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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152142
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】バタフライバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/22 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F16K1/22 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066139
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩樹
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA02
3H052BA12
3H052BA13
3H052BA25
3H052CA02
3H052CA03
3H052CA19
3H052CB23
3H052DA02
(57)【要約】
【課題】特に、微少流量時において流体が弁体を通過するときに効率的に流体を滞留させることで流速を低減し、耐キャビテーション性能を飛躍的に向上しつつ、微少流量の調整を容易におこなうことができるバタフライバルブを提供する。
【解決手段】流体の流路となる筒状ボデー2のシートリング5内に円板状の弁体4をステム軸3を通して回転させて流路を開閉する。弁体は一対の弁翼シール部20からなり、オリフィス側の弁翼シール部には流れ方向の二次側の面に沿って弁翼整流部23が設けられる。弁翼シール部と弁翼整流部との間にスリット状の圧力室Rを設け、オリフィス側の弁翼整流部には圧力室内と弁翼整流部の二次側との連通部24を貫通させると共に、圧力室内の弁翼シール部と弁翼整流部との対向面20a、23aを平行状態に形成して圧力室内を平行滞留領域とし、この平行滞留領域に流体を滞留させ連通部より流出させて流速を抑制するようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる筒状ボデーのシートリング内に円板状の弁体をステム軸を通して回転させて前記流路を開閉するバタフライバルブであって、前記弁体は、前記ステム軸を中心に設けた一対の弁翼シール部からなり、オリフィス側の前記弁翼シール部には、当該シール部の流れ方向の二次側の面に沿って弁翼整流部が設けられ、前記弁翼シール部と前記弁翼整流部との間にスリット状の圧力室を設け、オリフィス側の前記弁翼整流部には、前記圧力室内と前記弁翼整流部の二次側とを連通させる連通部を貫通させると共に、前記圧力室内の前記弁翼シール部と前記弁翼整流部との対向面を平行状態に形成して当該圧力室内を平行滞留領域とし、この平行滞留領域に流体を滞留させ前記連通部より流出させることにより流速を抑制するようにしたことを特徴とするバタフライバルブ。
【請求項2】
前記弁翼シール部の外径よりも前記弁翼整流部の外径を小径とした請求項1に記載のバタフライバルブ。
【請求項3】
前記弁翼シール部の弁開直後の超微開状態では、前記弁体の二次側から前記連通部を通った流体が、前記圧力室内に引き込まれ、前記圧力室内の低圧状態を回復させるように構成した請求項1又は2に記載のバタフライバルブ。
【請求項4】
オリフィス側の前記弁翼整流部の外端から下流側に向けて球面状の翼状片を形成し、ノズル側の前記弁翼シール部の外端から上流側に向けて球面状の翼状片を形成した請求項1又は2に記載のバタフライバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイトシャット機能を有し、特に、大口径化した場合にも、微少流量の調整を可能としながら耐キャビテーション性能を発揮し、かつエロージョンの発生を防止しつつ、高レンジアビリティに顕著な効果を有するバタフライバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のバタフライバルブは、特に、微少流量時において、弁体外周側のシール部である弁翼端部を通った流体を整流化し、二次側への急激な流速の増大を防いでキャビテーションの発生を防止し、振動や騒音も抑制することが要求されている。
これに加えて、弁体の閉止時には、タイトシャットにより流体漏れを確実に防ぎつつ、弁閉時から開度制御をおこなうときには、微少流量を中心として、全開時に至るまで正確に流量制御できる高レンジアビリティの流量制御が求められる。
【0003】
このようなバタフライバルブとして、本出願人は、例えば、特許文献1のバタフライバルブを提案している。このバタフライバルブでは、弁体のオリフィス側とノズル側の外周縁にタイトシャット用の弁閉止部を形成し、オリフィス側の弁閉止部の下流側、ノズル側の弁閉止部の上流側に向けて、押圧弁部をそれぞれ形成している。そして、これらのうち、オリフィス側の弁閉止部を、ノズル側の弁閉止部に対して一次側に傾斜させつつ、オリフィス側の押圧弁部と弁閉止部の間に空隙部を形成し、この空隙部内から下流側に向けて連通する貫通部を押圧弁部に形成している。これにより、弁体を微小開度に回転したときに、オリフィス側において、空隙部から貫通部を通して流体が流れるようにすることで、流速を低減させてキャビテーションを抑制しつつ、高レンジアビリティを発揮できるようになっている。
【0004】
一方、特許文献2のバタフライバルブの弁体(ディスク)には、このディスク上に配置された密閉表面を有する第1のベーンと、この第1のベーンに対して配置された無孔の第2のベーンとを備え、これら第1のベーンと第2のベーンとは、ディスク周囲に沿って形成された溝により、互いにオフセットされた状態で設けられている。この場合、第1のベーンと第2のベーンとは、互いに平行に設けられ、これにより、ディスク外周の溝の対向面も平行に設けられている。このような構造により、このバタフライバルブは、ベーン間の溝に流体を案内し、これにより急激な噴射によるキャビテーションを抑えようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2002-68846号公報
【特許文献2】特表2005-515375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者の特許文献1のバタフライバルブの場合、オリフィス側の弁閉止部をノズル側の弁閉止部に対して一次側に傾斜させていることから、オリフィス側において、弁閉止部が下流側の弁圧押部に対しても傾斜し、これら弁閉止部と弁圧押部との対向面が、互いに傾斜した状態で、これらの間に空隙部が設けられている。そのため、空隙部が、奥部側に徐々に狭まったテーパ形状となり、その奥細形状により空隙部の容積が小さく抑えられることになる。これに対して、特に、バルブを大口径化した場合にも、空隙部の容積を大きく確保し、より多くの流体を空隙部に滞留させることで、微開時に貫通部を通して流体が流れるときに、流速を低減する性能をさらに向上することが要望されている。これに加えて、微開時には、上流側からの流体が空隙部の奥部側に対して傾斜方向から流れ込むために、垂直方向から流れ込む場合に比較して、流速の低減効果が低下しやすくなる。これらに対し、空隙部の形状の改善を図り、これにより貫通部を通して流速を低減し、耐キャビテーション性能を一層向上できるバタフライバルブが求められている。
【0007】
一方、後者の特許文献2の場合には、第1のベーンと第2のベーンとが互いに平行に設けられ、これらの間の溝の対向面が平行に設けられている。しかし、第2のベーンには、下流側と連通する貫通部等が設けられておらず、弁開時に溝に流れ込んだ流体は、この溝から再度あふれるようにして下流側に流れ出るようになっている。このように、特許文献2のバタフライバルブの弁体は、特許文献1の構造とは異なり、溝(空隙部)に流れ込んだ流体を、この空隙部から貫通部を通して第2のベーン(押圧弁部)より流すことで、効果的にキャビテーションを抑制するようにしたものではない。
【0008】
上記のことから、本出願人は、大口径化する場合にも、微少流量時における流速の低減性能を向上して流体の勢いを減じるようにし、耐キャビテーション性能を高めつつ、微少流量の調整を可能としたバタフライバルブを開発するに至った。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、特に、微少流量時において流体が弁体を通過するときに効率的に流体を滞留させることで流速を低減し、耐キャビテーション性能を飛躍的に向上しつつ、微少流量の調整を容易におこなうことができるバタフライバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、流体の流路となる筒状ボデーのシートリング内に円板状の弁体をステム軸を通して回転させて流路を開閉するバタフライバルブであって、弁体は、ステム軸を中心に設けた一対の弁翼シール部からなり、オリフィス側の弁翼シール部には、当該シール部の流れ方向の二次側の面に沿って弁翼整流部が設けられ、弁翼シール部と弁翼整流部との間にスリット状の圧力室を設け、オリフィス側の弁翼整流部には、圧力室内と弁翼整流部の二次側とを連通させる連通部を貫通させると共に、圧力室内の弁翼シール部と弁翼整流部との対向面を平行状態に形成して当該圧力室内を平行滞留領域とし、この平行滞留領域に流体を滞留させ連通部より流出させることにより流速を抑制するようにしたバタフライバルブである。
【0011】
請求項2に係る発明は、弁翼シール部の外径よりも弁翼整流部の外径を小径としたバタフライバルブである。
【0012】
請求項3に係る発明は、弁翼シール部の弁開直後の超微開状態では、弁体の二次側から連通部を通った流体が、圧力室内に引き込まれ、圧力室内の低圧状態を回復させるように構成したバタフライバルブである。
【0013】
請求項4に係る発明は、オリフィス側の弁翼整流部の外端から下流側に向けて球面状の翼状片を形成し、ノズル側の弁翼シール部の外端から上流側に向けて球面状の翼状片を形成したバタフライバルブである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、オリフィス側の弁翼シール部の流れ方向の二次側の面に沿って弁翼整流部を設け、弁翼シール部と弁翼整流部との間にスリット状の圧力室を設け、その弁翼整流部に連通部を貫通させ、圧力室内の対向面を平行状態に形成した平行滞留領域とし、この平行滞留領域に流体を滞留させて連通部より流出させることにより流速を抑制するようにしているので、弁開時には、弁翼シール部とシートリングとの間を通過した流体が、そのまま弁翼整流部とシートリングとの間に流れ込むことを防ぎ、スリット状の平行滞留領域である圧力室に一旦滞留し、その一部が連通部から流出するようになる。この場合、圧力室内の弁翼シール部と弁翼整流部との対向面を平行状態に形成していることで、この圧力室内により多くの流体を滞留させることができる。また、連通孔は、弁翼整流部の厚み方向に設けられるところ、圧力室の対向面は平行状態であるため、連通孔は圧力室の奥行方向に対して略垂直に形成されることになる。つまり、圧力室内に流入した流体が連通孔から二次側に流出する際には、流れ方向が略直角に曲げられるため、流体の流れが阻害されやすい。このため、特に、微少流量時において、平行滞留領域に効率的に流体を滞留させた後に、この流体を連通部を通して流速を低減しながら二次側に流出させて耐キャビテーション性能を飛躍的に向上でき、微少流量の調整も容易におこなうことが可能になる。
【0015】
請求項2に係る発明によると、弁翼シール部の外径よりも弁翼整流部の外径を小径としたことで、弁翼整流部のシートリングへの接触を回避し、シートリングを保護しながら弁体の開閉が可能であるため、操作トルクを小さく抑えることが可能になり、耐エロージョン性も向上する。弁翼シール部の微開時には、弁翼シール部とシートリングとの隙間よりも、弁翼整流部とシートリングとの隙間が常に大きくなり、この弁翼整流部とシートリングとの隙間、及び連通部を通して、整流化を図りながらスムーズに二次側に流すことが可能となる。
【0016】
請求項3に係る発明によると、弁翼シール部の弁開直後の超微開状態時に、この弁翼シール部とシールリングとの隙間が絞られて、この隙間を流れる流体の量が極少になるときに、弁体の二次側から連通部を通った流体が圧力室内に引き込まれ、圧力室内の低圧状態を回復させるように構成している。これにより、弁翼整流部側が著しく低圧化することを防いで、弁翼シール部側から弁翼整流部側を通して流体をスムーズに流してキャビテーションの発生を確実に抑制する。
【0017】
請求項4に係る発明によると、オリフィス側の弁翼整流部の外端から下流側に向けて球面状の翼状片を形成し、ノズル側の弁翼シール部の外端から上流側に向けて球面状の翼状片を形成していることにより、弁体の外周側を通る流体は、微開領域において、弁翼シール部がシートリングから外れて以降、この翼状片とシートリングとの隙間を通ることとなり、一定の開度まではほぼ流れないか、流量が制限される。したがって、弁翼シール部の開度が増すにつれて一次側から流入する流体の量も増加するが、翼状片部分では流れが制限されるため、圧力室に流入し連通孔を通って二次側に流れる流体も依然多い状態となる。そのため、この開度領域では開度が増すにつれて急激に流量が増えるようなことが防がれ、弁体の開度に応じて徐々に流量を増加させることができるので、コントロール弁としての機能性が向上して微細な流量調整をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のバタフライバルブの実施形態における弁体を示す斜視図である。
図2図1の弁体の平面図である。
図3】本発明のバタフライバルブの実施形態を示す模式図である。
図4図3のバタフライバルブの弁開直後の超微開状態を示す模式図である。
図5図4のバタフライバルブがさらに弁開した状態を示す模式図である。
図6図3のバタフライバルブの全開状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明におけるバタフライバルブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1図2においては、本発明のバタフライバルブの実施形態における弁体を示し、図3図6においては、本発明のバタフライバルブの実施形態を示している。
本発明のバタフライバルブは、以下に説明する通り、微小流量の調整を可能とし、また耐キャビテーション性に優れるものであるが、特に呼び径350A以上の口径の場合に効果的であり、350A~500Aのサイズにおいて特に顕著な効果が得られる。
【0020】
図において、本実施形態のバタフライバルブ(以下、バルブ本体1という)は、流体の流路となるボデー2、ステム軸3、弁体4を備えており、この弁体4は、ステム軸3を通してボデー2内で回転操作可能に設けられている。
【0021】
図3に示すように、ボデー2は、例えばダクタイル鋳鉄等の鋳鉄により形成され、筒状、特に、本例では短筒状に設けられ、このボデー2の内周には、NBRやEPDMなどのゴム材料に形成された弾性シートリング5が焼き付け手段等により装着される。シートリング5の内周面には、弁体4の外周との対向位置に環状の内周シール面6が設けられ、この内周シール面6は、シートリング5のそれ以外の部分に対して、内径側にやや高くなるように設けられる。
【0022】
図1図2において、弁体4は、例えば、ステンレスや鋳鉄を材料として、鋳造により円板状に製造されるものであり、その中央の上下位置には、ステム孔10、10がそれぞれ形成される。ステム軸3は、上ステム軸、下ステム軸に分割され、各ステム軸3は、それぞれ、弁体4の前記上下の各ステム孔10にそれぞれ挿着される。弁体4は、ステム軸3によりボデー2のシートリング5内に装着され、この弁体4を、ステム軸3を通して手動操作又は自動操作により回転させ、ボデー2内の流路11を開閉するようになっている。
【0023】
弁体4には、ステム軸3を中心に一対の弁翼シール部20、20が設けられ、この弁翼シール部20の全体がシートリング5の内周シール面6に全周に渡って当接可能となるように、略円板状に設けられる。一対の弁翼シール部20は、ステム軸3に対して、その一方側がオリフィス側、他方側がノズル側に配置され、これら弁翼シール部20の外周には環状の外端側面21が形成され、この外端側面21がシートリング5とのシール部として機能するようになっている。
【0024】
弁体4は、当該弁体4をステム軸3と交差する方向の最大径位置で切断する断面において、一対の弁翼シール部20の互いに対向する外端側面21の中央位置同士をステム軸3を通るように結んだ後述するシール中心線Lが、外端側面21の厚さ方向の幅T内に収まるように設けられている。
【0025】
図3に示した弁閉時には、シートリング5の内周シール面6に対して外端側面21が当接シールすることで、タイトシャット機能を発揮して弁閉時の流体漏れを防ぎつつ、この弁閉状態からごくわずかずつ弁開操作させて、所望の微少流量を流すことが可能になっている。各弁翼シール部20の両側付近の表裏面には、互いに略平行なフラット面29が形成される。
【0026】
図2において、一対の弁翼シール部20は、その幅Tが同一の厚さとなるように設けられ、かつ、同図に二点鎖線により示したステム軸3の中心側に向いた面(以下、中心側面という)22が同一平面上に位置するように、弁翼シール部20の厚さ方向に互いに平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けられている。この場合、弁翼シール部20は、ステム軸3に対して、オリフィス側又はノズル側の両翼側のうち、一方側が流路の一次側、他方側が流路の二次側に位置ずれしており、本例においては、ステム軸3に対して、オリフィス側が流路11の一次側、ノズル側が流路11の二次側に位置ずれするように設けている。
【0027】
なお、一対の弁翼シール部20の幅Tは、必ずしも同一の厚さでなく、異なる厚さを有していてもよいが、一対の弁翼シール部20の幅Tが同一の厚さになるように設けた場合には、弁閉時に、これら弁翼シール部20がシートリング5に均等に当接して円周シール方向において均一なシール性能を発揮する。
【0028】
弁翼シール部20の外端側面21は、弁体4の中心部を中心とした仮想の略球面形状の一部を成す曲面形状に設けられる。このような形状を有することで、ステム軸3を除く部分の弁体4の全周にわたって、外端側面21の幅内に連続的にシール部を形成することができ、弁体4は、弁閉時に優れたシール性を発揮することが可能となる。
【0029】
弁体4は、鋳造による成形時には、一対の弁翼シール部20のステム軸3の中心側に向いた面(中心側面)22が同一平面となるように設けられる。この中心側面22の面方向を以下、「弁体面方向」という。弁体4の成形時には、後述するように、この中心側面22位置が、弁体4を弁体面方向に対して垂直な方向から平面視した場合に、最大径となるようにしている。
【0030】
鋳造後においては、弁翼シール部20の加工を施すことにより、弁翼シール部20の外端側面21が、略球面形状の一部を成す曲面形状に設けられることから、弁翼シール部20の最大径となる部分は、この弁翼シール部20の外端側面21全体となる。この弁翼シール部20の外端側面の曲面形状は、弁体4を閉位置とした際に、外端側面21とシートリング5とが接触して形成されるシールラインが、ステム軸3を通るとともに、外端側面21の幅内に収まる連続的なシール部となる。一例として、図2、3中に示したシール中心線Lがこれに該当する。
このことから、弁翼シール部20における中心側面22の外端側面21がシートリング5に当接する場合にも、確実に弁閉時のシール性能が発揮される。
【0031】
弁体4のオリフィス側の弁翼シール部20には、この弁翼シール部20の二次側の面に沿うようにして略円弧状の弁翼整流部23が設けられ、この弁翼整流部23により、弁体4には流体の整流機能が備えられている。バルブ本体1により、微少流量の流体を流すときには、この流体は、オリフィス側の弁翼シール部20の外端側面21とシートリング5内周との間を通過し、続いて、弁翼整流部23を通して流体がボデー2内を通過するときには、この弁翼整流部23により整流作用が発揮され、これによって噴流や乱流が抑えられた状態で二次側に流れるようになっている。
【0032】
弁翼シール部20と弁翼整流部23とは、これらを接続する最奥部を除くそれぞれの対向面20a、23aが、互いに平行になるように設けられ、これら弁翼シール部20と弁翼整流部23との間には、スリット状の圧力室Rが所定の間隙により設けられる。このように、圧力室R内の対向面20a、23aを互いに平行状態となるように形成していることにより、当該圧力室R内を平行滞留領域とし、この平行滞留領域Rに弁翼シール部20側から流れる流体を滞留させ、後述する連通部24より流出させることにより、流速を抑制するようにしている。平行滞留領域Rの最奥部には、対向面20a、23aに対して略垂直方向に形成されたアール状の奥部面25が設けられている。
【0033】
弁翼整流部23は、弁翼シール部20の外径よりもその外径を小径としており、これにより、弁体4の開閉動作時には、弁翼整流部23の外面部23bがシートリング5の内周シール面6に接触することが防がれている。弁翼整流部23の外径は、シートリング5の内周シール面6と同径又はそれ以下とされ、操作トルク低減と整流作用の両立の観点から、内周シール面6よりも小径であって、且つ弁翼シール部20の外径の3~5%程度小径であると好ましい。
【0034】
さらに、弁翼整流部23には、圧力室R内と弁翼整流部23の二次側(二次側流路)とを連通させる連通部24が貫通して設けられる。本例における連通部24は、所定の穴径による9つの丸穴形状の連通孔により設けられ、これら連通孔24は、弁翼整流部23の弁翼側付近の所定位置に、この弁翼整流部23の弁翼シール部20との対向面23aに対して略垂直方向に形成されている。この連通部24を通して、圧力室Rに滞留した流体を二次側に流したり、流体を二次側から圧力室Rに吸い込むことが可能になる。連通部24の大きさ(穴径)や数、総面積、弁体への形成位置は、任意に設定可能であり、これらを適宜設定することで、キャビテーション性能を高めることが可能になっている。
【0035】
前述した弁体4を装着したバルブ本体1において、図3は、弁体4の全閉状態(弁体4の回転角度0度の状態)を示し、図4図5においては、バルブ本体の微少流量時の状態を示している。ここで、本実施形態において、バルブ本体1の「微少流量」時とは、以降に説明する弁体4の「超微開状態」ないし「微開状態」を含む、ごくわずかな弁開度の状態をあらわすものとする。
【0036】
図4においては、図3の全閉状態から弁体4をごくわずかだけ回転させた、弁翼シール部20の弁開直後の超微開状態を示している。特に、同図の「超微開状態」では、例えば呼び径350Aにおいて、弁体4が、全閉状態(図3に示した弁体4の回転角度0度の状態)よりも大きく、回転角度16度未満の回転角度範囲で回転した状態を示しており、この微開度状態を含む微少流量時には、弁体4の一次側と二次側との圧力差により流速が速く、それに伴い低圧となるため、キャビテーションが発生しやすくなっている。
【0037】
より詳しくは、図4の「弁翼シール部20の弁開直後の超微開状態」では、図3の全閉状態から弁体4が略12度回転した状態をあらわしている。この状態では、弁翼シール部20の外端側面21と内周シール面6の隙間から流れ込む流体は、弁翼整流部23と内周シール面6の隙間から二次側に流れ出る流体と同等以下となり、後者の流速が速くなるため、当該部分付近や圧力室R内が低圧となりやすい。これに対し、本実施形態の構造においては、弁体4の二次側から連通部24を通った流体が、圧力室R内に引き込まれ、この圧力室R内の低圧状態を回復させるように構成している。その結果、弁開度の増加に伴う過度な流速の増大を抑制することができ、流量調節はキャビテーションの防止に有利となる。
【0038】
図5においては、微少流量時において、弁体4がさらに弁開方向に回転した状態を示し、具体的には、弁体4が、図3の全閉状態から略20度回転した状態をあらわしている。このように、「微開状態」は、微少流量時において、図4の「超微開状態」よりも弁体4の回転角度が大きい状態をあらわし、例えば、呼び径350Aにおいて、弁体4の回転角度が略16度以上略20度程度の範囲をあらわすものとする。
【0039】
図6においては、弁体4の全開状態を示し、弁体4が図3の全閉状態から流路11の中心線P方向に略90度回転した状態をあらわしている。
【0040】
図2に示すように、弁体4のノズル側の弁翼シール部20の一次側には、オリフィス側とは異なる形状の弁翼整流部26が設けられ、この弁翼整流部26によりノズル側の整流化を図ることでキャビテーションが抑制される。ノズル側の弁翼整流部26は、図で示した形状以外にも、任意の形状に設けることができる。
【0041】
前述したオリフィス側の弁翼整流部23には、その外端から下流側に向けて、球面状の翼状片27が形成され、ノズル側の弁翼シール部26には、その外端から上流側に向けて球面状の翼状片28が形成されている。これら球面状の翼状片27、28により、オリフィス側、ノズル側において、さらなる整流化がそれぞれ図られるようになっている。
【0042】
続いて、上述したバルブ本体1の弁体4の製造方法について説明する。
一般に、バタフライバルブの弁体は、鋳造加工によって製造されることが多い。そのうち、上述したような微少流量時の開度調整を可能としつつ、耐キャビテーション性能を発揮可能なバタフライバルブの弁体は、その形状が一般的な円板形状の弁体に比べて複雑になるため、ロストワックス鋳造により成形するのが適している。
【0043】
しかしながら、ロストワックス鋳造の場合、大型の鋳物の成形には適していないことから、特に、大口径の弁体をこのロストワックス鋳造により成形することは難しい。砂型鋳造によれば、ロストワックス鋳造に比べて大型の鋳物を低コストで成形できるというメリットがあるが、複雑な形状に成形することが難しいというデメリットもある。
【0044】
これに対し、本実施形態におけるバルブ本体1においては、前述したように、弁体4は、ステム軸3を中心に一対の弁翼シール部20を設け、この一対の弁翼シール部20は、ステム軸3の中心に向いた面(中心側面)22が同一平面上に位置するように、平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けているので、中心側面22が同一平面となり、かつ同位置が最大径となる。
このことから、弁体4が大型である場合にも、中心側面22を見切り面とし、この見切り面22を境界として上型と下型とからなる鋳型による砂型鋳造によって容易に製造することが可能となる(図示せず)。
【0045】
このように最大径となる中心側面22を見切り面とすることで、上型と下型の引き抜きが容易となるほか、見切り面の上下方向には小さな段差などの通常砂型では成形しづらい形状が存在しなくなるなど、砂型鋳造でも成形の不具合が生じにくくなる。
これに対し、例えばシール中心線Lなど弁翼シール部20の外端側面21の中央付近に見切り面を設定すると、例えば弁翼整流部23、26との段差部分などを精度よく成形できない可能性がある。
【0046】
この場合、図2において、例えば、見切り面となる中心側面22を境にして、この見切り面22よりも下側のオリフィス側の弁翼整流部23とノズル側の弁翼シール部20を含む部分を下型、見切り面22よりも上側のオリフィス側の弁翼シール部20とノズル側の弁翼整流部26を上型によりそれぞれ成形するような鋳型を設け、この鋳型を用いて鋳造をおこなうようにすればよい。
【0047】
弁体4は、シール中心線Lが外端側面21の幅T内に収まるように設けているので、外周側のシール性を確保でき、この弁体4を砂型鋳造により容易に成形できる。
【0048】
弁体4のオリフィス側の弁翼シール部20の二次側の面に弁翼整流部23を設けているので、この弁翼整流部23を砂型鋳造により弁体4と一体に形成できる。
【0049】
弁翼シール部20と弁翼整流部23との間に圧力室Rを設け、この圧力室Rをスリット状に設けているので、鋳造時において、下型における圧力室Rの位置に所定形状の中子(図示せず)を配置することにより、注湯時には、オリフィス側の弁翼シール部20と弁翼整流部23との間に圧力室Rを設けつつ、砂型鋳造によって所定形状の弁体4を簡便に設けることができる。
【0050】
弁翼シール部20の外径よりも弁翼整流部23の外径を小径としているので、弁体4が大型である場合にも抜き代を確保して砂型鋳造によって容易に正確な形状に製作できる。
【0051】
上記のように、砂型鋳造により弁体4を成形することで、弁体4が大口径である場合にも成形することが可能になり、しかも、鋳型の強度が強く、歩留まりも向上することから、安価に大量生産することも可能になる。
【0052】
上記の鋳造工程後には、成形後の鋳物(弁体)に対して、仕上げ工程により仕上げ加工を施すようにする。
仕上げ工程においては、先ず、ステム孔10に沿うように弁体4の表裏側に設けられたボス部30において、何れか一方のボス部30に切削加工を施して平面状の基準面31を形成する。基準面31は、弁翼シール部20の表裏側のフラット面29に対して所定角度傾斜した状態で、少なくとも弁体4のステム孔10が形成されている上下側に形成するようにする。この場合、基準面31の傾斜角度としては、図2において、シール中心線Lと平行となる角度とする。
【0053】
次いで、上面に水平面を有する図示しない定盤などに対して、基準面31側が下向きとなるように弁体4を載置し、この弁体4の一対の弁翼シール部20を下方より支えて傾きを防ぐようにする。このとき、基準面31が弁翼シール部のフラット面29に対して傾斜していることで、シール中心線Lが定盤の水平面と平行な状態で弁体4が載置される。
【0054】
これにより、上記のように載置した弁体4に対し、定盤の水平面に沿って既存の切削刃等を円周方向に移動させ、弁体4の外周面に球面状の外端側面21を形成できるようになり、この外端側面21を形成するために、弁体4に対して切削刃を傾斜方向に移動させることなく、容易にかつ高精度に切削加工できる。そして、このような外端側面21の加工により、シール中心線Lが弁体4の全周にわたって外端側面21の幅内に収まるようにすることができ、優れたシール性が発揮されるようになる。
【0055】
さらに、切削刃等を用いた適宜の加工手段により、弁体4の上下にステム孔10を切削加工し、一方、オリフィス側の弁翼整流部23には、ドリルなどを用いて連通部(連通孔)24を穿孔加工する。本実施形態において、9つの連通孔24は、弁翼整流部23に対し、φ5mmの穴径により、図1に示す配置により設けている。また、ステム孔10に対しては、適宜の治具を使用しつつ、ブローチ加工等によりステム嵌合用の六角穴を設けるようにし、最後に、必要に応じて、弁体4の面取りや表面加工を施すようにする。
【0056】
上述したように、弁体4を形成する場合には、鋳造加工と仕上げ加工(切削加工)とを連続的に施すことにより、これら以外の複雑な工程を経ることなく、簡便に製造可能となる。
【0057】
なお、一対の弁翼シール部20は、ステム軸3の中心側に向いた面(中心側面)22が同一平面上に位置するように、平行に位置ずれした状態で段違い形状に設けられていれば、ステム軸3に対して、オリフィス側が流路11の二次側、ノズル側が流路11の一次側に位置ずれした状態に設けることもできる。一対の弁翼シール部20は、それぞれ同一の厚さ以外となる形状に設けられていてもよい。
【0058】
上記実施形態においては、「弁翼シール部20の弁開直後の超微開状態」を、弁体4の回転角度が0度よりも大きく、16度未満までの状態に設定しているが、弁開側の角度の上限は16度未満に限ることはなく、弁翼シール部20とシートリング5との隙間の大きさ、弁翼整流部23とシートリング5との隙間の大きさ、圧力室Rの容積、連通部24の大きさや数、総面積、弁体4への形成位置などを適切に設定することで、弁開側の角度の上限を16度以上のより大きい角度、または16度未満のより小さく角度に設定することもできる。
【0059】
圧力室Rは、その空間が断面略直方体形状以外の形状となるように設けてもよく、任意の形状に設けることもできる。何れの場合においても、圧力室Rは、より広い空間となるように設けることが望ましい。
【0060】
連通部24は、オリフィス側の圧力室R内と、弁翼整流部23の二次側(流路)とを連通可能であれば、必ずしも複数箇所に設ける必要はなく、弁翼整流部23の一箇所に設けるようにしてもよい。さらに、連通部24は、丸穴形状以外であってもよく、この連通部24を弁翼整流部23の複数箇所に設ける場合には、弁翼整流部23に対して任意の位置に形成することもできる。連通部24は、弁翼整流部23の弁翼シール部20との対向面23aに対して略垂直方向以外の方向に形成したり、それぞれの連通部24を異なる向きに形成することもできる。このように連通部24を各種の態様に設けることで、流量特性を任意に設定することも可能になる。
【0061】
続いて、本発明におけるバタフライバルブの上記実施形態における動作並びに作用を説明する。
図3のバルブ本体の全閉状態においては、弁翼シール部20において、一点鎖線で示したシール中心線Lのシール位置よりも手前側の外端側面21が、オリフィス側、ノズル側において、シートリング5の内周シール面6に当接した状態になっている。
この全閉状態において、弁体4の一対の弁翼シール部20、20が、これらの全外周側に渡ってシートリング5の内周シール面6に当接シールし、タイトシャット機能により漏れが確実に防がれる。
【0062】
図4図5においては、バルブ本体1の微少流量時の状態を示している。この場合、バルブ本体1の弁体4は、オリフィス側の弁翼シール部20に弁翼整流部23を設け、弁翼シール部20と弁翼整流部23との間に圧力室Rを設け、弁翼整流部23には連通部24を貫通させると共に、圧力室R内の対向面20a、23aを平行状態に形成して当該圧力室R内を平行滞留領域とし、この平行滞留領域Rに流体を滞留させて、連通部24より流出させることにより流速を抑制するようにしている。これによって、弁翼シール部20を通った流体の一部は、弁翼整流部23とシートリング5との隙間に流れ込み、流体の残りの大部分は、圧力室R内にいったん滞留した後に、その一部が連通部24から流出することにより、整流化を図るようになっている。
【0063】
この場合、圧力室R内の対向面20a、23aを平行状態に形成し、当該圧力室R内を平行滞留領域としているので、この圧力室R内の空間が断面略直方体形状となり、圧力室が奥側に向けて狭まった断面略角錐形状の場合に比較して、より大きい容積を確保できる。そのため、圧力室R側に流れる流体は、この断面略直方体形状の圧力室R内により多く滞留し、この滞留量の増加により、流速を効果的に低減させた状態で連通部24を通して二次側に流すことが可能となる。
【0064】
しかも、平行滞留領域Rの最奥部には、対向面20a、23aに対して略垂直方向に形成した奥部面25を設けていることで、圧力室Rに流れ込んだ流体は、この奥部面25に対して略垂直方向から当たることで、その流速の低減効果が向上する。さらに、連通部24は、対向面23aに対して略垂直方向に形成されているため、圧力室Rに流れ込んだ流体は、圧力室Rの奥に向かって流れた後、略直角に連通部24に流れを曲げられることから、更なる流速の低減効果が発揮される。
【0065】
上記の微少流量時において、特に、図3の状態からステム軸3をごくわずかだけ弁開方向に回転した、弁翼シール部20の弁開直後の超微開状態(例えば、弁体4の回転角度が0度よりも大きく16度未満の状態)、例えば、図4に示した弁体4の回転角度を12度の状態にしたときには、矢印に示すように、弁体4の二次側から連通部24を通った流体が、圧力室R内に引き込まれ、圧力室R内の低圧状態を回復させるように構成している。
【0066】
これにより、超微開状態において、弁翼シール部20とシートリング5との間の流路が絞られることでこの流路を流れる流体の流速が増大し、弁翼整流部23側の圧力が極めて低くなろうとする場合にも、弁体4の二次側から引き込まれる流体によって圧力室R内の圧力を回復(上昇)させつつ、弁翼整流部23側からの流体を二次側に流すことが可能になる。
【0067】
さらに、図5の微開状態、すなわち、弁体4の回転角度が16度以上の状態では、弁翼シール部20側をより多くの流体が流れる一方、弁翼整流部23部分で流量が絞られる状態となることで、矢印に示すように、弁翼シール部20側から圧力室R内に滞留した一部の流体は、連通部24を通して二次側に流れるようになる。微少流量時には、弁翼シール部20から圧力室Rに向かう流体は、いったん略垂直方向に流れの向きを変えられながら圧力室R内に流入し、さらに、対向面20a、23aに対して略垂直方向に形成された連通部(連通孔)24により、再度、垂直方向に流れの向きを変えられた状態で二次側に流れるようになる。
【0068】
このように、弁翼シール部20側を流れるごくわずかな量の流体以外の大部分の流体が、連通部24を経由して二次側に流れることで、流体を減衰させてその圧力が流体の飽和水蒸気圧を下回らないようにして、キャビテーションの発生を抑制し、渦の発生や騒音も防いでいる。
【0069】
上述したことから、特に、微少流量時には、圧力室R内に流体を滞留させることに有利となり、オリフィス側において、流体が弁翼シール部20側を通過した後に、弁翼整流部23とシートリング5との間に流入する流体の勢いを効率的に減じている。これにより、流体が、弁体4を通過するときに周囲に比較してより低圧な低圧部が発生することを阻止し、流体の蒸発による気泡の発生や蒸気泡の崩壊を確実に抑えてキャビテーションの発生を抑制できる。そのため、微少流量を細かく正確に調整しつつ、この微量の流体を安定して流すことが可能になる。
【0070】
上記のように、バルブ本体1の微少流量時において、図4における弁体4の超微開状態では、弁翼整流部23側が過剰に低圧化することを防ぎ、一方、図5における弁体4の微開状態では弁翼整流部23側の流速が大きくなり過ぎないように圧力室R及び連通部24によって調整する機能を発揮し、これらの機能が微少流量時における弁開度の大きさによって適宜切り替わることで、超微開状態、微開状態の何れの微少流量時においても、確実にキャビテーション抑制機能を発揮する。この場合、超微開状態と微開状態とによる上記機能の切り替えは、例えば、各状態における弁翼シール部20・弁翼整流部23と、シートリング5との隙間の差によっておこなわれる。
【0071】
一例として、超微開状態は、(1)「弁翼シール部20の外端側面21と内周シール6とで形成される開口の面積」が、(2)「弁翼整流部23の外端側面と内周シール6とで形成される開口の面積」よりも小さい状態とし、微開状態は(1)が(2)と同等以上となった状態とすることが考えられる。そのため、これらの隙間の差を予め調整することにより、微少流量時には、適宜の弁開度で上記の機能を切替えるようにすることもできる。
【0072】
弁翼シール部20の外径よりも弁翼整流部23の外径を小径としているので、弁翼シール部20とシートリング5との間を通過した流体が、弁翼整流部23とシートリング5との間を通過して流れようとするとき、超微開状態では、弁翼シール部20とシートリング5との隙間よりも、弁翼整流部23とシートリング5との隙間が大きくなる。このことから、弁翼整流部23側に、弁翼シール部20側を通過した流体が流れることが可能な大きさの流路を確保でき、流体が弁翼整流部23を通過するときの乱流等の発生を抑え、キャビテーション抑制機能を向上に加えて、エロージョンの発生も抑えてシートリング5の浸食を防いでいる。
【0073】
圧力室R内の対向面20a、23aを平行に形成して平行対向領域を設けていることにより、弁翼シール部20に対して開口側が広がるように弁翼整流部23を設ける場合に比較して弁体4を薄く形成でき、延いては、バルブ本体1の面間を小さく抑えてコンパクト化に寄与できる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【0075】
例えば、上述した実施形態においては、バルブとしてバタフライバルブを例に挙げて説明したが、上記実施形態は、バルブの種類を限定せず、バルブの微開状態における微小流量の調節に有利な流体制御機構及び流体制御方法として捉えることもできる。
【0076】
具体的には、例えば、弁体による流体封止部の一次側と二次側との間に更に流体を滞留させる滞留領域を設け、この滞留領域の流体圧が一次側や二次側の流体圧よりも低下する場合に、二次側から滞留領域に流体を導入するようにして、滞留領域から二次側へ流れる流体の圧力低下を抑制する流体制御機構又は流体制御方法が考えられる。
このような機構によれば、例えば弁体の微開状態において、一次側から滞留領域に流入する流体よりも滞留領域から二次側に流出する流体が多い場合など、滞留領域の流体圧が低下しやすい状況では、滞留領域から二次側への流速が増大し、キャビテーションやエロージョンが発生しやすくなる場合であっても、二次側から滞留領域への流体の還流により、そのような現象が生じることを抑制することが可能となる。
【0077】
また、微開領域よりも開度が大きくなり、一次側から滞留領域に流入する流体が多くなれば、滞留領域の低圧化が生じなくなるため、一次側から流入した流体は、滞留領域で滞留し、二次側に流出する流体の速度を低下させることができるため、キャビテーション等の発生を抑制することが可能となる。
【0078】
このように、本発明によれば、微開領域では流体を還流させ、それ以上の開度では流体を滞留させることで、全開度域にわたってキャビテーション等の不具合の発生を抑制できる流体制御機構又は流体制御方法を提供することもできる。
【符号の説明】
【0079】
1 バルブ本体
2 ボデー
3 ステム軸
4 弁体
5 シートリング
20 弁翼シール部
20a 対向面
23 弁翼整流部
23a 対向面
24 連通部
27、28 翼状片
R 圧力室(平行滞留領域)
T (厚さ方向の)幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6