(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152095
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物及びそれを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、並びにその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 65/28 20060101AFI20241018BHJP
C08F 20/28 20060101ALI20241018BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20241018BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20241018BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241018BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20241018BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08G65/28
C08F20/28
C08F299/02
B05D3/06 Z
B05D7/24 302P
B32B27/16 101
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066042
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松下 周平
(72)【発明者】
【氏名】梶田 舜平
(72)【発明者】
【氏名】森 清
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J005
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4D075BB42Z
4D075CA36
4D075CA38
4D075CA44
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4J127FA17
4J127FA21
4J127FA38
4J127FA41
4J127FA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】密着性を損なうことなく、耐水性、耐溶剤性、耐アルカリ性に優れる硬化物を形成する化合物及び活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される構造のポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物により、上記の課題を解決する。
(式中のRは水素原子またはメタクリロイル基を表す。但し、全てが水素原子であることはない。また、AOは炭素数が2であるエチレンオキサイド、及び/または炭素数3であるプロピレンオキサイドを表す。k、l、mはアルキレンオキサイドの付加数であり、それぞれ0~15である。但し、k、l、mの全てが0であることはない。nは水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度を示しており、2~10である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される構造のポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物。
【化1】
(式中のRは水素原子またはメタクリロイル基を表す。但し、全てが水素原子であることはない。また、AOは炭素数が2であるエチレンオキサイド、及び/または炭素数3であるプロピレンオキサイドを表す。k、l、mはアルキレンオキサイドの付加数であり、それぞれ0~15である。但し、k、l、mの全てが0であることはない。nは水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度を示しており、2~10である。)
【請求項2】
重量平均分子量が500~1,500である請求項1記載のポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物。
【請求項3】
前記AOが炭素数3であるプロピレンオキサイドを少なくとも含む請求項1または2記載のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を含む層を基材に有することを特徴とする積層体。
【請求項7】
請求項6に記載の積層体からなる電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性、密着性を損なうことなく耐水性に優れる硬化被膜を形成することができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、速硬化性で生産性が高く、ハードコ―ト等のコーティング剤、ライニング剤、粘着剤、接着剤、塗料、インキ、並びに光学材料・電子材料・プリント基板等へのレジスト材料等の用途に幅広く用いられている。
【0003】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、速硬化性で生産性が高く、無溶剤での使用が可能であるため、環境負荷低減材料としてハードコート等のコーティング剤、ライニング剤、粘着剤、接着剤、塗料、インキ、光学材料、電子材料、医療用樹脂材料、積層板、プリント基板、レジスト材料、半導体封止剤等に幅広く用いられている。これらの材料では基材との密着性と硬化物の硬度が求められることがあり、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレートを用いた活性エネルギー線硬化型組成物を用いることで、硬度の改善は達成されるが、密着性は十分ではなかった。
【0004】
これまでに発明者らは、ポリグリセリン骨格を有する多官能アクリレート化合物及びそれを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、及びその硬化物(特許文献1)を発明しており、密着性の課題解決を図ってきた。
【0005】
しかしながら、ハードコ―ト等のコーティング剤、ライニング剤、粘着剤、接着剤、塗料、インキ、並びに光学材料・電子材料・プリント基板等へのレジスト材料等の用途においては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、及びその硬化物に対して、密着性だけでなく、耐水性や耐溶剤性、耐アルカリ性も要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明では、密着性を損なうことなく、耐水性、耐溶剤性、耐アルカリ性に優れる硬化物を形成する化合物及び活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の発明を含み、上記課題を解決することを見出した。
(1)式1で表される構造のポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物。
【化1】
(式中のRは水素原子またはメタクリロイル基を表す。但し、全てが水素原子であることはない。また、AOは炭素数が2であるエチレンオキサイド、及び/または炭素数3であるプロピレンオキサイドを表す。k、l、mはアルキレンオキサイドの付加数であり、それぞれ0~15である。但し、k、l、mの全てが0であることはない。nは水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度を示しており、2~10である。)
(2)重量平均分子量が500~1,500である(1)記載のポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物。
(3)前記AOが炭素数3であるプロピレンオキサイドを少なくとも含む(1)または、(2)記載のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物。
(4)(1)に記載のポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(5)(4)に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
(6)(5)に記載の硬化物を含む層を基材に有することを特徴とする積層体。
(7)(6)に記載の積層体からなる電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、並びにその硬化物は、密着性を損なうことなく、耐水性や耐溶剤性、耐アルカリ性に優れ、プラスチック材料等の基材、金属及びガラス等の無機基材に対して好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に基づいて本発明を説明する。ここで、本発明の範囲は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で変更された形態も含まれる。なお、範囲を表す「~」は上限と下限を含む。
【0011】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物を構成するポリグリセリン骨格の平均重合度nは2~10であり、2~6であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。ここで述べる平均重合度nは、水酸基価から算出できる。一般的に、水酸基価は試料1グラムをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数と定義されている。ポリグリセリンにおいては、1グラムの(ポリ)グリセリンに含まれる遊離水酸基がアセチル化するに要した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を指しており、どれだけ水酸基があるかを示している。平均重合度が2であるポリグリセリンはジグリセリン、平均重合度が3であるポリグリセリンはトリグリセリン、平均重合度が4であるポリグリセリンはテトラグリセリンで表される。市販品としては、ジグリセリンS、R-PG、PGL-S、ポリグリセリン#310、ポリグリセリン#500、ポリグリセリン#750(いずれも阪本薬品工業製)を使用することができる。平均重合度が10より大きいと、製造における生産性に影響が出てくるので好ましくない。また、平均重合度が大きくなると、粘度も増加するため、ハンドリング性の悪化にもつながる。
【0012】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物は、ポリグリセリン骨格にAO(以下、AOをアルキレンオキサイドと記す。)が付加されている。用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数が2であるエチレンオキサイド、及び/または炭素数3であるプロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、炭素数3であるプロピレンオキサイドを少なくとも含むことが耐水性を向上させる点で好ましい。ポリグリセリン骨格の水酸基に対して、付加するアルキレンオキサイドを2種用いる場合はランダム付加・ブロック付加の選択が可能であるが特に制限はない。k、l、mはアルキレンオキサイドの付加数を示しており、それぞれ0~15である。付加数としては、好ましくはそれぞれ0~8が良い。但し、k、l、mの全てが0であることはない。付加数が15より大きい場合、ポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物及びそれを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、及びその硬化物において密着性、耐水性の両立が難しくなる。また、ポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物の製造において、工程中の精製が難しくなる等の問題が発生し好ましくない。
【0013】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物の製造方法には特に制限はない。例えば、ポリグリセリンにアルキレンオキサイドを付加反応させたポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルの水酸基にメタクリル酸を反応させて生成水を系外に抜き出しながらエステル化物を得る脱水エステル化法、末端水酸基に低級アルコールのメタクリル酸エステルを反応させて生成した低級アルコールを系外に抜出しながらエステル化物を得るエステル交換法が挙げられる。
【0014】
メタクリレートの反応割合としては、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルの水酸基数に対して、平均3つ以上反応し得られるポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタアクリレート化合物が硬化物の機能性の点から好ましい。
【0015】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物としては、重量平均分子量が500~1,500が好ましい。重量平均分子量が500~1,500のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物の硬化物は、光透過性、密着性、耐水性により優れる。
【0016】
ポリグリセリンにアルキレンオキサイドを付加反応させたポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルの水酸基にメタクリル酸を反応させて式1で表される構造のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタアクリレート化合物を製造する際に、反応または精製後においてラジカル重合禁止剤を用いても良い。
【0017】
ラジカル重合禁止剤としては、p-メトキシフェノール、ハイドロキノン、メトキシヒドロキノン、p-tert-ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤、2、6-ジ-tert-ブチルフェノール、2、6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾール等のアルキルフェノール系重合禁止剤、アルキル化ジフェニルアミン、N、N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジン、4-ヒドロキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤等が挙げられる。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は公知の方法によって硬化することができる。活性エネルギー線とは、電子線、あるいはX線、紫外線、低波長領域の可視光等の電磁波の総称であり、通常装置の簡便性及び普及性により紫外線が好ましい。紫外線を照射できる装置としては多くの種類があるが、任意に選択できる。光源には、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等が使用できる。
【0019】
活性エネルギー線として紫外線を用いて硬化させる場合、ラジカル重合系光重合開始剤を使用する必要がある。光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤であっても良い。例えば、ベンジルケタール類、α-ヒドロキシアセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、オキシムエステル類、ベンゾイン類等の分子内開裂型開始剤、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アリールビイミダゾール類等の水素引抜き型開始剤が挙げられ、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0020】
光重合開始剤を使用する必要がある場合、その使用量はポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物100重量部に対して0.1~15重量部、好ましくは0.5~10重量部が良い。
【0021】
また、光重合開始剤を使用する際には、光増感剤を1種、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、本発明で用いられるメタアクリレート化合物以外に(メタ)アクリル系モノマーやウレタン(メタ)アクリレートモノマー等のラジカル重合性化合物を使用してもよく、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0023】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、アクリルポリマー等の非反応性高分子樹脂、並びにポリジアリルフタレート、ポリジアリルイソフタレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリルポリマー等の反応性高分子樹脂を配合してもよい。
【0024】
高分子樹脂は、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物100重量部に対し0~1,000重量部、好ましくは0~300重量部が良い。
【0025】
また、活性エネルギー線組成物に高分子樹脂を使用する際には、高分子樹脂を1種、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、アセトン、メチルエチルケトン、エタノール、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤を適宜配合することができる。
【0027】
有機溶剤は、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物100重量部に対し0~2,000重量部、好ましくは0~1,000重量部が良い。
【0028】
また、活性エネルギー線組成物に有機溶剤を使用する際には、有機溶剤を1種、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等の界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、光安定剤、熱安定剤、重合禁止剤、顔料、金属酸化物微粒子分散体、防曇剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0030】
本発明のポリアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物及びそれを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、透過性、密着性を損なうことなく耐水性に優れる硬化被膜を形成することができ、活性エネルギー線によって硬化させる際、公知の方法により、塗膜、フィルム、立体造形物等、様々な形態とすることができる。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、及びポリオレフィン樹脂(PP樹脂、PE樹脂)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のプラスチック基材、金属及びガラス等の無機基材等の幅広い範囲の基材に適用できる。
【0031】
また、その硬化物は、ハードコ―ト等のコーティング剤、ライニング剤、粘着剤、接着剤、塗料、インキ、並びに光学材料・電子材料・プリント基板等へのレジスト材料等の用途に幅広く適用できる。
【実施例0032】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらによって何らの限定を受けるものではない。
【0033】
<合成例1>
反応容器に、ジグリセリンのプロピレンオキサイド9モル付加物(阪本薬品工業製)、トルエン、p-トルエンスルホン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メタクリル酸を仕込み、脱水エステル化反応を行うことで、ジグリセリンのプロピレンオキサイド9モル付加物のメタクリレートを得た(M1)。
【0034】
<合成例2>
合成例1と同様の手法で、トリグリセリン(阪本薬品工業製)にプロピレンオキサイドを12モル付加した化合物にメタクリル酸を反応させることで、トリグリセリンのプロピレンオキサイド12モル付加物のメタクリレートを得た(M2)。
【0035】
<合成例3>
合成例1と同様の手法で、テトラグリセリン(阪本薬品工業製)にプロピレンオキサイドを18モル付加した化合物にメタクリル酸を反応させることで、テトラグリセリンのプロピレンオキサイド18モル付加物のメタクリレートを得た(M3)。
【0036】
<合成例4>
合成例1と同様の手法で、トリグリセリン(阪本薬品工業製)にプロピレンオキサイドを8モル及びエチレンオキサイドを16モル付加した化合物にメタクリル酸を反応させることで、トリグリセリンのプロピレンオキサイドを8モル及びエチレンオキサイド16モル付加物のメタクリレートを得た(M4)。
【0037】
<合成例5>
合成例1と同様の手法で、トリグリセリン(阪本薬品工業製)にエチレンオキサイドを12モル付加した化合物にメタクリル酸を反応させることで、トリグリセリンのエチレンオキサイド12モル付加物のメタクリレートを得た(M5)。
【0038】
<合成例6>
合成例1と同様の手法で、テトラグリセリン(阪本薬品工業製)にエチレンオキサイドを6モル付加した化合物にメタクリル酸を反応させることで、テトラグリセリンのエチレンオキサイド6モル付加物のメタクリレートを得た(M6)。
【0039】
<合成例7>
合成例1と同様の手法で、ジグリセリン(阪本薬品工業製)にプロピレンオキサイド25モル及びエチレンオキサイド25モルを付加した化合物にメタクリル酸を反応させることで、ジグリセリンのプロピレンオキサイド25モル及びエチレンオキサイド25モル付加物のメタクリレートを得た(M7)。
【0040】
<合成例8>
合成例1と同様の手法で、ジグリセリン(阪本薬品工業製)にエチレンオキサイドを40モル付加した化合物にアクリル酸を反応させることで、ジグリセリンのエチレンオキサイド40モル付加物のアクリレートを得た(A1)。
【0041】
<合成例9>
合成例1と同様の手法で、テトラグリセリン(阪本薬品工業製)にエチレンオキサイドを12モル付加した化合物にアクリル酸を反応させることで、テトラグリセリンのエチレンオキサイド12モル付加物のアクリレートを得た(A2)。
【0042】
<合成例10>
合成例1と同様の手法で、テトラグリセリン(阪本薬品工業製)にエチレンオキサイドを60モル付加した化合物にアクリル酸を反応させることで、テトラグリセリンのエチレンオキサイド60モル付加物のアクリレートを得た(A3)
【0043】
<合成例11>
合成例1と同様の手法で、テトラグリセリン(阪本薬品工業製)にプロピレンオキサイドを18モル付加した化合物にアクリル酸を反応させることで、テトラグリセリンのプロピレンオキサイド18モル付加物のアクリレートを得た(A4)。
【0044】
<合成例12>
合成例1と同様の手法で、テトラグリセリン(阪本薬品工業製)にプロピレンオキサイドを60モル付加した化合物にアクリル酸を反応させることで、テトラグリセリンのプロピレンオキサイド60モル付加物のアクリレートを得た(A5)。
【0045】
<ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル(メタ)アクリレート化合物の物性>
1.重量平均分子量の測定
ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量について、ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(以下GPC)により評価した。GPCによる分析は下記に示した条件で実施し、これにより得られた重量平均分子量により評価した。
・分析機器および分析条件
送液ユニット :LC-20AD(島津製作所製)
カラムオーブン :CTO-20A(島津製作所製)
示差屈折率検出器 :RID-10A(島津製作所製)
カラム :TOSHO guard column HXL-L + TOS
HO TSKgel G2000HXL + TOSHO TSK
gel G2500HXL(TOSHO製)
カラム温度 :40℃
移動相 :テトラヒドロフラン
送液速度 :1.0mL/min
標準試料 :PEG calibration kit
2.粘度の測定
ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル(メタ)アクリレート化合物の粘度について、E型粘度計(HBDV-II+Pro CP、BROOKFIELD製)を用いた。スピンドルにはCPE-40を用い、採取量を0.5mLとして25℃における粘度を測定した。
【0046】
<ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル(メタ)アクリレート化合物を用いた塗膜の評価>
硬化塗膜の作製
ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル(メタ)アクリレート化合物100部に対して、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure184:BASFジャパン製)5部を均一に撹拌混合して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。これをポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラー100-S10、東レ(株)製、厚み100μm)にバーコーターで塗布し、高圧水銀ランプを装着したベルトコンベア式UV照射装置(製品名:アイグランテージECS-401GX、アイグラフィックス(株)製)を用い、硬化塗膜を得た。
【0047】
<透明性の評価>
コーティング塗膜の透明性は目視にて実施した。
〇:コーティング塗膜が透明であり平滑である。
×:コーティング塗膜が着色又は白濁、もしくは塗膜に凹凸がある。
【0048】
<耐水性の評価>
1.水接触角の評価
水接触角の測定は、界面張力計DM-702(協和界面化学製)を用い、θ/2法によりコーティング塗膜と水滴の接触角を測定した。各試料につき10回ずつ測定し、その平均値を水接触角の値とした。得られた水接触角について、以下のように評価した。
○:水接触角が65°以上
△:水接触角が50°以上、65°未満
×:水接触角が50°未満
2.浸漬試験
コーティング塗膜を80℃の水浴に3時間浸漬させた後に、塗膜の剥がれを観察し、以下のように評価した。
○:コーティング塗膜の剥がれが全くない
×:コーティング塗膜の剥がれがある
【0049】
<耐溶剤性の評価>
耐溶剤性は、コーティング塗膜に対しメタノールを1滴滴下し、1分後にイオン交換水で塗膜上の溶剤を洗い流した後、コーティング塗膜表面を目視にて観察し、以下のように評価した。
〇:コーティング塗膜の剥がれがない
×:コーティング塗膜の剥がれがある
【0050】
<密着性の評価>
コーティング塗膜の密着性は、JIS K 5600-5-6に規定された碁盤目テープ法に準拠して評価した。規定された碁盤目テープ法に準拠して評価した。カッターナイフおよびカッターガイドを用いて塗膜上に100マスの碁盤目状の傷をつけた。傷の上からセロハンテープを貼り、引き剥がした際の未剥離のマス数は光学顕微鏡(BZ-8100、KEYENCE製)を用いて確認した。得られた結果について下記のように評価した。
〇:コーティング塗膜の剥がれが0マス
△:コーティング塗膜の剥がれが10マス未満
×:コーティング塗膜の剥がれが10マス以上
【0051】
【0052】
表中、化合物M1~M7、およびA1~A5は合成例1~12に記載されたポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル(メタ)アクリレート化合物を用いた。
【0053】
本実施例のポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物は、例えば、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルアクリレートに比べて粘度が低く、ハンドリング性に優れている。また、反応性が低いことから、これらを配合したコーティング液やレジスト液の貯蔵安定性にも優れる。さらに、本実施例のポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルメタクリレート化合物を硬化させて得られた硬化塗膜は、耐水性に優れることに加え、基材への密着性に優れており、例えば、コーティング材料やレジスト材料に好適に使用することができる。
【0054】
本実施例の化合物は、ポリグリセリン骨格を有している。ポリグリセリン骨格を有するポリエーテルメタクリレート化合物やそれを含有する樹脂組成物は、重合により3次元網目構造を形成するので、様々なプラスチック材料のマトリクス樹脂となりえる。また、本実施例の化合物は疎水性が高いため、様々な樹脂に対しても容易に配合することができる。