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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152138
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】バタフライバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/22 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F16K1/22 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066135
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩樹
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA02
3H052BA12
3H052BA13
3H052BA25
3H052CA02
3H052CA03
3H052CA19
3H052CB23
3H052DA02
(57)【要約】
【課題】耐キャビテーション性能を発揮しつつ微少流量の高精度な調整を可能としたバタフライバルブであり、大口径化する場合にも、弁翼側付近を中心とした全体の精度を確保した状態で、簡便な成形手段により弁体を製作できるバタフライバルブを提供する。
【解決手段】流体の流路となる筒状ボデー2のシートリング5内に円板状の弁体4をステム軸3を通して回転させて流路を開閉する。弁体は4、ステム軸3を中心に一対の弁翼シール部20を設け、この一対の弁翼シール部20は、ステム軸3の中心側に向いた面が同一平面上に位置するように、平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる筒状ボデーのシートリング内に円板状の弁体をステム軸を通して回転させて前記流路を開閉するバタフライバルブであって、前記弁体は、前記ステム軸を中心に一対の弁翼シール部を設け、この一対の弁翼シール部は、前記ステム軸の中心側に向いた面が同一平面上に位置するように、平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けられていることを特徴とするバタフライバルブ。
【請求項2】
前記弁体は、当該弁体を前記ステム軸と交差する方向の最大径位置で切断する断面において、一対の前記弁翼シール部の互いに対向する外端側面の中央位置同士を前記ステム軸を通るように結んだシール中心線が、前記外端側面の幅内に収まるように設けられた請求項1に記載のバタフライバルブ。
【請求項3】
前記弁体は、鋳造により製造されたものであり、当該鋳造による成形時には、一対の前記弁翼シール部の前記ステム軸の中心側に向いた面が同一平面となり、かつ同位置が最大径となるようにした請求項1に記載のバタフライバルブ。
【請求項4】
前記弁体のオリフィス側の前記弁翼シール部の二次側の面には、流体の整流機能を備えた弁翼整流部が設けられた請求項1に記載のバタフライバルブ。
【請求項5】
請求項4における弁翼シール部と前記弁翼整流部との間にスリット状の圧力室が設けられたバタフライバルブ。
【請求項6】
前記弁翼シール部の外径よりも前記弁翼整流部の外径を小径とした請求項4又は5に記載のバタフライバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイトシャット機能を有し、特に、大口径化した場合にも、微少流量の調整を可能としながら耐キャビテーション性能を発揮し、かつエロージョンの発生を防止しつつ、高レンジアビリティに顕著な効果を有するバタフライバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のバタフライバルブは、特に、弁体の微少流量時において、弁体外周側のシール部である弁翼端部を通った流体を整流化し、二次側への急激な流速の増大を防いでキャビテーションの発生を防止し、振動や騒音も抑制することが要求されている。
これに加えて、弁体の閉止時には、タイトシャットにより流体漏れを確実に防ぎつつ、弁閉時から開度制御をおこなうときには、微少流量を中心として、全開時に至るまで正確に流量制御できる高レンジアビリティの流量制御が求められる。
【0003】
ところで、通常のバタフライバルブでは、ボデー内周に設けられるシール面は、その幅方向の中央位置が最も高くなるように設けられ、弁閉状態においては、このボデー側シール面の中央位置に弁翼端部が当接するようになっている。そのため、この状態から弁体を開方向に動作させるときには、弁翼端部とボデー側シール面との摩擦抵抗が大きくなり、特に、バルブが大口径化すると、弁体の操作トルクもよる摩擦抵抗が増加し、ボデー側シール面がダメージを受けやすくなるという問題も生じることとなる。
その上、上記の弁閉状態では、弁翼端部が、ボデー側シール面に食い込んだ状態となるため、弁開操作時の初期には、弁体が急激に動作しようとする、いわゆるジャンピング現象が発生しやすくなり、超微開度や微開度付近において弁体を微細に動作させて流量制御することが難しくなる。
【0004】
上記の対策として、本出願人は、特許文献1のバタフライバルブを提案している。このバタフライバルブにおいて、弁体は、弁閉時のシール部であるタイトシャット用の弁閉止部と、キャビテーションを抑制する押圧弁部とを備え、弁閉止部のオリフィス側が、ノズル側に対して弁の一次側に傾斜する態様に設けている。このように、弁閉止部の両側の弁翼端部を流路方向に対して垂直方向に形成せずに、互いにやや傾けた状態に形成することで、弁閉時には、弁閉止部のオリフィス側の弁翼端部をボデー側シール面に対して浅い角度で当接させるようにし、弁開動作時のステムの摩擦抵抗を小さくして弁体の操作トルクを低減でき、ボデー側シートリングのダメージも抑えている。
これに加えて、弁閉止部の弁翼端部のシートリングへの食い込みを防ぐことで、弁開操作時の初期の弁体のジャンピング現象を防ぎ、弁体の超微開度や微開度付近の流量調整を容易にしている。
【0005】
一方、特許文献2のバタフライ弁においては、弁体が、断面逆S字形状に形成され、そのオリフィス側の背面には、櫛歯状突起が列設されている。このバタフライ弁では、弁体を逆S字状に設けることでオリフィス側の背面に凸面を設け、この凸面を通過する流体の減圧する割合を小さくすることで、キャビテーションを抑えつつ、弁閉動作時のトルクを小さくしようとするものである。その上で、櫛歯状突起により流体が膨張しようとする空間を一層狭めることで、減圧割合をより小さくしてキャビテーションを抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2002-68846号公報
【特許文献2】特開2003-97732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者の特許文献1のバタフライバルブは、その弁体のシール部のオリフィス側、ノズル側のうちの一方を他方側に対して一次側に傾斜させているように、一般のフラットな円板形状の弁体に比べて弁体の構造が複雑になっており、このような複雑な形状の鋳物を高精度に製作する場合、通常、ロストワックス鋳造による成形が適している。
しかし、ロストワックス鋳造の場合、大型の鋳物の成形には適しておらず、このため、大口径のバタフライバルブ用の大型の弁体(鋳物)をロストワックス鋳造で成形することは難しい。
これに対して、砂型鋳造によれば、ロストワックス鋳造に比べて大型の鋳物を低コストで成形できるというメリットがあるが、同文献1のバタフライバルブの弁体のような複雑な形状の鋳物を成形することは難しいというデメリットがあり、さらに、この弁体が大型化したときには高精度に成形することが一層困難になる。
【0008】
一方、後者の特許文献2の場合には、弁体を断面逆S字形状とし、さらに、オリフィス側の背面に櫛歯状突起を列設した複雑な形状であるため、このバタフライ弁の弁体についても、特許文献1の場合と同様に成形が困難であり、さらに、大口径になるにしたがって精度を確保することが難しくなる。
【0009】
特に、上記の特許文献1や2のような微少流量の制御をおこなうバタフライバルブの場合、シートリングとの当接シール側である、弁体(弁翼)の外周端面付近の精度が要求される。そのため、バルブの大口径化に伴って弁体が大型化する場合にも、この弁体の外周端面側を全周に渡って高精度に形成して組立後のシール性や微開度の流量制御機能を発揮し、しかも、砂型鋳造などの簡便な成形手段により生産性を向上しながら容易に製作できる弁体を備えたバタフライバルブの開発が求められていた。
【0010】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、耐キャビテーション性能を発揮しつつ微少流量の高精度な調整を可能としたバタフライバルブであり、大口径化する場合にも、弁翼側付近を中心とした全体の精度を確保した状態で、簡便な成形手段により弁体を製作できるバタフライバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、流体の流路となる筒状ボデーのシートリング内に円板状の弁体をステム軸を通して回転させて流路を開閉するバタフライバルブであって、弁体は、ステム軸を中心に一対の弁翼シール部を設け、この一対の弁翼シール部は、ステム軸の中心側に向いた面が同一平面上に位置するように、平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けられているバタフライバルブである。
【0012】
請求項2に係る発明は、弁体は、当該弁体をステム軸と交差する方向の最大径位置で切断する断面において、一対の弁翼シール部の互いに対向する外端側面の中央位置同士をステム軸を通るように結んだシール中心線が、外端側面の幅内に収まるように設けられたバタフライバルブである。
【0013】
請求項3に係る発明は、弁体は、鋳造により製造されたものであり、当該鋳造による成形時には、一対の弁翼シール部のステム軸の中心側に向いた面が同一平面となり、かつ同位置が最大径となるようにしたバタフライバルブである。
【0014】
請求項4に係る発明は、弁体のオリフィス側の弁翼シール部の二次側の面には、流体の整流機能を備えた弁翼整流部が設けられたバタフライバルブである。
【0015】
請求項5に係る発明は、弁翼シール部と前記弁翼整流部との間にスリット状の圧力室が設けられたバタフライバルブである。
【0016】
請求項6に係る発明は、弁翼シール部の外径よりも弁翼整流部の外径を小径としたバタフライバルブである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によると、弁体は、ステム軸を中心に一対の弁翼シール部を設け、一対の弁翼シール部は、ステム軸の中心側に向いた面が同一平面上に位置するように、平行に位置ずれさせた状態で段違い形状に設けているので、大口径化により弁体が大型化する場合にも、この弁体を上型と下型とを備えた鋳型を用いた砂型鋳造のような簡便な鋳造手段によってコンパクトに製作でき、しかも、鋳造性を高めて弁翼側付近を中心に弁体全体の精度を確保できる。
【0018】
弁体の操作時には、全開時から弁体を90度回転したときに、弁翼シール部の外周面側のシール部位の幅方向、すなわち厚さ方向における中間位置を、ステム軸を中心にボデーのシートリングの幅方向の中央位置に対してやや弁開方向にずらした状態で配置しながら当接シールさせて弁閉状態にできる。このとき、弁翼シール部とシートリングとの接触面積を少なく抑え、また弁翼シール部のシートリングへの食い込み量を抑えた状態でタイトシャット機能を発揮することで流体の漏れを確実に阻止し、この状態から弁開操作するときには、摺動接触面積が小さいことで微開度調整が容易になり、二次側への急激な流速の増大を防いでキャビテーションの発生を抑制できる。
【0019】
上記の弁閉時には、全開時からの90度の回転により、流路に対してステム軸の中心側に向いた面、すなわちシートリングとの接触シール部位を流路に対して垂直となる向きに容易に操作でき、このとき、弁翼シール部の外周面のシートリングに対する食い込み量を減らした状態にできる。これにより、弁体の開閉操作を繰り返した場合にも、シートリングの摩耗や消耗を抑え、シートリングの劣化によるシール性及び微少流量調整時の機能性の低下を防いだ状態で、微少流量の高精度の調整機能を維持することが可能となる。
【0020】
さらに、全閉から全開までの90度の開閉動作をそのまま90度の開度表示によって外部に正確に表示することが可能であるため、弁体の開度範囲を簡便に設定できる。そのため、大口径化する場合にも、弁体を高精度に位置調整して開度表示する必要がなく、上記の弁体の開度表示を通して、微少流量時の開閉操作を正確におこなって、弁翼シール部を通った流体が急激に二次側に流れ込むことを回避し、流速の急激な増加の防止によりキャビテーションの発生も抑制し、これにより振動や騒音も抑制する。微少流量時の弁体のジャンピング現象を防ぐことで、より正確な開度調整が可能となる。弁翼シール部の端部側とシートリングとの摩擦抵抗を軽減できるため、操作トルクを低減できる。
さらには、弁体の厚みを薄く抑えることができるため、バルブ本体の面間方向の寸法を小さくして全体のコンパクト化も図れる。
【0021】
請求項2に係る発明のように弁体を構成することで、弁体の外周全体にわたって弁翼シール部の外端側面の幅内に連続的にシール部を設けることができる。これにより、弁閉時において、弁体の適宜の回転を許容しつつこの弁体外周全体のシール性を確保した状態で、弁体を砂型鋳造等の簡便な鋳造手段によって成形でき、その生産性も高まる。弁閉時には、タイトシャット機能を発揮して流体漏れを阻止し、この弁閉時における弁体の食い込み量を必要最小限に抑えてシートリングが傷ついたり破損したりすることを防止し、これによって弁開操作時のジャンピング現象も抑える。
【0022】
請求項3に係る発明によると、弁体の成形時には、一対の弁翼シール部のステム軸の中心側に向いた面である同一平面を境界にして、上型と下型とによる簡単な組み合わせの鋳型を用いて砂型鋳造等の簡便な鋳造手段によって簡単に弁体を製作できる。砂型鋳造で弁体を製作する場合、その同一平面を鋳造時の見切り面とし、この見切り面から抜き勾配も確保できることで型が引っ掛かる部分がなくなり、正確かつ容易に弁体を製作可能となる。さらに、鋳造後には、弁翼シール部のシートリングとのシール側に簡単に切削加工を施すこともでき、この切削加工により弁翼シール部のシール側を高精度に形成することで、弁閉時のシール性や微少流量調整時の精度が一層向上する。
【0023】
請求項4に係る発明によると、オリフィス側の弁翼シール部の二次側に流体の整流機能を備えた弁翼整流部を、砂型鋳造等の簡便な鋳造手段により弁体に簡単に一体に形成できる。弁開時には、弁翼シール部を通過した流体を弁翼整流部で整流化することにより、キャビテーションの発生を抑えつつ、流体を微少流量によって流すことができる。
【0024】
請求項5に係る発明によると、弁翼シール部と弁翼整流部との間にスリット状の圧力室を形成しつつ、砂型鋳造により弁体を設けることができる。弁体に圧力室を設けることで、特に、微少流量時において、流体が圧力室に流れ込み、しかも、圧力室をスリット状に設けていることで、流れ込んだ流体を圧力室に滞留させて流速を大きく減速させた後に、弁翼整流部から二次側に流すことが可能になる。これにより、キャビテーションの発生を防ぎつつ、微少流量の流体を流すことができる。
【0025】
請求項6に係る発明によると、砂型鋳造により、弁翼シール部の外径よりも弁翼整流部の外径を小径とした形状の弁体を容易に設けることができる。弁翼整流部をより小径に設けることで、この弁翼整流部の弁体の開閉操作時におけるシートリングへの接触を回避し、操作トルクを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のバタフライバルブの実施形態における弁体を示す斜視図である。
図2図1の弁体の平面図である。
図3】本発明のバタフライバルブの実施形態を示す模式図である。
図4図3のバタフライバルブの弁開直後の超微開状態を示す模式図である。
図5図4のバタフライバルブがさらに弁開した状態を示す模式図である。
図6図3のバタフライバルブの全開状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明におけるバタフライバルブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1図2においては、本発明のバタフライバルブの実施形態における弁体を示し、図3図6においては、本発明のバタフライバルブの実施形態を示している。
本発明のバタフライバルブは、以下に説明する通り、微小流量の調整を可能とし、また耐キャビテーション性に優れるものであるが、特に呼び径350A以上の口径の場合に効果的であり、350A~500Aのサイズにおいて特に顕著な効果が得られる。
【0028】
図において、本実施形態のバタフライバルブ(以下、バルブ本体1という)は、流体の流路となるボデー2、ステム軸3、弁体4を備えており、この弁体4は、ステム軸3を通してボデー2内で回転操作可能に設けられている。
【0029】
図3に示すように、ボデー2は、例えばダクタイル鋳鉄等の鋳鉄により形成され、筒状、特に、本例では短筒状に設けられ、このボデー2の内周には、NBRやEPDMなどのゴム材料に形成された弾性シートリング5が焼き付け手段等により装着される。シートリング5の内周面には、弁体4の外周との対向位置に環状の内周シール面6が設けられ、この内周シール面6は、シートリング5のそれ以外の部分に対して、内径側にやや高くなるように設けられる。
【0030】
図1図2において、弁体4は、例えば、ステンレスや鋳鉄を材料として、鋳造により円板状に製造されるものであり、その中央の上下位置には、ステム孔10、10がそれぞれ形成される。ステム軸3は、上ステム軸、下ステム軸に分割され、各ステム軸3は、それぞれ、弁体4の前記上下の各ステム孔10にそれぞれ挿着される。弁体4は、ステム軸3によりボデー2のシートリング5内に装着され、この弁体4を、ステム軸3を通して手動操作又は自動操作により回転させ、ボデー2内の流路11を開閉するようになっている。
【0031】
弁体4には、ステム軸3を中心に一対の弁翼シール部20、20が設けられ、この弁翼シール部20の全体がシートリング5の内周シール面6に全周に渡って当接可能となるように、略円板状に設けられる。一対の弁翼シール部20は、ステム軸3に対して、その一方側がオリフィス側、他方側がノズル側に配置され、これら弁翼シール部20の外周には環状の外端側面21が形成され、この外端側面21がシートリング5とのシール部として機能するようになっている。
【0032】
弁体4は、当該弁体4をステム軸3と交差する方向の最大径位置で切断する断面において、一対の弁翼シール部20の互いに対向する外端側面21の中央位置同士をステム軸3を通るように結んだ、図2図3において一点鎖線で示したシール中心線Lが、外端側面21の厚さ方向の幅T内に収まるように設けられている。
【0033】
図3に示した弁閉時には、中心側面22が流路方向に対して垂直に交差する位置となっており、シートリング5の内周シール面6に対して外端側面21が当接シールすることで、タイトシャット機能を発揮して弁閉時の流体漏れを防ぎつつ、この弁閉状態からごくわずかずつ弁開操作させて、所望の微少流量を流すことが可能になっている。各弁翼シール部20の両側付近の表裏面には、互いに略平行なフラット面29が形成される。
【0034】
図示されるように、このような弁閉状態では、シール中心線Lがやや弁開方向に傾いた状態となっている。後述するように、弁翼シール部20の外端側面21は球面状であるため、この外端側面21が内周シール面6に接している範囲でタイトシャットが可能であるが、内周シール面6は内径側に高くなっているため、さらに閉方向に回転させることで、外端側面21はなお内周シール面6側に食い込むことができる。このように、弁体4を流路方向に垂直に位置させた状態を弁閉としても、外端側面21の最大の食い込み位置よりも手前とすることが(いわゆる弁翼差値を付けることが)可能であるため、操作トルクの低減等に有利である。
【0035】
図2において、一対の弁翼シール部20は、その幅Tが同一の厚さとなるように設けられ、かつ、同図に二点鎖線により示したステム軸3の中心側に向いた面(以下、中心側面という)22が同一平面上に位置するように、弁翼シール部20の厚さ方向に互いに平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けられている。この場合、弁翼シール部20は、ステム軸3に対して、オリフィス側又はノズル側の両翼側のうち、一方側が流路の一次側、他方側が流路の二次側に位置ずれしており、本例においては、ステム軸3に対して、オリフィス側が流路11の一次側、ノズル側が流路11の二次側に位置ずれするように設けている。
【0036】
なお、一対の弁翼シール部20の幅Tは、必ずしも同一の厚さでなく、異なる厚さを有していてもよいが、一対の弁翼シール部20の幅Tが同一の厚さになるように設けた場合には、弁閉時に、これら弁翼シール部20がシートリング5に均等に当接して円周シール方向において均一なシール性能を発揮する。
【0037】
弁翼シール部20の外端側面21は、弁体4の中心部を中心とした仮想の略球面形状の一部を成す曲面形状に設けられる。このような形状を有することで、ステム軸3を除く部分の弁体4の全周にわたって、外端側面21の幅内に連続的にシール部を形成することができ、弁体4は、弁閉時に優れたシール性を発揮することが可能となる。
【0038】
弁体4は、鋳造による成形時には、一対の弁翼シール部20のステム軸3の中心側に向いた面(中心側面)22が同一平面となるように設けられる。この中心側面22の面方向を以下、「弁体面方向」という。弁体4の成形時には、後述するように、この中心側面22位置が、弁体4を弁体面方向に対して垂直な方向から平面視した場合に、最大径となるようにしている。
【0039】
鋳造後においては、弁翼シール部20の加工を施すことにより、弁翼シール部20の外端側面21が、略球面形状の一部を成す曲面形状に設けられることから、弁翼シール部20の最大径となる部分は、この弁翼シール部20の外端側面21全体となる。この弁翼シール部20の外端側面の曲面形状は、弁体4を閉位置とした際に、外端側面21とシートリング5とが接触して形成されるシールラインが、ステム軸3を通るとともに、外端側面21の幅内に収まる連続的なシール部となる。一例として、図2、3中に示したシール中心線Lがこれに該当する。
このことから、弁翼シール部20における中心側面22の外端側面21がシートリング5に当接する場合にも、確実に弁閉時のシール性能が発揮される。
【0040】
弁体4のオリフィス側の弁翼シール部20には、この弁翼シール部20の二次側の面に沿うようにして略円弧状の弁翼整流部23が設けられ、この弁翼整流部23により、弁体4には流体の整流機能が備えられている。バルブ本体1により、微少流量の流体を流すときには、この流体は、オリフィス側の弁翼シール部20の外端側面21とシートリング5内周との間を通過し、続いて、弁翼整流部23を通して流体がボデー2内を通過するときには、この弁翼整流部23により整流作用が発揮され、これによって噴流や乱流が抑えられた状態で二次側に流れるようになっている。
【0041】
弁翼シール部20と弁翼整流部23とは、これらを接続する最奥部を除くそれぞれの対向面20a、23aが、互いに平行になるように設けられ、これら弁翼シール部20と弁翼整流部23との間には、スリット状の圧力室Rが所定の間隙により設けられる。このように、圧力室R内の対向面20a、23aを互いに平行状態となるように形成していることにより、当該圧力室R内を平行滞留領域とし、この平行滞留領域Rに弁翼シール部20側から流れる流体を滞留させ、後述する連通部24より流出させることにより、流速を抑制するようにしている。平行滞留領域Rの最奥部には、対向面20a、23aに対して略垂直方向に形成されたアール状の奥部面25が設けられている。
【0042】
弁翼整流部23は、弁翼シール部20の外径よりもその外径を小径としており、これにより、弁体4の開閉動作時には、弁翼整流部23の外面部23bがシートリング5の内周シール面6に接触することが防がれている。弁翼整流部23の外径は、シートリング5の内周シール面6と同径又はそれ以下とされ、操作トルク低減と整流作用の両立の観点から、内周シール面6よりも小径であって、且つ弁翼シール部20の外径の3~5%程度小径であることが好ましい。
【0043】
さらに、弁翼整流部23には、圧力室R内と弁翼整流部23の二次側(二次側流路)とを連通させる連通部24が貫通して設けられる。本例における連通部24は、所定の穴径による9つの丸穴形状の連通孔により設けられ、これら連通孔24は、弁翼整流部23の弁翼側付近の所定位置に、この弁翼整流部23の弁翼シール部20との対向面23aに対して略垂直方向に形成されている。この連通部24を通して、圧力室Rに滞留した流体を二次側に流したり、流体を二次側から圧力室Rに吸い込むことが可能になる。連通部24の大きさ(穴径)や数、総面積、弁体への形成位置は、任意に設定可能であり、これらを適宜設定することで、キャビテーション性能を高めることが可能になっている。
【0044】
前述した弁体4を装着したバルブ本体1において、図3は、弁体4の全閉状態(弁体4の回転角度0度の状態)を示し、図4図5においては、バルブ本体の微少流量時の状態を示している。ここで、本実施形態において、バルブ本体1の「微少流量」時とは、以降に説明する弁体4の「超微開状態」ないし「微開状態」を含む、ごくわずかな弁開度の状態をあらわすものとする。
【0045】
図4においては、図3の全閉状態から弁体4をごくわずかだけ回転させた、弁翼シール部20の弁開直後の超微開状態を示している。特に、同図の「超微開状態」では、例えば呼び径350Aにおいて、弁体4が、全閉状態(図3に示した弁体4の回転角度0度の状態)よりも大きく、回転角度16度未満の回転角度範囲で回転した状態を示しており、この微開度状態を含む微少流量時には、弁体4の一次側と二次側との圧力差により流速が速く、それに伴い低圧となるため、キャビテーションが発生しやすくなっている。
【0046】
より詳しくは、図4の「弁翼シール部20の弁開直後の超微開状態」では、図3の全閉状態から弁体4が略12度回転した状態をあらわしている。この状態では、弁翼シール部20の外端側面21と内周シール面6の隙間から流れ込む流体は、弁翼整流部23と内周シール面6の隙間から二次側に流れ出る流体と同等以下となり、後者の流速が速くなるため、当該部分付近や圧力室R内が低圧となりやすい。これに対し、本実施形態の構造においては、弁体4の二次側から連通部24を通った流体が、圧力室R内に引き込まれ、この圧力室R内の低圧状態を回復させるように構成している。その結果、弁開度の増加に伴う過度な流速の増大を抑制することができ、流量調節はキャビテーションの防止に有利となる。
【0047】
図5においては、微少流量時において、弁体4がさらに弁開方向に回転した状態を示し、具体的には、弁体4が、図3の全閉状態から略20度回転した状態をあらわしている。このように、「微開状態」は、微少流量時において、図4の「超微開状態」よりも弁体4の回転角度が大きい状態をあらわし、例えば、呼び径350Aにおいて、弁体4の回転角度が略16度以上略20度程度の範囲をあらわすものとする。
【0048】
図6においては、弁体4の全開状態を示し、弁体4が図3の全閉状態から流路11の中心線P方向に略90度回転した状態をあらわしている。
【0049】
図2に示すように、弁体4のノズル側の弁翼シール部20の一次側には、オリフィス側とは異なる形状の弁翼整流部26が設けられ、この弁翼整流部26によりノズル側の整流化を図ることでキャビテーションが抑制される。ノズル側の弁翼整流部26は、図で示した形状以外にも、任意の形状に設けることができる。
【0050】
前述したオリフィス側の弁翼整流部23には、その外端から下流側に向けて、球面状の翼状片27が形成され、ノズル側の弁翼シール部26には、その外端から上流側に向けて球面状の翼状片28が形成されている。これら球面状の翼状片27、28により、オリフィス側、ノズル側において、さらなる整流化がそれぞれ図られるようになっている。
【0051】
続いて、前述したバタフライバルブの動作を説明する。
図6のバルブ本体1の全開状態においては、流路11の中心線Pに対してバルブ本体1の中心側面22が一致した状態となる。これにより、流路の中心線Pに対してシール中心線Lが所定の角度で傾いた状態になっている。
【0052】
図6の全開状態から全閉状態とするときには、ステム軸3を90度弁閉方向に回転するようにする。このとき、図2に示すように、弁体4に、ステム軸3を中心に一対の弁翼シール部20、20を設け、この一対の弁翼シール部20の幅Tは、同一の厚さに設けられ、かつステム軸3の中心側に向いた面(中心側面)22が同一平面上に位置するように、平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けていることにより、弁翼シール部20において、図3の一点鎖線で示したシール中心線Lのシール位置よりも手前側の外端側面21が、オリフィス側、ノズル側において、シートリング5の内周シール面6に当接した状態となる。
【0053】
このように、弁体4を全開状態から略90度回転させたときに、弁翼シール部20の外周面側における幅T方向(厚さ方向)の中間位置を、ステム軸3を中心にシートリング5の幅方向の中心位置に対してやや弁開方向にずらした状態とし、外端側面21の角部付近を内周シール面6に当接させて弁閉シールできる。このため、オリフィス側、ノズル側のそれぞれにおいて、内周シール面6の中央位置から外端側面21をずらし、この外端側面21の内周シール面6に対する食い込み量を減らした状態で、シール性能を発揮しながら弁閉状態にできる。
【0054】
しかも、成形加工後の弁体4は、弁翼シール部20の外端側面21同士が、ステム軸3を通る状態で結んだ場合に最大径となるように球面状に設けているので、外端側面21は、その幅内のどの位置においてもステム軸3からの距離が同じとなる。このため、外端側面21の角部付近は勿論、外端側面21の何れの位置が内周シール面6に当接している場合にも、確実に密封可能なシール性能を発揮できる。このことから、上記のように、外端側面21の手前側が内周シール面6に当接している場合であっても、タイトシャット機能を発揮して漏れを確実に防止する。
【0055】
その上、外端側面21の角部付近が内周シール面6にシール接触して密封性を確保した状態から、さらに弁体4を閉方向に回転させるようにすれば、外端側面21と内周シール面6(シートリング5)との接触面積を増加させてシール性をより高めることもできる。そのため、外端側面21が内周シール面6に接触し始めたときからさらに弁閉方向に操作し、外端側面21の中央位置付近を内周シール面6に当接シールさせることで、二段シール機能を発揮させることも可能となる。
【0056】
また、例えば、弁翼シール部20を、中心側面22が垂直よりも手前側にやや傾く位置を全閉位置とすれば、さらに全閉位置での操作トルクを軽減できるほか、繰り返しの開閉により内周シール面6に潰れ等が生じシール性の低下等が見られる場合は、例えばシール中心線Lが内周シール面6の中央位置に当接するまで弁体4を回転させるなどして、内周シール面6の潰し量を増し、シール性を回復させることもできる。
【0057】
上記のように、クォーターターン型のバルブ本体1において、図6の全開状態から弁体4を90度回転させて正確に弁閉状態にできるため、この弁体4の回転範囲をそのまま90度の開度表示により外部に表示することができる。そのため、弁体4の回転と図示しない外部の開度表示部位とを高精度に位置調整する必要がなく、ステム軸3の角度に合わせてそのまま開度表示部位を取付けるようにすれば、この開度表示部位を通して簡便に弁開度を調整可能になる。
【0058】
このように、ステム軸3の回転角度を開度表示部位に等倍の角度でそのまま表示できるため、バルブ本体1を大口径化する場合であっても、特に、弁体4を開閉操作するときの微少流量時において、キャビテーションの発生を抑制しつつ、微細な開度調整をおこなって正確な流量調整をおこなうことができる。
【0059】
さらに、一対の弁翼シール部20を、それぞれ同一の厚さに設けていることで、この弁翼シール部20の外端側面21全面でシールした場合、シール時の当接面積を最大として密封性を飛躍的に向上しつつ、全周に渡って均等な面圧シール力を発揮して漏れを確実に阻止する。一方、外端側面21の内周シール面6への過度な圧接を阻止したシール状態とすれば、特に、微少流量時の弁体4のジャンピング現象を防いで、より正確な開度調整が可能になる。弁翼シール部20とシートリング5との摩擦抵抗を軽減することで操作トルクも軽減可能になる。
【0060】
バルブ本体1の弁開時には、弁翼整流部23によって弁翼シール部20を通過した流体の整流化を図ることができ、特に、微少流量時において、キャビテーションの発生を防ぎつつ流量調整が可能になる。
【0061】
弁翼シール部20と弁翼整流部23との間に圧力室Rを設けていることで、この圧力室Rに流れ込んだ流体を滞留させて流速を減速させた後に、弁翼整流部23から二次側に流すことができ、特に、微少流量時におけるキャビテーションの抑止に効果的となる。
【0062】
弁翼シール部20の外径よりも弁翼整流部23の外径を小径としているので、弁体4の開閉動作時には、弁翼整流部23がシートリング5(内周シール面6)に接触することを防いでトルク性を向上して容易に操作可能となる。
【0063】
次に、本発明におけるバタフライバルブの製造方法並びに上記実施形態における作用を説明する。
本実施形態におけるバルブ本体1においては、前述したように、弁体4は、ステム軸3を中心に一対の弁翼シール部20を設け、この一対の弁翼シール部20は、ステム軸3の中心に向いた面(中心側面)22が同一平面上に位置するように、平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けているので、中心側面22が同一平面となり、かつ同位置が最大径となる。
このことから、弁体4が大型である場合にも、中心側面22を見切り面とし、この見切り面22を境界として上型と下型とからなる鋳型による砂型鋳造によって容易に製造することが可能となる(図示せず)。
【0064】
このように最大径となる中心側面22を見切り面とすることで、上型と下型の引き抜きが容易となるほか、見切り面の上下方向には小さな段差などの通常砂型では成形しづらい形状が存在しなくなるなど、砂型鋳造でも成形の不具合が生じにくくなる。
これに対し、例えばシール中心線Lなど弁翼シール部20の外端側面21の中央付近に見切り面を設定すると、例えば弁翼整流部23、26との段差部分などを精度よく成形できない可能性がある。
【0065】
この場合、図2において、例えば、見切り面となる中心側面22を境にして、この見切り面22よりも下側のオリフィス側の弁翼整流部23とノズル側の弁翼シール部20を含む部分を下型、見切り面22よりも上側のオリフィス側の弁翼シール部20とノズル側の弁翼整流部26を上型によりそれぞれ成形するような鋳型を設け、この鋳型を用いて鋳造をおこなうようにすればよい。
【0066】
弁体4は、シール中心線Lが外端側面21の幅T内に収まるように設けているので、外周側のシール性を確保でき、この弁体4を砂型鋳造により容易に成形できる。
【0067】
弁体4のオリフィス側の弁翼シール部20の二次側の面に弁翼整流部23を設けているので、この弁翼整流部23を砂型鋳造により弁体4と一体に形成できる。
【0068】
弁翼シール部20と弁翼整流部23との間に圧力室Rを設け、この圧力室Rをスリット状に設けているので、鋳造時において、下型における圧力室Rの位置に所定形状の中子(図示せず)を配置することにより、注湯時には、オリフィス側の弁翼シール部20と弁翼整流部23との間に圧力室Rを設けつつ、砂型鋳造によって所定形状の弁体4を簡便に設けることができる。
【0069】
弁翼シール部20の外径よりも弁翼整流部23の外径を小径としているので、弁体4が大型である場合にも抜き代を確保して砂型鋳造によって容易に正確な形状に製作できる。
【0070】
上記のように、砂型鋳造により弁体4を成形することで、弁体4が大口径である場合にも成形することが可能になり、しかも、鋳型の強度が強く、歩留まりも向上することから、安価に大量生産することも可能になる。
【0071】
上記の鋳造工程後には、成形後の鋳物(弁体)に対して、仕上げ工程により仕上げ加工を施すようにする。
仕上げ工程においては、先ず、ステム孔10に沿うように弁体4の表裏側に設けられたボス部30において、何れか一方のボス部30に切削加工を施して平面状の基準面31を形成する。基準面31は、弁翼シール部20の表裏側のフラット面29に対して所定角度傾斜した状態で、少なくとも弁体4のステム孔10が形成されている上下側に形成するようにする。この場合、基準面31の傾斜角度としては、図2において、シール中心線Lと平行となる角度とする。
【0072】
次いで、上面に水平面を有する図示しない定盤などに対して、基準面31側が下向きとなるように弁体4を載置し、この弁体4の一対の弁翼シール部20を下方より支えて傾きを防ぐようにする。このとき、基準面31が弁翼シール部のフラット面29に対して傾斜していることで、シール中心線Lが定盤の水平面と平行な状態で弁体4が載置される。
【0073】
これにより、上記のように載置した弁体4に対し、定盤の水平面に沿って既存の切削刃等を円周方向に移動させ、弁体4の外周面に球面状の外端側面21を形成できるようになり、この外端側面21を形成するために、弁体4に対して切削刃を傾斜方向に移動させることなく、容易にかつ高精度に切削加工できる。そして、このような外端側面21の加工により、外端側面21は、その表面がシール中心線L位置に一致する円を大円として有する球の表面に一致するような球面形状に加工される。その結果、シール中心線Lが弁体4の全周にわたって外端側面21の幅内に収まるようにすることができ、優れたシール性が発揮されるようになる。
【0074】
さらに、切削刃等を用いた適宜の加工手段により、弁体4の上下にステム孔10を切削加工し、一方、オリフィス側の弁翼整流部23には、ドリルなどを用いて連通部(連通孔)24を穿孔加工する。本実施形態において、9つの連通孔24は、弁翼整流部23に対し、φ5mmの穴径により、図1に示す配置により設けている。また、ステム孔10に対しては、適宜の治具を使用しつつ、ブローチ加工等によりステム嵌合用の六角穴を設けるようにし、最後に、必要に応じて、弁体4の面取りや表面加工を施すようにする。
【0075】
上述したように、弁体4を形成する場合には、鋳造加工と仕上げ加工(切削加工)とを連続的に施すことにより、これら以外の複雑な工程を経ることなく、簡便に製造可能となる。
【0076】
なお、一対の弁翼シール部20は、ステム軸3の中心側に向いた面(中心側面)22が同一平面上に位置するように、平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けられていれば、ステム軸3に対して、オリフィス側が流路11の二次側、ノズル側が流路11の一次側に位置ずれした状態に設けることもできる。一対の弁翼シール部20は、それぞれ同一の厚さ以外となる形状に設けられていてもよい。
【0077】
上記実施形態においては、「弁翼シール部20の弁開直後の超微開状態」を、弁体4の回転角度が0度よりも大きく、16度未満までの状態に設定しているが、弁開側の角度の上限は16度未満に限ることはなく、弁翼シール部20とシートリング5との隙間の大きさ、弁翼整流部23とシートリング5との隙間の大きさ、圧力室Rの容積、連通部24の大きさや数、総面積、弁体4への形成位置などを適切に設定することで、弁開側の角度の上限を16度以上のより大きい角度、または16度未満のより小さく角度に設定することもできる。
【0078】
圧力室Rは、その空間が断面略直方体形状以外の形状となるように設けてもよく、任意の形状に設けることもできる。何れの場合においても、圧力室Rは、より広い空間となるように設けることが望ましい。
【0079】
連通部24は、オリフィス側の圧力室R内と、弁翼整流部23の二次側(流路)とを連通可能であれば、必ずしも複数箇所に設ける必要はなく、弁翼整流部23の一箇所に設けるようにしてもよい。さらに、連通部24は、丸穴形状以外であってもよく、この連通部24を弁翼整流部23の複数箇所に設ける場合には、弁翼整流部23に対して任意の位置に形成することもできる。連通部24は、弁翼整流部23の弁翼シール部20との対向面23aに対して略垂直方向以外の方向に形成したり、それぞれの連通部24を異なる向きに形成することもできる。このように連通部24を各種の態様に設けることで、流量特性を任意に設定することも可能になる。
【0080】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 バルブ本体
2 ボデー
3 ステム軸
4 弁体
5 シートリング
20 弁翼シール部
21 外端側面
22 ステム軸の中心側に向いた面(中心側面)
23 弁翼整流部
R 圧力室
T (厚さ方向の)幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6