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  • 特開-地下構造物の浮上防止方法 図1
  • 特開-地下構造物の浮上防止方法 図2
  • 特開-地下構造物の浮上防止方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152087
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】地下構造物の浮上防止方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/00 20060101AFI20241018BHJP
   E03B 3/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E02D29/00
E03B3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066033
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】591084654
【氏名又は名称】エバタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】豊田 達也
(72)【発明者】
【氏名】北原 智子
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AB01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、雨水貯留槽等の地下構造物の浮き上がりを効果的に防止する。
【解決手段】地面を掘削した空間内に地下構造物1を設置し、地下構造物の周囲を埋め戻し、地下構造物の上面1bに当接すると共に、上面の周囲に水平方向に張り出すようにシート部材5を敷設し、シート部材の上に土砂を被せて掘削した空間を埋め戻す地下構造物の浮上防止方法。地下構造物を覆うと共に、地下構造物の底部の周囲に水平方向に張り出すようにシート部材6、8を敷設し、張り出し部に埋め戻す土砂よりも比重の大きい材料からなる部材を配置してもよく、埋め戻す土砂よりも比重の大きい材料を砕石7、9とすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を掘削した空間内に地下構造物を設置し、
該地下構造物の周囲を埋め戻し、
該地下構造物の上面に当接すると共に、該上面の周囲に水平方向に張り出すようにシート部材を敷設し、
該シート部材の上に土砂を被せて前記掘削した空間を埋め戻すことを特徴とする地下構造物の浮上防止方法。
【請求項2】
さらに、前記地下構造物を覆うと共に、該地下構造物の底部の周囲に水平方向に張り出すようにシート部材を敷設し、該張り出し部に埋め戻す土砂よりも比重の大きい材料からなる部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の地下構造物の浮上防止方法。
【請求項3】
前記埋め戻す土砂よりも比重の大きい材料は、砕石であることを特徴とする請求項2に記載の地下構造物の浮上防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水貯留槽等の地下構造物に生ずる浮力によって地下構造物が浮き上がることを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水を地下に貯留して地表に水が溢れるのを防止し、貯留した雨水を徐々に放流することで、大雨等の際に雨水が集中して下水道や河川へ流れ込むことを抑制することなどを目的として雨水貯留槽が用いられている。この雨水貯留槽は、一般的には樹脂材料からなり貯水空間を形成する部材を多段に積み上げ、その周囲を遮水シートで覆って形成する。
【0003】
周囲を遮水シートで覆った雨水貯留槽は、雨水が貯留槽内に存在しないと、地下水位の上昇に伴い雨水貯留槽に浮力が発生する。浮力が発生すると、雨水貯留槽の姿勢が不安定となり、最悪の場合には部材の組み合わせ部が外れ、槽が崩壊することになりかねない。
【0004】
そこで、地中に埋設された雨水貯留槽を浮力抑制シートで覆うと共に、この浮力抑制シートを雨水貯留槽の底部近傍で雨水貯留槽の両側方に張り出させることで、張り出し部でも土圧を受けるようにした浮上防止方法が提案されている(特許文献1参照)。また、この文献には、張り出し部に、埋め戻す土砂よりも比重の大きい材料(例えば、コンクリート製の平板部材)を配置することも記載されている。
【0005】
一方、特許文献2には、掘削溝に軽量管を敷設した後、その上部に、全長に亘って或は部分的にシート材を被せ、このシート材を掘削溝の下面に敷き延ばした後、シート材の側縁を掘削溝の壁面に沿って立ち上がらせ、この上部に土砂を投入する軽量管の浮上防止工法が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、地面に掘削した管埋設用の溝に大径管を埋設するに際し、管の上部と上部側方の埋戻上の重量を管に伝達作用させる屈曲自在な荷重担持シートを埋入することにより、大径管の浮上を防止する工法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-132740号公報
【特許文献2】特開昭55-155832号公報
【特許文献3】特開昭52-146913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1~3に記載の従来技術は、地下構造物等の浮力防止に寄与するが、特許文献1に記載の浮上防止方法は、浮力抑制シートの敷設やコンクリート製平板部材の配置に多くの工数を要するという問題がある。また、特許文献2、3に記載の工法は、管の浮上には効果的であっても、樹脂材料を組み合わせて構成した雨水貯留槽に適用した場合、樹脂材料の組み合わせ部の外れを適切に防止することができないおそれもある。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で、雨水貯留槽等の地下構造物の浮き上がりを効果的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、地下構造物の浮上防止方法であって、地面を掘削した空間内に地下構造物を設置し、該地下構造物の周囲を埋め戻し、該地下構造物の上面に当接すると共に、該上面の周囲に水平方向に張り出すようにシート部材を敷設し、該シート部材の上に土砂を被せて前記掘削した空間を埋め戻すことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、シート部材を地下構造物の上面に当接させ、上面の周囲に水平方向に張り出すように敷設するだけであるため、構成が簡易で工数を削減することができる。また、シート部材が地下構造物の上面に当接するため、地下構造物が樹脂材料を組み合わせて構成した雨水貯留槽等の場合でも、樹脂材料の組み合わせ部の外れを適切に防止することができる。さらに、シート部材を地下構造物の上面の周囲に水平方向に張り出すように敷設したため、地下構造物の上面の土被りによる浮上抑止力に加え、シート部材の張り出し部分における埋戻土による摩擦力(引き抜き力)によって地下構造物の浮上を防止することができる。ここで、必要な埋戻土による摩擦力に基づいてシート部材の張り出し量を計算にて求めることができる。
【0012】
上記地下構造物の浮上防止方法において、さらに、前記地下構造物を覆うと共に、該地下構造物の底部の周囲に水平方向に張り出すようにシート部材を敷設し、該張り出し部に埋め戻す土砂よりも比重の大きい材料からなる部材を配置することができる。これにより、より確実に地下構造物の浮き上がりを防止することができる。
【0013】
上記方法において、前記埋め戻す土砂よりも比重の大きい材料を砕石とすることができ、特別な材料等を使用しなくても入手容易な材料で賄うことができる。また、砕石を用いることで、砕石部分の浸透量を付加することもできて効率的である。砕石の量は、必要な抑止力から計算で求めることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成で、雨水貯留槽等の地下構造物の浮き上がりを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る地下構造物の浮上防止方法の一実施の形態を説明するための概略図であって、(a)は断面図、(b)は部分斜視図である。
図2図1に示した浮上防止方法に追加的に実施可能な浮上防止方法の一例を示す概略斜視図である。
図3図1に示した浮上防止方法に追加的に実施可能な浮上防止方法の他の例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、地面を掘削した空間内に基礎砕石2を敷設し、その上に敷砂3を配置し、遮水シート1aで覆った地下構造物としての雨水貯留槽1を設置する。雨水貯留槽1の周囲を埋め戻した後、シート部材5を雨水貯留槽1の上面1bに当接させると共に、上面1bの周囲に水平方向に張り出すように敷設する。シート部材5には、ジオテキスタイル(土木シート)等を用いることができる。ジオテキスタイルは、不織布よりも伸びが少なく、強度が高いため確実に雨水貯留槽1に浮上抑止力を与えることができて好ましい。
【0018】
次に、シート部材5の上に土砂を被せて掘削した空間を埋め戻すことで、浮上抑止を行った上で雨水貯留槽1の埋設作業が完了する。このように、本実施の形態では、通常の雨水貯留槽1の埋設作業に加え、シート部材5を雨水貯留槽1の上面1bに当接させ、上面1bの周囲に水平方向に張り出すように敷設するだけであるため、少ない工数で簡単に浮上防止を行うことができる。
【0019】
また、シート部材5が雨水貯留槽1の上面1bに直接当接しているため、樹脂材料を組み合わせて構成した雨水貯留槽1でも、樹脂材料の組み合わせ部の外れを適切に防止することができ、部材の組み合わせ部が外れて雨水貯留槽1が崩壊するなどの事故を確実に防止することができる。
【0020】
シート部材5の張り出し部分における埋戻土による摩擦力(引き抜き力)F2は、雨水貯留槽1の上面1bの土被りによる浮上抑止力F1を補うものであり、この埋戻土による摩擦力(補うべき抑止力)F2は、雨水貯留槽1に加わる浮力、及び雨水貯留槽1の上面1bの土被りによる浮上抑止力F1に基づいて算出され、さらに、算出された補うべき抑止力F2に戻づいてシート部材5の張り出し量を計算で求めることができるため、雨水貯留槽1の浮上抑止を確実に行うことができる。
【0021】
次に、上記浮上防止方法に加えて行うことのできる浮上防止方法について、図2を参照しながら説明する。
【0022】
図2は、地面を掘削した空間内に雨水貯留槽1を設置した後、雨水貯留槽1の周囲を埋め戻す前に行う工程を示す。ジオテキスタイル等のシート部材6(6A、6B)によって雨水貯留槽1の底部の周囲で砕石7(7A、7B)を巻き込み、その後シート部材6の両端部を雨水貯留槽1の上面1bに溶着する。その後、図1に示したように、シート部材5を雨水貯留槽1の上面1bに当接させると共に、上面1bの周囲に水平方向に張り出すように敷設し、シート部材5の上に土砂を被せて掘削した空間を埋め戻す。シート部材6と砕石7でさらに浮上抑止を行うことで、確実に雨水貯留槽1の浮上を防止することができる。
【0023】
図2における追加的な浮上防止工程においても、不織布よりも伸びが少なく、強度が高いジオテキスタイルを用いるのが好ましい。また、砕石7以外にも、埋め戻す土砂よりも比重の大きい材料からなる部材を配置することで浮上防止効果が得られるが、砕石7は入手し易く取り扱いも容易で、また砕石7の部分の浸透量を付加することもできるため効率的である。さらに、必要な抑止力から砕石7の量を計算で求めることができ、抑止力に応じて砕石7の量を調整することができて好ましい。
【0024】
図3は、地面を掘削した空間内に雨水貯留槽1を設置した後、雨水貯留槽1の周囲を埋め戻す前に行う工程の他の例を示す。ジオテキスタイル等のシート部材8(8A、8B)によって雨水貯留槽1の底部の周囲で砕石9(9A、9B)を巻き込み、その後シート部材8の両端部を雨水貯留槽1の側面1cの上部1bに溶着する。その後、図1に示したように、シート部材5を雨水貯留槽1の上面1bに当接させると共に、上面1bの周囲に水平方向に張り出すように敷設し、シート部材5の上に土砂を被せて掘削した空間を埋め戻す。図2に示した工法と同様、本工法によってもシート部材8と砕石9でさらに浮上抑止を行うことができ、確実に雨水貯留槽1の浮上を防止することができる。
【0025】
尚、上記実施の形態では、本発明を適用する地下構造物の一例として雨水貯留槽1の場合を説明した。雨水貯留槽1は、樹脂材料からなり貯水空間を形成する部材を多段に積み上げて構成されるものが多く、本発明によって部材の組み合わせ部が外れて槽が崩壊することを防止できて効果的であるが、適用可能な地下構造物は雨水貯留槽1に限らず、本発明はその他の構造物についても適用可能である。
【0026】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0027】
1 雨水貯留槽
2 基礎砕石
3 敷砂
5 シート部材
6(6A、6B) シート部材
7(7A、7B) 砕石
8(8A、8B) シート部材
9(9A、9B) 砕石
図1
図2
図3