(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152160
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】保管支援装置及び保管支援方法
(51)【国際特許分類】
A01F 25/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A01F25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066195
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 素三
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 理紗子
(72)【発明者】
【氏名】竹本 哲行
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直
(72)【発明者】
【氏名】林 孝洋
【テーマコード(参考)】
2B100
【Fターム(参考)】
2B100AA01
2B100GB18
(57)【要約】
【課題】農作物を効果的に管理することができるようにする。
【解決手段】保管支援装置は、収穫後の農作物(S)を撮像する撮像部(30)と、前記撮像部(30)により撮像された前記農作物(S)の画像に基づいて、前記農作物(S)に水分損失を生じさせるような前記農作物(S)表面のクチクラ層を含む前記農作物(S)の表層の欠陥を考慮して前記農作物(S)を評価し、又は、前記欠陥による前記農作物(S)の水分損失を改善するための改善指示を示す情報を出力する制御部(60)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫後の農作物(S)を撮像する撮像部(30)と、
前記撮像部(30)により撮像された前記農作物(S)の画像に基づいて、前記農作物(S)に水分損失を生じさせるような前記農作物(S)表面のクチクラ層を含む前記農作物(S)の表層の欠陥を考慮して前記農作物(S)を評価し、又は、前記欠陥による前記農作物(S)の水分損失を改善するための改善指示を示す情報を出力する制御部(60)と
を備える、保管支援装置。
【請求項2】
前記欠陥は、前記農作物(S)表面に生じる1mm以下の欠陥である、請求項1に記載の保管支援装置。
【請求項3】
前記制御部(60)は、前記欠陥に基づいて前記農作物(S)の棚持ちを評価する、請求項1又は請求項2に記載の保管支援装置。
【請求項4】
前記農作物(S)の画像は、前記農作物(S)に対する紫外線の照射下で撮像された蛍光画像であり、
前記制御部(60)は、前記蛍光画像、又は前記欠陥から放出される放出物からの発光を示す画像に基づいて前記欠陥の状態を評価する、請求項1又は請求項2に記載の保管支援装置。
【請求項5】
前記農作物(S)の画像は、水の吸収スペクトルまたは反射スペクトルに対応する波長の短波長赤外画像であり、
前記制御部(60)は、前記短波長赤外画像に基づいて前記欠陥の状態を評価する、請求項1又は請求項2に記載の保管支援装置。
【請求項6】
前記制御部(60)は、前記農作物(S)の画像に基づいて、前記農作物(S)を複数の等級のうちのいずれかの等級に分類することで前記農作物(S)を評価し、
前記複数の等級は、前記欠陥の分布に基づいて区分けされる、請求項1又は請求項2に記載の保管支援装置。
【請求項7】
前記複数の等級には、
前記農作物(S)の表面領域のうち前記農作物(S)の画像中に表される前記農作物(S)表面上の全ての欠陥が占める領域の割合が0%以上、10-8%未満になる等級と、
前記割合が10-8%以上、10-6%未満になる等級と、
前記割合が10-6%以上、10-4%未満になる等級と
が含まれ、
前記表面領域は、前記農作物(S)の全表面を示す領域、又は、前記全表面のうち前記農作物(S)の画像に表示されている部分を示す領域である、請求項6に記載の保管支援装置。
【請求項8】
前記等級は、前記農作物(S)の棚持ちの等級を示す、請求項6に記載の保管支援装置。
【請求項9】
前記等級毎に異なる保管場所が設けられ、
前記制御部(60)は、前記農作物(S)の等級を設定すると、前記農作物(S)の等級に対応した前記保管場所を出力し、又は、前記農作物(S)の等級に対応した前記保管場所へ前記農作物(S)を保管する指示を示す情報を出力する、請求項6に記載の保管支援装置。
【請求項10】
前記制御部(60)は、前記評価結果に基づいて、前記農作物(S)の棚持ちの期間を延ばすための処理内容を示す情報、又は前記処理内容の実行する指示を示す情報を出力する、請求項1又は請求項2に記載の保管支援装置。
【請求項11】
前記棚持ちの期間を延ばすための処理には、前記農作物(S)の保管場所の環境制御が含まれる、請求項10に記載の保管支援装置。
【請求項12】
前記制御部(60)は、前記評価結果に基づいて、前記農作物(S)の用途を示す情報を出力する、請求項1又は請求項2に記載の保管支援装置。
【請求項13】
前記制御部(60)は、前記評価結果に基づいて、前記農作物(S)の価格を示す情報を出力する、請求項1又は請求項2に記載の保管支援装置。
【請求項14】
前記制御部(60)は、前記欠陥に基づいて、前記農作物(S)の修正箇所を示す情報を出力する、請求項10に記載の保管支援装置。
【請求項15】
前記制御部(60)は、前記農作物(S)の画像に基づいて、前記欠陥の分布を示す分布情報を作成する、請求項1又は請求項2に記載の保管支援装置。
【請求項16】
前記改善指示を示す情報は、前記欠陥を修復させる指示を示す情報である、請求項1又は請求項2に記載の保管支援装置。
【請求項17】
収穫後の農作物(S)を撮像することで前記農作物(S)の画像を取得する工程と、
前記農作物(S)の画像に基づいて、前記農作物(S)に水分損失を生じさせるような前記農作物(S)表面のクチクラ層を含む前記農作物(S)の表層の欠陥を考慮して前記農作物(S)を評価し、又は、前記欠陥による前記農作物(S)の水分損失を改善する工程と
を含む、保管支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保管支援装置及び保管支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貯蔵物よりも環境による障害が早く発生する監視対象物を監視し、監視対象物の監視結果に基づいて貯蔵庫内の環境を制御する貯蔵庫内の環境制御方法が開示されている。監視対象物は貯蔵物よりも、気温、酸素濃度、二酸化炭素濃度等の環境の影響を受けてメイラード反応を起こしやすい性質を有することで、貯蔵物よりも環境による障害が早く発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯蔵物に欠陥があると、貯蔵物の欠陥状態の差が棚持ちに影響を及ぼす等により、貯蔵物(農作物)の管理に手ぬかりが生じる可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、農作物を効果的に管理することができる保管支援装置及び保管支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の保管支援装置は、収穫後の農作物(S)を撮像する撮像部(30)と、前記撮像部(30)により撮像された前記農作物(S)の画像に基づいて、前記農作物(S)に水分損失を生じさせるような前記農作物(S)表面のクチクラ層を含む前記農作物(S)の表層の欠陥を考慮して前記農作物(S)を評価し、又は、前記欠陥による前記農作物(S)の水分損失を改善するための改善指示を示す情報を出力する制御部(60)とを備える。
【0007】
第1の態様では、農作物(S)を効果的に管理することができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記欠陥は、前記農作物(S)表面に生じる1mm以下の欠陥である。
【0009】
第2の態様では、目視で発見することが困難な欠陥を有する農作物(S)を効果的に管理することができる。
【0010】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、前記制御部(60)は、前記欠陥に基づいて前記農作物(S)の棚持ちを評価する。
【0011】
第3の態様では、目視で発見することが困難な欠陥を考慮して、農作物(S)の棚持ちを効果的に評価することができる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記農作物(S)の画像は、前記農作物(S)に対する紫外線の照射下で撮像された蛍光画像であり、前記制御部(60)は、前記蛍光画像、又は前記欠陥から放出される放出物からの発光を示す画像に基づいて前記欠陥の状態を評価する。
【0013】
第4の態様では、蛍光画像傷からの発光を示す画像又は欠陥から放出される化合物からの発光を示す画像に基づいて、目視で発見することが困難な欠陥を効果的に特定することができる。
【0014】
第5の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記農作物(S)の画像は、水の吸収スペクトルまたは反射スペクトルに対応する波長の短波長赤外画像であり、前記制御部(60)は、前記短波長赤外画像に基づいて前記欠陥の状態を評価する。
【0015】
第5の態様では、農作物(S)の短波長赤外画像近赤外画像に基づいて、目視で発見することが困難な欠陥から放出される水分量を特定し、農作物(S)表面の欠陥の状態を効果的に評価することができる。
【0016】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記制御部(60)は、前記農作物(S)の画像に基づいて、前記農作物(S)を複数の等級のうちのいずれかの等級に分類することで前記農作物(S)を評価し、前記複数の等級は、前記欠陥の分布に基づいて区分けされる。
【0017】
第6の態様では、農作物(S)を等級に分類することで農作物(S)を等級に応じて管理することができる。
【0018】
第7の態様は、第6の態様において、前記複数の等級には、前記農作物(S)の表面領域のうち前記農作物(S)の画像中に表される前記農作物(S)表面上の全ての欠陥が占める領域の割合が0%以上、10-8%未満になる等級と、前記割合が10-8%以上、10-6%未満になる等級と、前記割合が10-6%以上、10-4%未満になる等級とが含まれ、前記表面領域は、前記農作物(S)の全表面を示す領域、又は、前記全表面のうち前記農作物(S)の画像に表示されている部分を示す領域である。
【0019】
第7の態様では、農作物(S)を欠陥傷の大きさ分布に応じて複数の等級に分類することができる。
【0020】
第8の態様は、第6の態様又は第7の態様において、前記等級は、前記農作物(S)の棚持ちの等級を示す。
【0021】
第8の態様では、農作物(S)を棚持ちの等級で分類することができる。
【0022】
第9の態様は、第6~第8のいずれか1つの態様において、前記等級毎に異なる保管場所が設けられ、前記制御部(60)は、前記農作物(S)の等級を設定すると、前記農作物(S)の等級に対応した前記保管場所を出力し、又は、前記農作物(S)の等級に対応した前記保管場所へ前記農作物(S)を保管する指示を示す情報を出力する。
【0023】
第9の態様では、農作物(S)を等級毎に異なる場所で保管することで、農作物(S)を容易に管理することができる。農作物(S)を等級毎に異なる場所で保管することで、等級が低く、棚持ちの悪い農作物(S)から放出されるエチレンガス等により、等級が高く、棚持ちの良い農作物(S)が悪影響を受けることを抑制できる。
【0024】
第10の態様は、第1~第9のいずれか1つの態様において、前記制御部(60)は、前記評価結果に基づいて、前記農作物(S)の棚持ちの期間を延ばすための処理内容を示す情報、又は前記処理内容の実行する指示を示す情報を出力する。
【0025】
第10の態様では、農作物(S)の棚持ちの期間を効果的に延ばすことができる。
【0026】
第11の態様は、第10の態様において、前記棚持ちの期間を延ばすための処理には、前記農作物(S)の保管場所の環境制御が含まれる。
【0027】
第11の態様では、農作物(S)の棚持ちの期間を延ばすために、農作物(S)の保管場所の環境を効果的に制御することができる。
【0028】
第12の態様は、第1~第11のいずれか1つの態様において、前記制御部(60)は、前記評価結果に基づいて、前記農作物(S)の用途を示す情報を出力する。
【0029】
第12の態様では、農作物(S)の評価結果に基づいた農作物(S)の用途を確認することができる。
【0030】
第13の態様は、第1~第12のいずれか1つの態様において、前記制御部(60)は、前記評価結果に基づいて、前記農作物(S)の価格を示す情報を出力する。
【0031】
第13の態様では、農作物(S)の評価結果に基づいた作物(S)の価格を設定することができる。
【0032】
第14の態様は、第10の態様において、前記欠陥に基づいて、前記農作物(S)の修正箇所を示す情報を出力する。
【0033】
第14の態様では、農作物(S)の修正箇所を確認することができる。
【0034】
第15の態様は、第1~第14のいずれか1つの態様において、前記制御部(60)は、前記農作物(S)の画像に基づいて、前記欠陥の分布を示す分布情報を作成する。
【0035】
第15の態様では、農作物(S)の水分損失量を定量化することができる。
【0036】
第16の態様は、第1~第15のいずれか1つの態様において、前記改善指示を示す情報は、前記欠陥を修復させる指示を示す情報である。
【0037】
第16の態様では、農作物(S)の欠陥傷を効果的に修復することができる。
【0038】
第17の態様の保管支援方法は、収穫後の農作物(S)を撮像することで前記農作物(S)の画像を取得する工程と、前記農作物(S)の画像に基づいて、前記農作物(S)に水分損失を生じさせるような前記農作物(S)表面のクチクラ層を含む前記農作物(S)の表層の欠陥を考慮して前記農作物(S)を評価し、又は、前記欠陥による前記農作物(S)の水分損失を改善する工程とを含む。
【0039】
第17の態様では、農作物(S)を効果的に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、保管支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、果実のカラー画像と蛍光画像とを示す図である。
【
図3】
図3(a)は、農作物の蛍光画像を示す図である。
図3(b)及び
図3(c)は、
図3(a)の蛍光画像の一部を拡大した顕微画像を示す図である。
【
図4】
図4は、農作物のカラー画像を示す図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、農作物の蛍光画像を示す図である。
【
図6】
図6は、第1農作物及び第2農作物の各々についての重量割合の経時変化を示す図である。
【
図7】
図7は、制御部の動作の第1を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、棚持ち等級と農作物の状態との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、制御部の動作の第2を示すフロー図である。
【
図10】
図10は、制御部の動作の第3を示すフロー図である。
【
図11】
図11は、制御部の動作の第4を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表す場合がある。各実施形態、変形例、及び図中において、同一又は相当部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明及びそれに付随する効果等の説明は繰り返さない。
【0042】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る保管支援装置(1)について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る保管支援装置(1)の構成を示すブロック図である。
【0043】
―全体構成―
図1に示すように、保管支援装置(1)は、照射部(10)と、表示部(20)と、撮像部(30)と、案内部(40)と、記憶部(50)と、制御部(60)とを備える。
【0044】
照射部(10)は、収穫後の農作物(S)に対して光を照射する。収穫後の農作物(S)は、収穫されてから出荷されるまでの農作物(S)を示す。農作物(S)は、クチクラ層を有する。
【0045】
本実施形態では、照射部(10)は、紫外線を照射する。照射部(10)が照射する紫外線の波長は、例えば、200nm以上、400nm以下の範囲である。照射部(10)は、例えば、紫外線を照射する光源を含む。光源は、例えば、LED及びレーザダイオードのような光源素子、エキシマランプ、紫外線ランプ又は水銀ランプを含む。照射部(10)から農作物(S)に紫外線が照射されることで、農作物(S)の表面から蛍光が発せられる。
【0046】
表示部(20)は、農作物(S)の評価結果のような情報を表示する。表示部120は、例えば、液晶ディスプレー(Liquid Crystal Display)である。
【0047】
撮像部(30)は、例えばカメラを含む。撮像部(30)は、農作物(S)の表面から発せられる蛍光を撮像する。以下では、撮像部(30)により撮像された蛍光の画像を蛍光画像と記載することがある。
【0048】
案内部(40)は、農作物(S)と撮像部(30)との間に配置される。案内部(40)は、農作物(S)側と撮像部(30)側との両端が開口する筒状の部材である。案内部(40)は、農作物(S)から発せられた蛍光が撮像部(30)に向かうように案内する。案内部(40)により、撮像部(30)に向かう蛍光の指向性が効果的に確保される。
【0049】
記憶部(50)は、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置(例えば、半導体メモリ)を含み、補助記憶装置(例えば、ハ-ドディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、SD(Secure Digital)メモリカード、又は、USB(Universal Serial Bus)フラッシメモリ)をさらに含んでもよい。記憶部(50)は、制御部(60)によって実行される種々のコンピュータープログラムを記憶する。
【0050】
制御部(60)は、CPU及びMPUのようなプロセッサーを含む。制御部(60)は、記憶部(50)に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、保管支援装置(1)の各要素を制御する。
【0051】
制御部(60)は、撮像部(30)により撮像された蛍光画像に基づいて、農作物(S)の状態を評価する。農作物(S)の状態は、農作物(S)に水分損失を生じさせるような農作物(S)表面のクチクラ層を含む農作物(S)の表層の欠陥を考慮した農作物(S)の状態である。欠陥は、農作物(S)表面に生じる1m以下の微細な傷である。本実施形態で示される傷(欠陥)の寸法は、傷の直線方向の寸法のうち最も長いものを示す。
【0052】
―カラー画像と蛍光画像の比較―
図2は、表面に傷を有する果実(ピーマン)を撮像部(30)により撮像することで得られた画像である。果実は、農作物(S)の一例である。
図2において、カラー画像は果実に対して紫外線を照射しないような自然な状態で果実を直接に撮像することで得られた画像であり、蛍光画像は果実に対する紫外線の照射下で果実から発せられる蛍光を撮像することで得られた画像である。
【0053】
図2において、部分画像(T)は果実の表皮が損傷するような深い傷(クチクラ層よりも深い領域まで達する傷)を示しており、部分画像(U)は果実の表皮のうちのクチクラ層のみが損傷したにすぎないような浅い傷を示している。
図2に示すように、表皮の損傷を示す部分画像(T)については、カラー画像及び蛍光画像の両方で傷が位置する部分とその周囲との色の違いに基づいて確認できる。これに対し、クチクラ層のみの損傷を示す部分画像(U)については、蛍光画像からは傷が位置する部分とその周囲との色の違いが明確であるため確認できたが、カラー画像については傷が位置する部分とその周囲との色の違いの度合いが乏しいために確認できなかった。よって、本願発明者は、クチクラ層のみが損傷するような浅い傷については、カラー画像では確認することが困難であっても、蛍光画像では確認することができるとの知見を得た。
【0054】
―農作物表面の微細な傷―
図3(a)は、農作物(S)(トウガラシ)の蛍光画像を示す。
図3(a)において、部分画像(V1,V2)は、農作物(S)表面に生じる1mm以下の微細な傷を示す画像である。
図3(a)において、場所(A)は農作物(S)の蛍光画像のうち部分画像(V1)が位置する場所を示し、場所(B)は農作物(S)の蛍光画像のうち部分画像(V2)が位置する場所を示す。
図3(b)は、微細な傷を示す部分画像(V1)が位置する場所(A)を拡大した顕微画像である。
図3(c)は、微細な傷を示す部分画像(V2)が位置する場所(B)を拡大した顕微画像である。
図4は、
図3(a)に示す農作物(S)と同じ農作物(S)のカラー画像を示す。
図4において、場所(A)は
図3(a)の場所(A)に相当し、場所(B)は
図3(a)の場所(B)に相当する。
【0055】
図4に示すように、農作物(S)表面に生じる1mm以下の微細な傷は、クチクラ層のみが損傷するような浅い傷である場合が多いので、カラー画像では場所(A)および場所(B)については色の変化が乏しかった。これにより、カラー画像では農作物(S)表面の微細な傷を識別することができなかった。
【0056】
これに対し、
図3(a)に示すように、蛍光画像では微細な傷を示す部分画像(V1,V2)とその周囲との色の違いが明瞭となり、微細な傷の存在を確認できた。また、
図3(b)及び
図3(c)に示す顕微画像を確認することで、微細な傷を示す部分画像(V1,V2)が詳細に表示され、
図3(a)に示す蛍光画像上には微細な傷が表示されていることを効果的に確認できた。
【0057】
―蛍光画像で微細な傷を確認できる原理―
農作物(S)表面に微細な傷があると、傷口のクチクラ層から傷を修復するための修復成分(リグニン(フラボノイド)等)、香気成分(アグリコン)等が生成(放出)される。農作物(S)に紫外線が照射されている状態では、当該修復成分及び香気成分が紫外励起の自家蛍光で発光する。これに対し、傷の内部は発光しないので、蛍光画像において傷が位置する部分とその周囲とで色の違いが生じる。その結果、可視光下では捉えられないような微細な傷であっても、蛍光画像を用いることで確認することが可能となる。修復成分は、放出物の第1例である。香気成分は、放出物の第2例である。
【0058】
―農作物表面の微細な傷と農作物の重量変化との関係―
農作物(S)表面の微細な傷と農作物(S)の重量変化との相関を調べるために本願発明者により行われた試験結果について説明する。
【0059】
図5(a)は、第1農作物の蛍光画像(G1)を示す。
図5(b)は、第2農作物の蛍光画像(G2)を示す。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、第1農作物の蛍光画像(G1)と第2農作物の蛍光画像(G2)とを比べると、蛍光画像(G2)の方がより多くの微細な傷を確認できることから、第1農作物よりも第2農作部の方が表面上において微細な傷の占める領域の割合が多い。
【0060】
図6は、第1農作物及び第2農作物の各々についての重量割合の経時変化を示す。
図6において、グラフ(GL1)は第1農作物の監視期間(保管期間)と重量割合との関係を示し、グラフ(GL2)は第2農作物の監視期間と重量割合との関係を示す。重量割合は、監視開始時(本実施形態では、収穫直後)の農作物の重量を100として農作物の重量を相対的な値で示したものである。
【0061】
図5(a)~
図6に示すように、傷の占める領域の割合が多い第2農作物の方が、第1農作物よりも経時的に重量割合が低下する程度が大きく、監視期間が長期化するのに伴って第1農作物の重量割合と第2農作物の重量割合との差が拡大していくことが確認された。監視を開始してから4週間後には、第1農作物の重量割合が88となるのに対し(
図5(a)参照)、第2農作物の重量割合が78となることが確認された(
図5(b)参照)。
【0062】
本願発明者は、第1農作物の重量割合と第2農作物の重量割合とに差が生じた理由を下記のように考察した。農作物(S)表面の傷が1mm以下の微細な傷にすぎなくても、この微細な傷からは農作物(S)の水分が蒸散等により放出されるので、農作物(S)表面において傷の占める領域の割合が多い程、単位時間当たりに放出される水分の量も多くなる。その結果、傷の占める領域の割合が多い第2農作物の方が、第1農作物よりも重量割合が小さくなり、時間が経過する程、第1農作物の重量割合と第2農作物の重量割合との差が顕著になった。
【0063】
本願発明者は、農作物(S)を評価する際に従来は着目されていなかった農作物(S)の表層の1mm以下の目視では確認不能な微細な傷に着目し、当該微細な傷であっても農作物(S)の水分損失に影響を与えることを確認し、農作物(S)の棚持ち等を評価する際に、当該微細な傷を考慮することを創案した。
【0064】
―制御部の動作の第1例―
第1例では、制御部(60)は、農作物(S)の蛍光画像に基づいて評価処理を行う。評価処理は、農作物(S)を複数の等級のうちのいずれかの等級に分類することで、農作物(S)に等級を設定する処理である。複数の等級は、農作物(S)の欠陥の分布に基づいて区分けされる。欠陥の分布は、欠陥の個数、欠陥が占める面積の総和、及び、農作物(S)の表面領域のうち欠陥の占める領域の割合のような統計的処理によって算出される値であり、言い換えれば、農作物(S)に生じる経時的な水分損失の程度(時間の経過に伴って農作物(S)にどの程度の水分損失が生じるか)を示す値である。
【0065】
本実施形態では、複数の等級は、農作物(S)の表面領域のうち欠陥の占める領域の割合に基づいて区分けされる。農作物(S)に等級を設定することは、農作物(S)を評価することの一例である。以下では、評価処理の手順を説明する。
【0066】
図1及び
図7に示すように、ステップS10において、農作物(S)に対して照射部(10)からの紫外線が照射されている状態で、撮像部(30)が農作物(S)の表面から発せられる蛍光を撮像する。その結果、農作物(S)の蛍光画像が生成され、制御部(60)が蛍光画像を示す情報を取得する。
【0067】
ステップS20において、制御部(60)は、蛍光画像(
図3(a)参照)に基づいて、農作物(S)表面の傷(欠陥)を特定する(欠陥を評価する)。詳細には、制御部(60)は、蛍光画像に基づいて、蛍光画像中に表される農作物(S)表面の傷を特定する。
【0068】
ステップS30において、制御部(60)は、農作物(S)の表面領域のうち全ての傷が占める領域(面積)の割合(傷領域割合)を算出する。農作物(S)の表面領域は、農作物(S)の全表面を示す領域であってもよい。この場合、例えば、農作物(S)の表面領域の広さ(面積)を示す情報が、予め記憶部(50)に記憶されている。また、農作物(S)の表面領域は、農作物(S)の全表面のうち農作物(S)の蛍光画像に表示されている部分を示す領域(すなわち、撮像部(30)による農作物(S)の撮像面の範囲)であってもよい。この場合、例えば、制御部(60)は、蛍光画像に基づいて表面領域の広さ(面積)を算出する。
【0069】
ステップS40において、制御部(60)は、傷領域割合に応じて、農作物(S)を複数の等級のうちのいずれかの等級に分類する。等級は、農作物(S)に水分損失を生じさせるような農作物(S)表面のクチクラ層を含む農作物(S)の表層の欠陥(農作物(S)の表層に生じる1mm以下の傷)を考慮した農作物(S)の状態の良好度の等級である。
【0070】
ステップS50において、傷領域割合が0%以上、10-8%未満になる場合、制御部(60)は農作物(S)を等級Aに分類する。等級Aは最も高い等級である。
【0071】
ステップS60において、傷領域割合が10-8%以上、10-6%になる場合、制御部(60)は農作物(S)を等級Bに分類する。等級Bは、等級Aよりもワンランク下の等級である。
【0072】
ステップS70において、傷領域割合が10-6%以上、10-4%になる場合、制御部(60)は農作物(S)を等級Cに分類する。等級Cは、等級Bよりもワンランク下の等級である。
【0073】
ステップS80において、傷領域割合が10-4%以上になる場合、制御部(60)は農作物(S)を規格外に分類する。規格外は最も低い等級である。規格外に分類された農作物(S)は、例えば、商品としての管理対象から外される。
【0074】
複数の農作物(S)について評価処理が行われる場合は、農作物(S)毎にステップS10~ステップS40に示す処理が行われることで、複数の農作物(S)の各々が等級A~等級C及び規格外のうちのいずれかの等級に分類される。
【0075】
農作物(S)の分類結果(農作物(S)がどの等級に分類されたか)については、表示部(20)に表示されてもよい。その結果。作業者が農作物(S)の等級を確認することができる。
【0076】
なお、農作物(S)の等級の個数については特に限定されない。農作物(S)が等級A~等級Cよりも多くの等級に分離されてもよく、又は等級A~等級Cよりも少ない等級に分類されてもよい。また、農作物(S)を分類するために用いる傷領域割合の閾値についても、本実施形態の0%以上、10-8%未満になる場合、10-8%以上、10-6%になる場合等の数値に限定されず、当該閾値は変更されてもよい。例えば、当該閾値を農作物(S)の種類に応じて変更してもよい。
【0077】
―棚持ち等級―
上記した等級A~Cは、それぞれ、農作物(S)の棚持ち等級A~Cであってもよい。棚持ち等級は、農作物(S)の保管性の良さを示す等級である。保管性が良いことは、農作物(S)の保管期間が延びても農作物(S)の水分損失の程度が低いことを示す。棚持ち等級が高い農作物(S)ほど、水分損失の経時的な進行が遅くなる。農作物(S)に棚持ち等級を設定することは、農作物(S)の棚持ちを評価することの一例である。棚持ちを評価することは農作物(S)の経時的な水分損失の程度を評価することを示す。
【0078】
図8は、棚持ち等級と農作物(S)の状態との関係を示す。棚持ち等級は、A、B及びCの順番に低くなる。
図8に示すように、棚持ち等級が高くなるほど、農作物(S)の表皮の状態がよくなる。表皮の状態がよいことは、表皮の傷が発生している領域、病気により変色している領域、及びその他の障害が発生している領域が小さいことを示す。棚持ち等級が高くなるほど、農作物(S)の水分損失による経時的な重量変化(重量減少)の進行が遅くなる。棚持ち等級が高くなるほど、農作物(S)からのエチレンガスの放出量が少なくなる。
【0079】
―農作物の等級設定後の処理の第1例―
農作物(S)の保管場所について、等級毎に異なる保管場所が設けられていてもよい。すなわち、等級Aの農作物(S)用の保管場所と、等級Bの農作物(S)用の保管場所と、等級Cの農作物(S)用の保管場所とがそれぞれ設けられている。この場合、制御部(60)は、上記評価処理(
図7参照)により農作物(S)の等級を設定すると、農作物(S)の等級に対応した保管場所を表示部(20)に表示(出力)させてもよい。例えば、制御部(60)は、農作物(S)の等級を等級Aに設定した場合、当該農作物(S)の保管場所として等級Aの農作物(S)用の保管場所を指定することを示す情報を表示部(20)に表示させる。これにより、作業者は、表示部(20)の表示内容を確認して、農作物(S)の等級に適合した保管場所に農作物(S)を保管することができる。その結果、複数の農作物(S)に対して上記評価処理(
図7参照)を行うことで、等級毎に分離して複数の農作物(S)を保管することができる。
【0080】
なお、農作物(S)をピックアップするロボット、農作物(S)を搬送するコンベア等を含む第1管理装置により、農作物(S)が自身の等級に適合した保管場所まで搬送されるように構成してもよい。保管支援装置(1)は第1管理装置を備える。この場合、制御部(60)は、上記評価処理(
図7参照)により農作物(S)の等級を設定すると、上記第1管理装置に対して農作物(S)の等級に適合した保管場所へ農作物(S)を保管する指示を示す情報(第1制御コマンド)を出力する。その結果、上記第1管理装置が制御部(60)からの第1制御コマンドに従って農作物(S)を指示された保管場所まで搬送する。
【0081】
このように農作物(S)を等級毎に異なる場所で保管することで、農作物(S)を容易に管理することができる。また、農作物(S)を等級毎に異なる場所で保管することで、等級が低く、棚持ちの悪い農作物(S)から放出されるエチレンガス等により、等級が高く、棚持ちの良い農作物(S)が悪影響を受けることを抑制できる。
【0082】
―農作物の等級設定後の処理の第2例―
制御部(60)は、上記評価処理(
図7参照)により農作物(S)の等級を設定すると、棚持ちの期間を延ばすための処理内容を示す情報を表示部(20)に表示(出力)させてもよい。棚持ちの期間を延ばすための処理は、農作物(S)からの水分損失の経時的な進行を遅くするための処理である。作業者が表示部(20)に表示された作業内容を実行することで、棚持ちの期間を延ばすことが可能になる。
【0083】
棚持ちの期間を延ばすための処理内容には、例えば、(a)農作物(S)の保管場所の環境制御(温度制御、湿度制御、空気組成制御等)を行う処理、(b)農作物(S)をMA(Modified Atmosphere)包装する処理、(c)農作物(S)の傷口にワックスを塗る処理、及び、(d)農作物(S)表面の傷を修復する処理のうちの少なくとも1つの処理が含まれる。
【0084】
環境制御において、空気組成制御は、保管場所の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を制御することである。農作物(S)の保管に適した環境になるように保管場所の環境制御を行うことで、棚持ちの期間を延ばすことが可能となる。農作物(S)をMA包装することで農作物(S)の品質低下のスピードを遅らせて、棚持ちの期間を延ばすことが可能となる。農作物(S)の傷口にワックスを塗ることで、傷口からの水分損失を抑制して、棚持ちの期間を延ばすことが可能となる。
【0085】
農作物(S)表面の傷を修復する処理は、例えば、農作物(S)の傷口の周辺においてクチクラ層のワックス成分であるクチン等の成分を溶解又は移動させ、溶解又は移動させた成分で農作物(S)の傷口をコーティングすることによって行われる。この場合、農作物(S)の表面に20℃以上、60℃以下の熱を加えることでクチン等の成分を溶解させてもよい。また、二酸化炭素雰囲気下において農作物(S)の表面のクチンに由来する親水基に二酸化炭素を作用させて表面を酸性にすることでクチン等の成分を溶解させてもよい。また、電磁波により農作物(S)の表面のクチン等の成分を溶解させてもよい。また、超音波により農作物(S)の表面を振動させることでクチン等の成分を溶解又は移動させてもよい。農作物(S)表面の傷を修復することで、農作物(S)の水分損失を抑制して、棚持ちの期間を延ばすことが可能となる。
【0086】
制御部(60)により設定された農作物(S)の等級と対応付けて、棚持ちの期間を延ばすための処理内容が設定される。例えば、上記(a)の環境制御について、等級Cの農作物(S)に対しては精密な環境制御を行うことが上記処理内容となり、等級Bの農作物(S)に対しては通常の環境制御を行うことが上記処理内容となり、等級Aの農作物(S)に対しては粗放な環境制御を行うことが上記処理内容となる。すなわち、上記処理内容においては、農作物(S)の等級が低くなるほど、農作物(S)の保管室の環境を所定の目標環境に近づけるような精密な環境制御が規定される。
【0087】
等級Aの農作物(S)について、粗放な環境制御とする理由は、等級Aの農作物(S)は、欠陥が少ないので、環境制御を厳密に行なわず、低コストの粗放な環境制御を行っても、もともと水分損失の経時的な進行が遅いので、品質を確保しつつ、ある程度の長い期間、保管できるからである。このように、農作物(S)に等級を設定して、等級が高くなるほど環境制御の内容を軽くすることで、棚持ちの期間を延ばすという目的を達成しつつ、農作物(S)の保管コスト(使用電力等)の増加を抑制できる。
【0088】
上記(b)については、例えば、等級Cの農作物(S)及び等級Bの農作物(S)に対してはMA包装を行うことが上記処理内容となり、等級Aの農作物(S)に対してはMA包装を行わない(何もしない)ことが上記処理内容となるように構成してもよい。上記(c)については、例えば、等級Cの農作物(S)及び等級Bの農作物(S)に対しては傷口にワックスを塗ることが上記処理内容となり、等級Aの農作物(S)に対しては傷口にワックスを塗らない(何もしない)ことが上記処理内容となるように構成してもよい。上記(d)については、例えば、等級Cの農作物(S)及び等級Bの農作物(S)に対しては傷口を修復することが上記処理内容となり、等級Aの農作物(S)に対しては傷口を修復しない(何もしない)ことが上記処理内容となるように構成してもよい。
【0089】
上記(b)~(d)において、等級Aの農作物(S)に対しては何もしないとする理由は、等級Aの農作物(S)は欠陥が少ないので、MA包装等の棚持ちの期間を延ばすため処理を行わなくても、もともと水分損失の経時的な進行が遅いので、品質を確保しつつ、ある程度の長い期間、保管できるからである。このように、農作物(S)に等級を設定して、等級が高くなると上記処理内容の実行を省略するように構成することで、棚持ちの期間を延ばすという目的を達成しつつ、農作物(S)の保管コストの増加を抑制できる。
【0090】
なお、農作物(S)表面の傷を修復する処理内容(上記(a)~(d)参照)を実行する第2管理装置を設けてもよい。第1管理装置は、第2管理装置を備える。この場合、制御部(60)は、上記第2管理装置に対して棚持ちの期間を延ばすための処理内容を実行する指示を示す情報(第2制御コマンド)を出力する。上記処理内容は、制御部(60)により設定された農作物(S)の等級と対応付けて設定される。その結果、上記第2管理装置が制御部(60)からの第2制御コマンドに従って、上記処理を実行する。上記第2管理装置は、例えば、冷凍装置、空気調和機、CA装置(Controlled Atmosphere System)、MA包装を行う包装装置、電磁波及び/又は超音波を対象物に付与するような各種機器等の上記(a)~(d)に記載した処理内容のうちの少なくとも1つの処理内容を行うことが可能な適宜の装置を含む。
【0091】
―農作物の等級設定後の処理の第3例―
制御部(60)は、農作物(S)の用途を示す情報を表示部(20)に表示させてもよい。例えば、制御部(60)は、等級C及び規格外のような等級の低い農作物(S)については加工品として使用することを示す情報を表示部(20)に表示させる。
【0092】
制御部(60)は、農作物(S)の価格を示す情報を表示部(20)に表示させてもよい。制御部(60)は、例えば、農作物(S)の棚持ち等級と対応付けて農作物(S)の価格を設定する。棚持ち等級が高くなるほど、農作物(S)の価格が高くなる。
【0093】
制御部(60)は、上記ステップS20(
図7参照)において特定した傷の場所を示す情報、すなわち、農作物(S)の修正箇所を示す情報を表示部(20)に表示させてもよい。
【0094】
―制御部の動作の第2例―
制御部(60)の動作の第2例について、主に、上記第1例(
図7参照)と異なる点を説明する。
【0095】
図1及び
図9に示すように、ステップS20に示す処理が終了すると、処理がステップS20Aに移行する。
【0096】
ステップS20Aにおいて、制御部(60)は、特定した農作物(S)表面の傷のうち、許容値を超える傷があるか否かを判定する。許容値は、例えば、10mmである。許容値は、2mm以上の数値であってもよい。
【0097】
農作物(S)表面に許容値を超える傷があると判定されると(ステップS20Aで、Yes)、処理がステップS80に移行して、農作物(S)が規格外に分類される。農作物(S)表面に許容値を超える傷がないと判定されると(ステップS20Aで、No)、処理がステップS30に移行する。
【0098】
―制御部の動作の第3例―
制御部(60)の動作の第3例について説明する。第3例では、農作物(S)表面に傷(欠陥)が見つかると、農作物(S)に等級を設定することなく、当該傷を修復する。
【0099】
図1及び
図10に示すように、ステップS100において、農作物(S)に対して照射部(10)からの紫外線が照射されている状態で、撮像部(30)が農作物(S)の表面から発せられる蛍光を撮像する。その結果、制御部(60)が蛍光画像を示す情報を取得する。
【0100】
ステップS110において、制御部(60)は、蛍光画像(
図3(a)参照)に基づいて、農作物(S)表面に傷があるか否かを判定する。傷があると判定されると(ステップS110で、Yes)、処理がステップS120に移行する。傷がないと判定されると(ステップS110で、No)、処理が終了する。
【0101】
ステップS120において、制御部(60)は、農作物(S)表面の傷(欠陥)による農作物(S)の水分損失を改善するための改善指示を示す情報を出力する。改善指示を示す情報は、具体的には、ステップS110において特定した傷を修復させる指示を示す情報である。
【0102】
農作物(S)表面の傷の修復は、例えば、農作物(S)の傷口の周辺においてクチクラ層のワックス成分であるクチン等の成分を溶解又は移動させ、溶解又は移動させた成分で農作物(S)の傷口をコーティングすることによって行われる。クチン等の成分を溶解又は移動させる構成は、上記「農作物の等級設定後の処理の第2例」で記載した構成と同じである。
【0103】
制御部(60)は、上記「農作物の等級設定後の処理の第2例」で記載した第2管理装置のような農作物(S)表面の傷を修復する処理を行うことができる装置(当該装置は保管支援装置(1)に備えられる)に対して改善指示を示す情報を出力して、当該装置が改善指示に従った動作(農作物(S)の表面に20℃以上、60℃以下の熱を加えることでクチン等の成分を溶解させる、農作物(S)の表面のクチンに由来する親水基に二酸化炭素を作用させて表面を酸性にする、電磁波を作用させる、又は、超音波により農作物(S)の表面を振動させる)を行うことで農作物(S)表面の傷を修復する。
【0104】
なお、制御部(60)は、改善指示を示す情報を表示部(20)に表示(出力)させてもよい。この場合、表示部(20)に表示された改善指示を確認した作業者が、改善指示に従った動作を行うことで、農作物(S)表面の傷を修復する。
【0105】
―制御部の動作の第4例―
制御部(60)の動作の第4例について、主に、上記第1例(
図7参照)と異なる点を説明する。
【0106】
図1及び
図11に示すように、ステップS110において、傷があると判定されると(ステップS110で、Yes)、処理がステップS110Aに移行する。傷がないと判定されると(ステップS110で、No)、処理が終了する。
【0107】
ステップS110Aにおいて、制御部(60)は、特定した農作物(S)表面の傷のうち、許容値(例えば、10mm)を超える傷があるか否かを判定する。許容値は、2mm以上の数値であってもよい。
【0108】
農作物(S)表面に許容値を超える傷があると判定されると(ステップS110Aで、Yes)、処理がステップS110Bに移行して、農作物(S)が規格外に分類される。農作物(S)表面に許容値を超える傷がないと判定されると(ステップS110Aで、No)、処理がステップS120に移行する。
【0109】
―保管支援装置の第1変形例―
図1に示す農作物(S)と撮像部(30)との間に、農作物(S)の表面から蛍光のうち400nm~500nmの範囲内の波長を有する蛍光を抽出する抽出部を設けてもよい。当該抽出部は、例えば、バンドパスフィルタを含む。撮像部(30)は、当該抽出部により抽出された蛍光(抽出蛍光)を撮像する。撮像部(30)により撮像された抽出蛍光の画像を蛍光画像としてもよい。
【0110】
―保管支援装置の第2変形例―
第2変形例では、撮像部(30)は、赤外線カメラである。撮像部(30)は農作物(S)を撮像することで、水の吸収スペクトル又は反射スペクトルに対応する波長の短波長赤外画像を生成する。制御部(60)は、例えば、1550nmの短波長赤外画像に基づいて、農作物(S)表面の傷からの水分の放出箇所を捉えることで、目視では発見することが困難な欠陥から放出される水分量に基づき農作物(S)表面の傷の状態を評価する。この場合、照射部(10)は不要となる。この場合、
図7及び
図9に示すステップS10と、
図10及び
図11に示すステップS100とにおいて、撮像部(30)により農作物(S)の短波長赤外画像が撮像される。この場合、
図7及び
図9に示すステップS20において、制御部(60)は、短波長赤外画像に基づいて農作物(S)表面の傷を特定する。この場合、
図10及び
図11に示すステップS110とにおいて、制御部(60)は、短波長赤外画像に基づいて農作物(S)表面に傷があるか否かを判定する。
【0111】
―制御部の動作の第5例―
制御部(60)は、農作物(S)の画像に基づいて、農作物(S)の欠陥の分布を示す分布情報を作成することで農作物(S)を評価してもよい。すなわち、制御部(60)は、農作物(S)の欠陥の個数、農作物(S)の欠陥が占める面積の総和、農作物(S)の表面領域のうち欠陥の占める領域の割合等を算出する。農作物(S)の欠陥は農作物(S)に水分損失を生じさせ、水分損失と相関を有する。これにより、農作物(S)の欠陥の分布を示す分布情報を作成することで農作物(S)の水分損失量を定量化することができる。
【0112】
―効果―
本実施形態では、従来は着目されていなかった農作物(S)の表層の1mm以下の目視では確認不能な微細な傷(欠陥)に着目し、制御部(60)は、当該微細な傷を考慮して農作物(S)を評価する。これにより、従来は認識されていなかった当該微細な傷に起因した農作物(S)の水分損失を考慮して、農作物(S)を効果的に管理することができる。
【0113】
また、制御部(60)は、当該微細な傷による農作物(S)の水分損失を改善するための改善指示を示す情報を出力する。これにより、農作物(S)の表層の当該微細な傷を修復することができるので、従来は認識されていなかった当該微細な傷に起因した農作物(S)の水分損失の問題を解決でき、農作物(S)を効果的に管理することができる。
【0114】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、実施例、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0115】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上に説明したように、本開示は、保管支援装置及び保管支援方法について有用である。
【符号の説明】
【0117】
1 保管支援装置
30 撮像部
60 制御部
S 農作物