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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152119
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/06 20060101AFI20241018BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20241018BHJP
   F25D 23/12 20060101ALI20241018BHJP
   A47B 31/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F25D17/06 312
F25D23/00 301C
F25D23/12 P
A47B31/02 D
A47B31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066107
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】與語 勇一
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐基
【テーマコード(参考)】
3L345
【Fターム(参考)】
3L345AA05
3L345AA18
3L345DD21
3L345DD62
3L345EE33
3L345FF13
3L345HH02
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】使用者に誤解を招く温度表示を抑制する。
【解決手段】貯蔵庫10は、貯蔵室11Aと、貯蔵室11Aを冷却、又は加熱するための温冷手段51と、貯蔵室11A内の空気を循環させる循環用ファン55と、貯蔵室11Aの室内温度を検出する室内温度センサ57と、室内温度センサ57の検出温度を表示する表示部21Aと、制御部20と、を備える。制御部20は、温冷手段51、及び循環用ファン55を作動して、貯蔵室11Aを冷却、又は加熱する温冷運転を実行し、実行中の温冷運転を終了する際、温冷手段51を停止して待機時間が経過した後に、循環用ファン55を停止する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と、
前記貯蔵室を冷却、又は加熱するための温冷手段と、
前記貯蔵室から吸い込まれ、前記温冷手段によって冷却、又は加熱された空気を前記貯蔵室に戻すように、前記貯蔵室内の空気を循環させる循環用ファンと、
前記貯蔵室の室内温度を検出する室内温度センサと、
前記室内温度センサの検出温度を表示する表示部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記温冷手段、及び前記循環用ファンを作動して、前記貯蔵室を冷却、又は加熱する温冷運転を実行し、
実行中の前記温冷運転を終了する際、前記温冷手段を停止して待機時間が経過した後に、前記循環用ファンを停止する貯蔵庫。
【請求項2】
前記貯蔵室は温蔵室であり、
前記温冷手段は、前記温蔵室を加熱するためのヒーターであり、
前記循環用ファンは、前記温蔵室から吸い込まれ、前記ヒーターによって加熱された空気を前記温蔵室に戻すように、前記温蔵室内の空気を循環させる加熱用ファンであり、
前記制御部は、
前記ヒーター、及び前記循環用ファンを作動して前記温冷運転のうち加熱運転を実行し、
実行中の前記加熱運転を終了する際、前記ヒーターを停止して前記待機時間が経過した後に、前記循環用ファンを停止する請求項1に記載の貯蔵庫。
【請求項3】
前記制御部は、
前記室内温度センサの前記検出温度が第1閾値温度以下になると、前記待機時間が経過したと判断する請求項2に記載の貯蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵室は冷蔵室であり、
前記温冷手段は、前記冷蔵室を冷却するための冷却装置であり、
前記循環用ファンは、前記冷蔵室から吸い込まれ、前記冷却装置によって冷却された空気を前記冷蔵室に戻すように、前記冷蔵室内の空気を循環させる冷却用ファンであり、
前記制御部は、
前記冷却装置を構成する圧縮機、及び前記循環用ファンを作動して前記温冷運転のうち冷却運転を実行し、
実行中の前記冷却運転を終了する際、前記圧縮機を停止して前記待機時間が経過した後に、前記循環用ファンを停止する請求項1に記載の貯蔵庫。
【請求項5】
前記制御部は、
前記室内温度センサの前記検出温度が第2閾値温度以上になると、前記待機時間が経過したと判断する請求項4に記載の貯蔵庫。
【請求項6】
前記貯蔵室の前記室内温度の設定温度の上限値、及び下限値は変更可能である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温冷配膳車(貯蔵庫の一例)として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の配膳車は、温度表示制御処理プログラムを実行し、所定の更新期間毎に温度表示部の表示を更新する。これにより、扉の開放等の影響を受けて、温度表示部における温度表示が大きく変動することを防止し、使用者が室内温度を適切に把握可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-99892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで配膳車の冷蔵室、及び温蔵室の室内温度は、上記した扉等の開放時だけでなく、冷却運転、及び加熱運転の終了時にも大きく変動してしまう(オーバーシュートしてしまう)ことがある。例えば、冷蔵室の室内温度が冷却運転中に5℃である場合、運転終了時に1℃程度へと急激に温度低下することがある。これは冷却運転の終了に伴い、冷却用ファンが停止すると、冷却器(蒸発器)からの冷気が冷蔵室の温度センサ(サーミスタ)に当たって一時的に温度が低下することによる。また例えば、温蔵室の室内温度が加熱運転中に80℃である場合、運転終了時に87℃程度へと急激に温度上昇することがある。これは加熱運転の終了に伴い、加熱用ファンが停止すると、ヒーターからの熱が温蔵室の温度センサに当たって一時的に温度が上昇することによる。従って、これらのオーバーシュート表示は誤動作ではないものの、使用者がこのようなメカニズムを知らない場合、運転終了後に機械類が停止せず、誤動作していると誤解させてしまう懸念がある。
【0005】
本技術は上記のような実情に基づいて完成されたものであって、使用者に誤解を招く温度表示を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願明細書に記載の技術に関わる貯蔵庫は、貯蔵室と、前記貯蔵室を冷却、又は加熱するための温冷手段と、前記貯蔵室から吸い込まれ、前記温冷手段によって冷却、又は加熱された空気を前記貯蔵室に戻すように、前記貯蔵室内の空気を循環させる循環用ファンと、前記貯蔵室の室内温度を検出する室内温度センサと、前記室内温度センサの検出温度を表示する表示部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記温冷手段、及び前記循環用ファンを作動して、前記貯蔵室を冷却、又は加熱する温冷運転を実行し、実行中の前記温冷運転を終了する際、前記温冷手段を停止して待機時間が経過した後に、前記循環用ファンを停止する。
【0007】
また、前記貯蔵室は温蔵室であり、前記温冷手段は、前記温蔵室を加熱するためのヒーターであり、前記循環用ファンは、前記温蔵室から吸い込まれ、前記ヒーターによって加熱された空気を前記温蔵室に戻すように、前記温蔵室内の空気を循環させる加熱用ファンであり、前記制御部は、前記ヒーター、及び前記循環用ファンを作動して前記温冷運転のうち加熱運転を実行し、実行中の前記加熱運転を終了する際、前記ヒーターを停止して前記待機時間が経過した後に、前記循環用ファンを停止してもよい。
【0008】
また、前記制御部は、前記室内温度センサの前記検出温度が第1閾値温度以下になると、前記待機時間が経過したと判断してもよい。
【0009】
また、前記貯蔵室は冷蔵室であり、前記温冷手段は、前記冷蔵室を冷却するための冷却装置であり、前記循環用ファンは、前記冷蔵室から吸い込まれ、前記冷却装置によって冷却された空気を前記冷蔵室に戻すように、前記冷蔵室内の空気を循環させる冷却用ファンであり、前記制御部は、前記冷却装置を構成する圧縮機、及び前記循環用ファンを作動して前記温冷運転のうち冷却運転を実行し、実行中の前記冷却運転を終了する際、前記圧縮機を停止して前記待機時間が経過した後に、前記循環用ファンを停止してもよい。
【0010】
また、前記制御部は、前記室内温度センサの前記検出温度が第2閾値温度以上になると、前記待機時間が経過したと判断してもよい。
【0011】
また、前記貯蔵室の前記室内温度の設定温度の上限値、及び下限値は変更可能であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願明細書に記載の技術によれば、使用者に誤解を招く温度表示を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る配膳車の斜視図
図2図1のI-I線断面図
図3】一部のパネルを取り外した状態における機械室の上面図
図4図2の加熱用ファン付近を拡大した断面図
図5】加熱用ファン、及びファンボックスを下方から視た斜視図
図6図3のII-II線断面斜視図
図7図2の冷却用ファン付近を拡大した断面図
図8】機械室の凝縮器付近を拡大した斜視図
図9】圧縮機の締結部材を示す断面斜視図
図10】冷却器カバーの斜視図
図11図3のIII-III線断面図
図12】冷却器ダクトの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
実施形態1に係る配膳車10(貯蔵庫の一例)について図1から図12を参照して説明する。各図に示した符号F,B,L,R,U,Dはそれぞれ、配膳車10の前後方向における前、後、正面から見たときの幅方向(前後方向)における左、右、鉛直方向(上下方向)の上、下を示している。
【0015】
配膳車10は、図1から図4に示すように、全体として直方体状をなしており、調理した配膳用の食品(被貯蔵物の一例)を収容して運搬するために用いられる。配膳車10はおおまかには、温蔵室11A、11B(貯蔵室の一例)、及び冷蔵室12A、12B(貯蔵室の別の一例)を有する貯蔵庫本体14と、貯蔵庫本体14の上方に配置される機械室15と、貯蔵庫本体14の開口を開閉する扉30と、温蔵室11A、11Bを加熱する加熱装置50と、温蔵室11A、11B内の空気を循環させる加熱用ファン55(循環用ファンの一例)と、冷蔵室12A、12Bを冷却する冷却装置60(温冷手段の一例)と、冷蔵室12A、12B内の空気を循環させる冷却用ファン69(循環用ファンの別の一例)と、車輪16と、ハンドル17と、を備える。使用者は、ハンドル17を手で引いたり押したりして車輪16を回転させ、配膳車10を図示の前後方向に沿って移動させる。
【0016】
貯蔵庫本体14は、ステンレス等の金属板が箱状に組み立てられた外箱と内箱との間に、断熱材(例えば発泡ウレタンフォーム、メラミンフォーム)が充填された断熱箱体である。貯蔵庫本体14は、図2に示すように、後壁部14Aと、前壁部14Bと、天井壁部14Cと、底壁部14Dと、を含む断熱壁部から構成されている。また、貯蔵庫本体14の内部は、図2に示すように、前後方向についての略中央部に設けられ、上下方向に延在する中間ダクト18によって前後2つの部屋に仕切られている。中間ダクト18は、内部を空気が流通可能となっており、後述するように冷気流通用のダクトの機能を有する。さらに前後2つの部屋はそれぞれ、仕切壁19により前後2つに仕切られて、合計4室が形成されている。貯蔵庫本体14内の4室は、後方から順に温蔵室11A、2つの冷蔵室12A、12B、及び温蔵室11Bとなっている。温蔵室11A、11Bは、暖気の供給を受けて食品を温蔵する。冷蔵室12A、12Bは、冷気の供給を受けて食品を冷蔵する。
【0017】
貯蔵庫本体14は、左方だけでなく右方からも温蔵室11A、11B及び冷蔵室12A、12Bにアクセス可能に、左面開口14S1及び右面開口14S2を有する。貯蔵庫本体14は、左面開口14S1及び右面開口14S2の前後方向における中央部にそれぞれ、断熱性の中間フレーム14Gを有する(図11)。各開口14S1、14S2において中間フレーム14Gより区切られた、隣り合う温蔵室11Aと冷蔵室12Aとの組、及び隣り合う温蔵室11Bと冷蔵室12Bとの組に対して、観音開き式の扉30が一対ずつ、合計4枚取り付けられている。
【0018】
温蔵室11A、11B内と冷蔵室12A、12B内には、複数段にわたって棚(トレー受け)13が設けられている。温食と冷食とが区分けして載置されたトレーが、仕切壁19内に挿通されつつ棚13に載せられると、トレー上の温食が温蔵室11Aに、冷食が冷蔵室12Aにそれぞれ収容されて、温蔵及び冷蔵されるようになっている。トレーは、もう一組の温蔵室11Bと冷蔵室12Bに対しても同様に収容される。
【0019】
機械室15は、貯蔵庫本体14の天井壁部14Cとパネルによって囲まれた空間である。機械室15の前方、後方、左方、右方、及び上方はそれぞれ、フロントパネル15A、リアパネル15B、左サイドパネル15C、右サイドパネル15D、及びトップパネル15Eで覆われている。機械室15には、図3及び図4に示すように、加熱装置50と、加熱用ファン55と、冷却装置60と、冷却用ファン69と、これらの装置50、60及びファン55、69を制御する制御部20と、が収容されている。
【0020】
制御部20は、配膳車10の運転を制御したり、電源を供給するための回路等を備え、電装箱に収容される形で設けられている。制御部20は例えば、各種情報等を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行するCPUと、各種の情報を記憶する記憶部と、計時機能を有するタイマと、を有するマイクロコンピュータによって構成される。
【0021】
貯蔵庫本体14の左面開口縁部及び右面開口縁部のうち、冷蔵室12A、12Bの対応部分(フレーム)14E、14Fは、結露が生じやすい。そこで本実施形態では、フロントパネル15A、リアパネル15B、左サイドパネル15C、及び右サイドパネル15Dはスリット状の小さな隙間を空けて組み立てられている。機械室15内の機器類からの排熱が隙間を通って左面開口縁部及び右面開口縁部のフレーム14E、14Fに当たることで、これらに生じる結露を抑制できるようになっている。
【0022】
機械室15の左サイドパネル15Cには、図1に示すように開口が設けられており、この開口には、操作パネル21が露出するように取り付けられている。操作パネル21は、表示部21Aと、操作部21Bと、を一体的に備えている。表示部21Aは、例えば7セグメントディスプレイであり、配膳車10の各種情報を表示する。操作部21Bは、例えば押しボタン式のスイッチであり、制御部20に対して配膳車10の運転条件や動作を指示することができるように構成されている。
【0023】
温蔵室11A、11Bの設定温度の範囲は例えば40℃から80℃とされ、下限値は例えば40℃から60℃の範囲で変更可能とされ、上限値は例えば60℃から80℃の範囲で変更可能とされる。冷蔵室12A、12Bの設定温度の範囲は例えば0℃から30℃とされ、下限値は例えば0℃から10℃の範囲で変更可能とされ、上限値は例えば10℃から30℃の範囲で変更可能とされる。このように設定温度の上限値及び下限値に対して変更可能な範囲を定めることで、使用者が操作部21Bによって設定温度を入力する際の誤操作を防止し、被貯蔵物及び部品が不適切な温度帯に曝される事態を抑制できる。
【0024】
加熱装置50は、図4から図6に示すように、コードヒーター51(温冷手段の別の一例)と、ヒーターパネル(ダクト)53と、を備える。ヒーターパネル53は、温蔵室11A、11Bにおいて仕切壁19と反対側に1つずつ配されている。温蔵室11A用のヒーターパネル53は、貯蔵庫本体14の後壁部14Aに沿って上下方向に延在し、温蔵室11B用のヒーターパネル53は、貯蔵庫本体14の前壁部14Bに沿って上下方向に延在する。各ヒーターパネル53はそれぞれ、後壁部14A、又は前壁部14Bとの間に暖気が流れる流路を構成するように断面コ字状をなしている。各コードヒーター51は、ヒーターパネル53において後壁部14A側、又は前壁部14B側の面に蛇行状に配索されている。図6では、コードヒーター51の形状は省略され、配索領域が網掛で示されている。コードヒーター51は、コード状以外の他の種類のヒーターであっても構わない。
【0025】
加熱用ファン55は、図4及び図5に示すように、機械室15におけるヒーターパネル53の上方に、ファンボックス56に収容される形で設けられている。また貯蔵庫本体14の天井壁部14Cにおいてファンボックス56に上方から覆われる部分には、温蔵室11A、11B内の空気を吸い込むための第1吸込口14C1が設けられている。第1吸込口14C1には、温蔵室11A、11Bの室内温度を検出するための温蔵室温度センサ57(具体的にはサーミスタ、室内温度センサの一例)が設けられている。
【0026】
ヒーターパネル53は、上方に開口しており、加熱ファン55からの暖気が流入可能となっている。またヒーターパネル53には、暖気を温蔵室11A、11Bに吹き出すための第1流出口53Bが上下方向に沿って多数設けられている。加熱用ファン55は、温蔵室11A、11Bから第1吸込口14C1を通って吸い込まれ、ヒーターパネル53内に流入して、ヒーターパネル53のコードヒーター51によって加熱された空気を第1流出口53Bを通って温蔵室11A、11Bに戻すように、温蔵室11A、11B内の空気を循環させる。加熱装置50のコードヒーター51、及び加熱用ファン55が作動すると、ヒーターパネル53からの輻射熱、及びヒーターパネル53の第1流出口53Bから吹き出される暖気によって温蔵室11A、11Bは加熱される。
【0027】
加熱用ファン55は、空気の吸込方向が吹出方向に沿う軸流ファン(センターファン)とされる。加熱用ファン55は、図5に示すように、空気の吸込方向及び吹出方向が前後方向となるように、ファンボックス56に取り付けられている。ファンボックス56は、下方に開口した略直方体状をなし、貯蔵庫本体14の天井壁部14Cの第1吸込口14C1と重なる位置に第2吸込口56Aを有する。また、ヒーターパネル53の上部開口と重なる位置に第1吹出口56Bを有する。ファンボックス56において加熱用ファン55の吹出側の側板56Cは、加熱用ファン55の吹出方向と交わり、ヒーターパネル53に沿う上下方向に延在する。これにより加熱用ファン55から吹出方向(前後方向)に沿って吹き出された空気は、ファンボックス56の側板56Cに当たることで、風向が下方に変化し、ヒーターパネル53の上部開口に向かうようになる。すなわち、加熱用ファン55からの空気は、風向板の一例である側板56Cによってヒーターパネル53に案内される。
【0028】
このようにファンボックス56内に加熱用ファン55を取り付けると、加熱用ファン55から吹き出される空気は、図5及び図6に示すように、ファンボックス56の側板56Cに当たることで、風向が下方に変化すると共に、扇状に拡散しつつ下方に向かうようになる。これにより加熱用ファン55からの空気は、左右方向について加熱用ファン55付近以外の場所にも広がりやすくなる。その結果、ヒーターパネル53に沿って流れる空気がヒーターパネル53全体に行き渡りやすくなり、温蔵室11A、11Bの加熱ムラを抑制できる。
【0029】
仮に加熱用ファン55として、空気の吸込方向が吹出方向と交わる遠心ファン(クロスフローファン)やブロアファン(シロッコファン)を用いると、風向板である側板56Cを設けずに、加熱用ファン55からの空気をヒーターパネル53に案内可能となる。しかしながら、これらのファンは供給量が少なく高コストである。本実施形態では加熱用ファン55として安価で入手しやすい汎用の軸流ファンを用いつつ、側板56Cを設けることで、風向を下向きに変化させ、ヒーターパネル53に沿って流下する空気がヒーターパネル53全体に行き渡りやすくできるようになっている。その結果、温蔵室11A、11Bの加熱ムラをより低コストに抑制できる。
【0030】
また、加熱用ファン55からの空気がファンボックス56の側板56Cに当たるようにすることで、ヒーターパネル53に沿って流下する空気を低速化し、温蔵室11A、11B内に収容された被貯蔵物の飛散を抑制しやすくなる。さらに、加熱用ファン55を吸込方向及び吹出方向が前後方向となるように立設することで、加熱用ファン55を吸込方向及び吹出方向が上下方向となるように横倒しに配設する場合に比べて、ファンボックス56の第1吹出口56Bの大きさを小さくできる。これにより、温蔵室11A用のヒーターパネル53の配設位置を後壁部14Aに近づけ、温蔵室11B用のヒーターパネル53の配設位置を前壁部14Bに近づけることが可能となる。その結果、温蔵室11A、11Bの収容スペースを増大できる。
【0031】
冷却装置60は、図2及び図3に示すように、圧縮機61と、凝縮器63と、膨張弁(キャビラリーチューブ)と、冷却器65と、凝縮器ファン67と、冷媒管68と、を備える。圧縮機61、凝縮器63、冷却器65は、冷媒管68によって連結されており、冷媒を循環させて既知の冷凍サイクル(冷凍回路)を形成している。
【0032】
圧縮機61は、モータを動力源として冷媒ガスを吸引して圧縮し、高温高圧の冷媒ガスを吐出する。圧縮機61は、図9に示すように、4つの締結部材61A(例えばナット)によって貯蔵庫本体14の天井壁部14Cに取り付けられている。天井壁部14C内における締結部材61Aの配設部分には、締結部材61Aを取り囲むように軟質発泡体61Bが設けられている。製造工程において、天井壁部14Cの外箱と内箱との間の発泡材は、軟質発泡体61Bが設けられた状態で充填されるものとされる。図9では、当該発泡材の充填前の状態が示されている。
【0033】
このように圧縮機61の締結部材61Aを設けることで、天井壁部14C内における締結部材61Aの配設部分に弾力性を持たせることができ、天井壁部14Cに窪み部を設けず平坦な形状を保ったまま、重量の大きい圧縮機61を好適に固定できるようになる。また、天井壁部14Cの上面に下方に窪む窪み部を設けずに済むため、発泡材を注入しやすくなり、断熱性も向上できる。
【0034】
凝縮器63は、圧縮機61で圧縮された冷媒ガスを凝縮器ファン67の送風により冷却して液化させる。本実施形態に係る凝縮器63は、一般的なフィン&チューブ型の熱交換器に比べて小型であるマイクロチャネル熱交換器とされる。凝縮器ファン67は、図3及び図8に示すように、凝縮器63の左方に2つ設けられている。凝縮器ファン67が作動すると、外気が機械室15の右サイドパネル15Dの外気流入口15D1から流入して、凝縮器63内を右から左に通過することで、凝縮器63内の冷媒が空冷される。外気流入口15D1付近には、貯蔵庫本体14の周囲の外部温度を検出する外部温度センサ23が設けられている。外部温度センサ23には例えば、サーミスタや所定温度でオンオフするサーモスタットを用いることができる。
【0035】
凝縮器63の外気流入側(右側)には、エアフィルタ63A、及び2枚のエアガイド63Bが取り付けられている。エアフィルタ63Aによって凝縮器63内のフィン等に異物が侵入し目詰まりしてしまう事態が抑制される。エアフィルタ63Aの枠体は、凝縮器63のフィンの非配設部と重なる部分(前後方向の両端部)63A1が幅広に形成されており、外気が凝縮器63内のフィンの非配設部分へ効率的に流入されるようになっている。エアガイド63Bは、外気が凝縮器63内へ効率よく流入されるように案内すると共に、機械室15の右サイドパネル15D等の外装用部材を支持する支柱としての役割を担っている。これにより、機械室15の部品点数を削減し省スペース化しやすくなる。
【0036】
冷媒管68のうち圧縮機61から凝縮器63に至る部分は、図4に示すように、前後方向、左右方向、上下方向の全てについて冷媒の流通方向が一方向のみとならないように(すなわち、前から後、後から前、左から右、右から左、上から下、下から上の6方向全てを含むように)蛇行している。これにより、配膳車10の移動によって当該冷媒管68に振動が伝わった場合であっても、冷媒の応力上昇による冷媒管68の破損(ひび割れ)を抑制できる。その結果、冷媒管の材質として一般的な銅に比べ、軽量で低強度である材質(例えばアルミニウム)を冷媒管68に採用可能となる。また当該冷媒管68は、凝縮器ファン67のうち風速が大きい羽根車の外周側と重なるように蛇行している。これにより、凝縮機能が向上されている。
【0037】
冷却器65は、凝縮器63からの冷媒液を膨張弁により減圧してから気化させることで、気化熱によって冷却器65を通過する空気を冷却する。冷却器65は、図9に示すように、機械室15において冷蔵室12Bの上方に設けられている。本実施形態に係る冷却器65は、一般的なフィン&チューブ型の熱交換器であるが、他の種類であっても構わない。冷却器65からの冷媒ガスは、圧縮機61に帰還される。
【0038】
冷却用ファン69は、図7に示すように、冷却器65の後方であって中間ダクト18の上方に設けられている。貯蔵庫本体14の天井壁部14Cのうち、冷却用ファン69及び冷却器65と重なる部分は開口しており、開口を覆うように冷却器ダクト70が配設されている。冷却用ファン69及び冷却器65は、下方が開放された直方体状の断熱箱体である冷却器カバー66内に収容されている。冷却器カバー66は、天井壁部14C上に載置されている。冷却器カバー66は、図10に示すように、合成樹脂(例えばEPP(発泡ポリプロピレン))によって一体成型されており、内面66Aは冷却用ファン69及び冷却器65との隙間を埋めるために、これらの外形に倣う凹凸形状を有している。これにより、後述する第3吸込口71から吸い込まれた空気が効率的に冷却器65に流入される。
【0039】
中間ダクト18は、図11に示すように、左右方向について中央部に設けられ、左右両側の中間フレーム14Gと所定の間隔G1を空けている。2つの冷蔵室12A、12Bは、中間ダクト18によって仕切られる一方、間隔G1によって連通している。中間ダクト18には、冷蔵室12A、12Bに冷気を吹き出すための多数の第2流出口18Aが上下方向に沿って設けられている。
【0040】
冷却器ダクト70は、図12に示すように、全体として浅いトレー状をなす。冷却器ダクト70の前部には、冷蔵室12Bからの空気を吸い込む多数の第3吸込口71が設けられている。冷蔵室12Aからの空気は、上記した中間ダクト18と中間フレーム14Gとの間隔G1を通って冷蔵室12Bに流入し、冷蔵室12Bを通って第3吸込口71に吸い込まれる。第3吸込口71の開口縁部は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面71Aを有し、これにより冷却器65に流入する空気の風向が安定化されている。第3吸込口71付近には、冷蔵室12Bの室内温度を検出するための冷蔵室温度センサ58(具体的にはサーミスタ、室内温度センサの一例)が設けられている。一方、冷却器ダクト70の左部には、冷却器65からの冷気を中間ダクト18に吹き出すための第2吹出口72が設けられている。冷却用ファン69が作動すると、冷蔵室12B内の空気は第3吸込口71から吸い込まれ、冷却器65を通過することで冷却される。冷却された空気は第2吹出口72を通って中間ダクト18に流入し、中間ダクト18の第2流出口18A(図7図11)から冷蔵室12A、12Bに吹き出されて循環する。
【0041】
また冷却器ダクト70によって、冷却器65に付着した霜が融解された際に生じる除霜水が受け止められるようになっている。冷却器ダクト70の底部には、排水口73が設けられており、底部は排水口73に向かって除霜水が流下するような形状を有する。また排水口73には下方から排水管75が接続され、除霜水は、中間ダクト18内を下方に延びる排水管75を通ってドレンタンク76(図2)に貯留される。
【0042】
続いて、配膳車10の運転について説明する。制御部20は、加熱装置50のコードヒーター51、及び加熱用ファン55を作動することで、温蔵室温度センサ57の検出温度を参照しつつ、温蔵室11A、11Bの加熱運転(温冷運転の一例)を実行する。また制御部20は、冷蔵室温度センサ58の検出温度を参照しつつ、冷却装置60の圧縮機61及び凝縮器ファン67、並びに冷却用ファン69を作動することで、冷蔵室12A、12Bの冷却運転(温冷運転の別の一例)を実行する。
【0043】
ところで温蔵室11A、11B、及び冷蔵室12A、12Bの温度は、加熱運転、及び冷却運転の終了時に大きく変動してしまうことがある。例えば、温蔵室11A、11Bの温度が加熱運転中に80℃である場合、加熱運転終了時に87℃程度へと急激に温度上昇することがある。これは加熱運転の終了に伴い、加熱用ファン55が停止すると、コードヒーター51からの熱が温蔵室温度センサ57に当たって一時的に温度が上昇することによる。また例えば、冷蔵室12A、12Bの温度が冷却運転中に5℃である場合、冷却運転終了時に1℃程度へと急激に温度低下することがある。これは冷却運転の終了に伴い、冷却用ファン69が停止すると、冷却器65からの冷気が冷蔵室の冷蔵室温度センサ58に当たって一時的に温度が低下することによる。
【0044】
そこで本実施形態では、制御部20は実行中の加熱運転を終了する際、コードヒーター51を停止して待機時間が経過した後に、加熱用ファン55を停止する。このようにすれば、加熱運転を終了する際に、加熱用ファン55はコードヒーター51の停止後、待機時間だけ作動し続けるようになる。加熱用ファン55が作動し続けると、コードヒーター51に対して温蔵室11A、11Bの内気が送り込まれるため、温蔵室温度センサ57に当たるコードヒーター51からの暖気の温度は、内気によって緩和されて低下する。これにより、加熱運転を終了する際に、温蔵室温度センサ57の検出温度の変動量が緩和され、操作パネル16の表示部21Aに使用者に誤解を招く温度のオーバーシュートが表示される事態を抑制できる。
【0045】
また制御部20は、上記した待機時間の経過を判断にするにあたって、温蔵室温度センサ57の検出温度が第1閾値温度以下になると、待機時間が経過したと判断してもよい。
これにより、加熱運転を終了する際に、表示部21Aに使用者に誤解を招く温度のオーバーシュートが表示される事態を確実に抑制できる。
【0046】
また制御部20は、実行中の冷却運転を終了する際、圧縮機61を停止して待機時間が経過した後に、冷却用ファン69を停止する。このようにすれば、冷却運転を終了する際に、冷却用ファン69は圧縮機61の停止後、待機時間だけ作動し続けるようになる。冷却用ファン69が作動し続けると、冷却器65に対して冷蔵室12A、12Bの内気が送り込まれるため、冷蔵室温度センサ58に当たる冷却器65からの冷気の温度は、内気によって緩和されて上昇する。これにより、冷却運転を終了する際に、冷蔵室温度センサ58の検出温度の変動量が緩和され、表示部21Aに使用者に誤解を招く温度のオーバーシュートが表示される事態を抑制できる。
【0047】
また制御部20は、上記した待機時間の経過を判断にするにあたって、冷蔵室温度センサ58の検出温度が第2閾値温度以上になると、待機時間が経過したと判断してもよい。
これにより、冷却運転を終了する際に、表示部21Aに使用者に誤解を招く温度のオーバーシュートが表示される事態を確実に抑制できる。
【0048】
さらに制御部20は、温蔵室11A、11Bの乾燥を促すために加熱用ファン55のみを作動させたり、冷蔵室12A、12Bの乾燥を促すために冷却用ファン69のみを作動させたりする乾燥運転を行ってもよい。乾燥運転は例えば、貯蔵庫本体14内の水洗い清掃後に適宜行うことができる。このようにすれば、扉30を開状態にして自然乾燥する場合と比べて、貯蔵庫本体14内に雑菌が繁殖したり、外部から埃等の異物が浸入する懸念を抑制できる。
【0049】
また乾燥運転は、操作部21Bを操作することで人為的に手動実行されてもよく、ウィクリータイマー等によって開始時間と終了時間を設定することで自動実行されてもよい。また、配膳時間帯(例えば朝食時、昼食時、夕食時)ごとに運転(加熱運転、冷却運転)の実行ボタンが押された回数を制御部20の記憶部に記憶し、例えば3回の加熱運転の実行後に乾燥運転が実行されるようにしてもよい。これにより、ウィクリータイマーを備えない場合であっても、乾燥運転を自動実行でき、実行忘れを抑制できる。
【0050】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0051】
(1)機械室15における機器類の配置は適宜変更可能である。
【0052】
(2)各温度センサの配設位置は、図示に限られず、適宜変更可能である。例えば外部温度センサ23は、貯蔵庫本体14の外部に配設されていればよく、配膳車10以外に設けられていても構わない。
【0053】
(3)貯蔵庫本体14の構成、例えば温蔵室11A、11B、及び冷蔵室12A、12Bの数や配置、並びに扉30の数は限定されない。
【0054】
(4)本技術は、配膳車10以外の貯蔵庫に対しても広く適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10:配膳車(貯蔵庫)、11A、11B:温蔵室(貯蔵室)、12A、12B:冷蔵室(貯蔵室)、14:貯蔵庫本体、20:制御部、21A:表示部、50:加熱装置、57:温蔵室温度センサ(室内温度センサ)、58:冷蔵室温度センサ(室内温度センサ)、51:コードヒーター(温冷手段)、55:加熱用ファン(循環用ファン)、60:冷却装置(温冷手段)、61:圧縮機、65:冷却器、69:冷却用ファン(循環用ファン)
図1
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図5
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図10
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図12