(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152113
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】現像ローラー、プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20241018BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20241018BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G9/08
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066096
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 美知昭
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 明彦
(72)【発明者】
【氏名】白井 亜弥
【テーマコード(参考)】
2H077
2H500
【Fターム(参考)】
2H077AD02
2H077AD06
2H077FA26
2H500AA01
2H500CA06
2H500EA12A
2H500EA42B
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、白スジや黒点などの画像不良を抑制し、長期にわたって高品質な画像の低温定着化を可能とする現像ローラー、プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成システムを提供することである。
【解決手段】現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用の現像ローラーであって、前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする現像ローラー。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用の現像ローラーであって、
前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有する
ことを特徴とする現像ローラー。
【請求項2】
前記アルミニウム合金のケイ素含有量が、0.8質量%超である
ことを特徴とする請求項1に記載の現像ローラー。
【請求項3】
前記アルミニウム合金のリチウム含有量が、1質量%未満である
ことを特徴とする請求項1に記載の現像ローラー。
【請求項4】
現像剤を搬送する現像ローラーを含むプロセスカートリッジであって、
前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有する
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
現像剤を搬送する現像ローラーを含む電子写真画像形成装置であって、
前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項6】
現像剤を搬送する現像ローラーを含む装置及び静電荷潜像現像用トナーを備えた電子写真画像形成システムであって、
前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有し、かつ、
前記静電荷潜像現像用トナーのガラス転移温度が、0~40℃の範囲内である
ことを特徴とする電子写真画像形成システム。
【請求項7】
前記静電荷潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子が含有する結着樹脂が、50~95質量%の範囲内のポリエステルを含有する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子写真画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラー、プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリントスピードの高速化、紙種の拡大、環境負荷低減等の目的から、トナー画像定着時の熱エネルギーを低減する技術が求められている。
【0003】
トナー画像定着時の熱エネルギーを低減するためには、トナーの低温定着性を向上させる必要がある。
【0004】
例えば特許文献1には低温定着性を課題とする技術が開示されている。
【0005】
トナーの低温定着性を向上させる手段の一つとして、より低温から樹脂の分子運動を開始させる手段が挙げられ、これにはガラス転移温度が低い樹脂が用いられる。
【0006】
しかしながら、ガラス転移温度が低い樹脂を用いると、スリーブ上で現像剤やトナーが凝集し、薄層形成時にドクターブレード部で詰まりとなることに起因する白スジや粗大粒子となったトナーが黒点となって転写してしまう画像不良が発生する問題が生じることが分かった。
【0007】
特に、昨今のプリントスピードの高速化及びマシンのコンパクト化においては、この画像不良が顕著となることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、白スジや黒点などの画像不良を抑制し、長期にわたって高品質な画像の低温定着化を可能とする現像ローラー、プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成システム
を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、現像ローラーが備える現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することによって上記課題を解決できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0011】
1.現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用の現像ローラーであって、
前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有する
ことを特徴とする現像ローラー。
【0012】
2.前記アルミニウム合金のケイ素含有量が、0.8質量%超である
ことを特徴とする第1項に記載の現像ローラー。
【0013】
3.前記アルミニウム合金のリチウム含有量が、1質量%未満である
ことを特徴とする第1項に記載の現像ローラー。
【0014】
4.現像剤を搬送する現像ローラーを含むプロセスカートリッジであって、
前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有する
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0015】
5.現像剤を搬送する現像ローラーを含む電子写真画像形成装置であって、
前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【0016】
6.現像剤を搬送する現像ローラーを含む装置及び静電荷潜像現像用トナーを備えた電子写真画像形成システムであって、
前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、
前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有し、かつ、
前記静電荷潜像現像用トナーのガラス転移温度が、0~40℃の範囲内である
ことを特徴とする電子写真画像形成システム。
【0017】
7.前記静電荷潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子が含有する結着樹脂が、50~95質量%の範囲内のポリエステルを含有する
ことを特徴とする第項6項に記載の電子写真画像形成システム。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、白スジや黒点などの画像不良を抑制し、長期にわたって高品質な画像の低温定着化を可能とする現像ローラー、プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成システムを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0019】
本発明の現像ローラーは、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。
【0020】
現像スリーブ内部に磁束を発生する部材の挿入された現像ローラーを用いた場合、当該現像スリーブ上で渦電流による発熱が発生する。この発熱によりトナーとキャリアが熱融着し凝集しだすため、その凝集物がドクターブレード部への詰まりとなり、その結果白スジが現れる。また、トナー同士の凝集物は黒点などの画像不良を引き起こし、ハーフトーンの粒状性(GI値)を悪化させてしまう。
【0021】
特に、昨今のプリントスピードの高速化及びマシンのコンパクト化等のへの要望から、現像スリーブには細い径であることが求められる。また、上記の現像スリーブには、高い磁束密度を保持しながら高速に回転することも求められる。
【0022】
これにより、渦電流による現像スリーブの発熱はさらに高まってしまう。このため、白スジや黒点などの画像不良がさらに顕著となる。
【0023】
本発明においては、現像スリーブが有するアルミニウム合金が、0.6質量%を超えるケイ素を含有することで、当該現像スリーブの表面の抵抗値が高くなる。これにより、現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有していたとしても渦電流の発生が抑制され、発熱を抑制することができるため、白スジや黒点などの画像不良の発生が抑制できる。
【0024】
さらに、現像スリーブが有するアルミニウム合金が、0.6質量%を超えるケイ素を含有することで、トナー飛散及び低濃度化が防止される。そして、ケイ素はアルミニウムとほぼ同一の帯電性であるため、トナーキャリア間の帯電性を邪魔しない。これによって、トナー飛散や過剰帯電による低濃度化も防止できると推察される。
【0025】
すなわち、本来トナーとキャリアだけで、正しくトナーを帯電させる必要があるが、アルミニウムとの帯電性差が大きく異なる元素、例えばリチウムを含有させた場合、トナーとキャリア間の帯電をかき乱し、トナーの帯電量分布を広げてしまう傾向がある。
【0026】
低帯電量側に広がる成分は、スリーブの遠心力でキャリアがトナーを保持できず、飛散してしまう。一方、高帯電量側に広がる成分は、キャリアやスリーブなどのプラス面に静電的にこびりついて適正に現像しない、つまりは現像量が減り、濃度が低くなってしまう。
【0027】
本発明に係るケイ素は、アルミニウムとの帯電性が近いことで上記のような帯電量分布の広がりを抑え、トナー飛散や過剰帯電による低濃度化も防止できると推察される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】
図1の現像スリーブを軸方向と垂直方向から見たときの断面図
【
図3】
図1の現像スリーブを軸方向から見たときの断面図
【
図4】マグネットローラーの磁気パターンを示す説明図
【
図5】渦電流の発生原理を説明するための現像ローラーの要部斜視図
【
図6】溝を形成した場合における現像スリーブの縦断面
【
図7】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の現像ローラーは、現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用の現像ローラーであって、前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態(態様)に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0030】
本発明の実施態様としては、前記アルミニウム合金のケイ素含有量が、0.8質量%超であることが、現像スリーブ表面の抵抗値を高くし、渦電流の発生を抑えることで発熱を抑制する効果が高まる観点から好ましい。
【0031】
前記アルミニウム合金のリチウム含有量が、1質量%未満であることが、リチウムの正帯電性の影響を少なくし、現像スリーブの発熱効果を抑制する観点から好ましい。
【0032】
本発明のプロセスカートリッジは、現像剤を搬送する現像ローラーを含むプロセスカートリッジであって、前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。
【0033】
本発明の電子写真画像形成装置は、現像剤を搬送する現像ローラーを含む電子写真画像形成装置であって、前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。
【0034】
本発明の電子写真画像形成システムは、現像剤を搬送する現像ローラーを含む装置及び静電荷潜像現像用トナーを備えた電子写真画像形成システムであって、前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有し、前記静電荷潜像現像用トナーのガラス転移温度が、0~40℃の範囲内であることを特徴とする。
【0035】
本発明の電子写真画像形成システムにおいて、前記静電荷潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子が含有する結着樹脂が、50~95質量%の範囲内のポリエステルを含有することが、トナーの低温定着性、負帯電性及び適度な親水性の観点から好ましい。
【0036】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0037】
1.現像ローラー
本発明の現像ローラーは、現像剤を搬送する電子写真画像形成装置用の現像ローラーであって、前記現像ローラーは、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。
【0038】
(1.1)構成
本発明の現像ローラーは、現像スリーブを備える。「現像スリーブ」とは、適度に帯電させた現像剤を担持し、かつ静電荷潜像が形成された感光体に当該現像剤を供給する機能を有する手段である。また、例えば電子写真画像形成装置が備える現像装置が有する現像ローラーの一部であり、当該現像ローラーは、現像スリーブ、フランジ、シャフト及び磁束を発生する部材で構成される。
【0039】
なお、上記の「磁束を発生する部材」は、一般的には、マグネットローラーとして用いられるので、以下の説明においては「磁束を発生する部材」を単に「マグネットローラー」というものとする。
【0040】
図1は、現像スリーブを備えた現像ローラーの外観図である。また、
図2は、
図1の現像スリーブを軸方向と垂直方向から見たときの断面図であり、
図3は、
図1の現像スリーブを軸方向から見たときの断面図である。
【0041】
上記の現像スリーブは、回転自在で筒状であり、現像剤を表面に担持して搬送する役割を担う。
【0042】
図1に示すように、略円筒状の現像スリーブ11が設けられ、現像スリーブ11の両端部には第1フランジ18及び第2フランジ19が固定的に取付けられる。
【0043】
第1フランジ18には左方へ突出状に延びる軸部18aが形成され、第1フランジ18の右部の略中央部には凹部18bが形成される。そして、第2フランジ19の略中央部には貫通孔が形成され、現像スリーブ11の中央部にはシャフト16が現像スリーブ11と同軸状に設けられる。
【0044】
シャフト16の左端部は凹部18bに装着された軸受17を介して第1フランジ18に回転自在に支持される。そして、シャフト16の右端部は貫通孔に装着された軸受17を介して第2フランジ19に回転自在に支持されるとともに貫通孔を挿通して右方へ延長される。
【0045】
現像スリーブ11内においてシャフト16には略円筒状のマグネットローラー12が現像スリーブ11の内周面と非接触状態に外嵌状に固定される(
図3参照。)。そして、シャフト16に固定されたマグネットローラー12は第1フランジ18及び第2フランジ19を介して現像スリーブ11に相対回転自在に支持されている。
【0046】
前記マグネットローラー12は、外周部の周方向に複数の磁極を形成した樹脂磁石製や焼結磁石製の一般的な構成のものである。例えば外周部の周方向に磁石のS極とN極とを交互に配列したものや、所定の磁気パターンになるように磁石のS極とN極を配列したものが採用される。
【0047】
(1.2)渦電流
アルミニウム合金は、電気抵抗が比較的小さい導電性材料であり、マグネットローラーに対して当該現像スリーブを回転させたときに、当該現像スリーブが当該マグネットローラーから発生する磁力線を横切ることになる。そして、これにより電磁誘導作用が起こり、上記の現像スリーブの表面の周辺に渦電流が発生する。
【0048】
図4は、マグネットローラーの磁気パターンを示す説明図であり、
図5は、渦電流の発生原理を説明するための現像ローラーの要部斜視図である。
【0049】
マグネットローラー12には、例えば
図4及び
図5に示すように、磁石のS極とN極とが円周方向に交互に形成されている。そして、マグネットローラー12の任意のS極に対して、隣接するN極からの磁力線Gがアルミニウム合金製の現像スリーブ11を貫いて到達する。
【0050】
この状態で現像スリーブ11が矢印Y方向に回転すると、回転方向の前部では磁力線Gの減少を補おうとして、Iaとして示される渦電流が発生する。このとき、回転方向の後部では、上記とは逆に磁力線Gの増加を補おうとして、Ibとして示される渦電流が発生する。そして、この渦電流により、現像スリーブ11の回転方向とは逆方向である
図5における矢印X方向への力が発生する。なお、渦電流の電流密度が高い場合には発熱が高まることによる画像不良の問題が発生する。
【0051】
(1.3)アルミニウム合金
本発明の現像ローラーが備える現像スリーブは、アルミニウム合金を有する。現像スリーブが、好ましくはアルミニウム合金を主成分とし、かつ当該アルミニウム合金の含有量が、80質量%以上であることが好ましい。より好ましいアルミニウム合金の含有量は、100質量%である。
【0052】
(ケイ素含有量)
本発明の現像ローラーが備える現像スリーブが有するアルミニウム合金は、当該アルミニウム合金の総量を100質量%としたとき、0.6質量%を超えるケイ素を含有する。
【0053】
アルミニウム合金中のケイ素含有量が少ないと、現像スリーブの表面の抵抗値が低くなり、渦電流が増加するため当該現像スリーブの発熱量が多くなる。特に、ケイ素含有量が0.6質量%以下であると、現像スリーブの表面の抵抗値が低すぎて当該現像スリーブの発熱量が多すぎる。
【0054】
アルミニウム合金中のケイ素含有量が多いと現像スリーブの表面の抵抗値が高くなり、渦電流の発生を抑制することができるため当該現像スリーブの表面の発熱量は少なくなる。したがって、上記の抵抗値が高いほど、現像スリーブの発熱を抑制することができる。
【0055】
前記アルミニウム合金のケイ素含有量が、0.8質量%超であることが、現像スリーブ表面の抵抗値を高くし、渦電流の発生を抑えることで発熱を抑制する効果が高まる観点から好ましい。ただし、ケイ素含有量が多すぎると、渦電流は抑制できるが、トナー画像形成時の電圧により発熱が起こり始める。したがって、ケイ素含有量が30.0質量%未満であることが、発熱量抑制の観点から好ましい。
【0056】
(リチウム含有量)
アルミニウム合金中のリチウムは、含有量とともに現像スリーブの表面の発熱抑制効果が現れるが、その一方でリチウムはケイ素と異なり、アルミニウムに対して強い正帯電性を持つため、過剰な添加はアルミニウム合金中のリチウムがトナーの帯電性に影響し、トナーの帯電量分布を広げてしまう傾向がある。そのため、前記アルミニウム合金のリチウム含有量は、1質量%未満であることが、リチウムの帯電性の影響を抑えつつ、現像スリーブの発熱効果を抑制する観点から好ましい。
【0057】
(アルミニウム合金中の元素含有量の測定方法)
アルミニウム合金中に含有する元素及びその含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定することができる。高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma)とは、金属を酸やアルカリ等に溶解した溶液試料をArプラズマ中に噴霧し、励起発光した光を、それぞれの波長に分光し、その光強度から元素の種類と含有量を定量する方法である。同法は、微量域から高濃度まで光強度と含有量が直線関係にあり、それぞれ元素を同時に分析することができる。
【0058】
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法の測定装置としては、「ULTIMA2000
(堀場製作所製)」を用いることができる。
【0059】
本発明に係る現像スリーブのケイ素及びリチウムの含有量は、当該現像スリーブ部の合金を切削後切粉とし、酸に溶解させた後に、計測した値である。
【0060】
(1.4)表面
図6は、溝を形成した場合における現像スリーブの縦断面である。このように、本発明の現像ローラーが備える現像スリーブの外周面には、現像剤の搬送能力を向上させるため、溝20が設けられている。すなわち、
図3に示すように、現像スリーブ11の外周面に対して切削加工を施して、現像スリーブ11の長さ方向の略全長にわたって溝20を円周所定間隔おきに複数形成し、これら複数の溝20により現像剤をすくい上げるごとく担持してもよい。なお、前記溝20の深さとしては、現像スリーブ11の肉厚や現像剤の搬送性を考慮すると、0.5mm以下とすることが好ましい。
【0061】
(サンドブラスト処理)
また、現像スリーブ11の外周面に対してサンドブラスト処理を施して、現像スリーブ11の外周面に複数の凹凸を形成し、これら複数の凹凸の凹部に現像剤を担持させてもよい。サンドブラスト加工を施すことにより、現像スリーブの表面に凹凸を形成することで外周表面の粗さを適切に保ち、優れた搬送性を確保することができる。
【0062】
現像スリーブの表面に粗さを付与する手段として、従来から用いられているサンドブラスト加工によって、表面粗さを付与するとより好ましい。ケイ素が含有されていると、サンドブラスト処理した際にもケイ素が現像スリーブの表面上で、当該ケイ素が含有されている部分とそうでない部分での削れ方が異なるため、適切な表面粗さを付与することができる。
【0063】
サンドブラスト加工は、現像スリーブの表面にブラスト材を投射して、その表面をブラスト材で凹状にへこませて、凹凸形状を形成する処理である。更に詳しくは、サンドブラスト加工としては、エアーブラスト加工、ウェットサンドブラスト加工、ショットブラスト加工等を挙げることができる。
【0064】
サンドブラスト加工に適用可能な材料としては、特に制限されず、公知のものを適宜使用することができる。具体的には、ガラスビーズ、アルミナ粒子、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子などを挙げることができる。有機微粒子も用いることができ、例えばメラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、架橋化アクリル樹脂粒子などを挙げることができる。また、弾性層を凹ませるが表層表面は引き裂かない程度の衝撃力を付与するという観点から、特に、球状ガラスビーズやアルミナビーズが好ましい。これらの材料は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記の材料の体積平均粒径としては、目的とする現像スリーブの表面の凹凸サイズにより異なるが、3~200μmの範囲内であるものが好ましく、10~100μmの範囲内であるものがより好ましく、20~80μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0066】
2.電子写真画像形成装置
本発明の電子写真画像形成装置は、現像剤を搬送する現像ローラーを含む電子写真画像形成装置であって、前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。
【0067】
上記の画像形成装置は、例えば帯電手段(第1帯電手段)と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、クリーニング手段とを備える。また、画像形成装置は、転写手段とクリーニング手段の間に、第2帯電手段を有していてもよい。
【0068】
図7は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【0069】
画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組のプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10Bk、中間転写体ユニット7、給紙手段21、定着手段24等を備えている。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0070】
(2.1)プロセスカートリッジ
本発明に係るプロセスカートリッジは、現像剤を搬送する現像ローラーを含むプロセスカートリッジであって、前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有することを特徴とする。
【0071】
イエロー色の画像を形成するプロセスカートリッジ10Yは、ドラム状の感光体1Yの周囲に感光体1Yの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写ローラー5Y、第2帯電手段9Y及びクリーニング手段6Yを有する。
【0072】
マゼンタ色の画像を形成するプロセスカートリッジ10Mは、ドラム状の感光体1Mの周囲に感光体1Mの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写ローラー5M、第2帯電手段9M及びクリーニング手段6Mを有する。
【0073】
シアン色の画像を形成するプロセスカートリッジ10Cは、ドラム状の感光体1Cの周囲に感光体1Cの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写ローラー5C、第2帯電手段9C及びクリーニング手段6Cを有する。
【0074】
黒色画像を形成するプロセスカートリッジ10Bkは、ドラム状の感光体1Bkの周囲に感光体1Bkの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写ローラー5Bk、第2帯電手段9Bk及びクリーニング手段6Bkを有する。
【0075】
プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bk上に形成するトナー像の色が異なるのみで、同様に構成される。したがって、プロセスカートリッジ10Yを例にとって詳細に説明し、プロセスカートリッジ10M、10C、10Bkの説明を省略する。
【0076】
プロセスカートリッジ10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、第1帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写ローラー5Y、第2帯電手段9Y及びクリーニング手段6Yを配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。プロセスカートリッジ10Yは、画像形成装置100から着脱可能であってもよい。
【0077】
本実施形態においては、プロセスカートリッジ10Yのうち、少なくとも感光体1Y、第1帯電手段2Y、現像手段4Y、第2帯電手段9Y及びクリーニング手段6Yが一体化されて設けられている。
【0078】
(第1帯電手段)
第1帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段であって、例えばコロナ放電型の帯電器が用いられる。
【0079】
(露光手段)
露光手段3Yは、第1帯電手段2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段である。露光手段3Yとしては、例えば感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、又はレーザー光学系が用いられる。
【0080】
(現像手段)
現像手段4Yは、例えばマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ及び感光体1Yとこの現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
【0081】
(一次転写ローラー)
一次転写ローラー5Yは、感光体1Y上に形成されたトナー像を無端ベルト状の中間転写体70に転写する手段である。一次転写ローラー5Yは、中間転写体70と当接して配置されている。
【0082】
(第2帯電手段)
第2帯電手段9Yは、中間転写体70にトナー像を転写した後に感光体1Yの表面を帯電(除電)させる除電手段であり、プレクリーニング部材として設けられている。第2帯電手段9Yとしては、例えばコロナ放電型の帯電器が用いられる。
【0083】
(クリーニング手段)
クリーニング手段6Yは、クリーニングブレードと、このクリーニングブレードより上流側に設けられたブラシローラーとにより構成される。
【0084】
(2.2)中間転写体ユニット
中間転写体ユニット7は、複数のローラー71、72、73、74により巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状の中間転写体70を有する。
【0085】
中間転写体ユニット7には、中間転写体70上にトナーを除去するクリーニング手段6bが配置されている。また、上記プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10Bkと、中間転写体ユニット7とにより筐体8が構成されている。筐体8は、画像形成装置の本体Aから支持レール82L、82Rを介して引き出し可能に構成されている。
【0086】
画像形成装置100は、中間転写体70上に形成されたカラー画像を転写材Pに転写する二次転写ローラー5bを備える。
【0087】
(2.3)給紙手段
給紙手段21は、二次転写ローラー5bに転写材Pを供給するための手段である。給紙手段21は、転写材Pを収容する給紙カセット20と、転写材Pを二次転写ローラー5bに搬送するための複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、及びレジストローラー23を備える。
【0088】
(2.4)定着手段
定着手段24は、転写材Pに転写されたカラー画像を転写材Pに定着させる手段であり、例えば内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなる熱ローラー定着方式のものが挙げられる。
【0089】
画像形成装置100は、画像形成された転写材Pを取り出すための排紙トレイ26を有し、定着手段24の下流に、定着処理された転写材Pを、排紙トレイ26に搬送する排紙ローラー25を備える。なお、上記した実施形態においては、画像形成装置100が、カラーのレーザープリンターであるものとしたが、モノクロのレーザープリンター、コピー機、複合機等であっても良い。
【0090】
3.電子写真画像形成システム
本発明の電子写真画像形成システムは、現像剤を搬送する現像ローラーを含む装置及び静電荷潜像現像用トナーを備えた電子写真画像形成システムであって、前記現像ローラーが、現像スリーブと前記現像スリーブ内部に磁束を発生する部材を有し、かつ、前記現像スリーブが、0.6質量%を超えるケイ素を含有するアルミニウム合金を有し、前記静電荷潜像現像用トナーのガラス転移温度が、0~40℃の範囲内であることを特徴とする。
【0091】
なお、本発明の「電子写真画像形成システム」とは、画像形成の各工程で必要な手段要素として所定の機能を有する機器又は装置及び静電荷潜像現像用トナー等で構成され、全体として、少なくとも画像形成の機能を果たす集合体をいう。なお、各手段要素は、それぞれ離れた異なる場所に個別に配置しても、一つの装置として一定の空間に集めて配置して一体としてシステム装置としてもよい。
【0092】
すなわち、本発明において用いる装置は、前記条件を満たす装置であればよく、特に限定されるものでなく、本発明に係る特定条件を満たす静電荷潜像現像用トナー専用の電子写真画像形成装置にすることは、必ずしも必要ではない。また、本発明の画像形成システムには、記録・複写情報を電子的データとして記録・保存する手段、当該電子的データを無線通信する手段を備えることも好ましい。
【0093】
例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等の無線通信により情報処理手段装置とデータ送受信を行うための無線インターフェースを有する形態であることも好ましい。なお、本発明の電子写真画像形成システムは、前述の現像スリーブと同様の物を用いることができ、ガラス転移温度が0~40℃の範囲内である静電荷潜像現像用トナーとを組み合わせて用いることができる。
【0094】
(3.1)静電荷潜像現像用トナー
(3.1.1)トナー母体粒子
本発明に係る静電荷潜像現像用トナーを構成するトナー母体粒子は、例えば結着樹脂を含有し、必要に応じて着色剤、離型剤及びその他添加剤を含有する。
【0095】
本発明において「トナー粒子」とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをいい、トナー粒子の集合体を「トナー」という。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。また、以下の説明においては、トナー母体粒子とトナー粒子とを特に区別する必要がない場合、単に「トナー粒子」ともいう。
【0096】
以下、ガラス転移温度について説明した後に、本発明に係るトナー母体粒子の各構成材料の詳細について説明する。
【0097】
(3.1.2)静電荷潜像現像用トナーのガラス転移温度
「ガラス転移温度」は、トナーを構成する樹脂成分などが低温から高温への温度変化にともなって、分子の自由体積が増加してミクロブラウン運動が始まる温度と定義される。
【0098】
トナーの低温定着性を高めるためには、より低温から分子運動をさせるガラス転移温度を低くするための設計が必要だが、さらに耐熱保管性やトナー同士の融着抑制のために工夫することが好ましい。
【0099】
例えばトナーの表面と内部で構成を変え、コアでガラス転移温度が低い樹脂、シェルでガラス転移温度が高い樹脂を用いたコア・シェル型のトナー構成にすることも好ましい。また、前記シェル相当部分に外添剤として無機微粒子を固定化する手段を用いて表面だけを硬質化し、耐熱保管性や耐融着凝集性を確保することも好ましい。
【0100】
本発明に係る静電荷潜像現像用トナーのガラス転移温度は、0~40℃の範囲内である。ガラス転移温度が0℃より低いと、トナーが柔らかすぎるため画像不良を生じ、40℃より高いと、当該トナーの低温定着性が悪化する。なお、本発明に係るトナーを構成するコアの樹脂には、よりガラス転移温度を低くするための設計が必要となり、シェルの樹脂には、よりガラス転移温度を高くするための設計が必要である。
【0101】
(制御方法)
樹脂のガラス転移温度は、樹脂を構成する分子の組成や分子量、異なる樹脂の成分比などを変えることにより制御する。
(測定方法)
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求められる。より具体的には、JIS K-7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0102】
(3.1.3)結着樹脂
静電荷潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子は、結着樹脂としてポリエステルを含有することが好ましい。ポリエステルは、脱水縮合反応系であり特にペーパーとの馴染みがよく、内部凝集力も高い。よって、特に、定着完了後の折り定着性が高いため、更なる低温定着化が可能となる。
【0103】
なお、「折り定着性」とは、例えば記録媒体として紙を用いてトナーによって黒帯状にトナー画像を形成し、定着させた後、そのまま当該紙を二つ折りにして再び広げた時の折り線部のトナー層の剥がれやすさを示す性質のことである。そして、「折り定着性」が高いと上記のようなトナー層の破壊が起こらず、良好な定着性が実現できる。
【0104】
また、ポリエステルは、他の樹脂に比べ高い負帯電性と適度な親水性を併せ持つ。よって、0.6質量%を超えるケイ素を含有する現像スリーブの表面に部分的に高い抵抗値を有する箇所があったとしても、トナー内部での帯電安定性がさらに高まる。そして、画質もさらに高いレベルで安定する。
【0105】
上記のような効果は、ポリエステルの含有量が60質量%以上で確認することができる。
ポリエステルの含有量が98質量%を超えると、例えば残りの2質量%を外添剤であると考えた場合に、相対的に外添剤量が少ない設計であることとなる。これにより、耐熱保管性や画質に問題が生じてくるため使用できない。
【0106】
以上のことから、本発明の電子写真画像形成システムにおいて、前記静電荷潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子が含有する結着樹脂が、50~95質量%の範囲内のポリエステルを含有することが、トナーの低温定着性、負帯電性及び適度な親水性の観点から好ましい。
【0107】
上記のトナー粒子は、結着樹脂として非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルとを含有してもよい。結晶性樹脂でも非晶性樹脂でもよいがシャープメルト性が得られるのは結晶性樹脂である。
【0108】
なお、「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
【0109】
一方、「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0110】
(非晶性ポリエステル)
非晶性ポリエステルは、結着樹脂の全量に対して50~88質量%の範囲内で含有されることが好ましく、60~80質量%の範囲内であることがより好ましい。非晶性ポリエステルとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステルとしては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0111】
〔多価カルボン酸〕
多価カルボン酸としては、例えば脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸これらの無水物、又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0112】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0113】
脂環式ジカルボン酸としては、例えばシクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0114】
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0115】
低級アルキルエステルとしては、例えば炭素数1~5の範囲内のものが挙げられる。
【0116】
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる三価以上のカルボン酸を併用してもよい。三価以上のカルボン酸としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級アルキルエステル等が挙げられる。低級アルキルエステルとしては、例えば炭素数1~5の範囲内のものが挙げられる。なお、多価カルボン酸は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0117】
〔多価アルコール〕
多価アルコールとしては、例えば脂肪族ジオール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオール及び脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
【0118】
脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0119】
脂環式ジオールとしては、例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0120】
芳香族ジオールとしえは、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0121】
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる三価以上の多価アルコールを併用してもよい。三価以上の多価アルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。多価アルコールは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0122】
〔非晶性ポリエステルのガラス転移温度〕
非晶性ポリエステルは、トナー内部に用いる場合とトナー表層のシェル材として用いる場合とがある。トナー内部に用いる場合には、ガラス転移温度(Tg)は、-5~40℃の範囲内が好ましく、0~30℃の範囲内がより好ましい。また、シェル材として用いる場合の非晶性ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、50~80℃の範囲内が好ましく、50~65℃の範囲内がより好ましい。
【0123】
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求められる。より具体的には、JIS K-7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0124】
〔その他〕
本実施形態においては、二種以上の非晶性ポリエステルを併用してもよい。この場合、最も大きなSP値を示す非晶性ポリエステルと、最も小さなSP値を示す非晶性ポリエステルとの間のSP値の差の絶対値は、0.25以下が好ましく、0.01~0.25の範囲内がより好ましく、0.10~0.25の範囲内がさらに好ましい。SP値の差の絶対値が0.25以下であれば、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルとの相溶性を適切な範囲に調整することが可能となる。
【0125】
非晶性ポリエステルは、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば重合温度を180~230℃の範囲内とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
【0126】
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0127】
本実施形態において、非晶性ポリエステルのSP値の調整方法としては、非晶性ポリエステルのSP値が望ましい値となるように、非晶性ポリエステルを構成する多価カルボン酸及び多価アルコールの種類を選択する方法が挙げられる。
【0128】
(結晶性ポリエステル)
結晶性ポリエステルは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステルとしては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。ここで、結晶性ポリエステルは、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0129】
〔多価カルボン酸〕
多価カルボン酸としては、例えば脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、これらの無水物、又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。
【0130】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。
【0131】
芳香族ジカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等が挙げられる。
【0132】
低級アルキルエステルとしては、例えば炭素数1~5の範囲内のものが挙げられる。
【0133】
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる三価以上のカルボン酸を併用してもよい。
【0134】
三価のカルボン酸としては、例えば芳香族カルボン酸、これらの無水物、又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。
【0135】
芳香族カルボン酸としては、例えば1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸及び1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等が挙げられる。
【0136】
低級アルキルエステルとしては、例えば炭素数1~5の範囲内のものが挙げられる。
【0137】
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。多価カルボン酸は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0138】
〔多価アルコール〕
多価アルコールとしては、例えば脂肪族ジオールが挙げられ、例えば主鎖部分の炭素数が7~20の範囲内である直鎖型脂肪族ジオールが好ましい。
【0139】
脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール及び1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール及び1,10-デカンジオールが好ましい。
【0140】
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる三価以上のアルコールを併用してもよい。三価以上のアルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0141】
多価アルコールは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0142】
〔結晶性ポリエステルの融解温度〕
結晶性ポリエステルの融解温度は、55~80℃の範囲内が好ましく、55~78℃の範囲内がより好ましく、55~76℃の範囲内がさらに好ましい。結晶性ポリエステルの融解温度が72℃以上であれば、熱保管性がより向上する。結晶性ポリエステルの融解温度が80℃以下であれば、低温定着がより向上する。なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0143】
〔その他〕
結晶性ポリエステルは、例えば非晶性ポリエステルと同様に、周知の製造方法により得られる。本実施形態において、結晶性ポリエステルのSP値の調整方法としては、結晶性ポリエステルのSP値が望ましい値となるように、結晶性ポリエステルを構成する多価カルボン酸及び多価アルコールの種類を選択する方法が挙げられる。
【0144】
(その他の樹脂)
本実施形態においては、結着樹脂として、非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステル以外のその他の樹脂を用いてもよい。その他の結着樹脂としては、例えばスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン性不飽和ニトリル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を二種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
【0145】
スチレン類としては、例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0146】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0147】
エチレン性不飽和ニトリル類としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0148】
ビニルエーテル類としては、例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0149】
ビニルケトン類としては、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等が挙げられる。
【0150】
オレフィン類としては、例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0151】
その他の結着樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂が挙げられる。また、上記のような樹脂と前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。これらのその他の結着樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0152】
本実施形態においては、その他の結着樹脂としてスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂を用いてもよい。その他の結着樹脂としてスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂を用いることで、ホットオフセット等の定着特性及び熱保管性がより向上する。
【0153】
その他の結着樹脂としてスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂を用いた場合の、結着樹脂に占めるスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂の割合は、5~25質量%の範囲内が好ましい。上記の範囲は、5~20質量%の範囲内がより好ましく、10~15質量%の範囲内がさらに好ましい。
【0154】
結着樹脂に占めるスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂の割合が5質量%以上であれば、ホットオフセット等の定着特性及び熱保管性が更に向上する。結着樹脂に占めるスチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂の割合が25質量%以下であれば、低温定着性がより向上する。
【0155】
本実施形態において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0156】
スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈殿重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。また、重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
【0157】
(3.1.4)着色剤
着色剤としては、例えば顔料又は染料等が挙げられる。
【0158】
顔料としては、例えばカーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等が挙げられる。
【0159】
染料としては、例えばアクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等が挙げられる。
【0160】
着色剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。着色剤の含有量としては、例えばトナー粒子全体に対して、1~30質量%の範囲内が好ましく、3~15質量%の範囲内がより好ましい。
【0161】
(3.1.5)離型剤
離型剤としては、例えば炭化水素系ワックスが挙げられる。また、天然ワックス、合成又は鉱物・石油系ワックス及びエステル系ワックス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0162】
天然ワックスとしては、例えばカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等が挙げられる。
【0163】
合成又は鉱物・石油系ワックスとしては、例えばモンタンワックス等が挙げられる。
【0164】
エステル系ワックスとしては、例えば脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等が挙げられる。
【0165】
離型剤の融解温度は、50~110℃の範囲内が好ましく、60~100℃の範囲内がより好ましい。なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K-7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0166】
離型剤の含有量としては、例えばトナー粒子全体に対して、1~20質量%の範囲内が好ましく、5~15質量%の範囲内がより好ましい。
【0167】
(3.1.6)その他の添加剤
その他の添加剤としては、例えば磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられ、これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0168】
(磁性体)
磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトのような酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ビスマス、カルシウム、マンガン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金、及びその混合物が挙げられる。
【0169】
磁性体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
【0170】
磁性体は、個数平均粒径が0.10~0.40μmの範囲内であることが好ましい。一般に磁性体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性体が凝集しやすくなるため、上記範囲が着色力と凝集性のバランスの観点で好ましい。なお、磁性体の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。
【0171】
具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性体粒子径を測定する。そして、磁性体の投影面積に等しい円の相当径を基に、個数平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
【0172】
本発明のトナーに用いられる磁性体は、例えば下記の方法で製造することができる。
【0173】
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHを7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
【0174】
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として、約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5~10の範囲内に維持しながら、空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。
【0175】
酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を、定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより所望の磁性体を得ることができる。また、本発明において水系媒体中でトナーを製造する場合、磁性体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。
【0176】
乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性体にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる。または、酸化反応終了後、洗浄、ろ過して得られた酸化鉄体を、乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させることでカップリング処理を行う。本発明においては、乾式法と湿式法のどちらも適宜選択出来る。
【0177】
なお、トナー中の磁性体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて以下のように測定することができる。
【0178】
窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃までトナーを加熱する。100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存質量を近似的に磁性体量とする。
【0179】
(帯電制御剤)
帯電性を安定化させるために帯電制御剤を用いることが好ましい。このような帯電制御剤としては、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができる。
【0180】
カラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正荷電性としては四級アンモニウム塩化合物が好ましい。
【0181】
負荷電性としてはサリチル酸又はアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等が好ましい。また、スルホン酸塩、カルボン酸塩、ハロゲンなどの負帯電性を発現する高分子であってもよい。
【0182】
(3.1.7)トナー粒子の特性等
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された、いわゆるコア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0183】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2~10μmの範囲内が好ましく、4~8μmの範囲内がより好ましい。なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン-コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン-コールター社製)を使用して測定される。
【0184】
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2mL中に測定試料を0.5~50mgの範囲内で加える。これを電解液100~150mLの範囲内の中に添加する。
【0185】
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2~60μmの範囲内の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
【0186】
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小粒径側から累積分布を描く。その時、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0187】
(3.1.8)外添剤
外添剤としては、例えば無機粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えばSiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4、等の他、チタン酸塩などの無機塩化物が挙げられる。
【0188】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えばシラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。疎水化処理剤の量としては、通常、例えば無機粒子100質量部に対して、1質量部~10質量部の範囲内である。
【0189】
外添剤としては、例えば樹脂粒子及びクリーニング滑剤等が挙げられる。樹脂粒子としては、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子が挙げられる。クリーニング滑剤としては、例えばステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、及びフッ素系高分子量体の粒子等が挙げられる。
【0190】
外添剤の添加量としては、例えばトナー粒子に対して、0.01~5質量%の範囲内が好ましく、0.01~2.0質量%の範囲内がより好ましい。
【0191】
(3.1.9)静電荷潜像現像用トナーの製造方法
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
【0192】
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。トナー粒子は、乾式製法(例えば混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。以下、トナー粒子の製法の例をいくつか挙げる。
【0193】
(3.1.9.1)凝集合一法
凝集合一法の工程としては、例えば(1)樹脂粒子分散液準備工程、(2)凝集粒子形成工程及び(3)融合・合一工程の3つの工程を経る。以下、各工程の詳細について説明する。なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0194】
(1)樹脂粒子分散液準備工程
樹脂粒子分散液準備工程は、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程である。
【0195】
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液及び離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。ここで、樹脂粒子分散液は、例えば樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0196】
(分散媒)
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。水系媒体としては、例えば蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0197】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられ、特にアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が好ましい。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。なお、界面活性剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0198】
アニオン界面活性剤としては、例えば硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等が挙げられる。
【0199】
カチオン界面活性剤としては、例えばアミン塩型、4級アンモニウム塩型等が挙げられる。
【0200】
非イオン系界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等が挙げられる。
【0201】
(分散方法)
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。なお、転相乳化法とは、以下の方法である。
【0202】
分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和する。その後、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する。
【0203】
(樹脂粒子の体積平均粒径)
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01~1μmの範囲内が好ましく、0.08~0.8μmの範囲内がより好ましく、0.1~0.6μmの範囲内がさらに好ましい。なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0204】
レーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば「LA-700」(堀場製作所製)
が挙げられる。上記の装置によって測定することで得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引く。そして、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0205】
(樹脂粒子の含有量)
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば5~50質量%の範囲内が好ましく、10~40質量%の範囲内がより好ましい。
【0206】
(その他の調製方法)
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0207】
(2)凝集粒子形成工程
凝集粒子形成工程は、樹脂粒子分散液中で、樹脂粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程である。なお、上記の樹脂粒子分散液は、必要に応じて他の粒子分散液を混合した後のものであってもよく、これを凝集させ、凝集粒子を形成してもよい。
【0208】
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。具体的には、以下のように凝集粒子を形成する。
【0209】
例えば混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加する。このとき、pHが2~5の範囲内に調整する。その後、樹脂粒子のガラス転移温度の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。このとき、上記のガラス転移温度は、(樹脂粒子のガラス転移温度-30℃)~(ガラス転移温度-10℃)の範囲内である。
【0210】
凝集粒子形成工程においては、例えば混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで撹拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2~5の範囲内)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0211】
(凝集剤)
凝集剤としては、例えば混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤が挙げられる。上記の界面活性剤としては、例えば無機金属塩及び二価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。凝集剤の金属イオンと錯体、又は当該金属イオンと類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0212】
無機金属塩としては、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
【0213】
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。キレート剤の添加量としては、例えば樹脂粒子100質量部に対して0.01~5.0質量部の範囲内が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0214】
(3)融合・合一工程
融合・合一工程は、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程である。凝集粒子形成工程の後、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、第2凝集粒子を形成する工程と第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0215】
第2凝集粒子を形成する工程は、凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集する工程である。
【0216】
また、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程は、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をすることで第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程である。
【0217】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程及び乾燥工程を経て、乾燥した状態のトナー粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0218】
本実施形態においては、トナー粒子の作製後、あらかじめ定められた温度条件及び加熱時間条件でトナー粒子にアニール処理を施してもよい。そして、本実施形態に係るトナーは、例えば得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。
【0219】
混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。さらに、必要に応じて振動師分機及び風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0220】
(3.1.9.2)粉砕法
粉砕法によってトナーを作製する場合、まず、トナー粒子が含有する結着樹脂、ワックス、電荷制御剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分に混合し、混合物を得る。トナー粒子としては、磁性トナー粒子であってもよく、結着樹脂、ワックス、電荷制御剤の他、磁性体を含有してもよい。
【0221】
次いで、得られた混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後、粉砕及び分級を行う。これによって、トナー粒子を得られる。得られたトナー粒子に、外添剤を外添混合することによって、トナーを作製することができる。
【0222】
混合機としては、例えばヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられる。
【0223】
混練機としては、例えばKRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。
【0224】
粉砕機としては、例えばカウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。
【0225】
分級機としては、例えばクラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
【0226】
外添剤を混合する混合処理装置としては、上記混合機などの公知の混合処理装置を用いることができる。
【0227】
なお、粉砕トナーを柔らかく設計した場合、別途その表面を硬質にする必要があるため、例えば「X24」等の粒子径分布が110nmくらいでそろっているシリカ等の微粒子を用いて当該粉砕トナー表面にシリカ等の微粒子を固定し、被覆する技術もある。そして、これにより作製されたトナー母体粒子に、その後改めて流動化剤目的の外添処理を行うこともできる。
【0228】
(3.1.9.3)懸濁重合法
懸濁重合法のトナー粒子の製造方法は、これら添加剤を、均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物とする溶解工程、この重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌機を用いて分散させ造粒する造粒工程、そして必要に応じて、芳香族溶剤及び重合開始剤を添加して重合反応を行わせる重合反応工程、結晶性材料の微小ドメインの存在位置、サイズを制御する冷却工程、結晶性材料の結晶化度を制御する保持(アニール)工程、を経て所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。
【0229】
(3.1.9.4)トナーの表面改質
上述のような方法によって作製されたトナーは、例えばコア表面への微粒子の固着によっても行うことができる。コア表面への微粒子の固着は、例えばコア材と無機微粒子とを均一混合し、コア材の表面に無機微粒子を静電的に付着させることによりオーダードミクスチャーを作製し、その後、機械的・熱的な衝撃力を与え無機微粒子をコア材中に打ち込むようにして固定することにより行なわれる。
【0230】
無機微粒子は、コア材中に完全に埋設されるのではなく、その一部をコア材から突き出すようにして固定される。このような無機微粒子の固着装置は、表面改質装置ないしはシステムとして市販されており、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0231】
(1)乾式メカノケミカル法:メカノケミカル(岡田精工(株))、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン(株))
(2)高速気流中衝撃法:ハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所)、クリプトロンシステム(川崎重工業(株))
(3)湿式法:ディスパーコート(日清製粉(株))、コートマイザー(フロイント産業(株))
(4)熱処理法:サーフュージング(日本ニューマチック工業(株))
(5)その他:スプレードライ(大川原化工機(株))
【0232】
(3.2)現像剤
本実施形態に係る静電荷潜像現像剤は、本実施形態に係る静電荷潜像現像用トナーを少なくとも含むものである。本実施形態に係る静電荷潜像現像剤は、本実施形態に係る静電荷潜像現像用トナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該静電荷潜像現像用トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0233】
(キャリア)
二成分現像剤に含まれるキャリアの主要な役割の一つは、現像ボックス内でトナーと撹拌・混合され、トナーに所望の電荷を与えることである。また、キャリアの別の役割は、現像機と感光体の間で電極として働き、電荷を帯びたトナーを感光体上の静電荷潜像に運び、トナー画像を形成させる担体物質(すなわちキャリア)として機能することである。
【0234】
キャリアは、例えば磁気力によりマグネットローラー上に保持され、現像に作用した後、再び現像ボックスに戻り、新たなトナーと再び撹拌・混合され、ある一定期間繰り返し使用される。したがって、所望の画像特性(画像濃度、カブリ、白斑、階調性、解像力等)を安定に維持するためには、当然のことながら、キャリアの特性が使用期間中、安定であることが要求される。
【0235】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば導電性粒子、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア、マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア、及び多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア等が挙げられる。なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0236】
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0237】
磁性粉としては、例えば鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0238】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0239】
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性材料等、その他添加剤を含ませてもよい。
【0240】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
【0241】
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0242】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100~30:100が好ましく、3:100~20:100がより好ましい。
【実施例0243】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。pH値は、特に断り書きがない場合、25℃における測定値である。
【0244】
A.現像ローラーの作製
(A.1)現像ローラー1の作製
(A.1.1)現像スリーブ1の作製
以下の手順にしたがって、現像スリーブ1を作製した。
【0245】
(支持体の準備)
アルミニウム合金製の円筒状の支持体を準備した。この円筒状の支持体のアルミニウム合金中のケイ素含有量は、0.61質量%である。また、円筒状の支持体は、外径が16mm、内径が14mm、肉厚1mmの薄肉の円筒状の支持体である。
【0246】
(サンドブラスト処理)
上記のアルミニウム合金製の円筒状の支持体に、ブラストガンにてガラスビーズを噴射することで円筒の外周面にサンドブラスト処理を施すことによって現像スリーブ1を作製した。上記サンドブラスト処理の加工条件は以下のとおりである。
【0247】
<加工条件>
ガラスビーズの種類:FGB#80(不二製作所製)
ガラスビーズの供給量速度:200g/分
ブラストガンから円筒までの噴射距離:100mm
ブラストガンの移動速度:5.0cm/sec
圧縮空気圧:0.23MPa
円筒の回転速度:545rpm
【0248】
(A.1.2)マグネットローラーの設置
上記の現像スリーブ1の内側に
図2のようにマグネットローラーを設置することによって、現像ローラー1を作製した。
【0249】
(A.2)現像ローラー2~12の作製
アルミニウム合金中のケイ素の含有量を表Iに記載の量としたこと以外は、現像スリーブ1の作製手順と同様にして現像スリーブ2~12を作製した。また、マグネットローラーの設置についても現像ローラー1と同様に行い、現像ローラー2~12を作製した。
【0250】
【0251】
B.トナーの作製
(B.1)各トナーに用いる樹脂及び分散液(トナー1~3を作製するための準備)
(B.1.1)非晶性ポリエステル
(B.1.1.1)各非晶性ポリエステルの作製
(非晶性ポリエステル〔a1〕の作製)
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、下記成分を投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、ジオクタン酸スズを成分の合計量に対して0.3%投入した。
【0252】
<成分>
エチレングリコール 106質量部
テレフタル酸ジメチル 245質量部
1,10-デカンジカルボン酸 105質量部
【0253】
窒素ガス気流下温度を235℃まで1時間かけて昇温し、3時間反応させ、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、撹拌反応させ、求められる分子量になった時点で反応を終了して非晶性ポリエステル〔a1〕を作製した。
【0254】
(非晶性ポリエステル〔a2〕の作製)
下記成分を投入したこと以外は、非晶性ポリエステル〔a1〕と同様にして非晶性ポリエステル〔a2〕を作製した。
【0255】
<成分>
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 30質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 270質量部
テレフタル酸 60質量部
フマル酸 40質量部
テトラプロペニルこはく酸無水物 40質量部
【0256】
(非晶性ポリエステル〔a3〕の作製)
下記成分を投入したこと以外は、非晶性ポリエステル〔a1〕と同様にして非晶性ポリエステル〔a3〕を作製した。
【0257】
<成分>
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 210質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 230質量部
テレフタル酸 30質量部
フマル酸 135質量部
テトラプロペニルこはく酸無水物 40質量部
【0258】
(非晶性ポリエステル〔a4〕の作製)
下記成分を投入したこと以外は、非晶性ポリエステル〔a1〕と同様にして非晶性ポリエステル〔a4〕を作製した。
【0259】
<成分>
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 150質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 250質量部
テレフタル酸 100質量部
テトラプロペニルこはく酸無水物 130質量部
トリメリット酸 15質量部
【0260】
(非晶性ポリエステル〔a5〕の作製)
下記成分を投入したこと以外は、非晶性ポリエステル〔a1〕と同様にして非晶性ポリエステル〔a5〕を作製した。
【0261】
<成分>
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 350質量部
テレフタル酸 35質量部
フマル酸 90質量部
テトラプロペニルこはく酸無水物 13質量部
【0262】
(B.1.1.2)各非晶性ポリエステル分散液の調製
(非晶性ポリエステル分散液(A1)の調製)
撹拌機を備えた反応容器中に、下記成分を投入し、60℃にて溶解させた。
【0263】
<成分>
非晶性ポリエステル〔a1〕 100質量部
メチルエチルケトン 60質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
【0264】
溶解を確認した後、反応容器を35℃に冷却した後、10%アンモニア水溶液3.5質量部を添加した。次いで、イオン交換水300質量部を3時間掛けて反応容器中に滴下した。次いで、エバポレーターにてメチルエチルケトン、並びに、イソプロピルアルコールを除去し、非晶性ポリエステル分散液(A1)を調製した。
【0265】
(非晶性ポリエステル分散液(A2)の調製)
非晶性ポリエステル〔a1〕を非晶性ポリエステル〔a2〕としたこと以外は、非晶性ポリエステル分散液(A1)と同様にして非晶性ポリエステル分散液(A2)を調製した。
【0266】
(非晶性ポリエステル分散液(A3)の調製)
非晶性ポリエステル〔a1〕を非晶性ポリエステル〔a3〕としたこと以外は、非晶性ポリエステル分散液(A1)と同様にして非晶性ポリエステル分散液(A3)を調製した。
【0267】
(非晶性ポリエステル分散液(A4)の調製)
非晶性ポリエステル〔a1〕を非晶性ポリエステル〔a4〕としたこと以外は、非晶性ポリエステル分散液(A1)と同様にして非晶性ポリエステル分散液(A4)を調製した。
【0268】
(非晶性ポリエステル分散液(A5)の調製)
非晶性ポリエステル〔a1〕を非晶性ポリエステル〔a5〕としたこと以外は、非晶性ポリエステル分散液(A1)と同様にして非晶性ポリエステル分散液(A5)を調製した。
【0269】
(B.1.2)結晶性ポリエステル
(B.1.2.1)各結晶性ポリエステルの作製
(結晶性ポリエステル〔c1〕の作製)
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、下記成分を投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、ジオクタン酸スズを、下記成分100質量部に対して0.3質量部投入した。
【0270】
<成分>
1,10-デカンジカルボン酸 300質量部
エチレングリコール 100質量部
【0271】
窒素ガス気流下、160℃で3時間撹拌反応させた後、温度を更に180℃まで1.5時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、所望の分子量になった時点で反応を終了して結晶性ポリエステル〔c1〕を作製した。
【0272】
(結晶性ポリエステル〔c2〕の作製)
下記成分を投入したこと以外は、結晶性ポリエステル〔c1〕と同様にして結晶性ポリエステル〔c2〕を作製した。
【0273】
<成分〕>
1,10-デカンジカルボン酸 350質量部
1,6-ヘキサンジオール 170質量部
【0274】
(結晶性ポリエステル〔c3〕の作製)
下記成分を投入したこと以外は、結晶性ポリエステル〔c1〕と同様にして結晶性ポリエステル〔c3〕を作製した。
【0275】
<成分〕>
1,10-デカンジカルボン酸 350質量部
1,9-ノナンジオール 240質量部
【0276】
(B.1.2.2)各結晶性ポリエステル分散液の調製
(結晶性ポリエステル分散液(C1)の調製)
撹拌機を備えた反応容器中に、下記成分を投入し、65℃にて溶解させた。
【0277】
<成分>
結晶性ポリエステル〔c1〕 100質量部
メチルエチルケトン 60質量部
イソプロピルアルコール 15質量部
【0278】
溶解を確認し、反応容器を60℃に冷却した後、10%アンモニア水溶液5質量部を添加した。次いで、イオン交換水300質量部を3時間掛けて反応容器中に滴下した。次いで、エバポレーターにてメチルエチルケトン、並びに、イソプロピルアルコールを除去し、結晶性ポリエステル分散液(C1)を調製した。
【0279】
(結晶性ポリエステル分散液(C2)の調製)
結晶性ポリエステル〔c1〕を結晶性ポリエステル〔c2〕としたこと以外は、結晶性ポリエステル分散液(C1)と同様にして結晶性ポリエステル分散液(C2)を調製した。
【0280】
(結晶性ポリエステル分散液(C3)の調製)
結晶性ポリエステル〔c1〕を結晶性ポリエステル〔c3〕としたこと以外は、結晶性ポリエステル分散液(C1)と同様にして結晶性ポリエステル分散液(C3)を調製した。
【0281】
(B.1.3)スチレン・アクリル共重合樹脂
(スチレン・アクリル共重合樹脂分散液(S1)の調製)
下記成分を容器中に投入し、ホモジナイザーを用いて乳化したモノマー乳化液(S)を調製した。
【0282】
<成分>
スチレン 126質量部
n-ブチルアクリレート 14質量部
ドデカンチオール 2.1質量部
イソプロピルアルコール 0.88質量部
アニオン界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax) 4質量部
イオン交換水 59.2質量部
【0283】
一方、重合用反応容器に下記成分を投入した。
【0284】
<成分>
アニオン界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax) 0.6質量部
イオン交換水 133質量部
【0285】
その後、還流管を設置し、窒素を注入しながらゆっくりと撹拌し、75℃まで重合用フラスコをウォーターバスで加熱し、保持した。この容器中に、上記モノマー乳化液(S)の10質量部を定量ポンプを用いて、10分間かけて滴下した。
【0286】
次いで、過硫酸アンモニウム1.05質量部をイオン交換水10質量部に溶解し、重合用フラスコ中に定量ポンプを用いて10分間かけて滴下した。この状態で、1時間撹拌を続けた。さらに、残りのモノマー乳化液(S)を定量ポンプを用いて、2時間かけて滴下した。
【0287】
全ての加え終わったのち、更に3時間撹拌を続け、スチレン・アクリル共重合樹脂分散液(S1)を調製した。
【0288】
(B.1.4)離型剤分散液
(離型剤分散液(W1)の調製)
下記成分を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、離型剤分散液(W1)を調製した。
【0289】
<成分>
炭化水素系ワックス 270.0質量部
アニオン界面活性剤 13.5質量部
(有効成分として、離型剤に対して3.0%)
イオン交換水 700.0質量部
【0290】
なお、上記成分中の炭化水素系ワックスは、融解温度Tw=90.2℃である「FNP0090」(日本精鑞(株)社製)である。
【0291】
また、上記成分中のアニオン界面活性剤は、有効成分量が60%である「テイカパワーBN2060」(テイカ(株)社製)である。
【0292】
この離型剤分散液(W1)中の粒子の体積平均粒径D50vは220nmであった。
【0293】
その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20.0%になるように調製した。
【0294】
(B.1.5)着色剤分散液
(ブラック着色剤分散液(B1)の調製)
下記成分をすべて投入した際に液面の高さが容器の高さの1/3になる大きさのステンレス容器に、下記成分を投入し、イオン交換水280質量部とアニオン界面活性剤を入れ、充分に界面活性剤を溶解させた。
【0295】
その後、前記顔料すべてを投入し、撹拌機を用いて濡れていない顔料がなくなるまで撹拌した後、残りのイオン交換水を加え、更に撹拌して充分に脱泡させた。
【0296】
<成分>
カーボンブラック 200質量部
アニオン界面活性剤 33質量部
(有効成分として、着色剤に対して10%)
イオン交換水 750質量部
【0297】
なお、上記成分中のカーボンブラックは、「REGAL330」(キャボットジャパン(株)製)である。
【0298】
また、上記成分中のアニオン界面活性剤は、有効成分量が60%である「ネオゲンSC」(第一工業製薬(株)製)である。
【0299】
脱泡後、ホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)を用いて、5000rpmで10分間分散した後、撹拌器で1昼夜撹拌させて脱泡した。
【0300】
脱泡後、再度ホモジナイザーを用いて、6000rpmで10分間分散した後、撹拌器で1昼夜撹拌させて脱泡した。
【0301】
脱泡後、高圧衝撃式分散機アルティマイザー「HJP30006」((株)スギノマシン製)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は、トータル仕込み量と装置の処理能力とから換算して25パス相当行った。
【0302】
得られた分散液を72時間放置して沈殿物を除去し、イオン交換水を加えて、固形分濃度を15%に調整し、ブラック着色剤粒子分散液(B1)を調製した。このブラック着色剤粒子分散液(B1)中の粒子の体積平均粒径D50vは、110nmであった。
【0303】
(B.2)トナー1の作製
(トナー母体粒子〔1〕の作製)
トナーコア成分として、固形分が下記の分量になるように各分散液を秤量した。
【0304】
<コア成分>
非晶性ポリエステル〔a1〕 47.5質量部
結晶性ポリエステル〔c1〕 22.0質量部
ブラック着色剤〔B1〕(固形分) 6.0質量部
離型剤〔W1〕(固形分) 1.5質量部
【0305】
各分散液を、丸型ステンレス製フラスコに投入後、固形分濃度が12.5%となるようにイオン交換水を加え、更に、硫酸アルミニウム10%水溶液6.3部を投入した。次いで、ホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で5000rpmで10分間混合及び分散した後、フラスコ内の内容物を撹拌しながら40℃まで加熱撹拌した。
【0306】
それ以降、毎分0.5℃で昇温しながら、粒径が6.1μmになったところで温度を保持した。次いで、トナーシェル成分として固形分が下記の分量となるように各分散液を秤量、混合した分散液を投入し60分保持した。
【0307】
<シェル成分>
非晶性ポリエステル〔a5〕 20質量部
離型剤分散液〔W1〕(固形分) 3質量部
【0308】
得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、凝集粒子が生成していることが確認された。
【0309】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム塩「キレスト40」(キレスト(株)製)を11部加えた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8に調整した。その後、温度を上げて82.5℃にした後、10分毎に硝酸でpHを0.05ずつ下げ、45分間撹拌を続けた。冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥してトナー母体粒子〔1〕を作製した。
【0310】
(外添剤の添加)
上記より得たトナー母体粒子〔1〕の100質量部に対して、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製)の1.5質量部を加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合した。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー1を作製した。
【0311】
(ガラス転移温度の測定)
トナー1のガラス転移温度(Tg)は、0.4℃であった。
【0312】
なお、上記トナー1及びその以外のトナーのガラス転移温度の測定は、JIS K7121-1987に準拠した示差走査熱量測定により行った。具体的には以下のように行った。
【0313】
自動接線処理システムを備えた示差走査熱量計「DSC-50型」(島津製作所社製)に、測定対象となる物質(各トナー)をセットした。また、冷却媒体として液体窒素をセットした。
【0314】
10℃/分の昇温速度で0℃から150℃まで加熱して(1回目の昇温過程)温度(℃)と熱量(mW)との関係を求めた。
【0315】
次に、-10℃/分の降温速度で0℃まで冷却し、再度これを10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して(2回目の昇温過程)データを採取した。なお、0℃及び150℃にてそれぞれ10分間ずつホールドした。
【0316】
測定装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の融解温度を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。
【0317】
試料はアルミニウム製パンに入れ、サンプルの入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットした。
【0318】
ガラス転移温度は、2回目の昇温過程で得られたDSC曲線の吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度をもってガラス転移温度とした。
【0319】
(B.3)トナー2及び3の作製
トナー母体粒子の成分を表IIのものとするようにトナー母体粒子〔1〕の作製と同様にしてトナー母体粒子〔2〕及び〔3〕を作製した。
【0320】
なお、トナー母体粒子〔2〕の作製におけるスチレン・アクリル共重合樹脂分散液(S1)の固形分〔S1〕は、4.5質量部とした。
【0321】
【0322】
また、外添剤の添加を上記トナー母体粒子〔2〕及び〔3〕にすることによりトナー2及び3を作製し、ガラス転移温度(Tg)の測定を行った。
【0323】
トナー1~3までの外添剤の種類、添加量、当該外添剤を含むトナー中のポリエステル含有量及びガラス転移温度を表IIIに示した。
【0324】
【0325】
(B.4)各トナーに用いる樹脂及び分散液(トナー4~6を作製するための準備)
(B.4.1)非晶性ポリエステル
(非晶性ポリエステル〔a7〕の作製)
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、下記の成分を入れ、常圧下、230℃で10時間反応させた。
【0326】
<成分>
エチレングリコール 106質量部
テレフタル酸ジメチル 245質量部
1,10-デカンジカルボン酸 105質量部
ジブチルチンオキサイド 2質量部
【0327】
その後、10~15mmHgの減圧で5時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸30質量部を入れ、180℃、常圧で3時間反応させ、水酸基を有する低分子のポリエステルである非晶性ポリエステル〔a7〕を作製した。
【0328】
(非晶性ポリエステル〔a8〕の作製)
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、下記の成分を入れ、常圧下、230℃で10時間反応させた。
【0329】
<成分>
ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物 229質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物 529質量部
イソフタル酸 100質量部
テレフタル酸 108質量部
アジピン酸 46質量部
ジブチルチンオキサイド 2質量部
【0330】
その後、10~15mmHgの減圧で5時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸30質量部を入れ、180℃、常圧で3時間反応させ、水酸基を有する低分子のポリエステルである非晶性ポリエステル〔a8〕を作製した。
【0331】
(非晶性ポリエステル〔a9〕の作製)
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、下記の成分を入れ、常圧下、240℃で10時間反応させた。
【0332】
<成分>
ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物 235質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物 535質量部
テレフタル酸 215質量部
アジピン酸 50質量部
ジブチルチンオキサイド 3質量部
【0333】
その後、10~20mmHgの減圧で5時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸45質量部を入れ、185℃、常圧で3時間反応させ、水酸基を有する低分子のポリエステルである非晶性ポリエステル〔a9〕を作製した。
【0334】
(B.4.2)結晶性ポリエステル
(B.4.2.1)各結晶性ポリエステルの作製
(結晶性ポリエステル〔c4〕の作製)
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに下記の成分を入れ、180℃で10時間反応させた。
【0335】
<成分>
1,10-デカン二酸 2300g
1、8-オクタンジオール 2530g
ハイドロキノン 4.9g
【0336】
その後、200℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaにて2時間反応させることで結晶性ポリエステル〔c4〕を作製した。
【0337】
(結晶性ポリエステル〔c5〕の作製)
結晶性ポリエステル〔c4〕と全く同様の方法にて、結晶性ポリエステル〔c5〕を作製した。
【0338】
(結晶性ポリエステル〔c6〕の作製)
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに下記の成分を入れ、150℃で6時間反応させた。
【0339】
<成分>
1,4-ブタンジオール 50モル
フマル酸 50モル
ハイドロキノン 6.0g
【0340】
その後、200℃に昇温して1時間反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応させることで結晶性ポリエステル〔c6〕を作製した。
【0341】
(B.4.2.2)各結晶性ポリエステル分散液の調製
(結晶性ポリエステル分散液(C4)の調製)
金属製2L容器に下記の成分を入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。
【0342】
<成分>
結晶性ポリエステル〔c4〕 100g
酢酸エチル 400g
【0343】
その後、ガラスビーズ(3mmφ)500mLを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行なうことで、結晶性ポリエステル分散液(C4)を調製した。
【0344】
(結晶性ポリエステル分散液(C5)の調製)
金属製2L容器に下記の成分を入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。
【0345】
<成分>
結晶性ポリエステル〔c5〕 100g
酢酸エチル 400g
【0346】
その後、ガラスビーズ(3mmφ)500mLを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行なうことで、結晶性ポリエステル分散液(C5)を調製した。
【0347】
(結晶性ポリエステル分散液(C6)の調製)
金属製2L容器に下記の成分を入れ、80℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。
【0348】
<成分>
結晶性ポリエステル〔c6〕 110g
酢酸エチル 450g
【0349】
その後、ガラスビーズ(3mmφ)500mLを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行なうことで、結晶性ポリエステル分散液(C6)を調製した。
【0350】
(B.4.3)ポリエステルプレポリマー
(B.4.3.1)中間体ポリエステルの作製
(中間体ポリエステル〔p1〕の作製)
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、下記の成分を入れ、常圧で230℃で8時間反応させた。
【0351】
<成分>
エチレングリコール 106質量部
テレフタル酸ジメチル 245質量部
1,10-デカンジカルボン酸 105質量部
ジブチルチンオキサイド 2質量部
【0352】
その後、10~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、中間体ポリエステル〔p1〕を作製した。
【0353】
(中間体ポリエステル〔p2〕の作製)
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、下記の成分を入れ、常圧で230℃で8時間反応させた。
【0354】
<成分>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 682質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 81質量部
テレフタル酸 283質量部
無水トリメリット酸 22質量部
ジブチルチンオキサイド 2質量部
【0355】
その後、10~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、中間体ポリエステル〔p2〕を作製した。
【0356】
(中間体ポリエステル〔p3〕の作製)
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、下記の成分を入れ、常圧で240℃で10時間反応させた。
【0357】
<成分>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 700質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 85質量部
テレフタル酸 300質量部
無水トリメリット酸 25質量部
ジブチルチンオキサイド 3質量部
【0358】
その後、10~20mmHgの減圧下で6時間反応させ、中間体ポリエステル〔p3〕を作製した。
【0359】
(B.4.3.2)ポリエステルプレポリマー分散液の調製
(ポリエステルプレポリマー分散液(P1)の調製)
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、下記の成分を入れ100℃で5時間反応させた。
【0360】
<成分>
中間体ポリエステル〔p1〕 410質量部
イソホロンジイソシアネート 89質量部
酢酸エチル 500質量部
【0361】
これにより、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー分散液(P1)を調製した。
【0362】
(ポリエステルプレポリマー分散液(P2)の調製)
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、下記の成分を入れ100℃で5時間反応させた。
【0363】
<成分>
中間体ポリエステル〔p2〕 410質量部
イソホロンジイソシアネート 89質量部
酢酸エチル 500質量部
【0364】
これにより、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー分散液(P2)を調製した。
【0365】
(ポリエステルプレポリマー分散液(P3)の調製)
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、下記の成分を入れ110℃で6時間反応した。
【0366】
<成分>
中間体ポリエステル〔p3〕 400質量部
イソホロンジイソシアネート 90質量部
酢酸エチル 500質量部
【0367】
これにより、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー分散液(P3)を得た。
【0368】
(B.4.4)ケチミン化合物
(ケチミン化合物(K1)の合成)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、下記の成分を仕込み、50℃で5時間反応を行い、ケチミン化合物(K1)を合成した。
【0369】
<成分>
イソホロンジアミン 170質量部
メチルエチルケトン 75質量部
【0370】
(ケチミン化合物(K2)の合成)
ケチミン化合物(K1)と全く同様の方法にてケチミン化合物(K2)を合成した。
【0371】
(ケチミン化合物(K3)の合成)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、下記の成分を仕込み、50℃で6時間反応を行い、ケチミン化合物(K3)を合成した。
【0372】
<成分>
イソホロンジアミン 180質量部
メチルエチルケトン 80質量部
【0373】
(B.4.5)水相
(B.4.5.1)水相調製用微粒子分散液の調製
(有機微粒子エマルション(1)の調製)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、下記成分を投入し400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。
<成分>
水 683質量部
「エレミノールRS-30」(三洋化成工業製) 11質量部
スチレン 138質量部
メタクリル酸 138質量部
過硫酸アンモニウム 1.0質量部
【0374】
なお、上記成分中の「エレミノールRS-30」(三洋化成工業製)は、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩である。
【0375】
上記の白色の乳濁液を加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液である有機微粒子エマルション(1)を調製した。
【0376】
有機微粒子エマルション(1)をレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA-920」(株式会社堀場製作所製)にて測定したところ、体積平均粒径は、0.14μmであった。
【0377】
(有機微粒子エマルション(2)の調製)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、下記成分を投入し400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。
【0378】
<成分>
水 683質量部
「エレミノールRS-30」(三洋化成工業製) 11質量部
スチレン 138質量部
メタクリル酸 138質量部
過硫酸アンモニウム 1.0質量部
【0379】
なお、上記成分中の「エレミノールRS-30」(三洋化成工業製)は、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩である。
【0380】
上記の白色の乳濁液を加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液である有機微粒子エマルション(2)を得た。
【0381】
有機微粒子エマルション(2)をレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA-920」(株式会社堀場製作所製)にて測定したところ、体積平均粒径は、0.14μmであった。
【0382】
(有機微粒子エマルション(3)の調製)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、下記成分を投入し450回転/分で20分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。
【0383】
<成分>
水 700質量部
「エレミノールRS-30」(三洋化成工業製) 12質量部
スチレン 140質量部
メタクリル酸 140質量部
過硫酸アンモニウム 1.5質量部
【0384】
なお、上記成分中の「エレミノールRS-30」(三洋化成工業製)は、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩である。
【0385】
上記の白色の乳濁液を加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液35質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液である有機微粒子エマルション(3)を調製した。
【0386】
有機微粒子エマルション(3)をレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA-920」(株式会社堀場製作所製)にて測定したところ、体積平均粒径は、0.30μmであった。
【0387】
(B.4.5.2)水相の調製
(水相(1)の調製)
有機微粒子エマルション(1)の一部を乾燥して樹脂分を単離した。
【0388】
その後、下記の成分を混合撹拌した。
【0389】
<成分>
水 990質量部
有機微粒子エマルション(1) 83質量部
「エレミノールMON-7」(三洋化成工業製) 37質量部
酢酸エチル 90質量部
【0390】
なお、上記の「エレミノールMON-7」(三洋化成工業製)は、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液である。これにより乳白色の液体である水相(1)を調製した。
【0391】
(水相(2)の調製)
有機微粒子エマルション(2)の一部を乾燥して樹脂分を単離した。
【0392】
その後、下記の成分を混合撹拌した。
【0393】
<成分>
水 990質量部
有機微粒子エマルション(2) 83質量部
「エレミノールMON-7」(三洋化成工業製) 37質量部
酢酸エチル 90質量部
【0394】
なお、上記の「エレミノールMON-7」(三洋化成工業製)は、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液である。これにより乳白色の液体である水相(2)を調製した。
【0395】
(水相(3)の調製)
下記の成分を混合撹拌した。
【0396】
<成分>
水 1000質量部
有機微粒子エマルション(3) 85質量部
「エレミノールMON-7」(三洋化成工業製) 40質量部
酢酸エチル 95質量部
【0397】
なお、上記の「エレミノールMON-7」(三洋化成工業製)は、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液である。これにより乳白色の液体である水相(3)を調製した。
【0398】
(B.4.6)油相(離型剤・マスターバッチ分散液)の調製
(B.4.6.1)離型剤分散液の調製
(離型剤分散液(W2)の調製)
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、下記の成分を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間かけて30℃に冷却した。
【0399】
<成分>
非晶性ポリエステル〔a7〕 378質量部
カルナバワックス(離型剤) 110質量部
CCA 22質量部
酢酸エチル 947質量部
【0400】
なお、上記成分中の「カルナバワックス」は、株式会社加藤洋行の精製カルナバワックス1号粉末である。また、上記成分中の「CCA」は、サリチル酸金属錯体E-84(オリエント化学工業)である。これにより、離型剤分散液(W2)を調製した。
【0401】
(離型剤分散液(W3)の調製)
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、下記の成分を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間かけて30℃に冷却した。
【0402】
<成分>
非晶性ポリエステル〔a8〕 378質量部
カルナバワックス(離型剤) 110質量部
CCA 22質量部
酢酸エチル 947質量部
【0403】
なお、上記成分中の「カルナバワックス」は、株式会社加藤洋行の精製カルナバワックス1号粉末である。また、上記成分中の「CCA」は、サリチル酸金属錯体E-84(オリエント化学工業)である。これにより、離型剤分散液(W3)を調製した。
【0404】
(離型剤分散液(W4)の調製)
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、下記の成分を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま8時間保持した後、1時間かけて24℃に冷却した。
【0405】
<成分>
非晶性ポリエステル〔a9〕 400質量部
マイクロクリスタリンワックス(離型剤) 100質量部
CCA 20質量部
酢酸エチル 1000質量部
【0406】
なお、上記成分中の「マイクロクリスタリンワックス」は、酸価が0.1mgKOH/g、融点が65℃、炭素数が80、直鎖状炭化水素の比率が70重量%である。また、上記成分中の「CCA」は、サリチル酸金属錯体E-84(オリエント化学工業)である。これにより、離型剤分散液(W4)を調製した。
【0407】
(B.4.6.2)マスターバッチ
(マスターバッチ〔1〕の作製)
下記の成分を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合した。
【0408】
<成分>
カーボンブラック(顔料) 540質量部
非晶性ポリエステル〔a7〕 1200質量部
【0409】
なお、上記のカーボンブラックは、「Printex35」(デクサ製)〔DBP吸油量=43mL/100mg、pH=9.5〕である。
【0410】
その後、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練し、さらに圧延冷却し、パルペライザーで粉砕することでマスターバッチ〔1〕を作製した。
【0411】
(マスターバッチ〔2〕の作製)
下記の成分を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合した。
【0412】
<成分>
カーボンブラック(顔料) 540質量部
非晶性ポリエステル〔a8〕 1200質量部
【0413】
なお、上記のカーボンブラックは、「Printex35」(デクサ製)〔DBP吸油量=43mL/100mg、pH=9.5〕である。
【0414】
その後、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練し、さらに圧延冷却し、パルペライザーで粉砕することでマスターバッチ〔2〕を作製した。
【0415】
(マスターバッチ〔3〕の作製)
下記の成分を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合した。
【0416】
<成分>
カーボンブラック(顔料) 550質量部
非晶性ポリエステル〔a9〕 1300質量部
【0417】
なお、上記のカーボンブラックは、「Printex35」(デクサ製)〔DBP吸油量=43mL/100mg、pH=9.5〕である。
【0418】
その後、混合物を2本ロールを用いて160℃で45分混練し、さらに圧延冷却し、パルペライザーで粉砕することでマスターバッチ〔3〕を作製した。
【0419】
(B.4.6.3)原料溶解液
(原料溶解液(1)の調製)
離型剤分散液(W2)が入った容器に下記の成分を仕込み、1時間混合することで原料溶解液(1)を調製した。
【0420】
<成分>
マスターバッチ〔1〕 480質量部
酢酸エチル 550質量部
【0421】
(原料溶解液(2)の調製)
離型剤分散液(W3)が入った容器に下記の成分を仕込み、1時間混合することで原料溶解液(2)を調製した。
【0422】
<成分>
マスターバッチ〔2〕 480質量部
酢酸エチル 550質量部
【0423】
(原料溶解液(3)の調製)
離型剤分散液(W4)が入った容器に下記の成分を仕込み、1時間混合することで原料溶解液(3)を調製した。
【0424】
<成分>
マスターバッチ〔3〕 480質量部
酢酸エチル 550質量部
【0425】
(B.4.6.4)各溶液の分散と添加
(油相(1)の調製)
1324質量部の原料溶解液(1)を別の容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて下記の条件下でカーボンブラック及び離型剤の分散を行った。
【0426】
<条件>
送液速度:1kg/時間
ディスク周速度:6m/秒
0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パス
【0427】
次いで、非晶性ポリエステル〔a7〕の65%酢酸エチル溶液(非晶性ポリエステル〔a7〕を65質量%で、酢酸エチルに溶かし込んだ溶液)の1042.3質量部を添加し、上記条件のビーズミルで1パスし、油相(1)を調製した。
【0428】
油相(1)の固形分濃度(130℃、30分)は50質量%であった。
【0429】
(油相(2)の調製)
1324質量部の原料溶解液(2)を別の容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて下記の条件下でカーボンブラック及び離型剤の分散を行った。
【0430】
<条件>
送液速度:1kg/時間
ディスク周速度:6m/秒
0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パス
【0431】
次いで、非晶性ポリエステル〔a8〕の65%酢酸エチル溶液(非晶性ポリエステル〔a8〕を65質量%で、酢酸エチルに溶かし込んだ溶液)の1042.3質量部を添加し、上記条件のビーズミルで1パスし、油相(2)を調製した。
【0432】
油相(2)の固形分濃度(130℃、30分)は50質量%であった。
【0433】
(油相(3)の調製)
1324質量部の原料溶解液(3)を別の容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて下記の条件下でカーボンブラック及び離型剤の分散を行った。
【0434】
<条件>
送液速度:1kg/時間
ディスク周速度:6m/秒
0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パス
【0435】
次いで、非晶性ポリエステル〔a9〕の65%酢酸エチル溶液(非晶性ポリエステル〔a9〕を65質量%で、酢酸エチルに溶かし込んだ溶液)の1000質量部を添加し、前記条件のビーズミルで1パスし、油相(3)を調製した。
【0436】
油相(3)の固形分濃度(130℃、30分)は53質量%であった。
【0437】
(B.5)トナー4の作製
(B.5.1)トナー母体粒子〔4〕の作製
(乳化工程)
下記の成分を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5000rpmで1分間混合した。
【0438】
<成分>
油相(1) 664質量部
ポリエステルプレポリマー分散液(P1) 109.4質量部
結晶性ポリエステル分散液(C4) 73.9質量部
ケチミン化合物(K1) 4.6質量部
【0439】
その後、容器に水相(1)を1200質量部加え、TKホモミキサーで、回転数13000rpmで20分間混合し、乳化スラリー〔1〕を得た。
【0440】
(脱溶工程)
撹拌機及び温度計をセットした容器に、乳化スラリー〔1〕を投入し、30℃で8時間脱溶した後、45℃で4時間熟成を行い、分散スラリー〔1〕を得た。
【0441】
(洗浄及び乾燥工程)
100質量部の分散スラリー〔1〕を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水を100質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過した。
【0442】
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液を100質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
【0443】
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸を100質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過した。
【0444】
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水を300質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い、濾過ケーキ〔1〕を得た。
【0445】
濾過ケーキ〔1〕を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子〔4〕を作製した。
【0446】
(B.5.2)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
トナー1と同様の手順にて外添剤の添加を行った。また、ガラス転移温度の測定も同様に行ったところ、トナー4のガラス転移温度(Tg)は、0.1℃であった。
【0447】
(B.6)トナー5の作製
(B.6.1)トナー母体粒子〔5〕の作製
(乳化工程)
下記の成分を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5000rpmで1分間混合した。
【0448】
<成分>
油相(2) 664質量部
ポリエステルプレポリマー分散液(P2) 109.4質量部
結晶性ポリエステル分散液(C5) 73.9質量部
ケチミン化合物(K2) 4.6質量部
【0449】
その後、容器に水相(2)を1200質量部加え、TKホモミキサーで、回転数13000rpmで20分間混合し、乳化スラリー〔2〕を得た。
【0450】
(脱溶工程)
撹拌機及び温度計をセットした容器に、乳化スラリー〔2〕を投入し、30℃で8時間脱溶した後、45℃で4時間熟成を行い、分散スラリー〔2〕を得た。
【0451】
(洗浄及び乾燥工程)
100質量部の分散スラリー〔2〕を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水を100質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過した。
【0452】
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液を100質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
【0453】
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸を100質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過した。
【0454】
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水を300質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い、濾過ケーキ〔2〕を得た。
【0455】
濾過ケーキ〔2〕を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子〔5〕を作製した。
【0456】
(B.6.2)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
トナー1と同様の手順にて外添剤の添加を行った。また、ガラス転移温度の測定も同様に行ったところ、トナー5のガラス転移温度(Tg)は、26.3℃であった。
【0457】
(B.7)トナー6の作製
(B.7.1)トナー母体粒子〔6〕の作製
(乳化工程)
下記の成分を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で6000rpmで1分間混合した。
【0458】
<成分>
油相(3) 700質量部
ポリエステルプレポリマー分散液(P2) 120質量部
結晶性ポリエステル分散液(C6) 80質量部
ケチミン化合物(K3) 5質量部
【0459】
その後、容器に水相(3)を1300質量部加え、TKホモミキサーで、回転数13000rpmで20分間混合し、乳化スラリー〔3〕を得た。
【0460】
(脱溶工程)
撹拌機及び温度計をセットした容器に、乳化スラリー〔3〕を投入し、30℃で10時間脱溶した後、45℃で5時間熟成を行い、分散スラリー〔3〕を得た。
【0461】
(洗浄及び乾燥工程)
100質量部の分散スラリー〔3〕を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水を100質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過した。
【0462】
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液を100質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
【0463】
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸を100質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過した。
【0464】
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水を300質量部加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い、濾過ケーキ〔3〕を得た。
【0465】
濾過ケーキ〔3〕を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子〔6〕を作製した。
【0466】
(B.7.2)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
トナー1と同様の手順にて外添剤の添加を行った。また、ガラス転移温度の測定も同様に行ったところ、トナー6のガラス転移温度(Tg)は、37.2℃であった。
【0467】
トナー母体粒子〔4〕~〔6〕の成分を表IVに示す。また、トナー4~6までの外添剤の種類、添加量、当該外添剤を含むトナー中のポリエステル含有量及びガラス転移温度を表Vに示した。
【0468】
【0469】
【0470】
(B.8)トナー7の作製
(B.8.1)コア部用分散液の調製
(B.8.1.1)ビニル樹脂分散液
(ビニル樹脂分散液(D1)の調製)
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃として、下記成分を1時間かけて滴下した。
【0471】
<成分>
n-ブチルアクリレート 526質量部
メタクリル酸 474質量部
【0472】
滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、ビニル樹脂粒子〔d1〕の分散液を調製した。
【0473】
(2)第2段重合:中間層の形成
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱した。加熱後、上記第1段重合により調製したビニル樹脂粒子〔d1〕の分散液を固形分換算で300質量部と、下記モノマー、連鎖移動剤、及び離型剤を90℃にて溶解させた混合液と、を添加した。
【0474】
<成分>
2-エチルヘキシルアクリレート 90.5質量部
メタクリル酸 33.1質量部
n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤) 5.5質量部
ベヘン酸ベヘニル(離型剤、融点73℃) 130.0質量部
【0475】
循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(エム・テクニック株式会社製)により、1時間の混合分散処理を行い、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤の溶液を添加し、この系を78℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行って、ビニル樹脂粒子〔d2〕の分散液を調製した。
【0476】
(3)第3段重合:外層の形成
上記第2段重合により得られたビニル樹脂粒子〔d2〕の分散液に、さらにイオン交換水400質量部を添加し、よく混合した。その後、過硫酸カリウム6.0質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加した。さらに、81℃の温度条件下で、下記成分を1時間かけて滴下した。
【0477】
<成分>
n-ブチルアクリレート 143.2質量部
メタクリル酸 52.0質量部
n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤) 8.0質量部
【0478】
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂分散液(D1)を調製した。
【0479】
ビニル樹脂分散液(D1)中のビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、35000であった。
【0480】
(ビニル樹脂分散液(D2)及び(D3)の調製)
第1段重合、第2段重合及び第3段重合の成分を以下のようにしたこと以外はビニル樹脂分散液(D1)の調製と同様にしてビニル樹脂分散液(D2)及び(D3)を調製した。
【0481】
〔ビニル樹脂分散液(D2)の調製における成分〕
<第1段重合の成分>
n-ブチルアクリレート 396質量部
メタクリル酸 604質量部
【0482】
<第2段重合の成分>
2-エチルヘキシルアクリレート 90.5質量部
メタクリル酸 33.1質量部
n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤) 5.5質量部
ベヘン酸ベヘニル(離型剤、融点73℃) 130.0質量部
【0483】
<第3段重合の成分>
n-ブチルアクリレート 143.2質量部
メタクリル酸 200.5質量部
n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤) 8.0質量部
【0484】
〔ビニル樹脂分散液(D3)の調製における成分〕
<第1段重合の成分>
スチレン 480.0質量部
n-ブチルアクリレート 250.0質量部
メタクリル酸 68.0質量部
【0485】
<第2段重合の成分>
スチレン 243.0質量部
2-エチルヘキシルアクリレート 90.5質量部
メタクリル酸 33.1質量部
n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤) 5.5質量部
ベヘン酸ベヘニル(離型剤、融点73℃) 130.0質量部
【0486】
<第3段重合の成分>
スチレン 354.8質量部
n-ブチルアクリレート 143.2質量部
メタクリル酸 52.0質量部
n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤) 8.0質量部
【0487】
(B.8.1.2)結晶性ポリエステル分散液
(結晶性ポリエステル分散液(E1)の調製)
両反応性モノマーを含む、下記のビニル重合セグメント(スチレン・アクリル重合セグメント、St・Acセグメント)の成分を滴下ロートに入れた。
【0488】
<成分>
n-ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
ラジカル重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド) 7質量部
【0489】
また、下記の結晶性ポリエステル重合セグメント(CPEsセグメント)の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
【0490】
<原料モノマー>
エチレングリコール 106質量部
テレフタル酸ジメチル 245質量部
1,10-デカンジカルボン酸 105質量部
【0491】
次いで、撹拌下でビニル重合セグメントの原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った。その後、減圧下(8kPa)にて未反応のビニル重合セグメントの原料モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記のビニル重合セグメントのモノマー量と比較してごく微量であった。
【0492】
その後、エステル化触媒としてTi(O-n-Bu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温し常圧下(101.3kPa)にて5時間反応を行い、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
【0493】
次に、200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステルである結晶性ポリエステル〔e1〕を作製した。
【0494】
結晶性ポリエステル〔e1〕は、その全量に対してCPEsセグメント以外の重合セグメント(St・Acセグメント)を8質量%含み、また、St・Acセグメントに対してCPEsセグメントがグラフト化した形態の樹脂であった。
【0495】
上記結晶性ポリエステル〔e1〕を30質量部溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル〔e1〕の移送と同時に、当該乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に、別途の水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。
【0496】
そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転することにより、固形分量が30質量%である結晶性ポリエステル分散液(E1)を調製した。このとき、結晶性ポリエステル分散液(E1)に含まれる結晶性ポリエステル粒子の体積基準のメディアン径は、200nmであった。
【0497】
(結晶性ポリエステル分散液(E2)の調製)
ビニル重合セグメント(スチレン・アクリル重合セグメント、St・Acセグメント)の成分及び結晶性ポリエステル重合セグメント(CPEsセグメント)の原料モノマーを以下のようにしたこと以外は、結晶性ポリエステル分散液(E1)の調製と同様にして結晶性ポリエステル分散液(E2)を調製した。
【0498】
<St・Acセグメントの成分>
n-ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
ラジカル重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド) 7質量部
【0499】
<CPEsセグメントの成分>
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 210質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 230質量部
テレフタル酸 30質量部
フマル酸 135質量部
テトラプロペニルこはく酸無水物 40質量部
【0500】
(結晶性ポリエステル分散液(E3)の調製)
ビニル重合セグメント(スチレン・アクリル重合セグメント、St・Acセグメント)の成分及び結晶性ポリエステル重合セグメント(CPEsセグメント)の原料モノマーを以下のようにしたこと以外は、結晶性ポリエステル分散液(E1)の調製と同様にして結晶性ポリエステル分散液(E3)を調製した。
【0501】
<St・Acセグメントの成分>
スチレン 34質量部
n-ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
ラジカル重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド) 7質量部
【0502】
<CPEsセグメントの成分>
ヘキサデカン二酸 281質量部
1,4-ブタンジオール 94質量部
【0503】
(B.8.2)シェル層用分散液
(非晶性ポリエステル分散液(F)の調製)
両反応性モノマーを含む、下記のビニル重合セグメント(St・Acセグメント)の成分を滴下ロートに入れた。
【0504】
<成分>
スチレン 80質量部
n-ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
ラジカル重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド) 16質量部
【0505】
また、下記の非晶性ポリエステル重合セグメント(APEsセグメント)の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
【0506】
<原料モノマー>
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 228.6質量部
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 57.1質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
【0507】
次いで、撹拌下でビニル重合セグメントの原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応のビニル重合セグメントの原料モノマーを除去した。その後、エステル化触媒としてTi(O-n-Bu)4を0.4質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
【0508】
次に、200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて所望の軟化点に達するまで反応を行った。次いで、脱溶を行い、非晶性ポリエステル〔f1〕を作製した。
【0509】
非晶性ポリエステル〔f1〕は、その全量に対してAPEsセグメント以外の重合セグメント(St・Acセグメント)を8質量%含み、また、St・Acセグメントに対してAPEsセグメントがグラフト化した形態のハイブリッド非晶性ポリエステルであった。
【0510】
作製した非晶性ポリエステル〔f1〕の100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学株式会社製)に溶解した。さらに、あらかじめ調製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液の638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(株式会社日本精機製作所製)でV-LEVEL 300μAで30分間超音波分散した。
【0511】
その後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、固形分量が13.5質量%の非晶性ポリエステル分散液(F)を調製した。
【0512】
(B.8.3)着色剤分散液
(ブラック着色剤分散液(B2)の調製)
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)の420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、ブラック着色剤分散液(B2)を調製した。ブラック着色剤分散液(B2)における着色剤粒子の粒径を、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、110nmであった。
【0513】
(B.8.4)トナー母体粒子〔7〕の作製
撹拌装置、温度センサー、及び冷却管を取り付けた反応容器に、コア部用としてビニル樹脂分散液(D1)の285質量部(固形分換算)、もう一方のコア部用として結晶性ポリエステル分散液(E1)の40質量部(固形分換算)、及びイオン交換水2000質量部を投入した。
【0514】
さらに、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩をビニル樹脂と結晶性ポリエステルとの総量に対して1質量%(固形分換算)を投入した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10に調整した。
【0515】
その後、ブラック着色剤分散液(B2)の30質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウムの60質量部をイオン交換水の60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分かけて80℃まで昇温した。
【0516】
80℃に到達後、粒径の成長速度を0.01μm/分になるように撹拌速度を調整しながら、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメディアン径が6.0μmになるまで成長させた。
【0517】
その後、シェル層用として非晶性ポリエステル分散液(F)の37質量部(固形分換算)を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウムの190質量部をイオン交換水の760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、80℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、測定装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)を用いて(HPF検出数を4000個)トナーの平均円形度を測定し、平均円形度が0.970になった時点で2.5℃/分の冷却速度で30℃に冷却した。
【0518】
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子〔7〕を作製した。
【0519】
(B.8.5)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
トナー1と同様の手順にて外添剤の添加を行った。また、ガラス転移温度の測定もトナー1と同様に行ったところ、トナー7のガラス転移温度(Tg)は、0.3℃であった。
【0520】
(B.9)トナー8及び9の作製
トナー母体粒子の成分を表VIのものとするようにトナー母体粒子〔7〕の作製と同様にしてトナー母体粒子〔8〕及び〔9〕を作製した。
【0521】
なお、表VI中の非晶性PEs〔D1〕、〔D2〕、〔D3〕、〔F〕は、非晶性ポリエステル分散液(D1)、(D2)、(D3)及び(F)の固形換算分であり、結晶性PEs〔E1〕、〔E2〕及び〔E3〕は、結晶性ポリエステル分散液〔E1〕、〔E2〕及び〔E3〕の固形換算分であり、着色剤〔B2〕は、着色剤分散液(B2)の固形換算分である。
【0522】
【0523】
また、外添剤の添加を上記トナー母体粒子〔8〕及び〔9〕にトナー1と同様の手順にてすることによりトナー8及び9を作製し、ガラス転移温度の測定を行った。
【0524】
トナー7~9までの外添剤の種類、添加量、当該外添剤を含むトナー中のポリエステル含有量及びガラス転移温度を表VIIに示した。
【0525】
【0526】
(B.10)トナー10の作製
(B.10.1)非晶性ポリエステル〔a10〕の作製
下記ポリエステルモノマーを入れ、縮合触媒としてテトラブチルチタネートを2質量部入れ、220℃にて窒素気流下で生成する水を留去しながら反応を行った。
【0527】
<ポリエステルモノマー>
エチレングリコール 108質量部
テレフタル酸ジメチル 245質量部
1,10デカンジカルボン酸 105質量部
【0528】
次いで180℃に冷却した。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して非晶性ポリエステル〔a10〕を作製した。
【0529】
(B.10.2)磁性体〔1〕の準備
磁性トナーコア母体粒子の作製に用いる磁性体として、一次粒子の個数平均粒径D1は120nm、形状は八面体であり、796kA/mにおける飽和磁化は、88Am2/kgである磁性体〔1〕を用意した。
【0530】
(B.10.3)磁性トナーコア母体粒子〔10c〕の作製
下記成分をヘンシェルミキサーで前混合した後、PCM-30(池貝鉄工所社製)を用い、吐出口における溶融物温度が150℃になるように、温度を設定し、溶融混練した。
【0531】
<成分>
非晶性ポリエステル〔a10〕 100質量部
磁性体〔1〕 60質量部
サゾールワックスC105(サゾール社製) 1質量部
荷電制御剤「T-77」(保土谷化学社製) 2質量部
【0532】
なお、上記成分中のサゾールワックスC105(サゾール社製)は、フィッシャートロプッシュワックスで、融点は105℃である。
【0533】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、粉砕機としてターボミルT250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径(D4)が6.5μmの磁性トナーコア母体粒子〔10c〕を作製した。
【0534】
(B.10.4)トナー母体粒子〔10〕の作製
(無機粒子による磁性トナーコア母体粒子の表面改質処理)
下記の材料を「高速気流中衝撃法:ハイブリダイゼーションシステム(株)奈良機械製作所」に投入し、オーダードミクスチャーを作製した。
【0535】
磁性トナーコア母体粒子〔10c〕 100質量部
無機微粒子「X24」(表面改質用) 4.5質量部
【0536】
なお、上記無機微粒子「X24」は信越化学社製のゾルゲルシリカ球状微粒子「X24-9163A」であり、平均粒子径は110nmであるものを用いた。
【0537】
その後、ブレード回転数と品温を制御し、磁性トナーコア母体粒子〔10c〕の表面に無機微粒子「X24」を固定化させ、トナー母体粒子〔10〕を作製した。このとき、無機微粒子「X24」を固定化したトナー母体粒子〔10〕の重量平均粒径は、6.7μmであった。
【0538】
(B.10.5)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
トナー母体粒子〔10〕の100質量部に対して、下記微粒子をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製FM-10型)で外添混合処理を行った。
【0539】
<微粒子>
疎水性シリカ微粒子〔1〕 0.5質量部
疎水性シリカ微粒子〔2〕 0.5質量部
【0540】
なお、上記の疎水性シリカ微粒子〔1〕は、ヘキサメチルジシラザン25質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径20nmの疎水性シリカ微粒子である。
【0541】
また、上記の疎水性シリカ微粒子〔2〕は、ヘキサメチルジシラザン15質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径40nmの疎水性シリカ微粒子である。
【0542】
ガラス転移温度の測定をトナー1と同様に行ったところ、トナー10のガラス転移温度(Tg)は、0.2℃であった。
【0543】
(B.11)トナー11の作製
(B.11.1)非晶性ポリエステル〔a11〕の作製
下記ポリエステルモノマーを入れ、縮合触媒としてテトラブチルチタネートを2質量部入れ、220℃にて窒素気流下で生成する水を留去しながら反応を行った。
【0544】
<ポリエステルモノマー>
エチレングリコール 108質量部
テレフタル酸ジメチル 280質量部
1,10デカンジカルボン酸 70質量部
【0545】
次いで180℃に冷却した。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して非晶性ポリエステル〔a11〕を作製した。
【0546】
(B.11.2)磁性体〔2〕の準備
磁性トナーコア母体粒子の作製に用いる磁性体として、一次粒子の個数平均粒径D1は120nm、形状は八面体であり、796kA/mにおける飽和磁化は、88Am2/kgである磁性体〔2〕を用意した。
【0547】
(B.11.3)磁性トナーコア母体粒子〔11c〕の作製
下記成分をヘンシェルミキサーで前混合した後、PCM-30(池貝鉄工所社製)を用い、吐出口における溶融物温度が150℃になるように、温度を設定し、溶融混練した。
【0548】
<成分>
非晶性ポリエステル〔a11〕 100質量部
磁性体〔2〕 60質量部
サゾールワックス「C105」(サゾール社製) 1質量部
荷電制御剤「T-77」(保土谷化学社製) 2質量部
【0549】
なお、上記成分中のサゾールワックス「C105」(サゾール社製)は、フィッシャートロプッシュワックスで、融点は105℃である。
【0550】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、粉砕機としてターボミルT250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径(D4)が6.5μmの磁性トナーコア母体粒子〔11c〕を作製した。
【0551】
(B.11.4)トナー母体粒子〔11〕の作製
(無機粒子による磁性トナーコア母体粒子の表面改質処理)
下記の材料を「高速気流中衝撃法:ハイブリダイゼーションシステム(株)奈良機械製作所」に投入し、オーダードミクスチャーを作製した。
【0552】
磁性トナーコア母体粒子〔11c〕 100質量部
無機微粒子「X24」(表面改質用) 3.5質量部
【0553】
なお、上記無機微粒子「X24」は信越化学社製のゾルゲルシリカ球状微粒子「X24-9600A-80」であり、平均粒子径は80nmであるものを用いた。
【0554】
その後、ブレード回転数と品温を制御し、磁性トナーコア母体粒子〔11c〕の表面に無機微粒子「X24」を固定化させ、トナー母体粒子〔11〕を作製した。
【0555】
(B.11.5)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
外添剤の添加はトナー10と同様に行った。ガラス転移温度の測定をトナー1と同様に行ったところ、トナー11のガラス転移温度(Tg)は、28.6℃であった。
【0556】
(B.12)トナー12の作製
(B.12.1)非晶性ポリエステル粒子〔a12〕の作製
下記ポリエステルモノマーを入れ、縮合触媒としてテトラブチルチタネートを2質量部入れ、220℃にて窒素気流下で生成する水を留去しながら反応を行った。
【0557】
<ポリエステルモノマー>
ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物 400質量部
ビスフェノールAプロピレンオキシド3モル付加物 280質量部
テレフタル酸 120質量部
イソフタル酸 120質量部
【0558】
次いで180℃に冷却し、無水トリメリット酸250質量部を加えて反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して非晶性ポリエステル〔a12〕を作製した。
【0559】
(B.12.2)磁性体〔3〕の準備
磁性トナーコア母体粒子の作製に用いる磁性体として、一次粒子の個数平均粒径D1は120nm、形状は八面体であり、796kA/mにおける飽和磁化は、88Am2/kgである磁性体〔3〕を用意した。
【0560】
(B.12.3)磁性トナーコア母体粒子〔12c〕の作製
下記成分をヘンシェルミキサーで前混合した後、PCM-30(池貝鉄工所社製)を用い、吐出口における溶融物温度が150℃になるように、温度を設定し、溶融混練した。
【0561】
<成分>
非晶性ポリエステル〔a12〕 100質量部
磁性体〔3〕 60質量部
サゾールワックスC105(サゾール社製) 1質量部
荷電制御剤「T-77」(保土谷化学社製) 2質量部
【0562】
なお、上記成分中のサゾールワックスC105(サゾール社製)は、フィッシャートロプッシュワックスで、融点は105℃である。
【0563】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、粉砕機としてターボミルT250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径(D4)が6.7μmの磁性トナーコア母体粒子〔12c〕を作製した。
【0564】
(B.12.4)トナー母体粒子〔12〕の作製
トナー母体粒子〔12〕については、無機粒子による磁性トナーコア母体粒子の表面改質処理を施さず、磁性トナーコア母体粒子〔12c〕をそのままトナー母体粒子〔12〕とした。上記トナー母体粒子〔12〕の重量平均粒径は、6.7μmであった。
【0565】
(B.12.5)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
外添剤の添加はトナー10と同様に行った。ガラス転移温度の測定をトナー1と同様に行ったところ、トナー12のガラス転移温度(Tg)は、38.2℃であった。
【0566】
磁性トナーコア母体粒子〔10c〕、〔11c〕及び〔12c〕の各成分と添加量を表VIIIに示す。
【0567】
また、トナー母体粒子〔10〕及びトナー母体粒子〔11〕の作製に用いる磁性トナーコア母体粒子〔10c〕及び〔11c〕については、「高速気流中衝撃法:ハイブリダイゼーションシステム(株)奈良機械製作所」による表面改質処理を施したため、その組み合わせと添加量等を表IXにまとめた。
【0568】
トナー10~12までのトナー母体粒子と、磁性トナーコア母体粒子と、上記のハイブリダイゼーションシステムによる表面改質処理の有無、外添剤の種類、添加量、当該外添剤を含むトナー中のポリエステル含有量及びガラス転移温度を表Xに示した。
【0569】
【0570】
【0571】
【0572】
(B.13)トナー13の作製
(B.13.1)磁性酸化鉄粒子〔1〕の作製
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50Lに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55Lを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を調製した。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
【0573】
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過・洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させ、リスラリーした。このリスラリー液に、コア粒子100質量部あたりケイ素換算で0.20質量%となるケイ酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することでケイ素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を含有するリスラリー液を調製した。
【0574】
調製したリスラリー液をフィルタープレスにてろ過、洗浄、更にイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50g/L)に500g(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。
【0575】
その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過・洗浄し、乾燥・解砕して個数平均径が0.23μmの磁性酸化鉄粒子〔1〕を作製した。
【0576】
(B.13.2)シラン化合物水溶液の調製
iso-ブチルトリメトキシシラン30質量部をイオン交換水70質量部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度55℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうして、シラン化合物を含有するシラン化合物水溶液(1)を調製した。
【0577】
(B.13.3)磁性体〔4〕の作製
磁性酸化鉄粒子〔1〕の100質量部をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS-2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、シラン化合物水溶液(1)の8.0質量部を2分間かけて滴下し、その後5分間混合・撹拌し、混合物〔1〕を得た。
【0578】
次いで、シラン化合物の固着性を高めるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、混合物〔1〕を110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して磁性体〔4〕を作製した。
【0579】
(B.13.4)結晶性ポリエステル〔c7〕の作製
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に下記成分を入れた。
【0580】
<成分>
1,9-ノナンジオール 49mol%
1,10-デカン二酸 49mol%
n-オクタデカン酸 2mol%
【0581】
その後、触媒としてジオクチル酸スズをモノマー総量100質量部に対して1質量部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら6時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた
【0582】
その後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させ、結晶性ポリエステル〔c7〕を作製した。このとき、結晶性ポリエステル〔c7〕の酸価は2.2mgKOH/gであり、重量平均分子量(Mw)は34200であった。
【0583】
(B.13.5)第一水系媒体〔1〕の調製
イオン交換水の353.8質量部にリン酸ナトリウム12水和物の2.9質量部を投入してTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用いて撹拌しながら60℃に加温した。
【0584】
その後、イオン交換水の11.7質量部に塩化カルシウム2水和物の1.7質量部を添加した塩化カルシウム水溶液と、イオン交換水の15.0質量部に塩化マグネシウムの0.5質量部を添加した塩化マグネシウム水溶液を添加して撹拌を進め、第一水系媒体〔1〕を調製した。
【0585】
(B.13.6)重合性モノマー組成物〔1〕の作製
下記成分をアトライター(三井三池化工機(株)製)を用いて均一に分散混合した。
【0586】
<成分>
ステアリルメタクリレート 90.0質量部
メタクリル酸メチル 10.0質量部
磁性体〔4〕 95.0質量部
結晶性ポリエステル〔c7〕 5.0質量部
【0587】
その後、60℃に加温し、そこに下記成分を添加混合し、溶解して重合性モノマー組成物〔1〕を作製した。
【0588】
<成分>
ステアリン酸ベヘニルワックス 15.0質量部
「HNP-9」(日本精蝋社製) 8.0質量部
【0589】
なお上記成分のステアリン酸ベヘニルワックスは、エステルワックスであり、融点は68℃である。また、上記成分の「HNP-9」は、炭化水素ワックス(パラフィンワックス)である。
【0590】
(B.13.7)第二水系媒体〔1〕の調製
イオン交換水の166.8質量部にリン酸ナトリウム12水和物の0.6質量部を投入してパドル撹拌翼を用いて撹拌しながら60℃に加温した。
【0591】
その後、イオン交換水の2.3質量部に塩化カルシウム2水和物の0.3質量部を添加した塩化カルシウム水溶液を添加して撹拌を進め、第二水系媒体〔1〕を調製した。
【0592】
(B.13.8)重合性モノマー組成物を含有する造粒液〔1A〕の調製
上記第一水系媒体〔1〕中に上記重合性モノマー組成物〔1〕を投入して、造粒液〔1a〕を得た。
【0593】
この造粒液〔1a〕を、キャビトロン(ユーロテック社製)を用いて、回転子の周速を29m/sにて1時間処理を行い、均一に分散混合した。さらに、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレートを7.0質量部投入し、60℃、N2雰囲気下においてクレアミックス(エムテクニック社製)にて周速22m/sで10分間撹拌しながら造粒し、重合性モノマー組成物を含有する造粒液〔1A〕を調製した。
【0594】
(B.13.9)重合/蒸留/乾燥/外添
上記第二水系媒体〔1〕中に上記重合性モノマー組成物を含有する造粒液〔1A〕を投入し、パドル撹拌翼で撹拌しながら74℃で3時間反応させた。反応終了後、98℃に昇温して3時間蒸留させ反応スラリー〔1〕を得た。
【0595】
その後、冷却工程として、反応スラリー〔1〕に0℃の水を投入し、100℃/分の速度で反応スラリー〔1〕を98℃から45℃まで冷却した。その後、更に昇温して50℃で3時間保持した。その後、25℃まで室温で放冷した。
【0596】
放冷した反応スラリー〔1〕を、塩酸を加えて洗浄し、濾過・乾燥して、重量平均粒径が6.1μmの磁性トナーコア母体粒子〔13c〕を作製した。
【0597】
(B.13.10)無機粒子による磁性トナーコア母体粒子の表面改質処理
下記の材料を「高速気流中衝撃法:ハイブリダイゼーションシステム(株)奈良機械製作所」に投入し、オーダードミクスチャーを作製した。
【0598】
磁性トナーコア母体粒子〔13c〕 100質量部
無機微粒子「X24」(表面改質用) 4.5質量部
なお、上記無機微粒子「X24」は信越化学社製のゾルゲルシリカ球状微粒子「X24-9163A」であり、平均粒子径は110nmであるものを用いた。
【0599】
その後、ブレード回転数と品温を制御し、磁性トナーコア母体粒子〔13c〕の表面に無機微粒子「X24」を固定化させ、トナー母体粒子〔13〕を作製した。このとき、無機微粒子「X24」を固定化したトナー母体粒子〔13〕の重量平均粒径は、6.4μmであった。
【0600】
(B.13.11)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
外添剤の添加はトナー10と同様に行った。ガラス転移温度の測定をトナー1と同様に行ったところ、トナー13のガラス転移温度(Tg)は、0.3℃であった。
【0601】
(B.14)トナー14の作製
(B.14.1)磁性酸化鉄粒子〔2〕の作製
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50Lに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55Lを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を調製した。
【0602】
この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
【0603】
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過・洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させ、リスラリーした。
【0604】
このリスラリー液に、コア粒子100質量部あたりケイ素換算で0.20質量%となるケイ酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することでケイ素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を含有するリスラリー液を調製した。
【0605】
得られたリスラリー液をフィルタープレスにてろ過、洗浄、更にイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50g/L)に500g(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。
【0606】
その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過・洗浄し、乾燥・解砕して個数平均径が0.23μmの磁性酸化鉄粒子〔2〕を作製した。
【0607】
(B.14.2)シラン化合物水溶液の調製
iso-ブチルトリメトキシシラン30質量部をイオン交換水70質量部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度55℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物を含有するシラン化合物水溶液(2)を調製した。
【0608】
(B.14.3)磁性体〔5〕の作製
磁性酸化鉄粒子〔2〕の100質量部をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS-2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、シラン化合物水溶液(2)の8.0質量部を2分間かけて滴下し、その後5分間混合・撹拌し、混合物〔2〕を得た。
【0609】
次いで、シラン化合物の固着性を高めるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、混合物〔2〕を110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して磁性体〔5〕を作製した。
【0610】
(B.14.4)結晶性ポリエステル〔c8〕の作製
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に下記成分を入れた。
【0611】
<成分>
1,9-ノナンジオール 49mol%
1,10-デカン二酸 49mol%
n-オクタデカン酸 2mol%
【0612】
その後、触媒としてジオクチル酸スズをモノマー総量100質量部に対して1質量部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら6時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた
【0613】
その後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させ、結晶性ポリエステル〔c8〕を作製した。このとき、結晶性ポリエステル〔c8〕の酸価は2.2mgKOH/gであり、重量平均分子量(Mw)は34200であった。
【0614】
(B.14.5)第一水系媒体〔2〕の調製
イオン交換水353.8質量部にリン酸ナトリウム12水和物2.9質量部を投入してTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用いて撹拌しながら60℃に加温した。その後、イオン交換水11.7質量部に塩化カルシウム2水和物1.7質量部を添加した塩化カルシウム水溶液と、イオン交換水15.0質量部に塩化マグネシウム0.5質量部を添加した塩化マグネシウム水溶液を添加して撹拌を進め、第一水系媒体〔2〕を得た。
【0615】
(B.14.6)重合性モノマー組成物〔2〕の作製
下記成分をアトライター(三井三池化工機(株)製)を用いて均一に分散混合した。
【0616】
<成分>
ステアリルメタクリレート 67.0質量部
メタクリル酸メチル 33.0質量部
磁性体〔5〕 95.0質量部
結晶性ポリエステル〔c8〕 5.0質量部
【0617】
その後、60℃に加温し、そこに下記成分を添加混合し、溶解して重合性モノマー組成物〔2〕を作製した。
【0618】
<成分>
ステアリン酸ベヘニルワックス 15.0質量部
「HNP-9」(日本精蝋社製) 8.0質量部
【0619】
なお上記成分のステアリン酸ベヘニルワックスは、エステルワックスであり、融点は68℃である。また、上記成分の「HNP-9」は、炭化水素ワックス(パラフィンワックス)である。
【0620】
(B.14.7)第二水系媒体〔2〕の調製
イオン交換水166.8質量部にリン酸ナトリウム12水和物0.6質量部を投入してパドル撹拌翼を用いて撹拌しながら60℃に加温した。その後、イオン交換水2.3質量部に塩化カルシウム2水和物0.3質量部を添加した塩化カルシウム水溶液を添加して撹拌を進め、第二水系媒体〔2〕を調製した。
【0621】
(B.14.8)重合性モノマー組成物を含有する造粒液〔2A〕の調製
上記第一水系媒体〔2〕中に上記重合性モノマー組成物〔2〕を投入して、造粒液〔2a〕を得た。この造粒液〔2a〕を、キャビトロン(ユーロテック社製)を用いて、回転子の周速を29m/sにて1時間処理を行い、均一に分散混合した。さらに、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレートを7.0質量部投入し、60℃、N2雰囲気下においてクレアミックス(エムテクニック社製)にて周速22m/sで10分間撹拌しながら造粒し、重合性モノマー組成物を含有する造粒液〔2A〕を調製した。
【0622】
(B.14.9)重合/蒸留/乾燥/外添
上記第二水系媒体〔2〕中に上記重合性モノマー組成物を含有する造粒液〔2A〕を投入し、パドル撹拌翼で撹拌しながら74℃で3時間反応させた。反応終了後、98℃に昇温して3時間蒸留させ反応スラリー〔2〕を得た。
【0623】
その後、冷却工程として、反応スラリー〔2〕に0℃の水を投入し、100℃/分の速度で反応スラリー〔2〕を98℃から45℃まで冷却した。その後、更に昇温して50℃で3時間保持した。その後、25℃まで室温で放冷した。
【0624】
放冷した反応スラリー〔2〕を、塩酸を加えて洗浄し、濾過・乾燥して、重量平均粒径が6.1μmの磁性トナーコア母体粒子〔14c〕を作製した。
【0625】
(B.14.10)無機粒子による磁性トナーコア母体粒子の表面改質処理
下記の材料を「高速気流中衝撃法:ハイブリダイゼーションシステム(株)奈良機械製作所」に投入し、オーダードミクスチャーを作製した。
【0626】
磁性トナーコア母体粒子〔14c〕 100質量部
無機微粒子「X24」(表面改質用) 3.5質量部
【0627】
なお、上記無機微粒子「X24」は信越化学社製のゾルゲルシリカ球状微粒子「X24-9600A-80」であり、平均粒子径は80nmであるものを用いた。
【0628】
その後、ブレード回転数と品温を制御し、磁性トナーコア母体粒子〔11c〕の表面に無機微粒子「X24」を固定化させ、トナー母体粒子〔14〕を作製した。トナー母体粒子〔14〕の重量平均粒径は、6.4μmであった。
【0629】
(B.14.11)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
外添剤の添加はトナー10と同様に行った。ガラス転移温度の測定をトナー1と同様に行ったところ、トナー14のガラス転移温度(Tg)は、25.6℃であった。
【0630】
(B.15)トナー15の作製
(B.15.1)磁性酸化鉄粒子〔15〕の作製
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50Lに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55Lを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を調製した。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
【0631】
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過・洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させ、リスラリーした。このリスラリー液に、コア粒子100質量部あたりケイ素換算で0.20質量%となるケイ酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することでケイ素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を含有するリスラリー液を調製した。
【0632】
調製したリスラリー液をフィルタープレスにてろ過、洗浄、更にイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50g/L)に500g(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。
【0633】
その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過・洗浄し、乾燥・解砕して個数平均径が0.23μmの磁性酸化鉄粒子〔3〕を作製した。
【0634】
(B.15.2)シラン化合物水溶液の調製
iso-ブチルトリメトキシシラン30質量部をイオン交換水70質量部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度55℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物を含有するシラン化合物水溶液(3)を調製した。
【0635】
(B.15.3)磁性体〔6〕の作製
磁性酸化鉄粒子〔3〕の100質量部をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS-2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、シラン化合物水溶液(3)の8.0質量部を2分間かけて滴下し、その後5分間混合・撹拌し、混合物〔3〕を得た。
【0636】
次いで、シラン化合物の固着性を高めるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、混合物〔3〕を110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して磁性体〔6〕を作製した。
【0637】
(B.15.4)結晶性ポリエステル〔c9〕の作製
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に下記成分を入れた。
【0638】
<成分>
1,9-ノナンジオール 49mol%
1,10-デカン二酸 49mol%
n-オクタデカン酸 2mol%
【0639】
その後、触媒としてジオクチル酸スズをモノマー総量100質量部に対して1質量部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら6時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた
【0640】
その後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させ、結晶性ポリエステル〔c9〕を作製した。このとき、結晶性ポリエステル〔c9〕の酸価は2.2mgKOH/gであり、重量平均分子量(Mw)は34200であった。
【0641】
(B.15.5)第一水系媒体〔3〕の調製
イオン交換水353.8質量部にリン酸ナトリウム12水和物2.9質量部を投入してTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用いて撹拌しながら60℃に加温した。
【0642】
その後、イオン交換水11.7質量部に塩化カルシウム2水和物1.7質量部を添加した塩化カルシウム水溶液と、イオン交換水15.0質量部に塩化マグネシウム0.5質量部を添加した塩化マグネシウム水溶液を添加して撹拌を進め、第一水系媒体〔3〕を調製した。
【0643】
(B.15.6)重合性モノマー組成物〔3〕の作製
下記成分をアトライター(三井三池化工機(株)製)を用いて均一に分散混合した。
【0644】
<成分>
スチレン 75.0質量部
n-ブチルアクリレート 25.0質量部
1-6ヘキサンジオールジアクリレート 0.5質量部
磁性体〔6〕 95.0質量部
結晶性ポリエステル〔c9〕 5.0質量部
【0645】
その後、60℃に加温し、そこに下記成分を添加混合し、溶解して重合性モノマー組成物〔3〕を作製した。
【0646】
<成分>
ステアリン酸ベヘニルワックス 15.0質量部
「HNP-9」(日本精蝋社製) 8.0質量部
【0647】
なお上記成分のステアリン酸ベヘニルワックスは、エステルワックスであり、融点は68℃である。また、上記成分の「HNP-9」は、炭化水素ワックス(パラフィンワックス)である。
【0648】
(B.15.7)第二水系媒体〔3〕の調製
イオン交換水166.8質量部にリン酸ナトリウム12水和物0.6質量部を投入してパドル撹拌翼を用いて撹拌しながら60℃に加温した。
【0649】
その後、イオン交換水2.3質量部に塩化カルシウム2水和物0.3質量部を添加した塩化カルシウム水溶液を添加して撹拌を進め、第二水系媒体〔3〕を調製した。
【0650】
(B.15.8)重合性モノマー組成物を含有する造粒液〔15〕の調製
上記第一水系媒体〔3〕中に上記重合性モノマー組成物〔3〕を投入して、造粒液〔3a〕を得た。この造粒液〔3a〕を、キャビトロン(ユーロテック社製)を用いて、回転子の周速を29m/sにて1時間処理を行い、均一に分散混合した。
【0651】
さらに、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレートを7.0質量部投入し、60℃、N2雰囲気下においてクレアミックス(エムテクニック社製)にて周速22m/sで10分間撹拌しながら造粒し、重合性モノマー組成物を含有する造粒液〔3A〕を調製した。
【0652】
(B.15.9)重合/蒸留/乾燥/外添
上記第二水系媒体〔3〕中に上記重合性モノマー組成物を含有する造粒液〔3A〕を投入し、パドル撹拌翼で撹拌しながら74℃で3時間反応させた。反応終了後、98℃に昇温して3時間蒸留させ反応スラリー〔3〕を得た。
【0653】
その後、冷却工程として、反応スラリー〔3〕に0℃の水を投入し、100℃/分の速度で反応スラリー〔3〕を98℃から45℃まで冷却した。その後、更に昇温して50℃で3時間保持した。その後、25℃まで室温で放冷した。
【0654】
放冷した反応スラリー〔3〕を、塩酸を加えて洗浄し、濾過・乾燥して、重量平均粒径が6.1μmの磁性トナーコア母体粒子〔15c〕を作製した。なお、上記の磁性トナーコア母体粒子〔15c〕には表面改質処理を施さず、磁性トナーコア母体粒子〔15c〕をそのままトナー母体粒子〔15〕とした。このとき、トナー母体粒子〔15〕の重量平均粒径は、6.4μmであった。
【0655】
(B.15.10)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
外添剤の添加はトナー10と同様に行った。ガラス転移温度の測定をトナー1と同様に行ったところ、トナー15のガラス転移温度(Tg)は、39.1℃であった。
【0656】
磁性トナーコア母体粒子〔13c〕、〔14c〕及び〔15c〕の各成分と添加量を表XIに示す。また、トナー母体粒子〔13〕及びトナー母体粒子〔14〕の作製に用いる磁性トナーコア母体粒子〔13c〕及び〔14c〕については、「高速気流中衝撃法:ハイブリダイゼーションシステム(株)奈良機械製作所」による表面改質処理を施したため、その組み合わせと添加量等を表XIIにまとめた。
【0657】
トナー13~15までのトナー母体粒子と、磁性トナーコア母体粒子と、上記のハイブリダイゼーションシステムによる表面改質処理の有無、外添剤の種類、添加量、当該外添剤を含むトナー中のポリエステル含有量及びガラス転移温度を表XIIIに示した。
【0658】
【0659】
【0660】
【0661】
(B.16)トナー16の作製
(B.16.1)非晶性ポリエステル〔Ha〕の作製
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、下記成分を投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、ジオクタン酸スズを成分の合計量に対して0.3%投入した。
【0662】
<成分>
エチレングリコール 106質量部
テレフタル酸ジメチル 228質量部
1,10-デカンジカルボン酸 123質量部
【0663】
窒素ガス気流下温度を235℃まで1時間かけて昇温し、3時間反応させ、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、撹拌反応させ、求められる分子量になった時点で反応を終了して非晶性ポリエステル〔Ha〕を作製した。
【0664】
(B.16.2)非晶性ポリエステル分散液(HA)の調製
撹拌機を備えた反応容器中に、下記成分を投入し、60℃にて溶解させた。
【0665】
<成分>
非晶性ポリエステル〔Ha〕 100質量部
メチルエチルケトン 60質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
【0666】
溶解を確認した後、反応容器を35℃に冷却した後、10%アンモニア水溶液3.5質量部を添加した。次いで、イオン交換水300質量部を3時間掛けて反応容器中に滴下した。次いで、エバポレーターにてメチルエチルケトン、並びに、イソプロピルアルコールを除去し、非晶性ポリエステル分散液(A1)を調製した。
【0667】
(B.16.3)トナー母体粒子〔16〕の作製
トナーコア成分として、固形分が下記の分量になるように各分散液を秤量した。
【0668】
<コア成分>
非晶性ポリエステル〔Ha〕 47.5質量部
結晶性ポリエステル〔c1〕 22.0質量部
ブラック着色剤〔B1〕(固形分) 6.0質量部
離型剤〔W1〕(固形分) 1.5質量部
【0669】
各分散液を、丸型ステンレス製フラスコに投入後、固形分濃度が12.5%となるようにイオン交換水を加え、更に、硫酸アルミニウム10%水溶液6.3部を投入した。次いで、ホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で5000rpmで10分間混合及び分散した後、フラスコ内の内容物を撹拌しながら40℃まで加熱撹拌した。
【0670】
それ以降、毎分0.5℃で昇温しながら、粒径が6.1μmになったところで温度を保持した。次いで、トナーシェル成分として固形分が下記の分量となるように各分散液を秤量、混合した分散液を投入し60分保持した。
【0671】
<シェル成分>
非晶性ポリエステル〔a5〕 20質量部
離型剤分散液〔W1〕(固形分) 3質量部
【0672】
得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、凝集粒子が生成していることが確認された。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム塩「キレスト40」(キレスト(株)製)を11部加えた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8に調整した。
【0673】
その後、温度を上げて82.5℃にした後、10分毎に硝酸でpHを0.05ずつ下げ、45分間撹拌を続けた。冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥してトナー母体粒子〔16〕を作製した。
【0674】
(B.16.4)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
作製したトナー母体粒子〔16〕の100質量部に対して、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製)の3.0質量部を加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合した。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー16を作製した。
【0675】
トナー16のガラス転移温度(Tg)は、-1.5℃であった。なお、トナー16のガラス転移温度の測定は、トナー1と同様に行った。
【0676】
(B.17)トナー17の作製
(B.17.1)非晶性ポリエステル〔Hb〕の作製
下記成分を投入したこと以外は、非晶性ポリエステル〔Ha〕と同様にして非晶性ポリエステル〔Hb〕を作製した。
【0677】
<成分>
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 140質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 260質量部
テレフタル酸 100質量部
テトラプロペニルこはく酸無水物 130質量部
トリメット酸 16質量部
【0678】
(B.17.2)非晶性ポリエステル分散液(HB)の調製
非晶性ポリエステル〔Ha〕を非晶性ポリエステル〔Hb〕としたこと以外は、非晶性ポリエステル分散液(HA)と同様にして非晶性ポリエステル分散液(HB)を調製した。
【0679】
(B.17.3)トナー母体粒子〔17〕の作製
コア成分及びシェル成分を下記のものとしたこと以外は、トナー母体粒子〔16〕と同様にしてトナー母体粒子〔17〕を作製した。
【0680】
<コア成分>
非晶性ポリエステル〔Hb〕 26.0質量部
非晶性ポリエステル〔a5〕 26.0質量部
結晶性ポリエステル〔c3〕 19.5質量部
ブラック着色剤〔B1〕(固形分) 6.0質量部
離型剤〔W1〕(固形分) 1.5質量部
【0681】
<シェル成分>
非晶性ポリエステル〔a5〕 18質量部
離型剤分散液〔W1〕(固形分) 3質量部
【0682】
(B.17.4)外添剤の添加とガラス転移温度の測定
作製したトナー母体粒子〔17〕の100質量部に対して、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製)の3.0質量部を加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合した。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー17を作製した。
【0683】
トナー16のガラス転移温度(Tg)は、41.2℃であった。なお、トナー17のガラス転移温度の測定は、トナー1と同様に行った。
【0684】
トナー母体粒子〔16〕及び〔17〕の成分及び添加量を表XIVにまとめた。トナー16及び17の外添剤の種類、添加量、当該外添剤を含むトナー中のポリエステル含有量及びガラス転移温度を表XVに示した。
【0685】
【0686】
【0687】
C.キャリアの作製
(樹脂被覆キャリア〔C〕の作製)
フェライト粒子を除く下記成分〔1〕及びガラスビーズ(φ1mm、トルエンと同量)を、サンドミル(関西ペイント株式会社製)を用いて1200rpmで30分間撹拌し、樹脂被覆層形成用溶液(c1)を調製した。
【0688】
<成分〔1〕>
・フェライト粒子〔f1〕 100.0質量部
・トルエン 14.0質量部
・共重合体A 2.0質量部
【0689】
なお、上記フェライト粒子〔f1〕は、平均粒径が40μmであるMn-Mg-Sr系フェライト粒子である。また、上記の共重合体Aは、シクロヘキシルメタクリレート/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(重量比99:1、Mw80000)である。
【0690】
さらに、この樹脂被覆層形成用溶液(c1)とフェライト粒子〔f1〕とを真空脱気型ニーダーに入れ、減圧し、トルエンを留去して乾燥した。以上により、樹脂被覆キャリア〔C〕を作製した。
【0691】
D.現像剤の作製
(D.1)現像剤1の作製
トナー1と、キャリア〔C〕とを、下記の分量で2リットルのVブレンダーに投入し、常温常湿環境下で20分間撹拌し、その後105μmで篩分して、現像剤1を作製した。
【0692】
キャリア1 100質量部
トナー1 7質量部
【0693】
(D.2)現像剤2~9、16及び17の作製
トナーの種類をトナー1から表XVIのように変更したこと以外は、現像剤1の作製手順と同様にして、現像剤2~9、16及び17を作製した。
【0694】
(D.3)現像剤10~15の作製
現像剤10~15においては、キャリア〔C〕を用いず一成分現像剤とし、トナー10~15をそのまま現像剤10~15とした。
【0695】
【0696】
(D.3)現像剤の構成まとめ
以上の現像剤を表XVIIにまとめた。
【0697】
【0698】
E.評価
(E.1)評価装置の準備
(E.1.1)二成分現像装置
(画像形成時に現像剤1~9、16及び17を使用した際の評価装置準備)
画像形成装置として、「bizhub C650i」(コニカミノルタ社製)を準備し、この装置に搭載されているブラックの現像ローラーを所定の現像ローラーに入れ替えて画像出力ができるように改造した。以下、この装置を二成分現像装置とする。
【0699】
(E.1.2)磁性一成分現像装置
(画像形成時に現像剤10~15を使用した際の評価装置準備)
画像形成装置として、市販のレーザープリンターHP LaserJet Enterprise M506(ヒューレット・パッカード社製)を準備し、この装置に搭載されているブラックの現像ローラーを所定の現像ローラーに入れ替えて画像出力ができるように改造した。以下、この装置を磁性一成分現像装置とする。
【0700】
上記それぞれの本体に対し、本体からカートリッジを取り出し、カートリッジから製品トナーを抜き取り、各現像剤を300g充填した。本体及びカートリッジは、それぞれの画出し評価に際して、温湿度を制御したそれぞれの環境下に24時間放置した後、画出し評価を行った。
【0701】
(E.2)評価方法と評価基準
(E.2.1)帯電量変化
(二成分現像装置による評価方法:現像剤1~9、16及び17の評価方法)
表XVIIIの組み合わせにより現像ローラーと現像剤を二成分現像装置にセットした。
【0702】
現像ローラー上の現像剤の帯電量を、印字率2%のチャートを用いた連続印刷で印刷開始時と5000枚印刷後とで測定し、帯電量の低下度合いを差分の絶対値を算出することによって比較し、下記の評価基準にて評価した。A及びBを合格とし、Cを不合格とした。結果は表XVIIIに示す。
【0703】
なお、差分の絶対値は下記の式(1)によって算出した。
【0704】
式(1) 差分の絶対値=|(印刷開始時の帯電量の値-5000枚印刷後の帯電量の値)|
【0705】
(評価基準)
A 差分の絶対値が、4μC/g以下である。
B 差分の絶対値が、4μC/gより大きく10μC/g以下である。
C 差分の絶対値が、10μC/gより大きい値である。
【0706】
測定装置としては、
図8に示すような装置にて測定した。測定装置としては、吸引式小型帯電量測定器「Model 212HS」(株式会社ウエストワン社製)を用いた。測定方法は、以下のとおりである。
【0707】
まず、精密天秤で計量した二成分現像剤1gを導電性スリーブ11の表面全体に均一になるよう様に乗せた。また、バイアス電源13から導電性スリーブ11に2kVの電圧を供給するとともに共に、導電性スリーブ11内に設けられたマグネットローラー12の回転数を1000rpmにした。
【0708】
上記のような条件にて30秒間放置して、二成分現像剤を円筒電極14に収集した。そして、30秒後に円筒電極14の電位Vmを読み取るとともに共に、二成分現像剤の電荷量を求め、さらに収集した二成分現像剤の質量を精密天秤で測定し、平均の帯電量(-μC/g)を求め、測定値とした。
【0709】
(磁性一成分現像装置による評価方法:現像剤10~15の評価方法)
表XVIIIの組み合わせにより現像ローラーと現像剤を磁性一成分現像装置にセットした。現像ローラー上のトナー帯電量を、印刷開始時と5000枚印刷後とで測定し、帯電量の低下度合いを差分の絶対値を算出することによって比較し、下記の評価基準にて評価した。A及びBを合格とし、Cを不合格とした。結果は表XVIIIに示す。なお、差分の絶対値は前述の式(1)によって算出し、評価基準も二成分現像装置による評価方法と同様とした。また、測定装置も二成分現像装置による評価時と同様のものを用いた。
【0710】
【0711】
(E.2.2)機内飛散確認
(二成分現像装置及び磁性一成分現像装置による評価方法)
印刷開始前の現像器上部に両面テープを貼り付け、各5000枚印刷後の機内のトナー飛散に起因するトナー汚れ成分を反射濃度計(RD-918;マクベス社)にて測定し、印刷開始時から5000枚印刷後までの差分を数値化し、以下の評価基準にて評価した。A及びBを合格とし、Cを不合格とした。結果は表XIXに示す。
【0712】
(評価基準)
A 印刷開始時からのトナー飛散による濃度増加がほとんど観測されず、差分濃度が、0.1以下である。
B 印刷開始時から若干のトナー飛散がみられるものの、実用上問題なく、差分濃度が、0.8以下である。
C 印刷開始時からのトナー飛散量が多く、実用上問題があり、差分濃度が、0.8を超えている。
【0713】
(E.2.3)画質の評価
(二成分現像装置及び磁性一成分現像装置による評価方法)
日本画像学会誌39(2)、84・93(2000)に掲載されているGI値を用いて粒状性評価を行い、ハーフトーンの品位、すなわち画質を評価した。具体的には、5千枚の耐久印刷後の評価のそれぞれで、階調率32段階の階調パターンの画像を出力した。そして、この画像における粒状性の評価は、階調パターンをCCDで読み取り、得られた読み取り値にMTF(Modulation Transfer Function)補正を考慮したフーリエ変換処理を施し、人間の比視感度にあわせたGI値(Graininess Index)を測定し、最大GI値を求めた。
【0714】
GI値は、小さいほど良く、また、画像の粒状感が少ないことを表しているが、現像ローラー上でトナー同士の熱融着が始まると粒状感が表れ、高い値となる。また、凝集物が大きくなると現像剤の薄層形成部がその凝集物で詰まりだし、白スジなどの画像不良も発生する。
【0715】
そして、下記評価基準にしたがって、印刷初期(0枚)と5000枚の耐久印刷後の評価装置のそれぞれについて、上記画像における階調パターンの粒状性を評価した。初期及び耐久印刷後に出力した階調パターンの画像については、当該画像における最大GI値に基づいて、下記評価基準により判定した。A及びBを合格とし、C及びDを不合格とした。結果は表XIXに示す。
【0716】
(評価基準)
A GI値が、0.26未満である。
B GI値が、0.26以上0.30未満である。
C GI値が、0.30以上である。
D 目視で凝集物がみられ、白スジが画像上に現れている。
【0717】
(E.2.4)低温定着性の評価
(評価方法)
本実施形態の低温定着性の評価には、実写で使用したそれぞれの実機の定着装置を改造し、定着温度を(通常温度-30℃)に定着温度を制御するようにした。また、記録媒体としてコニカミノルタJ紙を用い、ソリッド画像(25mm×25mm)を形成させ定着した。
【0718】
5000枚印刷後の定着画像の画像面を谷折りして折れ目部の画像のはがれ度合いを観察し、画像がはがれた結果として折れ目部に現れる用紙の幅を測定した。評価基準は以下のとおりである。なお、A及びBを合格とし、Cを不合格とした。結果は表XIXに示す。
【0719】
(評価基準)
A:折れ目部に用紙の幅が現れず、定着性が良好である。
B:折れ目部に用紙の幅が1mm以下で確認され、定着が可能である。
C:折れ目部に用紙の幅が1mmを超える幅で確認される(実用に適しない)。
【0720】
【0721】
(E.3)まとめ
上記の評価について、現像スリーブとトナーとの組み合わせ及びその評価結果をまとめ、表XXに示した。
【0722】
【0723】
F.総評
表XXから明らかなように、本願発明の実施例が比較例に比べて優れ、実施例においては帯電量、機内飛散、画質及び低温定着性の評価が全てA又はBであり、実用上問題ないことが分かる。