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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152185
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】配管固定装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/08 20060101AFI20241018BHJP
   F16L 3/227 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F16L3/08 C
F16L3/227
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066224
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】野村 洋文
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】小内 真
(72)【発明者】
【氏名】堤 淳祥
(72)【発明者】
【氏名】柳寺 良昭
(72)【発明者】
【氏名】森田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴司
(72)【発明者】
【氏名】荒井 安行
(72)【発明者】
【氏名】前田 義也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 寛盛
【テーマコード(参考)】
3H023
【Fターム(参考)】
3H023AA02
3H023AB04
3H023AC08
3H023AC21
3H023AC52
3H023AD27
3H023AD36
3H023AE02
(57)【要約】
【課題】地震発生時に配管が長手方向に移動することを抑制する。
【解決手段】配管2を固定する配管固定装置1は、配管2の長手方向に直交し、配管2を挟んで互いに対向する一対の支持部材5a,5bと、一対の支持部材5a,5bのそれぞれに取り付けられ、先端20aを配管2の外周面2sに埋入させるボルト部材20と、を備える構成である。かかる構成によれば、一対の支持部材5a,5bに取り付けられるボルト部材20の先端20aが配管2の外周面2sに埋入して係合するため、配管2の滑りを抑制でき、配管2が長手方向へ移動してしまうことを良好に抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を固定する配管固定装置であって、
前記配管の長手方向に直交し、前記配管を挟んで互いに対向する一対の支持部材と、
前記一対の支持部材のそれぞれに取り付けられ、先端を前記配管の外周面に埋入させるボルト部材と、
を備えることを特徴とする配管固定装置。
【請求項2】
前記配管の外周面を覆う断熱部材、
を更に備え、
前記一対の支持部材は、前記断熱部材の外周面に近接又は接触する状態に設置され、
前記ボルト部材は、前記断熱部材を貫通し、前記先端が前記配管の外周面に埋入した状態に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の配管固定装置。
【請求項3】
前記断熱部材には、前記ボルト部材を挿通する貫通孔が予め形成されることを特徴とする請求項2に記載の配管固定装置。
【請求項4】
前記一対の支持部材は、上下方向に所定間隔を隔てて水平方向に設置され、
前記一対の支持部材のうちの一方が前記配管を支持する基台として設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配管固定装置。
【請求項5】
前記一対の支持部材の間には、同径の複数の配管を固定可能であることを特徴とする請求項4に記載の配管固定装置。
【請求項6】
前記配管を支持する基台、
を更に備え、
前記一対の支持部材は、前記基台に支持される前記配管を挟んで前記基台から立設する状態に取り付けられ、上端部が連結部材によって互いに連結されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配管固定装置。
【請求項7】
前記基台は、複数の配管を支持し、
前記一対の支持部材は、前記基台に支持される前記複数の配管のそれぞれに対応して前記基台に取り付けられることを特徴とする請求項6に記載の配管固定装置。
【請求項8】
前記ボルト部材は、先端が円環状に突出していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配管固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物に設置される各種配管を固定する配管固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物には様々な配管が設置される。例えば冷温水を供給する配管には、鋼管などの金属管が使用されることが多い。また、冷温水の供給量に応じて、50A(外径60.5mm)、65A(外径76.3mm)、80A(外径89.1mm)、90A(101.6mm)、100A(外径114.3mm)といった外径寸法の配管が設置される。尚、100Aを超える外形寸法の配管が設置されることもある。
【0003】
この種の配管はU字バンドやU字ボルトを使用して架台やブラケットに固定され、床面や天井空間などに設置されている。ここで、配管内を冷温水が流れる場合、熱損失を防止する観点から配管の外周面には断熱部材(保温材)が巻付けられた状態で設置される。特に配管内を冷却水が流れる場合には、結露水が下方に滴り落ちることを防ぐために断熱部材が重要となる。
【0004】
従来、架台やブラケットなどの基台に配管を固定する箇所において断熱性を確保するため、例えば基台上に断熱性を有する底部ブロックを配置し、その底部ブロックに形成された半円状切欠部に配管を設置した後、底部ブロックの上部に、配管の上半部を覆い、且つ、底部ブロックに接合する頂部ブロックを配置し、U字ボルトなどを使用して底部ブロックと頂部ブロックの内側に保持された配管を基台に固定する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-177081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された固定方法では、地震などによって配管の長手方向に強い応力が発生した場合、U字ボルトなどで固定された配管が長手方向に移動してしまい、配管が破損するという問題がある。例えば、配管が長手方向に移動すると、配管が延設された方向に位置するエルボ部分(配管が屈曲した部分)に応力が集中し、エルボ部分が破損するという問題がある。また、配管が長手方向に移動すると、配管を保持しているブロックとの間に大きな衝撃(摩擦力)が作用するため、底部ブロック及び頂部ブロックが破損してしまい、基台が配管を適切に保持できない状態に陥ってしまうという問題もある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、配管が長手方向に移動することを抑制できるようにした配管固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、配管を固定する配管固定装置であって、前記配管の長手方向に直交し、前記配管を挟んで互いに対向する一対の支持部材と、前記一対の支持部材のそれぞれに取り付けられ、先端を前記配管の外周面に埋入させるボルト部材と、を備えることを特徴とする構成である。
【0009】
かかる第1の構成によれば、配管固定装置は、配管の外周面にボルト部材の先端を埋入させた状態で配管を一対の支持部材に固定できるため、配管が長手方向に移動することを抑制することができるようになる。
【0010】
第2に、本発明は、第1の構成を有する配管固定装置において、前記配管の外周面を覆う断熱部材、を更に備え、前記一対の支持部材は、前記断熱部材の外周面に近接又は接触する状態に設置され、前記ボルト部材は、前記断熱部材を貫通し、前記先端が前記配管の外周面に埋入した状態に取り付けられることを特徴とする構成である。
【0011】
かかる第2の構成によれば、配管を断熱した状態で支持部材に固定することができる。
【0012】
第3に、本発明は、第2の構成を有する配管固定装置において、前記断熱部材には、前記ボルト部材を挿通する貫通孔が予め形成されることを特徴とする構成である。
【0013】
かかる第3の構成によれば、支持部材にボルト部材を取り付けるとき、ボルト部材を貫通孔に挿通させることができるため、断熱部材を損傷させることなく、ボルト部材を取り付けることができる。
【0014】
第4に、本発明は、第1乃至第3のいずれかの構成を有する配管固定装置において、前記一対の支持部材は、上下方向に所定間隔を隔てて水平方向に設置され、前記一対の支持部材のうちの一方が前記配管を支持する基台として設けられることを特徴とする構成である。
【0015】
第5に、本発明は、第4の構成を有する配管固定装置において、前記一対の支持部材の間には、同径の複数の配管を固定可能であることを特徴とする構成である。
【0016】
第6に、本発明は、第1乃至第3のいずれかの構成を有する配管固定装置において、前記配管を支持する基台、を更に備え、前記一対の支持部材は、前記基台に支持される前記配管を挟んで前記基台から立設する状態に取り付けられ、上端部が連結部材によって互いに連結されることを特徴とする構成である。
【0017】
第7に、本発明は、第6の構成を有する配管固定装置において、前記基台は、複数の配管を支持し、前記一対の支持部材は、前記基台に支持される前記複数の配管のそれぞれに対応して前記基台に取り付けられることを特徴とする構成である。
【0018】
第8に、本発明は、第1乃至第3の構成を有する配管固定装置において、前記ボルト部材は、先端が円環状に突出していることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一対の支持部材に取り付けられるボルト部材の先端が配管の外周面に埋入した状態に係合するため、配管が長手方向に移動することを抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態における配管固定装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態における配管固定装置を示す正面図である。
図3】第1実施形態における配管固定装置の断面図である。
図4】第1実施形態における配管固定装置の断面図である。
図5】ボルト部材の先端の構成例を示す図である。
図6】ブッシュを用いて螺子孔を形成する例を示す図である。
図7】基台に管径の異なる複数の配管を設置した例を示す図である。
図8】第2実施形態における配管固定装置を示す斜視図である。
図9】第2実施形態における配管固定装置を示す正面図である。
図10】第2実施形態における配管固定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0022】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態における配管固定装置1を示す斜視図である。図2は、配管固定装置1を示す正面図である。図3は、配管固定装置1の断面図であり、図2におけるA-A断面を示している。図4は、配管固定装置1の断面図であり、図3におけるB-B断面を示している。これら各図に示すXYZ三次元座標系は、XY平面を水平面とし、Z軸方向を鉛直方向とする座標系であり、他の図に示す座標系と共通する座標系である。
【0023】
図1及び図2に示すように、配管固定装置1は、建造物には設置される配管2を所定位置に固定するための装置である。配管2は、例えば鋼管などの金属管で構成され、建造物内の空調設備などに対して冷温水を供給する配管である。配管固定装置1は、例えば床面や天井空間などに設置され、水平方向に設置される配管2を支持する。本実施形態では、配管固定装置1が天井空間に設置される場合を例示する。
【0024】
例えば図2に示すように、配管固定装置1は、天井スラブや梁などの天井構造に固定された状態で垂下する一対の支柱部3,3によって天井空間に支持される。一対の支柱部3,3は、例えば軽溝形鋼やリップ溝形鋼などの形鋼によって構成され、十分な強度で天井構造に固定されている。配管固定装置1は、一対の支柱部3,3の間において複数の配管2,2を水平方向に支持する。この配管固定装置1は、一対の支柱部3,3の間において上下方向に所定間隔を隔てて水平方向に配置される一対の支持部材5a,5bを備えている。
【0025】
支持部材5aは、両端が一対の支柱部3,3に固定されており、複数の配管2,2を支持する基台4として機能する。すなわち、支持部材5aは、配管2の長手方向に直交する状態で配管2の下方位置に設けられ、その上面側に設置される配管2の荷重を支持する。支持部材5aは、複数の配管2,2の荷重を支えるため、例えば軽溝形鋼やリップ溝形鋼などの形鋼によって構成され、平板部を上面側に向けた状態に設置される。例えば、支持部材5aは、その両端が溶接などによって一対の支柱部3,3に固定される。
【0026】
支持部材5bは、支持部材5aの上方側において一対の支柱部3,3間を横架し、その両端が一対の支柱部3,3に固定される。支持部材5bは、支持部材5aと同様に、例えば軽溝形鋼やリップ溝形鋼などの形鋼によって構成され、平板部を下面側に向けた状態に設置される。したがって、支持部材5a,5bは、水平方向に配置される配管2を挟んで互いに平板部を対向させた状態で上下方向に設置される。
【0027】
支持部材5bは、その両端に取付部6,6を有している。取付部6は、支持部材5bを支柱部3に固定するためのものである。例えば取付部6は、支柱部3の側面に接合するコ字状の形状を有しており、ボルト7とナット8によって支柱部3に固定される。
【0028】
支持部材5bは、ボルト7とナット8を外すことにより、一対の支柱部3,3から取り外し可能である。配管固定装置1に対して配管2を取り付ける際には、支持部材5bが一対の支柱部3,3から取り外しておくことが好ましい。
【0029】
配管2には冷温水が流れる。そのため、配管固定装置1は、支持部材5a,5bが配管2を支持する構造として断熱支持構造を有している。具体的には、配管固定装置1は、支持部材5aの上面に断熱部材10を載置し、その断熱部材10の内側に配管2を配置することで配管2の外周面を断熱部材10で包囲した構造で支持する。断熱部材10は、例えば硬質ウレタンフォームなどの断熱樹脂によって形成され、支持部材5aの上面に載置される底部ブロック10aと、その底部ブロック10aの上側に配置される頂部ブロック10bとの2つの部材によって構成される。底部ブロック10aは、支持部材5aのフラットな上面に載置可能な底面を有し、その上部には配管2の外径に対応して半円状の凹部が形成され、その凹部で配管2の下半部を覆うように構成される。頂部ブロック10bは、半円状のブロック体であり、底部ブロック10aの凹部両側に接合し、且つ、配管2の上半部を覆う凹部を有している。配管2は、底部ブロック10aの凹部に設置された後、頂部ブロック10bが底部ブロック10aに接合装着されることにより、断熱部材10の内側に設置される。
【0030】
配管固定装置1は、断熱部材10の内側に配管2が設置された状態で断熱部材10(具体的には頂部ブロック10b)の外周面にU字状の配管固定部材11を接合させ、その配管固定部材11の両端を支持部材5aに固定することにより、配管2を支持部材5a上に設置する。配管固定部材11は、U字バンドの両端にボルト部12が固着されており、そのボルト部12を支持部材5aの上面に形成された孔18に挿入し、支持部材5aの下面側に突出するボルト部12の先端にナット19を装着することにより支持部材5aに固定される。ナット19を締め付けることにより、U字バンドが断熱部材10を支持部材5aの上面に向けて押圧するため、断熱部材10の内側に保持される配管2が支持部材5aに対して一定の強度で固定される。
【0031】
上記のように配管2が支持部材5aに取り付けられると、配管2は、外周面が断熱部材10によって包囲された状態となる。そのため、支持部材5aに固定される箇所において、配管2は、断熱性が確保され、内側を流れる冷温水の熱損失を防止することができる。また、配管2の内部を冷水が流れる場合には、結露水が下方に滴り落ちることを防ぐことが可能である。
【0032】
上記のように支持部材5aに配管2が取り付けられると、支持部材5bの両端の取付部6,6が一対の支柱部3,3に固定され、支持部材5bが所定高さ位置に設置される。このとき、支持部材5aの下面は、断熱部材10の外周面の頂上部に近接又は接触する状態に設置される。
【0033】
配管固定装置1は、図3及び図4に示すように、上記のように一対の支持部材5a,5b間に配管2が設置された後、一対の支持部材5a,5bのそれぞれに取り付けられるボルト部材20を備えている。例えば、図3の拡大図A1及び図4の拡大図B1に示すように、支持部材5bは、断面円形である配管2の最上点に対応する位置に螺子孔21を有している。また、図3の拡大図A2及び図4の拡大図B2に示すように、支持部材5aは、配管2の最下点に対応する位置に螺子孔21を有している。ボルト部材20は、それらの螺子孔21にねじ込まれる。ボルト部材20は、その先端20aが突出している。そのため、ボルト部材20は、所定トルクで螺子孔21にねじ込まれると、その先端20aを配管2の外周面2sに埋入させる。これにより、ボルト部材20の先端20aは、配管2の外周面2sから壁部の内側に所定深さD(図3の拡大図A1,A2参照)進入した状態となり、配管2の外周面2sに係合する。
【0034】
図3及び図4に示すように、断熱部材10は、底部ブロック10aと頂部ブロック10bのそれぞれに上下に貫通する貫通孔13が形成されている。同様に、配管固定部材11は、頂上部に貫通孔14が形成されている。これら貫通孔13,14の直径は、ボルト部材20の外径よりも若干大きく形成される。そのため、ボルト部材20は、それらの貫通孔13,14に挿入された状態で螺子孔21にねじ込まれるとき、断熱部材10や配管固定部材11と干渉しないため、断熱部材10の内側や配管固定部材11を損傷させることがない。
【0035】
ボルト部材20が先端20aを配管2の外周面に埋入させた状態に取り付けられることにより、配管2は、その長手方向(X方向)に移動しない状態に固定される。そのため、配管固定装置1は、地震発生時に配管2が長手方向に移動することを抑制できる。これにより、配管2の延設方向に位置するエルボ部分の破損や、断熱部材10の破損を防ぐことができる。したがって、この配管固定装置1を用いれば、地震発生直後であっても配管2を利用して冷温水を供給することが可能である。
【0036】
尚、一対の支持部材5a,5bのそれぞれに取り付けられるボルト部材20,20の軸線は、配管2の中心を通る直線状に位置することが好ましい。すなわち、2つのボルト部材20,20は、配管2の外周面において互いに180度を成す角度位置に取り付けられることが好ましい。
【0037】
図5は、ボルト部材20の先端20aの構成例を示す図である。例えば、ボルト部材20の先端20aは、図5(a)に示すように中心の一点が突出した形状であっても良いし、また図5(b)に示すように円環状に突出した形状であっても良い。ただし、ボルト部材20が螺子孔21にねじ込まれることによって配管2の外周面に埋入する部分は、図5(b)に示す円環状の突出形状の方が図5(a)に示す一点突出形状よりも大きいと言える。ボルト部材20が配管2の長手方向への移動を規制する規制力は、配管2の外周面に埋入する部分の大きさに比例すると言える。そのため、ボルト部材20の先端20aの形状として、より好ましくは図5(b)に示す円環状の突出形状とすることである。
【0038】
また、支持部材5a,5bにボルト部材20を取り付ける際には、螺子孔21が断熱部材10及び配管固定部材11に形成されている貫通孔13,14の位置に合致することが必要である。しかし、建築現場などの設置現場で配管2が配管固定装置1に取り付けられたとき、貫通孔13,14の位置に対して、螺子孔21の位置が多少ずれてしまうことがある。そのため、支持部材5a,5bにボルト部材20を装着する螺子孔21を設置現場で形成するようにしても構わない。この場合、支持部材5a,5bに貫通孔を形成した後、その貫通孔の内壁に雌螺子を形成する必要がある。支持部材5a,5bに貫通孔を形成する作業は電動工具等を用いれば比較的簡単に行うことができる。しかし、貫通孔の内壁に雌螺子を形成する作業は、作業効率が悪く、設置現場での作業を大きく遅延させる可能性がある。
【0039】
そこで、上述した螺子孔21は、図6(a)に示すように予めボルト部材20に螺合する雌螺子24が形成されたブッシュ25を用いるようにしても良い。この場合、図6(a)に示すように、設置現場で支持部材5bに貫通孔23を形成し、その後、図6(b)に示すように、その貫通孔23にブッシュ25を埋め込み、ブッシュ25の雌螺子24を螺子孔21として利用するのである。これにより、設置現場で、貫通孔23に雌螺子を形成する必要がなく、効率的に作業を行うことが可能である。そのため、設置現場で配管2が配管固定装置1に取り付けられたとき、貫通孔13,14の位置に適合するように螺子孔21を形成することができる。
【0040】
以上のように本実施形態の配管固定装置1は、配管2の長手方向に直交し、配管2を挟んで互いに対向する一対の支持部材5a,5bと、一対の支持部材5a,5bのそれぞれに取り付けられ、先端20aを配管2の外周面に埋入させるボルト部材20とを備えている。このような構成によれば、一対の支持部材5a、5bに取り付けられるボルト部材20がその先端20aを配管2の外周面に埋入させた状態に係合する。そのため、地震発生時に配管2を長手方向に移動させる応力が作用したとしても、ボルト部材20が配管2の長手方向への移動を規制するできる。
【0041】
また、本実施形態の配管固定装置1は、配管2の外周面を覆う断熱部材10を更に備えており、一対の支持部材5a,5bが断熱部材10の外周面に近接又は接触する状態に設置される。これにより、一対の支持部材5a,5bから延びるボルト部材20の先端20aまでの長さを最小限に抑えることができる。そのため、地震発生時に作用する応力によってボルト部材20が曲がって変形してしまうことを最小限に抑えることが可能である。
【0042】
また、本実施形態の配管固定装置1は、一対の支持部材5a,5bを上下方向に所定間隔を隔てて水平方向に配置しているため、一対の支持部材5a,5bの間に同径の複数の配管2,2を固定することが可能である。ただし、上述した配管固定装置1は、複数の配管2,2を固定するものに限られず、1つの配管2を固定する際にも適用可能であることは勿論である。
【0043】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態で説明した配管固定装置1は、例えば図7に示すように、基台4に、それぞれ管径の異なる複数の配管2a,2bの固定に適さない。なぜなら、支持部材5bは、大径の配管2aを包囲する断熱部材10に近接した状態に取り付けられるため、小径の配管2aの外周面に埋入させるボルト部材20の長さが長くなり、地震発生時にボルト部材20が変形しやすくなるからである。
【0044】
そこで本実施形態では、基台4に設置される配管2を1つずつ基台4に固定できるようにした配管固定装置1について説明する。図8は、本実施形態における配管固定装置1を示す斜視図である。図9は、その配管固定装置1の正面図であり、図10は、配管固定装置1の断面図である。尚、本実施形態では、基台4と支持部材5aとは別部材である。
【0045】
本実施形態では、第1実施形態と同様の手法及び構造で基台4に配管2が設置される。配管固定装置1は、基台4に設置された配管2を基台4に固定し、配管2が長手方向に移動することを規制する。この配管固定装置1は、配管2を支持する基台4と、配管2の長手方向に直交し、配管2を挟んで互いに対向する一対の支持部材5a,5bと、一対の支持部材5a,5bを相互に連結する連結部材35と、一対の支持部材5a,5bのそれぞれに取り付けられ、先端20aを配管2の外周面2sに埋入させるボルト部材20とを備えている。
【0046】
一対の支持部材5a,5bは、互いに対称なL型の金具によって構成され、下部に平板状の固定部31を有している。固定部31は、ボルト33とナット34によって基台4の上面に固定される。これにより、一対の支持部材5a,5bは、基台4に支持される配管2を挟んで基台4から立設する状態に取り付けられる。支持部材5a,5bの上端部には連結部32が設けられている。
【0047】
一対の支持部材5a,5bは、基台4に支持された配管2を包囲する断熱部材10の外周面に近接又は接触する状態に設置される。例えば、本実施形態の支持部材5a,5bは、断熱部材10の外周面に接合している配管固定部材11のU字ベルトに接合するように取り付けられる。
【0048】
連結部材35は、両端が折り曲げられたコ字状の金具である。連結部材35は、一対の支持部材5a,5bの上端部を相互に連結する部材である。連結部材35は、両端の折曲部を支持部材5a,5bの上端部に設けられている連結部32に接合させた状態でボルト36とナット37が締結されることにより連結部32に固定される。支持部材5a,5bは、配管2の左右に最も膨らんだ部分に対応する位置に螺子孔21を有している。ボルト部材20は、所定のトルクでそれらの螺子孔21にねじ込まれ、先端20aを配管2の外周面2sに埋入させる。これにより、ボルト部材20の先端20aは、配管2の外周面2sから壁部の内側に所定深さ進入した状態となり、配管2の外周面2sに係合する。
【0049】
本実施形態においても、断熱部材10は、ボルト部材20がねじ込まれる部分に左右方向に貫通する貫通孔が形成されている。また、配管固定部材11にも、ボルト部材20がねじ込まれる部分に、貫通孔が形成されている。それら貫通孔の直径は、ボルト部材20の外径よりも若干大きく形成されるため、ボルト部材20は、螺子孔21にねじ込まれるとき、断熱部材10や配管固定部材11と干渉せず、断熱部材10の内側や配管固定部材11を損傷させることがない。
【0050】
また、連結部材35は、一対の支持部材5a,5bの上端部を相互に連結しているため、ボルト部材20が螺子孔21にねじ込まれるとき、支持部材5a,5bが互いに離間する方向に変位することを防止できる。仮に、連結部材35が設けられていない場合には、ボルト部材20の先端20aが配管2の外周面2sに当たった状態で更にボルト部材20がねじ込まれたとしても、ボルト部材20に作用する軸力が支持部材5a,5bを互いに離間させる方向に変位させてしまうため、先端20aを配管2の外周面2sに埋入させることができない。連結部材35は、そのような変位を防止して一対の支持部材5a,5bの姿勢を保持するため、ボルト部材20の先端20aを配管2の外周面2sに対して適切に埋入させることが可能である。
【0051】
ボルト部材20が先端20aを配管2の外周面に埋入させた状態に取り付けられることにより、配管2は、その長手方向(X方向)に移動しない状態に固定される。そのため、配管固定装置1は、地震発生時に配管2が長手方向に移動することを抑制できる。特に本実施形態の配管固定装置1は、基台4に設置される配管2を一つずつ基台4に固定することができる。この場合、一対の支持部材5a,5bは、基台4に支持される複数の配管2のそれぞれに対向して基台4から立設させた状態に取り付ければ良い。そのため、本実施形態の配管固定装置1は、基台4上に管径の異なる複数の配管2を設置することが可能である。
【0052】
(変形例)
以上、本発明に関する好ましい幾つかの実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記各実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0053】
例えば、上記実施形態では、配管2の外周面において互いに180度を成す角度位置に2つのボルト部材20,20を取り付ける例を説明した。しかし、配管2の外周面2sに埋入させるボルト部材20の数は、2つに限られるものではなく、3つ以上であっても良い。例えば、配管2の外周面2sに3つのボルト部材20の先端20aを埋入させる場合、3つのボルト部材20は、配管2の外周面において互いに120度を成す角度位置に取り付けられることが好ましい。
【0054】
また、上記実施形態では、断熱部材10の周囲を拘束する配管固定部材11を取り付ける例を説明した。しかし、配管固定部材11を取り付けるか否かは任意である。すなわち、配管固定装置1において配管固定部材11を取り付けない構成を採用しても構わない。
【0055】
また、上記実施形態では、配管2の内部を温冷水が流れることを想定し、配管2の周囲に断熱部材10を配置する例を説明した。しかし、配管2の内部を流れる液体が常温である場合には、配管2の周囲に断熱部材10を配置する必要はない。
【0056】
また、上記実施形態では、配管固定装置1によって配管2を天井空間に設置する例を説明した。しかし、配管2の設置箇所は天井空間に限られない。例えば、上述した配管固定装置1は、配管2を床面に設置する際にも採用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…配管固定装置、2…配管、4…基台、5a,5b…支持部材、10…断熱部材、20…ボルト部材、35…連結部材。
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