(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152155
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】駆動装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20241018BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G03G21/16 109
G03G15/00 657
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066188
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌太郎
【テーマコード(参考)】
2H035
2H171
【Fターム(参考)】
2H035CA07
2H035CB01
2H035CB04
2H035CD01
2H035CD07
2H035CG03
2H171FA02
2H171FA03
2H171FA04
2H171FA07
2H171FA09
2H171GA13
2H171GA33
2H171JA02
2H171JA34
2H171KA10
2H171KA12
2H171KA16
2H171KA22
2H171KA26
2H171KA28
2H171LA03
2H171LA15
2H171PA07
2H171PA13
2H171PA15
2H171QA02
2H171QA11
2H171QA13
2H171QA23
2H171QB03
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC03
2H171QC22
2H171QC36
2H171SA11
2H171SA14
2H171SA19
2H171SA22
2H171SA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フライホイールを固定する締結部材の緩みを防止できる駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置60は、感光体ドラムの回転軸66の一方端部に設けられたフライホイール72および締結部材74を備える。回転軸は、一方端部の外周面にテーパ面を有し、フライホイールは、回転軸の一方端部が挿通される挿通孔と、挿通孔の周縁部から突出する筒状の変形圧接部84とを有する。フライホイールは、締結部材の締結力によって変形圧接部が変形して回転軸の一方端部に圧接した状態で、回転軸に固定されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を回転駆動させるための駆動装置であって、
駆動源からの回転力を受けて前記回転体を回転させる回転軸、
前記回転軸の一方端部に設けられたフライホイール、および
前記回転軸の一方端部に締結され、前記フライホイールを前記回転軸に固定する締結部材を備え、
前記回転軸は、一方端部の外周面に他端側に向かって径が大きくなるテーパ面を有し、
前記フライホイールは、前記回転軸の一方端部が挿通される挿通孔と、前記挿通孔の周縁部から突出する筒状の変形圧接部とを有し、
前記締結部材の締結力によって前記変形圧接部が変形して前記回転軸の一方端部に圧接した状態で、前記フライホイールが前記回転軸に固定されている、駆動装置。
【請求項2】
前記変形圧接部は、軸方向に延びる複数のスリットを有する、請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記フライホイールは、中央部に形成される開口部と前記開口部の内周縁から内方に向かって突出する複数の突出片とを有し、
前記挿通孔および前記変形圧接部は、前記複数の突出片の先端部によって形成されている、請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記フライホイールと前記締結部材の座面との間に挟み込まれるように前記回転軸の一方端部に設けられ、前記締結部材の締結力によって前記フライホイールを押圧する押圧部材を備える、請求項1または2記載の駆動装置。
【請求項5】
回転体を回転駆動させるための駆動装置であって、
駆動源からの回転力を受けて前記回転体を回転させる回転軸、
前記回転軸の一方端部に設けられたフライホイール、
前記回転軸の一方端部に締結され、前記フライホイールを前記回転軸に固定する第1締結部材、および
前記フライホイールと前記第1締結部材の座面との間に挟み込まれるように前記回転軸の一方端部に設けられ、かつ前記フライホイールに固定された押圧部材を備え、
前記回転軸は、一方端部の外周面に前記フライホイールの他端側への移動を規制する係止部を有し、
前記押圧部材は、
前記フライホイールを押圧するホイール押圧部、
前記ホイール押圧部の中央部から前記第1締結部材の座面側に突出する窪み部、
前記窪み部の中央部に形成され、前記回転軸の一方端部が挿通される挿通孔、および
前記挿通孔の周縁部から突出する筒状の変形圧接部を有し、
前記第1締結部材の締結力によって前記変形圧接部が変形して前記回転軸の一方端部に圧接した状態で、前記フライホイールが前記回転軸に固定されている、駆動装置。
【請求項6】
前記回転軸は、一方端部の外周面に軸方向に延びる溝部を有する、請求項5記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ホイール押圧部と前記フライホイールとを固定する第2締結部材を備える、請求項5または6記載の駆動装置。
【請求項8】
請求項1または5記載の駆動装置、および
前記駆動装置によって回転駆動される感光体ドラムを備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は駆動装置および画像形成装置に関し、特にたとえば、回転体を回転駆動させるための駆動装置およびそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動装置を備える画像形成装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、回転体と、回転体の軸に取り付けられたフライホイールとを備える。回転体の軸は、一端に回り止め部を有している。フライホイールは、中央に軸の回り止め部に嵌合する孔を有する第1タイプのフライホイールと、軸の端部に固定する第2タイプのフライホイールと含む。そして、軸の回り止め部に第1タイプのフライホイールを1枚以上嵌合し、第2タイプのフライホイールを軸に固定するとともに、第2タイプのフライホイールと第1タイプのフライホイールとを一体的に結合する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、回転体の軸(回転軸)に形成されるD形状の回り止め部に対して、フライホイールに形成されるD形状の孔が嵌合することで、軸に対してフライホイールが回り止めされている。しかしながら、回り止め部と孔との間には、組立性の観点から一定のクリアランスが必要である。すなわち、回り止め部と孔とは、必然的に回転方向にガタをもつ。フライホイールは、ビス(締結部材)によって軸に固定されているが、フライホイールの慣性が大きいと、回転体の起動および停止の際に、回り止め部と孔との間のガタの分だけ、ビスとフライホイールとの摩擦面に滑りが発生し、ビスを緩めてしまうという問題がある。
【0005】
それゆえに、この開示の主たる目的は、新規な、駆動装置および画像形成装置を提供することである。
【0006】
この開示の他の目的は、回転軸にフライホイールを固定するための締結部材の緩みを防止できる、駆動装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の開示は、回転体を回転駆動させるための駆動装置であって、駆動源からの回転力を受けて回転体を回転させる回転軸、回転軸の一方端部に設けられたフライホイール、および回転軸の一方端部に締結され、フライホイールを回転軸に固定する締結部材を備え、回転軸は、一方端部の外周面に他端側に向かって径が大きくなるテーパ面を有し、フライホイールは、回転軸の一方端部が挿通される挿通孔と、挿通孔の周縁部から突出する筒状の変形圧接部とを有し、締結部材の締結力によって変形圧接部が変形して回転軸の一方端部に圧接した状態で、フライホイールが回転軸に固定されている、駆動装置である。
【0008】
第1の開示によれば、フライホイールが変形圧接部を有しており、この変形圧接部が回転軸の一方端部に圧接した状態で、回転軸に対してフライホイールが固定される。すなわち、フライホイールが回転軸に対してガタなく圧着固定されるので、感光体ドラムの起動および停止の際に、締結部材が緩むことを適切に防止できる。
【0009】
第2の開示は、第1の開示に従属し、変形圧接部は、軸方向に延びる複数のスリットを有する。
【0010】
第3の開示は、第2の開示に従属し、フライホイールは、中央部に形成される開口部と開口部の内周縁から内方に向かって突出する複数の突出片とを有し、挿通孔および変形圧接部は、複数の突出片の先端部によって形成されている。
【0011】
第4の開示は、第1または第2の開示に従属し、フライホイールと締結部材の座面との間に挟み込まれるように回転軸の一方端部に設けられ、締結部材の締結力によってフライホイールを押圧する押圧部材を備える。
【0012】
第5の開示は、回転体を回転駆動させるための駆動装置であって、駆動源からの回転力を受けて回転体を回転させる回転軸、回転軸の一方端部に設けられたフライホイール、回転軸の一方端部に締結され、フライホイールを回転軸に固定する第1締結部材、およびフライホイールと締結部材の座面との間に挟み込まれるように回転軸の一方端部に設けられ、フライホイールに固定された押圧部材を備え、回転軸は、一方端部の外周面にフライホイールの他端側への移動を規制する係止部を有し、押圧部材は、フライホイールを押圧するホイール押圧部、ホイール押圧部の中央部から締結部材の座面側に突出する窪み部、窪み部の中央部に形成され、回転軸の一方端部が挿通される挿通孔、および挿通孔の周縁部から突出する筒状の変形圧接部を有し、締結部材の締結力によって変形圧接部が変形して回転軸の一方端部に圧接した状態で、フライホイールが回転軸に固定されている、駆動装置である。
【0013】
第5の開示によれば、フライホイールに固定された押圧部材が変形圧接部を有しており、この変形圧接部が回転軸の一方端部に圧接した状態で、回転軸に対してフライホイールが固定される。すなわち、フライホイールが回転軸に対してガタなく圧着固定されるので、感光体ドラムの起動および停止の際に、締結部材が緩むことを適切に防止できる。
【0014】
第6の開示は、第5の開示に従属し、回転軸は、一方端部の外周面に軸方向に延びる溝部を有する。
【0015】
第7の開示は、第5または第6の開示に従属し、ホイール押圧部とフライホイールとを固定する第2締結部材を備える。
【0016】
第8の開示は、第1の開示または第5の開示に係る駆動装置、および駆動装置によって回転駆動される感光体ドラムを備える、画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
この開示によれば、フライホイールが回転軸に対してガタなく圧着固定されるので、感光体ドラムの起動および停止の際に、締結部材が緩むことを適切に防止できる。
【0018】
この開示の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この開示の第1実施例の画像形成装置の内部構造を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の画像形成装置が備える感光体ドラムおよびドラム駆動装置を示す斜視図である。
【
図4】感光体ドラムの回転軸の一方端部を示す斜視図である。
【
図5】ドラム駆動装置が備えるフライホイールを示す斜視図である。
【
図7】
図6のVII-VII線で切断したフライホイールの断面を示す断面図である。
【
図8】ドラム駆動装置のフライホイール周辺部分を示す分解断面図である。
【
図9】ねじを締結した後のドラム駆動装置のフライホイール周辺部分を示す断面図である。
【
図10】この開示の第2実施例の画像形成装置が備える感光体ドラムおよびドラム駆動装置を示す分解斜視図である。
【
図11】感光体ドラムの回転軸の一方端部を示す斜視図である。
【
図12】ドラム駆動装置が備えるフライホイールを示す斜視図である。
【
図13】ドラム駆動装置が備える押圧部材を示す斜視図である。
【
図15】
図14のXV-XV線で切断したフライホイールの断面を示す断面図である。
【
図16】ドラム駆動装置のフライホイール周辺部分を示す分解断面図である。
【
図17】ねじを締結した後のドラム駆動装置のフライホイール周辺部分を示す断面図である。
【
図18】ねじを締結した後のドラム駆動装置の押圧部材周辺部分を示す一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施例]
図1を参照して、この開示の第1実施例である画像形成装置10は、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能などを有するモノクロ複合機であって、電子写真方式によって用紙(記録媒体)に対して単色の画像を形成する。詳細は後述するように、画像形成装置10は、感光体ドラム36(回転体の一例)およびこれを駆動するためのドラム駆動装置60(駆動装置の一例)を備える。ドラム駆動装置60は、感光体ドラム36の回転軸66の一方端部に設けられたフライホイール72を備えており、このフライホイール72によって感光体ドラム36の回転時に生じる回転ムラが抑制される。
【0021】
なお、この明細書では、画像形成装置10を操作するユーザの立ち位置に対向する面、つまり図示しない操作ユニットが設けられる側の面を前面(正面)として画像形成装置10およびその構成部材の前後方向(奥行方向)を規定する。なお、操作ユニットは、
図1の紙面の手前側に設けられている。また、画像形成装置10およびその構成部材の左右方向(横方向)は、前面側から画像形成装置10を見た状態を基準として規定する。
【0022】
先ず、画像形成装置10の構成について概略的に説明する。
図1に示すように、画像形成装置10は、装置本体12およびその上方に配置される画像読取装置14を含む。
【0023】
画像読取装置14は、透明材によって形成される原稿載置台16を備える。原稿載置台16の上方には、ヒンジ等を介して原稿押えカバー18が開閉自在に取り付けられる。この原稿押えカバー18には、原稿載置トレイ20に載置された原稿を画像読取位置22に対して1枚ずつ自動的に給紙するADF24(自動原稿送り装置)が設けられる。また、原稿載置台16の前面側には、ユーザによる印刷開始指示などの入力操作を受け付ける操作ユニットが設けられる。操作ユニットには、タッチパネル付きのディスプレイおよび各種の操作ボタン等が設けられる。
【0024】
また、画像読取装置14には、光源、複数のミラー、結像レンズおよびラインセンサ等を備える画像読取部26が内蔵される。画像読取部26は、原稿表面を光源によって露光し、原稿表面から反射した反射光を複数のミラーによって結像レンズに導く。そして、結像レンズによって反射光をラインセンサの受光素子に結像させる。ラインセンサでは、受光素子に結像した反射光の輝度や色度が検出され、原稿表面の画像に基づく画像データが生成される。ラインセンサとしては、CCD(Charge Coupled Device)またはCIS(Contact Image Sensor)等が用いられる。
【0025】
装置本体12内には、CPUおよびメモリ等を含む制御部(図示せず)、および画像形成部30などが設けられる。制御部は、操作ユニットへの入力操作などに応じて、画像形成装置10の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置10に種々の動作を実行させる。
【0026】
画像形成部30は、露光ユニット32、現像ユニット34、感光体ドラム36、クリーニングユニット38、帯電ユニット40、転写ローラ42、定着ユニット44およびトナー補給装置46等を備え、給紙トレイ48等から搬送される用紙上に画像を形成し、画像形成済みの用紙を排紙トレイ50に排出する。用紙上に画像を形成するための画像データとしては、画像読取部26で読み取った画像データまたは外部コンピュータから送信された画像データ等が利用される。
【0027】
感光体ドラム36は、表面に感光層が形成されたドラム本体36aを備える像担持体であって、前後方向に延びるように設けられる。帯電ユニット40は、帯電ローラおよびクリーニングローラ等を備え、感光体ドラム36(ドラム本体36a)の表面を所定の電位に帯電させる。クリーニングユニット38は、現像および画像転写後の感光体ドラム36の表面に残留したトナーを除去する。
【0028】
また、感光体ドラム36、クリーニングユニット38および帯電ユニット40は、一体化(カートリッジ化)されており、これらによってプロセスユニット56が構成される。プロセスユニット56は、装置本体12の前面側から着脱することが可能である。一方、装置本体12には、その背面側に設けられる支持フレーム58に対してドラム駆動装置60が設けられる。装置本体12にプロセスユニット56を装着すると、感光体ドラム36とドラム駆動装置60とが連結され、感光体ドラム36は、ドラム駆動装置60から回転力(回転駆動力)を受けることが可能となる。感光体ドラム36およびドラム駆動装置60の具体的構成については後述する。
【0029】
露光ユニット32は、レーザダイオードおよびポリゴンミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成され、感光体ドラム36の左側に所定間隔をあけて配置される。露光ユニット32は、帯電された感光体ドラム36の表面を露光することによって、画像データに応じた静電潜像を感光体ドラム36の表面に形成する。現像ユニット34は、現像槽および現像ローラ等を備え、感光体ドラム36の下側に配置される。現像ユニット34は、感光体ドラム36の表面にトナーを供給し、感光体ドラム36の表面に形成された静電潜像をトナーによって顕像化する(トナー像を形成する)。
【0030】
転写ローラ42は、感光体ドラム36の表面に形成されたトナー像を用紙に転写するための部材であって、感光体ドラム36を押圧するように設けられる。画像形成時には、転写ローラ42に所定の電圧が印加されることによって、感光体ドラム36と転写ローラ42との間に転写電界が形成される。そして、この転写電界の作用により、感光体ドラム36と転写ローラ42との間のニップ域(転写ニップ部)を用紙が通過する間に、感光体ドラム36の外周面に形成されたトナー像が用紙に転写される。
【0031】
定着ユニット44は、加熱ローラおよび加圧ローラ等を備え、プロセスユニット56および転写ローラ42の上方に配置される。加熱ローラは、内部に設けられた熱源によって所定の定着温度となるように加熱される。そして、加熱ローラと加圧ローラとの間のニップ域(定着ニップ部)を用紙が通過することによって、用紙に転写されたトナー像が溶融、混合および圧接されて、用紙に対してトナー像が熱定着される。
【0032】
また、装置本体12内には、給紙トレイ48等から搬送される用紙をレジストローラ52、転写ニップ部および定着ニップ部を経由させて排紙トレイ50(排紙部)に送るための第1用紙搬送路L1が形成される。また、用紙に対して両面印刷を行う際に、片面印刷が終了して定着ユニット44を通過した後の用紙を、転写ニップ部の用紙搬送方向の上流側において第1用紙搬送路L1に戻すための第2用紙搬送路L2が形成される。この第1用紙搬送路L1および第2用紙搬送路L2には、用紙に対して補助的に推進力を与えるための複数の搬送ローラ54が適宜設けられる。
【0033】
次に、感光体ドラム36およびドラム駆動装置60の構成について具体的に説明する。
図2および
図3に示すように、感光体ドラム36は、導電性を有する円筒状の基体の表面に感光層が形成されたドラム本体36aを備える。基体の両端部には、フランジが嵌め込まれるようにして固定的に取り付けられ、このフランジの中心部を貫通するように金属製のドラム軸36bが設けられる。ドラム軸36bの両端部は、プロセスユニット56のフレームに設けられるベアリングによって回転可能に支持される。
【0034】
また、装置本体12に感光体ドラム36が取り付けられた状態において、ドラム軸36bの後端部は、カップリング部62を介して軸部材64に連結される。ドラム軸36bと軸部材64とは、同軸上に連結されており、これらドラム軸36bおよび軸部材64によって感光体ドラム36を回転させる回転軸66が構成される。この回転軸66(軸部材64)には、ギヤ列68などを介して駆動モータ70(駆動源の一例)が連結され、回転軸66は、駆動モータ70から回転力(回転駆動力)を受けて回転する。すなわち、感光体ドラム36は、回転軸66回りに回転可能に支持されており、回転軸66は、駆動モータ70から回転力を受けて感光体ドラム36を回転させる。
【0035】
ドラム駆動装置60は、上述の回転軸66、ギヤ列68および駆動モータ70等を備え、これらは所定の配置態様で支持フレーム58によって保持される。さらに、ドラム駆動装置60は、回転軸66の一方端部(後端部)に設けられたフライホイール72、フライホイール72を回転軸66に固定するためのねじ74、およびフライホイール72とねじ74の座面74d(
図8参照)との間に設けられた押圧部材76などを備える。
【0036】
図4に示すように、回転軸66の一方端部の外周面には、取付部78が形成される。この取付部78は、フライホイール72が取り付けられるホイール取付部78aと、押圧部材76が取り付けられる押圧部材取付部78bとを含む。ホイール取付部78aは、取付部78の他端(前端)側に形成され、押圧部材取付部78bは、取付部78の一方端側に形成される。
【0037】
ホイール取付部78aは、押圧部材取付部78b側から他端側に向かって径大となる、つまり基端から先端に向かって径小となるテーパ面状に形成される。すなわち、回転軸66は、一方端部の外周面に他端側に向かって径が大きくなるテーパ面を有している。ホイール取付部78a(テーパ面)の径は、一方端側の最小径部において、後述するフライホイール72の変形圧接部84の内径と同じか若干小さくなるように設定され、他端側の最大径部において、変形圧接部84の内径よりも大きくなるように設定されている。また、このテーパ面の軸方向に対する傾斜角度は、特に限定されないが、たとえば5度~15度に設定されることが好ましく、この第1実施例では7度に設定されている。一方、押圧部材取付部78bは、軸方向に同径の円筒面状に形成され、その径は、押圧部材76の挿通孔76aの径と同じか若干小さくなるように設定されている。
【0038】
また、回転軸66の一方端面には、軸方向に穿孔されたねじ穴80が形成される。つまり、回転軸66一方端部は、円筒状に形成されており、その内周面にはねじ溝(雌ねじ)が形成されている。
【0039】
図5~
図7に示すように、フライホイール72は、回転時に生じる慣性力(回転エネルギー)によって感光体ドラム36の回転を安定させるための部材であって、鉄およびステンレス鋼などの金属によって形成される。フライホイール72は、円板状のホイール本体82を備え、このホイール本体82(延いてはフライホイール72)の中央部には、回転軸66の一方端部が挿通される挿通孔82aが形成される。また、フライホイール72は、挿通孔82aの周縁部から他端側に向かって突出する短円筒状の変形圧接部84を備える。変形圧接部84の内周面は、挿通孔82aの内周縁と面一に連なっており、ねじ74を用いて回転軸66に固定する前の状態においては、軸方向に同径の円筒面になっている。
【0040】
また、変形圧接部84には、軸方向に延びる複数(この第1実施例では4つ)のスリット84aが周方向に所定間隔で形成される。このようなスリット84aを形成することによって、変形圧接部84を径方向に変形し易くすることができる。さらに、この第1実施例では、ホイール本体82の中央部には、円形の開口部82bが形成される。また、この開口部82bの内周縁から内方に突出するように、複数の略矩形板状の突出片86が形成される。各突出片86の先端部は、他端側に向かって屈曲しており、これら突出片86の先端部によって挿通孔82aおよび変形圧接部84が形成される。このように、片持ちの突出片86の先端部に変形圧接部84を形成することによって、変形圧接部84を径方向に変形し易くすることができる。
【0041】
図3に戻って、ねじ74は、回転軸66の一方端部に形成されたねじ穴80に締結される締結部材であって、フライホイール72を回転軸66に固定するために用いられる。ねじ74は、ねじ穴80のねじ溝に螺合するねじ山(雄ねじ)が外周面に形成された円柱状の軸部74aと、軸部74aの一方端に形成される頭部74bとを備える。また、この第1実施例では、軸部74aには、予めワッシャ74cが装着されており、このワッシャ74cの一方主面がねじ74の座面74d(
図8参照)となる。
【0042】
また、押圧部材76は、ねじ74の締結力によってフライホイール72を押圧する部材であって、鉄およびステンレス鋼などの金属によって形成される。押圧部材76は、円板状に形成され、その中央部には、回転軸66の一方端部が挿通される挿通孔76aが形成される。このような押圧部材76を備えることで、ねじ74の締結力をフライホイール72に適切に伝えることができ、延いてはフライホイール72の変形圧接部84を適切に変形させることができる。
【0043】
このようなドラム駆動装置60において、
図8に示すように、フライホイール72は、変形圧接部84および挿通孔82aに対して回転軸66の一方端部(取付部78)が挿通されることで、回転軸66の一方端部に取り付けられる。上述のように、ねじ74を締結する前の状態においては、変形圧接部84の内周面は、軸方向に同径の円筒面になっている。
【0044】
また、回転軸66の一方端部には、フライホイール72の後側から押圧部材76が取り付けられると共に、ねじ穴80にねじ74が締結される。この際、ねじ74の締結力を受けた押圧部材76がフライホイール72を押圧し、ねじ74の螺合が進むに従ってフライホイール72が回転軸66の他端側に向かって移動する。この移動に伴い、
図9に示すように、変形圧接部84が回転軸66のテーパ面(ホイール取付部78a)によって押し広げられてテーパ面に沿うように塑性変形し、変形圧接部84がテーパ面に圧接する。つまり、変形圧接部84が回転軸66の一方端部に食い込む形となり、フライホイール72が回転軸66に対してガタなく圧着固定される。これにより、回転ガタが構造的になくなるので、感光体ドラム36の起動および停止の際にねじ74が緩むことが防止される。
【0045】
以上のように、第1実施例によれば、フライホイール72が変形圧接部84を有しており、この変形圧接部84が回転軸66の一方端部に圧接した状態で、回転軸66に対してフライホイール72が固定される。すなわち、フライホイール72が回転軸66に対してガタなく圧着固定されるので、感光体ドラム36の起動および停止の際に、ねじ74が緩むことを適切に防止できる。
【0046】
なお、上述の第1実施例では、フライホイールとねじの座面との間に押圧部材を設けるようにしたが、押圧部材は必ずしも設けられる必要はない。たとえば、ねじの座面(ねじに装着されたワッシャまたはねじの頭部)によってフライホイールを押圧することで、ねじの締結力をフライホイールに伝えることもできる。
【0047】
[第2実施例]
次に、
図10~
図18を参照して、この開示の第2実施例であるドラム駆動装置について説明する。上述の第1実施例では、フライホイール自体に変形圧接部を形成したが、この第2実施例では、押圧部材に変形圧接部を形成した点が異なる。以下、第2実施例について説明するが、上述の第1実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0048】
図10に示すように、第2実施例のドラム駆動装置60は、駆動モータ70からの回転力を受けて感光体ドラム36を回転させる回転軸66、回転軸66の一方端部に設けられたフライホイール72、フライホイール72を回転軸66に固定するためのねじ74、フライホイール72とねじ74の座面74dとの間に設けられた押圧部材76、およびフライホイール72に押圧部材76を固定するためのねじ90などを備える。
【0049】
図11に示すように、回転軸66の一方端部の外周面には、ホイール取付部78aと押圧部材取付部78bとを含む取付部78が形成される。取付部78は、軸方向に同径の円筒面状に形成され、その径は、フライホイール72の挿通孔82aおよび押圧部材76の挿通孔102aの径と同じか若干小さくなるように設定されている。また、回転軸66の一方端部の外周面は、他の部分から段差状に縮径されており、取付部78の他端側の端部には、フライホイール72の他端側への移動を規制する円環状の係止部78cが形成される。さらに、回転軸66一方端部の外周面(具体的には押圧部材取付部78b)には、軸方向に延びる複数(この第2実施例では2つ)の溝部78dが周方向に所定間隔で形成される。
【0050】
図12に示すように、フライホイール72は、円板状のホイール本体82を備える。このホイール本体82の中央部には、回転軸66の一方端部が挿通される挿通孔82aが形成される。また、ホイール本体82には、挿通孔82aの周囲に、周方向に所定間隔で並ぶ複数(この第2実施例では3つ)のねじ孔82cが形成される。
【0051】
図13~
図15に示すように、押圧部材76は、フライホイール72を押圧する円板状のホイール押圧部100を備える。ホイール押圧部100には、フライホイール72のねじ孔82cと対応する位置のそれぞれに、ねじ90の軸部が挿通される挿通孔100aが形成される。また、ホイール押圧部100の中央部には、ねじ74の座面74d側(回転軸66の一方端側)に段差をつけて突出する円形の窪み部102が形成される。この窪み部102の中央部には、回転軸66の一方端部が挿通される挿通孔102aが形成される。
【0052】
さらに、押圧部材76は、挿通孔102aの周縁部から座面74d側に向かって突出する短円筒状の変形圧接部104を備える。変形圧接部104の内周面は、挿通孔102aの内周縁と面一に連なっており、ねじ74を用いて回転軸66に固定する前の状態においては、軸方向に同径の円筒面になっている。また、窪み部102の周縁部には、ホイール押圧部100に跨るように、径方向に延びる複数(この第2実施例では3つ)のスリット102bが周方向に所定間隔で形成される。このようなスリット102bを形成することによって、窪み部102(延いては変形圧接部104)を径方向に変形し易くすることができる。
【0053】
図10に戻って、ねじ74は、回転軸66の一方端部に形成されたねじ穴80に締結される締結部材(第1締結部材)であって、フライホイール72を回転軸66に固定するために用いられる。ねじ74は、円柱状の軸部74a、頭部74bおよびワッシャ74c等を備え、ワッシャ74cの一方主面がねじ74の座面74dとなる。また、ねじ90は、フライホイール72に形成されたねじ孔82cに締結される締結部材(第2締結部材)であって、押圧部材76をフライホイール72に固定するために用いられる。ねじ90は、ねじ74と同様に、軸部、頭部およびワッシャ等を含む。
【0054】
このようなドラム駆動装置60では、
図16に示すように、押圧部材76の挿通孔102aを介してフライホイール72のねじ孔82cにねじ90を締結することで、フライホイール72に押圧部材76が固定(一体化)される。そして、フライホイール72および押圧部材76は、各挿通孔82a,102aおよび変形圧接部104に対して回転軸66の一方端部(取付部78)が挿通されることで、回転軸66の一方端部に取り付けられる。上述のように、ねじ74を締結する前の状態においては、変形圧接部104の内周面は、軸方向に同径の円筒面になっている。また、押圧部材76が窪み部102を有することから、フライホイール72と変形圧接部104との間には、所定間隔の隙間106が形成される。さらに、変形圧接部104の一方端部は、回転軸66の一方端面よりも後側(ねじ74の座面74d側)に所定長さだけ突出する。
【0055】
その後、
図17および
図18に示すように、押圧部材76の後側からねじ穴80にねじ74を締結すると、ねじ74の締結力によって変形圧接部104が押圧される。そして、ねじ74の螺合が進むに従って、窪み部102および変形圧接部104が内側に撓むように塑性変形して、変形圧接部104が、回転軸66の押圧部材取付部78bに圧接すると共に溝部78d内に入り込む(
図18参照)。これにより、フライホイール72が回転軸66に対してガタなく圧着固定され、回転ガタが構造的になくなるので、感光体ドラム36の起動および停止の際にねじ74が緩むことが防止される。
【0056】
この第2実施例によれば、フライホイール72に固定された押圧部材76が変形圧接部104を有しており、この変形圧接部104が回転軸66の一方端部に圧接した状態で、回転軸66に対してフライホイール72が固定される。すなわち、フライホイール72が回転軸66に対してガタなく圧着固定されるので、感光体ドラム36の起動および停止の際に、ねじ74が緩むことを適切に防止できる。
【0057】
また、回転軸66の一方端部に溝部78dを形成したので、回転軸66に対してより強固に押圧部材76(延いてはフライホイール72)を固定できる。
【0058】
なお、本明細書中で挙げた、画像形成装置の具体的な構成は、いずれも単なる一例であり、実際の製品の仕様に応じて適宜変更可能である。たとえば、画像形成装置は、必ずしも複合機である必要はなく、複写機、ファクシミリおよびプリンタ等のいずれか、またはこれらの少なくとも2つを組み合わせた複合機であってもよい。また、画像形成装置は、モノクロ機に限定されず、多色の画像を形成可能なカラー機であってもよい。
【0059】
また、上述の各実施例では、回転体の一例として感光体ドラムを挙げたが、この開示に係る駆動装置は、転写ローラ等の他の回転体に適用することもできる。さらに、この開示に係る駆動装置は、画像形成装置以外の装置が備える回転体にも適用可能である。
【0060】
さらに、上で挙げた具体的な部品形状および寸法などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 …画像形成装置
12 …装置本体
30 …画像形成部
36 …感光体ドラム(回転体)
56 …プロセスユニット
60 …ドラム駆動装置(駆動装置)
66 …回転軸
72 …フライホイール
74 …ねじ(締結部材,第1締結部材)
76 …押圧部材
84,104 …変形圧接部