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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152114
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20241018BHJP
   C02F 11/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
C02F11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066097
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井上 智行
(72)【発明者】
【氏名】宮本 博司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】隅 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】竹田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕大
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059AA02
4D059AA03
4D059AA07
4D059BA12
4D059BA34
4D059BB03
4D059BB06
4D059BE09
4D059BE10
4D059BE15
4D059BE16
4D059BE26
4D059BE37
4D059BE46
4D059BF15
4D059CA07
4D059CA11
4D059DA33
(57)【要約】
【課題】安価な構造で高濃度固形物を受け入れることが可能な処理システムを提供する。
【解決手段】処理システム1は、第一被処理物、及び第一被処理物よりも固形物濃度が低い第二被処理物を受け入れてメタン発酵処理するメタン発酵槽10と、メタン発酵槽10から排出された水を含む固形物を固液分離する第一固液分離器20と、第一固液分離器20で含水率が低下した固形物を加熱する水熱炭化器30と、水熱炭化器30から排出された固形物を固液分離する第二固液分離器40と、第二固液分離器40から排出された濾液を返送する返送路50と、第一被処理物に濾液を供給して第一被処理物を希釈する希釈部60と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一被処理物、及び前記第一被処理物よりも固形物濃度が低い第二被処理物を受け入れてメタン発酵処理するメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽から排出された水を含む固形物を固液分離する第一固液分離器と、
前記第一固液分離器で含水率が低下した前記固形物を加熱する水熱炭化器と、
前記水熱炭化器から排出された前記固形物を固液分離する第二固液分離器と、
前記第二固液分離器から排出された濾液を返送する返送路と、
前記第一被処理物に前記濾液を供給して前記第一被処理物を希釈する希釈部と、を備えた処理システム。
【請求項2】
前記希釈部は、前記第一被処理物を受け入れる受入槽を含んでおり、
前記受入槽では、前記返送路を介して前記濾液が供給されて前記第一被処理物が希釈される請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記希釈部は、前記第一被処理物を受け入れる受入槽と、前記受入槽から排出された前記第一被処理物の流通流路とを含んでおり、
前記流通流路に、前記返送路を介して前記濾液が供給されて前記第一被処理物が希釈される請求項1に記載の処理システム。
【請求項4】
前記水熱炭化器の加熱源となる熱媒を加温する熱源器を更に備え、
前記熱源器は、前記メタン発酵槽にて発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱によって前記熱媒を加温する発電機を有している請求項1~3の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項5】
前記第一固液分離器から排出された前記固形物に酸を添加して前記水熱炭化器に供給する請求項1~3の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項6】
前記メタン発酵槽は、固形物濃度が3.0重量%以上10.0重量%以下の被処理物をメタン発酵処理する請求項1~3の何れか一項に記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥等を水熱炭化処理する処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高濃度汚泥をメタン発酵処理するメタン発酵槽(文献では消化槽)と、メタン発酵槽から排出された水を含む固形物(文献では消化汚泥)を固液分離する固液分離器(文献では、脱水機)と、固液分離器で含水率が低下した固形物(文献では脱水ケーキ)を加熱する水熱炭化器(文献では炭化設備)と、水熱炭化器の加熱源となる熱媒を加温する熱源器(文献では熱供給装置)と、を備えた水熱炭化処理設備(文献では汚泥処理システム)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-51417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の処理システムでは、重力濃縮された汚泥に凝集剤を添加するなどしてメタン発酵槽槽で受け入れる高濃度汚泥を作り出している。しかしながら、メタン発酵槽でメタン発酵処理するために適した高濃度汚泥の濃度よりもさらに高濃度の汚泥を受け入れたい場合については開示されていない。
【0005】
そこで、安価な構造で高濃度固形物を受け入れることが可能な処理システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る処理システムの特徴構成は、第一被処理物、及び前記第一被処理物よりも固形物濃度が低い第二被処理物を受け入れてメタン発酵処理するメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽から排出された水を含む固形物を固液分離する第一固液分離器と、前記第一固液分離器で含水率が低下した前記固形物を加熱する水熱炭化器と、前記水熱炭化器から排出された前記固形物を固液分離する第二固液分離器と、前記第二固液分離器から排出された濾液を返送する返送路と、前記第一被処理物に前記濾液を供給して前記第一被処理物を希釈する希釈部と、を備えた点にある。
【0007】
本構成では、希釈部にて第一被処理物に第二固液分離器の濾液を供給している。このため、メタン発酵槽での被処理物濃度を容易に調整できる。また、希釈部に、第二固液分離器で排出される濾液を供給するだけで第一被処理物を希釈できるので、安価な構造で高濃度固形物(第一被処理物)を受け入れることができる。
【0008】
さらに、高濃度固形物(第一被処理物)を第二固液分離器の濾液で希釈するため、外部から希釈液を導入する必要がなく、第二固液分離器の濾液は温度が高いため、メタン発酵槽を加温する熱エネルギーも節約できる。このように、安価な構造で高濃度固形物を受け入れることが可能な処理システムとなっている。
【0009】
他の特徴構成は、前記希釈部は、前記第一被処理物を受け入れる受入槽を含んでおり、前記受入槽では、前記返送路を介して前記濾液が供給されて前記第一被処理物が希釈される点にある。
【0010】
本構成では、第一被処理物を受入槽で受け入れ、この受入槽に第二固液分離器の濾液を供給している。このため、第一被処理物の固形物濃度を受入槽で簡単に調整することが可能となる。その結果、メタン発酵槽での被処理物濃度を容易に調整できる。
【0011】
他の特徴構成は、前記希釈部は、前記第一被処理物を受け入れる受入槽と、前記受入槽から排出された前記第一被処理物の流通流路とを含んでおり、前記流通流路に、前記返送路を介して前記濾液が供給されて前記第一被処理物が希釈される点にある。
【0012】
本構成では、高濃度固形物を含む第一被処理物を受入槽で受け入れ、この受入槽からメタン発酵槽に繋がる流通流路に第二固液分離器の濾液を供給している。このため、該流路に対して濾液の混合量を制御すれば、濾液が滑剤となって流路に高濃度固形物が滞留することなく、第一被処理物の固形物濃度も簡単に調整することが可能となる。その結果、メタン発酵槽での被処理物濃度を容易に調整できる。
【0013】
他の特徴構成は、前記水熱炭化器の加熱源となる熱媒を加温する熱源器を更に備え、前記熱源器は、前記メタン発酵槽にて発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱によって前記熱媒を加温する発電機を有している点にある。
【0014】
上述したように第二固液分離器の濾液は温度が高いため、メタン発酵槽を加温する熱エネルギーも節約可能となり、本構成のように消化ガスを用いて発電する発電機の廃熱の熱エネルギーの消費量を小さくすることができる。その結果、余った熱エネルギーを、例えば水熱炭化器の加熱源としても活用できる。
【0015】
他の特徴構成は、前記第一固液分離器から排出された前記固形物に酸を添加して前記水熱炭化器に供給する点にある。
【0016】
本構成のように第一固液分離器から排出された固形物に酸を添加すれば、この酸が水熱炭化の初期反応である有機物分解の触媒として機能する。その結果、水熱炭化器の反応温度を低下させたり、処理時間を短縮させたりしても水熱炭化反応が進行し、水熱炭化処理の効率化が図れる。また、この酸添加により、水熱炭化器の後段にある第二固液分離器からメタン発酵槽に返送される濾液のpHが低下するので、高濃度固形物が酸化分解されてメタン発酵が進行しやすくなる。
【0017】
他の特徴構成は、前記メタン発酵槽は、固形物濃度が3.0重量%以上10.0重量%以下の被処理物をメタン発酵処理する点にある。
【0018】
本構成のように高い固形物濃度の被処理物をメタン発酵処理すれば、消化ガスだけで水熱炭化器の必要エネルギーを補うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】その他の実施形態の処理システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る処理システムは、下水汚泥等を水熱炭化処理するにあたり、高濃度固形物を受け入れることができるように構成される。以下、本実施形態の処理システム1について説明する。ただし、処理システム1は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0021】
図1は、本実施形態の処理システム1の構成を模式的に示したブロック図である。図1に示されるように、処理システム1は、メタン発酵槽10と、第一固液分離器20と、水熱炭化器30と、第二固液分離器40と、返送路50と、希釈部60と、熱源器70とを備えている。
【0022】
メタン発酵槽10は、第一被処理物、及び当該第一被処理物よりも固形物濃度が低い第二被処理物を受け入れてメタン発酵処理する。第一被処理物及び第二被処理物(以下、単に「被処理物」という場合がある)とは、有機性廃棄物からなる汚泥である。有機性廃棄物は、例えば下水汚泥、し尿汚泥、農業集落排水汚泥、浄化槽汚泥、生ごみ等の食品廃棄物(食品系バイオマス)、古紙・廃紙等のリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、及び家畜糞尿等が相当する。これらの有機性廃棄物は、夫々、単独で処理されてもよいし、混合処理されてもよい。
【0023】
メタン発酵槽10は、固形物濃度が3.0重量%以上10.0重量%以下の被処理物をメタン発酵処理することが可能である。したがって、第一被処理物は、3.0~10.0質量%の上限領域値(例えば8.0~10.0質量%)又は上限領域値より高い固形物濃度からなり、第二被処理物は、3.0-10.0質量%の下限領域値(例えば3.0~5.0質量%)又は下限領域値より低い固形物濃度からなる。以下では、第一被処理物を単に高濃度汚泥と称して説明し、第二被処理物を単に低濃度汚泥と称して説明する。メタン発酵槽10には、低濃度汚泥が供給され、後述する受入槽61には高濃度汚泥が供給される。
【0024】
受入槽61は、高濃度汚泥と濾液とを混合及び/又は攪拌し、高濃度汚泥が濾液により希釈される。以下では、濾液により希釈された汚泥を希釈汚泥として説明する。メタン発酵槽10にはこの希釈汚泥と低濃度汚泥とが投入され、希釈汚泥及び低濃度汚泥はメタン発酵槽10において、嫌気性発酵処理される。メタン発酵槽10では中温発酵処理と高温発酵処理とを行うことが可能である。中温発酵処理では、例えば約30~42℃の温度で、15~30日程度の滞留時間で運転される。また、高温発酵処理では、約50~60℃の温度で、7~20日程度の滞留時間で運転される。
【0025】
メタン発酵槽10では、希釈汚泥の嫌気性発酵により消化ガスが発生する。消化ガスは、メタンが約60容量%、二酸化炭素が約40容量%のガス(バイオガス)である。発生した消化ガスは、メタン発酵槽10から取り出され、メタン発酵槽10や後述する水熱炭化器30の加温のための燃料として利用されたり(図示せず)、後述する熱源器70の燃料として利用されたりする。すなわち、処理システム1では被処理物を嫌気性発酵処理することにより、被処理物が有するエネルギーを消化ガス(ガスエネルギー)として回収する。メタン発酵槽10において嫌気性発酵処理された後の被処理物の発酵残渣、すなわち発酵処理汚泥は、後述する第一固液分離器20へ移送される。
【0026】
第一固液分離器20は、メタン発酵槽10から排出された水を含む固形物を固液分離する。水を含む固形物とは、本実施形態ではメタン発酵槽10から移送される発酵処理汚泥が相当する。第一固液分離器20は、メタン発酵槽10から移送された発酵処理汚泥を脱水する機械である。発酵処理汚泥の固形物濃度は、例えば1.5~5質量%である。第一固液分離器20は、例えばベルトプレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス脱水機、フィルタープレス脱水機、ベルト濃縮機、及び遠心濃縮機のうちのいずれかを用いることが可能である。もちろん、他の脱水機を用いて構成することも可能である。
【0027】
第一固液分離器20において固液分離された(脱水処理された)発酵処理汚泥は、例えば含水率が80質量%程度の脱水汚泥となる。第一固液分離器20において脱水処理された脱水処理物(脱水汚泥)は、後述する水熱炭化器30に移送される。
【0028】
本実施形態では、第一固液分離器20から排出された固形物は、酸が添加されて水熱炭化器30に供給される。第一固液分離器20から排出された固形物とは、第一固液分離器20において脱水処理された脱水処理物(脱水汚泥)である。酸として例えば硫酸を用い、脱水汚泥に添加してもよい。これにより、硫酸が水熱炭化の初期反応である有機物分解の触媒として機能し、水熱炭化器30における水熱炭化処理を効率よく行うことが可能となる。また、硫酸を添加することで、後述する第二固液分離器40からメタン発酵槽10に返送される濾液のpHが低下するので、高濃度固形物が酸化分解されてメタン発酵が進行しやすくなる。
【0029】
水熱炭化器30は、第一固液分離器20で含水率が低下した固形物を加熱する。第一固液分離器20で含水率が低下した固形物とは、上述した第一固液分離器20において脱水処理された脱水汚泥にあたる。本実施形態では、水熱炭化器30は、第一固液分離器20から移送された脱水汚泥の水熱炭化処理を行う。水熱炭化処理とは、脱水汚泥を、酸素を含まないガスの雰囲気中、酸素濃度が低いガスの雰囲気中、及び酸素を遮断した状態のいずれかにおいて、高温高圧処理を行って炭化させることをいう。
【0030】
水熱炭化器30では、まず、第一固液分離器20から移送された脱水汚泥(例えば含水率が80質量%程度)が予熱される。予熱された脱水汚泥は、上述した高温高圧処理が行われる。このときの高温高圧処理は、例えば酸素濃度が5体積%以下のガス雰囲気中において行われる。この高温高圧処理は水熱炭化器30が有するリアクター(図示せず)において行われるが、この処理中はリアクター内が、酸素濃度が略0体積%に保たれる。リアクター内では、炭化された汚泥(炭化汚泥スラリー)とリアクターに供給された脱水汚泥とが混合・撹拌される。
【0031】
リアクターはジャケット(図示せず)で外周が覆われており、このジャケット内に、後述する熱源器70が有する発電機71の廃熱の熱エネルギーによって加温された熱媒(例えば熱媒油)が流通される。これにより、リアクター内の炭化汚泥スラリーは熱媒により、例えば200℃に加温される。このとき、リアクター内の圧力は、リアクター内の温度に対応する亜臨界水相当の圧力に、被処理物の成分の分解によって生じたガスによる圧力が加わった圧力とされる。なお、リアクター内の炭化汚泥スラリーの温度は200℃に限定されるものではなく、例えば160℃から250℃の範囲のうちの任意の温度であってもよい。リアクター内の圧力は、ゲージ圧0.6MPaからゲージ圧3MPa程度の圧力とされる。したがって、水熱炭化器30では、脱水汚泥の温度が160℃以上250℃以下であって、且つ、リアクター内の圧力がゲージ圧0.6MPa以上ゲージ圧3MPa以下の状態で、高温高圧処理が行われる。
【0032】
リアクターにおいて水熱炭化処理により得られた炭化汚泥スラリーは冷却されて、第二固液分離器40へ移送される。
【0033】
第二固液分離器40は、水熱炭化器30から排出された固形物を固液分離する。水熱炭化器30から排出された固形物とは、上述した水熱炭化器30において水熱炭化処理された炭化汚泥スラリーにあたる。本実施形態では、第二固液分離器40は、水熱炭化器30から移送された炭化汚泥スラリーを脱水する機械である。第二固液分離器40は、特に限定されるものではないが、フィルタープレス脱水機であることが好ましい。炭化汚泥スラリーは微粒子となった炭化物が水中に分散した状態である。そのため、フィルターの目開きが細かく、高圧で圧搾しても高い固形分回収率が得られるフィルタープレス脱水機が第二固液分離器40として適している。もちろん、他の脱水機を用いて構成することも可能であり、例えば遠心脱水機、又はスクリュープレス脱水機を用いることが可能である。
【0034】
第二固液分離器40において固液分離された(脱水処理された)炭化汚泥スラリーは、例えば含水率が35質量%以下の炭化汚泥となる。
【0035】
第二固液分離器40において炭化汚泥スラリーを脱水処理した場合には、炭化汚泥と共に濾液(水熱炭化脱水濾液)が生じる。返送路50は、第二固液分離器40から排出された濾液を返送する。本実施形態では、返送路50は、第二固液分離器40から排出された濾液の一部又は全部を回収し、この濾液を後述する希釈部60に返送する。
【0036】
ここで、水熱炭化器30に投入される脱水汚泥には、微生物の細胞が含まれている。この微生物の細胞は、水熱炭化器30における水熱炭化処理によって破壊され、脱水汚泥中の有機物が濾液中に溶出する。この濾液に含まれる有機物は消化ガスの原料となることから、濾液をメタン発酵槽10に投入すると、消化ガスの発生量が増大する。上述したように、メタン発酵槽10から排出される消化ガスは、燃料として利用される。したがって、第二固液分離器40からの濾液をメタン発酵槽10に返送することで、消化ガスの発生量を増加させることができるため、エネルギー回収量を増大することが可能となる。
【0037】
また、濾液に含まれる有機物の一部が消化ガスとなるため、有機物は処理系から減少する。これにより、濾液をそのまま水処理設備(不図示)において処理する場合に比べて、水処理設備が受け入れる被処理水のCOD(Chemical Oxygen Demand)が減少するため、放流水質を改善することが可能となる。
【0038】
希釈部60は、第一被処理物(高濃度汚泥等)に濾液を供給して第一被処理物を希釈する。濾液は、第二固液分離器40から排出され、返送路50を介して希釈部60に移送される。
【0039】
本実施形態では、希釈部60は濾液を受け入れる受入槽61を含んで構成される。このため、受入槽61には、返送路50を介して濾液が供給される。また、受入槽61には、高濃度汚泥が供給される。したがって、受入槽61では濾液で高濃度汚泥が希釈される。この受入槽61は、縦型攪拌又は横型攪拌可能な撹拌機を有していてもよい。このように、メタン発酵槽10に汚泥を供給する前に、受入槽61にて濾液で高濃度汚泥を希釈することで、メタン発酵槽10でメタン発酵処理される汚泥の固形物濃度を簡単に調整することが可能となる。
【0040】
熱源器70は、水熱炭化器30の加熱源となる熱媒を加温する。水熱炭化器30では、上述したように、第一固液分離器20からの脱水汚泥が加温される。熱源器70は、このような脱水汚泥を加温するための加熱源となる熱媒を加温する。
【0041】
本実施形態では、熱源器70は、発電機71を有する。発電機71は、メタン発酵槽10によって発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱によって熱媒を加温する。メタン発酵槽10によって発生した消化ガスとは、メタン発酵によって発生した消化ガスであって、メタン発酵槽10における、汚泥の嫌気性発酵により発生した消化ガスである。したがって、発電機71は、メタン発酵槽10において、汚泥の嫌気性発酵により発生した消化ガスを燃料として用いて発電する。この発電時には、発電機71において廃棄される熱(廃熱)が生じる。この廃熱として、例えば発電機71の筐体から放出される熱や発電機71から排出される排ガスの熱が挙げられる。熱媒とは、上述したようにリアクター内の炭化汚泥スラリーを加温する熱媒油にあたる。熱源器70は、このような発電機71の廃熱を利用して、熱媒油を加温する。
【0042】
発電機71の廃熱は、メタン発酵槽10を加温する熱エネルギーとしても利用可能である。ここで、上述したように、メタン発酵槽10では、中温発酵処理と高温発酵処理とが可能である。発電機71の廃熱は、中温発酵処理や高温発酵処理における汚泥の加温に利用可能である。
【0043】
以上のように、処理システム1を構成することで、希釈部60において、処理システム1に導入された高濃度汚泥を、第二固液分離器40の濾液で希釈することができる。したがって、メタン発酵槽10における汚泥の固形物濃度を容易に調整することが可能となる。また、希釈部60に、第二固液分離器40で排出される濾液を供給するだけで高濃度汚泥を希釈できる。このため、処理システム1を、安価な構造で構成でき、且つ、固形物濃度が高濃度である汚泥を受け入れることが可能となる。
【0044】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、希釈部60は汚泥を受け入れる受入槽61を含んで構成され、受入槽61では、返送路50を介して濾液が供給されて汚泥が希釈されるとして説明した。図2に示されるように、希釈部60は、汚泥を受け入れる受入槽61と、受入槽61から排出された汚泥の流通流路62とを含んで構成することも可能である。すなわち、この場合には、処理システム1は、受入槽61で高濃度汚泥を受け入れ、この受入槽61とメタン発酵槽10とに亘って流通流路62が設けられている。また、上記実施形態では、受入槽61に、処理システム1が受け入れた高濃度汚泥と、第二固液分離器40から返送路50を介して返送される濾液とが導入され、受入槽61において希釈されていた。しかしながら、図2の例では、流通流路62に、返送路50が合流するように構成され、この返送路50を介して濾液が供給されるように構成されている。これにより、図2の例では、処理システム1が受け入れた高濃度汚泥が、流通流路62において希釈される。このような構成においては、流通流路62における濾液の混合量を制御することで、高濃度汚泥の固形物濃度を簡単に調整することが可能となる。したがって、濾液が滑剤となり、固形物濃度が高濃度である汚泥が流通流路62に滞留することなくメタン発酵槽10に供給することが可能となる。
【0045】
上記実施形態では、熱源器70はメタン発酵槽10にて発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱によって水熱炭化器30の加熱源となる熱媒を加温する発電機71を有しているとして説明した。しかしながら、熱源器70は、発電機71に代えて、又は、発電機71と共にメタン発酵槽10にて発生した消化ガスを用いて燃焼するボイラを備えて構成することも可能である。この場合、消化ガスに基づいてボイラで生じた蒸気を用いて水熱炭化器30の加熱源となる熱媒を加温するように構成することも可能である。
【0046】
上記実施形態では、第一固液分離器20から排出された脱水汚泥に硫酸を添加して水熱炭化器30に供給するとして説明した。しかしながら、第一固液分離器20から排出された脱水汚泥に硫酸を添加せずに水熱炭化器30に供給するように構成することも可能であるし、第一固液分離器20から排出された脱水汚泥に硫酸とは異なる酸(例えば、塩酸や硝酸)を添加して水熱炭化器30に供給するように構成することも可能である。
【0047】
上記実施形態では、メタン発酵槽10は、固形物濃度が3.0重量%以上10.0重量%以下の汚泥をメタン発酵処理するとして説明した。しかしながら、メタン発酵槽10は、メタン発酵処理する汚泥の固形物濃度は、3.0重量%未満であってもよいし、10.0重量%より大きくてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、第一被処理物を高濃度汚泥として説明したが、第一被処理物は、汚泥に限定されず、廃棄酒や廃棄調味料等、粘度の高い廃棄物であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、下水汚泥等を水熱炭化処理する処理システムに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:処理システム
10:メタン発酵槽
20:第一固液分離器
30:水熱炭化器
40:第二固液分離器
50:返送路
60:希釈部
61:受入槽
70:熱源器
71:発電機
図1
図2