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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152094
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電池充放電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H02J7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066041
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 一徳
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA02
5G503CA12
5G503GA01
(57)【要約】
【課題】スイッチングレギュレータの電池充放電装置において、スイッチング周波数を上昇させることなく、電流脈動を小さくする。
【解決手段】第1可変直流電源C3の正極に第2可変直流電源C4の正極が接続される。第1可変直流電源C3の正極と負極との間に第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6が直列接続される。第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6に各々還流ダイオードが逆並列接続される。第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6の接続点に第3直流リアクトルL3の一端が接続される。第3直流リアクトルL3の他端は電池300の一端に接続される。電流検出手段R1は電池300の充放電電流を検出する。電池300の他端は、第2可変直流電源C4の負極に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1可変直流電源と、
前記第1可変直流電源の正極に正極が接続された第2可変直流電源と、
前記第1可変直流電源の正極と負極との間に直列接続された第5スイッチング素子及び第6スイッチング素子と、
前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子に各々逆並列接続された還流ダイオードと、
前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子の接続点に一端が接続され、他端が電池の一端に接続された第3直流リアクトルと、
前記電池の充放電電流を検出する電流検出手段と、
を備え、
前記電池の他端は、前記第2可変直流電源の負極に接続されたことを特徴とする電池充放電装置。
【請求項2】
第1可変直流電源と、
前記第1可変直流電源の正極に正極が接続された第2可変直流電源と、
前記第1可変直流電源の正極と負極との間に直列接続された第5スイッチング素子及び第6スイッチング素子と、
前記第1可変直流電源の正極と負極との間に直列接続された第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子と、
前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子と前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子に各々逆並列接続された還流ダイオードと、
前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子の接続点に一端が接続され、他端が電池の一端に接続された第3直流リアクトルと、
前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子の接続点に一端が接続され、他端が前記電池の一端に接続された第4直流リアクトルと、
前記電池の充放電電流を検出する電流検出手段と、
を備え、
前記電池の他端は、前記第2可変直流電源の負極に接続されたことを特徴とする電池充放電装置。
【請求項3】
第1直流電源に接続された第1入力コンデンサと、
第2直流電源に接続された第2入力コンデンサと、
前記第1入力コンデンサの正極と前記第2入力コンデンサの負極との間に直列接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、
前記第1入力コンデンサの正極と前記第2入力コンデンサの負極との間に直列接続された第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、
前記第1~第4スイッチング素子に各々逆並列接続された還流ダイオードと、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続点に一端が接続された第1直流リアクトルと、
前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の接続点に一端が接続された第2直流リアクトルと、
を備え、
前記第1直流電源に前記第2直流電源が直列接続され、前記第1直流リアクトルの他端に前記第1可変直流電源の正極が接続され、前記第2直流リアクトルの他端に前記第1可変直流電源の負極が接続され、前記第2可変直流電源の負極は前記第1直流電源と前記第2直流電源の接続点に接続されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の電池充放電装置。
【請求項4】
前記第1可変直流電源と前記第2可変直流電源の各々の出力電圧を前記充放電電流に基づいて制御することを特徴とする請求項1または2記載の電池充放電装置。
【請求項5】
前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子は相補的に点弧し、前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子は相補的に点弧し、
前記第5、第6スイッチング素子と、前記第7、第8スイッチング素子は同一周波数、180度位相差で点弧し、
前記第1可変直流電源と前記第2可変直流電源の各々の出力電圧を前記充放電電流に基づいて制御することを特徴とする請求項2記載の電池充放電装置。
【請求項6】
前記充放電電流が前記電池の充電方向に流れている時、前記第1可変直流電源の電圧を(17)式、前記第2可変直流電源の電圧を(14)式で制御し、
前記充放電電流が前記電池の放電方向に流れている時、前記第1可変直流電源の電圧を(23)式、前記第2可変直流電源の電圧を(20)式で制御することを特徴とする請求項1または2記載の電池充放電装置。
【数14】

【数17】

【数20】

【数23】

C3:第1可変直流電源の電圧
C4:第2可変直流電源の電圧
ΔVC+:充放電電流が充電方向で第5スイッチング素子がONの時の第3直流リアクトルの印加電圧の目標値
ΔVC-:充放電電流が充電方向で第5スイッチング素子がOFFの時の第3直流リアクトルの印加電圧の目標値
:電池の電圧
r:電流検出手段の抵抗値
I:第3直流リアクトルの通過電流
ΔVD+:充放電電流が放電方向で第6スイッチング素子がOFFの時の第3直流リアクトルの印加電圧の目標値
ΔVD-:充放電電流が放電方向で第6スイッチング素子がONの時の第3直流リアクトルの印加電圧の目標値
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の充放電を行う充放電装置の技術に係り、特に充放電電流が大電流の場合でも電流脈動を小さくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の充放電を行う直流電源を電池充放電装置と呼ぶ。直流電源はスイッチングレギュレータとリニアレギュレータに分類される。
【0003】
スイッチングレギュレータはトランジスタのスイッチングにより出力電流(または電圧)を調整するため、出力電流・電圧の脈動(リプル)が大きいという問題がある。一方、電力損失が小さいため、大電流または高電圧を出力する充放電装置にも使用できるという利点がある。
【0004】
リニアレギュレータは電力損失が大きいため、大電流または高電圧を出力する充放電装置に使用できないという問題がある。一方、出力電流・電圧の脈動が小さいという利点がある。充放電装置においては充電電流脈動が大きいと電池に悪影響を及ぼすため、小容量の充放電装置ではリニアレギュレータを使用する傾向がある。
【0005】
また、電池充放電装置の用途として電池容量[Ah]の測定がある。電流脈動が大きい場合は容量測定の誤差が大きくなるため、容量測定においてはリニアレギュレータが適している。近年では電池容量測定により電池の寿命評価を行う研究がなされている(非特許文献1)。
【0006】
非特許文献1の第1章に「目標とする桁数は上述した通り、電力貯蔵用途の要求寿命から必要十分な有効数字5桁(誤差10ppm以下)を目指した。」と記載されており、電池の寿命評価に必要な精度は10ppm程度としている。このような超高精度の電池充放電装置には現状ではリニアレギュレータが使用されている。
【0007】
特許文献1の段落[0009]では「蓄電池の充電時には高いスイッチング周波数で、放電時には低いスイッチング周波数で昇降圧チョッパを動作させることで、充電時には、昇降圧チョッパの主回路部のリアクトルの電流が連続し、その結果、前記充電電流の脈動(リプル)が小さくなり蓄電池にとって好適な充電電流となり、」とありスイッチング周波数を高くすることによりスイッチングによる電流脈動を小さくする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-115730号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山崎温子、宮代一、小林陽、三田裕一、「電池寿命評価のための簡易・高精度充放電容量測定法の開発-システム構築と高精度計測手法の検討-」、電力中央研究所報告、Q16010,2017年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、電池のCレート(1時間で電池容量を完全充電または完全放電させる電流値)はますます大きくなっており、電池充放電装置をリニアレギュレータで構成することが電力損失の点で困難となりつつある。
【0011】
特許文献1にはスイッチングレギュレータの電池充放電装置において電流脈動を小さくする技術が開示されている。特許文献1ではスイッチング周波数を高くすることによりスイッチングによる電流脈動を小さくしている。しかしながら、スイッチングレギュレータではスイッチング周波数に比例してスイッチング損失が増大するため、スイッチング周波数を無限に高い値にすることはできない。
【0012】
つまり、電池寿命測定のために超高精度の充放電装置が求められており、測定対象の電池は大容量化が進んでいるが、超高精度(超低リプル)かつ出力電流の大きい充放電装置は電力損失の観点から現状の技術では実現できない。
【0013】
以上示したようなことから、スイッチングレギュレータの電池充放電装置において、スイッチング周波数を上昇させることなく、電流脈動を小さくすることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、第1可変直流電源と、前記第1可変直流電源の正極に正極が接続された第2可変直流電源と、前記第1可変直流電源の正極と負極との間に直列接続された第5スイッチング素子及び第6スイッチング素子と、前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子に各々逆並列接続された還流ダイオードと、前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子の接続点に一端が接続され、他端が電池の一端に接続された第3直流リアクトルと、前記電池の充放電電流を検出する電流検出手段と、を備え、前記電池の他端は、前記第2可変直流電源の負極に接続されたことを特徴とする。
【0015】
また、他の態様として、第1可変直流電源と、前記第1可変直流電源の正極に正極が接続された第2可変直流電源と、前記第1可変直流電源の正極と負極との間に直列接続された第5スイッチング素子及び第6スイッチング素子と、前記第1可変直流電源の正極と負極との間に直列接続された第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子と、前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子と前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子に各々逆並列接続された還流ダイオードと、前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子の接続点に一端が接続され、他端が電池の一端に接続された第3直流リアクトルと、前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子の接続点に一端が接続され、他端が前記電池の一端に接続された第4直流リアクトルと、前記電池の充放電電流を検出する電流検出手段と、を備え、前記電池の他端は、前記第2可変直流電源の負極に接続されたことを特徴とする。
【0016】
また、その一態様として、第1直流電源に接続された第1入力コンデンサと、第2直流電源に接続された第2入力コンデンサと、前記第1入力コンデンサの正極と前記第2入力コンデンサの負極との間に直列接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記第1入力コンデンサの正極と前記第2入力コンデンサの負極との間に直列接続された第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、前記第1~第4スイッチング素子に各々逆並列接続された還流ダイオードと、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続点に一端が接続された第1直流リアクトルと、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の接続点に一端が接続された第2直流リアクトルと、を備え、前記第1直流電源に前記第2直流電源が直列接続され、前記第1直流リアクトルの他端に前記第1可変直流電源の正極が接続され、前記第2直流リアクトルの他端に前記第1可変直流電源の負極が接続され、前記第2可変直流電源の負極は前記第1直流電源と前記第2直流電源の接続点に接続されたことを特徴とする。
【0017】
また、その一態様として、前記第1可変直流電源と前記第2可変直流電源の各々の出力電圧を前記充放電電流に基づいて制御することを特徴とする。
【0018】
また、その一態様として、前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子は相補的に点弧し、前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子は相補的に点弧し、前記第5、第6スイッチング素子と、前記第7、第8スイッチング素子は同一周波数、180度位相差で点弧し、前記第1可変直流電源と前記第2可変直流電源の各々の出力電圧を前記充放電電流に基づいて制御することを特徴とする。
【0019】
また、その一態様として、前記充放電電流が前記電池の充電方向に流れている時、前記第1可変直流電源の電圧を(17)式、前記第2可変直流電源の電圧を(14)式で制御し、前記充放電電流が前記電池の放電方向に流れている時、前記第1可変直流電源の電圧を(23)式、前記第2可変直流電源の電圧を(20)式で制御することを特徴とする。
【0020】
【数14】
【0021】
【数17】
【0022】
【数20】
【0023】
【数23】
【0024】
C3:第1可変直流電源の電圧
C4:第2可変直流電源の電圧
ΔVC+:充放電電流が充電方向で第5スイッチング素子がONの時の第3直流リアクトルの印加電圧の目標値
ΔVC-:充放電電流が充電方向で第5スイッチング素子がOFFの時の第3直流リアクトルの印加電圧の目標値
:電池の電圧
r:電流検出手段の抵抗値
I:第3直流リアクトルの通過電流
ΔVD+:充放電電流が放電方向で第6スイッチング素子がOFFの時の第3直流リアクトルの印加電圧の目標値
ΔVD-:充放電電流が放電方向で第6スイッチング素子がONの時の第3直流リアクトルの印加電圧の目標値。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、スイッチングレギュレータの電池充放電装置において、スイッチング周波数を上昇させることなく、電流脈動を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態1における電池充放電装置の主回路構成を示す図。
図2】実施形態1における電池充放電装置の各部の電位を示す図。
図3】実施形態1の[モード1]時の電流経路を示す図。
図4】実施形態1の[モード2]時の電流経路を示す図。
図5】実施形態1の[モード3]時の電流経路を示す図。
図6】実施形態1の[モード4]時の電流経路を示す図。
図7】電池をCC-CV充電にて満充電まで充電する際の充電電流とVC3、VC4の関係の一例を示す図(ΔVC+、ΔVC-が一定の場合)。
図8】モード選択の処理を示すフローチャート。
図9】実施形態2における電池充放電装置の主回路構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本願発明における電池充放電装置の実施形態1、2を図1図9に基づいて詳述する。
【0028】
[実施形態1]
図1に基づき本実施形態1の電池充放電装置の主回路構成を説明する。第1直流電源100と第2直流電源200が直列に接続される。第1直流電源100と第2直流電源200に第1入力コンデンサC1と第2入力コンデンサC2が各々接続される。
【0029】
第1入力コンデンサC1の正極と第2入力コンデンサC2の負極との間には第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2が直列接続される。また、第1入力コンデンサC1の正極と第2入力コンデンサC2の負極との間には第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4が直列接続される。
【0030】
第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の接続点に第1直流リアクトルL1の一端が接続される。同様に第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の接続点に第2直流リアクトルL2の一端が接続される。
【0031】
第1直流リアクトルL1の他端と第2直流リアクトルL2の他端の間に第3中間コンデンサ(第1可変直流電源)C3が接続される。第3中間コンデンサC3の正極に第4中間コンデンサ(第2可変直流電源)C4の正極が接続される。換言すると、第1直流リアクトルL1と第3中間コンデンサC3の接続点に第4中間コンデンサC4の正極が接続される。第4中間コンデンサC4の負極は第1直流電源100と第2直流電源200の接続点に接続される。
【0032】
第3中間コンデンサC3の正極と負極との間に第5、第6スイッチング素子Q5、Q6が直列接続される。
【0033】
第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6の接続点に第3直流リアクトルL3の一端が接続される。第1直流電源100と第2直流電源200の接続点に電流検出のためのシャント抵抗(電流検出手段)R1の一端が接続される。
【0034】
第3直流リアクトルL3とシャント抵抗R1の間に充放電対象の電池300が接続される。このとき電池300の正極は第3直流リアクトルL3に、負極はシャント抵抗R1を介して第4中間コンデンサC4の負極に接続するものとする。シャント抵抗R1は充放電電流が検出できれば他の位置に設けてもよい。第1~第6スイッチング素子Q1~Q6には逆並列された還流ダイオードが接続されているものとする(図示省略)。
【0035】
本実施形態1の作用・動作の説明をする。図2において、第2直流電源200の負極を基準とした電位を考える。第1直流電源100の正極の電位をVC12、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の接続点の電位をVQ12、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の接続点の電位をVQ34、第3中間コンデンサC3と第1直流リアクトルL1の接続点の電位をVC3P、第3中間コンデンサC3と第2直流リアクトルL2の接続点の電位をVC3Nとする。
【0036】
また、第1直流電源100の負極から測定した第1入力コンデンサC1の電圧をVC1、第2直流電源200の負極から測定した第2入力コンデンサC2の電圧をVC2とする。電位VC12は第1入力コンデンサC1、第2入力コンデンサC2の電圧により(1)式により表せる。
【0037】
【数1】
【0038】
第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2は一定のスイッチング周期で相補的にON/OFFすることにより電位VQ12を変動させる。ただし、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2が同時ONとなって短絡状態となるのを防ぐため、ON/OFFの切り替えタイミングには微小時間第1スイッチング素子Q1,第2スイッチング素子Q2がともにOFFとなるデッドタイムを設ける。
【0039】
電位VQ12は0[V]とVC12[V]を繰り返す値となり、スイッチング周期のうち第1スイッチング素子Q1がONとなる時間の割合をD1とすると電位VQ12の平均はVC12×D1となる。電位VC3Pは第1直流リアクトルL1と第3中間コンデンサC3により電位VQ12が平滑化され、ほぼ一定の電位となる。電位VC3Pは下記(2)式の範囲をとる。
【0040】
【数2】
【0041】
同様に、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4も一定のスイッチング周期で相補的にON/OFFすることにより電位VQ34を変動させる。電位VQ34は0[V]とVC12[V]を繰り返す値となり、スイッチング周期のうち第3スイッチング素子Q3がONとなる時間の割合をD3とすると電位VQ34の平均はVC12×D3となる。電位VC3Nは第2直流リアクトルL2と第3中間コンデンサC3により電位VQ34が平滑化され、ほぼ一定の電位となる。電位VC3Nは下記(3)式の範囲をとる。
【0042】
【数3】
【0043】
ここで、第3中間コンデンサC3の両端の電圧をVC3、第4中間コンデンサC4の両端の電圧をVC4とすると以下の(4)式、(5)式が成り立つ。
【0044】
【数4】
【0045】
【数5】
【0046】
電位VC3P、電位VC3Nは第1~第4スイッチング素子Q1~Q4によって制御可能であるため、電圧VC3、電圧VC4は自由に制御可能である。なお、(1)式、(2)式、(3)式より電圧VC3、電圧VC4の取り得る範囲は下記(6)式、(7)式の通りである。
【0047】
【数6】
【0048】
【数7】
【0049】
ここで、第3、第4中間コンデンサC3、C4の静電容量は十分大きく、電圧VC3、電圧VC4の変化速度は、第5、第6スイッチング素子Q5、Q6のスイッチング周波数より十分遅いものとする。なお、第5、第6スイッチング素子Q5、Q6のスイッチング周波数は、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4と同様に一定値とする。
【0050】
図3から図6に従って第5、第6スイッチング素子Q5、Q6の作用・動作について説明する。図3が[モード1]、図4が[モード2]、図5が[モード3]、図6が[モード4]を示す。
【0051】
第3直流リアクトルL3に流れる電流が正(以下では第5、第6スイッチング素子Q5、Q6から電池300の向きの電流を正とする)、第5スイッチング素子Q5をONとしたときを[モード1]とする。図3に示すように、[モード1]のときL3→電池300→R1→C4→Q5→L3の経路で電流が流れる。
【0052】
第3直流リアクトルL3に流れる電流が正、第5スイッチング素子Q5をOFFとしたときを[モード2]とする。図4に示すように、[モード2]のときL3→電池300→R1→C4→C3→Q6の還流ダイオード→L3の経路で電流が流れる。
【0053】
第3直流リアクトルL3に流れる電流が負、第6スイッチング素子Q6をOFFとしたときを[モード3]とする。図5に示すように、[モード3]のときL3→Q5の還流ダイオード→C4→R1→電池300→L3の経路で電流が流れる。
【0054】
第3直流リアクトルL3に流れる電流が負、第6スイッチング素子Q6をONとしたときを[モード4]とする。図6に示すように、[モード4]のときL3→Q6→C3→C4→R1→電池300→L3の経路で電流が流れる。
【0055】
図7は電池300をCC-CV充電にて満充電まで充電する際の充電電流Iと電圧VC3、電圧VC4の関係の一例を示す図である(後述するΔVC+、ΔVC-が一定の場合)。
【0056】
キルヒホッフの第2法則より、任意の閉回路において一巡経路の起電力と電圧降下の総和は等しいため、[モード1]から[モード4]の各モードの閉回路においてもこれは成り立つ。
【0057】
ここで各部品の電圧を以下のように定義する。電池300との接続点から測定した第3直流リアクトルL3の印加電圧をVL3、第4中間コンデンサC4との接続点から測定したシャント抵抗R1の印加電圧をVR1、第2直流リアクトルL2と第6スイッチング素子Q6の接続点から測定した第3中間コンデンサC3の電圧をVC3、シャント抵抗R1との接続点から測定した第4中間コンデンサC4の電圧をVC4とする。また、電池300の電圧をVとする。
【0058】
[モード1]のとき、キルヒホッフの第2法則より(8)式が成り立つ。
【0059】
【数8】
【0060】
同様に、[モード2]のとき、キルヒホッフの第2法則より(9)式が成り立つ。
【0061】
【数9】
【0062】
第3直流リアクトルL3の通過電流(充電方向を正とした電池300の充放電電流)をI、第3直流リアクトルL3のインダクタンスをLとする。第3直流リアクトルL3の印加電圧VL3と通過電流Iの関係から(10)式が成り立つ。
【0063】
【数10】
【0064】
また、シャント抵抗R1の抵抗値をr[Ω]とすると(11)式が成り立つ。
【0065】
【数11】
【0066】
[モード1]のとき、(8)式に(10)式、(11)式を代入して変形すると(12)式となる。
【0067】
【数12】
【0068】
第3直流リアクトルL3のインダクタンスLは固定の値であるので(12)式より[モード1]の電池300の充放電電流のリプルは以下の(13)式の電圧に比例することがわかる。そのため、この値の絶対値を小さくすることにより充放電電流のリプルを小さくすることができる。
【0069】
【数13】
【0070】
ここで電圧VC4は(7)式の範囲で制御でき、電池300の電圧Vは計測可能、シャント抵抗R1の抵抗値rは一定の値、充放電電流Iも測定可能であるので、(13)式の電圧の絶対値が十分小さな電圧ΔVC+(>0)となるよう(14)式のように制御すれば充放電電流のリプルを小さくすることができる。
【0071】
【数14】
【0072】
ここで、ΔVC+は[モード1]時の第3直流リアクトルL3の印可電圧の目標値である。
【0073】
なお、上記では電池300の電圧Vは計測値を使用したが、電池の特性によっては電圧が大きく変化しないため、定格電圧等の固定値を利用してもよい。
【0074】
[モード2]のときも同様に、(9)式に(10)式、(11)式を代入して変形すると(15)式となる。
【0075】
【数15】
【0076】
よって、電池300の充放電電流のリプルは以下の(16)式の電圧に比例することがわかる。そのため、この値の絶対値を小さくすることにより充放電電流のリプルを小さくすることができる。
【0077】
【数16】
【0078】
ここで電圧VC3は(6)式の範囲で制御できるので、(16)式の電圧の絶対値が十分小さな電圧ΔVC-(<0)となるよう制御すれば充放電電流のリプルを小さくすることができる。電圧VC4は(14)式に従って制御されているので、電圧VC3は下記(17)式に従って制御すればよい。
【0079】
【数17】
【0080】
ここで、ΔVC-は[モード2]時の第3直流リアクトルL3の印可電圧の目標値である。
【0081】
[モード3]のときも同様に(18)式となる。
【0082】
【数18】
【0083】
よって、電池300の充放電電流のリプルは以下の(19)式の電圧に比例することがわかる。そのため、この値の絶対値を小さくすることにより充放電電流のリプルを小さくすることができる。
【0084】
【数19】
【0085】
(19)式の電圧の絶対値が十分小さな電圧ΔVD+(>0)となるよう(20)式のように制御すれば充放電電流のリプルを小さくすることができる。
【0086】
【数20】
【0087】
ここで、ΔVD+は[モード3]時の第3直流リアクトルL3の印可電圧の目標値である。
【0088】
[モード4]のときも同様に、(21)式となる。
【0089】
【数21】
【0090】
よって、電池300の充放電電流のリプルは以下の(22)式の電圧に比例することがわかる。そのため、この値の絶対値を小さくすることにより充放電電流のリプルを小さくすることができる。
【0091】
【数22】
【0092】
(22)式の電圧の絶対値が十分小さな電圧ΔVD-(<0)となるよう(23)式のように制御すれば充放電電流のリプルを小さくすることができる。
【0093】
【数23】
【0094】
ここで、ΔVD-は[モード4]時の第3直流リアクトルL3の印可電圧の目標値である。
【0095】
以上より、第3中間コンデンサC3と第4中間コンデンサC4の各々の出力電圧VC3、VC4を充放電電流に基づいて制御する。すなわち、[モード1]~[モード4]をまとめると、電池充電時には電圧VC4を(14)式に従って制御し、電圧VC3を(17)式に従って制御する。電池放電時には電圧VC4を(20)式に従って制御し、電圧VC3を(23)式に従って制御する。
【0096】
図8は上記をまとめたモード選択処理を示すフローチャートである。
【0097】
まず、S1で第3直流リアクトルL3に流れる電流が正か否かを判定する。第3直流リアクトルL3に流れる電流が正であればS2へ移行し、負であればS3へ移行する。
【0098】
S2では第5スイッチング素子Q5がONか否かを判定する。第5スイッチング素子Q5がONであれば[モード1]とし、第5スイッチング素子Q5がOFFであれば[モード2]とする。
【0099】
S3では、第6スイッチング素子Q6がOFFか否かを判定する。第6スイッチング素子Q6がOFFであれば[モード3]とし、第6スイッチング素子Q6がONであれば[モード4]とする。
【0100】
このように、第3直流リアクトルL3の電流方向と第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6の状態でモードを決定する。
【0101】
なお、上記説明では、電池300や第3中間コンデンサC3、第4中間コンデンサC4の内部抵抗や第3直流リアクトルL3の巻線抵抗、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6のオン抵抗、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6の還流ダイオードの順方向電圧を考慮していないが、それをシャント抵抗R1の抵抗と同様に考慮することもできる。
【0102】
電流検出のためにシャント抵抗R1を使用しているが、ホールCT等別の電流検出器を用いてもよい。
【0103】
また、目標値ΔVC+と目標値ΔVD+および目標値ΔVC-と目標値ΔVD-は各々別の値としたが、ΔVC+=ΔVD+、ΔVC-=ΔVD-としても何ら問題ない。目標値ΔVC+、ΔVD+、ΔVC-、ΔVD-は一定である必要もなく、例えば充電初期の充電電流を大きく変化させたい時には大きい値とし、充電電流が一定となった時から目標値ΔVC+、ΔVC-の絶対値を小さくしてもよい。
【0104】
以上示したように、本実施形態1によれば、第3直流リアクトルL3に印加する電圧が最小限となるように第3、第4中間コンデンサC3、C4の電圧を制御することにより、充放電電流が大電流の場合でも、スイッチング周波数を向上させることなく一定値に保ったまま、電池の充放電電流リプルを小さくすることができる。
【0105】
[実施形態2]
図9に基づき本実施形態2の主回路構成を説明する。第1直流電源100と第2直流電源200が直列に接続される。第1直流電源100と第2直流電源200に第1入力コンデンサC1と第2入力コンデンサC2が各々接続される。
【0106】
第1入力コンデンサC1の正極と第2入力コンデンサC2の負極との間には第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2が直列接続される。また、第1入力コンデンサC1の正極と第2入力コンデンサC2の負極との間には第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4が直列接続される。
【0107】
第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の接続点に第1直流リアクトルL1の一端が接続される。同様に第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の接続点に第2直流リアクトルL2の一端が接続される。
【0108】
第1直流リアクトルL1の他端と第2直流リアクトルL2の他端の間に第3中間コンデンサC3が接続される。第3中間コンデンサC3の正極に第4中間コンデンサC4の正極が接続される。換言すると、第1直流リアクトルL1と第3中間コンデンサC3の接続点に第4中間コンデンサC4の正極が接続される。第4中間コンデンサC4の負極は第1直流電源100と第2直流電源200の接続点に接続される。
【0109】
第3中間コンデンサC3の正極と負極との間に第5、第6スイッチング素子Q5、Q6が直列接続される。また、第3中間コンデンサC3の正極と負極との間に第7、第8スイッチング素子Q7、Q8が直列接続される。
【0110】
第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6の接続点に第3直流リアクトルL3の一端が接続される。第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8の接続点に第4直流リアクトルL4の一端が接続される。第1直流電源100と第2直流電源200の接続点に電流検出のためのシャント抵抗R1の一端が接続される。
【0111】
第3、第4直流リアクトルL3、L4の接続点とシャント抵抗R1の間に充放電対象の電池300を接続する。このとき電池300の正極は第3、第4直流リアクトルL3、L4の接続点に、負極はシャント抵抗R1を介して第4中間コンデンサC4の負極に接続するものとする。シャント抵抗R1は充放電電流が検出できれば他の位置に設けてもよい。第1~第8スイッチング素子Q1~Q8には逆並列された還流ダイオードが接続されているものとする(図示省略)。
【0112】
本実施形態2の作用・動作の説明をする。第3直流リアクトルL3に流れる電流は実施形態1と同様に[モード1]から[モード4]の4つのモードで制御する。
【0113】
第4直流リアクトルL4に流れる電流も同様に4モードで制御する。つまり、第4直流リアクトルL4に流れる電流が正(以下では第7、第8スイッチング素子Q7、Q8から電池300の向きの電流を正とする)、第7スイッチング素子Q7をONとしたときを[モード1’]とする。[モード1’]のときL4→電池300→R1→C4→Q7→L4の経路で電流が流れる。
【0114】
第4直流リアクトルL4に流れる電流が正、第7スイッチング素子Q7をOFFとしたときを[モード2’]とする。[モード2’]のときL4→電池300→R1→C4→C3→Q8の還流ダイオード→L4の経路で電流が流れる。
【0115】
第4直流リアクトルL4に流れる電流が負、第8スイッチング素子Q8をOFFとしたときを[モード3’]とする。[モード3’]のときL4→Q7の還流ダイオード→C4→R1→電池300→L4の経路で電流が流れる。
【0116】
第4直流リアクトルL4に流れる電流が負、第8スイッチング素子Q8をONとしたときを[モード4’]とする。[モード4’]のときL4→Q8→C3→C4→R1→電池300→L4の経路で電流が流れる。
【0117】
電池の充放電電流指令値の1/2ずつを第3、第4直流リアクトルL3、L4の電流指令値とすることにより、装置の出力電流は電流指令値どおりとなる。
【0118】
また、[モード1]⇔[モード2]と[モード1’]⇔[モード2’]は同一周波数180度位相差として制御する。
【0119】
すなわち、第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6は相補的に点弧し、第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8は相補的に点弧する(ただし、デッドタイムは設ける)。そして、第5、第6スイッチング素子Q5、Q6と第7、第8スイッチング素子Q7、Q8は同一周波数、180度位相差で点弧する。第3中間コンデンサC3と第4中間コンデンサC4の各々の出力電圧を充放電電流に基づいて制御する。
【0120】
これにより[モード1](第3直流リアクトルL3の電流増加)と[モード2’](第4直流リアクトルL4の電流減少)が同時に、[モード2](第3直流リアクトルL3の電流減少)と[モード1’](第4直流リアクトルL4の電流増加)が同時に発生し電流リプルを減少させることができる。
【0121】
第3、第4中間コンデンサC3、C4と電流リプルの関係は[実施形態1]と同様になり、各々の電圧を[実施形態1]の(14)式、(17)式、(20)式、(23)式に従って制御する。
【0122】
以上示したように、本実施形態2によれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0123】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0124】
100…第1直流電源
200…第2直流電源
300…電池
C1…第1入力コンデンサ
C2…第2入力コンデンサ
C3…第3中間コンデンサ(第1可変直流電源)
C4…第4中間コンデンサ(第2可変直流電源)
Q1~Q8…第1~第8スイッチング素子
L1~L4…第1~第4直流リアクトル
R1…シャント抵抗(電流検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9