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特開2024-152173再生ポリスルホンを含有する支持膜の製造方法
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  • 特開-再生ポリスルホンを含有する支持膜の製造方法 図1
  • 特開-再生ポリスルホンを含有する支持膜の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152173
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】再生ポリスルホンを含有する支持膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20241018BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20241018BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20241018BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20241018BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20241018BHJP
   C08J 11/08 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B01D71/68
B01D69/10
B01D69/12
B29B17/04
C08J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066209
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高木健太朗
(72)【発明者】
【氏名】誉田剛士
(72)【発明者】
【氏名】谷口秀
(72)【発明者】
【氏名】岡本宜記
【テーマコード(参考)】
4D006
4F401
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA14
4D006HA62
4D006JA19Z
4D006JA25Z
4D006JA27Z
4D006KA16
4D006KE07R
4D006KE16R
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA21
4D006MA31
4D006MC56X
4D006MC62
4D006NA46
4D006NA61
4D006NA62
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB06
4D006PB08
4D006PC51
4F401AA18
4F401AC09
4F401AD01
4F401BA13
4F401CA33
4F401CA35
4F401CA53
4F401EA68
(57)【要約】
【課題】使用済みの分離膜に含まれる材料を再利用する方法を提供する。
【解決手段】基材にポリスルホン樹脂溶液を流延して形成した支持膜上に分離機能層を設けた複合半透膜から、ポリスルホン樹脂からなる支持膜を再生する方法であって、前記複合半透膜に含まれる基材を除去する工程と、前記複合半透膜から分離機能層を除去する工程と、分離機能層を除去した支持膜を破砕してポリスルホン樹脂とする工程と、前記破砕した後のポリスルホン樹脂を溶媒に溶解させ、基材上に流延して支持膜を形成する工程を有することを特徴とするポリスルホン樹脂からなる支持膜の再生方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材上にポリスルホンを含有する樹脂で形成された多孔性支持層とを有する支持膜、および前記多孔性支持層上の分離機能層を有する複合半透膜から、新たな支持膜を再生する方法であって、
(a)前記複合半透膜から基材および分離機能層を除去することで多孔性支持層を単離する工程と、
(b)前記工程(a)で単離された多孔性支持層を破砕することで、破砕物を得る工程と、
(c)前記破砕物を含む樹脂溶液を調整する工程と、
(d)基材上に前記樹脂溶液を流延し、それを凝固させることで多孔性支持層を形成する工程と、
を有する、再生ポリスルホンを含有する支持膜の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)は、多孔性支持層から基材を剥離することを含む
請求項1に記載の支持膜の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)は、塩素により分離機能層を分解することを含む
請求項1または2に記載の支持膜の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合半透膜に含有されるポリスルホンを用いて新たな支持膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスルホン樹脂は、その化学的、機械的、熱的に安定性の高さから、医療分野、食品分野、水処理分野といった様々な分野で広く利用されている。水処理分野においてポリスルホン樹脂は、容易に製膜できるという利点があり、基材にポリスルホン樹脂を流延して形成した支持膜上に分離機能層を設けた複合半透膜は、高塩除去率、高透過流束であることから、医療分野、食品製造分野、水処理分野等の様々な分野で広く利用されている。
【0003】
具体的には、特許文献1には、不織布層と、不織布層の片面に形成されたポリマー多孔質層とを有する多孔性支持体と、多孔性支持体の表面に設けられた分離機能層と有する複合半透膜が開示され、ポリマー多孔質層の形成材料としてポリスルホンが開示されている。また、対向する複合半透膜の間に透過側流路材が介在する複数の膜リーフと、前記膜リーフの間に介在する供給側流路材と、前記膜リーフ及び前記供給側流路材を巻回した有孔の中心管と、供給側流路と透過側流路との混合を防止する封止部と、を備えるスパイラル型膜エレメントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公報WO2018/052124号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
膜エレメント中の複合半透膜は、使用により性能が次第に低下するため、求められる性能を満たさなくなった膜エレメントは新しいものに交換される。使用済みの膜エレメントは、現在は産業廃棄物として処理されている。廃棄方法としては、主に焼却および埋立が挙げられるが、膜エレメントの使用量の増加に伴って廃棄物量も増加し、環境に与える影響が大きくなることが予想される。また、世界的に廃棄物削減および資源の有効利用への要求が高まっており、使用済みの膜エレメントについても再利用することが望まれている。
【0006】
一方で、使用済みの複合半透膜は性能が低下しているのでそのまま再使用はできず、基材、多孔性支持層、分離機能層をそれぞれ分離することが難しいので、使用済み複合半透膜を材料として再利用することもできていない。
【0007】
本発明は、使用済みの複合半透膜の利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次の(1)~(4)の構成を特徴とするものである。
(1) 基材と前記基材上にポリスルホンを含有する樹脂で形成された多孔性支持層とを有する支持膜、および前記多孔性支持層上の分離機能層を有する複合半透膜から、新たな支持膜を再生する方法であって、
(a)前記複合半透膜から基材および分離機能層を除去することで多孔性支持層を単離する工程と、
(b)前記工程(a)で単離された多孔性支持層を破砕することで、破砕物を得る工程と、
(c)前記破砕物を含む樹脂溶液を調整する工程と、
(d)基材上に前記樹脂溶液を流延し、それを凝固させることで多孔性支持層を形成する工程と、
を有する、再生ポリスルホンを含有する支持膜の製造方法。
(2)前記工程(a)は、多孔性支持層から基材を剥離することを含む上記(1)に記載の支持膜の製造方法。
(3)前記工程(a)は、塩素により分離機能層を分解することを含む上記(1)または(2)に記載の支持膜の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複合半透膜の多孔性支持層を新たな支持膜の製造に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の複合半透膜の一例を示す断面図である。
図2図2は、分離膜エレメントの一例を示す一部展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
〔1.複合半透膜〕
複合半透膜の構造について、図1を参照して説明する。
【0013】
複合半透膜1は、複合半透膜表面に供給される流体中の成分を分離し、複合半透膜を透過した透過流体を得ることができる。複合半透膜1は、支持膜14と分離機能層13とを有する。支持膜14は、基材11と、基材上の多孔性支持層12とを有する。複合半透膜1は、分離機能層13側の面である供給側の面17と、基材11側の面である透過側の面18とを備えている。以下に、各層について説明する。
【0014】
<基材>
基材11としては、強度および流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。繊維状基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。
【0015】
不織布としては、ポリオレフィン、ポリエステル、セルロースなどからなるものが用いられるが、形態保持性の点でポリオレフィン、ポリエステルからなるものが好ましい。また、複数の素材が混合させたものも使用することができる。
【0016】
基材11の厚みは、基材と多孔性支持層との厚みの合計が、30~300μmの範囲内、または50~250μmの範囲内となる程度に設定されることが好ましい。
【0017】
<多孔性支持層>
多孔性支持層12は、ポリスルホンを含有する樹脂で形成される。
【0018】
多孔性支持層12は、複合半透膜1に機械的強度を与え、かつイオン等の分子サイズの小さな成分に対しては分離性能を有さない。多孔性支持層12の有する孔のサイズおよび孔の分布は特に限定されないが、例えば、多孔性支持層12は、均一で微細な孔を有してもよいし、あるいは分離機能層13が形成される側の表面からもう一方の面にかけて径が徐々に大きくなるような孔径の分布を有してもよい。また、いずれの場合でも、分離機能層13が形成される側の表面で原子間力顕微鏡または電子顕微鏡などを用いて測定された細孔の投影面積円相当径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。特に界面重合反応性および分離機能層の保持性の点で、多孔性支持層において分離機能層が形成される側の表面における孔は、3~50nmの投影面積円相当径を有することが好ましい。
【0019】
多孔性支持層12の厚みは特に限定されないが、分離膜に強度を与えるため等の理由から、15μm以上300μm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは20μm以上150μm以下である。
【0020】
多孔性支持層12の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材11から多孔性支持層12を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金-パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3~6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR-FE-SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S-900型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真に基づいて、多孔性支持層の膜厚、表面の投影面積円相当径を測定することができる。
【0021】
多孔性支持層の厚み、孔径は、平均値であり、多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向に20μm間隔で測定し、20点測定の平均値である。また、孔径は、200個の孔について測定された、各投影面積円相当径の平均値である。
【0022】
次に、多孔性支持層の形成方法について説明する。多孔性支持層は、例えば、上記ポリスルホンのN,N-ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、前述した基材11、例えば密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、製造することができる。
【0023】
例えば、所定量のポリスルホンをDMFに溶解し、所定濃度のポリスルホン樹脂溶液を調製する。次いで、このポリスルホン樹脂溶液をポリエステル布あるいは不織布からなる基材上に略一定の厚さに塗布した後、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、凝固液中でポリスルホンを凝固させることによって得ることができる。
【0024】
<分離機能層>
分離機能層13の厚みは具体的な数値に限定されないが、分離性能と透過性能の点で5~3000nmであることが好ましい。特に逆浸透膜、正浸透膜、ナノろ過膜では5~300nmであることが好ましい。
【0025】
分離機能層13の厚みは、これまでの複合半透膜の膜厚測定法に準ずることができる。例えば、複合半透膜を樹脂により包埋し、それを切断することで超薄切片を作製し、得られた切片に染色などの処理を行う。その後、透過型電子顕微鏡により観察することで、厚みの測定が可能である。また、分離機能層13がひだ構造を有する場合、多孔性支持層12より上に位置するひだ構造の断面長さ方向に50nm間隔で測定し、ひだの数を20個測定し、その平均から求めることができる。
【0026】
分離機能層13は、原流体中の成分の分離性能に優れるという点で、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなるポリアミド分離機能層、有機無機ハイブリッド機能層などが好適に用いられる。これらの分離機能層は、多孔性支持層上でモノマーを重縮合することによって形成可能である。
【0027】
例えば、分離機能層13は、ポリアミドを主成分として含有することができる。このような膜は、公知の方法により、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを界面重縮合することで形成される。例えば、多孔性支持層に多官能アミン水溶液を塗布し、余分なアミン水溶液をエアーナイフなどで除去し、その後、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布することで、ポリアミド分離機能層が得られる。
【0028】
また、分離機能層13は、Si元素などを有する有機-無機ハイブリッド構造を有してもよい。有機無機ハイブリッド構造を有する分離機能層は、例えば、以下の化合物(A)、(B):
(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物、ならびに
(B)前記化合物(A)以外の化合物であってエチレン性不飽和基を有する化合物
を含有することができる。具体的には、分離機能層は、化合物(A)の加水分解性基の縮合物ならびに化合物(A)および/または(B)のエチレン性不飽和基の重合物を含有してもよい。すなわち、分離機能層は、
・化合物(A)のみが縮合および/または重合することで形成された重合物、
・化合物(B)のみが重合して形成された重合物、並びに
・化合物(A)と化合物(B)との共重合物
のうちの少なくとも1種の重合物を含有することができる。なお、重合物には縮合物が含まれる。また、化合物(A)と化合物(B)との共重合体中で、化合物(A)は加水分解性基を介して縮合していてもよい。
【0029】
ハイブリッド構造は、公知の方法で形成可能である。ハイブリッド構造の形成方法の一例は次のとおりである。化合物(A)および化合物(B)を含有する反応液を多孔性支持層に塗布する。余分な反応液を除去した後、加水分解性基を縮合させるためには、加熱処理すればよい。化合物(A)および化合物(B)のエチレン性不飽和基の重合方法としては、熱処理、電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射を行えばよい。重合速度を速める目的で分離機能層形成の際に重合開始剤、重合促進剤等を添加することができる。
【0030】
なお、いずれの分離機能層についても、使用前に、例えばアルコール含有水溶液、アルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させてもよい。
【0031】
〔2.分離膜エレメント〕
図2に示すように、分離膜エレメント10は、集水管6と、集水管6の周囲に巻回された複合半透膜1とを備える。また、分離膜エレメント10は、供給側流路材2および透過側流路材4、端板等の部材をさらに備える。
【0032】
複合半透膜1は、透過側の面を内側に向けた矩形状の封筒状膜5を形成する。封筒状膜5は、透過水が集水管6に流れるように、その一辺のみにおいて開口し、他の三辺においては封止される。透過水はこの封筒状膜によって供給水から隔離される。
【0033】
供給側流路材2は、封筒状膜5の間、つまり複合半透膜1の供給側の面の間に配置される。供給側流路材2および複数の封筒状膜5は、重なった状態で、集水管6の周囲に巻き付けられる。
【0034】
透過側流路材4は、封筒状膜5の内部、つまり複合半透膜1の透過側の面の間に配置される。
【0035】
分離膜エレメント10の長手方向における一端から供給された原水(図中に「供給水7」として示す。)は、供給側流路材2によって形成された流路を通って、複合半透膜1に供給される。複合半透膜1を透過した水(図中に「透過水8」として示す。)は、透過側流路材4によって形成された流路を通って集水管6に流れこむ。こうして、透過水8は、集水管6の一端から回収される。一方、複合半透膜1を透過しなかった水(図中に「濃縮水9」として示す)は、分離膜エレメント1の他端から回収される。図2に示す分離膜エレメント1は、集水管と、集水管の周囲に巻回された分離膜とを備えるスパイラル型分離膜エレメントの構成の一例であり、本発明はこの形態に 〔4.再生ポリスルホンを含有する支持膜の製造方法〕
(1)多孔性支持層から再生ポリスルホンを得る工程
本工程は、
(a)前記複合半透膜から基材および分離機能層を除去することで多孔性支持層を単離する工程と、
(b)前記工程(a)で単離された多孔性支持層を破砕することで、破砕物を得る工程と、
を有する。
以下の工程では、使用済み複合半透膜を用いてもよいし、規格外で使用されなかった複合半透膜を用いてもよい。
【0036】

(洗浄工程)
使用済み複合半透膜には、原水中に含まれる有機物または無機物の不純物が付着しているので、酸またはアルカリなどで洗浄することが好ましい。酸としては希塩酸、希硫酸、リン酸、硝酸、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機酸やシュウ酸水溶液、クエン酸水溶液などの有機酸を単独または2種類以上の混合物として用いることができる。アルカリとしては水酸化ナトリウム水溶液や次亜塩素酸ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液などを単独または2種類以上の混合物として用いることができる。洗浄では複合半透膜を酸もしくはアルカリの水溶液に単独または交互に一定時間浸漬させる方法、または分離膜エレメント内に酸もしくはアルカリを循環させる方法を用いることができる。
【0037】
また、洗浄効率を高めるためにこれらの薬品洗浄とポンプによる逆流洗浄やブロワーによる空気洗浄等の物理洗浄を組み合わせて使用しても良い。
【0038】
支持膜または未使用の複合半透膜には、有機溶剤などの不純物が混入していることが考えられるため、水溶性の有機溶剤等で洗浄し、さらに水ですすぐなどの操作を行うことが好ましい。
【0039】
(基材を除去する工程)
上記工程(a)のうち、基材を除去する工程について説明する。
【0040】
支持膜が基材と多孔性支持層とを含む場合、多孔性支持層を単離するには、基材と、多孔性支持層(分離機能層と多孔性支持層との積層体であってもよい)とを分離する。具体的には、多孔性支持層から基材を剥離してもよいし、多孔性支持層(分離機能層との積層体であってもよい)を研削することで、基材と分離してもよい。研削には、グラインダー、サンダーまたはブラスト等が用いられる。剥離は、研削よりも短時間で、かつ騒音、臭気、粉塵を抑えつつ、高効率に基材を除去することができることから特に好ましい。
【0041】
剥離は、複合半透膜の透過側の面(基材側の面)に高圧流体を供給する方法、または手動もしくはフィルム剥離装置を用いて基材と多孔性支持層との界面を剥離させる方法を用いることができ、これらの方法を組み合わせて使用しても良い。
【0042】
また、複合半透膜に含まれる基材を除去する工程は、後述する複合半透膜から分離機能層を除去する工程の前後どちらで行っても問題ない。
【0043】
(分離機能層を除去する工程)
上記工程(a)のうち、分離機能層を除去する工程について説明する。
【0044】
複合半透膜から多孔性支持層を単離するには、多孔性支持層と分離機能層との積層体から分離機能層を除去する工程を実施する。除去方法としては、分離機能層を分解する方法や、研削により分離機能層を多孔性支持層から除去する方法を用いることができる。具体的な研削方法は上述したとおりである。分解は、研削よりも簡便かつ高効率に分離機能層を除去することができる。
【0045】
分解には、分離機能層を分解し、かつ多孔性支持層を分解しない薬品を分離機能層に接触させる方法や、プラズマ処理により分離機能層を分解する方法、亜臨界水による解重合により分離機能層を分解する方法を用いることができるが、薬品による分離機能層の分解は、短時間かつ低コストで分離機能層の分解を行うことができ特に好ましい。
【0046】
分離機能層の分解に用いられる薬品としては、分離機能層が多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなるポリアミド分離機能層の場合、アミド結合を酸化分解可能な薬品であることが好ましく、例えば次亜塩素酸ナトリウム水溶液や次亜塩素酸カルシウム水溶液等の塩素系薬剤や、過酸化水素水、水酸化ナトリウム等のアルカリ系薬剤を用いることができ、これらを単独または2種類以上の混合物として用いることができる。中でも、次亜塩素酸ナトリウム水溶液や次亜塩素酸カルシウム水溶液を用いた塩素分解法で分離機能層を除去する方法が、再生したいポリスルホンの化学変化を抑えつつ、最も簡便かつ効率的に分離機能層の除去が可能であり好ましい。
【0047】
ポリスルホンの化学変化の有無を測定する方法としては、分子量分布測定や元素分析、融点測定、示差走査熱量測定、加熱重量減分析、核磁気共鳴分光法、赤外分光法、紫外分光法などで行うことができるが、再生したポリスルホン樹脂を元の形状に加工した後に、再生処理前後の物性を比較することで確認することもできる。ただし、いずれの方法で確認しても、測定誤差が生じるので、分子量分布測定、元素分析、融点測定、示差走査熱量測定、加熱重量減分析、核磁気共鳴分光法、赤外分光法、紫外分光法などの分析では誤差は5%以内、再生したポリスルホン樹脂を元の形状に加工し、ポリスルホン樹脂の再生処理前後の物性を比較する場合は10%程度の誤差は化学変化していないとみなすことができる。
【0048】
使用される塩素系水溶液のpHは、酸性側になるほど活性種である次亜塩素酸の割合が高くなり分離機能層の分解効率が高くなるが、同時に配管や装置の腐食を促進するリスクが高くなるため、そのためpHとしては、pH6.0~9.0の範囲であることが好ましく、さらに好ましくはpH6.5~7.5の範囲である。
【0049】
使用される塩素系水溶液の有効塩素濃度は、1%~15%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは3~10%の範囲である。この範囲であれば薬品自体の分解を抑制しつつ、効率的に分離機能層の分解が可能である。
【0050】
使用される塩素系水溶液の温度が高いほど分解効率が高くなるが、温度が高すぎるとガス体が発生したり、薬品自体の分解を早め濃度管理が難しくなったりすることから、10℃~60℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは20℃~40℃の範囲である。
【0051】
薬品による分離機能層の分解は、分離膜エレメントを分解して得られた複合半透膜を塩素系薬剤の水溶液に一定時間浸漬させる方法や、塩素系の水溶液を複合半透膜表面に連続または間欠塗布する方法、また分離膜エレメント内に塩素系薬剤の水溶液を循環させて分離機能層を除去する方法を用いることができる。
【0052】
上記の塩素系水溶液のpH、有効塩素濃度、処理温度、処理方法は、使用される複合半透膜の分離機能層の重合度や厚みに応じて任意に設定することができる。
【0053】
(多孔性支持層を破砕する工程)
工程(b)について説明する。ポリスルホンを効率よく溶媒に溶解させるために、単離された多孔性支持層は溶解前に破砕されることが好ましい。多孔性支持層の破砕には通常ボールミルや高速カッターミル、ロールクラッシャー、ロータリーカッター、油圧切断機などの破砕機や粉砕機を用いるが、特に高速カッターミルやロータリーカッター、油圧切断機などの粉砕手段を用いると細かく破砕できることから好ましい。また、破砕する多孔性支持層はあらかじめ乾燥することで、より均一に破砕できるため好ましい。
【0054】
破砕後に溶媒に溶解させることで、短時間でポリスルホン溶液を得ることができる。
【0055】
(2)支持膜形成工程
本工程は、
(c)前記破砕物を含む樹脂溶液を調整する工程と、
(d)基材上に前記樹脂溶液を流延し、それを凝固させることで多孔性支持層を形成する工程と、
を有する。つまり、本工程によると、多孔性支持層を形成する樹脂の少なくとも一部として、単離された多孔性支持層(すなわち再生ポリスルホン)を用いることができる。
【0056】
工程(c)において、樹脂溶液に含まれる溶媒、つまり再生ポリスルホンを溶解させる溶媒としては、前述の多孔性支持層の形成方法と同様に、DMFが例示される。再生ポリスルホンを溶媒に溶解させることで得られたポリスルホン溶液には、多孔性支持層の単離工程で完全に除去されなかった不純物、基材、分離機能層の一部が残存することがあるため、これらの不純物を除去する精製工程を行うことが好ましいポリスルホン樹脂溶液の精製には、遠心分離および/またはろ過を用いることができる。安価かつ連続的に精製が行えるろ過が特に好ましい。ろ過に使用するろ材としては、DMF等の溶媒に侵されず、再生ポリスルホン樹脂溶液中に残存する不純物を除去できるものであればよく、フェルトフィルター、メンブレンフィルター、ガラスフィルター、金属メッシュ等のろ材を単体で、または組み合わせて使用することができる。
【0057】
精製後の再生ポリスルホン樹脂溶液は、前述の多孔性支持膜を製造する方法と同様に、基材上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、多孔性支持膜を再生することができる。
【0058】
工程(d)では、基材上に前記樹脂溶液を流延し、それを凝固浴に浸漬すればよい。凝固浴としてはポリスルホンの非溶媒が用いられ、より具体的には水が用いられる。
【0059】
再生支持膜は、前述の分離機能層を製造する方法と同様に、多孔性支持層上でモノマーを重縮合することによって形成し、複合半透膜とすることができる。再生して得られた複合半透膜は医療分野、食品分野の他に、水処理用の膜としても利用することができる。
【0060】
以上の様にして再生されたポリスルホン樹脂を一部または全部に用いて支持膜とすることにより、ポリスルホン樹脂の物性を変化させることなく容易にマテリアルリサイクルすることができるのである。
【0061】
〔3.分離膜エレメントの利用〕
分離膜エレメント10は、直列または並列に接続して圧力容器に収納されることで、分離膜モジュールとして使用されてもよい。
【0062】
また、上記の分離膜エレメント、分離膜モジュールは、それらに流体を供給するポンプや、その流体を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、例えば供給水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
【0063】
流体分離装置の操作圧力は高い方が除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、分離膜エレメントの供給流路、透過流路の保持性を考慮すると、分離膜モジュールに供給水を透過する際の操作圧力は、0.2MPa以上6MPa以下が好ましい。
【0064】
供給水温度は、高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上45℃以下が好ましい。
【0065】
また、原水のpHが中性領域にある場合、原水が海水などの高塩濃度の液体であっても、マグネシウムなどのスケールの発生が抑制され、また、膜の劣化も抑制される。
【0066】
<供給水>
本実施形態の分離膜エレメントへの供給水は特に限定されず、予め処理された水道水でもよく、海水やかん水、下廃水のように溶液中の不純物が多いものでもよい。例えば、水処理に使用する場合、原水(供給水)としては、海水、かん水、排水等の500mg/L以上100g/L以下のTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」で表されるが、1Lを1kgと見なして「重量比」で表されることもある。定義によれば、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を39.5~40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
【実施例0067】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例および参考例における測定は次のとおり行った。
【0068】
(膜脱塩率(TDS除去率))
複合半透膜に、温度25℃、pH6.5に調整した海水(TDS濃度3.5%)を操作圧力5.5MPaで供給した。得られた透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計により測定することで、実用塩分(S)を測定した。こうして得られた実用塩分を塩濃度とみなして、次の式を用いることで、TDS除去率を求めた。
脱塩率=100×{1-(透過水中の塩濃度/供給水中の塩濃度)}
(膜透過流束)
供給水として海水を使用し、膜面1平方メートル当たり、1日の透水量(立方メートル)から膜透過流束(m/m/日)を求めた。
【0069】
(分離膜エレメント脱塩率(TDS除去率))
スパイラル型分離膜エレメントに、温度25℃、pH6.5に調整した海水(TDS濃度3.5%)を操作圧力5.5MPaで供給した。得られた透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計により測定することで、実用塩分(S)を測定した。こうして得られた実用塩分を塩濃度とみなして、次の式を用いることで、TDS除去率を求めた。
TDS除去率(%)=100×{1-(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}。
【0070】
(分離膜エレメント造水量)
脱塩率の測定と同条件で分離膜エレメントを運転したときの透過水量を、分離膜エレメントあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)を造水量(m/日)として表した。
【0071】
(分離膜エレメントの連続運転試験)
スパイラル型分離膜エレメントに、温度25℃、pH6.5に調整した海水(TDS濃度3.5%)を圧力5.5MPaで30日間連続運転した後、運転を終了した。その後の脱塩率、造水量を測定した。
【0072】
(参考例A)
ポリエステル繊維からなる不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1cc/cm2/sec)上にポリスルホンの15.0重量%、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を180μmの厚みで室温(25℃)にてキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって繊維補強ポリスルホン支持膜からなる支持膜(厚さ130μm)ロールを作製した。
【0073】
その後に、支持膜ロールを巻きだし、ポリスルホン表面に、多官能アミン全体で5.5重量%で、メタフェニレンジアミン/1,3,5-トリアミノベンゼン=70/30モル比となるように調製した多官能アミン水溶液中を塗布し、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.16重量%を含む25℃のn-デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布した。その後、膜から余分な溶液をエアーブローで除去し、90℃の熱水で洗浄して分離膜ロールを得た。得られた複合半透膜の膜性能評価を行ったところ、塩除去率が99.82%、膜透過流束は0.91m3/m2/日であった。
【0074】
その後、分離膜シートを裁断し、1辺が開口するように折りたたまれた分離膜シートの間に供給側流路材としてネット(厚み:800μm、ピッチ5mm×5mm)を連続的に積層し、分離膜シートの有孔集水管の長手方向の両側の端部にウレタン系接着剤(イソシアネート:ポリオール=1:3)を塗布した後、重ね合わせて、分離膜エレメントでの有効面積が8m2になるように、幅930mmの封筒状膜6枚を作製した。
【0075】
その後、封筒状膜の開口部側の所定部分を有孔集水管の外周面に接着し、さらにスパイラル状に巻囲することで巻囲体を作製した。巻囲体の外周面にフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカット、端板取りつけ、フィラメントワインディングを行い、4インチエレメントを作製した。
【0076】
該分離膜エレメントを繊維強化プラスチック製筒型圧力容器に入れて、上述の方法で脱塩率および造水量を測定したところ、脱塩率99.80%、造水量6.7m/日であった。
【0077】
(実施例1)
参考例Aで得られた分離膜エレメントを、上述の方法で連続運転させ、脱塩率および造水量を測定したところ、脱塩率99.80%、造水量5.2m/日であった。この連続運転後の分離膜エレメントに、pH1に調整した希硫酸を室温(20℃)で通水循環したのち、ポンプを停機して24時間静置した。次いでRO水で分離膜エレメント内部をすすいだ後、pH14に調整した水酸化ナトリウム水溶液を、室温(20℃)で通水循環したのち、ポンプを停機して24時間静置した。その後、RO水で分離膜エレメント内部をすすぎ、複合半透膜に付着した不純物を除去した。
【0078】
洗浄後の分離膜エレメントのフィラメントワインディングや端板を取り除き、分離膜リーフから接着部分を除くように複合半透膜を切り出した。切り出した複合半透膜をフィルム剥離装置に通過させて、複合半透膜に含まれる基材を除去した。
【0079】
基材を除去した複合半透膜をpH7に調整した有効塩素濃度5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に室温(20℃)で24時間浸漬した後、RO水ですすぎ、ポリアミド分離機能層を分解除去した。
【0080】
ポリアミド分離機能層を分解除去した多孔性支持層を乾燥させた後、高速カッターミルで破砕して再生ポリスルホン樹脂とした。
【0081】
その後、破砕した再生ポリスルホン樹脂を、ポリスルホンの15.0重量%、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液とした後、400メッシュのSUS製金属平織りフィルターと孔径1μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過精製した。精製後の再生ポリスルホン樹脂溶液は、参考例Aと同様の手順で、支持膜とし、次いで分離機能層を形成して複合半透膜とした。
【0082】
得られた再生複合半透膜の膜性能評価を行ったところ、塩除去率が99.78%、膜透過流束は0.89m/m/日であった。
【0083】
また、この再生複合半透膜を参考例Aと同様の手順で、分離膜エレメントとし、繊維強化プラスチック製筒型圧力容器に入れて、上述の方法で脱塩率および造水量を測定したところ、脱塩率99.76%、造水量6.3m/日であった。
【0084】
(実施例2)
参考例Aで得られた分離膜エレメントを、上述の方法で連続運転させ、脱塩率および造水量を測定したところ、脱塩率99.80%、造水量5.2m/日であった。この連続運転後の分離膜エレメントに、pH1に調整した希硫酸を室温(20℃)で通水循環したのち、ポンプを停機して24時間静置した。次いでRO水で分離膜エレメント内部をすすいだ後、pH14に調整した水酸化ナトリウム水溶液を、室温(20℃)で通水循環したのち、ポンプを停機して24時間静置した。その後、RO水で分離膜エレメント内部をすすぎ、複合半透膜に付着した不純物を除去した。
【0085】
次いで、pH7に調整した有効塩素濃度5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を室温(20℃)で通水循環したのち、ポンプを停機して24時間静置した。その後、RO水で分離膜エレメント内部をすすぎポリアミド分離機能層を分解除去した。
【0086】
洗浄後の分離膜エレメントのフィラメントワインディングや端板を取り除き、分離膜リーフから接着部分を除くように支持膜を切り出した。切り出した支持膜をフィルム剥離装置に通過させて、支持膜に含まれる基材を除去した。
【0087】
次いで多孔性支持層を乾燥させた後、高速カッターミルで破砕して再生ポリスルホン樹脂とした。
【0088】
その後、破砕した再生ポリスルホン樹脂を、ポリスルホンの15.0重量%、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液とした後、400メッシュのSUS製金属平織りフィルターと孔径1μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過精製した。精製後の再生ポリスルホン樹脂溶液は、参考例Aと同様の手順で、支持膜とし、次いで分離機能層を形成して複合半透膜とした。
【0089】
得られた再生複合半透膜の膜性能評価を行ったところ、塩除去率が99.77%、膜透過流束は0.87m/m/日であった。
【0090】
また、この再生複合半透膜を参考例Aと同様の手順で、分離膜エレメントとし、繊維強化プラスチック製筒型圧力容器に入れて、上述の方法で脱塩率および造水量を測定したところ、脱塩率99.75%、造水量6.1m/日であった。
【0091】
(実施例3)
参考例Aで得られた分離膜エレメントを、上述の方法で連続運転させ、脱塩率および造水量を測定したところ、脱塩率99.80%、造水量5.2m/日であった。
【0092】
連億運転後の分離膜エレメントのフィラメントワインディングや端板を取り除き、分離膜リーフから接着部分を除くように複合半透膜を切り出した。
【0093】
切り出した複合半透膜を、pH1に調整した希硫酸に室温(20℃)で24時間浸漬した後、RO水ですすいだ。次いで、pH14に調整した水酸化ナトリウム水溶液に室温(20℃)で24時間浸漬した後、RO水ですすぎ、複合半透膜に付着した不純物を除去した。
【0094】
その後、洗浄後の複合半透膜をフィルム剥離装置に通過させて、複合半透膜に含まれる基材を除去した。
【0095】
さらに、基材を除去した複合半透膜をpH7に調整した有効塩素濃度5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に室温(20℃)で24時間浸漬した後、RO水ですすぎ、ポリアミド分離機能層を分解除去した。
【0096】
ポリアミド分離機能層を分解除去した多孔性支持層を乾燥させた後、高速カッターミルで破砕して再生ポリスルホン樹脂とした。
【0097】
その後、破砕した再生ポリスルホン樹脂を、ポリスルホンの15.0重量%、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液とした後、400メッシュのSUS製金属平織りフィルターと孔径1μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過精製した。精製後の再生ポリスルホン樹脂溶液は、参考例Aと同様の手順で、支持膜とし、次いで分離機能層を形成して複合半透膜とした。
【0098】
得られた再生複合半透膜の膜性能評価を行ったところ、塩除去率が99.80%、膜透過流束は0.90m/m/日であった。
【0099】
また、この再生複合半透膜を参考例Aと同様の手順で、分離膜エレメントとし、繊維強化プラスチック製筒型圧力容器に入れて、上述の方法で脱塩率および造水量を測定したところ、脱塩率99.80%、造水量6.6m/日であった。
【0100】
以上に示す結果から明らかなように、実施例1~3の再生ポリスルホン樹脂からなる支持膜を備える複合半透膜は、優れた造水性能と分離性能を安定して備えているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、使用済みの分離膜エレメントを廃棄する場合に、焼却処分や埋没処分することなくポリスルホン樹脂からなる支持膜を再生する方法として好適に利用される。本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0102】
1 複合半透膜
2 供給側流路材
4 透過側流路材
5 封筒状膜
6 集水管
7 供給水
8 透過水
9 濃縮水
10 分離膜エレメント
11 基材
12 多孔性支持層
13 分離機能層
14 支持膜
17 供給側の面
18 透過側の面
図1
図2