(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152085
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】コンクリート打設構造、及びコンクリート打設方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/04 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
E04G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066024
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏之
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA33
2E172CA55
2E172DA00
2E172DB03
2E172DB05
2E172DE04
(57)【要約】
【課題】作業コストを低減することが可能になる、コンクリート打設構造、及びコンクリート打設方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート打設構造1は、第1立設体10と第2立設体20との相互間に位置する打設空間PSにコンクリートCを打設するための構造であって、第1立設体10において、少なくとも1つ以上設けられる流入口30と、打設空間PS内に少なくとも1つ以上設けられる埋め殺し管40であり、コンクリートCに埋め殺し可能であると共に、流入口30及び当該埋め殺し管40を介してコンクリートCを外部から打設空間PSに充填することを可能にする埋め殺し管40と、を備え、打設空間PSにコンクリートCが打設される際に、残存空間RSにコンクリートCを充填することが可能となるように、埋め殺し管40を構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の立設体の相互間に位置する打設空間にコンクリートを打設するためのコンクリート打設構造であって、
前記一対の立設体の少なくともいずれか一方において、少なくとも1つ以上設けられる流入口であり、前記流入口を介して前記コンクリートを外部から前記打設空間に充填することを可能にする流入口と、
前記打設空間内に少なくとも1つ以上設けられる埋め殺し管であり、前記コンクリートに埋め殺し可能であると共に、前記流入口及び当該埋め殺し管を介して前記コンクリートを外部から前記打設空間に充填することを可能にする埋め殺し管と、を備え、
前記打設空間に前記コンクリートが打設される際に、前記打設空間のうち、前記コンクリートの打設時に空隙が残存しやすい空間である残存空間に前記コンクリートを充填することが可能となるように、前記埋め殺し管を構成した、
コンクリート打設構造。
【請求項2】
前記流入口及び前記埋め殺し管の前記流入口側の端部に対して着脱自在に接続するための接続管であって、当該接続管、前記流入口、及び前記埋め殺し管を介して前記コンクリートを前記打設空間に打設可能とする接続管を備える、
請求項1に記載のコンクリート打設構造。
【請求項3】
前記埋め殺し管の前記流入口側とは反対側の端部が前記埋め殺し管の前記流入口側の端部よりも下方に位置するように、前記埋め殺し管を傾斜して配置した、
請求項1又は2に記載のコンクリート打設構造。
【請求項4】
前記埋め殺し管は、スパイラル管である、
請求項1又は2に記載のコンクリート打設構造。
【請求項5】
前記埋め殺し管に設けられる止水部材であり、前記埋め殺し管内に水が浸入することを防止するための止水部材を備える、
請求項1又は2に記載のコンクリート打設構造。
【請求項6】
前記流入口を開閉自在とする蓋部を備える、
請求項1又は2に記載のコンクリート打設構造。
【請求項7】
一対の立設体の相互間に位置する打設空間にコンクリートを打設するためのコンクリート打設方法であって、
前記一対の立設体の少なくともいずれか一方に設けられる流入口と、前記打設空間内に設けられる埋め殺し管であって、前記コンクリートに埋め殺し可能である埋め殺し管とを介して、前記打設空間のうち、前記コンクリートの打設時に空隙が残存しやすい空間である残存空間に前記コンクリートを充填する残存空間充填工程と、
前記流入口又は/及び前記埋め殺し管を介して、前記打設空間のうち、前記残存空間以外の空間である非残存空間に前記コンクリートを充填する非残存空間充填工程と、を含み、
前記残存空間充填工程を、前記非残存空間充填工程よりも前に完了させる、
コンクリート打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設構造、及びコンクリート打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一対の立設体の相互間に位置する打設空間にコンクリートを打設するための技術の一つとして、一対の立設体のいずれか一方に複数設けられた流入口とコンクリート給送管とを用いてコンクリートを充填する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、この技術においては、コンクリートポンプからコンクリート給送管を介して送られたコンクリートが流入口を介して打設空間に充填されるため、打設空間の部分のうち、流入口が設けられた立設体に近い部分が当該立設体に遠い部分よりも優先的にコンクリートが充填されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記従来の技術においては、上述したように、打設空間の部分のうち、上記立設体に近い部分が上記立設体に遠い部分よりも優先的にコンクリートが充填されるので、上記立設体に遠い部分においてコンクリートが充填されずに空隙が残存しやすくなるため、コンクリートの充填後に上記空隙を除去する処置(例えば、グラウトを空隙に充填すること等)を講じる必要が生じることから、作業コスト(具体的には、作業費用及び作業労力)が増大してしまうおそれがあった。よって、作業コストを低減する観点からは、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業コストを低減することが可能になる、コンクリート打設構造、及びコンクリート打設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載のコンクリート打設構造は、一対の立設体の相互間に位置する打設空間にコンクリートを打設するためのコンクリート打設構造であって、前記一対の立設体の少なくともいずれか一方において、少なくとも1つ以上設けられる流入口であり、前記流入口を介して前記コンクリートを外部から前記打設空間に充填することを可能にする流入口と、前記打設空間内に少なくとも1つ以上設けられる埋め殺し管であり、前記コンクリートに埋め殺し可能であると共に、前記流入口及び当該埋め殺し管を介して前記コンクリートを外部から前記打設空間に充填することを可能にする埋め殺し管と、を備え、前記打設空間に前記コンクリートが打設される際に、前記打設空間のうち、前記コンクリートの打設時に空隙が残存しやすい空間である残存空間に前記コンクリートを充填することが可能となるように、前記埋め殺し管を構成した。
【0007】
請求項2に記載のコンクリート打設構造は、請求項1に記載のコンクリート打設構造において、前記流入口及び前記埋め殺し管の前記流入口側の端部に対して着脱自在に接続するための接続管であって、当該接続管、前記流入口、及び前記埋め殺し管を介して前記コンクリートを前記打設空間に打設可能とする接続管を備える。
【0008】
請求項3に記載のコンクリート打設構造は、請求項1又は2に記載のコンクリート打設構造において、前記埋め殺し管の前記流入口側とは反対側の端部が前記埋め殺し管の前記流入口側の端部よりも下方に位置するように、前記埋め殺し管を傾斜して配置した。
【0009】
請求項4に記載のコンクリート打設構造は、請求項1又は2に記載のコンクリート打設構造において、前記埋め殺し管は、スパイラル管である。
【0010】
請求項5に記載のコンクリート打設構造は、請求項1又は2に記載のコンクリート打設構造において、前記埋め殺し管に設けられる止水部材であり、前記埋め殺し管内に水が浸入することを防止するための止水部材を備える。
【0011】
請求項6に記載のコンクリート打設構造は、請求項1又は2に記載のコンクリート打設構造において、前記流入口を開閉自在とする蓋部を備える。
【0012】
請求項7に記載のコンクリート打設方法は、一対の立設体の相互間に位置する打設空間にコンクリートを打設するためのコンクリート打設方法であって、前記一対の立設体の少なくともいずれか一方に設けられる流入口と、前記打設空間内に設けられる埋め殺し管であって、前記コンクリートに埋め殺し可能である埋め殺し管とを介して、前記打設空間のうち、前記コンクリートの打設時に空隙が残存しやすい空間である残存空間に前記コンクリートを充填する残存空間充填工程と、前記流入口又は/及び前記埋め殺し管を介して、前記打設空間のうち、前記残存空間以外の空間である非残存空間に前記コンクリートを充填する非残存空間充填工程と、を含み、前記残存空間充填工程を、前記非残存空間充填工程よりも前に完了させる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載のコンクリート打設構造によれば、一対の立設体の少なくともいずれか一方において、少なくとも1つ以上設けられる流入口と、打設空間内に少なくとも1つ以上設けられる埋め殺し管と、を備え、打設空間にコンクリートが打設される際に、残存空間にコンクリートを充填することが可能となるように、埋め殺し管を構成したので、残存空間にコンクリートを確実に充填でき、打設空間に打設されたコンクリートに空隙が残存することを抑制できる。よって、従来技術(コンクリートが流入口のみを介して打設空間に充填する技術)に比べて、打設空間にコンクリートが打設された後に、当該コンクリートに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【0014】
請求項2に記載のコンクリート打設構造によれば、流入口及び埋め殺し管の流入口側の端部に対して着脱自在に接続するための接続管であって、当該接続管、流入口、及び埋め殺し管を介してコンクリートを打設空間に打設可能とする接続管を備えるので、打設空間にコンクリートが打設される途中で(又は当該打設後に)、接続管を流入口及び埋め殺し管の流入口側の端部から取り外して、埋め殺し管を外部に露出しないように埋め殺しでき、当該打設によって構成されるコンクリート構造体の意匠性を確保できる。
【0015】
請求項3に記載のコンクリート打設構造によれば、埋め殺し管の流入口側とは反対側の端部が埋め殺し管の流入口側の端部よりも下方に位置するように、埋め殺し管を傾斜して配置したので、打設空間にコンクリートが打設された後に、埋め殺し管内に水が残存することを回避でき、コンクリートの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0016】
請求項4に記載のコンクリート打設構造によれば、埋め殺し管は、スパイラル管であるので、埋め殺し管内に水が入ることを抑制でき、コンクリートの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0017】
請求項5に記載のコンクリート打設構造によれば、埋め殺し管に設けられる止水部材であり、埋め殺し管内に水が浸入することを防止するための止水部材を備えるので、埋め殺し管内に水が入ることを抑制でき、コンクリートの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0018】
請求項6に記載のコンクリート打設構造によれば、流入口を開閉自在とする蓋部を備えるので、流入口からコンクリートが漏れ出すことを回避でき、打設空間へのコンクリートの打設を正確に行うことができる。
【0019】
請求項7に記載のコンクリート打設方法によれば、一対の立設体の少なくともいずれか一方に設けられる流入口と、打設空間内に設けられる埋め殺し管とを介して、残存空間にコンクリートを充填する残存空間充填工程と、流入口又は/及び埋め殺し管を介して、非残存空間にコンクリートを充填する非残存空間充填工程と、を含み、残存空間充填工程を、非残存空間充填工程よりも前に完了させるので、残存空間にコンクリートを確実に充填でき、打設空間に打設されたコンクリートに空隙が残存することを抑制できる。よって、従来技術(コンクリートが流入口のみを介して打設空間に充填する技術)に比べて、打設空間にコンクリートが打設された後に、当該コンクリートに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るコンクリート打設構造を概念的に示す図であって、実施の形態1に係るコンクリート打設方法の空隙残存部充填工程を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1に係るコンクリート打設方法の準備工程を示す図であって、
図1に対応する領域を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係るコンクリート打設方法の第1非残存空間充填工程を示す図であって、
図1に対応する領域を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係るコンクリート打設方法の第2非残存空間充填工程を示す図であって、
図1に対応する領域を示す図である。
【
図6】コンクリートを打設空間に打設した後の状態を示す図であって、
図1に対応する領域を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係るコンクリート打設構造を概念的に示す図であって、実施の形態2に係るコンクリート打設方法の空隙残存部充填工程を示す断面図である。
【
図8】実施の形態2に係るコンクリート打設方法の準備工程を示す図であって、
図7に対応する領域を示す図である。
【
図9】実施の形態2に係るコンクリート打設方法の第1非残存空間充填工程を示す図であって、
図7に対応する領域を示す図である。
【
図10】実施の形態2に係るコンクリート打設方法の第2非残存空間充填工程を示す図であって、
図7に対応する領域を示す図である。
【
図11】コンクリートを打設空間に打設した後の状態を示す図であって、
図7に対応する領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るコンクリート打設構造、及びコンクリート打設方法の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、一対の立設体の相互間に位置する打設空間にコンクリートを打設するためのコンクリート打設構造に関する。
【0023】
ここで、「立設体」とは、設置面(例えば、基礎面、床面等)に立設される構造体であり、例えば、構造物を構成する部材(一例として、壁材(例えば、山留壁材、外壁材、内壁材等)、柱材等)や、構造物を建設する際に用いられる部材(一例として、型枠材等)を含む概念である。
【0024】
また、「構造物」の具体的な構造や種類は任意であり、例えば、建築構造物(一例として、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設等)や土木構造物(一例として、橋梁、トンネル、ダム等)を含む概念であるが、実施の形態では、施工中のオフィスビルとして説明する。
【0025】
また、「打設空間」とは、構造物を構成するコンクリート構造体を施工するために、コンクリートが打設される空間を意味する。
【0026】
また、「コンクリート構造体」とは、例えば、壁材、柱材等を含む概念であるが、実施の形態では、免震擁壁材として説明する。
【0027】
また、「コンクリート」の具体的な種類は任意であり、例えば、普通コンクリート、軽量コンクリート、高強度コンクリート、流動化コンクリート、マスコンクリート、又は/及び水密コンクリートを含む概念である。
【0028】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0029】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1に係るコンクリート打設構造、及びコンクリート打設方法について説明する。この実施の形態1は、一対の立設体のいずれか一方のみからコンクリートを打設する形態である。
【0030】
(構成)
最初に、実施の形態1に係るコンクリート打設構造1の構成と、コンクリート打設構造1が適用される第1立設体10及び第2立設体20の構成とについて説明する。
【0031】
(構成-第1立設体)
まず、第1立設体10の構成について説明する。
【0032】
以下の説明では、
図2のX方向をコンクリート打設構造1の左右方向(-X方向をコンクリート打設構造1の左方向、+X方向をコンクリート打設構造1の右方向)、
図1のY方向をコンクリート打設構造1の前後方向(+Y方向をコンクリート打設構造1の前方向、-Y方向をコンクリート打設構造1の後方向)、
図1のZ方向をコンクリート打設構造1の上下方向(+Z方向をコンクリート打設構造1の上方向、-Z方向をコンクリート打設構造1の下方向)と称する。
【0033】
第1立設体10は、設置面S(具体的には、基礎面)に立設される構造体である。この第1立設体10は、例えば公知のコンクリート打設用の型枠材を用いて構成されており、具体的には、
図1に示すように、先行躯体PBと設置面Sとの相互間において、設置面Sに立設されるせき板11、せき板11を支持する支保工12、及びせき板11と支保工12とを接続する締結具13を備えている。
【0034】
ここで、「先行躯体PB」とは、第1立設体10又は/及び第2立設体20よりも先に建物に設けられた躯体であり、例えば、コンクリート製(又は鋼製)の梁材、床材、壁材、柱材、又はこれらを組み合わせたもの等を含む概念である。
【0035】
図1に示すように、この第1立設体10は、図示しない構造物(具体的には、施工中のオフィスビル)の内側において設置面Sに立設され、設置面Sに対して着脱自在に固定具等によって固定されている。
【0036】
(構成-第2立設体)
次に、第2立設体20の構成について説明する。
【0037】
第2立設体20は、設置面Sに立設される構造体である。この第2立設体20は、例えば公知の山留壁(一例として、地盤改良体からなる山留壁等)を用いて構成されており、
図1に示すように、先行躯体PBと設置面Sとの相互間において、第1立設体10よりも構造物の外側の位置に、第1立設体10と打設空間PSを隔てて設置面Sに立設されている。
【0038】
なお、上述した「第1立設体10」及び「第2立設体20」は、特許請求の範囲の「一対の立設体」に対応する。
【0039】
(構成-打設空間)
ここで、打設空間PSは、構造物を構成するコンクリート構造体(具体的には、免震擁壁材)を施工するために、コンクリートCが打設される空間であり、
図1に示すように、第1立設体10と第2立設体20との相互間に位置するように設けられている。
【0040】
また、打設空間PSの具体的な大きさについては任意であるが、実施の形態1では以下の通りに設定している。
【0041】
すなわち、打設空間PSの左右方向の長さについては、コンクリート構造体の左右方向の長さと略同一に設定しており、一例として、30m程度に設定している。
【0042】
また、打設空間PSの前後方向の長さについては、コンクリート構造体の前後方向の長さと略同一に設定しており、一例として、1.8mから2m程度に設定している。
【0043】
また、打設空間PSの上下方向の長さについては、コンクリート構造体の前後方向の長さと略同一に設定しており、一例として、4m程度に設定している。
【0044】
また、実施の形態1では、打設空間PSは、
図1に示すように、残存空間RS、第1非残存空間NR1、及び第2非残存空間NR2を含んでいる。
【0045】
このうち、残存空間RSは、打設空間PSのうち、コンクリートCの打設時に空隙が残存しやすい空間であり、具体的には、
図1に示すように、打設空間PSのうち、上方側且つ第2立設体20側に位置する空間である。
【0046】
また、第1非残存空間NR1は、打設空間PSのうち、残存空間RS以外の空間(非残存空間)であり、具体的には、
図1に示すように、残存空間RSよりも下方に位置する空間である。
【0047】
また、第2非残存空間NR2は、打設空間PSのうち、残存空間RS以外の空間(非残存空間)であり、且つ第2非残存空間NR2とは異なる空間であり、具体的には、
図1に示すように、残存空間RSよりも第1立設体10側に位置する空間である。
【0048】
ここで、打設空間PSに残存空間RSが生じる可能性がある理由については、以下に示す通りとなる。
【0049】
すなわち、第1立設体10には図示しない空気孔や流入口30が設けられているものの、第2立設体20には空気孔や流入口30が設けられていない。これにより、打設空間PSにコンクリートCが打設されている際に、打設空間PS内の空気が第2立設体20を介して外部に抜けづらいため、残存空間RSに空気が溜まりやすくなるからである。
【0050】
(構成-コンクリート打設構造)
次に、コンクリート打設構造1の構成について説明する。
【0051】
コンクリート打設構造1は、打設空間PSにコンクリートCを打設するための構造であり、
図1、
図2に示すように、流入口30、埋め殺し管40、接続管50、止水部材(図示省略)、及び蓋部60を備えている。
【0052】
(構成-コンクリート打設構造-流入口)
流入口30は、当該流入口30を介してコンクリートCを外部から打設空間PSに充填することを可能にする開口であり、第1立設体10のせき板11に少なくとも1つ以上設けられる。
【0053】
具体的には、
図2に示すように、流入口30は、所定の間隔を隔てて左右方向及び上下方向に略沿って複数並設される。
【0054】
より詳細には、流入口30は、上下方向に2列配置される。また、下段列の流入口30は、設置面Sよりも2m程度上方に配置され、上段列の流入口30は、下段列よりも1m程度上方に配置される。また、下段列の流入口30は、左右方向に12m程度の間隔を隔てて並設される(
図2では、2つ並設される)。また、上段列の流入口30は、左右方向に6m程度の間隔を隔てて並設される(
図2では、5つ並設される)。
【0055】
なお、以下では、必要に応じて、複数の流入口30のうち、下段列の流入口31、32を
図2の左側から順に「下側第1流入口31」及び「下側第2流入口32」と称し、上段列の流入口33~37を
図2の左側から順に「上側第1流入口33」、「上側第2流入口34」、「上側第3流入口35」、「上側第4流入口36」、及び「上側第5流入口37」と称する。
【0056】
また、流入口30の具体的な形状及び大きさについては、流入口30を介してコンクリートCを外部から打設空間PSに充填できる限りにおいて任意であるが、実施の形態1では以下の通りに設定する。
【0057】
すなわち、流入口30の形状については、略円形状に設定する。ただし、これに限らず、略矩形状の如き多角形状、又は、略楕円形状に設定してもよい。
【0058】
また、流入口30の直径については、接続管50を挿通可能な大きさに設定し、一例として、100mmから200mm程度に設定する。
【0059】
(構成-コンクリート打設構造-埋め殺し管)
図1に戻り、埋め殺し管40は、コンクリートCに埋め殺し可能であると共に、流入口30及び当該埋め殺し管40を介してコンクリートCを外部から打設空間PSに充填することを可能にする管である。この埋め殺し管40は、長尺な管状体であり、打設空間PS内において、当該埋め殺し管40の長手方向が第1立設体10から第2立設体20に略向かうように少なくとも1つ以上設けられる。
【0060】
具体的には、
図1に示すように、埋め殺し管40は、上段列の流入口30の高さ位置と略同一の高さ位置において、相互に間隔を隔てて複数設けられ、図示しない接続部材(例えば、配筋等)によって第1立設体10又は/及び第2立設体20に対してそれぞれ接続される。
【0061】
より詳細には、
図2に示すように、各埋め殺し管40の流入口30側の端部の左右方向の位置が、上段列の流入口30のうち特定の流入口30(具体的には、上側第1流入口33、上側第3流入口35、又は上側第5流入口37)の左右方向の位置と略同一となるように、各埋め殺し管40はそれぞれ配置される。
【0062】
また、埋め殺し管40の具体的な構成については任意であるが、実施の形態1では、コンクリートCに埋め殺し可能であると共に、打設空間PSにコンクリートCが打設される際に、残存空間RSにコンクリートCを充填することが可能となるように構成される。
【0063】
具体的には、まず、埋め殺し管40のX-Z平面に沿った断面形状については、略円環状に設定する。ただし、これに限らず、例えば、略矩形環状又は略楕円環状に設定してもよい。
【0064】
また、埋め殺し管40の前後方向の長さについては、
図1に示すように、打設空間PSの前後方向の長さよりも短く設定し、且つ、埋め殺し管40の流入口30側とは反対側の端部(
図1では、埋め殺し管40の後端部)が残存空間RS又は/及びその近傍に配置可能に設定する。一例として、1500mmから1800mm程度に設定してもよい。
【0065】
また、埋め殺し管40の外径については、流入口30の直径と略同一に設定する。ただし、これに限らず、例えば、流入口30の直径未満に設定し、又は流入口30の直径を上回るように設定してもよい。
【0066】
また、埋め殺し管40の厚さについては、所望の耐圧性が得られる厚さに設定し、一例として、2mmから3mm程度に設定してもよい。
【0067】
また、埋め殺し管40の設置方法については、打設空間PSにコンクリートCが打設された後に、埋め殺し管40内に水が残存することを回避する観点から、埋め殺し管40の流入口30側とは反対側の端部が埋め殺し管40の流入口30側の端部(
図1では、埋め殺し管40の前端部)よりも下方に位置するように、傾斜して配置する。
【0068】
具体的には、第1立設体10側から第2立設体20側に至るにつれて、埋め殺し管40が下方に傾斜するように配置する。
【0069】
なお、埋め殺し管40の傾斜勾配の設定方法については任意であるが、実施の形態1では、埋め殺し管40の機能を維持しながら、埋め殺し管40内に水が残存することを回避可能な勾配に設定し、一例として、1:50程度に設定してもよい。
【0070】
また、埋め殺し管40の形成については、埋め殺し管40内に水が入ることを抑制する観点から、スパイラル管にて形成され、具体的には、鋼製のスパイラル管にて形成される。
【0071】
このような構成により、残存空間RSにコンクリートCを確実に充填でき、打設空間PSに打設されたコンクリートCに空隙が残存することを抑制できる。
【0072】
また、埋め殺し管40のその他の構成については、実施の形態1では、
図1に示すように、埋め殺し管40の流入口30側とは反対側の端面(
図1では、埋め殺し管40の後端面)は、上方に面する傾斜面にて形成される。
【0073】
具体的には、埋め殺し管40の後端面の下端が当該後端面の上端よりも後方に位置するように、埋め殺し管40の後端面が形成されている。
【0074】
これにより、残存空間RSにコンクリートCを充填しやすくなるため、打設空間PSに打設されたコンクリートCに空隙が残存することを一層抑制できる。
【0075】
ただし、これに限らず、例えば、埋め殺し管40の後端面が垂直面に形成されてもよい。
【0076】
(構成-コンクリート打設構造-接続管)
接続管50は、流入口30及び埋め殺し管40の流入口30側の端部に対して着脱自在に接続するための管である。この接続管50は、例えば長尺な鋼製の管状体にて形成されており、
図1に示すように、第1立設体10に設けられ、流入口30及び埋め殺し管40の流入口30側の端部に対して着脱自在に嵌合される。
【0077】
具体的には、接続管50は、上側第1流入口33、上側第3流入口35、及び上側第5流入口37の各々と対応する埋め殺し管40の流入口30側の端部に対して着脱自在にそれぞれ嵌合される。
【0078】
また、接続管50の具体的な構成については任意であるが、実施の形態1では、接続管50、流入口30、及び埋め殺し管40を介してコンクリートCを打設空間PSに打設可能に構成される。
【0079】
具体的には、まず、接続管50のX-Z平面に沿った断面形状については、略円環状に設定する。ただし、これに限らず、例えば、略矩形環状又は略楕円環状に設定してもよい。
【0080】
また、接続管50の前後方向の長さについては、流入口30と埋め殺し管40の流入口30側の端部との相互間の長さよりも長く設定し、一例として、300mmから400mm程度に設定してもよい。
【0081】
また、接続管50の外径については、流入口30及び埋め殺し管40の流入口30側の端部に対して嵌合可能な大きさに設定する。
【0082】
具体的には、
図1に示すように、接続管50の外径を、第1立設体10側から第2立設体20側に至るにつれて小さくなるように設定する(つまり、接続管50がテーパ状に構成される)。また、接続管50の埋め殺し管40側の端部(
図1では、接続管50の後端部)の外径を、埋め殺し管40の流入口30側の端部の内径よりも小さく設定する。また、接続管50の埋め殺し管40側とは反対側の端部(
図1では、接続管50の前端部)の外径を、流入口30の直径よりも大きく設定する。
【0083】
また、接続管50の厚さについては、所望の耐圧性が得られる厚さに設定し、一例として、1mmから2mm程度に設定してもよい。
【0084】
このような構成により、打設空間PSにコンクリートCが打設される途中で(又は当該打設後に)、接続管50を流入口30及び埋め殺し管40の流入口30側の端部から取り外して、埋め殺し管40を外部に露出しないように埋め殺しでき、当該打設によって構成されるコンクリート構造体の意匠性を確保できる。
【0085】
(構成-コンクリート打設構造-止水部材)
止水部材は、埋め殺し管40内に水が浸入することを防止するための部材であり、各埋め殺し管40にそれぞれ設けられる。
【0086】
また、止水部材の具体的な構成については任意であるが、例えば、公知のスパンシール又は/及び公知の止水ゴムを用いて構成されてもよい。
【0087】
ここで、例えば、止水部材がスパンシールで構成される場合には、埋め殺し管40の外部に設けられてもよい。また、止水部材が止水ゴムで構成される場合には、埋め殺し管40の内部において、流入口30側の端部近傍又は/及び流入口30側とは反対側の端部近傍に設けられてもよい。
【0088】
このような止水部材により、埋め殺し管40内に水が入ることを抑制でき、コンクリートCの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0089】
(構成-コンクリート打設構造-蓋部)
蓋部60は、流入口30を開閉自在とするものである。この蓋部60は、例えば公知の蓋部材(一例として、鋼製の蓋部材)を用いて構成されており、
図2に示すように、第1立設体10において各流入口30を覆うようにそれぞれ設けられ、第1立設体10に対して固定具等によって着脱自在(又は回動自在)に接続される(
図2では、一部図示省略)。
【0090】
このような蓋部60により、流入口30からコンクリートCが漏れ出すことを回避でき、打設空間PSへのコンクリートCの打設を正確に行うことができる。
【0091】
以上のようなコンクリート打設構造1により、従来技術(コンクリートが流入口のみを介して打設空間に充填する技術)に比べて、打設空間PSにコンクリートCが打設された後に、当該コンクリートCに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【0092】
(コンクリート打設方法)
次に、上述のコンクリート打設構造1を用いられるコンクリート打設方法について説明する。
【0093】
コンクリート打設方法は、打設空間PSにコンクリートCを打設するための方法であり、準備工程、第1非残存空間充填工程、残存空間充填工程、及び第2非残存空間充填工程を含んでいる。
【0094】
なお、上記コンクリート打設方法の前提として、第1立設体10及び第2立設体20が設置面Sに既に設けられているものとして説明する。
【0095】
(コンクリート打設方法-準備工程)
最初に、準備工程について説明する。
【0096】
準備工程は、打設空間PSにコンクリートCを打設するための準備を行うための工程である。
【0097】
具体的には、
図3に示すように、流入口30を、第1立設体10のせき板11に複数設けると共に、各流入口30を覆うように蓋部60をそれぞれ設ける。また、埋め殺し管40を、打設空間PSに複数設ける。また、接続管50を、対応する流入口30及び対応する埋め殺し管40の流入口30側の端部に対してそれぞれ接続(嵌合)する。また、止水部材を、各埋め殺し管40の内部又は/及び外部に設ける。また、各流入口30に設けられる各蓋部60の開閉状態を、開放状態とする。
【0098】
(コンクリート打設方法-第1非残存空間充填工程)
次に、第1非残存空間充填工程について説明する。
【0099】
第1非残存空間充填工程は、準備工程の後に、流入口30又は/及び埋め殺し管40を介して、第1非残存空間NR1にコンクリートCを充填する非残存空間充填工程である。
【0100】
具体的には、
図4に示すように、公知のコンクリートポンプ(図示省略)から送られるコンクリートCを、下側第1流入口31、下側第2流入口32、上側第2流入口34、又は/及び上側第4流入口36の各々を介して第1非残存空間NR1に流し込むことにより、充填する。また、上記コンクリートCを、上側第1流入口33、上側第3流入口35、又は/及び上側第5流入口37の各々、対応する接続管50、及び対応する埋め殺し管40を介して第1非残存空間NR1に流し込むことにより、充填する。また、第1非残存空間NR1への充填後又は当該充填の途中で、下側第1流入口31及び下側第2流入口32の各々に対応する蓋部60の開閉状態を、閉鎖状態にする。
【0101】
ただし、これに限らず、例えば、上記コンクリートCを、流入口30のみを介して第1非残存空間NR1に流し込むことにより、充填してもよく、あるいは、流入口30、接続管50、及び埋め殺し管40のみを介して第1非残存空間NR1に流し込むことにより、充填してもよい。
【0102】
(コンクリート打設方法-残存空間充填工程)
図1に戻り、次いで、残存空間充填工程について説明する。
【0103】
残存空間充填工程は、第2非残存空間充填工程の後に、流入口30と埋め殺し管40とを介して、残存空間RSにコンクリートCを充填する工程であり、実施の形態1では、第2非残存空間充填工程よりも前に完了させる。
【0104】
具体的には、
図1に示すように、公知のコンクリートポンプから送られるコンクリートCを、上側第1流入口33、上側第3流入口35、及び上側第5流入口37の各々、対応する接続管50、及び対応する埋め殺し管40を介して残存空間RSに流し込むことにより、充填する。その後、すべての接続管50を撤去する。
【0105】
(コンクリート打設方法-第2非残存空間充填工程)
続いて、第2非残存空間充填工程について説明する。
【0106】
第2非残存空間充填工程は、残存空間充填工程の後に、流入口30又は/及び埋め殺し管40を介して、第2非残存空間NR2にコンクリートCを充填する非残存空間充填工程である。
【0107】
具体的には、
図5に示すように、公知のコンクリートポンプから送られるコンクリートCを、上側第1流入口33、上側第2流入口34、上側第3流入口35、上側第4流入口36、又は/及び上側第5流入口37の各々を介して第2非残存空間NR2に流し込むことにより、充填する。そして、
図6に示すように、打設空間PS全体に上記コンクリートCが充填されると、上側第1流入口33、上側第2流入口34、上側第3流入口35、上側第4流入口36、及び上側第5流入口37の各々に対応する蓋部60の開閉状態を、閉鎖状態にする。これにて、コンクリート打設方法を終了する。
【0108】
ただし、これに限らず、例えば、残存空間充填工程において、接続管50を撤去しない場合には、上側第1流入口33、上側第3流入口35、及び上側第5流入口37の各々、対応する接続管50、及び対応する埋め殺し管40を介して第2非残存空間NR2に流し込むことにより、充填し、その後すべての接続管50を撤去してもよい。
【0109】
以上のようなコンクリート打設方法により、残存空間RSにコンクリートCを確実に充填でき、打設空間PSに打設されたコンクリートCに空隙が残存することを抑制できる。よって、従来技術(コンクリートが流入口のみを介して打設空間に充填する技術)に比べて、打設空間PSにコンクリートCが打設された後に、当該コンクリートCに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【0110】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、一対の立設体のいずれか一方において、少なくとも1つ以上設けられる流入口30と、打設空間PS内に少なくとも1つ以上設けられる埋め殺し管40と、を備え、打設空間PSにコンクリートCが打設される際に、残存空間RSにコンクリートCを充填することが可能となるように、埋め殺し管40を構成したので、残存空間RSにコンクリートCを確実に充填でき、打設空間PSに打設されたコンクリートCに空隙が残存することを抑制できる。よって、従来技術(コンクリートが流入口のみを介して打設空間に充填する技術)に比べて、打設空間PSにコンクリートCが打設された後に、当該コンクリートCに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【0111】
また、流入口30及び埋め殺し管40の流入口30側の端部に対して着脱自在に接続するための接続管50であって、当該接続管50、流入口30、及び埋め殺し管40を介してコンクリートCを打設空間PSに打設可能とする接続管50を備えるので、打設空間PSにコンクリートCが打設される途中で(又は当該打設後に)、接続管50を流入口30及び埋め殺し管40の流入口30側の端部から取り外して、埋め殺し管40を外部に露出しないように埋め殺しでき、当該打設によって構成されるコンクリート構造体の意匠性を確保できる。
【0112】
また、埋め殺し管40の流入口30側とは反対側の端部が埋め殺し管40の流入口30側の端部よりも下方に位置するように、埋め殺し管40を傾斜して配置したので、打設空間PSにコンクリートCが打設された後に、埋め殺し管40内に水が残存することを回避でき、コンクリートCの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0113】
また、埋め殺し管40は、スパイラル管であるので、埋め殺し管40内に水が入ることを抑制でき、コンクリートCの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0114】
また、埋め殺し管40に設けられる止水部材であり、埋め殺し管40内に水が浸入することを防止するための止水部材を備えるので、埋め殺し管40内に水が入ることを抑制でき、コンクリートCの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0115】
また、流入口30を開閉自在とする蓋部60を備えるので、流入口30からコンクリートCが漏れ出すことを回避でき、打設空間PSへのコンクリートCの打設を正確に行うことができる。
【0116】
また、一対の立設体の少なくともいずれか一方に設けられる流入口30と、打設空間PS内に設けられる埋め殺し管40とを介して、残存空間RSにコンクリートCを充填する残存空間充填工程と、流入口30又は/及び埋め殺し管40を介して、非残存空間にコンクリートCを充填する非残存空間充填工程と、を含み、残存空間充填工程を、非残存空間充填工程よりも前に完了させるので、残存空間RSにコンクリートCを確実に充填でき、打設空間PSに打設されたコンクリートCに空隙が残存することを抑制できる。よって、従来技術(コンクリートが流入口のみを介して打設空間に充填する技術)に比べて、打設空間PSにコンクリートCが打設された後に、当該コンクリートCに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【0117】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2に係るコンクリート打設構造、及びコンクリート打設方法について説明する。この実施の形態2は、一対の立設体の両方からコンクリートを打設する形態である。ただし、この実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0118】
(構成)
最初に、実施の形態2に係るコンクリート打設構造100の構成と、コンクリート打設構造100が適用される第1立設体110及び第2立設体120の構成とについて説明する。
【0119】
(構成-第1立設体)
まず、第1立設体110の構成について説明する。
【0120】
実施の形態2に係る第1立設体110は、実施の形態1に係る第1立設体10の構成と略同一に構成されており、
図7に示すように、先行躯体PBと設置面Sとの相互間に設けられる。
【0121】
(構成-第2立設体)
次に、第2立設体120の構成について説明する。
【0122】
実施の形態2に係る第2立設体120は、第1立設体110の構成と略同一に構成されており、
図7に示すように、先行躯体PBと設置面Sとの相互間において、第1立設体110よりも構造物の外側の位置に、第1立設体110と打設空間PSを隔てて設置面Sに立設されている。
【0123】
(構成-打設空間)
ここで、打設空間PSは、実施の形態1に係る打設空間PSと略同一に構成されており、
図7に示すように、第1立設体110と第2立設体120との相互間に位置するように設けられている。
【0124】
ただし、打設空間PSの前後方向の長さについては、
図7に示すように、実施の形態1に係る打設空間PSの前後方向の長さよりも長く設定している。
【0125】
また、実施の形態2では、打設空間PSは、
図7に示すように、残存空間RS、第1非残存空間NR1、及び第2非残存空間NR2を含んでいる。
【0126】
このうち、残存空間RSは、実施の形態2では、
図7に示すように、打設空間PSのうち、上方側且つ前後方向の中央側に位置する空間である。
【0127】
また、第1非残存空間NR1は、実施の形態2では、
図7に示すように、残存空間RSよりも下方に位置する空間である。
【0128】
また、第2非残存空間NR2は、実施の形態2では、
図7に示すように、残存空間RSよりも第1立設体110側に位置する空間及び第2立設体120側に位置する空間である。
【0129】
(構成-コンクリート打設構造)
次に、コンクリート打設構造100の構成について説明する。
【0130】
コンクリート打設構造100は、
図7に示すように、流入口30、埋め殺し管40、接続管50、止水部材(図示省略)、及び蓋部(図示省略)を備えている。
【0131】
(構成-コンクリート打設構造-流入口)
流入口30は、第1立設体110及び第2立設体120の各々のせき板11に少なくとも1つ以上設けられる。
【0132】
具体的には、実施の形態1に係る流入口30と同様に、所定の間隔を隔てて左右方向及び上下方向に略沿って複数並設される。すなわち、第1立設体110及び第2立設体120の各々のせき板11には、下側第1流入口31、下側第2流入口32、上側第1流入口33、上側第2流入口34、上側第3流入口35、上側第4流入口36、及び上側第5流入口37がそれぞれ設けられる。
【0133】
(構成-コンクリート打設構造-埋め殺し管)
埋め殺し管40は、打設空間PS内において、当該埋め殺し管40の長手方向が第1立設体110及び第2立設体120の各々から当該打設空間PSの中央に略向かうように、複数設けられる。
【0134】
具体的には、
図7に示すように、第1立設体110側の埋め殺し管40は、第1立設体110に設けられる上段列の流入口30(具体的には、上側第1流入口33、上側第3流入口35、及び上側第5流入口37)の高さ位置と略同一の高さ位置において、相互に間隔を隔てて複数設けられ、図示しない接続部材によって第1立設体110に対してそれぞれ接続される。また、第2立設体120側の埋め殺し管40は、第2立設体120に設けられる上段列の流入口30(具体的には、上側第1流入口33、上側第3流入口35、及び上側第5流入口37)の高さ位置と略同一の高さ位置において、相互に間隔を隔てて複数設けられ、図示しない接続部材によって第2立設体120に対してそれぞれ接続される。
【0135】
また、埋め殺し管40の具体的な構成については任意であるが、実施の形態2では、コンクリートCに埋め殺し可能であると共に、打設空間PSにコンクリートCが打設される際に、残存空間RSにコンクリートCを充填することが可能となるように構成される。
【0136】
具体的には、埋め殺し管40のX-Z平面に沿った断面形状、外径、厚さ、設置方法、及び形成については、実施の形態1と略同一にそれぞれ設定している。
【0137】
また、埋め殺し管40の前後方向の長さについては、
図7に示すように、打設空間PSの前後方向の長さの半分程度に設定し、且つ、埋め殺し管40の流入口30側とは反対側の端部(
図7では、埋め殺し管40の後端部)が残存空間RS又は/及びその近傍に配置可能に設定する。
【0138】
これにより、残存空間RSにコンクリートCを充填しやすくなるため、打設空間PSに打設されたコンクリートCに空隙が残存することを一層抑制できる。
【0139】
(構成-コンクリート打設構造-接続管)
接続管50は、実施の形態1に係る接続管50と略同一に構成されており、
図7に示すように、第1立設体110及び第2立設体120の各々に設けられ、流入口30及び埋め殺し管40の流入口30側の端部に対して着脱自在に嵌合される。
【0140】
具体的には、第1立設体110側の接続管50は、第1立設体110に設けられる上側第1流入口33、上側第3流入口35、及び上側第5流入口37の各々と対応する埋め殺し管40の流入口30側の端部に対して着脱自在にそれぞれ嵌合される。また、第2立設体120側の接続管50は、第2立設体120に設けられる上側第1流入口33、上側第3流入口35、及び上側第5流入口37の各々と対応する埋め殺し管40の流入口30側の端部に対して着脱自在にそれぞれ嵌合される。
【0141】
(構成-コンクリート打設構造-止水部材)
止水部材は、実施の形態1に係る止水部材と略同一に構成されており、各埋め殺し管40にそれぞれ設けられる。
【0142】
(構成-コンクリート打設構造-蓋部)
蓋部は、実施の形態1に係る蓋部60と略同一に構成されており、第1立設体110及び第2立設体120の各々において各流入口30を覆うようにそれぞれ設けられ、第1立設体110又は第2立設体120に対して固定具等によって回動自在にそれぞれ接続されている。
【0143】
以上のようなコンクリート打設構造100により、実施の形態1に係るコンクリート打設構造1と同様に、打設空間PSにコンクリートCが打設された後に、当該コンクリートCに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【0144】
(コンクリート打設方法)
次に、上述のコンクリート打設構造100が用いられるコンクリート打設方法について説明する。
【0145】
コンクリート打設方法は、準備工程、第1非残存空間充填工程、残存空間充填工程、及び第2非残存空間充填工程を含んでいる。
【0146】
なお、上記コンクリート打設方法の前提として、第1立設体110及び第2立設体120が設置面Sに設けられているものとして説明する。
【0147】
(コンクリート打設方法-準備工程)
最初に、準備工程について説明する。
【0148】
準備工程においては、具体的には、
図8に示すように、流入口30を、第1立設体110及び第2立設体120のせき板11に複数設けると共に、各流入口30を覆うように蓋部をそれぞれ設ける。また、埋め殺し管40を、打設空間PSに複数設ける。また、接続管50を、対応する流入口30及び対応する埋め殺し管40の流入口30側の端部に対してそれぞれ接続(嵌合)する。また、止水部材を、各埋め殺し管40の内部又は/及び外部に設ける。また、各流入口30に設けられる各蓋部60の開閉状態を、開放状態とする。
【0149】
(コンクリート打設方法-第1非残存空間充填工程)
次に、第1非残存空間充填工程について説明する。
【0150】
第1非残存空間充填工程においては、具体的には、
図9に示すように、公知のコンクリートポンプ(図示省略)から送られるコンクリートCを、第1立設体110及び第2立設体120の各々に設けられた下側第1流入口31、下側第2流入口32、上側第2流入口34、又は/及び上側第4流入口36の各々を介して第1非残存空間NR1に流し込むことにより、充填する。また、上記コンクリートCを、第1立設体110及び第2立設体120の各々に設けられた上側第1流入口33、上側第3流入口35、又は/及び上側第5流入口37の各々、対応する接続管50、及び対応する埋め殺し管40を介して第1非残存空間NR1に流し込むことにより、充填する。また、第1非残存空間NR1への充填後又は当該充填の途中で、第1立設体110及び第2立設体120の各々に設けられた下側第1流入口31及び下側第2流入口32の各々に対応する蓋部60の開閉状態を、閉鎖状態にする。
【0151】
(コンクリート打設方法-残存空間充填工程)
図7に戻り、次いで、残存空間充填工程について説明する。
【0152】
残存空間充填工程においては、具体的には、
図7に示すように、公知のコンクリートポンプから送られるコンクリートCを、第1立設体110及び第2立設体120の各々に設けられた上側第1流入口33、上側第3流入口35、及び上側第5流入口37の各々、対応する接続管50、及び対応する埋め殺し管40を介して残存空間RSに流し込むことにより、充填する。その後、すべての接続管50を撤去する。
【0153】
(コンクリート打設方法-第2非残存空間充填工程)
続いて、第2非残存空間充填工程について説明する。
【0154】
第2非残存空間充填工程においては、具体的には、
図10に示すように、公知のコンクリートポンプから送られるコンクリートCを、第1立設体110及び第2立設体120の各々に設けられた上側第1流入口33、上側第2流入口34、上側第3流入口35、上側第4流入口36、又は/及び上側第5流入口37の各々を介して第2非残存空間NR2に流し込むことにより、充填する。そして、
図11に示すように、打設空間PS全体に上記コンクリートCが充填されると、第1立設体110及び第2立設体120の各々に設けられた上側第1流入口33、上側第2流入口34、上側第3流入口35、上側第4流入口36、及び上側第5流入口37の各々に対応する蓋部の開閉状態を、閉鎖状態にする。これにて、コンクリート打設方法を終了する。
【0155】
以上のようなコンクリート打設方法により、実施の形態1に係るコンクリート打設方法と同様に、打設空間PSにコンクリートCが打設された後に、当該コンクリートCに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【0156】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、一対の立設体の各々において、少なくとも1つ以上設けられる流入口30と、打設空間PS内に少なくとも1つ以上設けられる埋め殺し管40と、を備え、打設空間PSにコンクリートCが打設される際に、残存空間RSにコンクリートCを充填することが可能となるように、埋め殺し管40を構成したので、残存空間RSにコンクリートCを確実に充填でき、打設空間PSに打設されたコンクリートCに空隙が残存することを抑制できる。よって、実施の形態1に係るコンクリート打設構造1と同様に、打設空間PSにコンクリートCが打設された後に、当該コンクリートCに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【0157】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0158】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0159】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0160】
(第1立設体、第2立設体について)
上記実施の形態1、2では、第1立設体110及び第2立設体120が、先行躯体PBと設置面Sとの相互間に設けられていると説明したが、これに限らない。例えば、設置面Sの上方に先行躯体PBが位置しない場所で、設置面S上に設けられてもよい。
【0161】
(コンクリート打設構造について)
上記実施の形態1、2では、コンクリート打設構造が、接続管50を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、上側第1流入口33と対応する埋め殺し管40との相互間の距離が非常に短いために、接続管50を用いることなく、上側第1流入口33及び上記対応する埋め殺し管40を介してコンクリートCを打設空間PSに充填できる場合には、接続管50を省略してもよい。
【0162】
また、上記実施の形態1、2では、コンクリート打設構造が、止水部材を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、止水部材を省略してもよい。
【0163】
また、上記実施の形態1、2では、コンクリート打設構造が、蓋部を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、打設空間PSに打設されたコンクリートCが流入口30から漏れ出さない場合には、蓋部を省略してもよい。
【0164】
(流入口について)
上記実施の形態1では、流入口30の設置数が7つであると説明したが、これに限らず、例えば、7つ未満であってもよく、あるいは、8つ以上であってもよい(なお、実施の形態2に係る流入口30についても、略同様とする)。
【0165】
(埋め殺し管について)
上記実施の形態1、2では、埋め殺し管40が傾斜して配置されると説明したが、これに限らない。例えば、埋め殺し管40が水平に配置されてもよく、一例として、埋め殺し管40の長手方向が前後方向に略沿うように配置されてもよい。
【0166】
また、上記実施の形態1では、埋め殺し管40が、上段列の流入口30の高さ位置と略同一の高さ位置に設けられると説明したが、これに限らない。例えば、下段列の流入口30の高さ位置と略同一の高さ位置に設けられてもよい。あるいは、上段列及び下段列の各々の流入口30の高さ位置と略同一の高さ位置に設けられてもよい(なお、実施の形態2に係る埋め殺し管40についても、略同様とする)。
【0167】
また、上記実施の形態1では、埋め殺し管40の設置数が3つであると説明したが、これに限らず、例えば、4つ以上であってもよく、あるいは、2つ以上であってもよい(なお、実施の形態2に係る埋め殺し管40についても、略同様とする)。
【0168】
また、上記実施の形態1、2では、埋め殺し管40が、スパイラル管であると説明したが、これに限らず、例えば、スパイラル管以外の管(一例として、シームレス管)等であってもよい。
【0169】
(コンクリート打設方法について)
上記実施の形態1は、コンクリート打設方法が、準備工程を含むと説明したが、これに限らない。例えば、コンクリート打設方法が実施される前に、流入口30、埋め殺し管40、接続管50、止水部材、及び蓋部60が所定位置に既に設けられている場合には、準備工程を省略してもよい(なお、実施の形態2に係るコンクリート打設方法についても、略同様とする)。
【0170】
また、上記実施の形態1、2では、コンクリート打設方法が、第1非残存空間充填工程を含むと説明したが、これに限らない。例えば、打設空間PSの上下方向の長さが比較的短い場合には、第1非残存空間充填工程を省略してもよい。この場合には、残存空間充填工程又は/及び第2非残存空間充填工程において、公知のコンクリートポンプから送られるコンクリートCを、流入口30、接続管50、又は/及び埋め殺し管40を介して第1非残存空間NR1に流し込むことにより、充填してもよい。
【0171】
(付記)
付記1のコンクリート打設構造は、一対の立設体の相互間に位置する打設空間にコンクリートを打設するためのコンクリート打設構造であって、前記一対の立設体の少なくともいずれか一方において、少なくとも1つ以上設けられる流入口であり、前記流入口を介して前記コンクリートを外部から前記打設空間に充填することを可能にする流入口と、前記打設空間内に少なくとも1つ以上設けられる埋め殺し管であり、前記コンクリートに埋め殺し可能であると共に、前記流入口及び当該埋め殺し管を介して前記コンクリートを外部から前記打設空間に充填することを可能にする埋め殺し管と、を備え、前記打設空間に前記コンクリートが打設される際に、前記打設空間のうち、前記コンクリートの打設時に空隙が残存しやすい空間である残存空間に前記コンクリートを充填することが可能となるように、前記埋め殺し管を構成した。
【0172】
付記2のコンクリート打設構造は、付記1に記載のコンクリート打設構造において、前記流入口及び前記埋め殺し管の前記流入口側の端部に対して着脱自在に接続するための接続管であって、当該接続管、前記流入口、及び前記埋め殺し管を介して前記コンクリートを前記打設空間に打設可能とする接続管を備える。
【0173】
付記3のコンクリート打設構造は、付記1又は2に記載のコンクリート打設構造において、前記埋め殺し管の前記流入口側とは反対側の端部が前記埋め殺し管の前記流入口側の端部よりも下方に位置するように、前記埋め殺し管を傾斜して配置した。
【0174】
付記4のコンクリート打設構造は、付記1又は2に記載のコンクリート打設構造において、前記埋め殺し管は、スパイラル管である。
【0175】
付記5のコンクリート打設構造は、付記1又は2に記載のコンクリート打設構造において、前記埋め殺し管に設けられる止水部材であり、前記埋め殺し管内に水が浸入することを防止するための止水部材を備える。
【0176】
付記6のコンクリート打設構造は、付記1又は2に記載のコンクリート打設構造において、前記流入口を開閉自在とする蓋部を備える。
【0177】
付記7のコンクリート打設方法は、一対の立設体の相互間に位置する打設空間にコンクリートを打設するためのコンクリート打設方法であって、前記一対の立設体の少なくともいずれか一方に設けられる流入口と、前記打設空間内に設けられる埋め殺し管であって、前記コンクリートに埋め殺し可能である埋め殺し管とを介して、前記打設空間のうち、前記コンクリートの打設時に空隙が残存しやすい空間である残存空間に前記コンクリートを充填する残存空間充填工程と、前記流入口又は/及び前記埋め殺し管を介して、前記打設空間のうち、前記残存空間以外の空間である非残存空間に前記コンクリートを充填する非残存空間充填工程と、を含み、前記残存空間充填工程を、前記非残存空間充填工程よりも前に完了させる。
【0178】
(付記の効果)
付記1に記載のコンクリート打設構造によれば、一対の立設体の少なくともいずれか一方において、少なくとも1つ以上設けられる流入口と、打設空間内に少なくとも1つ以上設けられる埋め殺し管と、を備え、打設空間にコンクリートが打設される際に、残存空間にコンクリートを充填することが可能となるように、埋め殺し管を構成したので、残存空間にコンクリートを確実に充填でき、打設空間に打設されたコンクリートに空隙が残存することを抑制できる。よって、従来技術(コンクリートが流入口のみを介して打設空間に充填する技術)に比べて、打設空間にコンクリートが打設された後に、当該コンクリートに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【0179】
付記2に記載のコンクリート打設構造によれば、流入口及び埋め殺し管の流入口側の端部に対して着脱自在に接続するための接続管であって、当該接続管、流入口、及び埋め殺し管を介してコンクリートを打設空間に打設可能とする接続管を備えるので、打設空間にコンクリートが打設される途中で(又は当該打設後に)、接続管を流入口及び埋め殺し管の流入口側の端部から取り外して、埋め殺し管を外部に露出しないように埋め殺しでき、当該打設によって構成されるコンクリート構造体の意匠性を確保できる。
【0180】
付記3に記載のコンクリート打設構造によれば、埋め殺し管の流入口側とは反対側の端部が埋め殺し管の流入口側の端部よりも下方に位置するように、埋め殺し管を傾斜して配置したので、打設空間にコンクリートが打設された後に、埋め殺し管内に水が残存することを回避でき、コンクリートの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0181】
付記4に記載のコンクリート打設構造によれば、埋め殺し管は、スパイラル管であるので、埋め殺し管内に水が入ることを抑制でき、コンクリートの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0182】
付記5に記載のコンクリート打設構造によれば、埋め殺し管に設けられる止水部材であり、埋め殺し管内に水が浸入することを防止するための止水部材を備えるので、埋め殺し管内に水が入ることを抑制でき、コンクリートの打設によって構成されるコンクリート構造体の品質を確保しやすくなる。
【0183】
付記6に記載のコンクリート打設構造によれば、流入口を開閉自在とする蓋部を備えるので、流入口からコンクリートが漏れ出すことを回避でき、打設空間へのコンクリートの打設を正確に行うことができる。
【0184】
付記7に記載のコンクリート打設方法によれば、一対の立設体の少なくともいずれか一方に設けられる流入口と、打設空間内に設けられる埋め殺し管とを介して、残存空間にコンクリートを充填する残存空間充填工程と、流入口又は/及び埋め殺し管を介して、非残存空間にコンクリートを充填する非残存空間充填工程と、を含み、残存空間充填工程を、非残存空間充填工程よりも前に完了させるので、残存空間にコンクリートを確実に充填でき、打設空間に打設されたコンクリートに空隙が残存することを抑制できる。よって、従来技術(コンクリートが流入口のみを介して打設空間に充填する技術)に比べて、打設空間にコンクリートが打設された後に、当該コンクリートに残存する空隙を除去する処置を講じることを回避でき、作業コストを低減することが可能になる。
【符号の説明】
【0185】
1 コンクリート打設構造
10 第1立設体
11 せき板
12 支保工
13 締結具
20 第2立設体
30 流入口
31 下側第1流入口
32 下側第2流入口
33 上側第1流入口
34 上側第2流入口
35 上側第3流入口
36 上側第4流入口
37 上側第5流入口
40 埋め殺し管
50 接続管
60 蓋部
100 コンクリート打設構造
110 第1立設体
120 第2立設体
C コンクリート
NR1 第1非残存空間
NR2 第2非残存空間
PB 先行躯体
PS 打設空間
RS 残存空間
S 設置面