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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152147
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】改質器
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20241018BHJP
   B01J 35/50 20240101ALI20241018BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01J35/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066174
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寒川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 英将
(72)【発明者】
【氏名】永滝 文宏
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA20
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC72A
4G169CB81
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EE03
(57)【要約】
【課題】吸熱反応である原料ガスから改質ガスへの改質反応を、触媒を用いて促進させる改質器が備える加熱装置(ヒータ)の消費エネルギーを低減させる。
【解決手段】触媒層が形成された区間を含み、触媒層の一方の端面から流入した原料ガスが触媒層を通過するとき改質ガスが生成され、改質ガスが触媒層の他方の端面から流出するように構成された触媒容器と、触媒層を貫通し且つ改質ガスが流れる複数の改質ガス管と、を備え、加熱装置は、改質ガスを、触媒層から流出した後、複数の改質ガス管に流入するまでの区間において加熱する、改質器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層が形成された区間を含み、前記触媒層の一方の端面から流入した原料ガスが前記触媒層を通過するときに吸熱を伴う改質反応により改質ガスが生成され、前記改質ガスが前記触媒層の他方の端面から流出するように構成された触媒容器と、
前記触媒層を貫通し且つ前記改質ガスが流れる複数の改質ガス管と、
前記改質ガスを、前記触媒層から流出した後、前記複数の改質ガス管に流入するまでの区間において加熱する加熱装置と、
を備える改質器。
【請求項2】
請求項1に記載の改質器であって、
前記複数の改質ガス管は、前記触媒層において前記改質ガスの下流に向かうに従って内径が大きくなる、改質器。
【請求項3】
触媒層が形成された区間を含み、前記触媒層の一方の端面から流入した原料ガスが前記触媒層を通過するときに吸熱を伴う改質反応により改質ガスが生成され、前記改質ガスが前記触媒層の他方の端面から流出するように構成された触媒容器と、
少なくとも前記触媒層を加熱する加熱装置と、
前記改質ガスと前記触媒層に流入する前の前記原料ガスとの間で熱交換が行われる熱交換部と、
を備える改質器。
【請求項4】
請求項3に記載の改質器であって、
前記原料ガスが前記触媒容器の外側を流れるように構成された外側原料ガス流路と、
前記改質ガスが前記外側原料ガス流路の外側を流れるように構成された外側改質ガス流路と、を備え、
前記加熱装置は、前記触媒層の外側且つ前記外側原料ガス流路の内側に配設され、前記触媒層及び前記外側原料ガス流路を流れる前記原料ガスを加熱し、
前記熱交換部は、前記外側改質ガス流路及び前記外側原料ガス流路によって構成された、改質器。
【請求項5】
請求項3に記載の改質器であって、
前記原料ガスを前記触媒層に導入するように構成された原料ガス流入路と、
前記触媒層を貫通し且つ前記改質ガスが流れるように構成された内側改質ガス流路と、を備え、
前記加熱装置は、前記触媒層の外側に配設され、
前記熱交換部は、前記内側改質ガス流路における前記触媒層よりも下流の区間、及び前記原料ガス流入路によって構成された、改質器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の改質器であって、
前記原料ガスは、アンモニアガスであり、
前記改質ガスは、前記アンモニアガスが分解して生成された水素ガス及び窒素ガスを含むガスである改質器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、改質器に関する。具体的には、原料ガスの改質反応を促進する改質器に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-131454号公報には、触媒式アンモニア分解装置(所謂、改質器)が開示されている。この装置は、触媒を用いてアンモニアを水素と窒素に分解する。一般に、アンモニアの分解効率は高温になると上昇する。さらに、アンモニアの分解は吸熱反応であるため、アンモニアが分解される際に触媒から熱エネルギーが吸収される。従って、多くの場合、アンモニア分解のための改質器は、アンモニアと触媒を加熱するための加熱装置(ヒータ)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-131454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記装置では、触媒及び構造材によって構成された触媒層の内部に挿入されたアンモニアガス供給管を介してアンモニアが注入され、アンモニアの分解によって生成された水素ガス及び窒素ガスのそれぞれが触媒層の外周部にて捕集される。そのため、アンモニアガス供給管を通過するアンモニアによって触媒層とその内部のアンモニアの熱が奪われる。加えて、アンモニアの分解反応(即ち、吸熱反応)に伴って触媒層の熱が奪われる。従って、触媒層を加熱する加熱装置が大量のエネルギー(例えば、電気式ヒータにあっては、電力)を消費する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
加熱装置の消費エネルギーを低減させることが可能な改質器を提供するため、本明細書によって開示される技術は以下の手段を採用する。
【0006】
本開示に係る第1の手段は、触媒層が形成された区間を含み、前記触媒層の一方の端面から流入した原料ガスが前記触媒層を通過するときに吸熱を伴う改質反応により改質ガスが生成され、前記改質ガスが前記触媒層の他方の端面から流出するように構成された触媒容器と、前記触媒層を貫通し且つ前記改質ガスが流れる複数の改質ガス管と、前記改質ガスを、前記触媒層から流出した後、前記複数の改質ガス管に流入するまでの区間において加熱する加熱装置と、を備える改質器である。
【0007】
第2の手段は、第1の手段に係る改質器であって、前記複数の改質ガス管は、前記触媒層において前記改質ガスの下流に向かうに従って内径が大きくなる、改質器である。
【0008】
第3の手段は、触媒層が形成された区間を含み、前記触媒層の一方の端面から流入した原料ガスが前記触媒層を通過するときに吸熱を伴う改質反応により改質ガスが生成され、前記改質ガスが前記触媒層の他方の端面から流出するように構成された触媒容器と、少なくとも前記触媒層を加熱する加熱装置と、前記改質ガスと前記触媒層に流入する前の前記原料ガスとの間で熱交換が行われる熱交換部と、を備える改質器である。
【0009】
第4の手段は、第3の手段に係る改質器であって、前記原料ガスが前記触媒容器の外側を流れるように構成された外側原料ガス流路と、前記改質ガスが前記外側原料ガス流路の外側を流れるように構成された外側改質ガス流路と、を備え、前記加熱装置は、前記触媒層の外側且つ前記外側原料ガス流路の内側に配設され、前記触媒層及び前記外側原料ガス流路を流れる前記原料ガスを加熱し、前記熱交換部は、前記外側改質ガス流路及び前記外側原料ガス流路によって構成された、改質器である。
【0010】
第5の手段は、第3の手段に係る改質器であって、前記原料ガスを前記触媒層に導入するように構成された原料ガス流入路と、前記触媒層を貫通し且つ前記改質ガスが流れるように構成された内側改質ガス流路と、を備え、前記加熱装置は、前記触媒層の外側に配設され、前記熱交換部は、前記内側改質ガス流路における前記触媒層よりも下流の区間、及び前記原料ガス流入路によって構成された、改質器である。
【0011】
第6の手段は、第1乃至第5の手段に係る改質器であって、前記原料ガスは、アンモニアガスであり、前記改質ガスは、前記アンモニアガスが分解して生成された水素ガス及び窒素ガスを含むガスである改質器である。
【発明の効果】
【0012】
第1の手段において、加熱装置によって改質ガスが加熱されて高温となり、次いで、複数の改質ガス管を流れる高温の改質ガスによって触媒層が加熱される。即ち、触媒層が内部から加熱される箇所(より具体的には、改質ガス管のそれぞれの触媒層を貫通する区間の外周面の面積の和と等しい伝熱面積)が、改質ガス管の数が増えるに従って増加する。そのため、触媒層の一部を必要以上に加熱することなく、触媒層の多くの部分を触媒作用が活性化する温度に維持することができる。従って、第1の手段によれば、加熱装置の消費エネルギーが過大となることを回避できる可能性が高くなる。
【0013】
ところで、改質ガス管を流れる改質ガスは、触媒層との熱交換に伴い、下流に進むに従って温度が低下する。一方、第2の手段における改質ガス管は、下流において内径が大きくなっているので、改質ガスの流速が低下する。そのため、改質ガスの流速が大きい場合と比較して、改質ガスから触媒への熱伝達が促進される。そのため、改質ガス管を流れる改質ガスの温度低下に伴って触媒層への伝熱量が減少することが可及的に回避される。従って、第2の手段によれば、加熱装置の消費エネルギーが過大となることを回避しつつ、触媒層の更に多くの部分を触媒作用が活性化する温度に維持することができる可能性が高くなる。
【0014】
第3の手段において、改質ガスは、加熱装置によって加熱された触媒層から流出したときには比較的高温となっている。そのため、原料ガスは、熱交換部にて改質ガスにより加熱されてから触媒層に流入する。従って、第3の手段によれば、改質ガスの熱エネルギーが有効に活用されるので、加熱装置の消費エネルギーが過大となることを回避できる可能性が高くなる。
【0015】
第4の手段において、原料ガスは、熱交換部及び加熱装置により加熱されてから触媒層に流入する。そのため、第4の手段によれば、加熱装置の消費エネルギーが過大となることを回避できる可能性が更に高くなる。
【0016】
第5の手段において、改質ガスは、内側改質ガス流路を流れるときに触媒層(特に、加熱装置から離れた触媒層の中心部)を加熱した後、熱交換部にて原料ガスを加熱する。第5の手段によれば、加熱装置の消費エネルギーが過大となることを回避できる可能性が更に高くなる。
【0017】
第6の手段によれば、改質器を用いてアンモニアガスを水素ガス及び窒素ガスに分解することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムのブロック図である。
図2】第1実施形態に係る改質器の縦断面図である。
図3】第1実施形態に係る改質器の横断面図である。
図4】第1実施形態の変形例に係る改質器の縦断面図である。
図5】第2実施形態に係る改質器の縦断面図である。
図6】第3実施形態に係る改質器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態を図1図6を参照しながら説明する。説明中の同じ参照番号は、重複する説明をしないが同じ機能を有する同じ要素を意味する。第1実施形態に係る改質器1は、図1に示す燃料電池システム100に適用される。燃料電池システム100は、改質器1に加えてアンモニア貯蔵器91、吸着装置92及び燃料電池93を含んでいる。
【0020】
[改質器]
改質器1は、原料ガスとしてアンモニア貯蔵器91から流入したアンモニア(NH3)ガスが水素(H2)と窒素(N2)とに分解する改質反応を促進させる。アンモニア分解反応は、吸熱反応である。改質器1は、水素ガス、窒素ガス、及び改質反応に寄与しなかったアンモニアガスを含む混合ガスを吸着装置92に供給する。即ち、混合ガスの主成分は、改質ガスである水素ガス及び窒素ガスである。
【0021】
アンモニア貯蔵器91は、アンモニアを液体の状態にて貯蔵している。アンモニア貯蔵器91は、気化したアンモニア(即ち、アンモニアガス、原料ガス)を改質器1へ必要量だけ圧送するポンプ(不図示)を備えている。吸着装置92は、混合ガスに含まれるアンモニアを吸着する。吸着装置92は、アンモニアが除去された精製ガスを燃料電池93に供給する。燃料電池93は、精製ガスに含まれる水素を燃料として発電する。
【0022】
図2に示すように、改質器1は、触媒容器11、収容容器12、断熱材13、区画板14a~14b、触媒層15、ヒータ16、改質ガス流路17、改質ガス分岐部18、改質ガス合流部19、改質ガス流入管21、改質ガス流出管22及び原料ガス流入管23を含んでいる。図3に示すように、改質ガス流路17は、複数の改質ガス管17a~17iによって形成されている。以下、改質器1の構造に関する説明における上下左右の方向は、図2で見たときの方向である。
【0023】
[触媒容器]
触媒容器11及び収容容器12のそれぞれは、図2の一点鎖線を軸線L1とする略円筒形状を有し、同軸状に配置されている。より具体的には、収容容器12は、触媒容器11を覆っている。収容容器12の内壁面と触媒容器11の外壁面との間に形成された空間には、周知の断熱材料からなる断熱材13が充填されている。
【0024】
触媒容器11は、内部に原料ガス室11a、触媒層15及び改質ガス室11bを含んでいる。触媒層15は、原料ガス室11aの上方に隣接している。改質ガス室11bは、触媒層15の上方に隣接している。原料ガス室11aと触媒層15とは、区画板14aによって仕切られている。触媒層15と改質ガス室11bとは、区画板14bによって仕切られている。区画板14a、bのそれぞれは、円盤形状を有している。区画板14a、bは、多数の孔が形成されており、以て、通気性を有している。
【0025】
より具体的に述べると、触媒容器11の内周面、区画板14a及び区画板14bによって形成される空間には触媒が充填され、以て、触媒層15が構成されている。触媒層15は多数の粒状の触媒の集合体であり、通気性を有し且つ区画板14a、14bによって円柱形状に保持されている。触媒はアンモニア分解反応を促進するための改質触媒であり、例えばルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びパラジウム(Pd)の少なくとも一つとすることができるが、特定の触媒に限定されない。
【0026】
改質ガス室11bには、ヒータ16が配設されている。ヒータ16は電気式の加熱装置である。ヒータ16は、電力線(不図示)によって供給される電力によって発熱する。ヒータ16は、例えば円筒形状(円環板状)とし、触媒容器11の内周面に沿って配置することができる。
【0027】
[改質ガス管]
改質ガス管17a~17iのそれぞれは、改質ガス室11bから原料ガス室11aまで、区画板14b、触媒層15及び区画板14aを貫通して延在している。図3に示すように、改質ガス管17aは、軸線L1と同軸状に延在している。改質ガス管17b~17iのそれぞれは、軸線L1を中心とする円周上に等間隔に配置され、軸線L1と平行に延在している。
【0028】
改質ガス分岐部18は、改質ガス室11bに配設され、改質ガス流路17のそれぞれと接続されている。改質ガス分岐部18における改質ガス流路17とは反対側には、軸線L1と同軸状に延在する改質ガス流入管21の一端が接続されている。改質ガス流入管21の他端は、改質ガス室11b内にある。従って、改質ガス室11bと改質ガス分岐部18とは、改質ガス流入管21を介して互いに連通している。
【0029】
改質ガス合流部19は、原料ガス室11aに配設され、改質ガス流路17のそれぞれと接続されている。改質ガス合流部19における改質ガス流路17とは反対側には、軸線L1と同軸状に延在する改質ガス流出管22の一端が接続されている。従って、改質ガス流入管21と改質ガス流出管22とは、改質ガス流路17のそれぞれを介して互いに連通している。改質ガス流出管22は、断熱材13及び収容容器12を貫通して延在している。改質ガス流出管22の他端(不図示)は、吸着装置92と接続されている。
【0030】
原料ガス室11aには、原料ガス流入管23の一端が左方から接続されている。原料ガス流入管23は、断熱材13及び収容容器12を貫通して延在している。原料ガス流入管23の他端(不図示)には、アンモニア貯蔵器91が接続されている。
【0031】
[アンモニアの改質]
アンモニア貯蔵器91から供給されるアンモニアは、原料ガス流入管23を介して原料ガス室11aに流入する。
【0032】
次いで、アンモニアは、区画板14aに形成された多数の孔を介して触媒層15に流入する。触媒層15に流入したアンモニアは、触媒の作用を受けながら熱エネルギーを吸収して水素と窒素に分解する。分解されたこれらのガス(即ち、改質ガス)は、未分解のアンモニアと共に区画板14bに形成された多数の孔を介して改質ガス室11bに流入する。
【0033】
改質ガス室11bにある混合ガス(即ち、改質ガス及びアンモニアガス)は、ヒータ16によって加熱されて高温となる。高温となった混合ガスは、改質ガス流入管21及び改質ガス分岐部18を経て改質ガス流路17のそれぞれに流入し、触媒層15とその内部を流れるアンモニアを加熱する。即ち、高温となった混合ガスと触媒との間で改質ガス流路17の壁を介した熱交換が行われる。その結果、触媒が活性化し、触媒層15内のアンモニアの分解反応が促進される。より具体的に述べると、複数の改質ガス管17a~17iの管壁を介した熱交換によって混合ガスと触媒層15との間の伝熱面積を増加させることが可能となり、その結果、触媒層15における多くの部分を触媒作用が活性化する温度に維持することができる。
【0034】
(第1変形例)
第1実施形態の変形例(第1変形例)について、図4を参照しながら説明する。第1変形例に係る改質器1aは、上述した改質ガス流路17、改質ガス分岐部18及び改質ガス合流部19とは異なる形態の改質ガス流路24、改質ガス分岐部27及び改質ガス合流部28を含んでいる。改質ガス分岐部27及び改質ガス合流部28は、触媒容器11及び収容容器12と共に図4の一点鎖線が軸線L1a(即ち、上下方向の中心線)となるように同軸状に配置されている。改質ガス室11bにて改質ガス流入管21に流入した混合ガスは、改質ガス分岐部27、改質ガス流路24及び改質ガス合流部28を経て改質ガス流出管22に流入する。
【0035】
改質ガス流路24は、上面視においてマトリクス状(格子状)に配置された4×4=16本の改質ガス管によって形成されており、図4には改質ガス管24a~24d(即ち、4本のガス管)が示されている。即ち、図4に示された視認方向(図4の視点)において、改質ガス管24aの手前(図4の紙面の表側)には改質ガス管24aと同形である2本のガス管があり、改質ガス管24aの奥側(図4の紙面の裏側)には改質ガス管24aと同形である1本のガス管がある。
【0036】
図4から理解されるように、改質ガス流路24のそれぞれは、小径部25及び大径部26を含んでいる。大径部26は、小径部25と比較して外径及び内径が大きい区間である。そのため、混合ガスが小径部25から大径部26に流入すると、内径の増加に伴って混合ガスの流速が低下する。
【0037】
一方、改質ガス室11bにてヒータ16により加熱されて高温となった混合ガスは、触媒層15を加熱しながら改質ガス流路24を流れるので、改質ガス合流部28に近づくほど温度が低下する。換言すれば、改質ガス流路24において混合ガスの温度が低下するとき、混合ガスの流速が低下し、以て、混合ガスへの熱エネルギーの移動が促進される。従って、改質器1aによれば、触媒層15における上側(改質ガス分岐部27側)と下側(改質ガス合流部28側)との温度勾配を小さくすることが可能となる。その結果、触媒層15における更に多くの部分を触媒作用が活性化する温度に維持することができる。
【0038】
<第2実施形態>
第2実施形態について、図5を参照しながら第1実施形態との差異を中心に説明する。第2実施形態に係る改質器2は、図5に示すように、触媒容器31、中間容器32、外側容器33、収容容器34、断熱材35、触媒容器流出管36、区画板37a~37b、ヒータ38、触媒層39、原料ガス流入管41及び改質ガス流出管42を含んでいる。以下、改質器2の構造に関する説明における上下左右の方向は、図5で見たときの方向である。
【0039】
触媒容器31、中間容器32、外側容器33及び収容容器34のそれぞれは、図5の一点鎖線を軸線L2とする同軸状に配置されている。外側容器33の外壁面と収容容器34の内壁面との間に形成された空間には、周知の断熱材料からなる断熱材35が充填されている。
【0040】
触媒容器31の下面には、軸線L2を中心とする円形開口部(円形孔)である触媒容器流入口31aが形成されている。触媒容器31の上面には、軸線L2と同軸状に延在する触媒容器流出管36が接続されている。
【0041】
触媒容器31は、内部に原料ガス室31b、ヒータ38、触媒層39及び改質ガス室31c、を含んでいる。ヒータ38及び触媒層39は、原料ガス室31bの上方に隣接している。改質ガス室31cは、ヒータ38及び触媒層39の上方に隣接している。
【0042】
原料ガス室31bの上端には、区画板37aが配置されている。改質ガス室31cの下端には、区画板37bが配置されている。触媒容器31における区画板37aと区画板37bとの間の内周面には、ヒータ38が配設されている。ヒータ38は、円筒形状を有する電気式の加熱装置である。区画板37a、37b及びヒータ38の内周面によって形成される円筒形状の空間には触媒が充填され、以て、触媒層39が形成されている。
【0043】
中間容器32の左上部には、原料ガス流入管41の一端が接続されている。原料ガス流入管41は、外側容器33、断熱材35及び収容容器34を貫通して延在している。原料ガス流入管41の他端(不図示)は、アンモニア貯蔵器91に接続されている。
【0044】
外側容器33の右下部には、改質ガス流出管42の一端が接続されている。改質ガス流出管42は、断熱材35及び収容容器34を貫通して延在している。改質ガス流出管42の他端(不図示)は、吸着装置92と接続されている。
【0045】
原料ガス流入管41から中間容器32に流入したアンモニアは、中間容器32の内壁面と触媒容器31の外壁面との間に形成された外側原料ガス流路32aを下方に流れる。次いで、アンモニアは、触媒容器流入口31aから触媒容器31(具体的には、原料ガス室31b)に流入する。原料ガス室31bに流入したアンモニアは、区画板37aを介して触媒層39に流入し、触媒の作用を受けながら熱エネルギーを吸収して水素と窒素に分解する。
【0046】
分解されたこれらのガス(混合ガス)は、未分解のアンモニアとともに区画板37bを介して改質ガス室31cに流入する。混合ガスは、触媒容器流出管36を経て、中間容器32の外壁面と外側容器33の内壁面との間に形成された外側改質ガス流路33aに流入し、下方に流れる。次いで、混合ガスは、改質ガス流出管42を経て排出され、吸着装置92に向かう。
【0047】
ここで、ヒータ38の外側をアンモニアが流れるように構成された外側原料ガス流路32aの意義について説明する。ヒータ38が発生させる熱エネルギーは、触媒層39の外周部(即ち、ヒータ38と接する外周面近傍の領域)から触媒層39の軸線近傍(即ち、軸線L2近傍の領域)へ向けて移動する。加えて、ヒータ38は、内側にある触媒層39やその内部にあるアンモニアを直接加熱するのみならず、外側にある外側原料ガス流路32aを流れるアンモニアも加熱する。ヒータ38によって加熱されたアンモニアは触媒層39に流入する前から部分的に分解が始まり、触媒層39に流入すると触媒のもとでさらに分解される。
【0048】
加えて、外側原料ガス流路32aの外側を混合ガスが流れるように構成された外側改質ガス流路33aの意義について説明する。原料ガス流入管41から外側原料ガス流路32aに流入したアンモニアの温度は、一般に、混合ガスの温度よりも低い。そのため、外側原料ガス流路32aを流れるアンモニアと外側改質ガス流路33aを流れる混合ガスとの間で熱交換が行われる。具体的には、混合ガスがアンモニアによって冷却される。そのため、吸着装置92において、流入した混合ガスを冷却するための工程を省略する、或いは省力化することが可能となる。更に、アンモニアがヒータ38だけでなく混合ガスによって加熱されるため、ヒータ38の消費電力を抑えることができる。
【0049】
<第3実施形態>
第3実施形態について、図6を参照しながら第1実施形態との差異を中心に説明する。第3実施形態に係る改質器3は、図6に示すように、触媒容器51、収容容器52、断熱材53、区画板54a~54b、ヒータ55、触媒層56、原料ガス流入路57及び内側改質ガス流路58を含んでいる。以下、改質器3の構造に関する説明における上下左右の方向は、図6で見たときの方向である。
【0050】
触媒容器51及び収容容器52のそれぞれは、例えば略円筒形状を有するものであり、図6の一点鎖線を軸線L3とする同軸状に配置されている。触媒容器51の外壁面と収容容器52の内壁面との間に形成された空間には、周知の断熱材料からなる断熱材53が充填されている。
【0051】
触媒容器51は、内部に原料ガス室51a、ヒータ55、触媒層56及び改質ガス室51bを含んでいる。ヒータ55及び触媒層56は、原料ガス室51aの上方に隣接している。改質ガス室51bは、ヒータ55及び触媒層56の上方に隣接している。原料ガス室51aの上端には、区画板54aが配置されている。改質ガス室51bの下端には、区画板54bが配置されている。
【0052】
触媒容器51における区画板54aと区画板54bとの間の内周面には、ヒータ55が配設されている。ヒータ55は、円筒形状を有する電気式の加熱装置である。区画板54a、54b及びヒータ55の内周面によって形成される円筒形状の空間には触媒が充填され、以て、触媒層56が形成されている。ヒータ55は、発熱して触媒層39とその内部のアンモニアを加熱する。
【0053】
原料ガス流入路57は、収容容器52、断熱材53及び収容容器52を貫通し、下流側の一端(上端)は原料ガス室51a内にある。原料ガス流入路57の上流側はアンモニア貯蔵器91と接続されている。
【0054】
内側改質ガス流路58は、触媒層56を貫通して延びる触媒層貫通部58aと混合ガスを改質器3から排出する改質ガス流出部58bとを含んでいる。内側改質ガス流路58の上流側の一端(上端)は、改質ガス室51b内にある。改質ガス流出部58bの一部は、原料ガス流入路57内に配置されている。具体的には、内側改質ガス流路58は原料ガス流入路57の出口から内部に入り、しばらく原料ガス流入路57に含まれた区間(熱交換区間)を経た後、原料ガス流入路57の壁を貫通して外部に出る。原料ガス流入路57の下流側の端(不図示)は吸着装置92に接続されている。
【0055】
原料ガス流入路57から原料ガス室51aに流入したアンモニアは、区画板54aを介して触媒層56に流入し、触媒の作用を受けながら熱エネルギーを吸収して水素と窒素に分解する。分解されたこれらのガス(混合ガス)は、未分解のアンモニアとともに区画板54bを介して改質ガス室51bに流入する。その後、混合ガスは、内側改質ガス流路58を経て排出され、吸着装置92に向かう。
【0056】
ここで、内側改質ガス流路58の触媒層貫通部58aの意義について説明する。ヒータ55が発生させた熱エネルギーは、触媒層56とその内部を流れるガスを触媒層56の外周部(即ち、ヒータ55と接する外周面近傍の領域)から中心部(即ち、図6の軸線L3近傍の領域)に向かって加熱する。
【0057】
一方、触媒層56から流出した改質ガスや未分解のアンモニア(即ち、混合ガス)は、比較的高温になっている。このため、内側改質ガス流路58を流れる混合ガスは、触媒層貫通部58aの壁を介して触媒層56とその内部を流れるアンモニアを触媒層56の中心部から加熱する。このように、高温の混合ガスを利用して触媒層56を中心部から加熱できるため、ヒータ55の消費電力を抑えることができる。
【0058】
加えて、内側改質ガス流路58の一部区間が原料ガス流入路57の内部に含まれていることの意義について説明する。内側改質ガス流路58における触媒層56を貫通する区間よりも下流(即ち、区画板54aよりも下方の区間)を流れる混合ガスの温度は、触媒との熱交換が行われた後であっても比較的高い。一方、アンモニア貯蔵器91から供給されるアンモニアは、加熱されておらず、温度が比較的低い(例えば、25℃)。そのため、熱交換区間において混合ガスとアンモニアとの間で内側改質ガス流路58の壁を介して熱交換が行われる。即ち、アンモニアは、原料ガス室51aに流入する前に加熱される。
【0059】
アンモニアと混合ガスとの熱交換によってアンモニアの温度が上昇するので、触媒の温度上昇に寄与する。従って、ヒータ55の消費電力を抑えることができる。一方、熱交換によって混合ガスの温度が低下するので、吸着装置92において混合ガスを冷却する負担が軽減される。
【0060】
以上、説明したように、各実施形態の改質器1、1a、2、3によれば、ヒータ16、38、55の消費電力が過大となることを回避できる。
【0061】
<他の実施形態>
上述した実施形態において、原料ガスはアンモニアガスであり且つ改質ガスは水素及び窒素を含んでいた。別の実施形態として、原料ガスの主成分はメタンガス(CH4)及び水蒸気(H2O)であり且つ改質ガスは二酸化炭素(CO2)及び水素を含むようにしても良い。即ち、改質器1、1a、2、3は、適切な種類および形態の触媒を用いてメタンガスを水蒸気改質反応により分解できるように構成されても良い。なお、メタンガスの水蒸気改質反応は吸熱反応である。
【0062】
ヒータ16、38、55は、電気式の加熱装置であった。別の実施形態として、これらの加熱装置は、電気式とは異なる加熱装置であっても良い。例えば、加熱装置は、燃料電池93から排出された高温の水蒸気が導入されて発熱するように構成されても良い。
【0063】
触媒層15、39、56は、粒状の触媒の集合体であった。別の実施形態として、触媒層は、多孔質の担体(基材)にルテニウム及びニッケル等の活性成分(触媒物質)を担持させることによって構成されても良い。
【0064】
図2および図3の改質器1は、9本の直線状に延在する改質ガス管(即ち、軸線L1と同軸状に延在する改質ガス管17a、及び軸線L1を中心とする円周上に配置された改質ガス管17b~17i)を含んでいた。別の実施形態として、中央の改質ガス管17aは省略しても良い。或いは、別の実施形態として、改質ガス管の数は、9本とは異なっていても良い。更に別の実施形態として、改質ガス流路17のそれぞれは、直線状に延在していなくても良い。例えば、改質ガス管17b~17iのそれぞれは、改質ガス分岐部18から改質ガス合流部19へ捻じれながら延在していても良い。
【0065】
図4の改質器1aに係る改質ガス流路24のそれぞれは、小径部25及び大径部26を含んでいた。即ち、改質ガス流路24の外径及び内径は、触媒層において混合ガスの下流において内径が大きくなるように2段階に変化していた。別の実施形態として、改質ガス流路24の外径及び内径は、混合ガスの下流において内径が大きくなるように3段階に変化しても良い。或いは、別の実施形態として、改質ガス流路24の外径及び内径は、混合ガスの下流に向かうに従って連続的に大きくなっても良い。
【0066】
図2の改質器1に係るヒータ16は、触媒容器11の内周面に配設されていた。別の実施形態として、ヒータ16は、触媒容器11の外周面に、改質ガス室11bにある混合ガスを加熱するように配設されても良い。
【0067】
図6の改質器3に係るヒータ55の内周面は、触媒層56の外周面と接していた。別の実施形態として、ヒータ55の内周面と、触媒層56の外周面と、の間に空間が形成されていても良い。
【0068】
図6の改質器3において、アンモニアと混合ガスとの間の熱交換が促進されるように、原料ガス流入路57及び内側改質ガス流路58が熱交換区間を有していた。即ち、原料ガス流入路57及び内側改質ガス流路58が、二重管型熱交換器として機能する区間を含んでいた。別の実施形態として、原料ガス流入路57及び内側改質ガス流路58は、アンモニアと混合ガスとの間の熱交換が促進されるように、互いの外周面が接し且つ螺旋状に捩れた区間を熱交換区間として含んでいても良い。
【0069】
以上、様々な実施形態を上記のシステムを参照して説明したが、本技術の目的を逸脱せずに多くの置換、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。従って本技術の形態は、添付された請求項の主旨と目的を逸脱しない全ての置換、改良、変更を含み得る。
【符号の説明】
【0070】
1、1a、2、3…改質器
11…触媒容器
11a…原料ガス室
11b…改質ガス室
12…収容容器
13…断熱材
14a、14b…区画板
15…触媒層
16…ヒータ
17…改質ガス流路
17a~17i…改質ガス管
18…改質ガス分岐部
19…改質ガス合流部
21…改質ガス流入管
22…改質ガス流出管
23…原料ガス流入管
24…改質ガス流路
24a~24d…改質ガス管
25…小径部
26…大径部
27…改質ガス分岐部
28…改質ガス合流部
31…触媒容器
31a…触媒容器流入口
31b…原料ガス室
31c…改質ガス室
32…中間容器
32a…外側原料ガス流路
33…外側容器
33a…外側改質ガス流路
34…収容容器
35…断熱材
36…触媒容器流出管
37a、37b…区画板
38…ヒータ
39…触媒層
41…原料ガス流入管
42…改質ガス流出管
51…触媒容器
51a…原料ガス室
51b…改質ガス室
52…収容容器
53…断熱材
54a、54b…区画板
55…ヒータ
56…触媒層
57…原料ガス流入路
58…内側改質ガス流路
58a…触媒層貫通部
58b…改質ガス流出部
91…アンモニア貯蔵器
92…吸着装置
93…燃料電池
100…燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6