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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152136
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/02 20060101AFI20241018BHJP
   B60C 7/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B29D30/02
B60C7/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066133
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝野 寿治
(72)【発明者】
【氏名】玉井 健太郎
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131AA60
3D131BB19
3D131BC05
3D131BC31
3D131BC42
3D131BC44
3D131BC51
3D131CC03
3D131CC04
3D131LA28
4F215AH21
4F215VA01
4F215VC08
4F215VD03
4F215VD06
4F215VK04
4F215VK33
4F215VL27
4F501TA01
4F501TB07
4F501TC03
4F501TC06
4F501TD05
4F501TD36
4F501TE22
4F501TH01
4F501TV11
4F501TV12
(57)【要約】
【課題】樹脂流れ不良及びトレッドゴムの位置決め不良を回避可能な非空気圧タイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】接地面を有するトレッドゴム3と、トレッドゴム3のタイヤ径方向内側RD2に設けられる樹脂タイヤ2とを有する非空気圧タイヤ1の製造方法は、硬化済の樹脂タイヤ2及び加硫済のトレッドゴム3を準備し、樹脂タイヤ2のタイヤ径方向外側RD1に、未加硫ゴム31及びトレッドゴム3を配置してユニット4を形成し、ユニット4を加圧室に入れて加熱及び加圧により未加硫ゴム31を加硫することで、樹脂タイヤ2とトレッドゴム3とを接合する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面を有するトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に設けられる樹脂タイヤとを備える非空気圧タイヤの製造方法であって、
硬化済の前記樹脂タイヤ及び加硫済の前記トレッドゴムを準備し、
前記樹脂タイヤのタイヤ径方向外側に、未加硫ゴム及び前記トレッドゴムを配置してユニットを形成し、
前記ユニットを加圧室に入れて加熱及び加圧により前記未加硫ゴムを加硫することで、前記樹脂タイヤと前記トレッドゴムとを接合する、非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記ユニットの前記トレッドゴムを袋体で覆い、前記袋体の内部を負圧にすることで前記トレッドゴムを前記樹脂タイヤ側に押し付け、前記袋体の内部を負圧にした状態で前記未加硫ゴムを加硫する、請求項1に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂タイヤは、前記トレッドゴムが設けられる外側環状部と、前記外側環状部のタイヤ径方向内側に配置される内側環状部と、前記外側環状部と前記内側環状部とを連結する連結部とを有し、
前記外側環状部のタイヤ径方向外側に、前記トレッドゴムを覆う前記袋体による負圧環境を設け、前記外側環状部よりもタイヤ径方向内側及び前記負圧環境のタイヤ径方向外側に加圧環境を設け、前記未加硫ゴムを加硫する、請求項2に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項4】
前記袋体をタイヤ軸方向の外側から押さえるための押圧部材と、前記樹脂タイヤのタイヤ軸方向の外側において前記押圧部材と前記樹脂タイヤの間に配置され且つ前記押圧部材が前記樹脂タイヤに接触することを防止する保護部材と、前記樹脂タイヤの前記外側環状部のタイヤ軸方向の端部と前記保護部材との間に配置され且つ前記袋体と前記樹脂タイヤとの間を密閉するためのパッキンと、を用いる、請求項3に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項5】
前記袋体をタイヤ軸方向の外側から押さえるための押圧部材を用い、前記押圧部材は、前記樹脂タイヤからタイヤ軸方向に離間している、請求項2~4のいずれかに記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂タイヤのタイヤ軸方向の外側において前記押圧部材と前記樹脂タイヤの間に配置され且つ前記押圧部材が前記樹脂タイヤに接触することを防止する保護部材を用い、前記保護部材は、負圧によって前記袋体が前記樹脂タイヤに接触することを防止する、請求項5に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非空気圧タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、非空気圧タイヤは、樹脂で形成されたスポークと、スポークのタイヤ径方向外側に配置されるトレッドゴムと、を有する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、金型内部において加硫済のトレッドゴムと硬化済の樹脂スポークとの間に新たな樹脂を流し込んで樹脂を硬化させ、樹脂スポークと加硫済のトレッドゴムとを接合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-94825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、加硫済のトレッドゴムと硬化済の樹脂スポークとの間に新たな樹脂を流し込む製造方法は、加硫済のトレッドゴムと硬化済の樹脂スポークとの間に樹脂が充満しない、いわゆる樹脂の流れ不良が発生する可能性がある。また、流し込む樹脂がトレッドゴムの位置を変更する可能性があり、トレッドゴムの樹脂スポークに対する位置決め不良が発生する可能性がある。
【0005】
本開示は、樹脂流れ不良及びトレッドゴムの位置決め不良を回避可能な非空気圧タイヤの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の非空気圧タイヤの製造方法は、接地面を有するトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に設けられる樹脂タイヤとを備える非空気圧タイヤの製造方法であって、硬化済の前記樹脂タイヤ及び加硫済の前記トレッドゴムを準備し、前記樹脂タイヤのタイヤ径方向外側に、未加硫ゴム及び前記トレッドゴムを配置してユニットを形成し、前記ユニットを加圧室に入れて加熱及び加圧により前記未加硫ゴムを加硫することで、前記樹脂タイヤと前記トレッドゴムとを接合する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る非空気圧タイヤを示す正面図。
図2図1のA-A線に沿う断面図。
図3】トレッドゴムと樹脂タイヤの間の構成を示す模式的な断面図。
図4】袋体を保持する構造を示すタイヤ軸を通るタイヤ子午線断面図。
図5】対の保護部材を最も近接させた状態を示す、図4に対応する図。
図6】第2実施形態の非空気圧タイヤの製造方法において、袋体を保持する構造を示すタイヤ軸を通るタイヤ子午線断面図。
図7】第3実施形態の非空気圧タイヤの製造方法において、袋体を保持する構造を示すタイヤ軸を通るタイヤ子午線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の第1実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る非空気圧タイヤ1を示す正面図である。図2は、図1のA-A線に沿う断面図である。
【0009】
[非空気圧タイヤの構造]
図1及び図2に示すように、非空気圧タイヤ1は、荷重を支持する樹脂タイヤ2と、樹脂タイヤ2のタイヤ径方向RDの外側に配置されるトレッドゴム3と、を有する。トレッドゴム3は、例えば、従来の空気入りタイヤと同様にゴムで構成され、従来の空気入りタイヤと同様に、外周面にパターン(溝)を備えていてもよい。
【0010】
なお、図1~2は、非空気圧タイヤ1が弾性変形していない状態を図示している。また、以下、特に記載がない場合においては、大きさ(寸法)及び形状の説明は、非空気圧タイヤ1が弾性変形していない状態を説明している。
【0011】
樹脂タイヤ2は、内側環状部20と、外側環状部21と、内側環状部20と外側環状部21とを連結する複数の連結部22と、を有する。内側環状部20及び外側環状部21は共にタイヤ軸C1を中心とする同心円状に配置される。外側環状部21は、内側環状部20のタイヤ径方向RDの外側に配置されており、内側環状部20を収容する。複数の連結部22はそれぞれタイヤ周方向CDに沿って互いに離間して並列されている。
【0012】
樹脂タイヤ2の材質は、特に限定されないが、例えば、樹脂タイヤ2は、樹脂で形成されている。また、例えば、樹脂タイヤ2の母材として、ポリエステルエラストマー等の熱可塑性エラストマー、又はその他の樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂)が採用されてもよい。また、例えば、斯かる母材の内部に、図2に示すように、繊維又は金属コード等の補強材24が埋設されていてもよい。図2の例では、外側環状部21の内部に補強材24が配置されている。
【0013】
また、非空気圧タイヤ1は、樹脂タイヤ2を補強するために、樹脂タイヤ2とトレッドゴム3との間に補強層を配置してもよい。トレッドゴム3と樹脂タイヤ2との間に配置される補強層又は樹脂タイヤ2の内部に配置される補強材24は、例えば、スチールコードやCFRP、GFRP等の繊維強化プラスチック製のコードをタイヤ軸方向ADに対して略平行に配列したものや、円筒状の金属製リングや高モジュラス樹脂製リング等で構成されている。
【0014】
内側環状部20は、ユニフォミティを向上させる観点から、例えば、厚みが一定(同一だけでなく、例えば製造誤差等の誤差を有する略同一も含む)の円筒形状であることが好ましい。なお、内側環状部20の厚み(タイヤ径方向RDの寸法)は、特に限定されないが、例えば、連結部22に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点で、適宜設定される。
【0015】
内側環状部20の内径は、特に限定されないが、例えば、非空気圧タイヤ1を装着するリムや車軸の寸法等に併せて適宜設定される。また、内側環状部20の幅(タイヤ軸方向ADの寸法)は、特に限定されないが、例えば、用途、車軸の長さ等に応じて適宜設定される。
【0016】
外側環状部21は、ユニフォミティを向上させる観点から、例えば、厚みが一定(同一及び略同一を含む)の円筒形状であることが好ましい。なお、外側環状部21の厚み(タイヤ径方向RDの寸法)は、特に限定されないが、例えば、連結部22からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点で、適宜設定される。
【0017】
外側環状部21の内径は、特に限定されないが、例えば、その用途等に応じて適宜設定される。また、外側環状部21の幅(タイヤ軸方向ADの寸法)は、特に限定されないが、例えば、用途等に応じて適宜設定される。なお、外側環状部21の幅は、内側環状部20の幅と同じであってもよい。
【0018】
連結部22は、板状に形成されている。連結部22の板面がタイヤ周方向CDに沿って配置されている。なお、連結部22の構成は、特に限定されないが、第1実施形態においては、複数の連結部22は、複数の第1連結部22aと複数の第2連結部22bとを備えている。
【0019】
第1連結部22aは、内側環状部20のタイヤ軸方向ADの第1側AD1(図2においては、左側)から外側環状部21のタイヤ軸方向ADの第2側AD2(図2においては、右側)へ向かって延びている。また、第2連結部22bは、内側環状部20のタイヤ軸方向ADの第2側AD2から外側環状部21のタイヤ軸方向ADの第1側AD1へ向かって延びている。
【0020】
このように、第1連結部22aと第2連結部22bとは、タイヤ周方向CDに平行な視線で見て、互いに反対方向に傾斜し且つ交差している。これにより、タイヤ周方向CDに平行な視線で見て、第1連結部22aと第2連結部22bとの間に、閉空間が形成されている。その結果、弾性を高めることができるため、乗り心地性能を向上させることができる。
【0021】
第1連結部22aと第2連結部22bとは、タイヤ周方向CDに交互に並列されているので、走行時の接地圧分散をより小さくすることができる。なお、第1連結部22a及び第2連結部22bの形状の関係は、特に限定されないが、第1実施形態において、第1連結部22aと第2連結部22bとは、タイヤ周方向CDに平行な視線で見て、タイヤ赤道面に対して対称な形状である。
【0022】
連結部22の幅は、特に限定されないが、例えば、内側環状部20及び外側環状部21からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点で適宜設定される。なお、連結部22のタイヤ軸方向ADの幅は、例えば、タイヤ径方向RDのそれぞれの端部へ行くにつれて大きくてもよく(図2参照)、また、例えば、タイヤ径方向RDに沿って漸増してもよく、また、例えば、タイヤ径方向RDに亘って一定(同一及び略同一を含む)である、としてもよい。
【0023】
連結部22の厚み(タイヤ軸方向ADに平行な視線で見た際の寸法)は、特に限定されないが、例えば、内側環状部20及び外側環状部21からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点で、適宜設定される。なお、連結部22の厚みは、例えば、タイヤ径方向RDに沿って漸増してもよく、また、例えば、タイヤ径方向RDに亘って一定(同一及び略同一を含む)であってもよく、また、例えば、タイヤ径方向RDのそれぞれの端部へ行くにつれて大きいとしてもよい。
【0024】
連結部22の幅と厚みとの関係(大小関係、比率)は、特に限定されないが、耐久性を向上させつつ接地圧分散を小さくする観点で、適宜設定される。例えば、連結部22の幅の平均は、連結部22の厚みの平均よりも大きいことが好ましい。また、例えば、連結部22の幅のうち、最も狭い幅は、連結部22の厚みのうち、最も厚い厚みよりも、大きいとしてもよい。
【0025】
なお、複数の連結部22は、タイヤ周方向CDに並列されている。これにより、複数の連結部22,22同士間に、隙間23が形成されている。例えば、隙間23の大きさ(ピッチ長)は、ユニフォミティを向上させる観点から、一定(同一及び略同一を含む)とすることが好ましい。なお、隙間23の大きさ及び連結部22の数は、特に限定されないが、例えば、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、ノイズの低減、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点で、適宜設定される。
【0026】
[非空気圧タイヤ1の製造方法]
第1実施形態の非空気圧タイヤ1の製造方法は、まず、硬化済の樹脂タイヤ2と、加硫済のトレッドゴム3とを準備する。トレッドゴム3は路面に接地する接地面を有している。
【0027】
次に、図3に示すように、樹脂タイヤ2のタイヤ径方向外側RD1に、未加硫ゴム31及びトレッドゴム3を配置してユニット4を形成する。図3は、トレッドゴム3と樹脂タイヤ2の間の構成を示す模式的な断面図である。図3は、構造の理解を容易にするために、一部の部材の厚みを誇張して図示している。具体的な一例として、トレッドゴム3は、シート状に形成されており、図3に示すように、トレッドゴム3のタイヤ径方向内側RD2にゴム糊30を介してシート状の未加硫ゴム31を貼り付ける。また、樹脂タイヤ2の外側環状部21のタイヤ径方向外側RD1にプライマー33を配置している。プライマー33のタイヤ径方向外側RD1に加硫接着剤32が配置されている。未加硫ゴム31のタイヤ径方向内側RD2にゴム糊30を配置する。タイヤ径方向内側RD2にゴム糊30、未加硫ゴム31が配置されたトレッドゴム3を、タイヤ径方向外側RD1に加硫接着剤32及びプライマー33が配置された樹脂タイヤ2に巻き付ける。すなわち、樹脂タイヤ2のタイヤ径方向外側RD1に、プライマー33、加硫接着剤32、ゴム糊30、未加硫ゴム31、ゴム糊30、トレッドゴム3が順に配置され、これらの部材が一体になってユニット4を形成している。
加硫接着剤32は、後の加硫工程によって硬化する接着剤であり、ゴム成分に加硫促進剤および受酸剤を配合したものであってもよい。例えば、加硫接着剤32は、高分子材料、有機材料およびフィラーを組成として、キシレン等の有機溶剤系に分散させたものであってもよい。高分子材料、有機材料としては、ハロゲン系ポリマー等が用いられる。フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ等が用いられる。
ゴム糊30は、ゴム組成物の混練物を有機溶媒で溶解してなるものであり、有機溶媒としては、ゴム用揮発油やトルエン、キシレンなどのゴムを溶解する揮発性の各種有機溶媒が挙げられる。好ましくは、ブチルゴムをトルエンなどの有機溶媒に溶解したものをゴム糊30として用いることができる。ゴム糊30は仮止め手段として用いている。
未加硫ゴム31は、シート状に形成され、後の加硫工程により加硫されるゴムである。未加硫ゴム31は、トレッドゴム3と同じ材質のゴムでもよいし、異なる材質のゴムでもよい。
このように、ゴム糊30、加硫接着剤32を用いているので、ユニット4を形成した際に、トレッドゴム3と未加硫ゴム31と樹脂タイヤ2との位置決めが完了した状態となる。
【0028】
次に、図4に示すように、ユニット4のトレッドゴム3を袋体5で覆う。これは、袋体5の内部を負圧にすることでトレッドゴム3を樹脂タイヤ2側に押し付け、袋体5の内部を負圧にした状態(トレッドゴム3を樹脂タイヤ2側に押圧する状態)で後述する加硫工程において未加硫ゴム31を加硫するためである。図4は、袋体5を保持する構造を示すタイヤ軸C1を通るタイヤ子午線断面図である。袋体5は、袋体5の開口をタイヤ径方向内側RD2へ向けている。袋体5は、タイヤ軸C1に平行な視線で見て円筒状に形成されている。トレッドゴム3を覆う袋体5を適切に保持するために、次の構成を採用している。
【0029】
図4に示すように、袋体5をタイヤ軸方向ADの両外側から押さえるための対の押圧部材60を用いている。押圧部材60は、一対の円盤形状に形成されている。一対の円盤形状の押圧部材60は、エアシリンダ61によってタイヤ軸方向ADに沿って遠ざかったり近づいたりすることが可能に構成されている。
【0030】
樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの両外側それぞれにおいて押圧部材60と樹脂タイヤ2の間に配置される保護部材62を用いている。保護部材62は、押圧部材60が樹脂タイヤ2に接触することを防止する。樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向一方側に配置される保護部材62と、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向他方側に配置される保護部材62との間には、保護部材62が所定距離D1(図5参照)よりも近接することを規制する規制部材63が配置されている。保護部材62同士の間に規制部材63が介在することで、保護部材62同士が所定距離D1よりも近づくことを防止している。押圧部材60が樹脂タイヤ2を過剰に押圧し樹脂タイヤ2が変形する可能性を保護部材62によって防止可能となる。
【0031】
図5は、対の保護部材62を最も近接させた状態を示す、図4に対応する図である。第1実施形態の袋体5は、トレッドゴム3及び樹脂タイヤ2の外側環状部21のみを覆っている。袋体5と外側環状部21の間に負圧環境が設けられないようにするために、樹脂タイヤ2の外側環状部21のタイヤ軸方向ADの両端部と保護部材62との間に一対のパッキン64を配置している。一対のパッキン64は、保護部材62を介して押圧部材60に押圧されることで袋体5と樹脂タイヤ2との間を密閉する。第1実施形態において、一対のパッキン64は、袋体5と保護部材62との間に配置されているが、これに限定されない。
【0032】
図5に示すように、外側環状部21のタイヤ軸方向ADの寸法と、袋体5の厚みの二つ分と、パッキン64の厚みの二つ分との合計の寸法は、対の保護部材62が最も近接した所定距離D1よりも短くなるように設定されている。その差が2つのパッキン64の圧縮代となっている。これにより、パッキン64が圧縮されるものの、樹脂タイヤ2の外側環状部21に変形を生じるような強い力が作用しないようにしている。図5の例では、対の押圧部材60の双方が樹脂タイヤ2からタイヤ軸方向ADに離間している。
【0033】
図5に示すように、押圧部材60及び保護部材62により袋体5を保持している状態において、押圧部材60及び保護部材62の内部、特に樹脂タイヤ2の外側環状部21のタイヤ径方向内側RD2の内部空間SP1が、押圧部材60及び保護部材62の外部空間SP2と独立しないように、押圧部材60及び保護部材62には、外部との連通孔65が設けられている。すなわち、連通孔65によって、内部空間SP1と外部空間SP2が連通するので、内部空間SP1と外部空間SP2とを同圧力にすることが可能となる。
【0034】
次に、押圧部材60が保護部材62を介して袋体5を保持している状態において、袋体5の内部に連通するノズル(非図示)から袋体5の内部の空気を抜き、袋体5の内部を負圧にする。これにより、トレッドゴム3が樹脂タイヤ2(外側環状部21)に押し付けられる。図5に示すように、外側環状部21のタイヤ径方向外側RD1に、トレッドゴム3を覆う袋体5による負圧環境が設けられる。負圧環境を設けることで、トレッドゴム3を樹脂タイヤ2(外側環状部21)に押し付けることができ、トレッドゴム3と樹脂タイヤ2の間にある未加硫ゴム31を押さえたまま加硫可能となり、トレッドゴム3と樹脂タイヤ2とを接合しやすくなる。
【0035】
次に、ユニット4を押圧部材60と共に、加硫機の加圧室(非図示)の内部に入れる。加硫機により加圧室を加熱及び加圧して、未加硫ゴム31を加硫する。未加硫ゴム31を加硫することで、樹脂タイヤ2とトレッドゴム3とを接合する。
また、外側環状部21よりもタイヤ径方向内側RD2の内部空間SP1と、負圧環境のタイヤ径方向外側RD1の外部空間SP2とが加圧室によって加圧環境となる。加圧環境から負圧環境に向けて押圧力が作用する。負圧環境を挟んでタイヤ径方向RDの外側と内側にそれぞれ加圧環境を設けることで、外側環状部21に対してタイヤ径方向外側RD1からタイヤ径方向内側RD2に向かって作用する加圧力F1と、外側環状部21に対してタイヤ径方向内側RD2からタイヤ径方向外側RD1に向かって作用する加圧力F2とを吊り合わせることができる。これにより、トレッドゴム3と樹脂タイヤ2の接合に必要のない加圧力F1,F2が樹脂タイヤ2に作用することを抑制又は回避可能となり、樹脂タイヤ2が不意に変形することを抑制可能となる。
加硫機による加硫温度は、例えば110℃~120℃であり、トレッドゴム3を加硫する加硫工程の加硫温度(例えば140℃~160℃)よりも低い。これにより、加硫によって樹脂タイヤ2が損傷することを抑制可能となる。加圧は、例えば、0.6MPaが挙げられる。
【0036】
[第2実施形態]
(A)第1実施形態では、保護部材62を設けているが、第2実施形態のように保護部材62を設けなくてもよい。図6は、第2実施形態の非空気圧タイヤ1の製造方法において、袋体5を保持する構造を示すタイヤ軸C1を通るタイヤ子午線断面図である。第2実施形態の非空気圧タイヤ1の製造方法は、図6に示すように、袋体5が樹脂タイヤ2の全体を覆っており、袋体5が押圧部材60と押圧部材60の間に配置される中間部材70とで挟まれて保持されている。両方の押圧部材60が共に樹脂タイヤ2に接触すると、樹脂タイヤ2を変形させるおそれがあるために、対の押圧部材60のうち少なくとも1つの押圧部材60は、樹脂タイヤ2からタイヤ軸方向ADに離間している。図6の例では、袋体5が樹脂タイヤ2の全体を覆うため、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向内側AD2の内部空間SP1及びトレッドゴム3が負圧環境となる。
【0037】
[第3実施形態]
(B)図7は、第3実施形態の非空気圧タイヤ1の製造方法において、袋体5を保持する構造を示すタイヤ軸C1を通るタイヤ子午線断面図である。第3実施形態の非空気圧タイヤ1の製造方法は、図7に示すように、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの両側にそれぞれ保護部材62を配置し、袋体5を保護部材62と押圧部材60とで挟んで保持し、袋体5が樹脂タイヤ2に接触しないようにしている。これにより、負圧による袋体5が樹脂タイヤ2に接触する箇所がなくなるので、袋体5が樹脂タイヤ2を押圧することによる樹脂タイヤ2の変形を抑制可能となる。図7の例では、袋体5のタイヤ径方向内側RD2の領域、すなわち外側環状部21のタイヤ径方向内側RD2の内部領域SP1を含む保護部材62の内部が負圧環境となる。
【0038】
[変形例]
(C)上記第1~第3実施形態では、袋体5による負圧によってトレッドゴム3を樹脂タイヤ2に押し付けるようにしているが、これに限定されない。袋体5による負圧環境を設ける場合に比べて、トレッドゴム3と樹脂タイヤ2の密着性が劣るが、袋体5を省略してもよい。
【0039】
(D)上記第1~第3実施形態では、新品の非空気圧タイヤ1の製造方法を説明しているが、これに限定されない。例えば、使用した非空気圧タイヤ1のトレッドゴム3を新品に変更するリトレッドに利用可能となる。リトレッドも非空気圧タイヤ1の製造方法である。リトレッドの場合には、摩耗したトレッドゴム3を削って除去する工程が必要となる。トレッドゴム3を全て除去した場合には、新品の非空気圧タイヤ1の製造方法と同様に、プライマー33と加硫接着剤32が必要となる。一方、トレッドゴム3を全て除去しない場合には、プライマー33と加硫接着剤32とを省略可能となる。
【0040】
(E)上記第1実施形態において、対の押圧部材60は、樹脂タイヤ2のタイヤ径方向内側RD2に配置される規制部材63によって所定距離D1が規定されるが、これに限定されない。例えば、規制部材63を樹脂タイヤ2のタイヤ径方向外側RD1に配置してもよい。
【0041】
(F)上記第1実施形態において、保護部材62と袋体5との間にパッキン64を配置しているが、これに限定されない。例えば、袋体5と外側環状部21との間にパッキン64を配置してもよい。
【0042】
(G)上記第1~第3実施形態において、シート状のトレッドゴム3を樹脂タイヤ2に巻き付けることでユニット4を形成しているが、これに限定されない。例えば、トレッドゴム3を円筒状に形成して樹脂タイヤ2に嵌め込んでもよい。
図3に示す樹脂タイヤ2とトレッドゴム3の間の積層構造は適宜変更可能である。
対の押圧部材60は、エアシリンダ61によって移動可能に構成されているが、駆動手段はエアシリンダ61に限定されず、種々変更可能である。
上記実施形態において、押圧部材60は、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの両方に配置されて対をなしているが、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの一方のみに配置されていてもよい。また、保護部材62は、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの両方に配置されて対をなしているが、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの一方のみに配置されていてもよい。また、パッキン64は、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの両方に配置されて対をなしているが、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの一方のみに配置されていてもよい。
【0043】
[1]
以上のように、非空気圧タイヤ1の製造方法は、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態のように、接地面を有するトレッドゴム3と、トレッドゴム3のタイヤ径方向内側RD2に設けられる樹脂タイヤ2とを備える非空気圧タイヤ1の製造方法であって、
硬化済の樹脂タイヤ2及び加硫済のトレッドゴム3を準備し、樹脂タイヤ2のタイヤ径方向外側RD1に、未加硫ゴム31及びトレッドゴム3を配置してユニット4を形成し、ユニット4を加圧室に入れて加熱及び加圧により未加硫ゴム31を加硫することで、樹脂タイヤ2とトレッドゴム3とを接合する、としてもよい。
【0044】
このようにすれば、樹脂タイヤ2に未加硫ゴム31とトレッドゴム3を配置してユニット4を形成するので、加硫済のトレッドゴム3と硬化済の樹脂タイヤ2との間に樹脂を流し込んで硬化して接合する方法に比べて、樹脂流れ不良の不具合及びトレッドゴム3の位置決め不良を回避可能となる。
【0045】
[2]
上記[1]に記載の非空気圧タイヤ1の製造方法において、第1~第3実施形態のように、ユニット4のトレッドゴム3を袋体5で覆い、袋体5の内部を負圧にすることでトレッドゴム3を樹脂タイヤ2側に押し付け、袋体5の内部を負圧にした状態で未加硫ゴム31を加硫する、としてもよい。
このように、負圧によってトレッドゴム3を樹脂タイヤ2側に押し付けた状態となるので、トレッドゴム3をより適切に樹脂タイヤ2に接合可能となる。また、加圧室内が加圧環境であり、トレッドゴム3が負圧環境にあるので、トレッドゴム3が圧力差の大きい部分に配置されるので、トレッドゴム3が押圧されやすくなり、トレッドゴム3をより適切に接合可能となる。
【0046】
[3]
上記[2]に記載の非空気圧タイヤ1の製造方法において、第1実施形態のように、樹脂タイヤ2は、トレッドゴム3が設けられる外側環状部21と、外側環状部21のタイヤ径方向内側RD2に配置される内側環状部20と、外側環状部21と内側環状部20とを連結する連結部22とを有し、外側環状部21のタイヤ径方向外側RD1に、トレッドゴム3を覆う袋体5による負圧環境を設け、外側環状部21よりもタイヤ径方向内側RD2及び負圧環境のタイヤ径方向外側RD1に加圧環境を設け、未加硫ゴム31を加硫する、としてもよい。
このように、樹脂タイヤ2の外側環状部21に対してタイヤ径方向外側RD1からタイヤ径方向内側RD2に向かう加圧力F1と、樹脂タイヤ2の外側環状部21に対してタイヤ径方向内側RD2からタイヤ径方向外側RD1に向かう加圧力F2が加圧環境によって生じ、力が釣り合うので、樹脂タイヤ2の外側環状部21の変形を防止可能となる。それでいて、トレッドゴム3を覆う袋体5による負圧環境が設けられるので、トレッドゴム3を樹脂タイヤ2に適切に押さえて接合可能となる。
【0047】
[4]
上記[3]に記載の非空気圧タイヤ1の製造方法において、第1実施形態のように、袋体5をタイヤ軸方向ADの外側から押さえるための押圧部材60と、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの外側において押圧部材60と樹脂タイヤ2の間に配置され且つ押圧部材60が樹脂タイヤ2に接触することを防止する保護部材62と、樹脂タイヤ2の外側環状部21のタイヤ軸方向ADの端部と保護部材62との間に配置され且つ袋体5と樹脂タイヤ2との間を密閉するためのパッキン64と、を用いる、としてもよい。
このように、押圧部材60の押圧力により樹脂タイヤ2が変形することを保護部材62によって回避可能となる。樹脂タイヤ2の外側環状部21よりもタイヤ径方向内側RD2に負圧環境が設けられることをパッキン64によって避けることができ、必要な箇所のみに負圧環境を設けやすく、樹脂タイヤ2の変形を抑制可能となる。
【0048】
[5]
上記[2]~[4]のいずれかに記載の非空気圧タイヤ1の製造方法において、第1~第3実施形態のように、袋体5をタイヤ軸方向ADの外側から押さえるための押圧部材60を用い、押圧部材60は、樹脂タイヤ2からタイヤ軸方向ADに離間している、としてもよい。
このように、押圧部材60が樹脂タイヤ2に接触しないので、加圧環境下において押圧部材60が樹脂タイヤ2を押さえて変形させることを防止可能となる。
【0049】
[6]
上記[5]のいずれかに記載の非空気圧タイヤ1の製造方法において、第1及び第2実施形態のように、樹脂タイヤ2のタイヤ軸方向ADの外側において押圧部材60と樹脂タイヤ2の間に配置され且つ押圧部材60が樹脂タイヤ2に接触することを防止する保護部材62を用い、保護部材62は、負圧によって袋体5が樹脂タイヤ2に接触することを防止する、としてもよい。
このようにすれば、袋体5の負圧が樹脂タイヤ2に作用して樹脂タイヤ2を変形することを抑制可能となる。
【0050】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0051】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0052】
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 :非空気圧タイヤ
2 :樹脂タイヤ
3 :トレッドゴム
4 :ユニット
5 :袋体
20 :内側環状部
21 :外側環状部
22 :連結部
31 :未加硫ゴム
60 :押圧部材
62 :保護部材
64 :パッキン
AD :タイヤ軸方向
C1 :タイヤ軸
RD :タイヤ径方向
RD1 :タイヤ径方向外側
RD2 :タイヤ径方向内側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7