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特開2024-152096エンボス成型用ゴムローラー、プラスチックフィルムの製造方法、ならびに表面保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152096
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】エンボス成型用ゴムローラー、プラスチックフィルムの製造方法、ならびに表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B29C59/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066043
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】千田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】藏増 諒
【テーマコード(参考)】
4F209
【Fターム(参考)】
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG05
4F209AJ02
4F209AJ03
4F209AJ05
4F209AJ09
4F209AJ11
4F209PA03
4F209PB02
4F209PC05
4F209PC06
4F209PC08
4F209PJ09
4F209PN04
4F209PN06
4F209PQ03
(57)【要約】
【課題】従来のエンボスローラーを用いて製造されたプラスチックフィルムは、エンボスローラー表面の緻密な凹凸がフィルムに転写するため、ヘイズが大きくなるという特徴があり、ヘイズの大きいプラスチックフィルムを表面保護フィルムとして用いると、被着体に貼合した後の検査工程や外観検査が困難になるという課題を解決する。
【解決手段】ローラーの中心の芯金の表面に、当該芯金に近い側から順に少なくともゴム層とフッ素樹脂層が被覆されたゴムローラーであって、前記フッ素樹脂層は前記ゴムローラーの最外層であり、前記フッ素樹脂層の表面に、縁の形状が円または楕円である曲面状の凹部が複数形成されている、エンボス成型用ゴムローラー。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラーの中心の芯金の表面に、当該芯金に近い側から順に少なくともゴム層とフッ素樹脂層が被覆されたゴムローラーであって、前記フッ素樹脂層は前記ゴムローラーの最外層であり、前記フッ素樹脂層の表面に、縁の形状が円または楕円である曲面状の凹部が複数形成されている、エンボス成型用ゴムローラー。
【請求項2】
前記凹部の深さが2μm以上10μm以下であり、前記フッ素樹脂層の表面1mm2あたりの前記凹部の個数が150個以上2500個以下である、請求項1に記載のエンボス成型用ゴムローラー。
【請求項3】
ダイから溶融樹脂を吐出し、この吐出された溶融樹脂を、請求項1または2に記載のエンボス成型用ゴムローラーと冷却ローラーとで挟圧しながら冷却することにより溶融樹脂を固化して、ウェブ状のプラスチックフィルムを得る、プラスチックフィルムの製造方法。
【請求項4】
単層または複数の層で構成された表面保護フィルムであって、少なくとも一方の最表面が曲面状の凸部を持っており、ヘイズが60%以下である、表面保護フィルム。
【請求項5】
前記凸部の高さが2μm以上10μm以下であり、フィルムの表面1mm2あたりの前記凸部の個数が150個以上2500個以下である、請求項4に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンボス成型用ゴムローラー、またそれを用いたプラスチックフィルムの製造方法、ならびに表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルムの表面に凹凸形状を形成するためのエンボスローラーとして、例えば、特許文献1に記載されているような表面にシリコーンゴムを被覆したゴムローラーが提案されている。特許文献1では、ゴムローラーを構成するシリコーンゴムに粒子径を限定した球状固体粒子を混ぜることで、ゴムローラー表面にサイズが均一化された凹凸が多数形成されている。製造されたプラスチックフィルムは、光学用のプラスチックフィルムや樹脂板などのシート状やウェブ状の被着体に貼り合わせることで、被着体の表面を製造工程中や運搬中のキズや汚れから保護する、表面保護フィルムとして用いることができ、上記製造方法によって製造されたプラスチックフィルムを用いることで、梨地面の被着体への転写を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020―55189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、従来のエンボスローラーを用いて製造されたプラスチックフィルムは、エンボスローラー表面の緻密な凹凸がフィルムに転写するため、ヘイズが大きくなるという特徴があり、ヘイズの大きいプラスチックフィルムを表面保護フィルムとして用いると、被着体に貼合した後の検査工程や外観検査が困難になるという課題があった。
【0005】
本発明はかかる従来の技術の欠点を改良し、エンボス成型用ゴムローラーにおいて凹凸面の被着体への転写を抑制しつつ、製造されるプラスチックフィルムのヘイズを抑制するエンボス成型用ゴムローラー、またそれを用いたプラスチックフィルムの製造方法、ならびに表面保護フィルムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するため、本発明のエンボス成型用ゴムローラーは下記の構成からなる。すなわち、ローラーの中心の芯金の表面に、当該芯金から近い側から少なくともゴム層とフッ素樹脂層が被覆されたゴムローラーであって、前記フッ素樹脂層は前記ゴムローラーの最外層であり、前記フッ素樹脂層の表面に、縁の形状が円または楕円である曲面状の凹部が複数形成されている、エンボス成型用ゴムローラーである。
【0007】
前記凹部は深さが2μm以上10μm以下であり、前記フッ素樹脂層の表面1mm2あたりの前記凹部の個数が150個以上2500個以下であることが好ましい。
【0008】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法は、ダイから溶融樹脂を吐出し、この吐出された溶融樹脂を、上記エンボス成型用ゴムローラーと冷却ローラーとで挟圧しながら冷却することにより溶融樹脂を固化して、ウェブ上のプラスチックフィルムを得ることが好ましい。
【0009】
本発明の表面保護フィルムは、単層または複数の層で構成された表面保護フィルムあって、少なくとも一方の最表面が曲面状の凸部を持っており、ヘイズが60%以下であることが好ましい。
【0010】
前記凸部は、高さが2μm以上10μm以下であり、フィルムの表面1mm2あたりの前記凸部の個数が150個以上2500個以下であることが好ましい。
【0011】
本発明のエンボス成型用ゴムローラーとは、ローラー表面に凹凸が形成されており、前記凹凸をプラスチックフィルムの表面に転写させることで、プラスチックフィルム表面に凹凸を形成させることを目的としたローラーをいう。
【0012】
本発明において、縁の形状が円または楕円であるとは、エンボス成型用ゴムローラー表面の凹部またはプラスチックフィルム表面の凸部の縁の形状が、円または楕円、もしくはそれらが複数重なった縁の形状をいう。
【0013】
本発明において、冷却ローラーとは、溶融樹脂に接触し冷却することで溶融樹脂を固化させることを目的としたローラーをいう。
【0014】
本発明の表面保護フィルムとは、例えば位相差フィルムや輝度上昇フィルムといった光学用のプラスチックフィルム、金属箔やガラス板、樹脂板などといったシート状またはウェブ状の被着体に貼り合わせることで、被着体の表面を製造工程中や運搬中のキズや汚れといったダメージから保護するためのプラスチックフィルムをいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、プラスチックフィルムのヘイズを抑制しつつ、プラスチックフィルム表面に複数の凸部をエンボス成型可能な、エンボス成型用ゴムローラーが提供される。さらに、そのエンボス成型用ゴムローラーを用いたプラスチックフィルムの製造方法が提供される。また本発明により、表面形状を被着体へ転写させることなく、さらにヘイズを抑制した表面保護フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のエンボス成型用ゴムローラーの一実施形態を示す概略側面図である。
図2】本発明のエンボス成型用ゴムローラーの一実施形態を示す概略側面図の拡大図である。
図3】本発明のエンボス成型用ゴムローラーの表面形状を示す一構成例である。
図4】本発明の表面保護フィルムの一実施形態を示す概略断面図である。
図5】本発明のプラスチックフィルムの製造方法の一実施形態を示す概略側面図である。
図6】本発明のプラスチックフィルムの製造方法の別の一実施形態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の最良の実施形態の例を図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明のエンボス成型用ゴムローラー100は、図1に示すように、ローラー中心の芯金3の表面に、芯金3に近い側から順に少なくともゴム層2とフッ素樹脂層1が被覆されている。
【0019】
芯金3の構造は特に限定されないが、図1に示すように、内部に水などの熱媒を流通させるための熱媒流路4を設けてあるなど、エンボス成型用ゴムローラー100の表面温度を制御可能な構造であることが好ましい。エンボス成型用ゴムローラー100の表面温度を下げた場合、図5に示すようなプラスチックフィルムの製造方法におけるエンボス成型用ゴムローラー13として使用した場合に、溶融状態の樹脂との離型性を向上させ、エンボス成型用ゴムローラー13への巻付きを防止しやすく、また溶融樹脂12を固化する速度を上げることとなるため、エンボス成型の速度を向上させることが可能となる。またエンボス成型用ゴムローラー13に対して冷却ローラー14の反対側の位置に冷却用のバックアップローラーを設置したり、エアーもしくはミスト状の水を吹きかける方法でも、エンボス成型用ゴムローラー13の表面温度を下げることができる。またエンボス成型用ゴムローラー100の表面温度を上げた場合、図6に示すようなプラスチックフィルム16の製造方法におけるエンボス成型用ゴムローラー13として使用した場合に、プラスチックフィルム表面の温度を上げることができるため、プラスチックフィルム16の表面が軟化し、エンボス成型用ゴムローラー100の凹凸形状がより転写しやすくなる。
【0020】
芯金3の材質は特に限定されず金属やプラスチック、または繊維強化樹脂など通常の材料から適宜選択して使用することができるが、上記同様、温度制御の観点から熱伝導の高い金属材料を選択することが好ましい。金属材料としては、たとえば炭素鋼やステンレス鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金を選択することができる。
【0021】
エンボス成型用ゴムローラー100の構成は、芯金3に近い側から少なくともゴム層2とフッ素樹脂層1が被覆されており、かつ最外層がフッ素樹脂層1であれば、図2に示すように、芯金3とゴム層2、もしくはゴム層2とフッ素樹脂層1の間に接着剤層6などの他の材質の層が存在してもよい。
【0022】
芯金3とフッ素樹脂層1の間に位置するゴム層2の材質は特に限定されず天然ゴムやブタジエンゴム、ウレタンゴムなど通常のゴムの種類から選択することができるが、ローラー製作の容易さや耐熱性の高さから、主成分がシリコーンであるシリコーンゴムであることが好ましい。シリコーンゴムの中でも、一般にRTV(Room Temperature Vulcanization)シリコーンゴムや液状シリコーンゴムと呼ばれる、架橋によってゴム状弾性体の状態になる前の状態が液状であるシリコーンゴムを用いると、継ぎ目による高低差のない表面を容易に得ることができるため、ゴムローラーをエンボス成型用ゴムローラー13として用いた際に、プラスチックフィルム16のエンボス成型面に継ぎ目が転写しないという利点がある。一方、一般にHTV(High Temperature Vulcanization)シリコーンゴムや熱加硫シリコーンゴムと呼ばれるシリコーンゴムを用いた場合は、RTVに比べて高い耐熱性や強度を得やすい。また、これらを積層して用いることで、両者の利点を得ることが可能となる。
【0023】
ゴム層2を被覆する方法としては、各種ゴムローラーを製造する場合と同様に、シート状の未架橋ゴムを芯金3に巻きつけて架橋する方法や、液状の未架橋ゴムを芯金3に塗布、または吹き付け、または金型内に充填させてから架橋する方法、さらには、架橋済みのゴムチューブに芯金3を挿入し、締め付けまたは接着によって固定する方法などがある。また、ゴム層2の被覆の際は、接着力の向上のために接着剤を用いることもできる。芯金3とゴム層2を接着する際の接着剤は特に限定されず、酢酸ビニル樹脂、アクリル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ニトリルゴムなどを主成分とする通常の接着剤から選択することができるが、主成分がゴム層2と同様の接着剤を用いると、高い接着力が得られる場合が多い。
【0024】
ゴム層2の構成は特に限定されないが、1~3層の範囲の層数が好ましい。この範囲であれば、使用中にゴム層同士の界面での剥がれやせん断破壊の発生を制御しやすく、耐熱性や強度などの任意の機械的特性を付与することができる。
【0025】
ゴム層2のゴム硬度は特に限定されないが、A 30~90(JIS K 6253:2012)の範囲のゴム硬度が好ましく用いられる。また、上記で例示したように種類の異なるゴム層2と積層した構成においては、積層したゴム全体で上記範囲を取ることが好ましい。ゴム硬度が上記範囲内であれば、エンボス成型の際に、エンボス成型用ゴムローラー100や対向するローラーの加工精度やフィルムの幅方向の厚みムラによる接触圧力の不均一を緩和しやすくなり、エンボス加工を均一に行いやすくなるので好ましい。
【0026】
ゴム層2の厚みは特に限定されないが、1~15mmの範囲であることが好ましい。また、上記で例示したように種類の異なるゴム層2と積層した構成においては、積層したゴム全体で上記範囲をとることが好ましい。この範囲であれば、エンボス成型の際に、エンボス成型用ゴムローラー100や対向するローラーの加工精度やフィルム16の幅方向の厚みムラによる接触圧力の不均一を緩和しやすく、エンボス加工を均一に行いやすくなるので好ましい。また、芯金3の内部の熱媒流路4などによって、エンボス成型用ゴムローラー100の表面の温度を制御する際にも、温度制御が容易となるので好ましい。
【0027】
エンボス成型用ゴムローラー100は、中央部から端部に向かって外径を漸減させる、いわゆるクラウン形状としてもよい。エンボス成型用ゴムローラー100の長さや剛性、エンボス時の圧力に応じて、適正なクラウン形状を設けることで、幅方向に均一な圧力分布となり、幅方向に均一にエンボス加工を行いやすくなる。エンボス成型用ゴムローラー100をクラウン形状に加工する方法としては、ゴム層2を中央部から端部に向かって外径を漸減させる方法や、最外層のフッ素樹脂層1を中央部から端部に向かって外径を漸減させる方法を用いることができる。また、エンボス成型用ゴムローラー100をクラウン形状にすることと同様の効果を得る方法として、芯金3をクラウン形状としつつ、エンボス成型用ゴムローラー100を一定の外径とする方法も用いることができる。この場合、表面の外径が一定の外径であることにより、軸方向の周速差による摩擦が生じないため、好ましい。
【0028】
ゴム層2の表面の除去加工の有無、および除去加工方法は特に限定されないが、除去加工を行うと、ゴム層2を被覆する際や保管時に生じた凹凸などを排除することができるため、好ましい。除去加工の方法については、バイトによる切削加工や、サンドペーパーや回転砥石による研磨加工などから適宜選択することができる。
【0029】
フッ素樹脂層1の被覆方法や接着方法は特に限定されないが、一般にフッ素樹脂製の熱収縮チューブにフッ素樹脂層1が被覆されていないエンボス成型用ゴムローラー100を挿入し、外部から熱風ガンやヒーターなどで加熱し、熱収縮によって締め付け、固定させる方法を用いることができる。フッ素樹脂製の熱収縮チューブを用いた被覆であれば、継ぎ目の無い表面を容易に得ることができるため、ゴムローラーをエンボス成型用ゴムローラー13として用いた際に、プラスチックフィルム16のエンボス成型面に継ぎ目が転写しない。また、フッ素樹脂層1とゴム層2の接着力をより強くし、エンボス成型用ゴムローラー13として使用した際のズレや滑り抑制するために、接着剤を用いることができる。フッ素樹脂層1とゴム層2を接着する際の接着剤は、特に限定されず、酢酸ビニル樹脂、アクリル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ニトリルゴムなどを主成分とする通常の接着剤から適宜選択することができるが、主成分がゴム層2と同様の接着剤を用いると、高い接着力が得られる場合が多い。
【0030】
フッ素樹脂層1の材質は特に限定されないが、フッ素樹脂製の熱収縮チューブに一般に用いられる、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)やFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)が好ましい。このような材料を選択することで、安価に熱収縮によるフッ素樹脂層1の被覆をすることが可能となる。
【0031】
フッ素樹脂層1の厚みは特に限定されないが、0.1~1.0mm程度であることが好ましい。この範囲であれば、エンボス成型の際に、エンボス成型用ゴムローラー100や対向するローラーの加工精度やフィルム16の幅方向の厚みムラによる接触圧力の不均一を緩和しやすく、エンボス加工を均一に行いやすくなる。
【0032】
フッ素樹脂層1の表面には、図2図3に示すような縁の形状が円または楕円である曲面状の凹部7が複数形成されている。前記のような形状の凹部7を、後述するように図5図6に示すような方法によって表面保護フィルム101に転写させることで、表面保護フィルム101のエンボス成型面に、凸部8を形成することができる。なお、表面保護フィルム101の表面の凸部8の高さや個数は、エンボス成型用ゴムローラー100のフッ素樹脂層1の凹部7の深さや個数とほとんど同じとなる。
【0033】
本発明者らは、緻密な凹凸形状を持つ表面保護フィルム101のヘイズが大きくなる原因は、フィルム16表面の凹凸の傾きが急であることや入射光と垂直な面の割合が少ないことであると見出した。すなわち、粘着面と略平行な面の割合が少ないと、フィルム16に侵入した入射光のほとんどが屈折するため、ヘイズが大きくなる。また、フィルム16表面の凹凸が無いもしくは著しく少ない場合は、エンボス成型面の離型性が大きく損なわれ、凹凸が緻密でない場合は、被着体と表面保護フィルム101の接触圧力が大きくなり、表面保護フィルム101の凹凸形状が被着体へ転写する。さらに、周囲の凹凸と比較して凹凸の深さや高さが大きすぎるものが存在すると、接触圧力が集中し、被着体に打痕が発生する。
【0034】
これらの知見をもとに鋭意検討した結果、エンボス成型用ゴムローラー100表面の凹部7を縁の形状が円または楕円の曲面とすることで、フィルム16の表面形状の被着体への転写を抑制しつつ、フィルム16のヘイズを低減可能であることを見出した。フィルム16のヘイズが低減し、60%以下となることで、表面保護フィルム101として被着体に貼合した後の検査工程や外観検査を容易に行うことが可能となる。また、エンボス成型用ゴムローラー100表面の凹部7については、深さが2μm以上10μm以下、1mm2あたりの個数が150個以上2500個以下の範囲であることが好ましい。上記範囲であれば、表面保護フィルム101表面の凸部8についても、高さが2μm以上10μm以下、かつ1mm2あたりの個数が150個以上2500個以下となることで、高い離型性を得やすく、表面保護フィルム101を巻き出す際にシワや破れなく剥がしやすくなる。さらに同様の理由から、エンボス成型用ゴムローラー100表面の凹部7について、高さが3.5μm以上5μm以下、かつ1mm2あたりの個数が200個以上1000個以下であると、より好ましい。
【0035】
フッ素樹脂層1表面の凹部7の成形方法は特に限定されないが、粒子を高圧で吹き付ける、いわゆるブラスト加工を施すことが好ましい。さらに、粒子の形状は球状体であることが好ましく、球状体を用いたブラスト加工が、フッ素樹脂層1表面に、縁の形状が円または楕円の曲面状の凹部を成形に好ましい。また、吹き付ける球状体の材質は特に限定されず、スチール、アルミナ、ガラス、セラミック等の一般的な研磨剤の中から適宜選択することができるが、スチールやアルミナを好ましく用いることができる。スチールやアルミナ製の球状体を吹き付けることによって、フッ素樹脂層1に吹き付けた際に吹き付け材が割れたり、凹部7の縁の形状が円または楕円以外となることや、吹き付け材がフッ素樹脂層1の表面に突き刺さったり、エンボス成型時に溶融樹脂12へ吹き付け材が移動することを防止しやすく、好ましい。また、エンボス成型用ゴムローラー100の最外層であるフッ素樹脂層1に、1mm2あたりの個数が150個以上2500個以下、かつ高さが2μm以上10μm以上の凹部7を得ようとする際には、吹き付ける際の圧力やフッ素樹脂層1の厚みや硬さなどによっても異なるが、直径が30μm~120μmの範囲の吹き付け材を用いることで、得られる場合が多い。
【0036】
フッ素樹脂層1の表面の除去加工の有無、および除去加工方法は特に限定されないが、ブラスト加工を施す前に除去加工を行うと、フッ素チューブ製造工程などで生じたキズや打痕を排除することができるため、好ましい。除去加工の方法としては、回転砥石による研磨やバフ研磨、バーチカル研磨等の一般的な研磨方法を用いることができる。
【0037】
図5は、本発明のエンボス成型用ゴムローラーを用いたプラスチックフィルムの製造方法の一例を示す。Tダイ11から吐出された溶融樹脂12を冷却ローラー14とエンボス成型用ゴムローラー13によって挟圧、冷却することによりプラスチックフィルム16を得る。次いで必要に応じ、カッター17などの刃物によってフィルム16を裁断、もしくはフィルムエッジ18のトリミングを行い、ロール状に巻き取られ、フィルムロール21となる。その後、必要に応じ再度スリット工程やその他加工工程を経て製品ロールとなる。なお、ダイはTダイ11に限定されないが、高温で幅方向に均一に溶融樹脂12を押し出すことができるため、Tダイ11が好ましく用いられる。
【0038】
本発明のエンボス成型用ゴムローラーは13、および、100である。これにより、エンボス成型用ゴムローラー100の表面形状をフィルム16に転写し、前述の通り、表面形状の被着体への転写を抑制しつつ、ヘイズを抑制したフィルム16を得ることができる。
【0039】
Tダイ11は図示しない押出機によって混錬され、送られてきた溶融樹脂12を、図面に対し奥行き方向に設けられたスリットから連続的に吐出することにより、溶融樹脂12をシート状に押し出す。押出機とTダイ11の間にポリマーフィルターと呼ばれる濾過装置を設けると、フィッシュアイと呼ばれる異物や劣化樹脂の混入を低減しやすいため好ましい。Tダイ11のスリットの幅は好ましくはフィルム16の幅方向の一定方向毎に調整可能であって、フィルム16の厚みムラを制御する。製膜されるフィルム16の厚みは、溶融樹脂12の吐出速度と冷却ローラー14の回転速度の比によって制御できる。製膜するフィルム16が多層構造である場合には、Tダイ11の上流にフィードブロックと呼ばれる溶融樹脂12の積層装置を設けるか、Tダイ11をマルチマニホールド構造と呼ばれる複数のマニホールドを持つ構造とし共押出とすることにより多層フィルムを得ることが可能である。また、フィルム幅方向の溶融樹脂12の流路幅を規制することで、製膜するフィルム16の幅を変更できる構造としてもよい。
【0040】
Tダイ11と冷却ローラー14およびエンボス成型用ゴムローラー13の位置関係は、調整可能な構造であることが好ましい。通常はエンボス成型用ゴムローラー13の表面形状を溶融樹脂12に精度よく転写するために、冷却前の溶融状態で溶融樹脂12を挟圧することが好ましいため、図5に示すようにニップ点に直接溶融樹脂12が侵入するようTダイ11または冷却ローラー14の位置を調整することが好ましいが、冷却ローラー14及びエンボス成型用ゴムローラー13の位置関係を適宜調整してもよい。
【0041】
溶融樹脂12の温度は使用する樹脂の種類やエンボス成型する速度によって適宜設定されるが、例えば、一般的なポリエチレン樹脂であれば、一般的に130℃以上300℃以下の範囲で設定されうる。
【0042】
冷却ローラー14は例えば内部に熱媒を流通させる流路を有し、表面温度の上昇を制御することができる構造のものが用いられる。冷却ローラー14の表面温度は溶融樹脂12の種類や溶融樹脂12と冷却ローラー14の接触時間、および室温や湿度によって適宜設定されるが、製膜速度やフィルム16の表面品位の観点から、10℃以上60℃以下の範囲であることが好ましい。冷却ローラー14の表面の温度が上記範囲内であれば、実用的な製膜速度の範囲において溶融樹脂12を冷却、固化させることが容易であり、また、製膜中の冷却ローラー14の表面上に結露が発生することによるフィルム16の表面品位の悪化を防ぐことも容易となる。
【0043】
冷却ローラー14の表面の材質は特に限定されないが、金属またはセラミックスまたは樹脂および樹脂と金属の複合膜、さらにはダイヤモンドライクカーボンなどの炭素繊維系皮膜を用いることができる。また、ゴムを冷却ローラー14の表面材質として用いることも可能である。金属としては、鉄や鋼、ステンレスやアルミニウムやチタン、クロム、ニッケル、セラミックスとしては、アルミナや炭化ケイ素、窒化ケイ素などの焼結体から適宜選択することができる。冷却ローラー14の表面形状は溶融樹脂12に転写し、溶融樹脂12とエンボス成型用ゴムローラー13が接触する面の反対側の面形状となるため、フィルム16の外観品位低下や凸状欠点の発生を抑制する観点からも、耐久性および防錆に優れた工業用クロムメッキやセラミックスが好ましく用いられる。冷却ローラー14の表面を金属とするためには、金属素材を用いた通常の機械加工の他、電気メッキや無電解メッキなどの公知の表面処理技術を適宜用いることができる。また、同様にセラミックス表面を得るためには、セラミックス素材を用いた通常の機械加工の他、溶射やコーティングなどの公知の表面処理技術を適宜用いることができる。
【0044】
冷却ローラー14の表面形状は溶融樹脂12に転写し、溶融樹脂12のエンボス成型用ゴムローラー13が接触する面と反対側の面形状を決定する。したがって、製造するプラスチックフィルム16に応じて冷却ローラー14の表面形状は適宜設計されるが、本発明の表面保護フィルム101を製造する場合には、冷却ローラー14の算術平均粗さRa(JIS B B0601:2013)は0.2μm以下であることが好ましく、より好ましくはRa0.1μm以下である。本発明の表面保護フィルム101を製造する場合には、上記反対面は被着体に貼合する粘着面となり、その粘着力は粘着面の算術平均粗さRaが大きいほど小さくなり、被着体に接着しにくくなるため、上記範囲が好ましい。粘着付与材などの添加材を樹脂に混ぜることにより、粘着力を強くすることも可能ではあるが、本発明の表面保護フィルム101を被着体から剥がした際に被着体に添加剤が残留する、もしくは添加剤によって樹脂の再利用が困難になることがあるため、表面粗さを上記範囲として、樹脂単体で本発明の表面保護フィルム101として十分な粘着力を発現させることが品質面でもコスト面でも好ましい。
【0045】
冷却ローラー14にエンボス成型用ゴムローラー13を押し付け、溶融樹脂12を狭圧する手段としては、冷却ローラー14とエンボス成型用ゴムローラー13間の隙間またはエンボス成型用ゴムローラー13の押し込み量、すなわちエンボス成型用ゴムローラー13と冷却ローラー14との相対位置について、テーパーブロックなどを挟み込む方法によって制御する方法を用いてもよいし、エンボス成型用ゴムローラー13を押し付ける力をエアシリンダーなどによって制御する方法を用いてもよい。ただし、ニップ点での溶融樹脂12の厚みが100μm以下であるような薄いフィルムを製造する場合や、エンボス成型用ゴムローラー13の硬度がA 90よりも大きい場合は、押し込み量による制御では圧力のムラが大きくなりすぎる場合があるため、押付力を制御する方法が好ましい。押付圧力は適宜設定されるが、0.1kN/m以上30kN/m以下程度の範囲とすることが好ましい。押付圧力が上記範囲であれば、エンボス成型用ゴムローラー13の表面の溶融樹脂への転写が良好に行われやすい。
【0046】
また図6に示すように、既に製造されたプラスチックフィルム32を加熱することで、少なくともエンボス加工を施す側の表面を加工可能な状態まで軟化した後、エンボス成型用ゴムローラー13と受けローラー34で挟圧する方法でも、同様にエンボス加工が施されたプラスチックフィルム16を得ることができる。
【0047】
図4は本発明の表面保護フィルム101の一実施形態の断面図を示す。本発明の表面保護フィルム101は、本発明のエンボス成型用ゴムローラーによって、またはそれを用いたプラスチックフィルムの製造方法によって製造することができる。前述の通り、本発明の表面保護フィルム101の表面には、エンボス成型用ゴムローラー100表面の凹部7とほとんど同様の形状、個数および凹部7の深さとほとんど同様の高さを持つ凸部8が形成される。これにより、フィルム16の表面形状の被着体への転写を抑制しつつ、フィルム16のヘイズを低減し、ヘイズを60%以下とすることができるため、表面保護フィルム101として被着体に貼合した後の検査工程や外観検査を容易に行うことが可能となる。さらにヘイズが50%以下であれば被着体に貼合した後の検査をより高精度または容易に行うことができるため、好ましい。また、前述の通り離型性向上の観点から、本発明の表面保護フィルム101表面の凸部8は高さが2μm以上10μm以下、かつ1mm2あたりの個数が150個以上2500個以下であることが好ましく、1mm2あたりの凸部8の個数が200個以上1000個以下、かつ凸部8の高さが3.5μm以上5μm以下であれば、より好ましい。
【0048】
本発明の表面保護フィルム101の厚みは特に限定されないが、15μm以上100μm以下の範囲であれば、表面保護フィルム101表面にエンボス成型用ゴムローラー100の表面形状を十分に転写することができ、被着体への貼合後の搬送時に高いハンドリング性が得られるため、好ましい。また20μm以上50μm以下の範囲であれば、表面形状の転写性とハンドリング性のバランスが良く、より好ましい。
【0049】
本発明の表面保護フィルム101は単層構造であってもよく、2層以上からなる多層構造であってもよい。例えば、単層構造とした場合には装置構成が単純になるため、設備費及び保全費を抑制することができる。また、3層構造として中間層に再利用原料を用いた場合では、原料コストを抑制することができる。また、単層構造または多層構造とする場合においても各層の樹脂を同種のものとすれば、容易に原料を再利用することができる。
【0050】
本発明の表面保護フィルム101は、両方の面に凸部8が形成されていてもよいが、少なくとも一方の面の最表面は複数の凸部8を持つ。一方の面のみに凸部8を成形し、被着体に貼合する面を平滑面、もう一方の面を凹凸面としたプラスチックフィルム16を本発明の表面保護フィルム101として用いると、貼合後にロール状に巻き取った際に、フィルムの表裏が剥がれなくなる、もしくはシワの発生を防ぐことができるので好ましい。
【0051】
本発明の表面保護フィルム101を構成する樹脂としては特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2、6-ナフタレートなどに代表されるポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどに代表されるポリビニル、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイドなどから、要求される特性に応じて適宜選択することができるが、ポリオレフィンを用いることが好ましい。その中でも、凸部8を形成する層と粘着面を形成する層に低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが特に好ましい。硬い樹脂で凸部8を形成すると、フィルム16をロール状に巻き取った際に、凸部8の形状が被着体に転写して粘着力が下がる、もしくは被着体に貼り付けた後にロール状に巻き取った際に、被着体の表面に凸部の形状が転写するといった問題が発生する場合がある。凸部8を形成する層に柔らかいLDPEやLLDPEを用いると、これらの問題を生じにくいので好ましい。また、これらの樹脂は表面の算術平均粗さRaを0.1μm以下にすることで、粘着剤などの添加材を添加することなく、平滑な被着体に対して粘着力を発現することができる。これにより、粘着面にLDPEやLLDPE等の樹脂を用いた場合、表面保護フィルム101を剥がした際に、粘着剤のブリードアウトによって、粘着剤が被着体の表面に残ってしまうことを防止できるため好ましい。一方で、凸部8を形成する層と粘着面を形成する層以外の層には、その他の樹脂を使用することができる。たとえば、LDPEやLLDPEだけでフィルム16を構成すると剛性が不足する場合には、高密度ポリエチレンやポリプロピレンを用いることで剛性を高めることができる。本発明の表面保護フィルム101においてはある程度剛性が高い方が、シワやカールといった工程問題を起こしにくく、使用しやすい場合がある。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、各種評価、測定方法を以下に示す。
【0053】
[エンボス成型用ゴムローラー表面の凹部の数]
エンボス成型用ゴムローラーの表面をレーザー顕微鏡(オリンパス社製OLS4100)で観察し、1mm2の範囲内の凹部の個数をカウントした。凹部のカウントはエンボス成型用ゴムローラーの全周全幅にて合計20箇所行い、平均値を算出した。なおカウントの際の倍率は20倍である。
【0054】
[エンボス成型用ゴムローラー表面の凹部の深さ]
エンボス成型用ゴムローラーのエンボス面の表面を前記レーザー顕微鏡で観察し、1mm2の範囲内の凹部の深さを測定した後、平均値を算出した。凹部の深さの測定はエンボス成型用ゴムローラーの全周全幅にて合計20箇所行った。なお深さ測定の際の倍率は20倍である。また、凹部の深さは凹部の最も深い部分と凹部の周囲の平均高さの差を測定した。
【0055】
[プラスチックフィルム表面の凸部の数]
表面保護フィルムのエンボス面の表面を前記レーザー顕微鏡で観察し、1mm2の範囲内の凸部の個数をカウントした。凸部のカウントは表面保護フィルムの全体にて合計20箇所行い、平均値を算出した。なおカウントの際の倍率は20倍である。
【0056】
[プラスチックフィルム表面の凸部の高さ]
表面保護フィルムのエンボス面の表面を前記レーザー顕微鏡で観察し、1mm2の範囲内の凸部の高さを測定した後、平均値を算出した。凸部の高さの測定は表面保護フィルムの全体にて合計20箇所行った。なお深さ測定の際の倍率は20倍である。また、凸部の高さは凸部の最も高い部分と凸部の周囲の平均高さの差を測定した。
【0057】
[プラスチックフィルムのヘイズ]
エンボス成型用ゴムローラーを用いて表面保護フィルムを製造し、表面保護フィルムのヘイズをヘイズメーター(日本電色工業製NDH-5000)を用いてフィルム全体で合計10箇所測定し、平均値を算出した。
【0058】
[被着体への転写]
プラスチックフィルムを、アクリル樹脂を原料とする位相差フィルムに貼合し、巻き取った状態で30日間、22~26℃の温度下で保管し、その後巻き出して転写の有無を目視によって確認した。
【0059】
[実施例1]
熱媒流路を保有するステンレス鋼製の芯金に、厚さ8mmになるようHTVシリコーンゴムを被覆し、さらに厚さ0.2mmのPFA製の熱収縮チューブを被覆することで、面長1.5mのエンボス成型用ゴムローラーを製作した。最外層であるフッ素樹脂層の表面には、バフ研磨を施した後、スチール製の球状体の吹き付け材を凹部の深さが1.6~2.0μm、1mm2あたりの凹部の個数が4000~4500個になるように吹き付けた。結果、エンボス成型用ゴムローラー表面に形成された凹部の縁の形状は円と楕円の混在であり、エンボス成型用ゴムローラー表面の凹部の深さは2.0μm、凹部の個数は1mm2あたり4060個であった。その後、製作したエンボス成型用ゴムローラーを用いて、図5に示す方法でLDPEを主成分とする表面保護フィルムを製造した。製造した表面保護フィルムに対して、凸部の数、凸部の高さ、ヘイズ、被着体への転写の有無をそれぞれ測定、確認した。表面保護フィルムの凸部は曲面状であった。
【0060】
[実施例2]
実施例1と同様の条件でエンボス成型用ゴムローラーを製作し、凹部の深さが1.6~2.0μm、1mm2あたりの個数が2300~2800個になるようスチール製の球状体を吹き付けた。結果、エンボス成型用ゴムローラー表面に形成された凹部の縁の形状は円と楕円の混在であり、エンボス成型用ゴムローラー表面の凹部の深さは2.0μm、凹部の個数は1mm2あたり2480個であった。製造した表面保護フィルムに対して、凸部の数、凸部の高さ、ヘイズ、被着体への転写の有無を測定、確認した。表面保護フィルムの凸部は曲面状であった。
【0061】
[実施例3]
実施例1と同様の条件でエンボス成型用ゴムローラーを製作し、凹部の深さが10.2~10.6μm、1mm2あたりの個数が100~500個になるようスチール製の球状体を吹き付けた。結果、エンボス成型用ゴムローラー表面に形成された凹部の縁の形状は円と楕円の混在であり、エンボス成型用ゴムローラー表面の凹部の深さは10.5μm、凹部の個数は1mm2あたり140個であった。製造した表面保護フィルムに対して、凸部の数、凸部の高さ、ヘイズ、被着体への転写の有無を測定、確認した。表面保護フィルムの凸部は曲面状であった。
【0062】
[実施例4]
実施例1と同様の条件でエンボス成型用ゴムローラーを製作し、凹部の深さが4.2~4.6μm、1mm2あたりの個数が500~1000個になるようスチール製の球状体を吹き付けた。結果、エンボス成型用ゴムローラー表面に形成された凹部の縁の形状は円と楕円の混在であり、エンボス成型用ゴムローラー表面の凹部の深さは4.5μm、凹部の個数は1mm2あたり670個であった。製造した表面保護フィルムに対して、凸部の数、凸部の高さ、ヘイズ、被着体への転写の有無を測定、確認した。表面保護フィルムの凸部は曲面状であった。
【0063】
[比較例1]
特許文献1の実施例1に記載の通り、RTVシリコーンゴム原料に粒子径が0.8μm以下のものおよび30μm以上のものを含まないように、体積平均粒子径3.5μmのアルミナ球状粒子を添加し、エンボス成型用シリコーンゴムローラーを製作した。さらに、製作した前記エンボス成型用シリコーンゴムローラーを用いて、主成分がLDPEの表面保護フィルムを製造した。エンボス成型用シリコーンゴムローラー表面の凹凸形状は、シリコーンゴムに含まれる球状個体粒子のサイズに由来しているが、実施例1~4のローラー表面と凹凸形状が異なるため、凹部の深さは測定することができなかった。凹部の個数に関しては、1mm2あたりの10000個以上であった。製造した表面保護フィルムに対して、凸部の数、凸部の高さ、ヘイズ、被着体への転写の有無を測定、確認した。
【0064】
[比較例2]
実施例1と同様の条件でエンボス成型用ゴムローラーを製作し、凹部の深さが1.6~2.0μm、1mm2あたりの個数が4000~4500個になるよう、珪砂製の研磨剤を吹き付けた。結果、エンボス成型用ゴムローラー表面に形成された凹部の縁の形状が多角形もしくは多角形が重なった形状であり、内部形状は曲面ではなく多面体であった。また、エンボス成型用ゴムローラー表面の凹部の深さは2.0μm、凹部の個数は1mm2あたり4230個であった。製造した表面保護フィルムに対して、凸部の数、凸部の高さ、ヘイズ、被着体への転写の有無を測定、確認した。表面保護フィルムの凸部は縁の形状が多角形もしくは多角形が重なった形状であり、外部形状は多面体であった。
【0065】
実施例1~4および比較例1および2の結果を表1に示す。比較例1および2で製造したフィルムはヘイズが60%よりも大きくなったのに対し、実施例1~4で製造したフィルムはいずれもヘイズが60%以下となった。また被着体への転写は比較例2のみで発生し、比較例2ではローラー表面に研磨剤が突き刺さっている様子も確認された。ヘイズが60%以下かつ転写が確認されなかった実施例1~4について、実施例1~3はフィルムを巻き出す際に剥離音が生じたが、実施例4では剥離音は生じず、高い離型性を有していることが確認できた。
【0066】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、表面保護フィルムの製造方法に限らず、少なくとも一方の面がエンボス形成されたプラスチックフィルムの製造方法にも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 フッ素樹脂層
2 ゴム層
3 芯金
4 熱媒流路
5 軸受
6 接着剤層
7 凹部
8 凸部
11 Tダイ
12 溶融樹脂
13 エンボス成型用ゴムローラー
14 冷却ローラー
15 引き剥がしローラー
16 フィルム
17 カッター
18 フィルムエッジ
19 エッジ吸引管
20 エアローラー
21 フィルムロール
31 エンボス成型前のフィルムロール
32 エンボス成型前のフィルム
33 プラスチックフィルムの加熱手段
34 受けローラー
100 エンボス成型用ゴムローラー
101 表面保護フィルム
A フィルムの搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6