(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152159
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】植物の育成容器及び培養土への水供給方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20241018BHJP
A01G 27/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A01G9/02 E
A01G27/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066194
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】517056310
【氏名又は名称】株式会社Edge Creators
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 匡志
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NC02
2B327NC24
2B327NC53
2B327NC54
2B327QA03
2B327QB03
2B327QC11
2B327RA03
2B327RA26
2B327RB02
2B327RD02
2B327UA03
2B327UA10
2B327UA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】培養土に下方から水を吸わせることで植物に水を供給する際に、十分な量の水分が供給できる植物の育成容器を提供すること。
【解決手段】培養土に自動的に水を供給することができる植物の育成容器1であって、壁面に包囲された内部空間を貯水部18とする外容器と、培養土が収容される貯水部18内に配置される内容器2とを備え、内容器2の底部には内外に連通する平均径が5mm以下となる複数の小孔8が設けられているようにした。これによって、内容器2の底部から貯水部18内の水を小孔8を通して内容器2内に供給させて培養土に含浸させることができ、貯水部18の水の量や小孔8の数や大きさを適宜変更することによって植物に応じて適切に水分を与えることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養土に自動的に水を供給することができる植物の育成容器であって、
壁面に包囲された内部空間を貯水部とする外容器と、培養土が収容される前記貯水部内に配置される内容器とを備え、前記内容器の底部には内外に連通する平均径が5mm以下となる小孔が設けられていることを特徴とする植物の育成容器。
【請求項2】
前記内容器が前記外容器内に配置された状態で、前記外容器の上面は前記内容器の外方に張り出した張り出し部によって被覆されることを特徴とする請求項1に記載の植物の育成容器。
【請求項3】
前記張り出し部には水溜まり部が形成され、水溜まり部の底面には透孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の植物の育成容器。
【請求項4】
前記内容器は前記張り出し部を介して前記外容器に吊り下げ支持されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の植物の育成容器。
【請求項5】
外容器は透明であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の植物の育成容器。
【請求項6】
前記小孔の平均径は0.3~1.5mmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の植物の育成容器。
【請求項7】
前記小孔の平均密度は1cm2当たり5~30個であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の植物の育成容器。
【請求項8】
植物が植えられた培養土に自動的に水を供給するための水供給方法であって、
壁面に包囲された内部空間を貯水部とする外容器内に貯水し、底部に内外に連通する小孔が設けられている内容器を前記貯水部内に配置し、前記小孔を通して貯水部の水を前記内容器内に導入して培養土に含浸させるようにしたことを特徴とする培養土への水供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養土に自動的に水を供給することができる植物の植物の育成容器及び培養土への水供給方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から培養土に植えた種や苗等の植物に上から水をかけずに下方から培養土に吸わせて水を供給する植物の育成容器がある。このような植物の育成容器の先行技術として特許文献1を挙げる。特許文献1の技術はその
図1に示すように貯水部1内に植物を植えた植物育成部2を納め、植物育成部2から貯水部1の水に吸水ヒモ5を垂らして毛細管現象を利用して土に吸水させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、吸水ヒモ5を介した毛細管現象だけで植物育成部2内の土に吸水させるので水を多く必要とする植物では必要とする水分を供給できない可能性がある。また、十分な水分を供給できないのであれば上から散水すれば足りるわけであるが、それでは培養土に自動的に水を供給するということにはならず、絶えず水不足にならないように気を配っていなければならない。
そのため、培養土に下方から水を吸わせることで植物に水を供給する際に、十分な量の水分が供給できる植物の育成容器が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための第1の手段として、培養土に自動的に水を供給することができる植物の育成容器であって、壁面に包囲された内部空間を貯水部とする外容器と、培養土が収容される前記貯水部内に配置される内容器とを備え、前記内容器の底部には内外に連通する平均径が5mm以下となる小孔が設けられているようにした。
これによって、内容器の底部から貯水部内の水を小孔を通して内容器内に供給させて培養土に含浸させることができ、貯水部内の水の量や小孔の数や大きさ等を適宜変更することによって植物に応じて適切に水分を与えることができる。
ここで、「平均径が5mm以下となる小孔」としているのは、実験的に培養土が小孔から外容器の貯水部側にこぼれ落ちていかない限界的な孔の大きさが5mm程度であることがわかったからである。培養土の粘度や粒子の大きさや孔の形状によって下方に培養土がこぼれない孔の大きさは一様ではなく、植物の種類や植物の根の成長具合によって通年同じ条件ではないものの、多少のこぼれ落ちがあっても内容器内で培養土が保持される孔の大きさとしてはこの平均径が5mm以下となることがよい。平均径であるため、孔の形状が円形でなければ形状に応じた全周の平均値が5mm以下ということになる。
また、5mm以下という相対的に細い孔であるためベルヌーイの定理に従い周囲の貯水部の圧力によって、小孔の通路内の水の流速は早まることとなり、貯水部の水位に達するまでの速度は比較的早い。そして、貯水部の水位に達した後は、培養土の表面張力によって貯水部の水位よりも高い位置まで水が行き渡るようになる。
容器の素材は内容器に関しては培養土によって変色したり腐食したりしない素材で、水を含んだ培養土を受けるために厚みもあることがよい。例えば、プラスチック製であることがよい。プラスチック製であると成形性もよい。
外容器は水を入れることができればよいが、変色や内容器を支持する可能性もあるため、内容器と同様にプラスチック製であることがよい。
【0006】
また、第2の手段として、前記内容器が前記外容器内に配置された状態で、前記外容器の上面は前記内容器の外方に張り出した張り出し部によって被覆されるようにした。
これによって、貯水部が包囲されることとなり、害虫が外部から貯水部内に侵入するのが防止でき、貯水部内の水の蒸散も防止できる。
また、第3の手段として、前記張り出し部には水溜まり部が形成され、水溜まり部の底面には透孔が形成されているようにした。
これによって貯水部に水を供給する際に、まず水溜まり部に貯めてから徐々に透孔から貯水部内に供給することができ、一気に貯水部に水を供給する場合に比べて水の跳ね返りが防止でき、上方に開放された水溜まり部に水を供給するだけの作業であるため水の供給作業に困難性がない。
また、第4の手段として、前記内容器は前記張り出し部を介して前記外容器に吊り下げ支持されているようにした。
これによって内容器は貯水部の底におかれずに外容器の貯水部に包囲された状態で中空に支持されることとなり、小孔からの培養土の多少のこぼれ落ちによって小孔が塞がれるといった不具合が生じにくい。
また、第5の手段として、外容器は透明であるようにした。
外容器が透明であれば、貯水部の水の水位を外部から目視することができ、その結果内容器内の水位も推し量ることができる。内容器も透明であってもよい。
【0007】
また、第6の手段として、前記小孔の平均径は0.3~1.5mmであるようにした。
このように孔がより小径であれば上記のように培養土に水を下方から供給する際にベルヌーイの定理に従い周囲の貯水部の水の圧力によって、小孔の通路内の水の流速は早まることとなる。より好適には0.5~1.2mmである。
また、第7の手段として、前記小孔の平均密度は1cm2当たり5~30個であるようにした。
あまりに小孔が多いと、小孔からの培養土が貯水部内にこぼれ落ち量が多くなり、培養土を受ける内容器の強度にも影響があるため、この程度の小孔の形成密度であることがよい。孔の径が大きくなれば相対的に小孔の平均密度は低くなる。
また、第8の手段として、植物が植えられた培養土に自動的に水を供給するための水供給方法であって、壁面に包囲された内部空間を貯水部とする外容器内に貯水し、底部に内外に連通する小孔が設けられている内容器を前記貯水部内に配置し、前記小孔を通して貯水部の水を前記内容器内に導入して培養土に含浸させるようにした。
これは植物の育成容器を用いた培養土への水供給方法をクレームしたものである。これによって、培養土内に下方から水を速やかに供給することができ、貯水部の水位に達した後は、培養土の表面張力によって貯水部の水位よりも高い位置まで水が行き渡るようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内容器の底部から貯水部内の水を小孔を通して内容器内に供給させて培養土に含浸させることができ、貯水部内の水の量や小孔の数や大きさ等を適宜変更することによって植物に応じて適切に水分を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態において使用する植物の育成容器の斜視図。
【
図2】同じ植物の育成容器の(あるいは内容器の)培養土が収容される前の平面図。
【
図3】同じ植物の育成容器を構成する内容器の斜視図。
【
図4】(a)及び(b)は同じ植物の育成容器の使用方法を説明する説明図。
【
図5】同じ植物の育成容器において内容器内の培養土への外容器からの水の供給状態を説明する縦断面図。
【
図6】他の実施の形態の植物の育成容器において内容器内の培養土への外容器からの水の供給状態を説明する縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の植物の育成容器とその使用方法について図面に基づいて説明する。
図1~
図5に示すように、植物の育成容器1は内容器2と外容器3とより構成されている。
図2及び
図3に示すように、着色されたプラスチック製の内容器2は本体筒部4と本体筒部4の上端において周囲に張り出して形成されたフランジ部5とから構成されている。本体筒部4は角部が面取りされた正六角柱形状の外観の側壁部6と側壁部6の下端位置に側壁部6と一体に成形された底板7とから構成されている。本体筒部4内には植物を育成するための培養土が収容される。底板7には多数の(つまり複数の)内外に連通する小孔8が形成されている。小孔8は本実施の形態では円形の直径0.5mmのトンネル状の孔である。本実施の形態では小孔8は平均密度は1cm
2当たり9.2個の密度で底板7に整然と配置されている。
フランジ部5は正六角柱形状の側壁部6に沿って正六角柱形状となるように張り出され、外壁10と内壁11と外壁10と内壁11の間に配置された底板12とによって断面コ字状の上方に開口された溝として本体筒部4の全周に渡って形成されている。フランジ部5の底板12にはちょうど正六角柱形状の角部位置に上下に連通する水抜き穴13が形成されている。底板12の裏面の外壁10寄り位置には外壁10に沿って位置決めリブ15が底板12の全周に渡って形成されている。
【0011】
図1、
図4及び
図5に示すように、透明なプラスチック製の外容器3は側壁部16と側壁部16の下端位置に側壁部16と一体に成形された底板17とから構成されている。側壁部16は角部が面取りされた正六角柱形状でかつ上方側の間隔が広いテーパ状の外観に構成されている。外容器3の内部は貯水部18とされる。外容器3の側壁部16の上端形状は内容器2側のフランジ部5の外壁10下端形状と一致する。
このような構成の植物の育成容器1の使用方法について説明する。
図4に示すように外容器3上に内容器2をセットすると、外容器3の側壁部16上端に内容器2のフランジ部5の外壁10が載り、同時に内容器2側の位置決めリブ15が外容器3の側壁部16上端寄り内側に面した位置に配置されることとなり、外容器3上で内容器2の位置決めがされることとなる。この植物の育成容器1の使用可能状態において、内容器2は外容器3の貯水部18内に吊り下げ状に支持される。この状態で内容器2の底板7は外容器3の底板17から若干上方に底板17と平行に配置されることとなる。
【0012】
図5はこのような植物の育成容器1の内容器2に培養土Sと植物Pを植栽し、外容器3の貯水部18内に注水して実際に植物Pを育成している状態を示している。注水された外容器3の貯水部18内に内容器2を配置した当初は培養土S内への給水はすぐにはされず、底板7の小孔8から徐々に培養土Sに含浸されていく。この給水作用は
図5において矢印Aで示す貯水部18の水位に至るまで行われる。給水はベルヌーイの定理に従い周囲の貯水部18内の水の圧力によって、径の小さい小孔8の通路内の水の流速が早まることとなり、小孔8の径は小さくとも貯水部18の水位に達するまでの速度は速やかである。
そして、矢印Aの水位に達した後は水は培養土Sの隙間を毛細管現象によって矢印B付近まで達する。これによって植物Pの根に好適に水を供給することができる。植物Pの生育状況によって貯水部18内の水位を適宜変更する。貯水部18への水の追加は内容器2側のフランジ部5に適宜上方から注水することで、水は水抜き穴13から貯水部18に落下する。
【0013】
このように構成される植物の育成容器1では次のような効果が奏される。
(1)上から散水せずに下方から培養土Sに給水するタイプの植物の育成容器1において、貯水部18への水の量を調整することで、培養土Sに任意の水位で下方から給水することができる。
(2)フランジ部5の溝内に注水することで貯水部18へ水を追加することができるため、作業性がよい。
(3)外容器3を透明にしているので、貯水部18の水位を外から目視でき、そのため貯水部18内の水の量を直ちに判断することができる。
(4)給水孔となる小孔8は径がごく小さいため培養土Sが小孔8から漏れ出しにくく、また小孔8はごく小さい径にもかかわらずベルヌーイの定理に従って貯水部18の水位に達するまでの速度は比較的速いものとなる。
【0014】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・育成容器1を構成する内容器2と外容器3の形状について上記は一例であり、他の形状で実施するようにしてもよい。例えば、内容器2のフランジ部5をもっと大きくして外容器3よりも外方に張り出させるようにしてもよい。
・上記実施の形態では内容器2は外容器3に吊り下げ状に支持されていたが、吊り下げずに
図6のように内容器20の底板7の周囲に脚21を形成し、内容器20を脚21によって外容器23の底板17上に支持するようにして内容器20の底板7が外容器23の底板17から離間するように構成してもよい。内容器20及び外容器23において上記実施の形態の内容器2と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。尚、内容器20はフランジ部5を設けない例でもある。
・内容器2の底板7の小孔8の形状や径の大きさやその数については適宜変更可能である。
・上記実施の形態では外容器3を透明に構成したが、透明でなくともよい。また、内容器2も透明に構成してもよい。
本発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または特許出願への変更等において権利取得する意思を有する。
【符号の説明】
【0015】
1…植物の育成容器、2…内容器、3…外容器、8…小孔、18…貯水部、S…培養土。