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特開2024-152129温度測定装置および送電設備物理量測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152129
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】温度測定装置および送電設備物理量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20210101AFI20241018BHJP
【FI】
G01K1/14 E
G01K1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066123
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】梅村 侑史
(72)【発明者】
【氏名】岩間 成美
(72)【発明者】
【氏名】長野 宏治
(72)【発明者】
【氏名】酒井 治
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CE01
2F056CL07
(57)【要約】
【課題】高い温度範囲においても、電線の温度を安定的に測定する。
【解決手段】温度測定装置は、複数の金属素線を最外周に有する電線の温度を測定する温度測定装置であって、測温接点を有する熱電対と、熱電対と電線との間に介在し、電線に直接接するように配置される金属製のプレート部材と、を備え、プレート部材は、少なくとも熱電対の測温接点が配置される測温領域を有し、測温領域は、複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属素線を最外周に有する電線の温度を測定する温度測定装置であって、
測温接点を有する熱電対と、
前記熱電対と前記電線との間に介在し、前記電線に直接接するように配置される金属製のプレート部材と、
を備え、
前記プレート部材は、少なくとも前記熱電対の前記測温接点が配置される測温領域を有し、
前記測温領域は、前記複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有している
温度測定装置。
【請求項2】
前記測温領域は、
前記複数の金属素線のそれぞれの外形にならって凸の円弧状に湾曲した複数の凸部と、
前記複数の凸部の間で前記電線の中心軸に向けて凹んだ複数の凹部と、
を有し、
前記熱電対の前記測温接点は、前記測温領域における前記複数の凸部のうちの1つの頂部上に配置されている
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記測温領域は、
前記複数の金属素線のそれぞれの外形にならって凸の円弧状に湾曲した複数の凸部と、
前記複数の凸部の間で前記電線の中心軸に向けて凹んだ複数の凹部と、
を有し、
前記熱電対の前記測温接点は、前記測温領域における前記複数の凹部のうちの1つの上に配置されている
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記プレート部材を前記電線に取り付けたときの前記電線の軸方向における前記プレート部材の長さは、10mm以上50mm以下である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度測定装置。
【請求項5】
複数の金属素線を最外周に有する電線の温度を測定する温度測定部と、
前記電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に基づいて生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させる電源用カレントトランス部と、
前記温度測定部および前記電源用カレントトランス部に接続され、前記温度測定部が測定した前記電線の温度データを、前記電源用カレントトランス部からの電力により無線で外部に送信する無線部と、
を備え、
前記温度測定部は、
測温接点を有する熱電対と、
前記熱電対と前記電線との間に介在し、前記電線に直接接するように配置される金属製のプレート部材と、
を備え、
前記プレート部材は、少なくとも前記熱電対の前記測温接点が配置される測温領域を有し、
前記測温領域は、前記複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有している
送電設備物理量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度測定装置および送電設備物理量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の温度を測定するため、電線に対して温度測定部が取り付けられることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/021088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、高い温度範囲においても、電線の温度を安定的に測定することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
複数の金属素線を最外周に有する電線の温度を測定する温度測定装置であって、
測温接点を有する熱電対と、
前記熱電対と前記電線との間に介在し、前記電線に直接接するように配置される金属製のプレート部材と、
を備え、
前記プレート部材は、少なくとも前記熱電対の前記測温接点が配置される測温領域を有し、
前記測温領域は、前記複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有している
温度測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、高い温度範囲においても、電線の温度を安定的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る温度測定部を示す概略斜視図である。
図2図2は、電力ケーブルの軸方向に沿った温度測定部の概略断面図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る温度測定部の、電力ケーブルの軸方向に直交する概略断面図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る送電設備物理量測定装置を示す概略斜視図である。
図5図5は、本開示の一実施形態に係る送電設備物理量測定装置を示すブロック図である。
図6図6は、本開示の一実施形態の変形例に係る温度測定部の、電力ケーブルの軸方向に直交する概略断面図である。
図7図7は、比較例に係る温度測定部の、電力ケーブルの軸方向に直交する概略断面図である。
図8図8は、電線の基準温度に対する、各温度測定部による測定温度と基準温度との差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
【0009】
発明者等は、温度測定部において熱電対を用いることを検討した。
【0010】
図7を参照し、発明者等が検討した比較例の温度測定部920について説明する。図7に示すように、比較例の温度測定部920は、例えば、熱電対220と、プレート部材924と、樹脂層923と、カバー部材925と、を有している。
【0011】
プレート部材924は、測温接点JPを含む熱電対220の少なくとも一部を支持している。樹脂層923は、熱電対220の測温接点JPを覆っている。カバー部材925は、樹脂層230で覆われた測温接点JPをプレート部材924とともに挟持している。
【0012】
発明者等は、上述のような温度測定部920を用いた場合に、以下の新規課題が生じることを見出した。
【0013】
(取付位置に依存した温度低下)
比較例では、プレート部材924は、電線100における複数の金属素線140のそれぞれの外周に接する外接円に沿って円弧状に湾曲していた。
【0014】
比較例では、電線100に対する温度測定部920の取り付け位置によっては、熱電対220の測温接点JPが配置されたプレート部材924と電線100との間に、空隙Gが形成されることがあった。
【0015】
プレート部材924と電線100との間に空隙Gが形成された場合では、当該空隙Gを風が通り抜け、プレート部材924が冷却されていた。このため、電線100の温度よりもプレート部材924付近の温度が低下していた。
【0016】
特に、大容量の送電を行うTACSR(鋼心耐熱アルミ合金より線)などの電線100では、電線100の温度が高くなる。このため、上述のように、プレート部材924付近の温度の低下が生じた場合では、電線100の温度と、プレート部材924付近の温度との差が大きくなっていた。その結果、温度測定部920の温度測定精度が低下していた。
【0017】
(プレート部材の大きさに依存した温度低下)
比較例では、円弧状のプレート部材924を有する温度測定部920を、帯状の結束部により、電線100に固縛していた。温度測定部920の位置がずれないようにするため、結束部は、所定の間隔をあけて複数箇所に設けていた。このため、プレート部材924の長さが長くなっていた。具体的には、プレート部材924の長さは60mm程度であった。
【0018】
比較例では、プレート部材924の長さが長いため、温度測定部920の熱容量が大きくなっていた。このため、温度測定部920が電線100の熱を奪うため、温度測定部920を配置した箇所の電線100の温度が、実際の電線100の温度よりも低下していた。このような理由によっても、温度測定部920の温度測定精度が低下していた。
【0019】
以下の本開示は、発明者等が見出した上記新規課題に基づくものである。
【0020】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0021】
[1]本開示の一態様に係る温度測定装置は、
複数の金属素線を最外周に有する電線の温度を測定する温度測定装置であって、
測温接点を有する熱電対と、
前記熱電対と前記電線との間に介在し、前記電線に直接接するように配置される金属製のプレート部材と、
を備え、
前記プレート部材は、少なくとも前記熱電対の前記測温接点が配置される測温領域を有し、
前記測温領域は、前記複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有している。
この構成によれば、高い温度範囲においても、電線の温度を安定的に測定することができる。
【0022】
[2]上記[1]に記載の温度測定装置において、
前記測温領域は、
前記複数の金属素線のそれぞれの外形にならって凸の円弧状に湾曲した複数の凸部と、
前記複数の凸部の間で前記電線の中心軸に向けて凹んだ複数の凹部と、
を有し、
前記熱電対の前記測温接点は、前記測温領域における前記複数の凸部のうちの1つの頂部上に配置されている。
この構成によれば、温度測定精度を向上させることが可能となる。
【0023】
[3]上記[1]に記載の温度測定装置において、
前記測温領域は、
前記複数の金属素線のそれぞれの外形にならって凸の円弧状に湾曲した複数の凸部と、
前記複数の凸部の間で前記電線の中心軸に向けて凹んだ複数の凹部と、
を有し、
前記熱電対の前記測温接点は、前記測温領域における前記複数の凹部のうちの1つの上に配置されている。
この構成によれば、温度測定装置を容易に組み立てることができる。
【0024】
[4]上記[1]から[3]のいずれか1つに記載の温度測定装置において、
前記プレート部材を前記電線に取り付けたときの前記電線の軸方向における前記プレート部材の長さは、10mm以上50mm以下である。
この構成によれば、プレート部材の熱容量を小さくすることができる。
【0025】
[5]本開示の他の態様に係る送電設備物理量測定装置は、
複数の金属素線を最外周に有する電線の温度を測定する温度測定部と、
前記電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に基づいて生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させる電源用カレントトランス部と、
前記温度測定部および前記電源用カレントトランス部に接続され、前記温度測定部が測定した前記電線の温度データを、前記電源用カレントトランス部からの電力により無線で外部に送信する無線部と、
を備え、
前記温度測定部は、
測温接点を有する熱電対と、
前記熱電対と前記電線との間に介在し、前記電線に直接接するように配置される金属製のプレート部材と、
を備え、
前記プレート部材は、少なくとも前記熱電対の前記測温接点が配置される測温領域を有し、
前記測温領域は、前記複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有している。
この構成によれば、高い温度範囲においても、電線の温度を安定的に測定することができる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
<本開示の一実施形態>
(1)温度測定部(温度測定装置)
図1から図3を参照し、本開示の一実施形態に係る温度測定部200について説明する。なお、図1から図3は、鉛直方向において実際の取り付け状態と反対の状態を示している。図2において、電線100の断面構造を省略している。図2において、熱電対220は断面ではなく側面図を示している。図3は、図2のA-A’線断面図に相当する。
【0028】
以下において、電線100または熱電対220の「軸方向」とは、電線100または熱電対220の中心軸に沿った方向のことをいい、場合によっては電線100または熱電対220の長手方向と言い換えることができる。温度測定部200は「温度測定装置」と言い換えることができる。
【0029】
図1から図3に示すように、本実施形態の温度測定部200は、例えば、電線100の温度を測定するよう構成されている。具体的には、温度測定部200は、例えば、熱電対220と、プレート部材240と、樹脂層230と、第1カバー部材250と、第2カバー部材260と、結束部280と、を備えている。
【0030】
(電線)
本実施形態において、測定対象となる電線100は、例えば、いわゆる架空送電線として構成されている。すなわち、電線100は、例えば、複数の金属素線140を最外層に有している。
【0031】
具体的には、電線100は、例えば、鋼心アルミ撚線(ACSR)である。本実施形態では、電線100は、例えば、TACSR(鋼心耐熱アルミ合金より線)であってもよい。
【0032】
電線100は、例えば、中心部(不図示)と、撚線層(符号不図示)と、を有している。中心部は、架線時の張力を負担するよう構成されている。中心部を構成する素線は、例えば、アルミ覆鋼線(AC線)である。撚線層は、中心部の外周を覆うように設けられ、送電時の電流を流す導体として構成されている。撚線層には、複数の金属素線140が撚り合わせられている。撚線層を構成する金属素線140は、例えば、アルミニウム(Al)またはAl合金を含んでいる。本実施形態では、金属素線140は、例えば、耐熱アルミ合金線(TAL)であってもよい。
【0033】
(熱電対)
図1から図3に示すように、熱電対220は、例えば、いわゆる被覆熱電対として構成されている。具体的には、熱電対220は、例えば、一対の熱電対素線222と、絶縁層224と、シールド部(遮蔽層)226と、を有している。熱電対220は、例えば、熱電対素線222の軸方向に先端から反対側に向けて段階的に剥がされている。
【0034】
一対の熱電対素線222は、例えば、互いに異なる金属材料を含んでいる。具体的には、熱電対220は、例えば、K熱電対として構成されている。すなわち、一対の熱電対素線222のうち、+脚の熱電対素線222は、クロム(Cr)を10%含むニッケル(Ni)-Cr合金(クロメル)を含有し、-脚の熱電対素線222は、Alおよびマンガン(Mn)を含むNi合金(アルメル)を含有している。このような構成により、測定温度範囲を、-270℃以上1372℃以下とすることができる。これにより、最高使用温度が230℃である特別耐熱アルミ合金線(XTAl)などのような金属素線140を有する電線100であっても、温度を精度よく測定することが可能となる。
【0035】
一対の熱電対素線222の先端同士は、例えば、溶接により、互いに接続(接合)されている。互いに接続された先端が、いわゆる測温接点JPとなる。熱電対220において測温接点JPと反対の端部には、例えば、温度補償回路を有する計測器(不図示)が接続される。一対の熱電対素線222の間に生じた熱起電力を計測器により測定することで、測温接点における温度を測定(算出)することができる。
【0036】
絶縁層224は、例えば、絶縁材料(絶縁樹脂)を含み、一対の熱電対素線222の外周を覆っている。本実施形態では、絶縁層224は、例えば、一対の熱電対素線222のそれぞれの外周を覆っている。
【0037】
ここで、熱電対220の測温接点JPから所定長さに亘って、上述の一対の熱電対素線222が絶縁層224から露出している。以下、当該部分を「露出部」ともいう。本実施形態では、後述するように、一対の熱電対素線222の測温接点JPの周辺における態様が、温度測定精度の向上および電食の抑制の観点から重要となる。
【0038】
シールド部226は、例えば、絶縁層224の外周を覆う編組線を含んでいる。本実施形態では、シールド部226は、例えば、絶縁層224が後述のプレート部材240よりも外側に延在した部分を覆っている。このような構成により、一対の熱電対素線222をシールド部226により遮蔽することができる。これにより、電線100に流れる電流に基づいて電磁界が発生したときに、一対の熱電対素線222の熱起電力に対するノイズの発生を抑制することができる。その結果、温度測定精度を向上させることができる。
【0039】
(プレート部材)
プレート部材240は、例えば、金属製の板状部材として構成されている。プレート部材240は、例えば、電線100と熱電対220との間に介在し、電線100に直接接するように配置される。また、プレート部材240は、例えば、測温接点JPを含む熱電対220の少なくとも一部を支持している。
【0040】
このような構成により、電線100の熱を、プレート部材240を介して熱電対220に伝達させることができる。さらに、プレート部材240を薄い板状とすることで、被測定物としての電線100から奪う熱を最小限にとどめ、電線100の温度を精度よく測定することができる。
【0041】
本実施形態では、プレート部材240の腐食電位は、例えば、一対の熱電対素線222のそれぞれの腐食電位よりも電線100の金属素線140の腐食電位に近い。これにより、直接接触する電線100とプレート部材240との腐食電位差を小さくすることができる。その結果、電線100またはプレート部材240における電食の発生を抑制することができる。
【0042】
具体的には、プレート部材240の腐食電位は、例えば、-1.0以上-0.2未満であり、或いは-1.0以上-0.4以下であってもよく、或いは-1.0以上-0.6以下(V vs.SCE)であってもよい。
【0043】
本実施形態では、プレート部材240は、例えば、電線100の金属素線140と同じ金属を含有していてもよい。すなわち、プレート部材240は、例えば、AlまたはAl合金を含んでいてもよい。これにより、プレート部材240の腐食電位を電線100の金属素線140の腐食電位に確実に近づけることができる。
【0044】
本実施形態では、プレート部材240は、例えば、測温領域MRと、支持領域SRと、を有している。測温領域MRには、例えば、少なくとも熱電対220の測温接点JPが配置される。支持領域SRは、熱電対220の一対の熱電対素線222の露出部以外の部分を支持している。
【0045】
図1および図3に示すように、本実施形態では、プレート部材240の測温領域MRは、例えば、電線100の複数の金属素線140により構成される外形にならった形状を有している。
【0046】
具体的には、測温領域MRは、例えば、複数の凸部CPと、複数の凹部RPと、を有している。
【0047】
複数の凸部CPのそれぞれは、例えば、複数の金属素線140のそれぞれの外形にならって凸の円弧状に湾曲している。すなわち、複数の凸部CPのそれぞれは、電線100の外接円の曲率半径Rよりも小さい曲率半径rを有している。それぞれの凸部CPの曲率半径rは、金属素線140の半径と等しいか、或いは近くなっている。複数の凸部CPの頂点に接する外接円の曲率半径は、電線100の外接円の曲率半径Rおよびプレート部材240の厚さの和と等しいか、或いは近くなっている。このような構成により、プレート部材240と電線100との間に空隙を介在させることなく、プレート部材240の凸部CPを電線100に密着させることができる。
【0048】
複数の凹部RPのそれぞれは、例えば、複数の凸部CPの間で電線100の中心軸に向けて凹んでいる。凹部RPと電線100との間の空隙は、存在しないか、或いは、電線100の外接円と電線100との間に形成される空隙よりも小さくなっている。このような構成により、プレート部材240と電線100との間における空隙内の風の通過に起因したプレート部材240の冷却を抑制することができる。
【0049】
本実施形態では、熱電対220の測温接点JPは、例えば、プレート部材240の測温領域MRにおける複数の凸部CPのうちの1つの頂部上に配置されている。このように、金属素線140に接した凸部CP上に、熱電対220の測温接点JPを配置することで、熱電対220の測温接点JPと電線100の金属素線140との間に空隙を介在させることなく、測温接点JPを金属素線140に近接させることができる。
【0050】
本実施形態では、複数の凸部CPのそれぞれは、複数の金属素線140のそれぞれが撚られた方向に沿って配置される。複数の凹部RPのそれぞれは、複数の金属素線140の間における螺旋状の溝に沿って配置され、すなわち、当該溝に食い込んでいる。これにより、プレート部材240により電線100を安定的に把持させることができる。
【0051】
本実施形態では、上述の形状を有するプレート部材240により電線100を安定的に把持させることで、プレート部材240を短くすることができる。
【0052】
具体的には、プレート部材240を電線100に取り付けたときの電線100の軸方向におけるプレート部材240の長さ(測温領域MRおよび支持領域SRの合計長さ)は、10mm以上50mm以下である。プレート部材240の長さを10mm以上とすることで、プレート部材240により熱電対220を安定的に支持することができる。一方で、プレート部材240の長さを50mm以下とすることで、プレート部材240の熱容量を小さくすることができる。
【0053】
支持領域SRの形状は、電線100を把持する形状であれば限定されない。本実施形態では、支持領域SRは、例えば、測温領域MRと同様に、電線100の複数の金属素線140により構成される外形にならった形状を有していてもよい。これにより、プレート部材240により電線100をさらに安定的に把持させることができる。
【0054】
(樹脂層)
図2および図3に示すように、樹脂層230は、例えば、一対の熱電対素線222の測温接点JPがプレート部材240に接した状態で、該測温接点JPを覆っている。これにより、外部からの浸水を抑制し、一対の熱電対素線222の測温接点JPを保護することができる。その結果、互いに異なる金属からなる熱電対素線222とプレート部材240とが接していても、熱電対素線222とプレート部材240との電食の発生を抑制することができる。
【0055】
樹脂層230を構成する樹脂は、例えば、防水性(浸水耐性)と、耐熱性と、耐寒性と、熱電対素線222およびプレート部材240のそれぞれに対する接着性と、を有していてもよい。具体的には、樹脂層230を構成する樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、エポキシ樹脂などが挙げられる。シリコーンゴムとしては、例えば、室温硬化型(RTV:Room Temperature Vulcanizing)であってもよい。硬化タイプとしては、一液型であっても、二液型であってもよい。
【0056】
なお、樹脂層230は、一対の熱電対素線222の露出部全体を覆っていなくてもよい。一対の熱電対素線222の露出部のうち、樹脂層230に覆われていない部分は、プレート部材240または後述の第1カバー部材250に接していてもよい。
【0057】
(第1カバー部材)
第1カバー部材250は、例えば、樹脂層230で覆われた一対の熱電対素線222の測温接点JPを、プレート部材240とともに挟持している。言い換えれば、第1カバー部材250は、熱電対220を挟んでプレート部材240と反対側に設けられ、一対の熱電対素線222の測温接点JPを覆っている。これにより、一対の熱電対素線222の露出部を保護しつつ、プレート部材240に対する一対の熱電対素線222のずれを抑制することができる。
【0058】
第1カバー部材250とプレート部材240との間において、一対の熱電対素線222の測温接点JPを除く間隙内に、上述の樹脂層230が密に充填されている。これにより、一対の熱電対素線222の測温接点JPと外気との接触を抑制することができる。
【0059】
本実施形態では、第1カバー部材250は、例えば、プレート部材240と同じ金属を含んでいる。これにより、第1カバー部材250とプレート部材240との間での電食を抑制することができ、第1カバー部材250とプレート部材240との間での熱膨張係数差によるずれを抑制することができる。
【0060】
本実施形態では、第1カバー部材250は、例えば、プレート部材240と同様に、電線100の複数の金属素線140により構成される外形にならった形状を有している。すなわち、第1カバー部材250も、プレート部材240と同様に、複数の凸部CPと、複数の凹部RPと、を有している。第1カバー部材250とプレート部材240とがこのような複雑な形状で合わさっていることで、第1カバー部材250とプレート部材240との相互のずれを抑制することができる。
【0061】
本実施形態では、第1カバー部材250は、例えば、プレート部材240とは分離された別部材として構成されている。これにより、第1カバー部材250およびプレート部材240のそれぞれにおいて、複数の金属素線140により構成される外形にならった複雑な形状を容易に形成することができる。
【0062】
本実施形態では、例えば、第1カバー部材250およびプレート部材240の間に形成される複数の円弧状の間隙のうちの1つの軸方向に沿って、一対の熱電対素線222の測温接点JPが挿入されている。このような構成により、第1カバー部材250およびプレート部材240の間に形成される円弧状の間隙の軸から、一対の熱電対素線222のそれぞれの軸がずれることを抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、例えば、第1カバー部材250およびプレート部材240を電線100に取り付けたときの、電線100の軸方向における第1カバー部材250の長さよりも、プレート部材240の長さが長い。プレート部材240は、例えば、第1カバー部材250よりも外側に延在し、第1カバー部材250よりも長い範囲に亘って熱電対220の一部を支持している。これにより、プレート部材240および第1カバー部材250が一対の熱電対素線222の測温接点JPを挟持した部分を、プレート部材240の端部と電線100との間の段差部から遠ざけることができる。その結果、当該段差部に起因して、プレート部材240および第1カバー部材250から一対の熱電対素線222の測温接点JPが抜け出る力が加わることを抑制することができる。
【0064】
(第2カバー部材)
第2カバー部材260は、例えば、第1カバー部材250よりも外側に延在したプレート部材240の一部とともに、熱電対220の一部を挟持している。第2カバー部材260は、例えば、プレート部材240の上方で第1カバー部材250に隣接して設けられている。これにより、熱電対220を安定的に支持することができる。
【0065】
本実施形態では、第2カバー部材260は、例えば、プレート部材240と同じ金属を含んでいる。これにより、第2カバー部材260とプレート部材240との間での電食を抑制することができ、第2カバー部材260とプレート部材240との間での熱膨張係数差によるずれを抑制することができる。
【0066】
本実施形態では、第2カバー部材260は、例えば、電線100の外接円にならって円弧状に湾曲しているが、複数の金属素線140のそれぞれの外形にあわせた形状を有していなくてもよい。第2カバー部材260は、例えば、熱電対220とプレート部材240とを密に覆う凸形状を有していてもよい。これにより、第2カバー部材260とプレート部材240との間に熱電対220を強固に固定することができる。
【0067】
本実施形態では、プレート部材240、第1カバー部材250および第2カバー部材260を電線100に取り付けたときの電線100の軸方向において、プレート部材240および第1カバー部材250が重なった部分の長さは、例えば、第2カバー部材260およびプレート部材240が重なった部分の長さの0.8倍1.2倍以下であってもよい。これにより、電線100に対して温度測定部200をバランスよく取り付けることができる。
【0068】
本実施形態では、プレート部材240および第2カバー部材260のうち少なくともいずれか一方に対して、上述した熱電対220のシールド部226が接続されていてもよい。これにより、熱電対220のシールド部226を、プレート部材240を介して電線100と等電位にすることができる。
【0069】
プレート部材240、第1カバー部材250、および第2カバー部材260のそれぞれの厚さは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下である。各厚さを0.1mm以上とすることで、プレート部材240、第1カバー部材250および第2カバー部材260の剛性を充分に確保することができる。一方で、各厚さを0.5mm以下とすることで、プレート部材240、第1カバー部材250および第2カバー部材260の加工性を向上させることができる。
【0070】
(結束部)
結束部280は、例えば、プレート部材240を電線100とともに結束している。これにより、温度測定部200を電線100に対して強固に取り付けることができる。
【0071】
結束部280は、例えば、帯状のいわゆる結束バンドとして構成されている。結束部280としては、例えば、ヘラマンタイトン社製のインシュロック(登録商標)などが挙げられる。これにより、温度測定部200を電線100に対して容易に取り付けることができる。
【0072】
本実施形態では、結束部280は、例えば、少なくとも3つ設けられていてもよい。3つの結束部280を、第1結束部280a、第2結束部280b、第3結束部280cとする。
【0073】
第1結束部280aは、例えば、プレート部材240および第1カバー部材250が熱電対220を挟持した部分を、電線100とともに結束している。これにより、電線100に対してプレート部材240および第1カバー部材250を強固に固定することができる。
【0074】
第2結束部280bは、例えば、第2カバー部材260およびプレート部材240が熱電対220を挟持した部分を、電線100とともに結束している。これにより、電線100に対して第2カバー部材260およびプレート部材240を強固に固定することができる。
【0075】
第3結束部280cは、例えば、プレート部材240よりも外側に延在した熱電対220を電線100とともに結束している。これにより、電線100に対して熱電対220を強固に固定することができる。
【0076】
(温度測定部の配置)
温度測定部200は、図1から図3では電線100の鉛直上側に示したが、実際には、電線100の鉛直下側に配置されていてもよい。これにより、日射による温度測定部200自体の温度上昇を抑制することができる。また、電線100上で作業する作業者に対する干渉を抑制することができる。
【0077】
(2)送電設備物理量測定装置
次に、図4および図5を参照し、本実施形態に係る送電設備物理量測定装置10について説明する。図4は、電線100を挟んで図1とは反対から見た図を示している。
【0078】
図4および5に示すように、本実施形態の送電設備物理量測定装置10は、例えば、電線100に取り付けられ、送電設備の物理量を測定するよう構成されている。具体的には、送電設備物理量測定装置10は、例えば、電源用カレントトランス部(電源用CT部、発電用CT部)420と、電源部(電源用回路)440と、電流測定用カレントトランス部(電流測定用CT部)520と、電流測定部(電流測定用回路)540と、温度測定部(温度測定部)200と、無線部(送受信部、通信部)600と、第1収容部310と、第2収容部320と、クランプ(把持部)700と、を有している。
【0079】
(電源用カレントトランス部)
電源用CT部420は、例えば、電線100を囲むように環状に配置される。電源用CT部420は、例えば、電線100に流れる電流に基づいて電線100の周囲に生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させるように構成されている。
【0080】
(電源部)
電源部440は、例えば、電源用CT部420に接続され、該電源用CT部420で発生した電力を、後述の無線部600に適した電力に変換して該無線部600に供給するよう構成されている。具体的には、電源部440は、例えば、電源用CT部420で発生した交流電力を無線部600に適した直流電力に変換するよう構成されている。さらに、電源部440は、例えば、電源用CT部420で発生した電圧を無線部600に適した電圧に変圧するよう構成されている。
【0081】
(測定用カレントトランス部)
電流測定用CT部520は、例えば、電線100を囲むように環状に配置される。電流測定用CT部520は、例えば、電線100に流れる電流に応じた誘導電圧を出力するよう構成されている。
【0082】
(電流測定部)
電流測定部540は、例えば、電流測定用CT部520に接続され、該電流測定用CT部520が出力した誘導電圧に基づいて電線100に流れる電流を測定するよう構成されている。以下、電流測定部540が測定した電線100の電流に係る情報を「電流データ」という。
【0083】
(温度測定部)
温度測定部200は、例えば、上述したように、熱電対220と、プレート部材240と、樹脂層230と、第1カバー部材250と、第2カバー部材260と、結束部280と、を備えている。以下、温度測定部200が測定した電線100の温度に係る情報を「温度データ」という。
【0084】
(無線部)
無線部600は、例えば、所定の情報を通信するよう構成されている。本実施形態では、無線部600は、例えば、電線100の電流などの送電設備の物理量に係る情報を無線で外部に送信するよう構成されている。
【0085】
具体的には、無線部600は、例えば、電流測定部540を介して電流測定用CT部520に接続され、電流測定用CT部520が出力した誘起電圧に基づいて測定された電線100の電流データを取得するよう構成されている。
【0086】
無線部600は、例えば、温度測定部200に接続され、温度測定部200が測定した電線100の温度データを取得するよう構成されている。なお、例えば、無線部600自身が、一対の熱電対素線222の間に生じた熱起電力に基づいて温度を測定する温度補償回路付き計測器を有していてもよい。或いは、無線部600とは別に、温度測定部200の一部として温度補償回路付き計測器が設けられていてもよい。
【0087】
無線部600は、例えば、電源部440を介して電源用CT部420に接続され、電源部440から供給される電力により、温度データおよび電流データ等の各種データを無線で外部に送信するよう構成されている。
【0088】
本実施形態では、無線部600は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)(不図示)を有している。無線部600が有するMCUは、例えば、各種データの送受信に係る所定のプログラムを実行するプロセッサと、プログラムおよび各種データを記憶するメモリと、送信周期の基準となる1つ以上のタイマと、上述の各部材に接続するI/Oポートと、を有している。MCUを構成する各部は、全てひとつの集積回路に組み込まれている。なお、無線部600は、MCUが有するメモリとは別に、例えば、FROM(Frash Read-Only Memory)等の外部メモリを有していてもよい。
【0089】
無線部600は、例えば、アンテナ620を有し、アンテナ620を介して各種データを送受信するよう構成されている。
【0090】
(各部の収容態様および連結態様)
第1収容部310は、例えば、電源用CT部420、電源部440、電流測定部540および無線部600を、電線100の外側に収容している。一方で、第2収容部320は、例えば、電流測定用CT部520を電線100の外側に収容している。ここでいう各部を「電線100の外側に収容している」とは、電線100の外周よりも径方向の外側の領域内に各部を収容していることを意味している。
【0091】
第1収容部310の少なくとも一部と、第2収容部320の少なくとも一部とは、例えば、互いに分離され、個別に開閉可能に構成されている。これにより、第1収容部310内における電源用CT部などと、第2収容部320内における電流測定用CT部520などとを、独立して位置調整することができる。
【0092】
クランプ700は、例えば、第1収容部310と第2収容部320との間で、第1収容部310および第2収容部320に連結され、電線100を把持している。これにより、第1収容部310および第2収容部320を電線100に固定することができる。
【0093】
(電力伝送システム(送電設備監視システム))
本実施形態の構成を有する複数の送電設備物理量測定装置10は、例えば、電力伝送システム(送電設備監視システム)に適用される。
【0094】
電力伝送システムは、例えば、電力供給源と、複数の送電設備物理量測定装置10と、データ集約伝送装置と、を有している。
【0095】
電力供給源は、電線100へ電力を供給する。複数の送電設備物理量測定装置10は、電線100の軸方向に沿って所定の間隔で配置され、それぞれ送電設備に関する物理量を測定し、測定した物理量データをバケツリレー方式(マルチホップ無線通信)で伝送する。データ集約伝送装置は、複数の送電設備物理量測定装置10から伝送された物理量データを集約し、集約した物理量データを電力供給源に伝送する。電力供給源は、集約された物理量データに基づいて電線100への送電容量を制御する。
【0096】
(3)本実施形態のまとめ
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0097】
(a)本実施形態では、プレート部材240の測温領域MRは、電線100の複数の金属素線140により構成される外形にならった形状を有している。これにより、熱電対220の測温接点JPが配置されたプレート部材240と電線100との間に、空隙が形成されることを抑制することができ、すなわち、プレート部材240と電線100とを密着させることができる。これらの間における空隙の形成を抑制することで、当該空隙内の風の通過に起因したプレート部材240の冷却を抑制することができる。すなわち、電線100の温度に対するプレート部材240付近の温度の低下を抑制することができる。
【0098】
特に、大容量の送電を行う電線100において、電線100の温度が高くなったとしても、電線100の温度と、プレート部材924付近の温度との差の拡大を抑制することができる。その結果、高い温度範囲においても、電線100の温度を安定的に測定することが可能となる。
【0099】
(b)本実施形態では、複数の凸部CPのそれぞれは、複数の金属素線140のそれぞれが撚られた方向に沿って配置される。複数の凹部RPのそれぞれは、複数の金属素線140の間における螺旋状の溝に沿って配置され、すなわち、当該溝に食い込んでいる。これにより、プレート部材240により電線100を安定的に把持させることができる。プレート部材240による電線100の安定的把持により、電線100に対するプレート部材240のずれを抑制することができる。すなわち、プレート部材240上の熱電対220の測温接点JPの位置を安定させることができる。この観点からも、電線100の温度を安定的に測定することが可能となる。
【0100】
(c)本実施形態では、熱電対220の測温接点JPは、プレート部材240の測温領域MRにおける複数の凸部CPのうちの1つの頂部上に配置されている。このように、金属素線140に接した凸部CP上に、熱電対220の測温接点JPを配置することで、熱電対220の測温接点JPと電線100の金属素線140との間に空隙を介在させることなく、測温接点JPを金属素線140に近接させることができる。これにより、金属素線140からの熱を、プレート部材240の凸部CPを介して熱電対220の測温接点JPに向けて効率よく伝達させることができる。その結果、温度測定精度を向上させることが可能となる。
【0101】
(d)本実施形態では、上述の形状を有するプレート部材240により電線100を安定的に把持させることで、プレート部材240を短くすることができる。具体的には、プレート部材240を電線100に取り付けたときの電線100の軸方向におけるプレート部材240の長さを、10mm以上50mm以下とすることができる。
【0102】
プレート部材240の長さを10mm以上とすることで、プレート部材240により熱電対220を安定的に支持することができる。
【0103】
一方で、プレート部材240の長さを50mm以下とすることで、プレート部材240の熱容量を小さくすることができる。これにより、プレート部材240の放熱を抑制することができる。すなわち、温度測定部200を配置した箇所の電線100の温度が、実際の電線100の温度よりも低下することを抑制することができる。この観点からも、温度測定精度を向上させることが可能となる。
【0104】
(4)本開示の一実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0105】
変形例の温度測定部200では、熱電対220の測温接点JPの配置が、上述の実施形態と異なっている。
【0106】
図6に示すように、変形例では、熱電対220の測温接点JPは、例えば、プレート部材240の測温領域MRにおける複数の凹部RPのうちの1つの上に配置されている。言い換えれば、熱電対220の測温接点JPは、1つの凹部RP内に入り込み、一対の円弧状の凸部CPの間に挟まれている。
【0107】
(効果)
変形例では、温度測定部200を容易に組み立てることができる。さらに、変形例では、熱電対220の測温接点JPが一対の円弧状の凸部CPの間に挟まれていることで、プレート部材240上の熱電対220の測温接点JPの位置をさらに安定させることができる。
【0108】
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0109】
上述の実施形態では、樹脂層230が一対の熱電対素線222の測温接点JPを覆っている場合について説明したが、樹脂層230は、さらに熱電対220の絶縁層224の少なくとも一部まで覆っていてもよい。
【0110】
上述の実施形態では、第1カバー部材250および第2カバー部材260のそれぞれが、プレート部材240と同じ金属を含む場合について説明したが、プレート部材240が上述の腐食電位の関係を満たせば、第1カバー部材250および第2カバー部材260が、プレート部材240と異なる金属を含んでいてもよい。
【0111】
上述の実施形態では、電線100の軸方向において、プレート部材240の端部と、第2カバー部材260の端部とが一致している場合を図示したが、プレート部材240は、第2カバー部材260よりも長く延在し、第2カバー部材260よりも外側に延在した熱電対220の一部を支持していてもよい。さらに、当該プレート部材240の延在部分は、第2カバー部材260よりも外側に延在した熱電対220の一部に巻き付けられていてもよい。プレート部材240の巻き付けにより、熱電対220を安定的に固定することができる。また、プレート部材240を熱電対220のシールド部226の外周に巻き付けることで、シールド部226とプレート部材240とを安定的に接続することができる。また、シールド部226の熱収縮を抑制することができる。
【0112】
上述の実施形態では、送電設備物理量測定装置10が、電線100の物理量として電線100に流れる電流および電線100の温度を測定するよう構成されている場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。送電設備物理量測定装置10は、電線100に流れる電流および電線100の温度以外の他の物理量も測定するよう構成されていてもよい。他の物理量としては、例えば、電線100の振動、電線100の弛度などが挙げられる。
【0113】
上述の実施形態では、無線部600がバケツリレー方式で各種データを伝送するよう構成されている場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。例えば、無線部600が長距離伝送可能に構成されていれば、無線部600は、データ集約伝送装置または電気事業者に対して各種データを直接送信するよう構成されていてもよい。
【実施例0114】
次に、本開示に係る実施例を説明する。これらの実施例は本開示の一例であって、本開示はこれらの実施例により限定されない。
【0115】
(1)温度測定部の作製
以下の測定対象としての電線に対し、2つのサンプルの温度測定部を作成した。
【0116】
(測定対象の電線)
ACSR(鋼心アルミより線)
撚線層:アルミ合金線
電線外径:25.2mm
電線断面積:330mm
【0117】
(サンプルA)
サンプルAの温度測定部は、図1から図3に示したように構成した。プレート部材、第1カバー部材および第2カバー部材の材質はアルミとした。樹脂層は、シリコーンゴムとした。電線の複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有するように、プレート部材の測温領域を形成した。熱電対の測温接点を、プレート部材の測温領域における複数の凸部のうちの1つの頂部上に配置した。電線の軸方向におけるプレート部材の長さを30mmとした。
【0118】
(サンプルB)
サンプルBの温度測定部は、図7に示したように構成した。プレート部材は、電線の外接円に沿って円弧状に湾曲させた。プレート部材と電線との間に空隙が形成された箇所のプレート部材上に、熱電対の測温接点を配置した。電線の軸方向におけるプレート部材の長さを60mmとした。サンプルBのその他の条件は、サンプルAと同様とした。
【0119】
(リファレンス)
リファレンスとして、電線に対して、熱電対の測温接点を直接接触させて取り付けた。電線とリファレンスの熱電対との間に他の部材が介在していないため、リファレンスで測定される温度は、電線の温度と等しくなる。
【0120】
(2)温度測定
電線に電流を流し、電流を徐々に増加させることにより、電線の温度を徐々に上昇させた。このとき、リファレンス、サンプルAおよびサンプルBの温度測定部において、電線の温度を測定した。以下、リファレンスにより測定された温度を「基準温度T1」とし、サンプルAおよびサンプルBの温度測定部により測定された温度を「測定温度T2」とする。測定の結果、各温度測定部による測定温度T2と基準温度T1との差T2―T1を求めた。
【0121】
(3)結果
図8に示すように、サンプルBでは、電線の基準温度T1が上昇するにつれて、測定温度T2と基準温度T1との差の絶対値|T2―T1|が徐々に大きくなっていた。基準温度T1が140℃以上のときに、温度差T2―T1は-2℃よりも負の方向に小さくなっていた(すなわち、温度差の絶対値|T2―T1|は2℃よりも大きくなっていた)。
【0122】
サンプルBでは、プレート部材と電線との間に空隙が形成されていたため、当該空隙を風が通り抜け、プレート部材が冷却されたと考えられる。
【0123】
これに対し、サンプルAでは、電線の基準温度T1が上昇しても、測定温度T2と基準温度T1との差の絶対値|T2―T1|が大きくなっていなかった。基準温度T1が180℃以下の範囲内で、温度差T2―T1は-2℃以上となっていた。
【0124】
サンプルAでは、プレート部材の測温領域が、電線の複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有していたことで、熱電対の測温接点が配置されたプレート部材と電線との間に、空隙が形成されておらず、プレート部材と電線とを密着させることができた。これにより、電線の温度に対するプレート部材付近の温度の低下を抑制することができた。その結果、サンプルAでは、高い温度範囲においても、電線の温度を安定的に測定することができたことを確認した。
【0125】
<付記>
以下、本開示の態様を付記する。
【0126】
(付記1)
複数の金属素線を最外周に有する電線の温度を測定する温度測定装置であって、
測温接点を有する熱電対と、
前記熱電対と前記電線との間に介在し、前記電線に直接接するように配置される金属製のプレート部材と、
を備え、
前記プレート部材は、少なくとも前記熱電対の前記測温接点が配置される測温領域を有し、
前記測温領域は、前記複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有している
温度測定装置。
【0127】
(付記2)
前記測温領域は、
前記複数の金属素線のそれぞれの外形にならって凸の円弧状に湾曲した複数の凸部と、
前記複数の凸部の間で前記電線の中心軸に向けて凹んだ複数の凹部と、
を有し、
前記熱電対の前記測温接点は、前記測温領域における前記複数の凸部のうちの1つの頂部上に配置されている
付記1に記載の温度測定装置。
【0128】
(付記3)
前記測温領域は、
前記複数の金属素線のそれぞれの外形にならって凸の円弧状に湾曲した複数の凸部と、
前記複数の凸部の間で前記電線の中心軸に向けて凹んだ複数の凹部と、
を有し、
前記熱電対の前記測温接点は、前記測温領域における前記複数の凹部のうちの1つの上に配置されている
付記1に記載の温度測定装置。
【0129】
(付記4)
前記凹部と前記電線との間の空隙は、存在しないか、或いは、前記電線の外接円と前記電線との間に形成される空隙よりも小さい
付記2または付記3に記載の温度測定装置。
【0130】
(付記5)
前記プレート部材を前記電線に取り付けたときの前記電線の軸方向における前記プレート部材の長さは、10mm以上50mm以下である
付記1から付記4のいずれか1つに記載の温度測定装置。
【0131】
(付記6)
複数の金属素線を最外周に有する電線の温度を測定する温度測定部と、
前記電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に基づいて生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させる電源用カレントトランス部と、
前記温度測定部および前記電源用カレントトランス部に接続され、前記温度測定部が測定した前記電線の温度データを、前記電源用カレントトランス部からの電力により無線で外部に送信する無線部と、
を備え、
前記温度測定部は、
測温接点を有する熱電対と、
前記熱電対と前記電線との間に介在し、前記電線に直接接するように配置される金属製のプレート部材と、
を備え、
前記プレート部材は、少なくとも前記熱電対の前記測温接点が配置される測温領域を有し、
前記測温領域は、前記複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有している
送電設備物理量測定装置。
【0132】
(付記7)
複数の金属素線を最外周に有し、電力を伝送する電線と、
前記電線へ電力を供給する電力供給源と、
前記電線の軸方向に沿って所定の間隔で配置され、それぞれ送電設備に関する物理量を測定し、測定した前記物理量データをバケツリレー方式で伝送する複数の送電設備物理量測定装置と、
前記複数の送電設備物理量測定装置から伝送された前記物理量データを集約し、集約した前記物理量データを前記電力供給源に伝送するデータ集約伝送装置と、
を有し、
前記電力供給源は、前記物理量データに基づいて前記電線への送電容量を制御し、
前記複数の送電設備物理量測定装置のそれぞれは、
前記電線の温度を測定する温度測定部と、
前記電線を囲むように配置され、前記電線に流れる電流に基づいて生じる磁界から電磁誘導により電力を発生させる電源用カレントトランス部と、
前記温度測定部および前記電源用カレントトランス部に接続され、前記温度測定部が測定した前記電線の温度データを、前記電源用カレントトランス部からの電力により無線で外部に送信する無線部と、
を備え、
前記温度測定部は、
測温接点を有する熱電対と、
前記熱電対と前記電線との間に介在し、前記電線に直接接するように配置される金属製のプレート部材と、
を備え、
前記プレート部材は、少なくとも前記熱電対の前記測温接点が配置される測温領域を有し、
前記測温領域は、前記複数の金属素線により構成される外形にならった形状を有している
電力伝送システム。
【符号の説明】
【0133】
10 送電設備物理量測定装置
100 電線
140 金属素線
200 温度測定部(温度測定装置)
220 熱電対
222 熱電対素線
224 絶縁層
226 シールド部
230 樹脂層
240 プレート部材
250 第1カバー部材
260 第2カバー部材
280 結束部
280a 第1結束部
280b 第2結束部
280c 第3結束部
310 第1収容部
320 第2収容部
420 電源用CT部
440 電源部
520 電流測定用CT部
540 電流測定部
600 無線部
620 アンテナ
700 クランプ
920 温度測定部
923 樹脂層
924 プレート部材
925 カバー部材
JP 測温接点
MR 測温領域
SR 支持領域
CP 凸部
RP 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8