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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152182
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】筐体装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/3877 20150101AFI20241018BHJP
   E05B 19/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H04B1/3877
E05B19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066221
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011AA01
5K011DA29
5K011JA01
5K011KA12
5K011LA08
(57)【要約】
【課題】無線通信装置が筐体装置内に収容された状態での電池切れの発生を抑制する。
【解決手段】筐体131は、被制御装置を遠隔制御する電子キー12が格納される空間を区画する。電源135は、電子キー12の電池よりも高い電力供給持続性を有する。ケーブル136は、電源135と電気的に接続されている。電力中継装置134は、ケーブル136と電気的に接続されており、かつ筐体131内に配置された電子キー12の電池収容部に前記電池に代えて装着されることにより、電源135から供給された電力を電子キー12へ中継する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体と、
前記無線通信装置の電池よりも高い電力供給持続性を有する電源と、
前記電源と電気的に接続された第一導線と第二導線を有しているケーブルと、
前記ケーブルと電気的に接続されており、かつ前記筐体内に配置された前記無線通信装置の電池収容部に前記電池に代えて装着されることにより、前記電源から供給された電力を前記無線通信装置へ中継する電力中継装置と、
を備えており、
前記電力中継装置は、
前記第一導線を通じて前記電源の第一電位と電気的に接続される第一電極と、
前記第二導線を通じて前記電源の第二電位と電気的に接続される第二電極と、
前記第一電極と前記第一導線の間に直列接続された第一インダクタと、
前記第二電極と前記第二導線の間に直列接続された第二インダクタと、
を備えている、
筐体装置。
【請求項2】
前記第一電極と前記第一インダクタの間に位置する第一部分と、前記第二電極と前記第二インダクタの間に位置する第二部分との間に並列接続されたコンデンサを備えている、
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項3】
前記第一インダクタと前記第一導線の間に位置する第三部分と、前記第二インダクタと前記第二導線の間に位置する第四部分との間に並列接続されたコンデンサを備えている、
請求項2に記載の筐体装置。
【請求項4】
前記第一電極と前記第一インダクタの間に位置する第一部分に設けられた第一オープンスタブ回路と、
前記第二電極と前記第二インダクタの間に位置する第二部分に設けられた第二オープンスタブ回路と、
を備えている、
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項5】
前記第一インダクタと前記第一導線の間に位置する第三部分に設けられた第三オープンスタブ回路と、
前記第二インダクタと前記第二導線の間に位置する第四部分に設けられた第四オープンスタブ回路と、
を備えている、
請求項4に記載の筐体装置。
【請求項6】
被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体と、
前記無線通信装置の電池よりも高い電力供給持続性を有する電源と、
前記電源と電気的に接続された第一導線と第二導線を有しているケーブルと、
前記ケーブルと電気的に接続されており、かつ前記筐体内に配置された前記無線通信装置の電池収容部に前記電池に代えて装着されることにより、前記電源から供給された電力を前記無線通信装置へ中継する電力中継装置と、
を備えており、
前記電力中継装置は、
前記第一導線を通じて前記電源の第一電位と電気的に接続される第一電極と、
前記第二導線を通じて前記電源の第二電位と電気的に接続される第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極の間に並列接続されたコンデンサと、
を備えている、
筐体装置。
【請求項7】
前記ケーブルは、フラットフレキシブルケーブルである、
請求項1または6に記載の筐体装置。
【請求項8】
前記被制御装置は、前記筐体装置が配置される空間を開閉する開閉体の施解錠装置である、
請求項1または6に記載の筐体装置。
【請求項9】
前記開閉体は、移動体に搭載されている、
請求項8に記載の筐体装置。
【請求項10】
前記電源は、前記移動体に搭載された電源と電気的に接続可能である、
請求項9に記載の筐体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両のドアにより開閉される車室内に配置される筐体装置を開示している。筐体装置は、格納部、通信部、およびアクチュエータを備えている。格納部は、無線通信装置の一例としての電子キーを格納する。電子キーは、特定の操作がなされることにより、無線通信を通じて当該車両に搭載された施解錠装置にドアの施錠を解除させる装置である。ユーザによる携帯が可能であるモバイル装置から通信部が解錠指示を受信すると、アクチュエータは、電子キーに対して上記特定の操作を行なう。これにより、車室内に電子キーを残した状態で、例えば車室外からモバイル装置を通じて施解錠装置の動作を遠隔制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3418985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信装置が筐体装置内に収容された状態での電池切れの発生を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示により提供される第一の態様例は、筐体装置であって、
被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体と、
前記無線通信装置の電池よりも高い電力供給持続性を有する電源と、
前記電源と電気的に接続された第一導線と第二導線を有しているケーブルと、
前記ケーブルと電気的に接続されており、かつ前記筐体内に配置された前記無線通信装置の電池収容部に前記電池に代えて装着されることにより、前記電源から供給された電力を前記無線通信装置へ中継する電力中継装置と、
を備えており、
前記電力中継装置は、
前記第一導線を通じて前記電源の第一電位と電気的に接続される第一電極と、
前記第二導線を通じて前記電源の第二電位と電気的に接続される第二電極と、
前記第一電極と前記第一導線の間に直列接続された第一インダクタと、
前記第二電極と前記第二導線の間に直列接続された第二インダクタと、
を備えている。
【0006】
本開示により提供される第二の態様例は、筐体装置であって、
被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体と、
前記無線通信装置の電池よりも高い電力供給持続性を有する電源と、
前記電源と電気的に接続された第一導線と第二導線を有しているケーブルと、
前記ケーブルと電気的に接続されており、かつ前記筐体内に配置された前記無線通信装置の電池収容部に前記電池に代えて装着されることにより、前記電源から供給された電力を前記無線通信装置へ中継する電力中継装置と、
を備えており、
前記電力中継装置は、
前記第一導線を通じて前記電源の第一電位と電気的に接続される第一電極と、
前記第二導線を通じて前記電源の第二電位と電気的に接続される第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極の間に並列接続されたコンデンサと、
を備えている。
【0007】
先行技術文献に記載の構成によれば、無線通信装置を携帯せずとも被制御装置を遠隔制御できる利便性を提供できる一方で、筐体内に無線通信装置が収容されたまま被制御装置の遠隔制御が繰り返されることにより電池の電力が消費され、適切な電池交換の機会を失する事態が生じうる。上記の各態様例に係る筐体装置によれば、電池よりも電力供給持続性が高い電源から無線通信装置へ電力を中継する電力中継装置が電池の代わりに電池収容室に装着されるので、無線通信装置が筐体内に収容された状態での電池切れの発生を抑制できる。
【0008】
他方、電池に代えて第一導線と第二導線を備えるケーブルにより電力中継装置と電源とが接続されることにより、無線通信装置による遠隔制御に使用される電波が伝播しうる導体の見かけ上の面積が増大する。
【0009】
しかしながら、第一の態様例に係る構成によれば、第一電極と第二電極にそれぞれ直列接続された第一インダクタと第二インダクタが、第一導線と第二導線への当該電波の通過を抑制する。他方、第二の態様例に係る構成によれば、第一電極と第二電極の間に並列接続されたコンデンサにより当該電波を第一電極と第二電極の側へ積極体に還流させることができる。これにより、電力中継装置の使用が電池の装着を想定して設計されている無線通信装置の送信器の特性に及ぼしうる影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る遠隔制御システムの構成を例示している。
図2図1の筐体装置の構成の一例を示している。
図3図2の筐体装置の動作の一例を示している。
図4図2の電力中継装置の構成の一例を示している。
図5図2の電力中継装置の構成の別例を示している。
図6図2の電力中継装置の構成の別例を示している。
図7図2の電力中継装置の構成の別例を示している。
図8図2の電力中継装置の構成の別例を示している。
図9図2の電力中継装置の構成の別例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る遠隔制御システム10の構成を例示している。各図においては、例示される各要素を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜に変更している。
【0012】
遠隔制御システム10は、モバイル装置11を含んでいる。モバイル装置11は、ユーザ20により携帯可能な装置である。モバイル装置11の例としては、スマートフォンなどの汎用携帯情報端末が挙げられる。
【0013】
遠隔制御システム10は、電子キー12を含んでいる。電子キー12もまた、ユーザ20による携帯が可能な装置である。電子キー12は、第一無線通信に基づいて車両30に搭載された制御装置31に施解錠装置32の動作制御を行なわせることが可能な無線通信装置である。施解錠装置32は、車両30の車室33を開閉するドア34を施解錠する装置である。
【0014】
車両30は、移動体の一例である。施解錠装置32は、被制御装置の一例である。ドア34は、開閉体の一例である。車室33は、開閉体により開閉される空間の一例である。
【0015】
第一無線通信は、第一周波数帯を用いる第一信号S1と第二周波数帯を用いる第二信号S2の送受信を含んでいる。第一周波数帯と第二周波数帯は相違している。第一周波数帯の例としては、長波(LF)帯が挙げられる。第二周波数帯の例としては、極超短波(UHF)帯が挙げられる。換言すると、電子キー12は、施解錠装置32の制御に必要な情報を出力する。
【0016】
具体的には、車両30における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第一信号S1が送信される。第一信号S1の送信は、連続的になされてもよいし、断続的になされてもよい。電子キー12は、第一信号S1の受信と第二信号S2の送信が可能なアンテナを含む通信装置を備えている。電子キー12は、第一信号S1を受信すると第二信号S2を送信するように構成されている。第二信号S2は、電子キー12の認証に必要な認証情報を含むように構成されている。認証情報は、電子キー12とユーザ20の少なくとも一方を特定可能な情報である。
【0017】
制御装置31は、車両30における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第二信号S2を受信すると、認証処理を実行するように構成されている。具体的には、制御装置31は、第二信号S2に含まれる認証情報を、不図示の記憶装置に予め格納されている電子キー12の認証情報と照合するように構成されている。両情報の一致度が閾値を上回る場合、制御装置31は、電子キー12の認証が成立したと判断する。
【0018】
制御装置31は、電子キー12の認証が成立したと判断されると、施解錠装置32にドア34の施解錠を許可する制御信号CSを出力するように構成されている。この状態でユーザ20が例えばドアハンドルに設けられたタッチセンサに触れると、施解錠装置32はドア34を施解錠する。
【0019】
すなわち、電子キー12を携帯したユーザ20が第一信号S1を受信可能な領域に進入すると、第一無線通信を通じて電子キー12の認証がなされる。認証が成立すると、ユーザ20は、キーをキーシリンダに挿入して回すといった動作を行なうことなく、ドア34を施解錠できる。
【0020】
遠隔制御システム10は、筐体装置13を含んでいる。筐体装置13は、車両30の車室33内における適宜の場所に設置されるように構成されている。当該場所には、車室33内に設置されたグローブボックスやアクセサリボックスなどの収容空間が含まれうる。筐体装置13は、電子キー12を格納できるように構成されている。すなわち、電子キー12は、車室33内に配置されうる。
【0021】
図2に例示されるように、筐体装置13は、筐体131を備えている。筐体131は、少なくとも第二信号S2が透過可能な材料により形成されている。筐体131は、電子キー12が格納される空間を区画している。
【0022】
筐体装置13は、アクチュエータ132を備えている。アクチュエータ132は、筐体131内に格納された電子キー12の可動部121を操作可能に構成されている。電子キー12は、可動部121に対して所定の操作がなされると、第一信号S1の受信状態に依らず第二信号S2を送信するように構成されている。可動部121は、ボタンやレバーなどにより実現されうる。アクチュエータ132は、ソレノイド、カム機構、ラックピニオン機構などにより実現されうる。電子キー12に第二信号S2を送信させるための可動部121の操作の例としては、少なくとも一回の押下操作などが挙げられる。
【0023】
筐体装置13は、通信部133を備えている。通信部133は、モバイル装置11と第二無線通信を行なうためのアンテナを備えている。本例においては、第二無線通信は、短距離無線通信である。
【0024】
本明細書において用いられる「短距離無線通信」という語は、標準規格であるIEEE802.15またはIEEE802.11に準拠して行なわれる無線通信を意味する。そのような無線通信を実行可能な技術としては、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などが挙げられる。本明細書における「短距離無線通信」は、読取装置から送信される電波から微小な電力を得てモバイル装置が情報の送信を行なう非接触通信技術を用いる「近接無線通信」とは区別される。近接無線通信を実行可能な技術としては、RF-IDやNFCなどが挙げられる。
【0025】
電子キー12は、第一信号S1に応答して第二信号S2を送信する送信器に電力を供給するための電池を収容可能な電池収容部を備えている。他方、筐体装置13は、電力中継装置134を備えている。電力中継装置134は、電池に代えて電子キー12の電池収容部に装着可能に構成されている。
【0026】
筐体装置13は、電源135を備えている。電源135は、電池であってもよいし、車両30に搭載されている外部電源に接続されて当該外部電源から供給される電力を中継するように構成されてもよい。いずれの場合であっても、電源135は、電子キー12に使用される電池よりも高い電力供給持続性を有する。
【0027】
筐体装置13は、ケーブル136を備えている。ケーブル136は、電力中継装置134と電源135とを電気的に接続している。これにより、電力中継装置134は、電源135から供給される電力を電子キー12の送信器へ中継する。
【0028】
ケーブル136は、フラットフレキシブルケーブルのように平坦な形状と可撓性を有することが好ましい。このような構成によれば、電力中継装置134が電池収容部に収容されうる形状と寸法を有している場合において、電池が装着された電池装着部を閉塞するためのカバーを利用して電力中継装置134を電池収容部に保持しつつ、ケーブル136を電池収容部から引き出すことができる。これにより、電力中継装置134の位置決め安定性を高めることができる。
【0029】
筐体装置13に電子キー12が格納された状態で車両30のドア34の解錠を希望するユーザ20は、モバイル装置11に対して所定の操作を入力する。操作入力は、スイッチまたはスイッチ画像の操作、音声指示入力、ジェスチャ入力などによりなされうる。図1に例示されるように、モバイル装置11は、当該所定の操作に基づいて解錠信号ULを送信するように構成されている。
【0030】
図2に例示されるように、筐体装置13は、制御部137を備えている。制御部137は、アクチュエータ132と電源135の動作を制御可能に構成されている。制御部137は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの集積回路素子により実現されうる。
【0031】
具体的には、制御部137は、通信部133により解錠信号ULが受信されると、電源135に電力中継装置134への給電を行なわせるように構成されている。
【0032】
加えて、制御部137は、通信部133により解錠信号ULが受信されると、電子キー12に第二信号S2を送信させるための可動部121の操作をアクチュエータ132に行なわせるように構成されている。
【0033】
したがって、通信部133により解錠信号ULが受信されると、電力中継装置134を通じて電子キー12が起動され、アクチュエータ132による可動部121の操作を通じて、図3に例示されるように電子キー12から第二信号S2が送信される。
【0034】
電子キー12から送信された第二信号S2は、車両30に搭載された制御装置31により受信される。前述の通り、制御装置31は、第二信号S2を受信すると、電子キー12の認証処理を行なう。認証処理が成立すると、制御装置31は、施解錠装置32にドア34を解錠させる制御信号CSを出力する。
【0035】
よって、車室33内に設置された筐体装置13に電子キー12が格納された状態でユーザ20がモバイル装置11から解錠信号ULを送信すると、ドア34を解錠できる。換言すると、ユーザ20は、電子キー12を携帯せずとも、車室33の外からモバイル装置11に対する所定の操作を通じてドア34を解錠できる。
【0036】
図4は、電力中継装置134の構成の一例を示している。電力中継装置134は、第一電極134aと第二電極134bを備えている。第一電極134aと第二電極134bは、不図示のスペーサにより電気的に絶縁されている。他方、ケーブル136は、第一導線136aと第二導線136bを備えている。
【0037】
第一電極134aは、第一導線136aを通じて電源135の第一電位と電気的に接続されている。第一電位は、例えば、電子キー12の電池における正極の電位に対応している。
【0038】
第二電極134bは、第二導線136bを通じて電源135の第二電位と電気的に接続されている。第二電位は、例えば、電子キー12の電池における負極の電位に対応している。
【0039】
電力中継装置134は、第一インダクタ134cと第二インダクタ134dを備えている。第一インダクタ134cは、第一電極134aと第一導線136aの間に直列接続されている。第二インダクタ134dは、第二電極134bと第二導線136bの間に直列接続されている。
【0040】
第一インダクタ134cと第二インダクタ134dの各々のインダクタンスは、比較的高い周波数帯を用いる第二信号S2に対して十分に大きなインピーダンスを有するように定められている。インダクタンスの具体的な値は、例えば、100nHから100mHの範囲である。
【0041】
電子キー12を携帯せずとも車室33の外からドア34を施解錠できる利便性を提供できる一方で、筐体131内に電子キー12が収容されたまま施解錠装置32の遠隔制御が繰り返されることにより電池の電力が消費され、適切な電池交換の機会を失する事態が生じうる。本実施形態例に係る筐体装置13によれば、電池よりも電力供給持続性が高い電源135から電子キー12へ電力を中継する電力中継装置134が電池の代わりに電池収容室に装着されるので、電子キー12が筐体131内に収容された状態での電池切れの発生を抑制できる。
【0042】
特に本実施形態例のように電子キー12により遠隔制御される被制御装置が施解錠装置32である場合、電子キー12が筐体131内に収容された状態で電池切れに至ることによってユーザ20が車室33内に入れなくなる事態の発生を抑制できる。
【0043】
他方、電池に代えて第一導線136aと第二導線136bを備えるケーブル136により電力中継装置134と電源135とが接続されることにより、電子キー12による遠隔制御に使用される第二信号S2に係る電波が伝播しうる導体の見かけ上の面積が増大する。しかしながら、第一電極134aと第二電極134bにそれぞれ直列接続された第一インダクタ134cと第二インダクタ134dが、第一導線136aと第二導線136bへの当該電波の通過を抑制するので、電力中継装置134の使用が電池の装着を想定して設計されている電子キー12の送信器の特性に及ぼしうる影響を抑制できる。
【0044】
図5は、電力中継装置134の構成の別例を示している。本例に係る電力中継装置134は、第一コンデンサ134eをさらに備えている。
【0045】
第一コンデンサ134eは、第一電極134aと第一インダクタ134cの間に位置する第一部分P1と、第二電極134bと第二インダクタ134dの間に位置する第二部分P2との間に並列接続されている。第一コンデンサ134eの具体的なキャパシタンスの値は、例えば10pFから1000pFの範囲である。
【0046】
第一コンデンサ134eの並列接続により形成される経路の第二信号S2に対するインピーダンスは、第一インダクタ134cと第二インダクタ134dが設けられている経路の第二信号S2に対するインピーダンスよりも低い。これにより、第二信号S2に係る電波を積極的に第一電極134aと第二電極134bの側へ還流させることができるので、当該電波のケーブル136への伝播がさらに抑制されうる。よって、電力中継装置134の使用が電池の装着を想定して設計されている電子キー12の送信器の特性に及ぼしうる影響をさらに抑制できる。
【0047】
図6は、電力中継装置134の構成の別例を示している。本例に係る電力中継装置134は、図4に例示される第一インダクタ134cと第二インダクタ134dに代えて、図5に例示される第一コンデンサ134eを備えている。すなわち、第一コンデンサ134eは、第一電極134aと第二電極134bの間に並列接続されている。
【0048】
このような構成によっても、第二信号S2に係る電波を積極的に第一電極134aと第二電極134bの側へ還流させることができるので、当該電波のケーブル136への伝播が抑制される。よって、電力中継装置134の使用が電池の装着を想定して設計されている電子キー12の送信器の特性に及ぼしうる影響を抑制できる。
【0049】
図7は、電力中継装置134の構成の別例を示している。本例に係る電力中継装置134は、図5に例示された第一インダクタ134c、第二インダクタ134d、および第一コンデンサ134eに加えて、第二コンデンサ134fを備えている。
【0050】
第二コンデンサ134fは、第一インダクタ134cと第一導線136aの間に位置する第三部分P3と、第二インダクタ134dと第二導線136bの間に位置する第四部分P4との間に並列接続されている。第二コンデンサ134fの具体的なキャパシタンスの値は、例えば10pFから1000pFの範囲である。
【0051】
このような構成によれば、第一インダクタ134cと第二インダクタ134dでは通過を阻止できなかった第二信号S2に係る電波を、積極的に第一電極134aと第二電極134bの側へ還流させることができるので、当該電波のケーブル136への伝播がさらに抑制されうる。よって、電力中継装置134の使用が電池の装着を想定して設計されている電子キー12の送信器の特性に及ぼしうる影響をさらに抑制できる。
【0052】
なお、図7に例示された構成において、第一コンデンサ134eは省略されうる。すなわち、図5に例示された第一コンデンサ134eに代えて第二コンデンサ134fのみを備える構成もまた採用されうる。
【0053】
図8は、電力中継装置134の構成の別例を示している。本例に係る電力中継装置134は、図4に例示された第一インダクタ134cと第二インダクタ134dに加えて、第一オープンスタブ回路134gと第二オープンスタブ回路134hを備えている。
【0054】
第一オープンスタブ回路134gの一端は、第一電極134aと第一インダクタ134cの間に位置する第一部分P1に接続されている。第一オープンスタブ回路134gの他端は、開放端とされている。第一オープンスタブ回路134gは、インダクタとコンデンサが直列接続されたLC回路を形成している。当該インダクタのインダクタンス値と当該コンデンサのキャパシタンス値は、当該LC回路の共振周波数が第二信号S2の周波数と実質的に一致するように定められている。
【0055】
第二オープンスタブ回路134hの一端は、第二電極134bと第二インダクタ134dの間に位置する第二部分P2に接続されている。第二オープンスタブ回路134hの他端は、開放端とされている。第二オープンスタブ回路134hは、インダクタとコンデンサが直列接続されたLC回路を形成している。当該インダクタのインダクタンス値と当該コンデンサのキャパシタンス値は、当該LC回路の共振周波数が第二信号S2の周波数と実質的に一致するように定められている。
【0056】
第一オープンスタブ回路134gは、第一電極134aから第一インダクタ134cへ伝播する第二信号S2に係る電波に対するトラップ回路として機能する。同様に、第二オープンスタブ回路134hは、第二電極134bから第二インダクタ134dへ伝播する第二信号S2に係る電波に対するトラップ回路として機能する。したがって、当該電波のケーブル136への伝播がさらに抑制されうる。よって、電力中継装置134の使用が電池の装着を想定して設計されている電子キー12の送信器の特性に及ぼしうる影響をさらに抑制できる。
【0057】
図9は、電力中継装置134の構成の別例を示している。本例に係る電力中継装置134は、図8に例示された第一オープンスタブ回路134gと第二オープンスタブ回路134hに加えて、第三オープンスタブ回路134iと第四オープンスタブ回路134kを備えている。
【0058】
第三オープンスタブ回路134iの一端は、第一インダクタ134cと第一導線136aの間に位置する第三部分P3に接続されている。第三オープンスタブ回路134iの他端は、開放端とされている。第三オープンスタブ回路134iは、インダクタとコンデンサが直列接続されたLC回路を形成している。当該インダクタのインダクタンス値と当該コンデンサのキャパシタンス値は、当該LC回路の共振周波数が第二信号S2の周波数と実質的に一致するように定められている。
【0059】
第四オープンスタブ回路134kの一端は、第二インダクタ134dと第二導線136bの間に位置する第四部分P4に接続されている。第四オープンスタブ回路134kの他端は、開放端とされている。第四オープンスタブ回路134kは、インダクタとコンデンサが直列接続されたLC回路を形成している。当該インダクタのインダクタンス値と当該コンデンサのキャパシタンス値は、当該LC回路の共振周波数が第二信号S2の周波数と実質的に一致するように定められている。
【0060】
第三オープンスタブ回路134iは、第一オープンスタブ回路134gと第一インダクタ134cでは通過を阻止できなかった第二信号S2に係る電波に対するトラップ回路として機能する。同様に、第四オープンスタブ回路134kは、第二オープンスタブ回路134hと第二インダクタ134dでは通過を阻止できなかった第二信号S2に係る電波に対するトラップ回路として機能する。したがって、当該電波のケーブル136への伝播がさらに抑制されうる。よって、電力中継装置134の使用が電池の装着を想定して設計されている電子キー12の送信器の特性に及ぼしうる影響をさらに抑制できる。
【0061】
これまで説明した各構成は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。各構成例は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜の変更や別構成例との組み合わせがなされうる。
【0062】
上記の実施形態例においては、電力中継装置134の第一電極134aと第二電極134bが、電源135における二つの相違する電位に接続されている。しかしながら、電力中継装置134が三つ以上の電極を備え、電源135における三つ以上の相違する電位に接続される構成も採用されうる。
【0063】
一例として電力中継装置134が三つの電極を備える場合、三つのインダクタの各々が対応する一つの電極と直列接続されることにより、無線通信に使用される電波のケーブル136への伝播を抑制する。三つのコンデンサを用いても当該電波の伝播を抑制できる。この場合、第一のコンデンサは、第一の電極と第二の電極の間に並列接続される。第二のコンデンサは、第二の電極と第三の電極の間に並列接続される。第三のコンデンサは、第一の電極と第三の電極の間に並列接続される。
【0064】
すなわち、N個の電極を備える電力中継装置134について無線通信に使用される電波のケーブル136への伝播を抑制するために、N個のインダクタの各々が対応する一つの電極と直列接続されうる。同様に、N個の電極から重複なく選ばれるすべての電極ペアの各々に対してコンデンサが並列接続されうる。
【0065】
上記の実施形態例においては、制御装置31と電子キー12との間で行なわれる第一無線通信は、異なる周波数帯を使用している。しかしながら、第一無線通信は、同一の周波数帯を用いる適宜の無線通信規格に基づいて行なわれうる。
【0066】
上記の実施形態例においては、モバイル装置11と筐体装置13の通信部133との間で行なわれる第二無線通信は、短距離無線通信である。この場合、車室33内に設置される筐体装置13の配置自由度を高めることができる。しかしながら、第二無線通信は、近接無線通信であってもよい。
【0067】
施解錠装置32に加えてあるいは代えて、電子キー12から送信される第二信号S2は、車両30に搭載された他の被制御装置の動作制御を制御装置31に行わせるためにも使用されうる。図1に例示されるように、他の被制御装置の例としては、始動装置35が挙げられる。始動装置35は、車両30の駆動源を始動する装置である。駆動源は、内燃機関であってもよいし、電気モータであってもよい。
【0068】
具体的には、車室33内の運転席に着座したユーザ20がブレーキペダルを踏むと、車両30の適宜の箇所に設置された通信装置から第一信号S1が送信されるように構成されうる。電子キー12がこの第一信号S1を受信すると、応答として第二信号S2を送信する。この第二信号S2が制御装置31により受信されると、前述の通り電子キー12の認証処理が行なわれる。電子キー12の認証が成立した状態で、ユーザ20が例えばイグニッションスイッチに触れると、制御装置31は、車両30に搭載された始動装置35に駆動源を始動させる制御信号CSを出力するように構成されうる。
【0069】
すなわち、電子キー12により遠隔制御される被制御装置が始動装置35である場合、筐体装置13のアクチュエータ132の作動は必須でない。
【0070】
本開示に係る遠隔制御システム10は、他の移動体にも適用されうる。その他の移動体の例としては、鉄道、航空機、船舶などが挙げられる。当該移動体は、運転者を必要としなくてもよい。電子キー12により遠隔制御される被制御装置の種別は、移動体の仕様に応じて適宜に定められる。
【0071】
上記の実施形態においては、施解錠装置32により施解錠される開閉体として車室33を開閉するドア34が例示されている。ドア34の形態は、ヒンジドアであってもよいし、スライドドアであってもよい。車室33を開閉する開閉体は、サンルーフを含みうる。車両30に搭載される開閉体は、トランクやボンネットを含みうる。この場合、トランクやボンネットにより開閉される空間に筐体装置13が配置されてもよい。
【0072】
施解錠装置により施解錠される開閉体は、必ずしも移動体に搭載されることを要しない。住宅や施設における扉や窓もまた開閉体の一例になりうる。電子キー12により遠隔制御される被制御装置の種別は、当該住宅や施設の仕様に応じて適宜に定められる。
【0073】
以下に列挙される構成もまた、本開示の一部を構成する。

項目1:
被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体と、
前記無線通信装置の電池よりも高い電力供給持続性を有する電源と、
前記電源と電気的に接続された第一導線と第二導線を有しているケーブルと、
前記ケーブルと電気的に接続されており、かつ前記筐体内に配置された前記無線通信装置の電池収容部に前記電池に代えて装着されることにより、前記電源から供給された電力を前記無線通信装置へ中継する電力中継装置と、
を備えており、
前記電力中継装置は、
前記第一導線を通じて前記電源の第一電位と電気的に接続される第一電極と、
前記第二導線を通じて前記電源の第二電位と電気的に接続される第二電極と、
前記第一電極と前記第一導線の間に直列接続された第一インダクタと、
前記第二電極と前記第二導線の間に直列接続された第二インダクタと、
を備えている、
筐体装置。

項目2:
前記第一電極と前記第一インダクタの間に位置する第一部分と、前記第二電極と前記第二インダクタの間に位置する第二部分との間に並列接続されたコンデンサを備えている、
項目1に記載の筐体装置。

項目3:
前記第一インダクタと前記第一導線の間に位置する第三部分と、前記第二インダクタと前記第二導線の間に位置する第四部分との間に並列接続されたコンデンサを備えている、
項目2に記載の筐体装置。

項目4:
前記第一電極と前記第一インダクタの間に位置する第一部分に設けられた第一オープンスタブ回路と、
前記第二電極と前記第二インダクタの間に位置する第二部分に設けられた第二オープンスタブ回路と、
を備えている、
項目1に記載の筐体装置。

項目5:
前記第一インダクタと前記第一導線の間に位置する第三部分に設けられた第三オープンスタブ回路と、
前記第二インダクタと前記第二導線の間に位置する第四部分に設けられた第四オープンスタブ回路と、
を備えている、
項目4に記載の筐体装置。

項目6:
被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体と、
前記無線通信装置の電池よりも高い電力供給持続性を有する電源と、
前記電源と電気的に接続された第一導線と第二導線を有しているケーブルと、
前記ケーブルと電気的に接続されており、かつ前記筐体内に配置された前記無線通信装置の電池収容部に前記電池に代えて装着されることにより、前記電源から供給された電力を前記無線通信装置へ中継する電力中継装置と、
を備えており、
前記電力中継装置は、
前記第一導線を通じて前記電源の第一電位と電気的に接続される第一電極と、
前記第二導線を通じて前記電源の第二電位と電気的に接続される第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極の間に並列接続されたコンデンサと、
を備えている、
筐体装置。

項目7:
前記ケーブルは、フラットフレキシブルケーブルである、
項目1から6のいずれか一項に記載の筐体装置。

項目8:
前記被制御装置は、前記筐体装置が配置される空間を開閉する開閉体の施解錠装置である、
項目1から7のいずれか一項に記載の筐体装置。

項目9:
前記開閉体は、移動体に搭載されている、
項目8に記載の筐体装置。

項目10:
前記電源は、前記移動体に搭載された電源と電気的に接続可能である、
項目9に記載の筐体装置。
【符号の説明】
【0074】
12:電子キー、13:筐体装置、131:筐体、134:電力中継装置、134a:第一電極、134b:第二電極、134c:第一インダクタ、134d:第二インダクタ、134e:第一コンデンサ、134f:第二コンデンサ、134g:第一オープンスタブ回路、134h:第二オープンスタブ回路、134i:第三オープンスタブ回路、134k:第四オープンスタブ回路、135:電源、136:ケーブル、136a:第一導線、136b:第二導線、30:車両、32:施解錠装置、33:車室、34:ドア、P1:第一部分、P2:第二部分、P3:第三部分、P4:第四部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9