟んだ両側に、二つの第一凹部110が設けられる。各第一凹部110は、平面視で、周方向Cに隣り合う二つの羽根部100に挟まれる。即ち各第一凹部110は、二つの羽根部100と周方向Cに隣り合う。
【0019】
羽根部100は、第一凹部110の底面111から羽根部100の稜線R側に延びる第一側面101を含む。稜線Rは、羽根部100の延伸方向の両端部を結び、且つ羽根部100の表面で最も高い部分を辿って延びる仮想線である。本例では、底面111は径方向に沿って連続した滑面であるため、水抜き穴を除いて凹凸や段差がなく滑らかに延びる。各羽根部100の上端面103は、径方向に延びる稜線Rを含み、且つ稜線Rから周方向Cの両側に延びる幅を有する。各羽根部100の第一側面101は、底面111から稜線R側に延びて、上端面103と接続する。
【0020】
図4~
図6に示すように、傾斜角度θ11は、径方向内側よりも径方向外側のほうが大きい。傾斜角度θ11は、回転軸Oと直交する仮想平面V1に対して、第一側面101のなす角である。仮想平面V1は、撹拌翼70の回転方向と平行に延びる平面と同義である。本例では、仮想平面V1は、上下方向と直交する水平面である。傾斜角度θ11は、第一側面101上の任意の一点を通るように、羽根部100をその延伸方向と直交に切断した断面において、水平な仮想平面V1と第一側面101とがなす角の大きさである。
【0021】
図5の例は、第一側面101のうちで径方向内側にある一点を通るように、羽根部100を径方向と直交に切断した断面を示す。
図6は、第一側面101のうちで径方向外側にある一点を通るように、羽根部100を径方向と直交に切断した断面を示す。つまり、
図5及び
図6は羽根部100を径方向外側から視た縦断面を示し、且つ
図6は
図5よりも径方向外側の縦断面を示す。
【0022】
図5及び
図6に示すように、第一側面101は、羽根部100の上端面103と接続する上端部と、第一凹部110の底面111(
図4参照)と接続する下端部と有する。傾斜角度θ11は、第一側面101の上端部と下端部とを通る仮想直線L11と、仮想平面V1とのなす角と等しい。仮想直線L11は、第一側面101の任意に一点に対する接線でもよく、例えば第一側面101の下端に対する接線でもよい。
【0023】
詳細には、仮想平面V1を羽根部100よりも下側に設定した場合、径方向外側から視て仮想直線L11と仮想平面V1とによって区画される複数領域のうち、その羽根部100の第二側面102を含む領域の角の大きさが傾斜角度θ11である。換言すると傾斜角度θ11は、水平な仮想平面V1に対する第一側面101の勾配の大きさを示し、この角度が大きいほど第一側面101が急勾配となる。傾斜角度θ11が径方向内側から径方向外側に向かって連続的に大きくなるように、第一側面101は傾斜している。従って、撹拌翼70の中央部に近い部分であるほど、第一側面101が勾配の小さい緩斜面になると共に、撹拌翼70の外周縁に近い部分であるほど、第一側面101が勾配の大きい急斜面になる。
【0024】
図2~
図4に示すように、撹拌翼70は、第一羽根部100Aと第二羽根部100Bとを含む複数の羽根部100を備える。本例では、四つの羽根部100は、二つの第一羽根部100Aと二つの第二羽根部100Bとを含む。二つの第一羽根部100Aは、上面71の中央部を挟んだ両側に設けられ、互いに周方向Cに180度回転させたときに略一致する形状を有する。二つの第二羽根部100Bは、上面71の中央部を挟んだ両側に設けられ、互いに周方向Cに180度回転させたときに略一致する形状を有する。互いに隣り合う第一羽根部100Aと第二羽根部100Bとは、互いの中間位置を通る仮想的な垂直面を挟んで対称である。
【0025】
周方向Cは、互いに反対方向である第一方向C1と第二方向C2とを含む。第一羽根部100Aの第一側面101は、第一方向C1を向く。第二羽根部100Bの第一側面101は、第二方向C2を向く。本例では、第一方向C1は撹拌翼70の正転方向であり、平面視で時計回り方向である。第二方向C2は撹拌翼70の反転方向であり、平面視で反時計回り方向である。従って、第一羽根部100Aの第一側面101と第二羽根部100Bの第一側面101とは、互いに反対方向を向く。
【0026】
第一羽根部100Aと第二羽根部100Bとは、一つの第一凹部110を挟んで周方向Cに隣り合う。第一羽根部100Aの第一側面101と第二羽根部100Bの第一側面101とは、何れも一つの第一凹部110から延びて、互いに周方向Cに対向する。本例では、二つの第一凹部110の各々に対して、第一羽根部100Aが第二方向C2に隣り合い、且つ第二羽根部100Bが第一方向C1に隣り合う。第一羽根部100Aの第一側面101と、第二羽根部100Bの第一側面101とは、何れも同じ第一凹部110の底面111から延びる。これらの第一側面101は、第一凹部110を挟んで周方向Cに対向する。
【0027】
図4に示すように、稜線Rは、径方向内側から径方向外側に延びる第一稜線R1と、第一稜線R1の端部から更に径方向外側に延びる第二稜線R2とを含む。本例では、稜線Rは、稜線Rを略三等分する二つの仮想点T1、T2を含む。仮想点T2は、仮想点T1よりも径方向外側にある。第一稜線R1は、撹拌翼70の中央部近傍から仮想点T1まで、径方向外側に向かって略直線状に延びる。第二稜線R2は、仮想点T1から仮想点T2を通って撹拌翼70の外周縁まで、径方向外側に向かって延びる。
【0028】
第一羽根部100Aの稜線Rでは、第二稜線R2が第一稜線R1から第二方向C2側に曲がって延びる部分を含む。本例では、各第一羽根部100Aでは、第二稜線R2が仮想点T1から第二方向C2側に湾曲しつつ仮想点T2に向かって延び、更に仮想点T2から撹拌翼70の外周縁まで略直線状に延びる。
【0029】
第二羽根部100Bの稜線Rでは、第二稜線R2が第一稜線R1から第一方向C1側に曲がって延びる部分を含む。本例では、各第二羽根部100Bでは、第二稜線R2が仮想点T1から第一方向C1側に湾曲しつつ仮想点T2に向かって延び、更に仮想点T2から撹拌翼70の外周縁まで略直線状に延びる。このように、第一羽根部100Aと第二羽根部100Bとでは、各々の第二稜線R2が互いに反対方向に湾曲する。
【0030】
撹拌翼70の一面において、羽根部100を挟んで第一凹部110の反対側に設けられ、羽根部100と周方向Cに隣り合う第二凹部120を備える。本例では、上面71の中央部を挟んだ両側に、二つの第二凹部120が設けられる。第一凹部110と第二凹部120とは、周方向Cに沿って交互に並ぶ。各第二凹部120は、平面視で、周方向Cに隣り合う二つの羽根部100に挟まれる。即ち各第二凹部120は、二つの羽根部100と周方向Cに隣り合う。
【0031】
図2~
図4に示すように、羽根部100は、第一凹部110の底面111から稜線R側に延びる第一側面101と、第二凹部120の底面121から稜線R側に延びる第二側面102とを含む。本例では、底面121は径方向に沿って連続した滑面であるため、水抜き穴を除いて凹凸や段差がなく滑らかに延びる。各羽根部100の第二側面102は、稜線Rを挟んで第一側面101の反対側に設けられ、底面121から稜線R側に延びて上端面103と接続する。第一羽根部100Aの第二側面102は第二方向C2を向き、第二羽根部100Bの第二側面102は第一方向C1を向く。従って、第一羽根部100Aの第二側面102と第二羽根部100Bの第二側面102とは、互いに反対方向を向く。
【0032】
第一側面101は、第一緩斜面101Aと、第一緩斜面101Aよりも径方向外側に設けられ、且つ傾斜角度が第一緩斜面101Aよりも大きい第一急斜面101Bとを含む。本例では、先述のように第一側面101の傾斜角度θ11は、径方向内側よりも径方向外側のほうが大きい。従って、第一側面101を径方向内側と径方向外側とに分割した場合、径方向内側の傾斜面が第一緩斜面101A(
図5参照)であり、径方向外側の傾斜面が第一急斜面101B(
図6参照)である。
【0033】
図4~
図6に示すように、傾斜角度θ12は、径方向内側よりも径方向外側のほうが小さい。傾斜角度θ12は、回転軸Oと直交する仮想平面V1に対して、第二側面102のなす角である。本例では、傾斜角度θ12は、第二側面102上の任意の一点を通るように、羽根部100をその延伸方向と直交に切断した断面において、水平な仮想平面V1と第二側面102とがなす角の大きさである。
【0034】
図5及び
図6に示すように、第二側面102は、羽根部100の上端面103と接続する上端部と、第二凹部120の底面121(
図4参照)と接続する下端部と有する。傾斜角度θ12は、第二側面102の上端部と下端部とを通る仮想直線L12と、仮想平面V1とのなす角と等しい。仮想直線L12は、第二側面102の任意に一点に対する接線でもよく、例えば第二側面102の下端に対する接線でもよい。
【0035】
詳細には、仮想平面V1を羽根部100よりも下側に設定した場合、径方向外側から視て仮想直線L12と仮想平面V1とによって区画される複数領域のうち、その羽根部100の第一側面101を含む領域の角の大きさが傾斜角度θ12である。換言すると傾斜角度θ12は、水平な仮想平面V1に対する第二側面102の勾配の大きさを示し、この角度が大きいほど第二側面102が急勾配となる。傾斜角度θ12が径方向内側から径方向外側に向かって連続的に小さくなるように、第二側面102は傾斜している。撹拌翼70の中央部に近い部分であるほど、第二側面102が勾配の大きい急斜面になると共に、撹拌翼70の外周縁に近い部分であるほど、第二側面102が勾配の小さい緩斜面になる。
【0036】
第二側面102は、第二緩斜面102Aよりも径方向内側に設けられた第二急斜面102Bを含む。例えば、第二側面102を径方向内側と径方向外側とに分割した場合、径方向内側の傾斜面が第二急斜面102B(
図5参照)であり、径方向外側の傾斜面が第二緩斜面102A(
図6参照)である。第二急斜面102Bの傾斜角度θ12は、第二緩斜面102Aの傾斜角度θ12よりも大きい。
【0037】
なお、各羽根部100において第一側面101の傾斜角度θ11と第二側面102の傾斜角度θ12とが等しくなる径方向位置は、第一側面101における第一緩斜面101Aと第一急斜面101Bとの境界であり、且つ第二側面102における第二緩斜面102Aと第二急斜面102Bと境界である。これらの境界は、各羽根部100において第一稜線R1と第二稜線R2とが接続する仮想点T1(
図4参照)と同じ径方向位置に配置されてもよい。
【0038】
図4及び
図6に示すように、第二側面102は、第一急斜面101Bと周方向Cに並ぶ位置に設けられた第二緩斜面102Aを含む。本例では、第一側面101の第一急斜面101Bと、第二側面102の第二緩斜面102Aとは、何れも撹拌翼70の径方向外側にある。第一急斜面101Bと第二緩斜面102Aとは、稜線Rを挟んだ両側にあるため、互いに周方向Cに並ぶ。各羽根部100の径方向外側では、第二緩斜面102Aの傾斜角度θ12が、第一急斜面101Bの傾斜角度θ11よりも小さい。
【0039】
図4及び
図5に示すように、第二側面102は、第一緩斜面101Aと周方向Cに並ぶ位置に設けられた第二急斜面102Bを含む。本例では、第一側面101の第一緩斜面101Aと、第二側面102の第二急斜面102Bとが、何れも撹拌翼70の径方向内側にある。第一緩斜面101Aと第二急斜面102Bとは、稜線Rを挟んだ両側にあるため、互いに周方向Cに並ぶ。各羽根部100の径方向内側では、第二急斜面102Bの傾斜角度θ12は、第一緩斜面101Aの傾斜角度θ11よりも大きい。
【0040】
図2~
図4に示すように、複数の羽根部100は、第一羽根部100Aと第三羽根部とを含む。第一羽根部100Aと第三羽根部とは、一つの第二凹部120を挟んで周方向Cに隣り合う。本例では、二つの第二凹部120の各々に対して、第一羽根部100Aが第一方向C1に隣り合い、且つ第二羽根部100Bが第二方向C2に隣り合う。第一羽根部100Aの第二側面102と、第二羽根部100Bの第二側面102とは、何れも同じ第二凹部120の底面121から延びる。これらの第二側面102は、第二凹部120を挟んで周方向Cに対向する。従って、第二凹部120の第二方向C2側にある第二羽根部100Bは、上記の第三羽根部を例示する。なお、第三羽根部は、第二緩斜面102Aを有していれば、第二羽根部100Bと異なる形状の羽根部100でもよい。
【0041】
第一羽根部100Aの第二緩斜面102Aと、第三羽根部の第二緩斜面102Aとは、一つの第二凹部120から延びて、互いに周方向Cに対向する。本例では、第一羽根部100Aの第二緩斜面102Aと、第二羽根部100Bの第二緩斜面102Aとは、何れも撹拌翼70の径方向外側にある。各第二凹部120では、第一羽根部100Aの第二緩斜面102Aと、第二羽根部100Bの第二緩斜面102Aとが、周方向Cに対向する。
【0042】
撹拌翼70は、第二緩斜面102Aから突出し、且つ周方向Cと交差する方向に延びる凸部230を備える。本例では、四つの羽根部100の第二緩斜面102Aの各々に、複数の凸部230が設けられる。換言すると、各第二凹部120の両側に設けられる二つの第二緩斜面102Aに、複数の凸部230が設けられる。各第二緩斜面102Aでは、複数(本例では三つ)の凸部230が、互いに間隔を空けて周方向Cに並ぶ。各凸部230は、周方向Cと交差するように、径方向内側から径方向外側に向かって延びる。
【0043】
詳細には、各第一羽根部100Aの第二緩斜面102Aでは、各凸部230が平面視で第一方向C1に向かって若干膨らむ円弧状である。各第二羽根部100Bの第二緩斜面102Aでは、各凸部230が平面視で第二方向C2に向かって若干膨らむ円弧状である。各第二凹部120の両側にある二つの第二緩斜面102Aでは、複数の凸部230が平面視で底面121を挟んで対称に設けられる。
【0044】
第二凹部120の詳細を説明する。
図2~
図4に示すように、撹拌翼70は、撹拌翼70の一面において、撹拌翼70の周方向Cに隣り合う二つの羽根部100の間に設けられ、羽根部100から窪んだ第一領域を備える。本例では、撹拌翼70の上面71に設けられた二つの第二凹部120の各々が、第一領域を例示する。二つの第二凹部120の形状は、回転軸Oを中心として互いに180度回転させたときに略一致する。以下では一つの第二凹部120に関する構造を説明し、残りの第二凹部120に関する構造の説明を省略する。
【0045】
撹拌翼70は、第一領域の底面から突出し、且つ径方向と交差する方向に延びる第一凸部210を備える。本例では、平面視で第一凸部210は、径方向外側に向かって膨らみ、且つ径方向内側に向かって開口する円弧形状を有する。詳細には、第一領域である第二凹部120では、底面121から上側に突出する複数(本例では四つ)の第一凸部210が設けられる。複数の第一凸部210は、互いに間隔を空けて径方向に並ぶ。複数の第一凸部210は、平面視で第一凸部210の頂点と回転軸Oとを通る仮想垂直面を中心として対称に設けられる。以下では、一つの第一凸部210の構造を説明するが、残りの第一凸部210の構造も同様である。
【0046】
図7に示すように、第一凸部210は、径方向内側を向く第一受面211と、径方向外側を向き、第一受面211よりも傾斜角度が小さい第二受面212とを有する。本例では、第一凸部210の延伸方向と直交する断面は、底面121から端部213まで上側に突出する三角形状である。第一受面211は、平面視で第一凸部210が描く円弧状の内側に向かって、端部213から斜め下方に延びる。第二受面212は、平面視で第一凸部210が描く円弧状の外側に向かって、端部213から斜め下方に延びる。第一凸部210が描く円弧状は、平面視で径方向外側に向かって膨らみ、且つ径方向内側に開口する略半楕円である。従って、第一受面211は全体として径方向内側を向き、第二受面212は全体として径方向外側を向く。
【0047】
第一領域の底面に対して、第一受面211の傾斜角度θ21は、第二受面212の傾斜角度θ22よりも大きい。本例では、第一領域である第二凹部120の底面121と、第一凸部210との境界を通る平面を、仮想平面V21とする。傾斜角度θ21は、仮想平面V21と第一受面211とがなす角の大きさと等しい。傾斜角度θ22は、仮想平面V21と第二受面212とがなす角の大きさと等しい。
【0048】
図7の例では、傾斜角度θ21は60度程度であり、傾斜角度θ22は30度程度であるため、傾斜角度θ21が傾斜角度θ22よりも大きい。そのため第一受面211は、底面121に対する勾配が相対的に大きい急斜面である。第二受面212は、底面121に対する勾配が相対的に小さい緩斜面である。なお、第一凸部210の端部213のなす角は、第一受面211と第二受面212のなす内角と等しく、例えば90度である。
【0049】
先述のように、第二凹部120の両側に二つの羽根部100の第二側面102が設けられ、これらの第二側面102に複数の凸部230が設けられる。これらの凸部230の断面形状は、第一凸部210と同様に、第二側面102から上側に突出する三角形状であり、各々の端部から第二側面102に延びる第一受面231及び第二受面232を有する。各凸部230では、第一受面231は隣接する第二凹部120側を向き、且つ第二受面232は隣接する羽根部100側を向く。従って第一受面231と第二受面232とは、互いに異なる回転方向を向く。
【0050】
各凸部230では、第二側面102に対して、第一受面231の傾斜角度は、第二受面232の傾斜角度よりも大きい。
図7の例では、第一受面231の傾斜角度は60度程度であり、第二受面232の傾斜角度は30度程度である。そのため第一受面231は、第二側面102に対する勾配が相対的に大きい急斜面である。第二受面232は、第二側面102に対する勾配が相対的に小さい緩斜面である。
【0051】
図2~
図4に示すように、第一領域と隣り合う二つの羽根部100の各々は、第一領域の底面から羽根部100の稜線R側に延びる側面を含む。回転軸Oと直交する仮想平面に対する側面の傾斜角度は、径方向内側よりも径方向外側のほうが小さい。本例では、第一領域である第二凹部120の両側では、第一羽根部100Aの第二側面102と、第二羽根部100Bの第二側面102とが、底面121から夫々対応する稜線R側に延びる。これらの第二側面102の傾斜角度θ12は、先述のように径方向内側から径方向外側に向かうほど小さい(
図5及び
図6参照)。
【0052】
図4及び
図7に示すように、第一領域である第二凹部120の底面121は、径方向内側に向かって上側に変位する湾曲又は傾斜を有する。本例では、底面121の最下部121Aは、撹拌翼70の外周縁に沿って、平面視で円弧状に延びる。底面121は、最下部121Aから径方向内側に向かって徐々に高くなるように、連続的に上側に変位する滑らかな湾曲面である。
【0053】
先述のように第二凹部120では、第一羽根部100Aの第二側面102と第二羽根部100Bの第二側面102とが周方向Cに対向する。第二側面102のうちで径方向外側にある第二緩斜面102Aは、水平面に対する傾斜角度θ12が相対的に小さい(
図6参照)。そのため、第二凹部120の両側にある二つの第二緩斜面102Aは、周方向Cの長さが相対的に大きい。第二凹部120の底面121のうち、二つの第二緩斜面102Aに挟まれる径方向外側の領域は、周方向Cの幅が相対的に狭くなる。
【0054】
第二凹部120と隣り合う第一羽根部100Aでは、径方向外側の第二稜線R2が第二方向C2側に曲がるように延びる。第二凹部120と隣り合う第二羽根部100Bの稜線Rでは、径方向外側の第二稜線R2が第一方向C1側に曲がるように延びる。つまり、第二凹部120の両側にある二つの羽根部100では、互いの第二稜線R2が近づくように第二凹部120側に曲がる。これにより、第二凹部120の径方向外側の領域では、その両側にある二つの羽根部100間の距離が小さくなる。底面121のうちで径方向外側の領域では、各羽根部100の第二稜線R2が径方向と一致するように延びる場合と比べて、周方向Cの幅が更に狭くなる。
【0055】
なお、第二側面102のうちで径方向内側にある第二急斜面102Bは、水平面に対する傾斜角度θ12が相対的に大きい(
図5参照)。そのため、第二凹部120の両側にある二つの第二急斜面102Bは、周方向Cの長さが相対的に小さい。第二凹部120の径方向内側の領域には、二つの第二急斜面102Bに挟まれた隙間が形成される。第二凹部120の底面121は、最下部121Aから径方向内側に向かって延び、更にこの隙間内で撹拌翼70の中央部近傍まで延びる。
【0056】
第一凹部110の詳細を説明する。
図2~
図4に示すように、撹拌翼70は、撹拌翼70の一面の第一領域とは異なる領域において、撹拌翼70の周方向Cに隣り合う二つの羽根部100の間に設けられ、羽根部100から窪んだ第二領域を備える。本例では、撹拌翼70の上面71に設けられた二つの第一凹部110の各々が、第二領域を例示する。二つの第一凹部110の形状は、回転軸Oを中心として互いに180度回転させたときに略一致する。以下では一つの第一凹部110に関する構造を説明し、残りの第一凹部110に関する構造の説明を省略する。
【0057】
撹拌翼70は、第二領域の底面から突出した第二凸部220を備える。本例では、第二領域である第一凹部110では、底面111から上側に突出する複数(本例では三つ)の第二凸部220が設けられる。これらの第二凸部220の形状は、先述の第一凸部210の形状と異なる。以下では、一つ第二凸部220の一つの構造を説明するが、残りの第二凸部220の構造も同様である。
【0058】
図8に示すように、第二凸部220の端部221は、第一凸部210の端部213(
図7参照)よりも鈍角である。本例では、第二凸部220は、底面111から上側に若干膨らむ球面状である。第二凸部220の端部221のなす角は、球面である第二凸部220の頂点に対する接平面のなす角と同じであり、例えば180度である。従って、端部221のなす角は、先述の端部213がなす角(例えば90度)よりも大きい。
【0059】
第二凸部220は、第二領域の底面に対する傾斜角度が30度未満の球面状である。本例では、第二領域である第一凹部110の底面111と、第二凸部220との境界を通る平面を、仮想平面V22とする。傾斜角度θ23は、仮想平面V22に対する球面の接触角と同じであり、例えば25度である。
【0060】
図2~
図4に示すように、撹拌翼70は、径方向と平行に並ぶ複数の第二凸部220を備える。本例では、三つの第二凸部220は、底面111の径方向内側にある一つの第二凸部220Aと、底面111の径方向外側にある二つの第二凸部220B、220Cとを含む。第二凸部220Cは、第二凸部220Bに対して第一方向C1側にある。第二凸部220Aと第二凸部220Bとは、第一羽根部100Aに対して第一方向C1側に隣接し、且つ第一羽根部100Aの延伸方向に沿って並ぶ。第一羽根部100Aは径方向に延びるため、これらの第二凸部220A、220Bは径方向と平行に並ぶ。また、第二凸部220Aと第二凸部220Cとは、第二羽根部100Bに対して第二方向C2側に隣接し、且つ第二羽根部100Bの延伸方向に沿って並ぶ。第二羽根部100Bは径方向に延びるため、これらの第二凸部220A、220Cは径方向と平行に並ぶ。
【0061】
第二領域と隣り合う二つの羽根部100の各々は、第二領域の底面から羽根部100の稜線R側に延びる側面を含む。回転軸Oと直交する仮想平面に対する側面の傾斜角度は、径方向内側よりも径方向外側のほうが大きい。本例では、第二領域である第一凹部110の両側では、第一羽根部100Aの第一側面101と、第二羽根部100Bの第一側面101とが、底面111から夫々対応する稜線R側に延びる。これらの第一側面101の傾斜角度θ11は、先述のように径方向内側から径方向外側に向かうほど大きい(
図5及び
図6参照)。
【0062】
図4及び
図8に示すように、第二領域である第一凹部110の底面111は、径方向内側に向かって上側に変位する湾曲又は傾斜を有する。本例では、底面111の最下部111Aは、撹拌翼70の外周縁に沿って、平面視で円弧状に延びる。底面111は、最下部111Aから径方向内側に向かって徐々に高くなるように、連続的に上側に変位する滑らかな湾曲面である。
【0063】
先述のように第一凹部110では、第一羽根部100Aの第一側面101と第二羽根部100Bの第一側面101とが周方向Cに対向する。第一側面101のうちで径方向外側にある第一急斜面101Bは、水平面に対する傾斜角度θ11が相対的に大きい(
図6参照)。そのため、第一凹部110の両側にある二つの第一急斜面101Bは、周方向Cの長さが相対的に小さい。第一凹部110の底面111のうち、二つの第一急斜面101Bに挟まれる径方向外側の領域は、周方向Cの幅が相対的に広くなる。
【0064】
第一凹部110と隣り合う第一羽根部100Aでは、径方向外側の第二稜線R2が第二方向C2側に曲がるように延びる。第一凹部110と隣り合う第二羽根部100Bの稜線Rでは、径方向外側の第二稜線R2が第一方向C1側に曲がるように延びる。つまり、第一凹部110の両側にある二つの羽根部100では、互いの第二稜線R2が遠ざかるように、第一凹部110とは反対側に曲がる。これにより、第一凹部110の径方向外側の領域では、その両側にある二つの羽根部100間の距離が大きくなる。底面111のうちで径方向外側の領域では、各羽根部100の第二稜線R2が径方向と一致するように延びる場合と比べて、周方向Cの幅が更に広くなる。
【0065】
なお、第二側面102のうちで径方向内側にある第一緩斜面101Aは、水平面に対する傾斜角度θ11が小さい(
図5参照)。そのため、第一凹部110の両側にある二つの第一緩斜面101Aは、周方向Cの長さが相対的に大きい。第二凹部120の径方向内側の領域には、二つの第一緩斜面101Aが互いに接合する接合部が形成される。第一凹部110の底面111は、最下部111Aからこの接合部まで径方向内側に向かって延びる。
【0066】
[撹拌翼の下面構造]
羽根体300の詳細を説明する。
図9は、撹拌翼70の斜め下方から視た斜視図である。
図10は、撹拌翼70の底面図である。
図11は、
図10のV-V線矢視方向断面図である。
【0067】
図9及び
図10に示すように、撹拌翼70は、撹拌翼70の一面から軸方向に突出し、且つ回転軸Oの径方向内側から径方向外側に延びる羽根体300を備える。本例では、撹拌翼70の下面72から下方向に突出する複数の羽根体300が、周方向Cに並んで設けられる。四つの羽根体300が、略90度間隔で周方向Cに並び、且つ撹拌翼70の中央部近傍から外周縁まで回転軸Oの径方向に延びる。
【0068】
撹拌翼70の作製工程において、先述の四つの羽根部100は、上面71において上側に盛り上がるように成型される。四つの羽根部100の直下には、各羽根部100の形状に対応して下面72が上側に窪むように、四つの溝部310が成型される。四つの羽根体300は、これらの溝部310内に夫々設けられる(
図5及び
図6参照)。
【0069】
各溝部310は、対応する羽根部100の上端面103の直下に、この上端面103に対応して径方向に延びる底面330を有する。先述のように溝部310は上側に窪むため、底面330は溝部310内の天面に相当する。羽根体300は、溝部310の底面330から下側に延び、且つ溝部310内で径方向に延びる板状部材である。羽根体300の長手方向は径方向であり、且つ羽根体300の短手方向は上下方向である。
【0070】
撹拌翼70は、羽根体300と撹拌翼70の周方向Cに対向する第一対向面301を備える。第一対向面301は、撹拌翼70の一面上で径方向内側から径方向外側に延び、且つこの一面から軸方向に向かうほど羽根体300から離れるように、軸方向に対して傾斜する。本例では、各溝部310は、対応する羽根部100が有する第二側面102の直下に、この第二側面102に対応する形状の第一対向面301を有する。第一対向面301は、溝部310の底面330から下方に延び、羽根体300と間隔を空けて周方向Cに対向する。第一対向面301は、下方向に向かうほど羽根体300から離れるように、下面72から斜め下方に延びる。第一対向面301は、底面視で径方向外側に向かって広がる傾斜面である。
【0071】
詳細には、四つの溝部310は、二つの第一羽根部100Aに対応する二つの第一溝部310Aと、二つの第二羽根部100Bに対応する二つの第二溝部310Bとを含む。二つの第一溝部310Aは、下面72の中央部を挟んだ両側に設けられ、互いに周方向Cに180度回転させたときに略一致する形状である。同様に、二つの第二溝部310Bは、下面72の中央部を挟んだ両側に設けられ、互いに周方向Cに180度回転させたときに略一致する形状である。互いに隣り合う第一溝部310Aと第二溝部310Bとは、互いの中間位置を通る仮想的な垂直面を挟んで対称である。
【0072】
各第一溝部310Aでは、第一対向面301は底面330の第二方向C2側の縁部から、第二方向C2に向かうほど下側に変位するように延びる。第一溝部310Aの第一対向面301は、第一方向C1側を向いて、隣り合う羽根体300の第二方向C2側の側面と対向する。各第二溝部310Bでは、第一対向面301は底面330の第一方向C1側の縁部から、第一方向C1に向かうほど下側に変位するように延びる。第二溝部310Bの第一対向面301は、第二方向C2側を向いて、隣り合う羽根体300の第一方向C1側の側面と対向する。従って、第一溝部310Aの第一対向面301と第二溝部310Bの第一対向面301とは、互いに反対方向を向く。
【0073】
図5及び
図6に示すように、第一対向面301の傾斜角度θ31は、径方向内側よりも径方向外側のほうが小さい。傾斜角度θ31は、回転軸Oと直交する仮想平面V3に対して、第一対向面301のなす角である。仮想平面V3は、撹拌翼70の回転方向と平行に延びる平面と同義である。本例では、傾斜角度θ31は、第一対向面301上の任意の一点を通るように、溝部310をその延伸方向と直交に切断した断面において、水平な仮想平面V3と第一対向面301とがなす角の大きさである。
【0074】
第一対向面301は、溝部310の底面330(
図10参照)と接続する上端部と、溝部310の下端に位置する下端部と有する。傾斜角度θ31は、第一対向面301の上端部と下端部とを通る仮想直線L31と、仮想平面V3とのなす角と等しい。仮想直線L31は、第一対向面301の任意に一点に対する接線でもよく、例えば第一対向面301の下端に対する接線でもよい。
【0075】
詳細には、仮想平面V3を溝部310よりも下側に設定した場合、径方向外側から視て仮想直線L31と仮想平面V3とによって区画される複数領域のうち、その溝部310の第二対向面302を含む領域の角の大きさが傾斜角度θ31である。換言すると、傾斜角度θ31は、水平な仮想平面V3に対する第一対向面301の勾配の大きさを示し、この角度が大きいほど第一対向面301が急勾配となる。傾斜角度θ31が径方向内側から径方向外側に向かって連続的に小さくなるように、第一対向面301は傾斜している。撹拌翼70の中央部に近い部分であるほど、第一対向面301が勾配の大きい急斜面になると共に、撹拌翼70の外周縁に近い部分であるほど、第一対向面301が勾配の小さい緩斜面になる。
【0076】
本例では、第一対向面301とその上側にある第二側面102とが互いに対応した形状であるため、第一対向面301の傾斜角度θ31と第二側面102の傾斜角度θ12とが実質的に等しい。また傾斜角度θ31は、後述する第一流路311における周方向Cの開口幅の大きさと反比例し、この角度が小さいほど第一流路311の開口幅が大きくなる。撹拌翼70の中央部に近い部分であるほど第一流路311の開口幅が小さくなると共に、撹拌翼70の外周縁に近い部分であるほど第一流路311の開口幅が大きくなる。
【0077】
図9及び
図10に示すように、撹拌翼70は、羽根体300を挟んで第一対向面301の反対側に設けられ、羽根体300と周方向Cに対向する第二対向面302を備える。本例では、各溝部310は、対応する羽根部100が有する第一側面101の直下に、この第一側面101に対応する形状の第二対向面302を有する。第二対向面302は、対応する溝部310の底面330から下方に延び、羽根体300と間隔を空けて周方向Cに対向する。各羽根体300は、周方向Cの両側に設けられた第一対向面301及び第二対向面302に挟まれて、これらの第一対向面301及び第二対向面302と対向する。
【0078】
第二対向面302は、撹拌翼70の一面上で径方向内側から径方向外側に延び、且つこの一面から軸方向に向かうほど羽根体300から離れるように、軸方向に対して傾斜する。本例では、第二対向面302は、下方向に向かうほど羽根体300から離れるように、下面72から斜め下方に延びる。第二対向面302は、底面視で径方向外側に向かって狭まる傾斜面である。詳細には、先述した四つの溝部310の各々において、第二対向面302が以下のように設けられる。
【0079】
各第一溝部310Aでは、第二対向面302は底面330の第一方向C1側の縁部から、第一方向C1に向かうほど下側に変位するように延びる。第一溝部310Aの第二対向面302は、第二方向C2側を向いて、隣り合う羽根体300の第一方向C1側の側面と対向する。各第二溝部310Bでは、第二対向面302は底面330の第二方向C2側の縁部から、第二方向C2に向かうほど下側に変位するように延びる。第二溝部310Bの第二対向面302は、第一方向C1を向いて、隣り合う羽根体300の第二方向C2側の側面と対向する。従って、第一溝部310Aの第二対向面302と第二溝部310Bの第二対向面302とは、互いに反対方向を向く。
【0080】
図5及び
図6に示すように、各溝部310の底面330(
図10参照)は、対応する羽根体300の両側に仕切られた第一底面331と第二底面332とを含む。第一底面331は、羽根体300と、この羽根体300に対向する第一対向面301との間で延びる。第二底面332は、羽根体300と、この羽根体300に対向する第二対向面302との間で延びる。各溝部310は、対応する羽根体300によって、周方向Cに並ぶ二つの第一流路311及び第二流路312に仕切られている。第一流路311は、羽根体300と第一底面331と第一対向面301とに囲まれた、径方向に延びる溝状の領域である。第二流路312は、羽根体300と第二底面332と第二対向面302とに囲まれた、径方向に延びる溝状の領域である。
【0081】
第二対向面302の傾斜角度θ32は、径方向内側よりも径方向外側のほうが大きい。傾斜角度θ32は、回転軸Oと直交する仮想平面V3に対して、第二対向面302のなす角である。本例では、傾斜角度θ32は、第二対向面302上の任意の一点を通るように、溝部310をその延伸方向と直交に切断した断面において、水平な仮想平面V3と第二対向面302とがなす角の大きさである。
【0082】
第二対向面302は、溝部310の底面330と接続する上端部と、溝部310の下端に位置する下端部と有する。傾斜角度θ32は、第二対向面302の上端部と下端部とを通る仮想直線L32と、仮想平面V3とのなす角と等しい。仮想直線L32は、第二対向面302の任意に一点に対する接線でもよく、例えば第二対向面302の下端に対する接線でもよい。
【0083】
詳細には、仮想平面V3を溝部310よりも下側に設定した場合、径方向外側から視て仮想直線L32と仮想平面V3とによって区画される複数領域のうち、その溝部310の第一対向面301を含む領域の角の大きさが傾斜角度θ32である。換言すると、傾斜角度θ32は、水平な仮想平面V3に対する第二対向面302の勾配の大きさを示し、この角度が大きいほど第二対向面302が急勾配となる。傾斜角度θ32が径方向内側から径方向外側に向かって連続的に大きくなるように、第二対向面302は傾斜している。撹拌翼70の中央部に近い部分であるほど、第二対向面302が勾配の小さい緩斜面になると共に、撹拌翼70の外周縁に近い部分であるほど、第二対向面302が勾配の大きい急斜面になる。
【0084】
本例では、第二対向面302とその上側にある第一側面101とが互いに対応した形状であるため、第二対向面302の傾斜角度θ32と第一側面101の傾斜角度θ11とが実質的に等しい。また傾斜角度θ32は、先述の第二流路312における周方向Cの開口幅の大きさと反比例し、この角度が小さいほど第二流路312の開口幅が大きくなる。撹拌翼70の中央部に近い部分であるほど第二流路312の開口幅が大きくなると共に、撹拌翼70の外周縁に近い部分であるほど第二流路312の開口幅が小さくなる。
【0085】
図9~
図11に示すように、各羽根体300は、羽根体300のうちで径方向内側にある内側部300Aと、内側部300Aよりも径方向外側にある外側部300Bとを含む。外側部300Bの軸方向の高さH2は、内側部300Aの軸方向の高さH1よりも大きい。本例では、羽根体300のうちで、羽根部100の第一稜線R1(
図4参照)の下側にある部分が内側部300Aであり、羽根部100の第二稜線R2(
図4参照)の下側にある部分が外側部300Bである。
【0086】
例えば、内側部300Aにおける上下方向の最大長さを、高さH1とする。外側部300Bにおける上下方向の最大長さを、高さH2とする。高さH2は高さH1よりも大きいため、外側部300Bは内側部300Aよりも上下方向に長い。なお、高さH1は内側部300Aにおける上下方向の平均長さとし、且つ、高さH2は外側部300Bにおける上下方向の平均長さとしてもよい。
【0087】
図5、
図6及び
図11に示すように、撹拌翼70の一面は、羽根体300と第一対向面301との間に形成された第一流路311の第一底面331を含む。本例では、撹拌翼70の下面72が第一流路311の第一底面331を含む。第一底面331は径方向に沿って連続した滑面であるため、水抜き穴を除いて凹凸や段差がなく滑らかに延びる。
【0088】
第一底面331における任意の二点を、第一点P1、及び第一点よりも径方向外側にある第二点P2として設定し、且つ回転軸Oと直交する仮想平面V3を第一底面331から軸方向に離れた位置に設定する。この場合、第二点P2から仮想平面V3までの距離D2は、第一点P1から仮想平面V3までの距離D1以上である。本例では、第一底面331において互いに径方向に離れた任意の二点を、回転軸Oから近い順に第一点P1及び第二点P2として設定する。第一底面331から下方に離れた水平面を、仮想平面V3として設定する。
【0089】
距離D1は、仮想平面V3を基準とした第一点P1の高さを示す。距離D2は、仮想平面V3を基準とした第二点P2の高さを示す。距離D2が距離D1以上であることを満たす第一底面331では、第二点P2はその径方向内側にある第一点P1と同じ高さ位置か、又は第一点P1よりも高い位置にある。そのため第一底面331は、上下方向の位置が径方向外側に向かって一定の高さで連続する面部、及び上下方向の位置が径方向外側に向かって連続的に高くなる面部の少なくとも一つで構成される。換言すると第一底面331は、上下方向の位置が径方向外側に向かって下方に変位する面部を含まない。
【0090】
撹拌翼70の下面72は、第二流路312の第二底面332を含む。第二底面332は、径方向に沿って連続した滑面である。先述と同様に、第二底面332における任意の二点を第一点P1及び第二点P2として設定し、且つ仮想平面V3を第二底面332から軸方向に離れた位置に設定する。この場合、第二点P2から仮想平面V3までの距離D2は、第一点P1から仮想平面V3までの距離D1以上である。
【0091】
[洗濯機の動作態様]
洗濯機1の動作態様を説明する。
図12A~
図12Fは、洗濯運転中における洗濯機1の模式的な縦断面図である。洗濯機1の洗濯運転では、撹拌翼70が第一方向C1に回転する正転と、撹拌翼70が第二方向C2に回転する反転とが、所定間隔で交互に繰り返し実行される。
図12A~
図12Dの例では、撹拌翼70が正転駆動されている。
図12Eの例では、撹拌翼70が回転方向を切り替えるために一時停止されている。
図12Fの例では、撹拌翼70が反転駆動されている。
【0092】
図1及び
図12Aに示すように、撹拌翼70が回転すると、撹拌翼70の上面71に設けられた複数の羽根部100(
図2参照)によって、周方向Cに水流Xが発生する。撹拌翼70の下面72では、複数の溝部310(
図9参照)が水路を形成し、遠心力によって各溝部310内の水が径方向内側から径方向外側に向かって流れる。このとき各溝部310では、対応する羽根体300(
図9参照)が水を径方向外側に掻き出すため、撹拌槽30の周壁30Bに向かう強い水流が形成される。
【0093】
各溝部310から流出した水は、撹拌翼70と周壁30Bとの隙間34を通って、周壁30Bに沿って上昇する水流Yを形成する。撹拌翼70の上方の回転中心付近では下降する水流Zが発生するため、下降する水流Zと上昇する水流Yとによって撹拌槽30内で水が継続して循環する。撹拌翼70の正転と反転とが所定間隔で交互に繰り返されることで、上面71側では洗濯物Wが以下のような挙動を生じる。
【0094】
[撹拌翼の上面側における洗濯物の挙動]
撹拌翼70の上面71側における洗濯物Wの挙動を説明する。
図12Aに示すように、撹拌翼70の正転駆動に伴って、複数の洗濯物Wは水流Xに従って移動し、且つ遠心力によって徐々に径方向外側に移動する(矢印F1を参照)。撹拌槽30内では、複数の洗濯物Wが撹拌翼70の周速が速い周壁30B側に集まるため、周壁30B側における単位面積当たりの洗濯物Wの密度が高くなる。その結果、
図12Bに示すように、撹拌槽30内の周壁30B側では、高密度で集まった複数の洗濯物Wが自重によって徐々に下降する(矢印F2を参照)。
【0095】
図12Cに示すように、上記のように下降する洗濯物Wは、撹拌翼70の上面71の径方向外側に落下すると、撹拌翼70の径方向内側に押し出される。洗濯物Wが押し出されるのに伴って、この洗濯物Wの上に重なる他の洗濯物Wも径方向内側に引きずられる。つまり撹拌翼70の上面71において、複数の洗濯物Wが径方向外側から径方向内側に移動する(矢印F3を参照)。
【0096】
このように洗濯物Wを撹拌翼70の径方向内側に移動させる原理を説明する。
図13A~
図13C及び
図16は、洗濯物Wが配置された撹拌翼70の上面71の一部を拡大した模式的な側面図である。理解を容易にするために、
図13A~
図13C及び
図16は何れも、周方向Cに並ぶ第一凹部110、第一羽根部100A、第二凹部120、及び第二羽根部100Bを、撹拌翼70の径方向外側から視て平面状に展開している。
図14は、洗濯物Wが配置された撹拌翼70の上面71の模式的な平面図である。
図15Aは、洗濯物Wが配置された第一凹部110の模式的な縦断面図である。
図15Bは、洗濯物Wが配置された第二凹部120の模式的な縦断面図である。
【0097】
図13Aに示すように、複数の洗濯物Wが撹拌槽30内の周壁30B側で下降すると、第一凹部110及び第二凹部120に落下する(矢印F11を参照)。第一凹部110及び第二凹部120に落下した洗濯物Wは、この洗濯物Wに対して回転方向の上流側にある羽根部100の側面に押されて、撹拌翼70と共に回転するように移動する。このとき第一凹部110及び第二凹部120の各々では、洗濯物Wのない隙間Gが、各羽根部100に対して回転方向の上流側に隣接して生じる。
【0098】
図13Aの例では、撹拌翼70は第一方向C1に回転している。そのため、第一凹部110内の洗濯物Wは、第二方向C2側にある第一羽根部100Aの第一側面101によって押されるように移動する。第一羽根部100Aの第二方向C2側にある第二凹部120には、この第一羽根部100Aに沿って隙間Gが生じる。また、第二凹部120内の洗濯物Wは、第二方向C2側にある第二羽根部100Bの第二側面102によって押されるように移動する。第二羽根部100Bの第二方向C2側にある第一凹部110には、この第二羽根部100Bに沿って隙間Gが生じる。
【0099】
羽根部100に押されて回転する洗濯物Wの上側には、まだ撹拌翼70まで落下していない後続の洗濯物Wが連なっている。撹拌翼70と共に回転する羽根部100は、後続の洗濯物Wの下側を通るように第一方向C1に移動する。これにより、
図13Bに示すように、後続の洗濯物Wは羽根部100の上側を相対移動して、この羽根部100の第二方向C2側にある第一凹部110又は第二凹部120の隙間Gに落下する(矢印F12を参照)。これにより、複数の洗濯物Wが、第一凹部110の径方向外側及び第二凹部120の径方向外側に収容される。
【0100】
図13Cに示すように、第一凹部110及び第二凹部120にある洗濯物Wは、それぞれ羽根部100の側面に押されるように移動することで、これらの羽根部100の側面に押し付けられて圧縮された状態となる。詳細には、第一羽根部100Aは、第一側面101の第一急斜面101Bによって、第一凹部110の径方向外側にある洗濯物Wを押す。第二羽根部100Bは、第二側面102の第二緩斜面102Aによって、第二凹部120の径方向外側にある洗濯物Wを押す。
【0101】
先述のように、第一急斜面101Bの傾斜角度θ11は第二緩斜面102Aの傾斜角度θ12よりも大きいため、第一急斜面101Bのほうが第二緩斜面102Aよりも垂直に近い(
図6参照)。撹拌翼70の回転に伴って洗濯物Wが第一急斜面101Bと周方向Cに対向すると、水平な周方向Cと第一急斜面101Bとの角度差が、
図6の傾斜角度θ11と同様に相対的に大きい。洗濯物Wが第一急斜面101Bと正対して上側へ逃げ難いため、第一急斜面101Bは洗濯物Wを逃がすことなく捕捉して、複数の洗濯物Wを強く圧縮できる。
【0102】
一方、撹拌翼70の回転に伴って洗濯物Wが第二緩斜面102Aと周方向Cに対向すると、水平な周方向Cと第二緩斜面102Aとの角度差が、
図6の傾斜角度θ12と同様に相対的に小さい。そのため、洗濯物Wが第二緩斜面102Aに沿って上側へ逃げる場合がある。洗濯物Wが第二緩斜面102Aに沿って上側へ逃げ易いと、多数の洗濯物Wが第二凹部120の外部に流出する可能性がある。これを抑制するために、先述のように、第二緩斜面102Aから上側に突出し、且つ周方向Cと交差する方向に延びる凸部230が設けられる(
図7参照)。
【0103】
凸部230では、第二凹部120側を向く第一受面231の傾斜角度は、羽根部100側を向く第二受面232よりも大きいため、第一受面231は第二受面232よりも第二側面102に対して垂直に近い。第二凹部120にある洗濯物Wが第二側面102に沿って上側に移動するとき、洗濯物Wの移動方向と第一受面231との角度差が相対的に大きいため、洗濯物Wと凸部230との接触摩擦が大きくなる。この大きな接触摩擦によって、洗濯物Wが第二凹部120から過剰に流出することが抑制される。
【0104】
また第二側面102では、洗濯物Wが第二緩斜面102Aに沿って径方向内側の第二急斜面102Bへ移動する場合がある(
図7参照)。洗濯物Wが第二急斜面102Bに沿って上側へ逃げ易いと、多数の洗濯物Wが第二凹部120の外部に流出する可能性がある。これを抑制するために、先述のように第二急斜面102Bの傾斜角度θ12は、第二緩斜面102Aの傾斜角度θ12よりも大きい(
図5及び
図6参照)。これによれば、傾斜角度θ12の大きい第二急斜面102Bは、周方向Cに相対移動する洗濯物Wを正対して捕捉できるため、洗濯物Wが第二凹部120から過剰に流出することが抑制される。
【0105】
図13Cの例では、第一凹部110の径方向外側にある洗濯物Wは、第一急斜面101Bに押されて移動するため、相対的に強く圧縮される(矢印F13を参照)。第二凹部120の径方向外側にある洗濯物Wは、第二緩斜面102Aに押されて移動するため、相対的に弱く圧縮される(矢印F14を参照)。そのため、撹拌翼70の径方向外側では、第一凹部110内の洗濯物Wのほうが、第二凹部120内の洗濯物Wよりも、単位面積当たりの密度が大きくなる。
【0106】
図14に示すように、第一凹部110及び第二凹部120の各々では、複数の洗濯物Wが圧縮されて高密度になることで、これらの洗濯物Wの一部が径方向内側に押し出される。このとき、単位面積当たりの洗濯物Wの密度が大きいほど、洗濯物Wを径方向内側に押し出す強さが大きい。
【0107】
図14の例では、洗濯物Wが第一急斜面101Bで押される第一凹部110の径方向外側では、洗濯物Wの圧縮密度が相対的に大きいため、洗濯物Wを径方向内側に押し出す強さが相対的に大きい(矢印F15を参照)。洗濯物Wが第二緩斜面102Aで押される第二凹部120の径方向外側は、洗濯物Wの圧縮密度が相対的に小さいため、洗濯物Wを径方向内側に押し出す強さが相対的に小さい(矢印F16を参照)。本例では、洗濯物Wが強く押される第一凹部110と、洗濯物Wが弱く押される第二凹部120とが、周方向Cに沿って交互に並ぶように分散されている。
【0108】
第一凹部110及び第二凹部120の各々では、径方向内側に押し出される洗濯物Wに引きずられて、後続の洗濯物Wも径方向内側に移動する。
図14の例では、二つの第一凹部110の各々では、回転軸Oを挟んだ両側において、洗濯物Wが径方向外側から径方向内側に移動する。更に、二つの第二凹部120の各々では、回転軸Oを挟んだ両側において、洗濯物Wが径方向外側から径方向内側に移動する。但し、第一凹部110のほうが第二凹部120よりも、複数の洗濯物Wを径方向内側に移動させる力が大きい(矢印F15、F16を参照)。
【0109】
先述のように、第一凹部110の底面111から突出する第二凸部220が設けられる(
図8参照)。
図15Aに示すように第一凹部110では、洗濯物Wが複数の第二凸部220によって下方から支持されつつ、先述のように径方向内側に押し出され又は引きずられる。これにより、洗濯物Wと底面111との接触が抑制されるため、洗濯物Wは径方向内側に向かって円滑に移動できる。
【0110】
先述のように、第二凸部220の端部221は、第一凸部210の端部213よりも鈍角である(
図7、
図8参照)。本例では、第二凸部220は第一凹部110の底面111に対する傾斜角度が30度未満の球面状である。洗濯物Wと第二凸部220との接触摩擦は、洗濯物Wと第一凸部210との接触摩擦と比べて小さい。そのため、洗濯物Wを径方向内側に移動させる力が相対的に大きい第一凹部110において、洗濯物Wは第二凸部220によって妨げられることなく径方向内側に移動し易い。
【0111】
先述のように、径方向と平行に並ぶ複数の第二凸部220が設けられる(
図4参照)。本例では、第一凹部110において洗濯物Wが径方向内側に移動することは、洗濯物Wが第一凹部110と隣り合う羽根部100に沿って回転軸O側に移動することと、実質的に等しい。第一凹部110では、二つの第二凸部220A、220Bが第二方向C2側の羽根部100の延伸方向に沿って並び、且つ、二つの第二凸部220A、220Cが第一方向C1側の羽根部100の延伸方向に沿って並ぶ。羽根部100の延伸方向は、撹拌翼70の径方向と実質的に平行である。
【0112】
従って、洗濯物Wが第二方向C2側の羽根部100に沿って回転軸O側に向かう場合、洗濯物Wは二つの第二凸部220A、220Bに支持されるため、回転軸O側に向かって円滑に移動できる。また、洗濯物Wが第一方向C1側の羽根部100に沿って回転軸O側に向かう場合、洗濯物Wは二つの第二凸部220A、220Cに支持されるため、回転軸O側に向かって円滑に移動できる。
【0113】
先述のように、第一凹部110の底面111は、径方向内側に向かって上側に変位する湾曲又は傾斜を有する(
図8参照)。従って、第一凹部110内で径方向内側に移動する洗濯物Wは、底面111の面形状に沿って斜め上方へ付勢され、第一凹部110の径方向内側の端部近傍から撹拌翼70の上側に放出される(
図12D参照)。
【0114】
先述のように、第二凹部120の底面121から突出し、且つ径方向と交差する方向に延びる第一凸部210が設けられる(
図7参照)。
図15Bに示すように第二凹部120では、洗濯物Wが複数の第一凸部210によって下方から支持されつつ、先述のように径方向内側に押し出され又は引きずられる。これにより、洗濯物Wと底面121との接触が抑制されるため、洗濯物Wは径方向内側に向かって円滑に移動できる。但し、第二凹部120では洗濯物Wを径方向内側に移動させる力が相対的に小さいため、洗濯物Wが径方向内側から径方向外側に戻る可能性がある。
【0115】
先述のように第一凸部210は、径方向内側を向く第一受面211と、径方向外側を向き、第一受面211よりも傾斜角度が小さい第二受面212とを有する(
図7参照)。第一凸部210では、第一受面211のほうが第二受面212よりも垂直に近い。洗濯物Wが第一凸部210上で径方向外側に移動する場合、洗濯物Wの移動方向と第一受面211との角度差が傾斜角度θ21と同様に相対的に大きいため、洗濯物Wと第一凸部210との接触摩擦が大きくなる。一方、洗濯物Wが第一凸部210上で径方向内側に移動する場合、洗濯物Wの移動方向と第二受面212との角度差が傾斜角度θ22と同様に相対的に小さいため、洗濯物Wと第一凸部210との接触摩擦が小さくなる。
【0116】
つまり、洗濯物Wは第一凸部210上で径方向内側に移動し易く且つ径方向外側に移動し難いため、洗濯物Wが径方向内側から径方向外側に戻ることが抑制される。これにより、洗濯物Wの不要な往復運動が抑制されるため、撹拌槽30内で洗濯される洗濯物Wの洗浄効果を向上できる。例えば、洗濯物Wが撹拌翼70上で皺を生じないようにほぐされるため、洗濯物Wの洗いムラが抑制されると共に、単位時間当たりにおいて洗濯物Wから汚れを除去する洗浄力が向上する。
【0117】
先述のように、第一凸部210は、径方向外側に向かって膨らみ、且つ径方向内側に向かって開口する円弧形状を有する(
図4参照)。これによれば、洗濯物Wが第二凹部120内で径方向外側に戻る場合、洗濯物Wの少なくとも一部は第一凸部210の延伸方向と略直交するように、第一凸部210上を横切る。このとき、洗濯物Wの移動方向と第一凸部210の延伸方向とが交差する位置において、第一受面211が最も大きな接触摩擦を生じる。この大きな接触摩擦によって、洗濯物Wが径方向外側に戻ることが、より確実に抑制される。
【0118】
先述のように、第二凹部120の底面121は、径方向内側に向かって上側に変位する湾曲又は傾斜を有する(
図7参照)。従って。第二凹部120内で径方向内側に移動する洗濯物Wは、底面121の面形状に沿って斜め上方へ付勢され、第二凹部120の径方向内側の端部近傍から撹拌翼70の上側に放出される(
図12D参照)。
【0119】
図12Dに示すように、上面71において径方向内側に移動した複数の洗濯物Wは、先述のように撹拌翼70の上側に放出される(矢印F4を参照)。
図12Eに示すように、撹拌翼70の回転方向が切り替えられる場合、撹拌翼70の回転が一旦停止される。このとき、撹拌槽30内で非回転時の水位に戻るように、撹拌翼70の上方の回転中心付近で上昇する水流Z1が発生し、且つ周壁30Bに沿って下降する水流Y1が発生する。
【0120】
つまり撹拌槽30内の回転中心側と外周縁側との間には、上昇する水流Z1と下降する水流Y1とによって渦X1が形成される。渦X1は周方向Cを中心として回転する水流であり、渦X1の上側が外周縁側に向かい、且つ渦X1の下側が回転中心側に向かうように旋回する。複数の洗濯物Wは渦X1に従って旋回することで、撹拌槽30内での上下方向及び径方向への移動が促進される。更に、上側に浮かぶ洗濯物Wと下側に沈む洗濯物Wとの間で互いの位置が入れ替わるような挙動を、撹拌槽30内で確実に発生させることができる。
【0121】
図12Fに示すように、撹拌翼70が反転駆動すると、撹拌翼70の正転時(
図12A参照)と同様に、水流X、水流Y、及び水流Zが発生する。但し、反転時の水流Xの方向は、正転時の水流Xの方向と逆である。以降における撹拌翼70の動作及び洗濯物Wの挙動は、
図12A~
図12Eと同様である。
【0122】
なお
図16に示すように、撹拌翼70の回転方向が切り替えられた直後には、第一凹部110及び第二凹部120に滞留する洗濯物Wは、この洗濯物Wに対して回転方向の上流側にある羽根部100の側面と衝突することで、撹拌翼70の上方にすくい上げられる(矢印F21、F22を参照)。このように、撹拌翼70の回転方向の切り替え時に、第一凹部110及び第二凹部120に滞留する洗濯物Wを上側に放出することで、洗濯物Wの移動量を増加でき、且つ複数の洗濯物Wを均等に分散できる。
【0123】
そして撹拌翼70の反転時には、各第一凹部110の径方向外側にある洗濯物Wが、第二羽根部100Bのうちで第一側面101の第一急斜面101Bによって相対的に強く押される。各第二凹部120の径方向外側にある洗濯物Wが、第一羽根部100Aのうちで第二側面102の第二緩斜面102Aによって相対的に弱く押される。従って、撹拌翼70の正転時(
図14参照)と同様に、洗濯物Wが強く押される第一凹部110と、洗濯物Wが弱く押される第二凹部120とが、周方向Cに沿って交互に並ぶように分散される。
【0124】
本実施形態によれば、先述のように第一側面101の傾斜角度θ11は、径方向内側よりも径方向外側のほうが大きい(
図5及び
図6参照)。これによれば、第一側面101における径方向外側の領域が、傾斜角度θ11の大きい第一急斜面101Bとなる。撹拌翼70の回転時には、第一急斜面101Bが洗濯物Wを確実に捕捉しつつ移動するため、洗濯物Wの周方向Cへの移動量を増加できる。更に、周速の速い撹拌翼70の径方向外側において、第一急斜面101Bに捕捉された複数の洗濯物Wが高密度に圧縮される。圧縮された洗濯物Wが径方向内側に押し出されるため、洗濯物Wの径方向への移動量を増加できる。
【0125】
撹拌翼70上にある洗濯物Wの周方向C及び径方向への移動が促進されるため、洗濯物Wの単位時間当たりの移動量が増加し、撹拌槽30内で洗濯される洗濯物Wの洗浄効果を向上できる。例えば、洗濯物Wの全体に水流が当たり易くなるため、洗濯物Wの洗いムラが抑制されると共に、単位時間当たりの洗濯物Wの洗浄力が向上する。更に、撹拌翼70の正転及び反転を繰り返すことで、先述のように洗濯物Wが径方向内側から上方に移動して、上下の洗濯物Wが渦X1に従って入れ替わる挙動が促進される。このような挙動を確実に発生させることで、複数の洗濯物Wを効果的に洗浄できるため、洗濯物Wの洗浄効果を更に向上できる。
【0126】
先述のように、第一羽根部100Aの第一側面101は第一方向C1を向き、第二羽根部100Bの第一側面101は第二方向C2を向く(
図3参照)。これによれば、撹拌翼70が第一方向C1に回転すると、第一羽根部100Aの第一急斜面101Bが洗濯物Wを捕捉し易く一方、第二羽根部100Bの第一急斜面101Bは洗濯物Wを捕捉し難い。撹拌翼70が第二方向C2に回転すると、第一羽根部100Aの第一急斜面101Bが洗濯物Wを捕捉し易く一方、第二羽根部100Bの第一急斜面101Bは洗濯物Wを捕捉し難い。
【0127】
このように撹拌翼70の回転方向に応じて、洗濯物Wを捕捉する羽根部100が切り替えられる。これにより、洗濯物Wの荷重が特定の羽根部100に集中することが抑制されるため、荷重の集中に起因して羽根部100が破損する可能性が低減する。また、全ての羽根部100に洗濯物Wの荷重が同時付与されることが抑制されるため、撹拌翼70を回転させるモータ41(
図1参照)の負荷集中を低減できる。
【0128】
先述のように、第一凹部110と隣り合う二つの羽根部100の各々は、第一凹部110の底面111から羽根部100の稜線R側に延びる第一側面101を有する。第一羽根部100Aの第一側面101と、第二羽根部100Bの第一側面101とは、一つの第一凹部110から延びて、互いに周方向Cに対向する(
図4参照)。これによれば、撹拌翼70が第一方向C1及び第二方向C2の何れに回転しても、第一凹部110の両隣りにある二つの第一側面101の何れかにおいて、第一急斜面101Bが第一凹部110内の洗濯物Wを捕捉できる。
【0129】
先述のように、第一羽根部100Aの稜線Rでは、第二稜線R2が第一稜線R1から第二方向C2側に曲がって延びる部分を含む。第二羽根部100Bの稜線Rでは、第二稜線R2が第一稜線R1から第一方向C1側に曲がって延びる部分を含む(
図4参照)。これによれば、第一羽根部100Aの第二稜線R2と第二羽根部100Bの第二稜線R2とが互いに反対側に曲がることで、第一凹部110の径方向外側における周方向Cの長さが大きくなる。そのため、より多くの洗濯物Wが、第一凹部110の径方向外側に収容されて、第一急斜面101Bによって捕捉可能となる。
【0130】
先述のように、第二側面102は、第一急斜面101Bと周方向Cに並ぶ位置に設けられた第二緩斜面102Aを含む。第二緩斜面102Aの傾斜角度θ12は、第一急斜面101Bの傾斜角度θ11よりも小さい(
図5及び
図6参照)。これによれば、第二側面102における径方向外側の領域が、傾斜角度θ12の小さい第二緩斜面102Aとなる。撹拌翼70の回転時には、第二緩斜面102Aは第一急斜面101Bと同様に洗濯物Wを捕捉するため、洗濯物Wの周方向C及び径方向への移動量を増加できる。但し、第二緩斜面102Aのほうが第一急斜面101Bよりも、洗濯物Wを捕捉する力が弱い。
【0131】
従って、第一急斜面101Bが洗濯物Wを捕捉する第一凹部110では、洗濯物Wを捕捉する力が相対的に強い。第二緩斜面102Aが洗濯物Wを捕捉する第二凹部120では、洗濯物Wを捕捉する力が相対的に弱い。このように撹拌翼70は、洗濯物Wを捕捉する力が異なる第一凹部110及び第二凹部120を有する。これにより、全ての凹部で洗濯物Wが同時に強く捕捉されることが抑制されるため、撹拌翼70を回転させるモータ41(
図1参照)の負荷集中を低減できる。
【0132】
また第一凹部110では、洗濯物Wを径方向内側に移動させる力が相対的に強い。第二凹部120では、洗濯物Wを径方向内側に移動させる力が相対的に弱い。撹拌翼70の径方向内側では、相対的に強い力で移動する洗濯物Wの挙動が、相対的に弱い力で移動する洗濯物Wの挙動よりも優先する。このように、複数の洗濯物Wを径方向内側に移動させる力に強弱を設けることで、これらの洗濯物Wが互いに干渉して絡み付くことを抑止できる。
【0133】
先述のように、第二凹部120と隣り合う二つの羽根部100の各々は、第二凹部120の底面121から羽根部100の稜線R側に延びる第二側面102を有する。第一羽根部100Aの第二緩斜面102Aと、第二羽根部100Bの第二緩斜面102Aとは、一つの第二凹部120から延びて、互いに周方向Cに対向する(
図4参照)。これによれば、撹拌翼70が第一方向C1及び第二方向C2の何れに回転しても、第二凹部120の両隣りにある二つの第二側面102の何れかにおいて、第二緩斜面102Aが第二凹部120内の洗濯物Wを捕捉できる。
【0134】
[撹拌翼の下面側における水流の発生]
撹拌翼70の下面72側における水流の発生を説明する。
図17及び
図18は、撹拌翼70の下面72の一部を拡大した模式的な底面図である。
図17は、
図10に示す四つの溝部310のうち、上側の第一溝部310A及びその周辺を模式的に示す。
図18は、
図10に示す四つの溝部310のうち、右側の第二溝部310B及びその周辺を模式的に示す。
【0135】
図17及び
図18に示すように、撹拌翼70が第一方向C1に回転しているとき、水が下面72側で第二方向C2に相対移動する(矢印Y11、Y21を参照)。撹拌翼70の径方向外側であるほど、撹拌翼70の周速が速いため、水の相対移動の流速も速くなる。この場合、四つの溝部310において、以下のように水流が発生する。
【0136】
図17に示すように、二つの第一溝部310Aの各々では、第二対向面302が羽根体300の第一方向C1側にある。従って、第一溝部310Aに向かって相対移動する水は、第二対向面302の下側を経由して、第一溝部310A内の羽根体300に向かう。
【0137】
先述のように、第二対向面302の傾斜角度θ32は、径方向内側(
図5参照)よりも径方向外側(
図6参照)のほうが大きい。第二対向面302では、径方向内側のほうが径方向外側よりも水平に近い。第二対向面302の径方向外側では、水が相対移動する第二方向C2と第二対向面302との角度差は、
図6の傾斜角度θ32と同様に相対的に大きく、且つ先述のように水の流速が相対的に速い。そのため第二方向C2に相対移動する水は、第二対向面302の径方向外側に沿って流れ難く、第二対向面302の径方向外側から離れるように直進するため、第二流路312に流入し難い。
【0138】
第二対向面302の径方向内側では、水が相対移動する第二方向C2と第二対向面302との角度差が、
図5の傾斜角度θ32と同様に相対的に小さく、且つ先述のように水の流速が相対的に遅い。そのため第二方向C2に相対移動する水は、第二対向面302の径方向内側に沿って斜め上方に案内されて、第二流路312に流入し易い(矢印Y11を参照)。このように第二流路312では、相対的に流速の遅い水が流入し易いため、単位時間当たりの水流入量も相対的に小さくなるおそれがある。
【0139】
これに対して、第二対向面302は、平面視で径方向外側に向かって狭まる傾斜面である。第二流路312の流路幅は、第二対向面302と羽根体300との間隔であり、径方向外側に向かって徐々に狭くなる。従って、第二流路312に流入した水が、径方向外側に向かって流路内を移動するに連れて、水の流速が高まる(矢印Y12を参照)。このように流速が向上された水流Y10が、第一方向C1に回転する羽根体300によって掻き出されるように、第二流路312の開口端から径方向外側に送出される。
【0140】
図18に示すように、二つの第二溝部310Bの各々では、第一対向面301が羽根体300の第一方向C1側にある。従って、第二溝部310Bに向かって相対移動する水は、第一対向面301の下側を経由して、第二溝部310B内の羽根体300に向かう。
【0141】
先述のように、第一対向面301の傾斜角度θ31は、径方向内側(
図5参照)よりも径方向外側(
図6参照)のほうが小さい。第一対向面301では、径方向外側のほうが径方向内側よりも水平に近い。第一対向面301の径方向外側では、水が相対移動する第二方向C2と第一対向面301との角度差が、
図6の傾斜角度θ31と同様に相対的に小さい。そのため水の流速が相対的に速くても、水が第一対向面301に沿って斜め上方に案内されて、第一流路311に流入し易い(矢印Y21を参照)。
【0142】
第一対向面301の径方向内側では、水が相対移動する第二方向C2と第一対向面301との角度差が、
図5の傾斜角度θ31と同様に相対的に小さい。しかし、先述のように水の流速が相対的に遅いため、水が第一対向面301に沿って斜め上方に案内されて、第一流路311に流入し易い(矢印Y21を参照)。このように第一流路311では、幅広い流速の水が流入し易いため、単位時間当たりの水流入量も相対的に大きくなる。
【0143】
第一対向面301は、平面視で径方向外側に向かって広がる傾斜面である。そのため第一流路311の流路幅は、径方向外側に向かって徐々に広くなる。第一流路311に流入した水が、径方向外側に向かって流路内を移動するに連れて、より流速の速い水が合流するため、流路内に形成される水流の流速及び水量が高まる(矢印Y22を参照)。このように流速及び水量が向上された水流Y20が、第一方向C1に回転する羽根体300によって掻き出されるように、第一流路311の開口端から径方向外側に送出される。
【0144】
図14に示すように、撹拌翼70が第一方向C1に正転しているとき、二つの第一羽根部100Aの下側にある二つの第一溝部310Aから、互いに反対方向の水流Y10が撹拌翼70の外方に送出される。二つの第二羽根部100Bの下側にある二つの第二溝部310Bから、互いに反対方向の水流Y20が撹拌翼70の外方に送出される。これにより撹拌翼70は、流速の速い複数の水流Y10、Y20を、周方向に沿って略等間隔に並ぶように放射状に送出できる。これらの水流Y10、Y20は、先述のように隙間34を通って上昇する水流Yを形成する(
図1参照)。
【0145】
撹拌翼70が第二方向C2に反転しているとき、第一溝部310Aと第二溝部310Bとの作用が入れ替わる。具体的には、二つの第一溝部310Aの各々では、水が第一対向面301の下側を経由して第一流路311に流入することで、水流Y20が径方向外側に送出される。二つの第二溝部310Bの各々では、水が第二対向面302の下側を経由して第二流路312に流入することで、水流Y10が径方向外側に送出される。この場合も、撹拌翼70の正転時と同様に、流速の速い複数の水流Y10、Y20が撹拌翼70から放射状に送出されて、水流Yが形成される。
【0146】
先述のように、羽根体300では、外側部300Bの軸方向の高さH2が内側部300Aの軸方向の高さH1よりも大きい(
図11参照)。各溝部310の第一溝部310A及び第二溝部310Bでは何れも、径方向外側に向かうほど水の流速が速くなり、水流の制御が難しくなるおそれがある。これに対し、外側部300Bは内側部300Aよりも上下幅が広いため、径方向外側を流れる水の一部が羽根体300を越えて回転方向に逃げることを抑制できる。従って羽根体300は、各溝部310内にある水の略全体を掻き出して、流速の高い水流を効率的に放出できる。
【0147】
先述のように、羽根体300では、第二点P2から仮想平面V3までの距離D1は、第一点P1から仮想平面V3までの距離D2以上である(
図11参照)。即ち第一底面331及び第二底面332は、径方向内側から径方向外側に向かって、上下方向の位置が下方に変位する面部を含まない。従って、第一流路311を流れる水流は、第一底面331に沿って径方向外側へ円滑に放出される(
図18参照)。第二流路312を流れる水流は、第二底面332に沿って径方向外側へ円滑に放出される(
図17参照)。
【0148】
本例では、第一底面331及び第二底面332は、径方向外側に向かって上側に傾斜する滑面である。第一流路311及び第二流路312を流れた水流Y10、Y20は、第一底面331及び第二底面332の面形状に沿って、撹拌翼70の外周縁から斜め上方に放出され易い。これにより水流Y10、Y20は、撹拌翼70の外周側にある隙間34(
図1参照)を正確に通過して、流速を低下することなく水流Yを形成できる。
【0149】
本実施形態の撹拌翼70によれば、下面72側から送出される水流の流速が向上するため、上面71側における洗濯物Wの単位時間当たりの移動量を増加できる。これにより、撹拌槽30内の水量が少ない場合でも、洗濯物Wの洗浄効果を向上できる。例えば、上面71側に形成される高速の水流によって、洗濯物Wの洗いムラが抑制されると共に、単位時間当たりの洗濯物Wの洗浄力が向上する。
【0150】
[備考]
本開示は先述した実施形態に限定されず、各種変形が可能である。上記実施形態では、回転軸Oが上下方向に延びる縦型の洗濯機1を例示した。これに代えて洗濯機1は、回転軸Oが上下方向と交差する方向に延びる洗濯機でもよく、例えばドラム式洗濯機でもよい。撹拌翼70は、上述した上面71側の各種構造と、上述した下面72側の各種構造のうち、何れか一方の構造のみを備えてもよい。例えば撹拌翼70は、上述した上面71側の各種構造を有すると共に、下面72側は従来の撹拌翼と同様であってもよい。
【0151】
撹拌翼70の上面71側では、羽根部100、第一凹部110、第二凹部120等について、これらの数量、形状、大きさ及び位置を任意に設計変更できる。例えば、撹拌翼70の上面71には、一つの羽根部100のみを設けてもよいし、二つ以上の羽根部100を設けてもよい。複数の羽根部100を設ける場合、第一羽根部100A及び第二羽根部100Bを組合わせてもよいし、複数の第一羽根部100Aのみを設けてもよいし、複数の第二羽根部100Bのみを設けてもよい。
【0152】
撹拌翼70の下面72側では、羽根体300、第一対向面301、第二対向面302、溝部310等について、これらの数量、形状、大きさ及び位置を任意に設計変更できる。例えば、撹拌翼70の下面72には、一つの羽根体300及び溝部310のみを設けてもよいし、二つ以上の羽根体300及び溝部310を設けてもよい。複数の溝部310を設ける場合、第一溝部310A及び第二溝部310Bを組合わせてもよいし、複数の第一溝部310Aのみを設けてもよいし、複数の第二溝部310Bのみを設けてもよい。
【0153】
本開示は先述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態に夫々開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。更に、各実施形態に夫々開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0154】
1 洗濯機、70 撹拌翼、100 羽根部、101 第一側面、101A 第一緩斜面、101B 第一急斜面、102 第二側面、102A 第二緩斜面、102B 第二急斜面、110 第一凹部、120 第二凹部、210 第一凸部、220 第二凸部、230 凸部、300 羽根体、301 第一対向面、302 第二対向面、310 溝部
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心とする回転によって流体を撹拌可能な撹拌翼であって、
前記回転軸の径方向内側から径方向外側に延びるように、前記撹拌翼の一面から突出する羽根部と、
前記一面において、前記羽根部と前記撹拌翼の周方向に隣り合う第一凹部とを備え、
前記羽根部は、前記第一凹部の底面から前記羽根部の稜線側に延びる第一側面を含み、
前記第一側面の傾斜角度は、前記径方向内側よりも前記径方向外側のほうが大きく、
前記第一側面の傾斜角度は、前記羽根部を前記径方向と直交に切断した断面において、前記回転軸と直交する水平面に対する前記第一側面の勾配の大きさである、
撹拌翼。
【請求項2】
第一羽根部と第二羽根部とを含む複数の前記羽根部を備え、
前記周方向は、互いに反対方向である第一方向と第二方向とを含み、
前記第一羽根部の前記第一側面は、前記第一方向を向き、
前記第二羽根部の前記第一側面は、前記第二方向を向く、
請求項1に記載の撹拌翼。
【請求項3】
前記第一羽根部と前記第二羽根部とは、一つの前記第一凹部を挟んで前記周方向に隣り合い、
前記第一羽根部の前記第一側面と、前記第二羽根部の前記第一側面とは、前記一つの第一凹部から延びて、互いに前記周方向に対向する、
請求項2に記載の撹拌翼。
【請求項4】
前記稜線は、前記径方向内側から前記径方向外側に延びる第一稜線と、前記第一稜線の端部から更に前記径方向外側に延びる第二稜線とを含み、
前記第一羽根部の前記稜線では、前記第二稜線が前記第一稜線から前記第二方向側に曲がって延びる部分を含み、
前記第二羽根部の前記稜線では、前記第二稜線が前記第一稜線から前記第一方向側に曲がって延びる部分を含む、
請求項3に記載の撹拌翼。
【請求項5】
前記一面において、前記羽根部を挟んで前記第一凹部の反対側に設けられ、前記羽根部と前記周方向に隣り合う第二凹部を備え、
前記羽根部は、前記第一凹部の底面から前記稜線側に延びる前記第一側面と、前記第二凹部の底面から前記稜線側に延びる第二側面とを含み、
前記第一側面は、第一緩斜面と、前記第一緩斜面よりも前記径方向外側に設けられ、且つ前記傾斜角度が前記第一緩斜面よりも大きい第一急斜面とを含み、
前記第二側面は、前記第一急斜面と前記周方向に並ぶ位置に設けられた第二緩斜面を含み、
前記第二緩斜面の傾斜角度は、前記第一急斜面の傾斜角度よりも小さい、
請求項1から4の何れかに記載の撹拌翼。
【請求項6】
前記第二緩斜面から突出し、且つ前記周方向と交差する方向に延びる凸部を備える、
請求項5に記載の撹拌翼。
【請求項7】
前記第二側面は、前記第二緩斜面よりも前記径方向内側に設けられた第二急斜面を含み、
前記第二急斜面の傾斜角度は、前記第二緩斜面の傾斜角度よりも大きい、
請求項5に記載の撹拌翼。
【請求項8】
第一羽根部と第三羽根部とを含む複数の前記羽根部を備え、
前記第一羽根部と前記第三羽根部とは、一つの前記第二凹部を挟んで前記周方向に隣り合い、
前記第一羽根部の前記第二緩斜面と、前記第三羽根部の前記第二緩斜面とは、前記一つの第二凹部から延びて、互いに前記周方向に対向する、
請求項5に記載の撹拌翼。
【請求項9】
第一羽根部と第二羽根部とを含む複数の前記羽根部を備え、
前記第一羽根部と前記第二羽根部とは、一つの前記第一凹部を挟んで前記周方向に隣り合い、
前記第一凹部の底面は、前記底面の最下部から前記径方向内側に向かって、連続的に上側に変位するように湾曲又は傾斜する、
請求項1に記載の撹拌翼。
【請求項10】
請求項1から4の何れかに記載の撹拌翼を備えた洗濯機。
【請求項11】
前記第一側面は、第一緩斜面と、前記第一緩斜面よりも前記径方向外側に設けられ、且つ前記傾斜角度が前記第一緩斜面よりも大きい第一急斜面とを含み、
前記第一急斜面における前記傾斜角度の最大角度は、60度以上である、
請求項1に記載の撹拌翼。
【請求項12】
前記第一側面は、第一緩斜面と、前記第一緩斜面よりも前記径方向外側に設けられ、且つ前記傾斜角度が前記第一緩斜面よりも大きい第一急斜面とを含み、
前記第一急斜面は、前記撹拌翼の回転時に、前記第一急斜面と正対する複数の洗濯物を押して移動することで、圧縮された前記複数の洗濯物を前記径方向内側に押し出す、
請求項1に記載の撹拌翼。