(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152126
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電動作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241018BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241018BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241018BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20241018BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066120
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸明
(72)【発明者】
【氏名】今井 征典
(72)【発明者】
【氏名】小山 浩二
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA14
3D235BB10
3D235CC15
3D235DD33
3D235HH16
5H125AA20
5H125AC12
5H125CD00
5H125EE25
(57)【要約】
【課題】本発明は、バッテリの発火による火災で操縦席に搭乗した作業者が危機に曝されるのを防ぐことを課題とする。
【解決手段】駆動走行輪3と作業機4を駆動するバッテリ50を操縦席60前のボンネット部5内に搭載した電動作業車において、ボンネット部5内で後方からバッテリ50に向けて消火剤を噴射する後消火ノズル85Aを設けたことを特徴とする電動作業車の安全装置とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動走行輪(3)と作業機(4)を駆動するバッテリ(50)を操縦席(60)前のボンネット部(5)内に搭載した電動作業車の安全装置において、ボンネット部(5)内で後方からバッテリ(50)に向けて消火剤を噴射する後消火ノズル(85A)を設けたことを特徴とする電動作業車の安全装置。
【請求項2】
バッテリ(50)の表面温度を検出する温度センサ(86)を設け、該温度センサ(86)が所定高温を検出すると警告を発し、やがて後消火ノズル(85A)から消火剤をバッテリ(50)に向けて噴射することを特徴とする請求項1に記載の電動作業車の安全装置。
【請求項3】
前側からバッテリ(50)に向かう前消火ノズル(85B)と左右側面に向かう左右消火ノズル(85C)を設け、後消火ノズル(85A)の消火剤噴射後に前消火ノズル(85B)と左右消火ノズル(85C)から消火剤を噴射する請求項1に記載の電動作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの電力で電動機を駆動して走行しながら作業を行う電動作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動作業車は、特許第6471626号公報に記載の如く、走行車体に搭載したバッテリで電動機を駆動して走行しながら作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記電動作業車は、走行車体の前部にバッテリを搭載したボンネットを設け、その後部に作業者が搭乗する操縦席を設け、走行車体の下部或いは後部に作業機を装着している。この電動作業車は、ボンネットに搭載する重いバッテリが作業機を含めた走行車体全体の重量バランスを良くしている。
【0005】
しかし、前進走行中に走行車体が塀などの障害物と衝突すると、ボンネット内のバッテリが破損して発火し全体に延焼して搭乗する作業者に危険が及ぶ可能性がある。
【0006】
本発明は、バッテリの発火による火災で操縦席に搭乗した作業者が危機に曝されるのを防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、駆動走行輪3と作業機4を駆動するバッテリ50を操縦席60前のボンネット部5内に搭載した電動作業車において、ボンネット部5内で後方からバッテリ50に向けて消火剤を噴射する後消火ノズル85Aを設けたことを特徴とする電動作業車の安全装置とする。
【0009】
請求項2の発明は、バッテリ50の表面温度を検出する温度センサ86を設け、該温度センサ86が所定高温を検出すると警告を発し、やがて後消火ノズル85Aから消火剤をバッテリ50に向けて噴射することを特徴とする請求項1に記載の電動作業車の安全装置とする。
【0010】
請求項3の発明は、前側からバッテリ50に向かう前消火ノズル85Bと左右側面に向かう左右消火ノズル85Cを設け、後消火ノズル85Aの消火剤噴射後に前消火ノズル85Bと左右消火ノズル85Cから消火剤を噴射する請求項1に記載の電動作業車の安全装置とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、ボンネット部5内のバッテリ50が発火することがあってもボンネット部5内の操縦席60側に設けた後消火ノズル85Aからバッテリ50に向かって消火剤が噴射されることで、火炎が作業者の座る操縦席60に向かうことなく、退避する余裕が生じて、操縦席60に座った作業者の逃げる余裕がある。
【0012】
請求項2の発明で、温度センサ86でバッテリ50の温度を測定監視して発火の可能性があると警告を発するので操縦席60から作業者が離れて退避する余裕があり、やがて発火すると直ちに消火ノズル85Aから消火剤をバッテリ50に向けて噴射して鎮火されるので、安全である。
【0013】
請求項3の発明で、バッテリ50が発火するとまず後消火ノズル85Aから消火剤を前側に噴射することで火炎が作業者に及ぶのを防いで、その後前消火ノズル85Bと左右消火ノズル85Cから消火剤をバッテリ50に噴射することで火炎を消火剤で包んで鎮火できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態にかかる電動作業車の左側面図である。
【
図2】同電動作業車のボンネットカバーを開放姿勢にした電動作業車の左側面図である。
【
図3】同電動作業車の一部を破断した要部の斜視図である。
【
図5】同電動作業車の後輪と作業機の要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電動作業車の実施例として、乗用芝刈り機を示している。
【0016】
図1に示すように、乗用芝刈り機の走行車体1の前部に左右一対の前輪2,2が設けられ、走行車体1の後部に左右一対の後輪3,3が設けられ、走行車体1の下側における前輪2,2と後輪3,3の間に芝等を刈取る作業機4が設けられている。また、走行車体1の前部にボンネット部5が設けられ、ボンネット部5の後側には作業者が搭乗する操縦部6が設けられ、操縦部6の後側には作業者を保護する安全フレーム(ロプス)7が設けられ、安全フレーム7の下部には作業機4で刈取られた芝等を貯留する集草容器8が設けられている。
【0017】
図2,3に示すように、ボンネット部5には、後輪3,3を駆動する電動機30と作業機4を駆動する電動機40に供給する電力を蓄電するバッテリ50が設けられ、バッテリ50はボンネットカバー5Aで覆われている。なお、ボンネットカバー5Aは、走行車体1の前部に設けられた左右方向に延在する支軸89に支持されて、前上方へ回動して内部を開放可能にしている。これにより、内部に搭載するバッテリ50のメンテナンスを行える。
【0018】
操縦部6の後部には、操縦席60が設けられ、操縦席60の前方にはステアリングホイール62が設けられている。ステアリングホイール62は上下方向に延在するステアリングシャフト63の上部に支持され、ステアリングシャフト63はステアリングポスト11に支持されている。
【0019】
操縦席60の左側の左フェンダ64Lには、作業機4によって刈取られた刈草を集草容器8に搬送するシュータ46に残った刈草を集草容器8に強制搬送するクリーナ(図示省略)を操作するクリーナレバー65と、クリーナレバー65の後側にバッテリ50の充電時に使用する充電用ケーブルを収納する収納ケースが設けられている。これにより、バッテリ50の充電量が所定以下になった場合には、作業車両を充電ステーションに移動することなく、作業車を近くの倉庫等に移動して、倉庫等に備えられた家庭用コンセントと充電器73を充電用ケーブルで接続してバッテリ50を充電することができる。なお、充電器73の入力電圧は交流電圧100~240Vに対応して形成されている。
【0020】
ボンネット部5内にはバッテリ50が搭載され、ステアリングポスト11の上部からバッテリ50の後上部に向けて後消火ノズル85Aが設けられ、ボンネットカバー5A内の前内側にはバッテリ50の前面に向かう前消火ノズル85Bが設けられ、左右内側に左右消火ノズル85Cがバッテリ50の左右側面に向けて設けられ、フェンダ64内の消火剤タンク87と後消火ノズル85Aと前消火ノズル85Bと左右消火ノズル85Cがパイプで連結され、ポンプ(図示省略)の駆動で消火剤がバッテリ50に向けて噴射される。
【0021】
また、ステアリングポスト11の後消火ノズル85Aの隣には非接触式の温度センサ86がバッテリ50に向けて表面温度を測定するように設けられ、バッテリ50の温度が高温になるとブザーやランプ等の警告を発し、さらに高温状態が続くと、まず後消火ノズル85Aから消火剤が噴射され、やがて前消火ノズル85Bと左右消火ノズル85Cからも消火剤が噴射される。
【0022】
なお、後消火ノズル85Aと前消火ノズル85Bと左右消火ノズル85Cの噴射制御は、バッテリ50とは別のバッテリで駆動される制御装置で行う。
【0023】
また、各消火ノズル85A,85B、85Cの近くにそれぞれ温度センサを設け、先に高温を計測した側から消火剤を噴射させる構成でもよい。
【0024】
また、各消火ノズル85A,85B、85Cを可動式にしてバッテリ50の子高温個所を狙って噴射するようにしても良い。
【0025】
また、バッテリ50を冷却する空冷ファンを設けた構成では、空冷ファンの吸引側から消火剤を噴射するようにすると効果的である。
【0026】
また、高温警告が出ると作業者が噴射スイッチを押して消火剤を噴射させるようにしても良い。
【0027】
また、バッテリ50やケーブルを消火剤を含んだ可燃性材料のケースや覆いで包み、火災発生で消火剤が噴出するようにすることも良い。
【0028】
また、バッテリ50に繋ぐケーブルは衝突衝撃や発火によって接続を切断されるようにするのでも良い。
【0029】
操縦席60に座る作業者が触るハンドルやレバー類は耐熱ゴムで包むようにすると良い。
【0030】
操縦席60の右側のフェンダ64Rには、作業機4の昇降を操作する昇降レバー66が設けられている。
【0031】
操縦部6のフロア67のステアリングポスト11の左側には、ブレーキペダル68が設けられ、右側には、前進用と後進用のアクセルペダルが設けられている。
【0032】
操縦部6の操縦席60の下側には、電装部品61が設けられている。これにより、操縦席60の下側に形成される空間を有効に活用することができる。
【0033】
安全フレーム7は、上下方向に延在する左支柱部7Lと、上下方向に延在する右支柱部7Rと、左支柱部7Lと右支柱部7Rの上部を連結する逆U字形状の連結部7Aから形成されている。
【0034】
図4、5に示すように、電装部品61の下側には後輪3を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機等の電動機30が設けられている。電動機30の左右方向に延在して形成された出力軸30Aは、出力軸30Aから伝動される出力回転を減速して出力トルクを大きくしたり回転方向を逆さにしたりするギアボックス31の上部に連結されている。なお、電動機30は左右方向の中央よりも左後輪3Lに偏移した位置に設けられている。
【0035】
ギアボックス31で増減速された出力回転は、ギアボックス31の下部に設けられ差動歯車等で形成されたディファレンシャルギア32を介して左右方向に延在するドライブシャフト33に伝動される。ドライブシャフト33に伝動された出力回転は、ドライブシャフト33の両端部に支持された左後輪3Lと右後輪3Rに伝動される。
【0036】
電動機30の下側には作業機4を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機等の電動機40が設けられている。電動機40の前後方向に延在して形成された出力軸40Aは、前後方向に延在して設けられた自在継手41の後部に連結されている。また、出力軸40Aは、ドライブシャフト33の上側に、ドライブシャフト33と直交して設けられている。これにより、電動機30の下側に形成された空間を有効に活用することができる。また、電動機40と作業機4の間の伝動経路を短くすることができるので電動機40の出力回転を作業機4に効率良く伝動することができる。なお、電動機40は左右方向の中央よりも左後輪3Lに偏移した位置に設けられている。
【0037】
自在継手41の前部は、自在継手41から伝動される出力回転を減速して出力トルクを大きくするギアボックス42に連結されている。ギアボックス42に伝動された出力回転は、ギアボックス42の上下方向に延在して形成された出力軸を介して作業機4の左排出通路45Lに設けられた左刈刃(図示省略)に伝動される。
【0038】
ギアボックス42の右部には、左右方向に延在する連結部材43が連結され、連結部材43の右部はギアボックス44に連結されている。ギアボックス44に伝動された出力回転は、ギアボックス44の上下方向に延在して形成された出力軸を介して作業機4の右排出通路45Rに設けられた右刈刃(図示省略)に伝動される。なお、ギアボックス42の出力軸とギアボックス44の出力軸の出力回転の回転速度は同一速度であり、回転方向は逆方向、すなわち、平面視において、ギアボックス42出力軸は時計方向に回転し、ギアボックス44の出力軸は反時計方向に回転する。
【符号の説明】
【0039】
3 駆動走行輪
4 作業機
5 ボンネット部
50 バッテリ
60 操縦席
85A 後消火ノズル
85B 前消火ノズル
85C 左右消火ノズル
86 温度センサ