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特開2024-152128潮流情報取得装置、送配電システム、および潮流情報取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152128
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】潮流情報取得装置、送配電システム、および潮流情報取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20200101AFI20241018BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241018BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01R31/08
H02J13/00 301A
H02J3/38 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066122
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】長野 宏治
(72)【発明者】
【氏名】岩間 成美
(72)【発明者】
【氏名】酒井 治
(72)【発明者】
【氏名】梅村 侑史
【テーマコード(参考)】
2G033
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
2G033AA01
2G033AB03
2G033AD13
2G033AF03
2G033AG14
5G064AA01
5G064AA04
5G064AB05
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA03
5G066HA13
5G066HB01
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】小型の装置により潮流の方向に関する情報を安定的に取得する。
【解決手段】潮流情報取得装置は、電線を囲むように配置され、電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、電流測定用カレントトランス部が出力した誘導電流に基づいて電線の電流を測定する電流測定部と、電線の軸方向に所定の間隔をあけて電線に接続された一対の測定端子と、一対の測定端子の間における電線の電圧降下を測定する電圧測定部と、電流測定部により測定した電線の電流と、電圧測定部により測定した電線の電圧降下と、に基づいて、電線の電流と電線の電圧との間における位相差を求める位相差取得部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する電流測定部と、
前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部により測定した前記電線の前記電流と、前記電圧測定部により測定した前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める位相差取得部と、
を備える
潮流情報取得装置。
【請求項2】
前記電線に取り付けられる
請求項1に記載の潮流情報取得装置。
【請求項3】
前記電線を囲むように配置され、前記電線に流れる前記電流に基づいて生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させる電源用カレントトランス部を備える
請求項1または請求項2に記載の潮流情報取得装置。
【請求項4】
少なくとも前記位相差取得部に接続され、前記位相差取得部が求めた前記位相差のデータを、無線で外部に送信する無線部を備える
請求項1または請求項2に記載の潮流情報取得装置。
【請求項5】
電力を供給する複数の電力設備と、
前記複数の電力設備に接続され、前記複数の電力設備から所定の負荷に向けて電力を伝送する送配電網と、
前記送配電網に設けられ、前記送配電網の潮流の方向に関する情報を取得する潮流情報取得装置と、
を備え、
前記潮流情報取得装置は、
前記送配電網の電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する電流測定部と、
前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部により測定した前記電線の前記電流と、前記電圧測定部により測定した前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める位相差取得部と、
を備える
送配電システム。
【請求項6】
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、非再生可能エネルギーにより発電する発電所、または変電所のうちいずれかにより構成される第1電力設備と、
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、再生可能エネルギーにより発電する第2電力設備と、
前記潮流の方向に関する情報に基づいて、前記複数の電力設備および前記潮流情報取得装置を制御する管理センタと、
を備え、
前記管理センタは、
前記第2電力設備により発電される電力が前記送配電網において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が発生していると判定したときに、前記第2電力設備からの電力供給を遮断するよう前記第2電力設備を制御する
請求項5に記載の送配電システム。
【請求項7】
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、非再生可能エネルギーにより発電する発電所、または変電所のうちいずれかにより構成される第1電力設備と、
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、再生可能エネルギーにより発電する第2電力設備と、
前記第2電力設備に接続され、前記第2電力設備からの電力を蓄える蓄電設備と、
前記潮流の方向に関する情報に基づいて、前記複数の電力設備、前記蓄電設備および前記潮流情報取得装置を制御する管理センタと、
を含み、
前記管理センタは、
前記第2電力設備により発電される電力が前記送配電網において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が発生していると判定したときに、前記第2電力設備から前記蓄電設備に充電するよう前記第2電力設備を制御する
請求項5に記載の送配電システム。
【請求項8】
電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、を準備する工程と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する工程と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する工程と、
前記電線の前記電流と、前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める工程と、
を備える
潮流情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潮流情報取得装置、送配電システム、および潮流情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出削減または電力供給のリスク分散などを目的として、再生可能エネルギーにより発電する分散型電源を取り入れた新しい送配電網の確立が望まれている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-093249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、小型の装置により潮流の方向に関する情報を安定的に取得することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する電流測定部と、
前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部により測定した前記電線の前記電流と、前記電圧測定部により測定した前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める位相差取得部と、
を備える
潮流情報取得装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、小型の装置により潮流の方向に関する情報を安定的に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る潮流情報取得装置を示す概略斜視図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る潮流情報取得装置を示す概略ブロック図である。
図3図3は、一対の測定端子を配置した電線の概略図である。
図4図4は、一対の測定端子の間における電線の電流および電圧を示す概略ベクトル図である。
図5図5は、本開示の一実施形態に係る送配電システムを示す概略図である。
図6図6は、本開示の一実施形態の潮流情報取得方法および送配電方法を示すフローチャートである。
図7図7は、順潮流を示す概略図である。
図8図8は、逆潮流を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
【0009】
上述のように、送配電網に多数の分散型電源を取り入れると、分散型電源からの電力供給が多くなり、分散型電源による発電電力が送配電網において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が生じるおそれがある。このような逆潮流が生じると、遮断器などの機器に対して過負荷がかかるおそれがある。
【0010】
そこで、発明者等は、送配電網を構成する電線において、電流および電圧を測定し、電流および電圧の位相差に基づいて、送配電網の潮流の方向に関する情報を取得する潮流情報取得装置の開発を試みた。
【0011】
ここで、電線の電流は、電線を囲むように配置されたカレントトランスを用いて測定可能である。一方で、電線の電圧は、例えば、結合コンデンサを用いて測定可能である。
【0012】
しかしながら、電線の電圧測定において、結合コンデンサは、電線に接続するとともに、アースに接続する必要があった。
【0013】
このため、結合コンデンサを電線とアースとに接続するための長尺な配線などが必要となり、潮流情報取得装置が大型化していた。大型の潮流情報取得装置は、所定の設置面積で陸上に設置する必要があった。
【0014】
さらに、結合コンデンサを用いた場合では、電線における測定点と、電線の電圧を測定する測定回路とが離れていた。このため、測定点と測定回路との離間距離に依存して、位相差の測定精度が低下する可能性があった。
【0015】
以下の本開示は、発明者等が見出した上記新規課題に基づくものである。
【0016】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0017】
[1]本開示の一態様に係る潮流情報取得装置は、
電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する電流測定部と、
前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部により測定した前記電線の前記電流と、前記電圧測定部により測定した前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める位相差取得部と、
を備える。
この構成によれば、小型の装置により潮流の方向に関する情報を安定的に取得することができる。
【0018】
[2]上記[1]に記載の潮流情報取得装置において、
前記電線に取り付けられる。
この構成によれば、測定端子と電圧測定部との離間距離に起因した位相差の測定精度の低下を抑制することができる。
【0019】
[3]上記[1]または[2]に記載の潮流情報取得装置において、
前記電線を囲むように配置され、前記電線に流れる前記電流に基づいて生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させる電源用カレントトランス部を備える。
この構成によれば、潮流情報取得装置に必要な電力を半恒久的に得ることができる。
【0020】
[4]上記[1]から[3]のいずれか1つに記載の潮流情報取得装置において、
少なくとも前記位相差取得部に接続され、前記位相差取得部が求めた前記位相差のデータを、無線で外部に送信する無線部を備える。
この構成によれば、電線から離れた位置に設けられた管理センタにおいて、潮流の方向に関する情報をリアルタイムで把握することができる。
【0021】
[5]本開示の他の態様に係る送配電システムは、
電力を供給する複数の電力設備と、
前記複数の電力設備に接続され、前記複数の電力設備から所定の負荷に向けて電力を伝送する送配電網と、
前記送配電網に設けられ、前記送配電網の潮流の方向に関する情報を取得する潮流情報取得装置と、
を備え、
前記潮流情報取得装置は、
前記送配電網の電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する電流測定部と、
前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部により測定した前記電線の前記電流と、前記電圧測定部により測定した前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める位相差取得部と、
を備える。
この構成によれば、小型の装置により潮流の方向に関する情報を安定的に取得することができる。
【0022】
[6]上記[5]に記載の潮流情報取得装置において、
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、非再生可能エネルギーにより発電する発電所、または変電所のうちいずれかにより構成される第1電力設備と、
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、再生可能エネルギーにより発電する第2電力設備と、
前記潮流の方向に関する情報に基づいて、前記複数の電力設備および前記潮流情報取得装置を制御する管理センタと、
を備え、
前記管理センタは、
前記第2電力設備により発電される電力が前記送配電網において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が発生していると判定したときに、前記第2電力設備からの電力供給を遮断するよう前記第2電力設備を制御する。
この構成によれば、潮流の方向を逆潮流から順潮流に安定的に変化させることができる。
【0023】
[7]上記[5]に記載の潮流情報取得装置において、
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、非再生可能エネルギーにより発電する発電所、または変電所のうちいずれかにより構成される第1電力設備と、
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、再生可能エネルギーにより発電する第2電力設備と、
前記第2電力設備に接続され、前記第2電力設備からの電力を蓄える蓄電設備と、
前記潮流の方向に関する情報に基づいて、前記複数の電力設備、前記蓄電設備および前記潮流情報取得装置を制御する管理センタと、
を含み、
前記管理センタは、
前記第2電力設備により発電される電力が前記送配電網において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が発生していると判定したときに、前記第2電力設備から前記蓄電設備に充電するよう前記第2電力設備を制御する。
この構成によれば、潮流の方向を逆潮流から順潮流に安定的に変化させることができる。
【0024】
[8]本開示の更に他の態様に係る潮流情報取得方法は、
電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、を準備する工程と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する工程と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する工程と、
前記電線の前記電流と、前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める工程と、
を備える。
この構成によれば、小型の装置により潮流の方向に関する情報を安定的に取得することができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
<本開示の一実施形態>
(1)潮流情報取得装置(送電設備物理情報測定装置)
図1および図2を参照し、本開示の一実施形態に係る潮流情報取得装置10について説明する。
【0027】
以下において、電線100の「軸方向」とは、電線100の中心軸に沿った方向のことをいい、場合によっては電線100の長手方向と言い換えることができる。
【0028】
図1および図2に示すように、本実施形態の潮流情報取得装置10は、例えば、後述の送配電網80を構成する電線100に取り付けられ、送配電網80の潮流の方向に関する情報を取得するよう構成されている。本実施形態の潮流情報取得装置10は、例えば、送電設備の物理情報をリアルタイムに取得するダイナミックラインレーティング(DLR)システムにおける送電設備物理量測定装置としても構成されている。
【0029】
具体的には、潮流情報取得装置10は、例えば、電流測定用カレントトランス部(電流測定用CT部)520と、電流測定部(電流測定用回路)540と、一対の測定端子610と、リード線620と、電圧測定部(電圧測定用回路)640と、位相差取得部(位相差演算回路)700と、電源用カレントトランス部(電源用CT部、発電用CT部)420と、電源部(電源用回路)440と、無線部(送受信部、通信部)800と、温度測定部(温度測定部)200と、収容部300と、クランプ(把持部)700と、を備えている。
【0030】
(電線)
本実施形態において、測定対象となる電線100は、例えば、送電用の架空送電線(ACSRなど)または配電用の電線として構成されている。
【0031】
(電流測定用カレントトランス部)
電流測定用CT部520は、例えば、電線100を囲むように環状に配置される。電流測定用CT部520は、例えば、電線100に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせるよう構成されている。
【0032】
(電流測定部)
電流測定部540は、例えば、電流測定用CT部520に接続され、該電流測定用CT部520が出力した誘導電流に基づいて、電線100に流れる電流を測定するよう構成されている。以下、電流測定部540が測定した電線100の電流に係る情報を「電流データ」という。
【0033】
(測定端子およびリード線)
一対の測定端子610は、例えば、電線100の軸方向に所定の間隔Lをあけて、電線100に接続されている。一対の測定端子610のうち、後述の発電所または変電所などの第1電力設備20に近い測定端子610を「第1測定端子611」とする。一方で、負荷90に近い測定端子610を「第2測定端子612」とする。
【0034】
第1測定端子611と第2測定端子612との間の間隔Lは、例えば、0.5m以上である。間隔Lを上述の範囲内とすることで、後述のように、第1測定端子611と第2測定端子612との間での電圧降下を安定的に測定することができる。
【0035】
一対の測定端子610のそれぞれと電圧測定部640とは、リード線620により接続されている。第1リード線621は、第1測定端子611と電圧測定部640とを接続している。第2リード線622は、第2測定端子612と電圧測定部640とを接続している。リード線620は、例えば、遮蔽対策および防水対策を施したものである。
【0036】
(電圧測定部)
電圧測定部640は、例えば、リード線620により一対の測定端子610に接続され、一対の測定端子610のそれぞれにおける電線100の電圧を測定するよう構成されている。さらに、電圧測定部640は、例えば、一対の測定端子610の間における電線100の電圧降下を測定するよう構成されている。以下、電圧測定部640が測定した電線100の電圧および電圧降下に係る情報を、それぞれ、「電圧データ」および「電圧降下データ」という。
【0037】
(位相差取得部)
位相差取得部700は、例えば、電流測定部540と電圧測定部640とに接続されている。位相差取得部700は、例えば、電流測定部540により測定した電線100の電流と、電圧測定部640により測定した電線100の電圧降下と、に基づいて、電線100の電流と電線100の電圧との間における位相差を求めるよう構成されている。以下、位相差取得部700が求めた、電線100の電流と電線100の電圧との間における位相差に係る情報を「位相差データ」という。
【0038】
位相差取得部700は、例えば、電線100の電流と電線100の電圧との間における位相差に基づいて、電線100に流れる潮流の方向を判定するよう構成されていてもよい。すなわち、位相差取得部700は、潮流判定部を兼ねていてもよい。以下、潮流方向の判定結果に係る情報を「潮流方向データ」という。
【0039】
位相差取得部700により位相差を取得する処理などについては、詳細を後述する。
【0040】
(電源用カレントトランス部)
電源用CT部420は、例えば、電線100を囲むように環状に配置される。電源用CT部420は、例えば、電線100に流れる電流に基づいて電線100の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させるように構成されている。
【0041】
(電源部)
電源部440は、例えば、電源用CT部420に接続され、該電源用CT部420で発生した電力を、潮流情報取得装置10の各部(例えば無線部800)に適した電力に変換して各部に供給するよう構成されている。具体的には、電源部440は、例えば、電源用CT部420で発生した交流電力を無線部800に適した直流電力に変換するよう構成されている。さらに、電源部440は、例えば、電源用CT部420で発生した電圧を各部に適した電圧に変圧するよう構成されている。
【0042】
(温度測定部)
温度測定部200は、例えば、電線100の温度を測定するよう構成されている。温度測定部200は、例えば、熱電対220を有している。熱電対220は、測温接点が電線100に接触するように取り付けられる。以下、温度測定部200が測定した電線100の温度に係る情報を「温度データ」という。
【0043】
(無線部)
無線部800は、例えば、少なくとも位相差取得部700に接続され、位相差取得部700が求めた位相差のデータを、無線で外部に送信するよう構成されている。
【0044】
本実施形態では、無線部800は、例えば、潮流情報取得装置10の上述の各部が取得した情報を無線で外部に送信するよう構成されている。
【0045】
具体的には、無線部800は、例えば、電流測定部540、電圧測定部640、位相差取得部700および温度測定部200に接続され、電線100の電流データ、電線100の電圧データ並びに電圧降下データ、位相差データ(並びに潮流方向データ)、および温度データなどの各種データを取得するよう構成されている。
【0046】
無線部800は、例えば、電源部440を介して電源用CT部420に接続され、電源部440から供給される電力により、上述の各種データを無線で外部に送信するよう構成されている。
【0047】
本実施形態では、無線部800は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)(不図示)を有している。無線部800が有するMCUは、例えば、各種データの送受信に係る所定のプログラムを実行するプロセッサと、プログラムおよび各種データを記憶するメモリと、送信周期の基準となる1つ以上のタイマと、上述の各部に接続するI/Oポートと、を有している。MCUを構成する各部は、全てひとつの集積回路に組み込まれている。なお、無線部800は、MCUが有するメモリとは別に、例えば、FROM(Frash Read-Only Memory)等の外部メモリを有していてもよい。
【0048】
無線部800は、例えば、アンテナ820を有し、アンテナ820を介して各種データを送受信するよう構成されている。
【0049】
(各部の収容態様および連結態様)
図1に示すように、収容部300は、例えば、電流測定用CT部520、電流測定部540、電圧測定部640と、位相差取得部700、電源用CT部420と、電源部440、無線部800とを、電線100の外側に収容している。ここでいう各部を「電線100の外側に収容している」とは、電線100の外周よりも径方向の外側の領域内に各部を収容していることを意味している。
【0050】
クランプ900は、例えば、収容部300に連結され、電線100を把持している。これにより、収容部300を電線100に固定することができる。
【0051】
なお、図1に示すように、収容部300は、例えば、2つに分けられていてもよい。この場合、クランプ900は、例えば、2つの収容部300の間に配置されていてもよい。
【0052】
(2)位相差取得部による位相差取得処理
図3および図4を参照し、位相差取得部700による位相差取得処理について説明する。
【0053】
図3に示すように、電線100において、後述の発電所または変電所などの第1電力設備20に近い位置に、第1測定端子611が接続されている。一方で、電線100において、負荷90に近い位置に、第2測定端子612が接続されている。
【0054】
第1測定端子611における電圧(相電圧)を「E1」とし、第2測定端子612における電圧(相電圧)を「E2」とする。第1測定端子611および第2測定端子612の間で電線100に流れる電流を「I」とする。
【0055】
第1測定端子611および第2測定端子612の間において、電線100は、例えば、抵抗Rと、リアクタンスXと、を有している。
【0056】
ここで、図4は、第2測定端子612における電圧E2を基準としたベクトル図を示している。
【0057】
図4に示すように、電線100の電流Iと、第2測定端子612における電圧E2とは、位相差(位相角)θでずれている。
【0058】
第1測定端子611および第2測定端子612の間において、抵抗Rに流れる電流Iの位相と、抵抗Rにかかる電圧降下成分IRとの位相とは、等しくなる。すなわち、抵抗Rにかかる電圧降下成分IRのベクトルは、電流Iのベクトルと平行となる。
【0059】
一方で、第1測定端子611および第2測定端子612の間において、リアクタンスXに流れる電流Iと、リアクタンスXにかかる電圧降下成分jIXとの位相差は、90°となる。すなわち、リアクタンスXにかかる電圧降下成分jIXのベクトルは、電流Iのベクトルに対して90°でずれることとなる。
【0060】
以上により、第1測定端子611における電圧E1(の大きさ)は、電圧E1と電圧E2との間の位相差が無視できるとしたときに、以下の式により求められる。
E1=E2+IRcosθ+IXsinθ
【0061】
したがって、第1測定端子611および第2測定端子612の間における電圧降下E1-E2は、以下の式(1)により求められる。
E1-E2=IRcosθ+IXsinθ ・・・(1)
【0062】
上述の式(1)により、位相差取得部700では、電流測定部540により測定した電線100の電流Iと、電圧測定部640により測定した電線100の電圧降下E1-E2と、に基づいて、電線100の電流Iと電線100の電圧(E2)との間における位相差θを求めることができる。
【0063】
電線100の電流Iと電線100の電圧(E2)との間における位相差θは、順潮流の場合と、逆潮流の場合と、で変化する。順潮流の場合における位相差θの範囲と、逆潮流の場合における位相差θの範囲とは、例えば、送配電網80などの状況に依存し、予めシミュレーションを行うなどして特定される。なお、順潮流の場合における位相差θの範囲は、特に限定されないが、例えば、-70°以上110°以下であり、或いは-90°以上90°以下であってもよい。
【0064】
例えば、電線100の電流Iと電線100の電圧(E2)との間における位相差θが、予め特定された所定の範囲内であるときに、電線100に流れる潮流の方向を順潮流と判定する。一方で、例えば、位相差θが、予め特定された所定の範囲外であるときに、電線100に流れる潮流の方向を逆潮流と判定する。当該潮流の方向の判定に関する処理は、例えば、位相差取得部700により実施されてもよいし、或いは、後述の管理センタ60により実施されてもよい。
【0065】
(3)送配電システム
図5を参照し、本実施形態に係る送配電システム1について説明する。
【0066】
図5に示すように、本実施形態に係る送配電システム1は、例えば、電力を供給する複数の電力設備(第1電力設備20および第2電力設備40)と、送配電網80と、上述の潮流情報取得装置10と、管理センタ60と、を備えている。
【0067】
(電力設備)
第1電力設備20は、例えば、複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、非再生可能エネルギーにより発電する発電所22、または変電所24のうちいずれかにより構成されている。第1電力設備20は、集中型電源とも呼ばれる。
【0068】
具体的には、第1電力設備20としての発電所22は、例えば、火力発電所、原子力発電所などである。第1電力設備20としての変電所24は、例えば、基幹系変電所、配電用変電所などである。
【0069】
第2電力設備40は、例えば、複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、再生可能エネルギーにより発電するよう構成されている。第2電力設備40は、分散型電源とも呼ばれる。
【0070】
具体的には、第2電力設備40は、例えば、太陽光発電所42、陸上または洋上の風力発電所43、波力発電所(不図示)などである。第2電力設備40は、例えば、太陽光発電付住宅44、太陽光発電付ビル45などであってもよい。
【0071】
第2電力設備40には、例えば、後述のパワーコンディショナ41が接続されている。パワーコンディショナ41は、例えば、第2電力設備40から得られた直流の電流を送配電網80に応じて交流に変換したり、第2電力設備40から得られた電圧を送配電網80に応じた電圧に変換したりするよう構成されている。
【0072】
さらに、第2電力設備40には、例えば、パワーコンディショナ41を介して、蓄電設備48が接続されていてもよい。蓄電設備48は、第2電力設備40からの電力を蓄えるよう構成されている。具体的には、蓄電設備48は、例えば、レドックスフロー電池などにより構成されている。
【0073】
(送配電網)
送配電網80は、例えば、複数の電力設備(第1電力設備20および第2電力設備40)に接続され、複数の電力設備から所定の負荷90に向けて電力を伝送するよう構成されている。
【0074】
送配電網80は、例えば、送電網82と、配電網84と、を有している。
【0075】
送電網82には、電線100としての架空送電線により、第1電力設備20としての発電所22または変電所24、第2電力設備40としての太陽光発電所42または風力発電所43、および所定の負荷90としての工場または住宅などが接続されている。
【0076】
送電網82には、第1電力設備20としての変電所24を介して、配電網84に接続されている。
【0077】
配電網84には、上述の第1電力設備20としての変電所24、第2電力設備40としての太陽光発電付住宅44または太陽光発電付ビル45、および所定の負荷90としての住宅またはビルなどが接続されている。
【0078】
(潮流情報取得装置)
潮流情報取得装置10は、例えば、上述の送配電網80に設けられ、送配電網80の潮流の方向に関する情報を取得するよう、上述した構成を有している。潮流情報取得装置10は、送配電網80に複数設けられている。それぞれの潮流情報取得装置10は、例えば、第1電力設備20と第2電力設備40との間に配置されている。
【0079】
(管理センタ)
管理センタ60は、例えば、複数の電力設備および潮流情報取得装置10に接続され、潮流の方向に関する情報に基づいて、複数の電力設備および潮流情報取得装置10を制御するよう構成されている。具体的には、管理センタ60は、例えば、第1電力設備20または第2電力設備40を管理する電力会社などである。
【0080】
管理センタ60と潮流情報取得装置10との接続は、上述のように無線である。一方で、管理センタ60と複数の電力設備との接続は、有線または無線のいずれであってもよい。
【0081】
管理センタ60は、例えば、コンピュータを有している。管理センタ60を構成するコンピュータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、記憶装置と、I/Oポートと、を有している。RAM、記憶装置およびI/Oポートは、CPUとデータ交換可能に構成されている。I/Oポートは、例えば、送配電システム1の各部に通信可能な通信部に接続されている。
【0082】
記憶装置は、例えば、潮流の方向に基づく送配電プログラム、潮流情報取得装置10から得られた各種データなどを記憶するよう構成されている。
【0083】
RAMは、CPUによって記憶装置から読み出されるプログラムまたはデータ等が一時的に保持されるよう構成されている。
【0084】
CPUは、記憶装置に格納された所定のプログラムを実行することで、例えば、複数の電力設備および潮流情報取得装置10を制御するよう構成されている。複数の電力設備および潮流情報取得装置10を制御する送配電方法については、詳細を後述する。
【0085】
上述の管理センタ60の制御を実現するための所定プログラムは、例えば、コンピュータにインストールして用いられる。プログラムは、例えば、そのインストールに先立ち、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。或いは、プログラムは、例えば、外部からの通信を通じて当該コンピュータへ提供されるものであってもよい。
【0086】
(4)潮流情報取得方法および送配電方法
図6から図8を参照し、本実施形態に係る潮流情報取得方法および送配電方法について説明する。
【0087】
図6に示すように、本実施形態の送配電方法は、例えば、準備工程S10と、潮流情報取得工程S20と、電力制御工程S50と、終了判定工程S60と、を有している。
【0088】
なお、潮流情報取得工程S20は、本実施形態の潮流取得方法を構成している。当該潮流情報取得工程S20における制御は、潮流情報取得装置10により実施される。電力制御工程S50および終了判定工程S60における制御は、管理センタ60により実施される。
【0089】
(S10:準備工程)
まず、送配電網80に潮流情報取得装置10を配置する。具体的には、第1電力設備20と第2電力設備40との間における電線100に、潮流情報取得装置10を取り付ける。
【0090】
(S20:潮流情報取得工程)
準備工程S10が完了したら、潮流情報取得装置10を用い、送配電網80の潮流の方向に関する情報を取得する。
【0091】
本実施形態の潮流情報取得工程S20は、例えば、電流電圧測定工程S22と、位相差取得工程S24と、潮流判定工程S26と、を有している。
【0092】
(S22:電流電圧測定工程)
潮流情報取得装置10において、電線100の電流、電圧および電圧降下を測定する。
【0093】
具体的には、電流測定部540において、電流測定用CT部520が出力した誘導電流に基づいて、電線100の電流Iを測定する。
【0094】
一方で、電圧測定部640において、一対の測定端子610のそれぞれにおける電線100の電圧E1および電圧E2を測定する。さらに、電圧測定部640において、一対の測定端子610の間における電線100の電圧降下E1-E2を測定する。
【0095】
電線100の電流I、電圧E1、電圧E2および電圧降下E1-E2を測定したら、電流データ、電圧データおよび電圧降下データを、無線部800により管理センタ60に送信する。これらのデータの送信は、リアルタイムで継続的に実施される。
【0096】
(S24:位相差取得工程)
電流電圧測定工程S22が完了したら、位相差取得部700により、電線100の電流Iと、電線の前記電圧降下E1-E2と、に基づいて、電線100の電流Iと電線100の電圧E2との間における位相差θを求める。
【0097】
位相差θを求めたら、位相差データを、無線部800により管理センタ60に送信する。位相差データの送信は、リアルタイムで継続的に実施される。
【0098】
(S26:潮流判定工程)
位相差取得工程S24が完了したら、例えば、位相差取得部700により、電線100の電流Iと電線100の電圧E2との間における位相差θに基づいて、電線100に流れる潮流の方向を判定する。
【0099】
このとき、例えば、電線100の電流Iと電線100の電圧E2との間における位相差θが、予め特定された所定の範囲外か否か、すなわち、第2電力設備40から第1電力設備20に向かう逆潮流が生じているか否かを判定する。
【0100】
(i)順潮流の場合
位相差θが所定の範囲内である場合には、例えば、図7に示すように、第1電力設備20から所定の負荷90に向かう順潮流、および第2電力設備40から所定の負荷90に向かう順潮流が生じている(すなわち、逆潮流が生じていない)と、位相差取得部700により判定する。潮流の方向を判定したら、潮流方向データを、無線部800により管理センタ60に送信する。潮流方向データの送信は、リアルタイムで継続的に実施される。
【0101】
(S60:終了判定工程)
上述のように、順潮流が生じていると判定した場合には(S26でNo)、管理センタ60は、送配電網80における電力の伝送を終了するか否かを判定する。
【0102】
特段の問題が無く、電力の伝送を継続する場合には(S60でNo)、上述の潮流情報取得工程S20を継続する。
【0103】
(ii)逆潮流の場合
一方で、位相差θが所定の範囲外である場合には、例えば、図8に示すように、第2電力設備40により発電される電力が送配電網80において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が生じていると、位相差取得部700により判定する。上述と同様に、潮流方向データを、無線部800により管理センタ60に送信する。
【0104】
(S50:電力制御工程)
上述のように、逆潮流が生じていると判定した場合には(S26でYes)、管理センタ60は、潮流の方向に関する情報に基づいて、複数の電力設備、蓄電設備48および潮流情報取得装置10を制御する。
【0105】
このとき、本実施形態では、管理センタ60は、例えば、第2電力設備40からの電力供給を遮断するよう、第2電力設備40を制御する。なお、第2電力設備40において電力供給を直接的に遮断してもよいし、或いは、第2電力設備40に接続されたパワーコンディショナ41において電力供給を遮断してもよい。
【0106】
或いは、このとき、本実施形態では、管理センタ60は、例えば、第2電力設備40から蓄電設備48に充電するよう、第2電力設備40を制御する。なお、第2電力設備40において蓄電設備48への充電を直接的に制御してもよいし、或いは、第2電力設備40に接続されたパワーコンディショナ41において蓄電設備48への充電を制御してもよい。
【0107】
このような制御により、潮流の方向を逆潮流から順潮流に変化させることができる。すなわち、送電網82内で生じる逆潮流、配電網84内で生じる逆潮流、および、配電網84から送電網82に流れる逆潮流を、それぞれ順潮流に変化させることができる。これにより、送電網82および配電網84のそれぞれにおいて、電力の地産地消を実現することが可能となる。
【0108】
(S60:終了判定工程)
電力制御工程S50が完了したら、管理センタ60は、送配電網80に流れ込む電力の伝送を終了するか否かを判定する。
【0109】
以上のようにして、本実施形態に係る潮流情報取得方法および送配電方法が実施される。
【0110】
(5)本実施形態のまとめ
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0111】
(a)本実施形態では、電圧測定部640は、一対の測定端子610の間における電線100の電圧降下を測定する。位相差取得部700は、電流測定部540により測定した電線100の電流Iと、電圧測定部640により測定した電線100の電圧降下E1-E2と、に基づいて、電線100の電流Iと電線100の電圧E2との間における位相差θを求める。当該位相差θに基づいて、送配電網80における潮流の方向を判定することができる。
【0112】
上述のように、潮流の方向を判定することで、大規模な発電所22などの第1電力設備20に向かう逆潮流の発生を検知することができる。これにより、潮流の方向を逆潮流から順潮流に変化させる対策を即座に講じることができる。すなわち、本実施形態の潮流情報取得を行っていなかった従来の方法と比較して、潮流の方向の制御を簡略化することができる。その結果、大規模な発電所22などの第1電力設備20および関連機器への過負荷を安定的に抑制することが可能となる。
【0113】
(b)本実施形態では、電線100の電流Iと電線100の電圧E2との間における位相差θを求めるための電線100の電圧測定を、一対の測定端子610を電線100に取り付けるだけで実施することができる。言い換えれば、アースへの接続が必要な結合コンデンサを用いる必要がない。これにより、高電圧の電線100に対して、潮流情報取得装置10全体を直接取り付けることができる。
【0114】
潮流情報取得装置10を電線100に直接取り付けることで、一対の測定端子610の間におけるリード線620の長さを、電圧降下E1-E2を測定するための必要最小限の長さとし、すなわち、結合コンデンサの接地に必要とされる配線の長さよりも短くすることができる。これにより、潮流情報取得装置10を小型化することができる。
【0115】
さらに、電線100に直接取り付けられた潮流情報取得装置10において、電線100に近い位置で電圧降下E1-E2を測定することで、測定端子610と電圧測定部640との離間距離に起因した位相差θの測定精度の低下を抑制することができる。
【0116】
このように、本実施形態によれば、小型の装置により潮流の方向に関する情報を安定的に取得することが可能となる。
【0117】
(c)本実施形態では、潮流情報取得装置10は、各部に電力を供給する電源として、電線100の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させる電源用CT部420を有している。これにより、潮流情報取得装置10に必要な電力を半恒久的に得ることができる。言い換えれば、電池を不使用とし、電池交換を不要とすることができる。その結果、潮流情報取得装置10のメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【0118】
(d)本実施形態では、潮流情報取得装置10は、少なくとも位相差取得部700に接続され、位相差取得部700が求めた位相差θのデータを、無線で外部に送信する無線部800を有している。これにより、潮流の方向に関する情報として、位相差θのデータを無線で管理センタ60に送信することができる。すなわち、電線100から離れた位置に設けられた管理センタ60において、潮流の方向に関する情報をリアルタイムで把握することができる。その結果、再生可能エネルギーにより発電する第2電力設備40の発電量などによって変動しうる潮流の方向に応じて、送配電システム1を安定的に運用することが可能となる。
【0119】
(e)本実施形態では、管理センタ60は、第2電力設備40により発電される電力が送配電網80において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が発生していると判定したときに、第2電力設備40からの電力供給を遮断するよう第2電力設備40を制御する。これにより、第2電力設備40からの過剰な電力供給に起因した逆潮流を確実に回避することができる。すなわち、潮流の方向を逆潮流から順潮流に安定的に変化させることができる。その結果、大規模な発電所22などの第1電力設備20および関連機器への過負荷を安定的に抑制することが可能となる。
【0120】
(f)本実施形態では、管理センタ60は、第2電力設備40により発電される電力が送配電網80において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が発生していると判定したときに、第2電力設備40から蓄電設備48に充電するよう第2電力設備40を制御する。この方法によっても、潮流の方向を逆潮流から順潮流に安定的に変化させることができる。
【0121】
また、逆潮流が生じるほどに第2電力設備40からの過剰な電力が生じても、その電力を無駄にせずに蓄電設備48に充電することができる。蓄電設備48に充電された電力は、その後、電力需要が高まったときなどに利用することができる。その結果、電力の需要と供給とのバランスを安定的に維持することができる。すなわち、デマンドレスポンスに大きく貢献することが可能となる。
【0122】
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0123】
上述の実施形態では、潮流情報取得装置10の位相差取得部700が潮流方向の判定も行う場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。例えば、管理センタ60が、潮流情報取得装置10から送信された位相差データに基づいて、潮流の方向を判定してもよい。
【0124】
上述の実施形態では、送配電システム1が1つの管理センタ60を有する場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。送配電システム1は、複数の管理センタ60を有していてもよい。例えば、管理センタ60は、送電網82と配電網84とで別々に設けられていてもよい。
【0125】
上述の実施形態では、潮流情報取得装置10が各種データを管理センタ60に直接送信する場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。例えば、複数の潮流情報取得装置10がバケツリレー(マルチホッピング)方式で各種データを伝送するよう構成されていてもよい。
【0126】
<付記>
以下、本開示の態様を付記する。
【0127】
(付記1)
電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する電流測定部と、
前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部により測定した前記電線の前記電流と、前記電圧測定部により測定した前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める位相差取得部と、
を備える
潮流情報取得装置。
【0128】
(付記2)
前記電線に取り付けられる
付記1に記載の潮流情報取得装置。
【0129】
(付記3)
前記電線を囲むように配置され、前記電線に流れる前記電流に基づいて生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させる電源用カレントトランス部を備える
付記1または付記2に記載の潮流情報取得装置。
【0130】
(付記4)
少なくとも前記位相差取得部に接続され、前記位相差取得部が求めた前記位相差のデータを、無線で外部に送信する無線部を備える
付記1から付記3のいずれか1つに記載の潮流情報取得装置。
【0131】
(付記5)
前記位相差に基づいて、前記電線に流れる潮流の方向を判定する潮流判定部を備える
付記1から付記4のいずれか1つに記載の潮流情報取得装置。
【0132】
(付記6)
電力を供給する複数の電力設備と、
前記複数の電力設備に接続され、前記複数の電力設備から所定の負荷に向けて電力を伝送する送配電網と、
前記送配電網に設けられ、前記送配電網の潮流の方向に関する情報を取得する潮流情報取得装置と、
を備え、
前記潮流情報取得装置は、
前記送配電網の電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する電流測定部と、
前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する電圧測定部と、
前記電流測定部により測定した前記電線の前記電流と、前記電圧測定部により測定した前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める位相差取得部と、
を備える
送配電システム。
【0133】
(付記7)
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、非再生可能エネルギーにより発電する発電所、または変電所のうちいずれかにより構成される第1電力設備と、
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、再生可能エネルギーにより発電する第2電力設備と、
前記潮流の方向に関する情報に基づいて、前記複数の電力設備および前記潮流情報取得装置を制御する管理センタと、
を備え、
前記管理センタは、
前記第2電力設備により発電される電力が前記送配電網において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が発生していると判定したときに、前記第2電力設備からの電力供給を遮断するよう前記第2電力設備を制御する
付記6に記載の送配電システム。
【0134】
(付記8)
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、非再生可能エネルギーにより発電する発電所、または変電所のうちいずれかにより構成される第1電力設備と、
前記複数の電力設備のうちの少なくとも1つとして、再生可能エネルギーにより発電する第2電力設備と、
前記第2電力設備に接続され、前記第2電力設備からの電力を蓄える蓄電設備と、
前記潮流の方向に関する情報に基づいて、前記複数の電力設備、前記蓄電設備および前記潮流情報取得装置を制御する管理センタと、
を含み、
前記管理センタは、
前記第2電力設備により発電される電力が前記送配電網において必要とされる需要電力以上となる逆潮流が発生していると判定したときに、前記第2電力設備から前記蓄電設備に充電するよう前記第2電力設備を制御する
付記6に記載の送配電システム。
【0135】
(付記9)
電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、を準備する工程と、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する工程と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する工程と、
前記電線の前記電流と、前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める工程と、
を備える
潮流情報取得方法。
【0136】
(付記10)
複数の電力設備から所定の負荷に向けて電力を伝送する送配電網に、潮流情報取得装置を配置する工程と、
前記潮流情報取得装置を用い、前記送配電網の潮流の方向に関する情報を取得する工程と、
を備え、
前記潮流情報取得装置を配置する工程は、
前記送配電網の電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に応じた誘導電流を生じさせる電流測定用カレントトランス部と、前記電線の軸方向に所定の間隔をあけて前記電線に接続された一対の測定端子と、を準備する工程を有し、
前記潮流の方向に関する情報を取得する工程は、
前記電流測定用カレントトランス部が出力した前記誘導電流に基づいて前記電線の前記電流を測定する工程と、
前記一対の測定端子の間における前記電線の電圧降下を測定する工程と、
前記電線の前記電流と、前記電線の前記電圧降下と、に基づいて、前記電線の前記電流と前記電線の電圧との間における位相差を求める工程と、
を有する
送配電方法。
【符号の説明】
【0137】
1 送配電システム
10 潮流情報取得装置
20 第1電力設備
22 発電所
24 変電所
40 第2電力設備
41 パワーコンディショナ
42 太陽光発電所
43 風力発電所
44 太陽光発電付住宅
45 太陽光発電付ビル
48 蓄電設備
60 管理センタ
80 送配電網
82 送電網
84 配電網
90 負荷
100 電線
200 温度測定部
220 熱電対
300 収容部
420 電源用CT部
440 電源部
520 電流測定用CT部
540 電流測定部
610 測定端子
611 第1測定端子
612 第2測定端子
620 リード線
621 第1リード線
622 第2リード線
640 電圧測定部
700 位相差取得部
800 無線部
820 アンテナ
900 クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8