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特開2024-152125浸透促進方法、皮膚外用剤キットおよび浸透促進剤
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  • 特開-浸透促進方法、皮膚外用剤キットおよび浸透促進剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152125
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】浸透促進方法、皮膚外用剤キットおよび浸透促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/33 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241018BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K8/33
A61K8/67
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066118
(22)【出願日】2023-04-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載日 令和 5年 2月20日 掲載アドレス https://www.fancl.jp/news/20230014/pdf/20230220_cdh.pdf 掲載日 令和 5年 2月28日 掲載アドレス https://www.fancl.jp/news/20230019/pdf/20230228_fanclginzasukuea20syuunennkinenn.pdf https://www.fancl.jp/ginza-square/beautystudio/brightening.html 頒布日 令和 5年 2月28日 発行所 株式会社ファンケル 刊行物名 配布したチラシ 頒布日 令和 5年 2月28日 発行所 株式会社ファンケル 刊行物名 ファンケル銀座スクウェア ガイドブック パネル公開日 令和 5年 2月28日 パネル公開場所 ファンケル銀座スクエア 開催日 令和 5年 3月31日 開催場所 オンライン(Zoom)による開催 集会名 20周年特別オンラインライブ 美容家 小林ひろ美さんのオンライン美トーク
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(71)【出願人】
【識別番号】591107034
【氏名又は名称】日本液炭株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】吉野 崇
(72)【発明者】
【氏名】久保山 江未
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB131
4C083AB132
4C083AD641
4C083AD642
4C083CC03
4C083DD06
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】皮膚外用剤の有効成分の浸透を促進する浸透促進方法、有効成分の浸透性に優れた皮膚外用剤キット、有効成分の浸透促進剤を提供すること。
【解決手段】皮膚外用剤が塗布されていない皮膚に、CO含有率が3重量%以上の氷を溶解させた水性液体と皮膚外用剤とをこの順で、または混合して塗布することにより、皮膚外用剤に含まれる有効成分の浸透を促進する浸透促進方法と、CO含有率が3重量%以上の氷を含有する第1剤と、有効成分を含有する第2剤とを有する皮膚外用剤キットと浸透促進用皮膚外用剤キット、および、CO含有率が3重量%以上の氷を含有する皮膚外用剤の浸透促進剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚外用剤が塗布されていない皮膚に、CO含有率が3重量%以上の氷を溶解させた水性液体と皮膚外用剤とをこの順で、または混合して塗布することにより、皮膚外用剤に含まれる有効成分の浸透を促進する浸透促進方法。
【請求項2】
前記有効成分が、ビタミンC類を含むことを特徴とする請求項1に記載の浸透促進方法。
【請求項3】
CO含有率が3重量%以上の氷を含有する第1剤と、有効成分を含有する第2剤とを有し、
第1剤が含有する氷を溶解させた水性液体と第2剤とをこの順で、または混合して皮膚に適用する皮膚外用剤キット。
【請求項4】
CO含有率が3重量%以上の氷を含有する第1剤と、有効成分を含有する第2剤とを有し、
前記有効成分の浸透を促進するものである浸透促進用皮膚外用剤キット。
【請求項5】
CO含有率が3重量%以上の氷を含有する、皮膚外用剤の浸透促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤が含む成分の浸透を促進する浸透促進方法と、皮膚外用剤キットおよび浸透促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
美容分野において、炭酸ガスを配合したパック、美容液、洗顔料、パック、マスク材等が用いられている。これらは、化学反応により炭酸ガスを発生させる、または最初から炭酸ガスを含むものであり、炭酸ガスの気泡は比較的大きく抜けやすい。そのため、粘度を高くして気泡を抜けにくくすることが行われている(特許文献1、2等)。
また、特許文献3には、ウルトラファインバブルを高含有する化粧料が提案されており、炭酸ガスのウルトラファインバブルを高含有するものが記載されている。ウルトラファインバブルは、通常サイズの気泡と比較して浮力が小さいため、液中に長期間存在することができる。そして、特許文献3には、水中よりも化粧水中の方が、ウルトラファインバブルの安定性に優れていたことが記載されている。
【0003】
炭酸ガスは、血流促進効果、温熱効果、洗浄効果を有すること、清涼感を感じられることが知られている。上記したように、炭酸ガスを用いた化粧料は数多く存在しているが、炭酸ガスそのものが有する効果や刺激を用いるものであり、炭酸ガスに依る高機能を謳うものは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-122194号公報
【特許文献2】特開2014-129306号公報
【特許文献3】特開2020-147520号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】”Hydrates of Carbon Dioxide and Methane Mixtures”, J. Chem. Eng. Data (1991) 36, 68-71
【非特許文献2】”Phase Equilibrium for Clathrate Hydrates Formed with Methane, Ethane, Propane, or Carbon Dioxide at Temperatures below the Freezing Point of Water”, J. Chem. Eng. Data (2008), 53, 2182-2188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、炭酸ガスの微細気泡が、他の成分の真皮への浸透を促進する作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、皮膚外用剤の有効成分の浸透を促進する浸透促進方法、有効成分の浸透性に優れた皮膚外用剤キット、有効成分の浸透促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.皮膚外用剤が塗布されていない皮膚に、CO含有率が3重量%以上の氷を溶解させた水性液体と皮膚外用剤とをこの順で、または混合して塗布することにより、皮膚外用剤に含まれる有効成分の浸透を促進する浸透促進方法。
2.前記有効成分が、ビタミンC類を含むことを特徴とする1.に記載の浸透促進方法。
3.CO含有率が3重量%以上の氷を含有する第1剤と、有効成分を含有する第2剤とを有し、
第1剤が含有する氷を溶解させた水性液体と第2剤とをこの順で、または混合して皮膚に適用する皮膚外用剤キット。
4.CO含有率が3重量%以上の氷を含有する第1剤と、有効成分を含有する第2剤とを有し、
前記有効成分の浸透を促進するものである浸透促進用皮膚外用剤キット。
5.CO含有率が3重量%以上の氷を含有する、皮膚外用剤の浸透促進剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、皮膚外用剤の真皮への浸透を促進することができ、肌の奥深くまでより多くの有効成分を届けることができる。
本発明により、有効成分の浸透性に優れた皮膚外用剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】皮膚モデルを透過したAPPS量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「浸透促進方法」
本発明の浸透促進方法は、皮膚外用剤が塗布されていない皮膚に、CO含有率が3重量%以上の氷を溶解させた水性液体と皮膚外用剤とをこの順で、または混合して塗布することにより、皮膚外用剤に含まれる有効成分の浸透を促進する方法である。
【0011】
・CO含有率が3重量%以上の氷
CO含有率が3重量%以上の氷(以下、「CO高含有氷」ともいう)は、溶解すると炭酸ガスの微細気泡を含む水となる。この微細気泡は、マイクロバブルであることが好ましく、ウルトラファインバブルであることがより好ましい。なお、マイクロバブルとは直径100μm未満かつ1μm以上の泡、ウルトラファインバブルとは直径1μm未満の泡である。
【0012】
本発明で使用するCO高含有氷としては、CO含有率が3重量%以上の氷である限り特に制限されない。CO高含有氷は、COハイドレートではないCO高含有氷であってもよいが、より良好なウルトラファインバブルをより十分に得る観点から、COハイドレートであることが好ましく、圧密化COハイドレートであることがより好ましい。なお、CO高含有氷として、COハイドレートではないCO高含有氷、COハイドレート、圧密化COハイドレートの2種または3種を併用することもできる。
【0013】
「COハイドレート」とは、水分子の結晶体の空寸に二酸化炭素分子を閉じ込めた包接化合物をいう。結晶体を形成する水分子は「ホスト分子」、水分子の結晶体の空寸に閉じ込められている分子は「ゲスト分子」または「ゲスト物質」と呼ばれる。COハイドレートは、通常、氷状の結晶体であり、例えば標準気圧条件下で、かつ、氷が融解するような温度条件下に置くと、融解しながらCOを放出する。
【0014】
「圧密化COハイドレート」とは、COハイドレート率が40~90%(好ましくは50~90%、より好ましくは60~90%)であるCOハイドレートを意味する。COハイドレート率とは、COハイドレートの塊の重量に対するCOハイドレートの重量の割合(%)を意味し、以下の式(1)により算出することができる。
【0015】
(式1)
COハイドレート率(%)
={(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)
+(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)÷44×5.75×18}
×100÷融解前のサンプル重量
式1において、(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)は、包蔵されるCOガス重量となる。COガスをハイドレートとして包接するために必要な水量は、理論水和数5.75、COの分子量44、水の分子量18を用いて算出し、それ以外の水は、ハイドレートを構成しない付着水とみなしている。
【0016】
CO高含有氷(好ましくはCOハイドレート、より好ましくは圧密化COハイドレート)のCO含有率は、3重量%以上である限り特に制限されないが、溶解してウルトラファインバブルをより高濃度で含有する水性液体を得る観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、よりさらに好ましくは13重量%以上、よりさらに好ましくは16重量%以上、よりさらに好ましくは19重量%以上、よりさらに好ましくは22重量%以上であることが挙げられ、CO含有率の上限として例えば、28重量%以下、26重量%以下であることが挙げられる。
【0017】
CO高含有氷の製造方法としては、CO含有率が3重量%以上の氷を製造できる限り特に制限されない。
COハイドレートではないCO高含有氷の製造方法としては、COハイドレート生成条件を充たさない条件下で原料水中にCOを吹き込みながら原料水を冷凍する方法が挙げられる。
【0018】
COハイドレートは、COと水を、低温かつ高圧のCO分圧という条件にすることにより製造することができ、例えば、ある温度であること、及び、その温度におけるCOハイドレートの平衡圧力よりもCO分圧が高いことを含む条件(以下、「COハイドレート生成条件」ともいう。)において製造することができる。COハイドレート生成条件は、非特許文献1のFigure 2.や、非特許文献2のFigure 7.やFigure 15.に開示されているCOハイドレートの平衡圧力曲線(例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す)において、平衡圧力曲線の高圧側(COハイドレートの平衡圧力曲線において、例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す場合は、該曲線の上方)の領域内の温度とCO圧力の組合せの条件として表される。また、COハイドレートは、水の代わりに微細な氷をCOと、低温、かつ、低圧のCO分圧という条件下で反応させて製造することもできる。COハイドレートを製造する際のCOの圧力が高くなるほど、また、COと水の温度が低くなるほど、COハイドレートのCO含有率が高くなる傾向がある。COハイドレートのCO含有率は、COハイドレートの製法にもよるが、約3~28重量%程度とすることができ、炭酸水のCO含有率(約0.5重量%程度)と比較して顕著に高い。
【0019】
COハイドレートの製造方法としては、COハイドレート生成条件を充たす条件下で原料水中にCOを吹き込みながら原料水を攪拌する気液攪拌方式や、COハイドレート生成条件を充たす条件下でCO中に原料水をスプレーする水スプレー方式等の常法を用いることができる。これらの方式で生成されるCOハイドレートは、通常、COハイドレートの微粒子が、未反応の水と混合しているスラリー状であるため、COハイドレートの濃度を高めるために、脱水処理を行うことが好ましい。脱水処理によって含水率が比較的低くなったCOハイドレート(すなわち、CO含有率が比較的高いCOハイドレート)は、ペレット成型機で一定の形状(例えば球状や直方体状)に圧縮成型することが好ましい。圧縮成型したCOハイドレートは、そのまま本発明に用いてもよいし、必要に応じてさらに破砕等したものを用いてもよい。なお、COハイドレートの製造方法としては、原料水を用いる方法が比較的広く用いられているが、水(原料水)の代わりに微細な氷(原料氷)をCOと、低温、かつ、低圧のCO分圧という条件下で反応させてCOハイドレートを製造する方法を用いることもできる。
【0020】
圧密化COハイドレートの製造方法は特に制限されないが、例えば以下の製造方法を好ましく挙げることができる。
上記した方法で得られるCOハイドレートは、通常、COハイドレートの微粒子が、未反応の水と混合しているスラリー状である。このスラリーについて脱水処理及び圧縮処理を行うことにより、圧密化COハイドレートを製造することができる。COハイドレート粒子と水を含むスラリーの脱水処理及び圧縮処理は、例えば、スラリーの脱水処理を行った後、COハイドレート粒子の圧縮処理を行うなど、脱水処理と圧縮処理を別々に順次行ってもよいし、あるいは、スラリー中の水が排出され得る状況下でスラリーを圧縮処理するなどして、脱水処理と圧縮処理を同時に行ってもよいが、ウルトラファインバブルをより高濃度で得る観点から、脱水処理と圧縮処理を同時に行うことが好ましく、中でも、COハイドレート生成条件下で脱水処理と圧縮処理を同時に行うことがより好ましい。COハイドレート粒子の圧縮処理や、スラリーの圧縮処理は、市販の圧密成形機等を用いて行うことができる。圧縮処理の際の圧力としては、例えば1~100Mpa、1~50Mpa、1~30Mpa、1~15Mpa、1~10Mpa、1~9MPa、1.5~8Mpa、1.5~6Mpaなどを挙げることができる。なお、スラリーについて、十分な脱水処理を行うと、COハイドレート率は通常約40%となり、十分な脱水処理後に2.5MpaでCOハイドレート粒子の圧縮処理を行うとCOハイドレート率は通常約60%となり、脱水処理後に9MpaでCOハイドレート粒子の圧縮処理を行うとCOハイドレート率は通常約90%となるとされている。
【0021】
CO高含有氷としては、以下の測定法D1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)で、好ましくは5百万個/mL以上、より好ましくは1千万個/mL以上、さらに好ましくは2千万個/mL以上、よりさらに好ましくは2千5百万個/mL以上、よりさらに好ましくは3千万個/mL以上、よりさらに好ましくは3千5百万個/mL以上、よりさらに好ましくは5千万個/mL以上、よりさらに好ましくは7千5百万個/mL以上、よりさらに好ましくは1億個/mL以上、よりさらに好ましくは1億5千万個/mL以上、よりさらに好ましくは2億個/mL以上、よりさらに好ましくは2億5千万個/mL以上のウルトラファインバブルを水の中に発生させることができるCO高含有氷を好適に挙げることができる。本発明におけるCO高含有氷が、水の中に発生させることができるウルトラファインバブルの濃度の上限としては、特に制限されないが、前述の測定法D1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が、例えば100億個/mL以下、10億個/mL以下であることが挙げられる。
【0022】
(測定法D1)
20~30℃の水に、-80~0℃であり、かつ、CO含有率が3重量%以上である氷を333mg/mL添加し、25℃条件下で1時間静置した後、水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)を、レーザー回折・散乱法又はナノトラッキング法で測定する。レーザー回折・散乱法で測定する場合、濃度を島津製作所社製 SALD-7500 ウルトラファインバブル計測システム等を用いることができる。ナノトラッキング法で測定する場合、Malvern社製 ナノサイト NS300等を用いることができる。
【0023】
・CO含有率が3重量%以上の氷を溶解させた水性液体
CO含有率が3重量%以上の氷を溶解させた水性液体(以下、CO高含有液体ともいう)としては、CO高含有氷を溶解させた液体、CO高含有氷を水に溶解させた液体、CO高含有氷を水溶液(例えば化粧水等)に溶解させた液体が挙げられる。
CO高含有液体は、ウルトラファインバブル濃度(個/mL)が好ましくは2千万個/mL以上であり、より好ましくは4千万個/mL以上、さらに好ましくは8千万個/mL以上、よりさらに好ましくは1億個/mL以上、よりさらに好ましくは3億個/mL以上、よりさらに好ましくは5億個/mL以上であることが挙げられる。本発明の化粧料におけるUFB濃度の上限としては特に制限されないが、50億個/mL以下、40億個/mL以下、30億個/mL以下が挙げられる。なお、水性液体のウルトラファインバブル濃度は、レーザー回折・散乱法又はナノトラッキング法で測定することができる。
【0024】
・皮膚外用剤
本発明で使用する皮膚外用剤は、化粧料、医薬部外品、医薬品を含む。本発明の皮膚外用剤の剤型は、水溶液、水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物、多重乳化組成物、多層状剤のいずれでもよく、例えば、化粧水等の溶液状、乳液、クリーム等の乳化物状、ジェル等のゲル状とすることができる。
【0025】
皮膚外用剤は、有効成分を1種または2種以上含む。有効成分としては、従来、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料等で使用されていて、親水性または両親媒性であり、水中に溶解、または分散可能なものであれば特に限定されることなく使用することができ、例えば、保湿剤、抗炎症剤、ビタミン類、抗酸化剤、血行促進剤、創傷治癒剤、抗菌性物質、皮膚賦活剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、美白剤等が挙げられる。
具体的な有効成分としては、リボフラビン等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、ビタミンC類等のビタミン類、プラセンタエキス、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ぶなの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸γ-オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、マルトースショ糖縮合物等の常在菌コントロール剤、塩化リゾチーム等を挙げることができる。
【0026】
さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ぶなの木エキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を挙げることができる。
【0027】
本発明の浸透促進方法は、皮膚外用剤に含まれる有効成分の浸透を促進する方法であり、皮膚に浸透しにくい有効成分であっても浸透を促進することができる。そのため、皮膚外用剤が含む有効成分の分子量は、300以上が好ましく、350以上がより好ましく、400以上がさらに好ましく、450以上がよりさらに好ましく、500以上がよりさらに好ましい。有効成分の分子量の上限は、850以下が好ましく、800以下がより好ましい。
【0028】
有効成分としては、ビタミン類が好ましく、ビタミンC類がより好ましい。
ビタミンCの具体例としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムやアスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウムなどのアスコルビン酸金属塩、パルミチン酸アスコルビルなどが挙げられる。
ビタミンC誘導体の具体例としては、例えば、リン酸化アスコルビン酸、リン酸化アスコルビン酸ナトリウム、リン酸化アスコルビン酸カリウム、リン酸化アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸-6-パルミチン酸三ナトリウム(APPS)
、パルミチン酸アスコルビル、ラウリン酸アスコルビル、ミリスチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、グリコシル化アスコルビン酸、マンノシル化アスコルビン酸、フルクトシル化アスコルビン酸、フコシル化アスコルビン酸、ガラクトシル化アスコルビン酸、N-アセチルグルコースアミン化アスコルビン酸、N-アセチルムラミン化アスコルビン酸などが挙げられる。
【0029】
・浸透促進方法
本発明の浸透促進方法は、皮膚外用剤が塗布されていない皮膚に、CO含有率が3重量%以上の氷を溶解させた水性液体(CO高含有液体)と皮膚外用剤とをこの順で、または混合して塗布する。CO高含有液体と皮膚外用剤とは、この順で塗布することが、浸透性に優れているため好ましい。なお、同時に塗布する場合と比較して、CO高含有液体と皮膚外用剤とをこの順で塗布する方が、浸透性に優れるメカニズムは不明である。
CO高含有液体と皮膚外用剤とをこの順で塗布する場合、CO高含有液体を塗布したのち、静置する、もしくは塗布したままマッサージ等を行うことにより、CO高含有液体が一定時間皮膚に触れることが好ましい。一定時間とは、10秒以上が好ましく、20秒以上がより好ましく、30秒以上がさらに好ましい。一定時間経過後は、CO高含有液体の残液が垂れるほどの量ではない場合は、残液を拭き取らない方が好ましい。残液が多い場合は拭き取ってもよい。その後、皮膚外用剤を塗布する。
【0030】
「皮膚外用剤キット」
本発明の第1の皮膚外用剤キットは、CO含有率が3重量%以上の氷を含有する第1剤と、有効成分を含有する第2剤とを有し、第1剤が含有する氷を溶解させた水性液体と第2剤とをこの順で、または混合して同時に皮膚に適用する。
本発明の第2の皮膚外用剤キットは、浸透促進用皮膚外用剤キットであり、CO含有率が3重量%以上の氷を含有する第1剤と、有効成分を含有する第2剤とを有し、第2剤が含む有効成分の浸透を促進するものである。
以下、第1の皮膚外用剤キットと第2の皮膚外用剤キットをまとめて、本発明のキットともいう。
【0031】
本発明のキットにおいて、第1剤は、上記したCO含有率が3重量%以上の氷を含有する。また、第1剤が含有する氷を溶解させた水性液体としては、CO高含有氷を溶解させた液体、CO高含有氷を水に溶解させた液体、CO高含有氷を水溶液(例えば化粧水等)に溶解させた液体のいずれを使用することができる。
本発明のキットにおいて、第2剤は、上記した有効成分の1種または2種以上を含有する。第2剤は、化粧料、医薬部外品、医薬品であってもよい。また、第2剤の剤型は、水溶液、水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物、多重乳化組成物、多層状剤のいずれでもよく、例えば、化粧水等の溶液状、乳液、クリーム等の乳化物状、ジェル等のゲル状とすることができる。
【0032】
第1の皮膚外用剤キットは、第1剤が含有する氷を溶解させた水性液体と第2剤とをこの順で、または混合して同時に皮膚に適用する。第1の皮膚外用剤キットは、水性液体と第2剤とこの順で塗布することが、浸透性に優れているため好ましい。
【0033】
第2の皮膚外用剤キットは、第2剤が含む有効成分の浸透を促進するものである。第2の皮膚外用剤キットにおいて、第1剤が含有する氷を溶解させた水性液体と第2剤とを皮膚に塗布する順番は特に制限されず、水性液体と第2剤をこの順で塗布する、第2剤と水性液体をこの順で塗布する、塗布前に水性液体と第2剤を混合して塗布する、のいずれでも良い。これらの中で、浸透性の点から、水性液体と第2剤とをこの順で塗布することが好ましい。
【0034】
本発明のキットにおいて、第1剤が含有する氷を溶解させた水性液体と第2剤とをこの順で塗布する場合、水性液体を塗布したのち、静置する、もしくは塗布したままマッサージ等を行うことにより、CO高含有液体が一定時間皮膚に触れることが好ましい。一定時間とは、10秒以上が好ましく、20秒以上がより好ましく、30秒以上がさらに好ましい。一定時間経過後は、水性液体の残液が垂れるほどの量ではない場合は、残液を拭き取らない方が好ましい。残液が多い場合は拭き取ってもよい。その後、第2剤を塗布する。
【0035】
「浸透促進剤」
本発明の浸透促進剤は、CO含有率が3重量%以上の氷を含有する。
本発明の浸透促進剤は、上記した本発明のキットの第1剤と同様にして用いることができる。本発明の浸透促進剤は、市販の化粧料、医薬部外品、医薬品等である皮膚外用剤と併用することにより、より多くの有効成分を浸透させることができる。
【実施例0036】
・使用材料
CO含有率が10重量%以上20重量%以下の氷(炭酸ガスハイドレート(CDH(登録商標))、日本液炭株式会社製)
APPS(L-アスコルビン酸-2-リン酸-6-パルミチン酸三ナトリウム、分子量560.5)
ヒト三次元培養表皮モデル:LabCyte EPI-MODEL(ジャパン・ティッシュエンジニアリング製、以下「皮膚モデル」と記載)
【0037】
・添加検体
「実施例1」
APPS+CDH溶液:1.2重量%のAPPSをPBS(-)で溶解後、この溶解液(水性溶液)の全重量に対し30重量%になるCDHを加えてCDHを溶解させて、APPS+CDH溶液とした。
「実施例2」
CDH溶液添加後、APPS溶液:PBS(-)に30重量%になるCDHを添加して溶解させて、CDH溶液とした。1.2重量%のAPPSをPBS(-)で溶解し、APPS溶液とした。CDH溶液を添加し、5分後、CDH溶液を取り除きAPPS溶液を添加した。
【0038】
「比較例1」
APPS溶液:1.2重量%のAPPSをPBS(-)で溶解しAPPS溶液とした。
「比較例2」
APPS+市販炭酸水溶液:APPSをPBS(-)で溶解後、APPS最終濃度1.2重量%、CDHを30重量%添加した溶液と同じ炭酸濃度となるよう市販炭酸水(ウィルキンソン社製)を加えAPPS+市販炭酸水溶液とした。
【0039】
添加検体を皮膚モデルの角層側から100μl添加した。なお、実施例2では、CDH溶液を添加し、5分後にCDH溶液を取り除き、APPS溶液を添加した。
2時間、4時間、6時間後に皮膚モデルのメンブレンが接している培地(リザーバー)(500μL)を回収し、皮膚モデルを透過したAPPSが溶出している量を測定した。APPSの測定は、培地500μLを凍結乾燥し、100μLの純水で溶解し、LC-MSを用いて実施した。APPSに該当するピークの面積値を比較した。結果を図1に示す。
【0040】
・結果
2時間後、4時間後に採取した培地からは、APPSが検出されなかった。
6時間後において、APPS溶液(比較例1)の培地中に皮膚モデルを透過したAPPSが検出された。APPS+CDH溶液(実施例1)は比較例1よりも培地中APPS量が5倍以上も大きかった。さらに、CDH添加後、APPS溶液(実施例2)は、実施例1よりも培地中APPS量が大きい値を示し、比較例1よりも培地中APPS量が8倍以上も大きかった。APPS+市販炭酸水溶液(比較例2)の培地中APPS量は、比較例1よりもわずかに大きい程度であった。
図1