IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤ 図1
  • 特開-タイヤ 図2
  • 特開-タイヤ 図3
  • 特開-タイヤ 図4
  • 特開-タイヤ 図5
  • 特開-タイヤ 図6
  • 特開-タイヤ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152178
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20241018BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C19/00 B
B60C11/00 B
B60C11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066215
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】下條 伸之
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BB01
3D131BC31
3D131EA02U
3D131EA10V
3D131LA02
3D131LA03
3D131LA05
3D131LA06
(57)【要約】
【課題】 機能部品のセンシング感度を高めてタイヤ情報の測定性能を改善することを可能にしたタイヤを提供する。
【解決手段】 トレッド部1に少なくともキャップトレッドゴム層15Aを含むトレッドゴム層15を備えると共に、タイヤ情報を検知するセンサ機能を有する機能部品20をトレッド部1の裏面に備えたタイヤにおいて、機能部品20はトレッド部1の裏面側に接触する接触面を有し、この接触面をトレッド部1の踏面に投影することで形成される領域の中心点を基準に半径50mm以内の領域Sを規定したとき、この領域S内でトレッドゴム層15の厚さが最も厚い箇所においてキャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaが61以上である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に少なくともキャップトレッドゴム層を含むトレッドゴム層を備えると共に、タイヤ情報を検知するセンサ機能を有する機能部品を前記トレッド部の裏面に備えたタイヤにおいて、
前記機能部品は前記トレッド部の裏面側に接触する接触面を有し、この接触面を前記トレッド部の踏面に投影することで形成される領域の中心点を基準に半径50mm以内の領域Sを規定したとき、この領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaが61以上であることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記機能部品を収容するための収容体が前記トレッド部の裏面に固定され、前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaと前記収容体のJIS硬さbとがa≦bの関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記機能部品を収容するための収容体が前記トレッド部の裏面に固定され、前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaと前記収容体のJIS硬さbとがa>bの関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaと前記キャップトレッドゴム層のタイヤ径方向内側に位置するアンダートレッドゴム層のJIS硬さcとがa≦cの関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaと前記キャップトレッドゴム層のタイヤ径方向内側に位置するアンダートレッドゴム層のJIS硬さcとがa>cの関係を満たすことを特徴とする請求項1又は3に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記トレッドゴム層の厚さXがタイヤ内表面から前記トレッドゴム層までの距離Yの0.8倍~3.5倍の範囲にあることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層の厚さが前記トレッドゴム層の厚さの35%~97%の範囲にあることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記機能部品を収容するための収容体が前記トレッド部の裏面に固定され、該収容体に前記機能部品が収容されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記収容体が接着剤により前記トレッド部の裏面に固定されていることを特徴とする請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記収容体が加硫ゴムからなることを特徴とする請求項8に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記機能部品はセンサ素子として圧電素子を用いたセンサ機能を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ情報を検知するセンサ機能を有する機能部品を備えたタイヤに関し、更に詳しくは、機能部品のセンシング感度を高めてタイヤ情報の測定性能を改善することを可能にしたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ情報を取得するためにタイヤ内表面に機能部品(例えば、センサを含むセンサユニット)を設置することが行われている(例えば、特許文献1~3参照)。このような機能部品では、タイヤ情報として、温度や内圧のみならず、タイヤ走行時に路面から受ける衝撃力や加速度等を検出することも行われている。
【0003】
しかしながら、タイヤ走行時に路面から受ける衝撃力や加速度のようなタイヤ情報は、機能部品が設置される部分周辺の物性(例えば、硬さ)により大きく影響される。そのため、機能部品の装着位置によっては、機能部品のセンシング感度を十分に確保することができないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-146875号公報
【特許文献2】特開2021-60401号公報
【特許文献3】特表2018-512333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、機能部品のセンシング感度を高めてタイヤ情報の測定性能を改善することを可能にしたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のタイヤは、トレッド部に少なくともキャップトレッドゴム層を含むトレッドゴム層を備えると共に、タイヤ情報を検知するセンサ機能を有する機能部品を前記トレッド部の裏面に備えたタイヤにおいて、前記機能部品は前記トレッド部の裏面側に接触する接触面を有し、この接触面を前記トレッド部の踏面に投影することで形成される領域の中心点を基準に半径50mm以内の領域Sを規定したとき、この領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaが61以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、トレッド部の裏面に機能部品を設置するにあたって、トレッド部を構成するキャップトレッドゴム層の硬さを高く設定することにより、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃が機能部品に効率良く伝わるので、機能部品のセンシング感度を高めてタイヤ情報の測定性能を改善することができる。センシング感度とは、路面からの衝撃に起因する物理量の変化を感度良く検出する能力を意味し、センシング感度の改善により出力波形のピークトゥピーク値が大きくなり、路面からの衝撃に起因して物理量が変化するタイミングを的確に把握することが可能となる。
【0008】
本発明において、機能部品を収容するための収容体がトレッド部の裏面に固定され、領域S内でトレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所においてキャップトレッドゴム層のJIS硬さaと収容体のJIS硬さbとはa≦bの関係を満たすことできる。このようにキャップトレッドゴム層よりも収容体を硬くした場合、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃が減衰することなく機能部品に伝わるので、機能部品のセンシング感度を高めることができる。
【0009】
機能部品を収容するための収容体がトレッド部の裏面に固定され、領域S内でトレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所においてキャップトレッドゴム層のJIS硬さaと収容体のJIS硬さbとはa>bの関係を満たすことができる。このようにキャップトレッドゴム層よりも収容体を軟らかくした場合、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃を和らげることができるので、機能部品が脱落するおそれがある使用環境において機能部品の脱落を防止することができる。
【0010】
領域S内でトレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所においてキャップトレッドゴム層のJIS硬さaとキャップトレッドゴム層のタイヤ径方向内側に位置するアンダートレッドゴム層のJIS硬さcとはa≦cの関係を満たすことができる。このようにキャップトレッドゴム層よりもアンダートレッドゴム層を硬くした場合、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃が減衰することなく機能部品に伝わるので、機能部品のセンシング感度を高めることができる。
【0011】
領域S内でトレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所においてキャップトレッドゴム層のJIS硬さaとキャップトレッドゴム層のタイヤ径方向内側に位置するアンダートレッドゴム層のJIS硬さcとはa>cの関係を満たすことができる。このようにキャップトレッドゴム層よりもアンダートレッドゴム層を軟らかくした場合、機能部品のセンシング感度を保持しつつ、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃を和らげることができるので、機能部品が脱落するおそれがある使用環境において機能部品の脱落を防止することができる。
【0012】
領域S内でトレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所においてトレッドゴム層の厚さXはタイヤ内表面からトレッドゴム層までの距離Yの0.8倍~3.5倍の範囲にあることが好ましい。これにより、機能部品のセンシング感度の向上と機能部品の脱落の防止を両立することができる。
【0013】
領域S内でトレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所においてキャップトレッドゴム層の厚さはトレッドゴム層の厚さの35%~97%の範囲にあることが好ましい。これにより、機能部品のセンシング感度の向上と生産性の向上を両立することができる。
【0014】
本発明において、機能部品を収容するための収容体がトレッド部の裏面に固定され、該収容体に機能部品が収容されていることが好ましい。収容体は接着剤によりトレッド部の裏面に固定されていることが好ましい。収容体は加硫ゴムからなることが好ましい。このような収容体を用いた場合にも、上述した優れた効果を得ることができる。
【0015】
また、機能部品はセンサ素子として圧電素子を用いたセンサ機能を有することが好ましい。このような圧電素子を用いたセンサ機能を有する機能部品を用いる場合には、顕著な効果を得ることができる。
【0016】
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましいが、非空気式タイヤであっても良い。空気入りタイヤの場合、その内部には空気、窒素等の不活性ガス又はその他の気体を充填することができる。
【0017】
本発明において、キャップトレッドゴム層、アンダートレッドゴム層及び収容体のJIS硬さは、いずれもJIS K6253に準拠して測定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
図2図1の空気入りタイヤのトレッド部を示す平面図である。
図3図1の空気入りタイヤにおける機能部品の設置部分を示す平面図である。
図4図3のIV-IV矢視断面図である。
図5】機能部品とその収容体を示す斜視図である。
図6】トレッド部の寸法を説明する説明図である。
図7】圧電素子からの出力波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図6は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0021】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0022】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0023】
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1にはトレッドゴム層15が配置されている。トレッドゴム層15は、少なくともキャップトレッドゴム層15Aを含んでいる。この実施形態では、トレッド部1の踏面をなすキャップトレッドゴム層15Aと、このキャップトレッドゴム層15Aのタイヤ径方向内側に位置するアンダートレッドゴム層15Bの2層で構成されている。なお、トレッドゴム層15は、タイヤ接地面に露出する導電ゴムからなるアーストレッドや、キャップトレッドゴム層15Aのタイヤ幅方向の両端部にそれぞれ配置されるウイングチップを含んでいても良い。
【0024】
図2に示すように、トレッド部1の踏面には、タイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝11が形成されている。周方向溝11は、例えば、4本の周方向主溝11Aと1本の周方向細溝11Bを含んでいる。周方向主溝11Aは、ウェアインジケータを備えた溝であり、タイヤ幅方向の端部に面取り部を備えていても良い。
【0025】
上述した4本の周方向主溝11Aにより、トレッド部1には5列の陸部13が区画されている。そして、陸部13の各々には、タイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝14がタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。トレッド部1には、必要に応じて、サイプ等の溝成分が付加されていても良い。
【0026】
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1の踏面には周方向溝11やラグ溝14のような溝が形成される一方で、図1に示すように、トレッド部1の裏面には、タイヤ情報を検知するセンサ機能を有する円柱状の機能部品20が設置されている。
【0027】
図3図5に示すように、機能部品20は収容体30の内部に収容されている。収容体30は、トレッド部1の裏面に固定される平板状の底部31と、この底部31から突出した筒状の側壁部32と、これら底部31と側壁部32により形成される収容部33と、この収容部33に連通する開口部34とを有している。収容体30は加硫ゴムからなる成形体であると良い。このように構成される収容体30は例えば接着剤によりトレッド部1の裏面に固定され、その収容体30に機能部品20が収容される。機能部品20は、収容体30を介してトレッド部1の踏面に設置されることが好ましいが、収容体30を介さずにトレッド部1の裏面に直接貼り付けられていても良い。いずれの場合においても、機能部品20はトレッド部1の裏面側に接触する接触面21を有している。即ち、接触面21はトレッド部1の裏面又は収容体30の底部31の表面に接触する面である。
【0028】
機能部品20は、筐体の内部に各種の電子部品を収容した構造を有している。電子部品としては、タイヤ情報を取得するための各種のセンサ、送信機、受信機、制御回路及びバッテリー等を含むように構成することができる。センサにより取得されるタイヤ情報として、空気入りタイヤの内部温度や内圧、トレッド部の摩耗量等を挙げることができる。例えば、内部温度や内圧の測定には温度センサや圧力センサが使用される。トレッド部の摩耗量を検出する場合、例えば、機能部品20の接触面21に圧電素子からなるセンサ素子22が配設され、そのセンサ素子22が走行時のタイヤ変形に応じた出力電圧を検出し、その出力電圧に基づいてトレッド部1の摩耗量を検出する。それ以外に、加速度センサや磁気センサを使用することも可能である。
【0029】
図2に示すように、機能部品20の接触面21をトレッド部1の踏面に投影することで形成される領域SOの中心点Cを基準に半径50mm以内の領域Sを規定したとき、少なくとも領域S内でトレッドゴム層15の厚さが最も厚い箇所において、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaは61以上に設定されている。ここで、領域S内でトレッドゴム層15の厚さが最も厚い箇所は、領域S内に位置するトレッドゴム層15におけるラグ溝やサイプ等の溝が形成されていない部位に相当し、その部位でのキャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaが61以上である。特に、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaが61~80の範囲にあることが好ましい。
【0030】
トレッド部1の裏面に機能部品20を設置するにあたって、トレッドゴム層15の硬さが機能部品20のセンシング感度に影響を及ぼす。そのため、上述したようにトレッド部1を構成するキャップトレッドゴム層15Aの硬さを高く設定することにより、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃が機能部品20に効率良く伝わるので、機能部品20のセンシング感度を高めてタイヤ情報の測定性能を改善することができる。
【0031】
更に、領域S内でトレッドゴム層15の厚さが最も厚い箇所において、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaと収容体30のJIS硬さbとはa≦bの関係を満たすことできる。その際、収容体30のJIS硬さbとキャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaの差(b-a)は、5~15の範囲にあることが好ましい。このようにキャップトレッドゴム層15Aよりも収容体30を硬くした場合、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃が減衰することなく機能部品20に伝わるので、機能部品20のセンシング感度を高めることができる。このようにキャップトレッドゴム層15Aよりも収容体30を硬くしたタイヤの場合、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃が小さくなり易い土や雪等の軟らかい路面でも機能部品20により良好な検知が可能である。
【0032】
或いは、領域S内でトレッドゴム層15の厚さが最も厚い箇所において、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaと収容体30のJIS硬さbとはa>bの関係を満たすことができる。その際、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaと収容体30のJIS硬さbの差(a-b)は、5~15の範囲にあることが好ましい。このようにキャップトレッドゴム層15Aよりも収容体30を軟らかくした場合、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃を和らげることができるので、機能部品20が脱落するおそれがある使用環境において機能部品20の脱落を防止することができる。
【0033】
なお、収容体30のJIS硬さbは、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaを測定した領域S内の部位の直下において測定し、同じ箇所で測定された両者のJIS硬さを比較する。
【0034】
また、領域S内でトレッドゴム層15の厚さが最も厚い箇所において、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaとアンダートレッドゴム層15BのJIS硬さcとはa≦cの関係を満たすことができる。その際、アンダートレッドゴム層15BのJIS硬さcとキャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaの差(c-a)は、5~15の範囲にあることが好ましい。このようにキャップトレッドゴム層15Aよりもアンダートレッドゴム層15Bを硬くした場合、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃が減衰することなく機能部品20に伝わるので、機能部品20のセンシング感度を高めることができる。このようにキャップトレッドゴム層15Aよりもアンダートレッドゴム層15Bを硬くしたタイヤの場合、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃が小さくなり易い土や雪等の軟らかい路面でも機能部品20により良好な検知が可能である。
【0035】
或いは、領域S内でトレッドゴム層15の厚さが最も厚い箇所において、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaとアンダートレッドゴム層15BのJIS硬さcとはa>cの関係を満たすことができる。その際、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaとアンダートレッドゴム層15BのJIS硬さcの差(a-c)は、5~15の範囲にあることが好ましい。このようにキャップトレッドゴム層15Aよりもアンダートレッドゴム層15Bを軟らかくした場合、機能部品20のセンシング感度を保持しつつ、タイヤが接地する際に路面から受ける衝撃を和らげることができるので、機能部品20が脱落するおそれがある使用環境において機能部品20の脱落を防止することができる。
【0036】
なお、アンダートレッドゴム層15BのJIS硬さcは、キャップトレッドゴム層15AのJIS硬さaを測定した領域S内の同じ部位で測定し、同じ箇所で測定された両者のJIS硬さを比較する。
【0037】
図6に示すように、領域S内でトレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所(図6の位置P)において、トレッドゴム層15の厚さXは、タイヤ内表面からトレッドゴム層15までの距離Yの0.8倍~3.5倍の範囲にあることが好ましく、1.0倍~3.3倍の範囲にあることがより好ましい。このように比X/Yが上記範囲を満たすように厚さXと距離Yを適度に設定することで、機能部品20のセンシング感度の向上と機能部品20の脱落の防止を両立することができる。
【0038】
ここで、トレッドゴム層15の厚さXと距離Yの比X/Yが0.8未満であると、トレッドゴム層15の厚さXが過度に薄く、トレッド部1の路面と機能部品20の接触面21までの距離が近過ぎるため、機能部品20の耐脱落性が悪化する。逆に、トレッドゴム層15の厚さXと距離Yの比X/Yが3.5を超えると、トレッドゴム層15の厚さXが過度に厚く、トレッド部1の路面と機能部品20の接触面21までの距離が遠過ぎるため、機能部品20のセンシング感度が低下する。
【0039】
更に、領域S内でトレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所(図6の位置P)において、キャップトレッドゴム層15Aの厚さZ(図6参照)は、トレッドゴム層15の厚さXの35%~97%の範囲にあることが好ましく、38%~95%の範囲にあることがより好ましい。このように厚さXに対する厚さZの比率を適度に設定することで、機能部品20のセンシング感度の向上と生産性の向上を両立することができる。
【0040】
ここで、トレッドゴム層15の厚さXに対するキャップトレッドゴム層15Aの厚さの比率が35%未満であると、キャップトレッドゴム層15Aの厚さが過度に薄く、機能部品20のセンシング感度の改善効果を十分に得ることができない。逆に、トレッドゴム層15の厚さXに対するキャップトレッドゴム層15Aの厚さZの比率が97%を超えると、アンダートレッドゴム層15Bの厚さが過度に薄いため、キャップトレッドゴム層15Aの製造時の生産性が悪化する。
【実施例0041】
タイヤサイズ225/45ZR18で、トレッド部に少なくともキャップトレッドゴム層を含むトレッドゴム層を備えると共に、タイヤ情報を検知するセンサ機能を有する機能部品をトレッド部の裏面に備え、この機能部品がセンサ素子として圧電素子を用いたセンサ機能を有するタイヤにおいて、キャップトレッドゴム層のJIS硬さa、収容体のJIS硬さb、アンダートレッドゴム層のJIS硬さc、比X/Y、厚さXに対する厚さZの比率を表1のように設定した比較例及び実施例1~11のタイヤを製作した。なお、機能部品は収容体を介してトレッド部の裏面に装着した。
【0042】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、センシング感度及び耐脱落性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0043】
センシング感度:
各試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのホイールに組み付けてドラム試験機に装着し、空気圧を230kPaとし、荷重を最大負荷能力の60%とし、速度を30km/hとする走行試験を実施し、センサ素子(圧電素子)により検出される出力を記録した。図7は圧電素子からの出力波形の一例を示すものである。この出力波形では、トレッド部において機能部品が設置された部位が接地する際に、時間Tの経過に伴って圧電素子の出力にマイナス側のピークとプラス側のピークが順次形成され、ピークトゥピーク値Vが得られる。そして、各10回の計測において得られる出力波形のピークトゥピーク値Vの平均値を求めた。評価結果は、出力波形のピークトゥピーク値Vの平均値を用い、比較例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどセンシング感度が優れていることを意味する。このようなセンシング感度を評価した。
【0044】
耐脱落性:
各試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのホイールに組み付けてドラム試験機に装着し、空気圧を360kPaとし、荷重を最大負荷能力の80%とする走行試験を実施した。具体的には、最初の10分間で260km/hまで加速し、その後は10分毎に10km/hずつ速度を増加させ、機能部品による通信波形が乱れる又は途切れて機能部品が脱落したと判定されるまで走行させ、その走行距離を測定した。評価結果は、比較例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐脱落性が優れていることを意味する。
【0045】
【表1】
【0046】
この表1から判るように、実施例1~11のタイヤは、比較例との対比において、機能部品のセンシング感度が良好であった。
【0047】
本開示は、以下の発明[1]~[11]を包含する。
発明[1]は、トレッド部に少なくともキャップトレッドゴム層を含むトレッドゴム層を備えると共に、タイヤ情報を検知するセンサ機能を有する機能部品を前記トレッド部の裏面に備えたタイヤにおいて、前記機能部品は前記トレッド部の裏面側に接触する接触面を有し、この接触面を前記トレッド部の踏面に投影することで形成される領域の中心点を基準に半径50mm以内の領域Sを規定したとき、この領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaが61以上であることを特徴とするタイヤである。
発明[2]は、前記機能部品を収容するための収容体が前記トレッド部の裏面に固定され、前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaと前記収容体のJIS硬さbとがa≦bの関係を満たすことを特徴とする発明[1]に記載のタイヤである。
発明[3]は、前記機能部品を収容するための収容体が前記トレッド部の裏面に固定され、前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaと前記収容体のJIS硬さbとがa>bの関係を満たすことを特徴とする発明[1]に記載のタイヤである。
発明[4]は、前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaと前記キャップトレッドゴム層のタイヤ径方向内側に位置するアンダートレッドゴム層のJIS硬さcとがa≦cの関係を満たすことを特徴とする発明[1]又は[2]に記載のタイヤである。
発明[5]は、前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層のJIS硬さaと前記キャップトレッドゴム層のタイヤ径方向内側に位置するアンダートレッドゴム層のJIS硬さcとがa>cの関係を満たすことを特徴とする発明[1]又は[3]に記載のタイヤである。
発明[6]は、前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記トレッドゴム層の厚さXがタイヤ内表面から前記トレッドゴム層までの距離Yの0.8倍~3.5倍の範囲にあることを特徴とする発明[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤである。
発明[7]は、前記領域S内で前記トレッドゴム層の厚さが最も厚い箇所において前記キャップトレッドゴム層の厚さが前記トレッドゴム層の厚さの35%~97%の範囲にあることを特徴とする発明[1]~[6]のいずれかに記載のタイヤである。
発明[8]は、前記機能部品を収容するための収容体が前記トレッド部の裏面に固定され、該収容体に前記機能部品が収容されていることを特徴とする発明[1]~[7]のいずれかに記載のタイヤである。
発明[9]は、前記収容体が接着剤により前記トレッド部の裏面に固定されていることを特徴とする発明[8]に記載のタイヤである。
発明[10]は、前記収容体が加硫ゴムからなることを特徴とする発明[8]又は[9]に記載のタイヤである。
発明[11]は、前記機能部品はセンサ素子として圧電素子を用いたセンサ機能を有することを特徴とする発明[1]~[10]のいずれかに記載のタイヤである。
【符号の説明】
【0048】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
11 周方向溝
11A 周方向主溝
11B 周方向細溝
13 陸部
14 ラグ溝
15 トレッドゴム層
15A キャップトレッドゴム層
15B アンダートレッドゴム層
20 機能部品
21 接触面
22 センサ素子
30 収容体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7