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  • 特開-分離方法 図1
  • 特開-分離方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152174
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/58 20060101AFI20241018BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20241018BHJP
【FI】
B01D61/58
C02F1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066210
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠原拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡本宜記
(72)【発明者】
【氏名】花田茂久
(72)【発明者】
【氏名】渡辺良太
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA43
4D006HA61
4D006JA53Z
4D006JA57Z
4D006JA58Z
4D006JA63Z
4D006JA65Z
4D006JA67Z
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA56
4D006KA67
4D006KE02Q
4D006KE04Q
4D006KE11P
4D006KE19P
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA06
4D006MA25
4D006MC56
4D006MC62
4D006PA02
4D006PB03
4D006PB04
4D006PB05
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】原水濃度が低下した場合でも、一定品質の透過水および、または濃縮水を安定して得ることができる膜分離装置を用いた分離方法を提供する。
【解決手段】原水を分離膜で多段濃縮する方法であって、n段目の透過水および濃縮水をn段目供給水に循環するラインを有し(nは2以上の整数)、原水中の濃縮対象物質の濃度を検知し、所定の濃度より小さい場合に、n段目の透過水および濃縮水の一部をそれぞれ循環することにより、n段目に供給される濃度および流量を維持する、膜分離装置を用いた分離方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物質を含む原水から濃縮水および透過水を得る分離であって、
第1、第2・・・第n、・・・第N濃縮工程を有し、
Nは2以上の整数であり、nは2以上N以下の整数であり、
第1濃縮工程は、原水を含む第1供給水から第1透過水と第1濃縮水とを得る工程であり、
第n濃縮工程は、第(n-1)濃縮工程で得られた第(n-1)濃縮水を含む第n供給水から第n透過水と第n濃縮水とを得る工程であり、
第n濃縮工程の内、少なくとも一つの濃縮工程においてCn/CnおよびFn/Fnが±20%以内となるように、第n透過水および第n濃縮水を第n供給水の一部として供給する工程をさらに備える、
分離方法。
Cn:前記原水の対象物質濃度が所定値Aより小さくなった場合の第n濃縮工程の供給水の濃度
Fn:前記原水の対象物質濃度が所定値Aより小さくなった場合の第n濃縮工程の供給水の流量
Cn:前記対象物質濃度が所定値Aである場合の第n濃縮工程の供給水の濃度
Fn:前記対象物質濃度が所定値Aである場合の第n濃縮工程の供給水の流量
【請求項2】
前記原水の対象物質濃度が所定値Aより小さくなった場合に、前記所定値Aと第1供給水の濃度C1とで表されるC1/Aが±20%以内となるように、第1濃縮水の一部を第1供給水の一部として供給する工程をさらに備える
請求項1に記載の分離方法。
【請求項3】
前記第n透過水および第n濃縮水を第n供給水の一部として供給する工程において、
前記第n供給水に含まれる第n透過水の体積Rtnおよび第n濃縮水の体積Rcnの比率である循環比率Rtn/Rcnを、第n濃縮工程について予め規定された回収率Bに基づいて、Rtn/Rcn=B/(100-B)とする、
請求項1または2に記載の分離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水、河川水、地下水、排水処理水などの原水を処理して濃縮水を得るに関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒(例えば水)に溶解した物質を濃縮するための技術には様々なものがあるが、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法が利用されている。膜分離方法に用いられる分離膜としては、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。この中でも、特にナノろ過膜、逆浸透膜は比較的低分子の塩類、有機物の濃縮に適している。
【0003】
原水から分離膜を用いて原水よりも高い溶質濃度を有する濃縮水と、低い溶質濃度を有する透過水とを得るための分離装置または分離方法についても検討がなされている。例えば、特許文献1には、原水をろ過して浄水を得る逆浸透膜型濾過手段と、浄水を溜める貯溜槽3とを有する逆浸透膜式浄水装置が開示されている。この逆浸透膜式浄水装置は、浄水を貯溜槽に注水する注水管路から分岐して逆浸透膜型濾過手段に給水する浄水循環経路と、浄水装置の濾過処理起動時に注水を禁止し、注水管路内の残留水を浄水循環経路により所定時間循環を行った後に注水を開始する制御手段と、をさらに備える。
【0004】
特許文献1では、透過水である浄水を得ることが目的であるが、逆に、原水中の溶質を回収することを目的として、濃縮水を得る場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007―105572号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、濃縮水を分離膜の原水供給側に循環させながらろ過を行うことで、所定の濃度まで上昇した濃縮水を系外に排水するので、原水濃度が低下した場合でも濃縮水の濃度を維持することができる。しかし、原水濃度の変動により、分離膜に供給される供給水の流量および濃度が変動するという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、原水濃度が変動した場合でも供給水の流量と濃度を維持し、安定的に分離を続けることができる分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は次の構成をとる。
【0009】
(1)対象物質を含む原水から濃縮水および透過水を得る分離であって、
第1、第2・・・第n、・・・第N濃縮工程を有し、
Nは2以上の整数であり、nは2以上N以下の整数であり、
第1濃縮工程は、原水を含む第1供給水から第1透過水と第1濃縮水とを得る工程であり、
第n濃縮工程は、第(n-1)濃縮工程で得られた第(n-1)濃縮水を含む第n供給水から第n透過水と第n濃縮水とを得る工程であり、
第n濃縮工程の内、少なくとも一つの濃縮工程においてCn/CnおよびFn/Fnが±20%以内となるように、第n透過水および第n濃縮水を第n供給水の一部として供給する工程をさらに備える、
分離方法。
Cn:前記原水の対象物質濃度が所定値Aより小さくなった場合の第n濃縮工程の供給水の濃度
Fn:前記原水の対象物質濃度が所定値Aより小さくなった場合の第n濃縮工程の供給水の流量
Cn:前記対象物質濃度が所定値Aである場合の第n濃縮工程の供給水の濃度
Fn:前記対象物質濃度が所定値Aである場合の第n濃縮工程の供給水の流量
(2)前記原水の対象物質濃度が所定値Aより小さくなった場合に、前記所定値Aと第1供給水の濃度C1とで表されるC1/Aが±20%以内となるように、第1濃縮水の一部を第1供給水の一部として供給する工程をさらに備える
上記(1)に記載の分離方法。
(3)前記第n透過水および第n濃縮水を第n供給水の一部として供給する工程において、
前記第n供給水に含まれる第n透過水の体積Rtnおよび第n濃縮水の体積Rcnの比率である循環比率Rtn/Rcnを、第n濃縮工程について予め規定された回収率Bに基づいて、Rtn/Rcn=B/(100-B)とする、
上記(1)または(2)に記載の分離方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、原水濃度が低下した場合でも、一定品質の透過水または/および濃縮水を安定して得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の一形態における分離装置の概略を示すフロー図である。
図2】本発明の実施の他の形態における分離装置の概略を示すフロー図である。
図3】従来の膜分離装置のフロー図である。
図4】本発明の実施の他の形態を示す分離装置の概略を示すフロー図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を用いて説明する。ただし、本発明の範囲がこれらに限られるものではない。
【0013】
本発明の膜分離装置を用いた分離方法の一例として、2段の膜分離ユニットを有し、2段目の透過水および濃縮水を2段目供給水に循環するラインを有する膜分離装置を図1に示す。図1に示す膜分離装置は、原水1が1段目の膜分離ユニット5に送液され処理される。ここで、膜分離ユニットは少なくとも一つの分離膜エレメントを有する。分離膜の種類は、原水中に溶解して濃縮対象となる物質の種類および濃度に応じて選択される。例えば、濃縮対象が塩類である場合は逆浸透膜もしくはナノろ過膜が選択され、濃縮対象がタンパク質である場合は限外ろ過膜が選択される。
【0014】
また、分離膜は、支持膜と、支持膜上に設けられた分離機能層とを有する複合半透膜であってもよい。支持膜が非対称膜である場合は、支持膜の2つの面のうち、小さい孔径を有する面の上に、さらに小さい孔径を有する分離機能層が設けられる。複合半透膜は、例えば、支持膜は、基材と、基材上に設けられた支持体とを備えてもよく、分離機能層は支持体上に設けられる。基材としては不織布が好ましく適用され、支持体としてはポリスルホン等で形成された多質体が好ましく適用される。また、分離機能層はポリアミドを含有することが好ましい。ポリアミド含有分離機能層は、支持体上での多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により形成される。
【0015】
分離膜は、濃縮対象物質を高濃縮するために使用されるものであるため、濃縮対象物質に対する高い除去率を有するものであることが好ましい。除去率は、100-透過水中の濃度÷供給水および濃縮水中の濃度平均×100で表される。分離膜の除去率は、75%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、もっとも好ましくは90%以上である。分離膜の除去性能がこの範囲にあることで、透過水側への濃縮対象物質のロスを低減しつつ、高濃縮することができる。
分離膜エレメントとは、前記分離膜を実際に使用するために形骸化したものであり、平膜はスパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのエレメントに組み込んで、また、中空糸は束ねた上でエレメントに組み込んで使用することができるが、本発明は分離膜エレメントの形態に左右されるものではない。
【0016】
膜分離ユニットは、前記分離膜エレメントを1~数本圧力容器の中に収めた分離膜モジュールから成る。一つの膜分離ユニットにおいて、分離膜モジュールは直列および並列に配置され、その組み合わせ、本数、配列は目的に応じて任意に設定することができる。
【0017】
1段目の膜分離ユニットに供された供給水4は膜分離ユニット5で処理され、分離膜を透過して濃縮対象物質の濃度が低減された透過水6と濃縮対象物質の濃度が上昇した濃縮水7を得る。この内、濃縮水7は2段目の膜分離ユニット9に供給される。
【0018】
本発明においては、原水中の濃縮対象物質の濃度を検知し、所定の濃度より小さい場合に、n段目の膜分離ユニットの透過水10および濃縮水11の一部を循環透過水10aおよび循環濃縮水11aとして、1段目の濃縮水7と混合してn段目の膜分離ユニット9に供給水8として供給することに特徴がある(nは2以上の整数)。循環しなかった残りの透過水10bおよび濃縮水11bは、後段プロセスに送液され、目的に応じて追加の処理を行うことができる。本発明において、原水と供給水は区別される。原水は膜分離装置に供給される液のことを指す一方、供給水は膜分離ユニットに供給される液を指す。1段目の膜分離ユニットについて、透過水または濃縮水の循環ラインが存在しない場合は、原水と1段目の膜分離ユニットの供給水の組成は同じであるが、循環ラインが存在する場合は、原水と供給水の組成が異なる場合があるため、区別する必要がある。
【0019】
原水中の濃縮対象物質の濃度を検知する手段としては、濃縮対象物質が塩類である場合は電気伝導度計、またはそれを塩分濃度に換算する塩分濃度計を用いることが例示される。また、有機物質の測定手段としては、TOC(全有機炭素濃度)、COD(化学的酸素要求量)、BOD(生物学的酸素要求量)、UV(紫外線吸収)、IR(赤外吸収)、Brix(屈折率)、比重など、濃縮対象物質に適した任意の測定手段を選択することができる。濃度検出器の位置については、原水タンクの他、原水タンクと1段目の膜分離ユニット間の配管上に図1の2に示すように設置してもよい。また、原水を定期的にサンプリングして、膜分離装置とは別の場所に設置された濃度検出器を使用して濃度を測定しても良い。
【0020】
原水における「所定の濃度」とは、膜分離装置に供給される原水において、安定運転時に想定される原水中の濃縮対象物質の濃度範囲における上限の濃度のことを示す。例えば、安定時の濃度範囲が10,000~12,000mg/Lである場合は、所定の濃度を12,000mg/Lとすることが好ましい。
【0021】
1段目の膜分離ユニット5から2段目の膜分離ユニット8間における循環透過水ラインおよび循環濃縮水ラインの接続先としては、例えば1段目の膜分離ユニット5と2段目の膜分離ユニット9について貯留槽を介さずに直接配管で接続する場合は、図1に示すように配管上に接続することができる。その他、1段目の膜分離ユニット5と2段目の膜分離ユニット9の間に、1段目の濃縮水7を貯留する貯留槽を設ける場合は、循環ラインを貯留槽に接続してもよい。
【0022】
1段目と2段目の膜分離ユニットについて、各膜分離ユニットに供給される供給水の流量に対する得られる透過水の流量の割合として表される回収率をそれぞれ個別に制御する場合、所定の回収率を達成するのに必要な供給水の圧力が異なることが多い。1段目の濃縮水の圧力よりも2段目の供給水の圧力の方が低くなる場合は、1段目と2段目の膜分離ユニットの間の配管上に減圧弁を設けて減圧することができる。また、1段目の濃縮水の圧力よりも2段目の供給水の圧力の方が高くなる場合は、1段目と2段目の膜分離ユニットの間の配管上に昇圧ポンプを設けて昇圧することができる。
【0023】
本形態では、2段目の膜分離ユニットに供給される供給水8の濃度および流量を一定に維持するために、循環透過水10aおよび循環濃縮水11aの流量は制御される。循環透過水および循環濃縮水の流量を制御する方法に制限はないが、例えば、各循環ラインに流量計およびコントロール弁を設置し、所定の流量になるようにコントロール弁の開度をフィードバック制御する方法が挙げられる。
【0024】
濃度および流量を「維持」するとは、規定値に対して一定の誤差範囲内に維持することを表す。本発明では、規定値に対して20%の誤差範囲内に維持することが好ましく、より好ましくは10%の誤差範囲内、さらに好ましくは5%の誤差範囲内に維持することが好ましい。ここで、規定値とは、前述した原水の濃縮対象物質の濃度を所定の濃度から目的とする濃度まで濃縮するために、本膜分離装置を用いて運転する際における濃度、流量、および回収率などの運転条件のことを示す。
【0025】
また、原水中の濃縮対象物質の濃度が低下した際に、1段目の膜分離ユニットにおいて、2段目に供給される濃縮水7の濃度を維持するように1段目の回収率を高めることもできる。ただし、濃縮水7の流量が小さくなるため、変更後の回収率によっては、濃縮水流量が膜エレメントの推奨流量を下回り、ファウリングが進行することがある。そのため、図2のように、濃縮水7の一部を循環濃縮水7aとして1段目の膜分離ユニットの供給水として循環させ、推奨流量の範囲内に収めることが好ましい。例えば、分離膜エレメントが8インチの逆浸透膜エレメントもしくはナノろ過膜エレメントの場合、分離膜エレメントに流れる供給水および濃縮水の推奨流量は原水の水質にも依るが約3~17m3/hである。濃縮水の一部を循環せずに回収率を高めた場合に前記推奨流量を下回る場合は、推奨流量の範囲となるように濃縮水を一部循環することが好ましい。
【0026】
原水中の濃縮対象物質の濃度が低下し、1段目の濃縮水7の濃度を維持するように制御した場合、規定値に対して濃縮水7の濃度は維持される一方で、2段目の膜分離ユニットの原水となる濃縮水7の流量は低下することとなる。この場合、2段目における循環透過水10aおよび循環濃縮水11aの循環比率を2段目の膜分離ユニットについて予め規定された回収率に応じて決定することが好ましい。例えば、2段目の膜分離ユニットについて予め規定された回収率が50%の場合、透過水および濃縮水の循環比率を50/(100-50)に制御することが好ましい。本制御を行うことで、2段目の供給水8の濃度および流量を維持することができる。
【0027】
従来の膜分離装置を用いた分離方法を図3に示す。原水は第一膜分離ユニットに供給され、第一膜分離ユニットの濃縮水は第2膜分離ユニットに供給される。第2膜分離ユニットの透過水および濃縮水の一部は第2膜分離ユニットに循環することなく、系外に排出される。
【0028】
上記図1および図2では、膜分離ユニット数、つまり濃縮工程数を2とした実施形態を示したが、本発明の分離方法これに限定されない。図4に、N個の膜分離ユニットを有する膜分離装置を示す。
【0029】
図4に示すように、膜分離装置は、第1、第2・・・第n、・・・第N膜分離ユニットを有する。Nは2以上の整数であり、nは2以上N以下の整数である。第1膜分離ユニットは第1供給水を第1濃縮水および第1透過水に分離する。第1供給水は原水を含む。第n膜分離ユニットは、第n供給水から第n透過水および第n濃縮水に分離する。第n供給水は、第(n-1)膜分離ユニットで得られた第(n-1)濃縮水を含む。
【0030】
膜分離装置は、第(n-1)濃縮水を第n膜分離ユニットに送ることができるように設けられた配管、並びに第n濃縮工程の内、少なくとも一つの濃縮工程において第n濃縮水および第n透過水の少なくとも一部を第n膜分離ユニットに環流できるように設けられた配管を備える。
【0031】
この膜分離装置を用いて原水中の対象物質を濃縮する方法は、
・第1濃縮工程:原水を含む第1供給水から第1膜分離ユニットにより第1透過水と第1濃縮水とを得る工程
・第n濃縮工程:第(n-1)濃縮水を含む第n供給水から第n透過水と第n濃縮水とを得る工程
を備え、さらに、
・Cn/CnおよびFn/Fnが±0.2以内(±20%以内)となるように、第n透過水および第n濃縮水を第n供給水の一部として供給する工程を
備える。
Cn:前記原水の対象物質濃度が所定値Aより小さくなった場合の第n濃縮工程の供給水の濃度
Fn:前記原水の対象物質濃度が所定値Aより小さくなった場合の第n濃縮工程の供給水の流量
Cn:前記対象物質濃度が所定値Aである場合の第n濃縮工程の供給水の濃度
Fn:前記対象物質濃度が所定値Aである場合の第n濃縮工程の供給水の流量
また、分離方法は、原水の対象物質濃度が所定値Aより小さくなった場合に、前記所定値Aと第1供給水の濃度C1とで表されるC1/Aが±0.2以内(±20%以内)となるように、第1濃縮水の一部を第1供給水の一部として供給する工程をさらに備えることが好ましい。
【0032】
また、第n透過水および第n濃縮水を第n供給水の一部として供給する前記工程において、第n供給水に含まれる第n透過水の体積Rtnおよび第n濃縮水の体積Rcnの比率である循環比率Rtn/Rcnを、第n濃縮工程について予め規定された回収率Bに基づいて、Rtn/Rcn=B/(100-B)とすることが好ましい。
【実施例0033】
(参考例1)
濃縮対象物質の濃度が5,000mg/L、流量が60m3/hの原水について、図1に示した膜分離プロセス構成によって、10,000mg/Lまで濃縮を行う場合の流量、濃度、回収率、透過流束の試算を行った。試算結果を表1に示す。試算において、装置に使用される膜分離エレメントとして、8インチサイズの逆浸透膜エレメントを用いて、濃縮対象物質に対する除去率が100%の前提として、2段目の膜分離ユニットにおける透過水およびの濃縮水の循環ラインを使用しない形式で運転を行ったものとする。また、本参考例において、膜分離装置の安定運転が達成できているものとする。
【0034】
(実施例1)
参考例1において、原水における濃縮対象物質の濃度が2,500mg/Lに低下した場合において、図1に示した膜分離プロセス構成によって2段目の膜分離ユニットにおける透過水およびの濃縮水の循環ラインを使用する形で10,000mg/Lまで濃縮を行う場合の流量、濃度、回収率、透過流束の試算を行った。試算結果を表1に示す。
【0035】
(実施例2)
参考例1において、原水における濃縮対象物質の濃度が2,500mg/Lに低下した場合において、図2に示した膜分離プロセス構成によって、1段目の膜分離ユニットにおける濃縮水の循環ライン、2段目の膜分離ユニットにおける透過水およびの濃縮水の循環ラインを使用する形で10,000mg/Lまで濃縮を行う場合の流量、濃度、回収率、透過流束の試算を行った。試算結果を表1に示す。
【0036】
(比較例1)
参考例1において、原水における濃縮対象物質の濃度が2,500mg/Lに低下した場合において、図3に示した膜分離プロセス構成によって、1段目の膜分離ユニットの回収率を高めることで10,000mg/Lまで濃縮を行う場合の流量、濃度、回収率、透過流束の試算を行った。試算結果を表1に示す。
【0037】
(比較例2)
参考例1において、原水における濃縮対象物質の濃度が2,500mg/Lに低下した場合において、図3に示した膜分離プロセス構成によって、2段目の膜分離ユニットの回収率を高めることで10,000mg/Lまで濃縮を行う場合の流量、濃度、回収率、透過流束の試算を行った。試算結果を表1に示す。
【0038】
比較例1では、2段目の膜分離ユニットにおける濃縮水流量が推奨流量未満になり、ファウリングが進行する可能性が大幅に高まる。また、比較例2では2段目の膜分離ユニットにおける濃縮水流量が推奨流量未満になり、透過流束が安定運転時の透過流束と比較して1.5倍高くなるため、ファウリングが進行する可能性が大幅に高まる。
【0039】
一方、実施例1および2では、逆浸透膜エレメント1本当たりの供給水および濃縮水流量が推奨範囲内となり、また、透過流束は安定運転できている参考例1と比較して1段目の膜分離ユニットで最大1.06倍に増大しているだけであるため、比較例1および2の膜分離装置を用いた分離方法と比較してファウリングが進行する可能性は低く、安定運転できる可能性が大きい。
【0040】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、海水、河川水、地下水、排水処理水などの原水を処理して原水濃度が低下した場合でも、一定品質の透過水または/および濃縮水を安定して得る膜分離装置を用いた分離方法に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 原水
2 濃度検出器
3 供給ポンプ
4 第一膜分離ユニット供給水
5 第一膜分離ユニット
6 透過水
7 濃縮水
7a 循環濃縮水
7b 抜出濃縮水
8 供給水
9 第二膜分離ユニット
10 透過水
10a 循環透過水
10b 抜出透過水
11 濃縮水
11a 循環濃縮水
11b 抜出濃縮水
図1
図2
図3
図4