(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152110
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】現像スリーブ及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G03G15/08 221
G03G15/08 235
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066090
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 一敏
(72)【発明者】
【氏名】細谷 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊行
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 明彦
【テーマコード(参考)】
2H077
【Fターム(参考)】
2H077AD06
2H077AD13
2H077FA03
2H077FA16
2H077GA03
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、現像剤搬送能力の耐久性に優れ、良質な画像品質を維持することのできる現像スリーブ及び電子写真画像形成装置を提供することである。
【解決手段】トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用現像スリーブであって、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする現像スリーブ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用現像スリーブであって、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有する
ことを特徴とする現像スリーブ。
【請求項2】
前記現像スリーブが、0.8質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の現像スリーブ。
【請求項3】
表面に樹脂層を有さない
ことを特徴とする請求項1に記載の現像スリーブ。
【請求項4】
表面に溝を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の現像スリーブ。
【請求項5】
表面にサンドブラスト加工が施されている
ことを特徴とする請求項1に記載の現像スリーブ。
【請求項6】
前記現像スリーブの表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、前記キャリアの粒径以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の現像スリーブ。
【請求項7】
前記アルミニウム合金がマグネシウムを含有し、
前記マグネシウムの含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して5.0質量%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の現像スリーブ。
【請求項8】
前記アルミニウム合金がマンガンを含有し、
前記マンガンの含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して2.0質量%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の現像スリーブ。
【請求項9】
前記ケイ素の含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して0.6質量%超、4.4質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の現像スリーブ。
【請求項10】
トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する現像スリーブを備えた電子写真画像形成装置であって、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有する
ことを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像スリーブ及び電子写真画像形成装置に関する。より詳しくは、現像剤搬送能力の耐久性に優れ、良質な画像品質を維持することのできる現像スリーブ及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子方式による画像形成においては、安価で加工が容易なアルミニウムを用いた材料から構成される部材を現像剤の搬送部材として用いることが多くなってきている。
【0003】
上記の例として、例えば特許文献1が挙げられる。これは上記の搬送部材としてアルミニウム製のスリーブを用いて、二成分現像剤による画像形成時の画像不良の問題を改善している。
【0004】
しかしながら、長期使用時に現像スリーブが摩耗することにより上記の凹凸が小さくなっていくため、外周表面の粗さを適切に保ち、優れた搬送性を維持するためには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、現像剤搬送能力の耐久性に優れ、良質な画像品質を維持することのできる現像スリーブ及び電子写真画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用の現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することによって上記課題を解決できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用現像スリーブであって、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする現像スリーブ。
【0009】
2.前記現像スリーブが、0.8質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする第1項に記載の現像スリーブ。
【0010】
3.表面に樹脂層を有さないことを特徴とする第1項に記載の現像スリーブ。
【0011】
4.表面に溝を有することを特徴とする第1項に記載の現像スリーブ。
【0012】
5.表面にサンドブラスト加工が施されていることを特徴とする第1項に記載の現像スリーブ。
【0013】
6.前記現像スリーブの表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、前記キャリアの粒径以上であることを特徴とする第1項に記載の現像スリーブ。
【0014】
7.前記アルミニウム合金がマグネシウムを含有し、前記マグネシウムの含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して5.0質量%以下であることを特徴とする第1項に記載の現像スリーブ。
【0015】
8.前記アルミニウム合金がマンガンを含有し、前記マンガンの含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して2.0質量%以下であることを特徴とする第1項に記載の現像スリーブ。
【0016】
9.前記ケイ素の含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して0.6質量%超、4.4質量%以下の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の現像スリーブ。
【0017】
10.トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する現像スリーブを備えた電子写真画像形成装置であって、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする電子写真画像形成装置
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、現像剤搬送能力の耐久性に優れ、良質な画像品質を維持することのできる現像スリーブ及び電子写真画像形成装置を提供することができる。
【0019】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0020】
本発明の現像スリーブは、トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用現像スリーブであって、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。
【0021】
従来、現像スリーブに優れた搬送性を付与するために、例えばアルミニウム製の現像スリーブの表面にブラスト処理等を施すことによって、初期的に粗さを付与していた。しかしながら、長期使用時に現像スリーブの表面が摩耗し、その外周表面の粗さを適切に保つことができず、キャリアの搬送性が低下することがわかった。
【0022】
二成分現像剤に含まれるキャリアとトナーをアルミニウム製の現像スリーブで搬送するシステムにおいては、トナーを現像ニップ部に搬送するためにはトナーを保持したキャリアの搬送性が重要となる。
【0023】
キャリアを現像スリーブ表面に保持して搬送させるための手段として、従来、現像スリーブ表面とキャリアとの摩擦力を高めるためサンドブラスト処理等で当該現像スリーブ表面に粗さを付与する手段が取られている。しかしながら、この初期的に付与した粗さは、長期使用していく中で、主にフェライトが用いられるキャリアとの摺擦によって粗さの凸凹形状部分が削られる。そして、キャリアとの摩擦力が低下してキャリアが搬送されにくくなるという現象が生じるという問題があった。
【0024】
また、現像スリーブ表面の粗さを減少させる要因として、トナー中に含まれる外添剤(Si等)との摺擦も挙げられる。現像スリーブ表面の粗さが低下し、当該現像スリーブ表面とキャリアとの摩擦力が低下すると、当該キャリアが当該現像スリーブ表面に保持されず、スリップする現象が発生する。そして、現像スリーブ表面に現像剤が保持されず、当該現像スリーブ表面がむき出しになる現象が発生する場合がある。
【0025】
現像スリーブ表面に現像剤が存在せず、現像スリーブ表面がむき出しになる状態になってしまうと、むき出しになった部分となっていない部分で現像性に違いが生じ、濃度ムラが発生するようになってしまう。主に、現像剤が保持されず、現像スリーブ表面がむき出しになった部分は現像性が低下するため、濃度低下が生じてしまう。
【0026】
本発明では、上記の現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有する。これによって、アルミニウム相中にケイ素の微結晶(共晶)が分散された海島構造が形成され、現像スリーブの外周表面には適度な凸凹が形成される。
【0027】
また、アルミニウムとケイ素は硬度が異なるため、ケイ素の含有量をある特定の範囲内とすることで長期使用時にも現像スリーブ表面の粗さが適切に維持される。そして、これにより現像スリーブのキャリア搬送能力の耐久性を向上させ、画像形成時にも良質な画像品質を維持することができると推察される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】シャフトがマグネットローラーを貫通しない構成の現像ローラーの断面図
【
図3】シャフトがマグネットローラーを貫通する構成の現像ローラーの断面図
【
図4】温度変化によるケイ素の状態を説明するための図
【
図5】(a)ケイ素含有率7mass%時のSi-Al合金の共晶状態を表す撮影画像(b)ケイ素含有率12.6mass%時のSi-Al合金の共晶状態を表す撮影画像(c)ケイ素含有率18mass%時のSi-Al合金の共晶状態を表す撮影画像
【
図8】本発明の電子写真画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図
【
図9】(a)マスク治具の形状を表す立体概略図(b)現像スリーブにマスク治具を押し充てる前の状態を表す平面概略図(c)現像スリーブにマスク治具を押し充てた状態を表す平面概略図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の現像スリーブは、トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用現像スリーブであって、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態(態様)に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0030】
本発明の実施形態としては、前記現像スリーブが、0.8質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することが、現像剤搬送能力の耐久性及び良質な画像品質を維持する観点から好ましい。
【0031】
前記現像スリーブが、当該現像スリーブの表面に樹脂層を有さないことが、適切な表面粗さを付与する観点から好ましい。
【0032】
前記現像スリーブの表面に溝を有することが、現像剤の搬送性向上の観点から好ましい。
【0033】
前記現像スリーブの表面にサンドブラスト加工が施されていることが、現像剤の搬送性向上の観点から好ましい。
【0034】
前記現像スリーブの表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、前記キャリアの粒径以上であることが、現像剤の搬送性を維持する観点から好ましい。
【0035】
前記アルミニウム合金がマグネシウムを含有し、前記マグネシウムの含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して5.0質量%以下であることが、前記現像スリーブの強度を向上させ、かつ現像スリーブの表面に形成する溝加工や現像ローラーに求められる振れ精度を安定化させる観点から好ましい。
【0036】
前記アルミニウム合金がマンガンを含有し、前記マンガンの含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して2.0質量%以下であることが、前記現像スリーブの強度を向上させ、かつ現像スリーブの表面に形成する溝加工や現像ローラーに求められる振れ精度を安定化させる観点から好ましい。
【0037】
前記ケイ素の含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して0.6質量%超、4.4質量%以下の範囲内であることが、長期使用時に現像スリーブの表面粗さを維持することで現像剤の搬送性を向上させ、かつ当該現像スリーブの表面に形成する溝加工や現像ローラーに求められる振れ精度を安定化させる観点から好ましい。
【0038】
本発明の電子写真画像形成装置は、トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する現像スリーブを備えた電子写真画像形成装置であって、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。
【0039】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0040】
1.現像スリーブ
本発明の現像スリーブは、トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用現像スリーブであって、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。
【0041】
アルミニウム合金を主成分とすることが好ましく、現像スリーブのうち80質量%以上がアルミニウム合金であることがより好ましいが、100質量%がアルミニウム合金であることがさらに好ましい。また、本発明の現像スリーブが、0.8質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することが、現像剤搬送能力の耐久性及び良質な画像品質を維持する観点から好ましい。
【0042】
本発明の「現像スリーブ」とは、適度に帯電させた現像剤を担持し、隣接する別の現像スリーブや、静電荷像が形成された感光体に当該現像剤を供給する機能を有する手段であって、例えば電子写真画像形成装置が備える現像ローラーの一部の構成要素であり得る。なお、当該現像ローラーは、例えば現像スリーブ、フランジ、シャフト及びマグネットローラーで構成される。ただし、本発明の「現像スリーブ」をその構成の一部とする現像ローラーは、マグネットローラーのようなマグネット部をその構成の一部として含まなくてもよい。
【0043】
図1は、現像スリーブを備えた現像ローラーの外観図の例である。現像スリーブは、回転自在で筒状であり、現像剤を表面に担持して搬送する役割を担う。
図1に示すように、現像スリーブ11の表面には、現像ローラー10の軸方向に伸びる複数の溝20が円周方向に所定間隔で形成されている。なお、本発明の現像スリーブの表面は、上記の溝がない構成としてもよい。
【0044】
また、
図2及び
図3は、本発明の現像スリーブの一例であり、それぞれ形状の異なるマグネットローラー及びシャフトの構成を備えた現像ローラーの軸方向の断面図である。ただし、本発明の現像スリーブをその構成の一部とする現像ローラーは、マグネットローラーのようなマグネット部をその構成の一部として含まなくてもよく、
図2及び
図3の構成に限定されるものではない。
【0045】
図2は、シャフトがマグネットローラーを貫通しない構成の現像ローラーの断面図である。
図2に示すように、現像ローラー10は、マグネットローラー12に形成された穴にシャフトを挿入することによってシャフト16を固定し、マグネットローラー12の外周に非磁性体の現像スリーブ11を備えている。
【0046】
図3は、シャフトがマグネットローラーを貫通する構成の現像ローラーの断面図である。
図3に示すように、現像ローラー10は、シャフト16の周囲にマグネットローラー12を固定し、マグネットローラー12の外周に非磁性体の現像スリーブ11を備えている。
【0047】
現像スリーブ11はマグネットローラー12の外側に備えられたベアリング等の軸受け部17を介してマグネットローラー12とは所定の間隙を持って連結されている。現像スリーブ11の軸方向の軸受け部17の外側には、反駆動側フランジ18、駆動側フランジ19が現像スリーブ11に対して連結されている。なお、反駆動側フランジ18と駆動側フランジ19は逆であってもよく、これに限定されることはない。反駆動側フランジ18、駆動側フランジ19は、現像容器に対して保持されつつ、現像スリーブ11と共に回転駆動される。
【0048】
(1.1)アルミニウム合金
本発明に係る現像スリーブが有するアルミニウム合金には、上記のフランジ、シャフト及びマグネットローラーを構成する材料を含まない(
図1、
図2及び
図3参照。)。
【0049】
上記アルミニウム合金は、ケイ素を含有するアルミニウム合金を含み、前記ケイ素の含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して0.6質量%超である。本発明の現像スリーブにケイ素が含有されることにより、当該現像スリーブの表面に粗さを付与することができる。そして、アルミニウムとケイ素の硬さの違いにより長期使用時の現像スリーブの表面の摩耗量を両者で異ならせることができ、上記現像スリーブの表面に適切な表面粗さを付与し、維持することができる。
【0050】
ケイ素の含有量が0.6質量%以下であると、長期使用時の現像スリーブの摩耗によりその表面に十分な粗さが付与できず、搬送力の低下を生じる。
【0051】
ケイ素含有量を増やすと、現像スリーブの表面に粗さを付与することができ、かつ、長期使用時にその表面が摩耗していく際も、含有されたケイ素の効果により表面の粗さが持続し、現像スリーブとしての強度も増していく。
【0052】
ただし、ケイ素の含有量が12.6質量%以下であると、ケイ素とアルミニウムの共晶による粗大結晶(凸部)が発生しにくいため、長期使用時に現像スリーブの表面粗さを維持することでキャリアの搬送性を向上させやすい。また、ケイ素を増やし過ぎると強度が増す一方、溝を形成させる等の加工がしにくくなるため、加工性という観点からはケイ素含有量の上限値としては4.4質量%以下が好ましい。
【0053】
前記ケイ素の含有量が、前記アルミニウム合金の全質量に対して0.6質量%超、4.4質量%以下の範囲内であることが、現像スリーブの抵抗が均一となり、現像スリーブの表面に形成される層が剥がれることを抑制する観点から好ましい。
【0054】
上記アルミニウム合金には、強度確保のためにケイ素以外にマグネシウムやマンガンを含有させるが、マグネシウムやマンガンの含有量を多くし、強度を上げすぎると、例えば現像スリーブの表面に形成する溝や現像ローラーに求められる振れ精度に影響を及ぼす。したがって、マグネシウムの含有量は5.0質量%以下であることで上記の振れ精度が安定化するため好ましい。また、上記と同様の観点から、マンガンの含有量は2.0質量%以下であることが好ましい。なお、「振れ精度」とは、JIS B0021で定めた軸方向又は円周方向の全振れ交差を意味する。
【0055】
(1.2)表面
本発明の現像スリーブの表面に樹脂層を有さないことが、適切な表面粗さを付与する観点から好ましい。前述したが、本発明では、現像スリーブを構成するアルミニウム相中にケイ素の微結晶(共晶)が分散された海島構造を形成し、当該現像スリーブの外周表面に適度な凸凹が形成することによって現像剤搬送能力の耐久性を向上させる。
【0056】
図4は、温度変化によるケイ素の状態を説明するための図である。例えばケイ素を含有するアルミニウム合金(以下、「ケイ素を含有するアルミニウム合金」を単に「Si-Al合金」ともいう。)は、
図4に示すように577℃、ケイ素含有比率12.6mass%に共晶点を持つ共晶系で、液体状態(L)の合金を冷却すると共晶凝固を行う。
【0057】
図5は、ケイ素を含有するアルミニウム合金の粉体サンプルのミクロ組織の共晶状態を撮影した画像の一部である。
図5(a)は、ケイ素含有率7mass%、
図5(b)、ケイ素含有率12.6mass%、
図5(c)は、ケイ素含有率18mass%の共晶状態を撮影した画像である。
【0058】
共晶で晶出するケイ素の結晶はアルミニウムをほとんど固溶せず、
図5(b)に示すように薄く幅の狭い板状結晶として成長する。一方、ケイ素含有率が上昇して過共晶状態となると
図5(c)のように異方性のある粗大結晶が生成する。
【0059】
共晶組成領域のSi-Al合金の表面は、
図5(a)又は
図5(b)のような海島構造を有し、ケイ素含有量に応じた表面粗さを与える(北岡山治、他 軽金属, Vol.38,(7), 426, (1988)参照。)。
【0060】
本発明の現像スリーブの表面に適切な粗さを付与する方法に特に制限はないが、前記現像スリーブの表面にサンドブラスト加工が施されていることが、現像剤の搬送性向上の観点から好ましい。サンドブラスト加工を施すことにより、現像スリーブの表面に凹凸を形成することで外周表面の粗さを適切に保ち、優れた搬送性を確保することができる。
【0061】
ケイ素が含有されていると、サンドブラスト処理した際にもケイ素が現像スリーブの表面上で、当該ケイ素が含有されている部分とそうでない部分での削れ方が異なるため、適切な表面粗さを付与することができる。
【0062】
サンドブラスト加工は、現像スリーブの表面にブラスト材を投射して、その表面をブラスト材で凹状にへこませて、凹凸形状を形成する処理である。更に詳しくは、サンドブラスト加工としては、エアーブラスト加工、ウェットサンドブラスト加工、ショットブラスト加工等を挙げることができる。
【0063】
サンドブラスト加工に適用可能な材料としては、特に制限されず、公知のものを適宜使用することができる。具体的には、ガラスビーズ、アルミナ粒子、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子などを挙げることができる。有機微粒子も用いることができ、例えばメラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、架橋化アクリル樹脂粒子などを挙げることができる。
【0064】
サンドブラスト加工に適用可能な材料としては、弾性層を凹ませるが表層表面は引き裂かない程度の衝撃力を付与するという観点から、特に、球状ガラスビーズやアルミナビーズが好ましい。これらの材料は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、上記の材料の体積平均粒径としては、目的とする現像スリーブの表面の凹凸サイズにより異なるが、3~200μmの範囲内であるものが好ましく、10~100μmの範囲内であるものがより好ましく、20~80μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0066】
前記現像スリーブの表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、前記キャリアの粒径以上であることが、現像剤の搬送性を維持する観点から好ましい。本明細書において、「粗さ曲線要素の平均長さRSm」とは、粗さの山と山の間隔の平均距離のことであり、JIS規格B0601―2013(製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義及び表面性状パラメータ)に準拠するものである。以下、「粗さ曲線要素の平均長さRSm」を単に「RSm」ともいう。「現像スリーブ表面の粗さ曲線要素の平均長さRSm」とは、粗さ曲線における起伏の一周期分に相当する要素の長さである。
【0067】
図6は、現像スリーブ表面の起伏の一部の部分拡大図であり、上記の「RSm」は、例えば
図6におけるRs1が表す長さである。なお、本発明に係る「RSm」は、
図6のような溝形状に限定されるものではなく、例えば溝のない表面における表面粗さを測定したものであってもよい。「Rsm」は、例えば(株)小坂研究所製の表面粗さ測定器(型式:SE700)によって測定することができる。
【0068】
現像スリーブの表面において、上記のRsmがキャリア粒径以上となった場合には、現像スリーブ表面の現像剤搬送能力がより高まり、搬送量の低下が抑制され、ハーフトーン画像での濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0069】
前記現像スリーブの表面に溝を有することが、現像剤の搬送性向上の観点から好ましい。
図7は、現像スリーブの断面の一部の部分拡大図である。溝20は、現像スリーブ11の回転方向Xに対して上流側に位置する上流壁面21と下流側に位置する下流壁面22とで形成されるV字溝である。
【0070】
なお、本発明の現像スリーブの断面形状は、
図7に示すような溝20のようなV字溝形状に制限されず、平底形状や円弧形状であってもよい。このように表面に溝20を形成した現像スリーブ11は、耐摩耗性に優れ、現像剤を表面に担持しての搬送性も優れている。例えば現像スリーブの軸方向に延びる溝を円周方向に所定間隔で複数本形成することによって、長期使用時の現像スリーブの耐久性は向上し現像剤の搬送性が向上する。
【0071】
溝の深さDは、40~120μmの範囲内が搬送性に優れる観点から好ましい。溝の深さDは、(株)キーエンスのレーザー顕微鏡(型式:VKX-200)で撮影し、算出することができる。溝の頂角αは、80以上であることが現像剤の目詰まりによる搬送性の低下を抑制する観点から好ましく、120°以下であることが当該現像剤の搬送性向上の観点から好ましい。現像スリーブの周方向の溝本数としては、40~120本の範囲内であることが好ましい。
図7における溝間角度βは、上記の溝本数が40本であるときは9°であり、120本であるときは3°である。
【0072】
なお、
図7における溝間角度βは、現像スリーブの表面に垂直な方向から溝のある特定の頂点(頂点A)に垂線を引き、その直線をL
Aとし、現像スリーブの表面に垂直な方向から溝の当該特定の頂点Aに隣接する頂点(頂点B)に垂線を引き、その直線をL
Bとしたとき、直線をL
Aと直線をL
Bとによる溝間角度で、90°より小さい角度とする。
【0073】
2.静電荷像現像用トナー
(2.1)トナー母体粒子
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂、離型剤、着色剤及び荷電制御剤や、無機微粒子、有機微粒子、滑材などの外添剤が含有されていてもよい。なお、本発明において「トナー粒子」とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをいい、トナー粒子の集合体を「トナー」という。
【0074】
トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。また、以下の説明においては、トナー母体粒子とトナー粒子とを特に区別する必要がない場合、単に「トナー粒子」ともいう。以下、本発明に係るトナー母体粒子の各構成材料の詳細について説明する。
【0075】
(2.2)結着樹脂
本発明の静電荷像現像用トナーが含むトナー母体粒子が含有する結着樹脂として、従来公知の結着樹脂、例えば結晶性樹脂及び非晶性樹脂等を適用することができる。
【0076】
「結着樹脂(「バインダー樹脂」ともいう。)」とは、トナー粒子中に含有される内添剤(離型剤、電荷制御剤、着色剤等)及び外添剤(シリカ、酸化チタン等)を分散・保持させるための媒体又はマトリクス(母体)として用いられ、かつトナー画像の定着処理の際に記録媒体(例えば用紙)に接着する機能を有する樹脂をいう。
【0077】
前記結着樹脂は、少なくともスチレン・アクリル樹脂を含有することが好ましい。スチレン・アクリル樹脂を含有することにより、トナー定着時の離型剤の過剰な染み出しを抑制し、定着分離性を良好にし、離型剤による機内汚染を抑制することができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲内で、その他、公知の樹脂を含有していてもよい。
【0078】
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)
前述の結着樹脂として、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(以下、単に「ハイブリッド樹脂」ともいう。)を含有していてもよい。ハイブリッド結晶性樹脂を含有させることにより、併用する非晶性樹脂との親和性が向上するため、トナーの低温定着性が向上する。また、結晶性樹脂のトナー中での分散性が向上するため、ブリードアウトを抑制することができる。ハイブリッド樹脂は、一種でもそれ以上でもよい。また、ハイブリッド樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂の全量と置き換えられていてもよいし、一部と置き換えられていても併用されていてもよい。
【0079】
ハイブリッド樹脂は、結晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性重合セグメントとが化学的に結合した樹脂である。結晶性ポリエステル重合セグメントとは、前記結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を意味する。すなわち、前述した結晶性ポリエステル樹脂を構成する分子鎖と同じ化学構造の分子鎖を意味する。また、非晶性重合セグメントとは、前記非晶性樹脂に由来する部分を意味する。すなわち、前述した非晶性樹脂を構成する分子鎖と同じ化学構造の分子鎖を意味する。
【0080】
ハイブリッド樹脂には、更にスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの官能基が導入されていてもよい。前記官能基の導入は、前記結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、前記非晶性重合セグメント中であってもよい。
【0081】
〔重量平均分子量〕
ハイブリッド樹脂の好ましい重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性及び優れた長期保管安定性を確実に両立し得るという観点から、5000~100000の範囲内であると好ましく、7000~50000の範囲内であるとより好ましく、8000~20000の範囲内であると特に好ましい。
【0082】
ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)を100000以下とすることにより、十分な低温定着性を得ることができる。一方、ハイブリッド樹脂の重量平均分子量(Mw)を5000以上とすることにより、トナー保管時において当該ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が過剰に進行することが抑制され、トナー同士の融着による画像不良を効果的に抑制することができる。
【0083】
(ハイブリッド樹脂の製造方法)
ハイブリッド樹脂は、例えば以下に示す第1から第3の製造方法によって製造することができる。
【0084】
〔第1の製造方法〕
第1の製造方法は、あらかじめ合成された非晶性重合セグメントの存在下で結晶性ポリエステル重合セグメントを合成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法である。この方法では、まず、上述した非晶性重合セグメントを構成する単量体(好ましくは、スチレン単量体や(メタ)アクリル酸エステル単量体などのビニル単量体)を付加反応させて非晶性重合セグメントを合成する。
【0085】
次に、非晶性重合セグメントの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールとを重合反応させて結晶性ポリエステル重合セグメントを合成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させるとともに、非晶性重合セグメントに対し、多価カルボン酸又は多価アルコールを付加反応させることにより、ハイブリッド樹脂が合成される。
【0086】
前記第1の方法において、結晶性ポリエステル重合セグメント又は非晶性重合セグメント中に、これら重合セグメントが互いに反応可能な部位を組み込むことが好ましい。具体的には、非晶性重合セグメントの合成時、非晶性重合セグメントを構成する単量体の他に、前述した両性化合物も使用する。
【0087】
当該両性化合物が結晶性ポリエステル重合セグメント中のカルボキシ基又はヒドロキシ基と反応することにより、結晶性ポリエステル重合セグメントは、非晶性重合セグメントと化学的かつ定量的に結合する。また、結晶性ポリエステル重合セグメントの合成時、そのモノマーに、前述した不飽和結合を有する化合物を更に含有させてもよい。
【0088】
前記第1の方法により、非晶性重合セグメントに結晶性ポリエステル重合セグメントが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を合成することができる。
【0089】
〔第2の製造方法〕
第2の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド樹脂を製造する方法である。この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて結晶性ポリエステル重合セグメントを合成する。また、結晶性ポリエステル重合セグメントを合成する反応系とは別に、上述した非晶性重合セグメントを構成する単量体を付加重合させて非晶性重合セグメントを合成する。
【0090】
このとき、結晶性ポリエステル重合セグメント及び非晶性重合セグメントの一方又は両方に、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとが互いに反応可能な部位を前述のようにして組み込むことが好ましい。
【0091】
次に、合成した結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとを反応させることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を合成することができる。
【0092】
また、前記反応可能な部位が結晶性ポリエステル重合セグメント及び非晶性重合セグメントのいずれにも組み込まれていない場合は、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとが共存する系において、結晶性ポリエステル重合セグメント及び非晶性重合セグメントの両方と結合可能な部位を有する化合物を投入する方法を採用してもよい。それにより、当該化合物を介して結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を合成することができる。
【0093】
〔第3の製造方法〕
第3の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で非晶性重合セグメントを合成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法である。この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて重合を行い、結晶性ポリエステル重合セグメントを合成しておく。
【0094】
次に、結晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で、非晶性重合セグメントを構成する単量体を重合反応させて非晶性重合セグメントを合成する。このとき、前記第1の製造方法と同様に、結晶性ポリエステル重合セグメント又は非晶性重合セグメントに、これら重合セグメントが互いに反応可能な部位を組み込むことが好ましい。
【0095】
前述の方法により、結晶性ポリエステル重合セグメントに非晶性重合セグメントが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を合成することができる。
【0096】
前記第1から第3の製造方法の中でも、第1の製造方法は、非晶性樹脂鎖に結晶性ポリエステル樹脂鎖をグラフト化した構造のハイブリッド樹脂を合成しやすいことや生産工程を簡素化できるため好ましい。第1の製造方法は、非晶性重合セグメントをあらかじめ形成してから結晶性ポリエステル重合セグメントを結合させるため、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向が均一になりやすい。
【0097】
(2.3)離型剤(ワックス)
トナーを構成する離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1、18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0098】
離型剤の融点は、好ましくは60~100℃の範囲内であり、より好ましくは70~95℃の範囲内である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保管性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像形成が行える。ここで、本発明においては、上記の「融点」とは、示差走査熱量測定における1回目の昇温過程で観測される離型剤由来の吸熱ピーク温度W(1)p(℃)をいうものとする。
【0099】
トナー中の離型剤の含有量は、1~30質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは5~20質量%の範囲内である。
【0100】
(2.4)着色剤
トナーを構成しうる着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが使用される。
【0101】
磁性体としては鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金、例えばマンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-錫などのホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロムなどを用いることができる。
【0102】
黒色の着色剤としては、例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0103】
マゼンタ又はレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238、同269等が挙げられる。
【0104】
また、オレンジ又はイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180、同185等が挙げられる。
【0105】
さらに、グリーン又はシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0106】
これらの着色剤は必要に応じて単独若しくは二つ以上を選択併用することも可能である。
【0107】
着色剤の添加量はトナー全体に対して好ましくは1~30質量%の範囲内、より好ましくは2~20質量%の範囲内で、これらの混合物も用いることができ、このような範囲であると画像の色再現性を確保できる。また、着色剤の大きさとしては、体積平均粒径で、10~1000nmの範囲内、50~500nmの範囲内が好ましく、さらには80~300nmの範囲内が特に好ましい。
【0108】
(2.5)荷電制御剤
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩など、公知の種々の化合物を用いることができる。
【0109】
荷電制御剤の添加量は、最終的に得られるトナー粒子中における結着樹脂100質量%に対して通常0.1~10質量%の範囲内、好ましくは0.5~5質量%の範囲内となる量とされる。荷電制御剤粒子の大きさとしては、数平均一次粒子径で10~1000nmの範囲内、50~500nmの範囲内が好ましく、さらには80~300nmの範囲内が特に好ましい。
【0110】
(2.6)外添剤
トナーとしての帯電性能や流動性、あるいはクリーニング性を向上させる観点から、トナー粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑材を外添剤として添加することできる。
【0111】
無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウムなどによる無機微粒子を好ましいものとして挙げられる。必要に応じてこれらの無機微粒子は疎水化処理されていてもよい。
【0112】
有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10~2000nm程度の範囲内の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
【0113】
滑材は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用されるものであって、滑材としては、例えばステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これらの外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0114】
外添剤の添加量は、トナー粒子100質量%に対して0.1~10.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【0115】
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
【0116】
(2.7)トナー粒子
(コア・シェル構造)
トナー母体粒子は、そのままトナーに用いることができるが、当該トナー母体粒子をコア粒子として当該コア粒子とその表面を被覆するシェル層とを備えるコア・シェル構造のような多層構造のトナー粒子であってもよい。
【0117】
シェル層は、コア粒子の全表面を被覆していなくてもよく、部分的にコア粒子が露出していてもよい。コア・シェル構造の断面は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)等の公知の観察手段によって、確認することができる。
【0118】
コア・シェル構造の場合は、コア粒子とシェル層でガラス転移点、融点、硬度等の特性を異ならせることができ、目的に応じたトナー粒子の設計が可能である。例えば結着樹脂、着色剤、離型剤等を含有し、ガラス転移点(Tg)が比較的低いコア粒子の表面に、ガラス転移点(Tg)が比較的高い樹脂を凝集、融着させて、シェル層を形成することができる。シェル層は、非晶性樹脂を含有することが好ましい。
【0119】
(粒径)
トナー粒子の粒径としては、体積基準のメジアン径(d50)が3~10μmの範囲内にあることが好ましく、5~8μmの範囲内にあることがより好ましい。前記範囲内にあれば、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像であっても高い再現性が得られる。なお、トナー粒子の粒径は、製造時に使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂の組成等によって制御することができる。
【0120】
トナー粒子の体積基準のメジアン径(d50)の測定には、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフトSoftware V3.51を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いることができる。
【0121】
具体的には、測定試料(トナー)を、界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、超音波分散を行い、トナー粒子分散液を調製する。
【0122】
このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmとし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(d50)として得る。
【0123】
(平均円形度)
トナー粒子は、帯電性の安定性及び低温定着性を高める観点から、平均円形度が0.930~1.000の範囲内にあることが好ましく、0.950~0.995の範囲内にあることがより好ましい。平均円形度が前記範囲内にあれば、個々のトナー粒子が破砕しにくくなる。これにより、摩擦帯電付与部材の汚染を抑制してトナーの帯電性を安定させることができるとともに、形成される画像の画質を高めることができる。
【0124】
トナー粒子の平均円形度は、FPIA-2100(Sysmex社製)を用いて測定することができる。具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させる。
【0125】
その後、FPIA-2100(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で撮影を行う。HPF検出数が前記の範囲内であれば、再現性のある測定値を得ることができる。撮影した粒子像から、個々のトナー粒子の円形度を下記式(I)に従って算出し、各トナー粒子の円形度を加算して全トナー粒子数で除することにより、平均円形度を得る。
式(I):
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0126】
3.静電荷像現像用トナーの製造方法
本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法としては、例えば乳化重合凝集法や乳化凝集法を好適に採用できる。
【0127】
乳化重合凝集法は、乳化重合法によって製造された結着樹脂の微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう。)の分散液を、着色剤の微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)分散液及びワックスなどの離型剤の分散液と混合し、トナー粒子が所望の粒径となるまで凝集させ、更に結着樹脂微粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。
【0128】
また、乳化凝集法は、溶媒に溶解した結着樹脂溶液を貧溶媒に滴下して樹脂微粒子分散液とし、この樹脂微粒子分散液と着色剤分散液及びワックスなどの離型剤分散液とを混合し、所望のトナー粒子の径となるまで凝集させ、更に結着樹脂微粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。
【0129】
本発明のトナーにおいては、どちらの製造方法も適用可能である。本発明のトナーの製造方法として、乳化重合凝集法を用いる場合の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤の微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)乳化重合により、結着樹脂微粒子の分散液を調製する工程
(4)着色剤の微粒子の分散液と、結着樹脂微粒子の分散液とを混合して、着色剤の微粒子と結着樹脂微粒子とを凝集、会合、融着させてトナー母体粒子を形成する工程
(5)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程
【0130】
乳化重合凝集法によってトナーを製造する場合において、乳化重合法によって得られる結着樹脂微粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよい。このような構成の結着樹脂微粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調製し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。また、乳化重合凝集法によってはコア・シェル構造を有するトナー粒子を得ることもできる。
【0131】
具体的には、コア・シェル構造を有するトナー粒子は、まず、コア粒子用の結着樹脂微粒子と着色剤の微粒子を凝集、会合、融着させてコア粒子を作製する。次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂微粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0132】
また、本発明のトナーの製造方法として、粉砕法を用いる場合の一例を以下に示す。
(1)結着樹脂、着色剤並びに必要に応じて内添剤をヘンシェルミキサーなどにより混合する工程
(2)得られた混合物を押出混練機などにより加熱しながら混練する工程
(3)得られた混練物をハンマーミルなどにより粗粉砕処理した後、更にターボミル粉砕機などにより粉砕処理を行う工程
(4)得られた粉砕物を、例えばコアンダ効果を利用した気流分級機を用いて微粉分級処理しトナー母体粒子を形成する工程
(5)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程
【0133】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0134】
4.現像剤
本発明の静電荷像現像用トナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用するが、目的に応じて種々の成分を加えることもでき、二成分に制限されるものではない。
【0135】
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
【0136】
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散した分散型キャリア等用いてもよい。キャリアの体積基準のメジアン径(d50)としては、20~100μmの範囲内であることが好ましく、25~80μmの範囲内であることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径(d50)は、例えば湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置ヘロス(HELOS)(SYMPATEC社製)により測定することができる。
【0137】
5.電子写真画像形成装置
本発明の電子写真画像形成装置は、トナー及びキャリアを含む現像剤を搬送する現像スリーブを備えた電子写真画像形成装置であって、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。また、例えば帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を具備する。
【0138】
図8は、本発明の電子写真画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
図8に示す画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110Bkと、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。
【0139】
画像形成装置100の本体の上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0140】
画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110Bkは、鉛直方向に並んで配置されている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110Bkは、回転されるドラム状の感光体111Y、111M、111C、及び111Bkと、この外周面領域において感光体の回転方向に沿って順次配置された、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、及び115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、及び117Bkと、一次転写ローラー(一次転写手段)133Y、133M、133C、及び133Bkと、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkと、を有する。
【0141】
感光体111Y、111M、111C、及び111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)のトナー画像がそれぞれ形成される構成とされている。
【0142】
以下、図を用いて説明する際は、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
【0143】
<帯電手段>
帯電手段は、感光体の表面を一様に帯電させる手段である。帯電手段には、帯電ローラー、帯電ブラシ及び帯電ブレードのような接触方式と、コロナ帯電器(コロトロン帯電器、ストロコトン帯電器など)のような非接触方式がある。
【0144】
接触方式には、帯電プロセスに伴う有害なオゾンガス発生量が少ないという利点がある。非接触方式には、接触方式と比べて近接放電でないことから、フィルミングが生じにくいという利点がある。本発明の画像形成システムが備える帯電手段は、接触方式でも非接触方式でもよい。
【0145】
前記帯電手段が、近接帯電ローラー及び接触帯電ローラーであることが、帯電プロセスに伴う有害なオゾンガス発生量が少なく、高画質化及び装置の小型化に有利である観点から好ましい。
【0146】
図8に示す帯電手段113Yは、接触方式である。この例の帯電手段113Yは、感光体111Yの表面に接触して配設された帯電ローラーと、当該帯電ローラーに電圧を印加する電源とからなる。
【0147】
<露光手段>
露光手段は、帯電手段により一様な電位を与えられた感光体上に、画像信号に基づいて露光を行い、画像に対応する静電潜像を形成する手段である。露光手段としては、例えば感光体の軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子からなるもの、レーザー光学系のものが挙げられる。
【0148】
<現像手段>
現像手段(現像機)は、感光体の表面に現像剤を供給して、感光体の表面に形成された静電潜像を現像し、トナー画像を形成する手段である。なお、現像剤としては、前述のトナー及びキャリアを含む現像剤を用いる。
【0149】
前記現像手段には、前記現像剤に滑剤を供給する滑剤供給手段が具備されていてもよく、前記現像手段にて供給される現像剤が、滑剤を含有することが、耐摩耗性向上の観点から好ましい。前記滑剤が、金属石鹸であることが、耐摩耗性向上の観点からより好ましい。
【0150】
図8に示す現像手段117Yは、具体的には、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像ローラー118Y、及び感光体111Yと現像ローラー118Yとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置(図示しない)により構成されている。
【0151】
なお、上記の現像ローラーは、前述のように現像スリーブ、フランジ、シャフト及びマグネットローラーで構成される。また、上記現像ローラーが有するアルミニウム合金のケイ素の含有量が、0.6質量%超である。
【0152】
現像ローラー118Yの回転によって、感光体111Yに現像剤を搬送する。そして、現像ローラー118Y上のトナー薄層が、感光体111Yに当接して感光体111Y上の静電潜像を現像する。
【0153】
現像ローラー118Yは、電圧印加装置に接続されている。この電圧印加装置により、現像ローラー118Yには直流及び/又は交流バイアス電圧が印加される。現像ローラー118Yに印加する電圧を制御することで、現像バイアスが所望の値に調整できるように構成されている。
【0154】
現像ローラー118Yと感光体111Yにより担持された静電潜像の電位との間の電位差(現像電位差)によって、現像ローラー118Yと感光体111Yが相互に対向している現像部に電界が形成される。現像ローラー118Yの回転により現像部に搬送された現像剤中のトナーは、電界から受ける力の作用によって移動し、感光体111Y上の静電潜像に吸着する。
【0155】
感光体111Yに担持されていた静電潜像が顕像化されることによって、感光体111Yの表面には、静電潜像の形状に対応したトナー像が形成される。
【0156】
<転写手段>
転写手段とは、感光体上のトナー像を、転写体(中間転写体又は転写材)に転写する手段である。中間転写体を用いる場合は、一次転写ローラーが転写手段となる。本発明における「転写手段」は、「感光体上のトナー像」を転写する手段であるため、中間転写体から転写材に転写する際に用いる二次転写ローラーは「転写手段」に含まない。
【0157】
図8に示す一次転写ローラー133Yは、感光体111Y上に形成されたトナー画像を無端ベルト状の中間転写体131に転写する。一次転写ローラー133Yは、中間転写体131と当接して配置される。
【0158】
図8に示す画像形成装置100においては、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に形成されたトナー画像を一次転写ローラー(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkによって中間転写体131に転写し、中間転写体131上に転写された各トナー画像を二次転写ローラー(二次転写手段)217によって転写材Pに転写する中間転写方式が採用されているが、感光体上に形成されたトナー画像を転写手段によって直接転写材Pに転写する直接転写方式が採用されてもよい。
【実施例0159】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0160】
A.現像スリーブ1の作製
(A.1)アルミニウム合金の中空筒状管の作製
ケイ素(Si)を含有するアルミニウム合金としては、当該ケイ素(Si)の含有量を当該アルミニウム合金の全質量に対して0.65質量%、マグネシウム(Mg)の含有量を0.03質量%、マンガン(Mn)の含有量を0.01質量%としたものを用いて中空筒状管を作製した。
【0161】
(A.2)溝の形成
上記中空筒状管に、V字溝の表面形状を円周方向に等間隔で形成し、ブラストガンにてガラスビーズを噴射することで円筒の外周面にサンドブラスト処理を施すことによって現像スリーブ1を作製した。V字溝としては、例えば
図7に示すように溝の深さDとして75±25μm、は、V字溝の頂角αとしては100°、現像スリーブの周方向の溝本数としては40本、溝間角度βとしては9°とした。なお、上記現像スリーブ1は、外径16mm、厚さ1mmとした。なお、サンドブラスト処理の加工条件は以下のとおりである。
【0162】
<加工条件>
ガラスビーズの種類:FGB#80(不二製作所製)
ガラスビーズの供給量速度:200g/分
ブラストガンから円筒までの噴射距離:100mm
ブラストガンの移動速度:5.0cm/sec
圧縮空気圧:0.23MPa
円筒の回転速度:545rpm
【0163】
また、現像スリーブ1の表面を(株)キーエンスのレーザー顕微鏡(型式:VKX-200)で撮影し、支持体の周方向における溝の深さDを測定した。具体的には支持体の軸方向の3点、と周方向の4点の計12点に関して500倍で撮影した。画像解析ソフトを用いて撮影画像を二値化し、画像上のすべての線状溝の深さDを算出した。算出した線状溝の深さから全体の90%以上の線状溝の深さDの範囲を算出しところ、100μmであった。
【0164】
B.現像スリーブ2~19の作製
(B.1)アルミニウム合金の準備と中空筒状管の作製
ケイ素(Si)を含有するアルミニウム合金としては、表Iに記載のものを用いて中空筒状管を作製した。
【0165】
(B.2)溝の形成
上記中空筒状管に、溝を円周方向に等間隔で形成し、V字溝の表面形状を形成した。V字溝としては、例えば
図7に示すように溝の深さDとして75±25μm、は、V字溝の頂角αとしては100°、現像スリーブの周方向の溝本数としては40本、溝間角度βとしては9°として現像スリーブ1と同様の溝を形成した。現像スリーブ5及び6にはV字溝を形成しなかった。
【0166】
また、表Iに記載のように現像スリーブ2~17及び19にはサンドブラスト処理を施した。なお、現像スリーブ18にはサンドブラスト処理を施さなかった。上記各現像スリーブ2~19は、全て外径16mm、厚さ1mmとした。
【0167】
C.現像ローラー1~19の作製
上記の現像スリーブ1~19に、マグネットローラー、シャフト及びフランジの取り付けを行い、現像ローラー1~19を作製した。
【0168】
D.トナーの作製
(D.1)樹脂微粒子分散液の調製
(D.1.1)結晶性樹脂の作製
[結晶性樹脂(1a)の作製]
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂)セグメントの原料モノマー(1a-1)及びラジカル重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキサイド4質量部を滴下ロートに入れた。
【0169】
<原料モノマー(1a-1)>
スチレン 20.0質量部
n-ブチルアクリレート 8質量部
アクリル酸 1.75質量部
【0170】
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)セグメントの原料モノマー(1a-2)を、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
【0171】
<原料モノマー(1a-2)>
セバシン酸(酸) 412.6質量部
1,6-ヘキサンジオール(アルコール) 152.6質量部
【0172】
次いで、撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記モノマー(1a-1)及び(1a-2)を入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換し、混合液を得た。
【0173】
得られた混合液にTi(O-n-Bu)4を0.4質量部添加し、235℃まで昇温し、常圧(101.3kPa)下にて5時間反応を行い、さらに減圧(8kPa)下にて1時間反応を行うことにより反応液を得た。
【0174】
得られた反応液を200℃まで冷却した後、減圧(20kPa)下にて、上述の測定方法により算出される酸価が20.0mgKOH/gになるよう反応を行うことにより結晶性樹脂(1a)を作製した。
【0175】
(D.1.2)分散液の調製
[結晶性樹脂微粒子分散液(1A)の調製]
結晶性樹脂(1a)を174.3質量部とメチルエチルケトン102質量部を反応容器に入れ、75℃で30分攪拌し溶解させ、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.1質量部を添加することにより溶解液を得た。
【0176】
上記の溶解液を、撹拌機を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、70℃に温めた水375質量部を70分間にわたって滴下混合した。
滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態となった乳化液(1a)を得た。
【0177】
上記の乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧し、3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去した。
その後、冷却速度6℃/minで冷却し、結晶性樹脂(1a)の微粒子が分散された結晶性樹脂微粒子分散液(1A)を調製した。
【0178】
粒度分布測定器(レーザー回折式粒度分布測定器「LA-750(HORIBA製)」)にて、結晶性樹脂微粒子分散液(1A)中の結晶性樹脂(1a)の体積平均粒径を測定した結果、結晶性樹脂(1a)の体積平均粒径は202nmであった。
【0179】
(D.1.3)スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル組成比及び融点
結晶性樹脂微粒子分散液(1A)における結晶性樹脂(1a)の融点は62℃である。
【0180】
また、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル組成比は、結晶性ポリエステルセグメント95質量部、スチレン・アクリル共重合セグメント5質量部である。なお、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル組成比は、結晶性樹脂(1a)を作製する際に原料モノマー(1a-1)の全ての質量(29.75質量部)と原料モノマー(1a-2)の全ての質量(565.2質量部)から算出した値である。
【0181】
また、前述したが、本発明においては、上記の「融点」とは、示差走査熱量測定における1回目の昇温過程で観測される結晶性樹脂の吸熱ピーク温度C(1)p(℃)であり、「融点」とは、上記のC(1)p(℃)である。
【0182】
(D.2)非晶性樹脂微粒子分散液の調製
[非晶性樹脂微粒子分散液(1)の調製]
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃として、下記原料モノマー(1b-1)の混合液を1時間かけて滴下した。
【0183】
<原料モノマー(1b-1)>
スチレン 480.0質量部
n-ブチルアクリレート 250.0質量部
メタクリル酸 68.0質量部
【0184】
上記混合液の滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより上記原料モノマー(1b-1)の重合を行い、第1段重合液のビニル系樹脂微粒子分散液(S1)を調製した。
【0185】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、イオン交換水1100質量部と前記第1段重合により調製したビニル系樹脂微粒子分散液(S1)(第1段重合液)を289質量部仕込み、87℃に加熱した。その後、下記原料モノマー(1b-2)、連鎖移動剤及び離型剤を85℃にて溶解させた混合液を循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(エム・テクニック株式会社製)により、10分間の混合分散処理を行い、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
【0186】
<原料モノマー(1b-2)>
スチレン 253.0質量部
2-エチルヘキシルアクリレート 107.3質量部
メタクリル酸 39.2質量部
【0187】
<連鎖移動剤>
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 4.45質量部
【0188】
<離型剤>
ベヘン酸べへネート 120.0質量部
【0189】
上記の分散液を上記5Lの反応容器に追加し、過硫酸カリウム5.5質量部をイオン交換水103質量部に溶解させた重合開始剤の溶液を添加し、この系を87℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行って、ビニル系樹脂微粒子分散液(S1′)を調製した。
【0190】
(第3段重合)
上記第2段重合により得られたビニル系樹脂微粒子分散液(S1′)にさらに過硫酸カリウム7.4質量部をイオン交換水157.9質量部に溶解させた溶液を添加した。さらに、84℃の温度条件下で、下記原料モノマー(1b-3)及び連鎖移動剤の混合液を90分かけて滴下した。
【0191】
<原料モノマー(1b-3)>
スチレン 335.0質量部
nーブチルアクリレート 211.0質量部
メタクリル酸 44.0質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8.1質量部
【0192】
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、非晶性樹脂微粒子分散液(1)を得た。
【0193】
(D.3)着色剤微粒子分散液の調製
ドデシル硫酸ナトリウム226質量部をイオン交換水1600質量部に添加した溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)420質量部を徐々に添加した。撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック株式会社製、「クレアミックス」は同社の登録商標)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子分散液(P1)を調製した。着色剤微粒子分散液(P1)中の着色剤微粒子の体積基準のメジアン径を測定したところ110nmであった。
【0194】
(D.4)トナー粒子の作製
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、480質量部(固形分換算)の非晶性樹脂微粒子分散液(1)及び350質量部のイオン交換水を投入した。室温(25℃)下で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。さらに、36.4質量部(固形分換算)の着色剤微粒子分散液(P1)を投入し、80質量部の50質量%塩化マグネシウム水溶液を、撹拌下、30℃で10分間かけて添加し、分散液を得た。
【0195】
得られた分散液を5分間静置した後、60分間かけて82℃まで昇温し、82℃に到達後、59.3質量部(固形分換算)の結晶性樹脂微粒子分散液(1A)を20分かけて投入し、粒子径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整して、コールターマルチサイザー3(コールター・ベックマン社製)により測定した体積基準のメジアン径が6.0μmになるまで成長させた。
【0196】
次いで、塩化ナトリウム80質量部をイオン交換水300質量部に溶解させた水溶液を添加して、粒子径の成長を停止させた。次いで、82℃の状態で撹拌し、トナー粒子の平均円形度が0.970になるまで粒子の融着を進行させ、その後0.5℃/分以上の降温速度で冷却し30℃以下まで液温を下げた。次いで、固液分離を行い、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し、固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した。洗浄後、35℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子(1)を作製した。
【0197】
(D.5)外添剤の混合
得られたトナー粒子(1)100質量部、疎水性シリカ粒子(個数平均一次粒径:12nm、疎水化度:68)0.6質量部、疎水性酸化チタン粒子(個数平均一次粒径:20nm、疎水化度:63)1.0質量部及びゾルゲルシリカ(数平均一次粒子径=110nm、)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)により回転翼周速35mm/秒、32℃で20分間混合した。混合後、45μmの目開きのふるいを用いて粗大粒子を除去し、トナー(1)を得た。
【0198】
E.キャリアの混合
トナー(1)と、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒径33μmのフェライトキャリアとを、トナー(1)の濃度が6質量%となるように添加して混合した。以上の工程により、トナー(1)を含有する二成分現像剤〔1〕を作製した。
【0199】
F.評価
(RSm)
〔準備〕
「bizhub C658」(コニカミノルタ社製)で現像手段に用いられている現像ローラーに作製した各現像スリーブを常温・常湿環境(NN環境;23℃、50%RH)で取り付けた。また、二成分現像剤〔1〕を装填した。
【0200】
〔評価方法〕
その後、耐久試験にてA3サイズの転写材:「PODグロスコート(100g/m2)」(王子製紙社製)にハーフトーン画像及びベタ画像を100万枚(1000kp)連続印刷後、耐久試験後(連続印刷後)のRSmの値を以下の方法により測定し、耐久試験前のRSmの値とともに表Iにまとめることにより比較した。
【0201】
作製した各現像スリーブを(株)東京精密の表面粗さ測定器(型式:サーフコム1400G)(株)小坂研究所製の表面粗さ測定器(型式:SE700)にて表面粗さの測定を下記測定条件の下で行い、粗さ曲線を算出した。
【0202】
<測定条件>
測定長さ 8.000mm
測定速度 0.150mm/s
測定レンジ ±64.000μm
算出規格 JIS B 0601:2013
測定種別:粗さ測定形状除去最小二乗直線評価長さ 8.000mmλs
フィルタなしカットオフ種別:ガウシアンカットオフ波長(λc) 0.08mm
ピックアップ種別 標準ピックアップ
カットオフ値は0.8mm、測定長さは8.000mmで、データ間隔は1.6μmの条件で測定を行った。
【0203】
算出された各現像スリーブの表面の粗さ曲線からJIS B 0601:2013に準拠して求められる現像スリーブ表面の粗さ曲線要素の平均長さRsmを求めた。
【0204】
(現像剤搬送量)
〔準備〕
「bizhub C658」(コニカミノルタ社製)で現像手段に用いられている現像ローラーに作製した各現像スリーブを常温・常湿環境(NN環境;23℃、50%RH)で取り付けた。また、二成分現像剤〔1〕を装填した。
【0205】
〔評価方法〕
その後、耐久試験にてA3サイズの転写材:「PODグロスコート(100g/m2)」(王子製紙社製)にハーフトーン画像及びベタ画像を100万枚(1000kp)連続印刷後、耐久試験後(連続印刷後)の現像剤搬送量を以下の方法により算出し、耐久試験前の値とともに表Iにまとめることにより比較した。
【0206】
耐久試験前の現像剤搬送量は以下のようにして算出した。
【0207】
実際に実写評価を開始する前に「bizhub C658」(コニカミノルタ社製)の機械本体から現像器を取り出す。現像器内には現像剤が入っており、現像スリーブの表面上にも既に現像剤が保持されているため、その保持されている現像剤の単位面積当たりの現像剤の量を
図9(a)のような形状のマスク治具を押し充てた状態でポンプ等の吸引機構で吸引した。吸引前後の質量から単位面積当たりの現像剤搬送量[g/m
2]を算出した。なお、上記の吸引機構としては、直径1mm程度のストローのような形状をしたポンプを用いた。なお、現像スリーブ表面に充てたマスク治具の面Sの面積(マスク治具が現像スリーブ表面と対抗する面積)は10cm
2であった。
【0208】
図9(a)は、マスク治具の形状を表す立体概略図である。
図9(b)は、現像スリーブにマスク治具を押し充てる前の状態を表す平面概略図であり、
図9(c)は、現像スリーブにマスク治具を押し充てた状態を表す平面概略図である。
図9(a)、(b)及び(c)において、面Sはマスク治具Mが現像スリーブ11の表面に押し充てられる際に当該現像スリーブ11の表面と接触となる面積を表し、その部分は空洞となっている。また、その面Sは現像スリーブ11の表面にあわせて円弧状となっている。なお、Tは現像剤を表す。
【0209】
耐久試験後の現像剤搬送量についても、耐久試験後(連続印刷後)に「bizhub C658」(コニカミノルタ社製)の機械本体から現像器を取り出し、耐久試験前の現像剤搬送量と同様の方法にて耐久試験後の現像剤搬送量を算出した。
【0210】
(濃度ムラ)
〔準備〕
「bizhub C658」(コニカミノルタ社製)で現像手段に用いられている現像ローラーに作製した各現像スリーブを常温・常湿環境(NN環境:23℃、50%RH)で取り付けた。また、二成分現像剤〔1〕を装填した。
【0211】
〔評価方法〕
印刷初期である耐久試験前にA3サイズの転写材:「PODグロスコート(100g/m2)」(王子製紙社製)の全面にハーフトーン画像及びベタ画像を印字した。その後、耐久試験にてA3サイズの転写材:「PODグロスコート(100g/m2)」(王子製紙社製)にハーフトーン画像及びベタ画像を100万枚(1000kp)連続印刷後、直ちに別途用意した新しいA3サイズの転写材:「PODグロスコート(100g/m2)」(王子製紙社製)の全面にハーフトーン画像及びベタ画像を印字して、耐久試験後の画像ムラ評価用の印刷物を作製した。
【0212】
上記の印刷物について、印字したハーフトーン画像及びベタ画像の画質状態を以下のように色差ΔE*abの印刷初期と耐久試験後の変化幅を求めることによって評価した。
【0213】
ハーフトーン画像及びベタ画像を、分光光度計により測定し、L*a*b*表色系に表し、測定値よりΔE*abを求めた。なお、「L*a*b*表色系」は、色を数値化して表すのに有用に用いられる手段である。L*軸方向が明度を示し、a*軸方向が赤-緑方向の色相を示し、b*軸方向が黄-青方向の色相を示すものである。なお、ΔE*abは、耐久試験前のL*a*b*値を(L1、a1、b1)、耐久試験後のL*a*b*値を(L2、a2、b2)としたとき、以下の式に各値を代入することにより求めた。
【0214】
ΔE=〔(L1-L2)2+(a1-a2)2+(b1-b2)2〕0.5
【0215】
L*、a*、及びb*は、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用いて測定した。光源としてD65光源、反射測定アパーチャーとしてΦ4mmのものを用い、測定波長域380~730nmを10nm間隔で、視野角を2°とした。基準合わせには、専用白タイルを用いた条件において測定を行った。
【0216】
評価基準としては、下記のものとし、濃度ムラの評価とした。なお、下記の評価基準においてA及びBを実用上問題ないとし、合格とした。また、Cを不合格とした。
【0217】
(評価基準)
A:色差(ΔE)が、10以下である(合格)。
B:色差(ΔE)が、10超、11以下である(合格)。
C:色差(ΔE)が、11超である(不合格)。
【0218】
【0219】
<<総評>>
表Iから分かるように、現像スリーブが有するアルミニウム合金のケイ素含有量が0.6質量%以下である比較例においては、耐久試験前のRsmの値と比べて耐久試験後のRsmの値が大きく低下している。これに対して実施例のように上記のケイ素含有量が0.6質量%を超えると耐久試験前のRsmの値と比べて耐久試験後のRsmの値が大きく低下しない。
【0220】
そして、上記のケイ素含有量が多くなるにつれて耐久試験後のRsmの値の低下が抑えられ、それに伴い、現像剤搬送量の低下も抑えられていることからより濃度ムラが抑えられると考えられる。ケイ素含有量が0.8質量%を超えると、よりいっそうRsmの値の低下が抑えられ、それに伴い、現像剤搬送量の低下も抑えられていることが分かる。
【0221】
現像剤の搬送性を向上させるためには、サンドブラスト加工による溝の形成を行った方が好ましいが、実施例5及び6のようにケイ素含有量を多くすることによって、溝を形成しなくとも現像ローラーの表面のRsmの値を適切な範囲に維持することができ、現像剤搬送量を維持することができることが分かる。そして、これにより濃度ムラを防止することができることが分かる。
【0222】
以上のことから、比較例と比べて実施例では、現像剤搬送能力の耐久性に優れ、良質な画像品質を維持することができることが分かる。