(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152188
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】配管固定装置
(51)【国際特許分類】
F16L 3/10 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F16L3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066230
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
【テーマコード(参考)】
3H023
【Fターム(参考)】
3H023AA05
3H023AB04
3H023AC22
3H023AC52
3H023AD27
3H023AD32
3H023AE02
(57)【要約】
【課題】地震発生時に配管が長手方向に移動することを抑制する。
【解決手段】配管固定装置1は、基台3の支持面30に断熱ブロック4が設置され、断熱ブロック4の内側に配管2を設置して配管2の外周面を断熱ブロック4で包囲し、断熱ブロック4の外周面にU字状の配管固定部材5を接合させた状態で配管固定部材5を基台3に固定することにより配管2を基台3に固定する。この配管固定装置1は、配管2の外径と同径の内径を有する円環状の拘束部14と、拘束部14から外方に延びる係止部11とを有し、係止部11が基台3に接合した状態で、拘束部14が配管2の外周面を拘束した状態に取り付けられることにより、配管2の長手方向の移動を規制する規制部材7を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台の支持面に断熱ブロックが設置され、前記断熱ブロックの内側に配管を設置して前記配管の外周面を前記断熱ブロックで包囲し、前記断熱ブロックの外周面にU字状の配管固定部材を接合させた状態で前記配管固定部材を前記基台に固定することにより前記配管を前記基台に固定する配管固定装置において、
前記配管の外径と同径の内径を有する円環状の拘束部と、前記拘束部から外方に延びる係止部とを有し、前記拘束部が前記配管の外周面を拘束保持した状態で、前記係止部が前記基台に接合した状態に取り付けられることにより、前記配管の長手方向の移動を規制する規制部材を備えたことを特徴とする配管固定装置。
【請求項2】
基台の支持面に配管が設置され、前記配管の外周面にU字状の配管固定部材を接合させた状態で前記配管固定部材を前記基台に固定することにより、前記配管を前記基台に固定する配管固定装置において、
前記配管の外径と同径の内径を有する円環状の拘束部と、前記拘束部から外方に延びる係止部とを有し、前記拘束部が前記配管の外周面を拘束保持した状態で、前記係止部が前記基台に接合した状態に取り付けられることにより、前記配管の長手方向の移動を規制する規制部材を備えたことを特徴とする配管固定装置。
【請求項3】
前記規制部材は、前記配管の長手方向において前記基台を挟んで両側に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管固定装置。
【請求項4】
前記規制部材は、前記係止部に装着される断熱部材を有し、
前記係止部は、前記断熱部材を前記基台に接合させた状態に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管固定装置。
【請求項5】
前記規制部材は、前記係止部に装着される断熱部材を有し、
前記係止部は、前記断熱部材を前記基台に接合させた状態に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の配管固定装置。
【請求項6】
前記規制部材は、前記拘束部の姿勢変化を抑制する姿勢保持部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物に設置される各種配管を固定する配管固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物には様々な配管が設置される。例えば冷温水を供給する配管には、鋼管などの金属管が使用されることが多い。また、冷温水の供給量に応じて、50A(外径60.5mm)、65A(外径76.3mm)、80A(外径89.1mm)、90A(101.6mm)、100A(外径114.3mm)、200A(外径216.3mm)、300A(外径318.5mm)といった様々な外径寸法の配管が設置される。尚、300Aを超える外形寸法の配管が設置されることもある。
【0003】
この種の配管はU字バンドやU字ボルトを使用して架台やブラケットに固定され、建造物の床面や壁面、天井空間などに設置される。ここで、配管内を冷温水が流れる場合、熱損失を防止する観点から配管の外周面に断熱材(保温材)を巻付けておくことが必要となる。特に配管内を冷却水が流れる場合には、結露水が下方に滴り落ちることを防ぐために断熱材が重要となる。
【0004】
従来、架台やブラケットなどの固定部材に配管を固定する箇所において、配管の断熱性を確保するために、例えば固定部材上に断熱性を有する断熱ブロックを用いることが提案されている(例えば特許文献1)。断熱ブロックは、底部側ブロックと頂部側ブロックとを有し、底部側ブロックと頂部側ブロックとを組み合わせることでブロックの内側に配管を保持するように構成される。例えば、固定部材の上面に底部側ブロックが配置され、その底部側ブロックの上部に形成された半円状切欠部に配管が設置される。頂部側ブロックは、底部側ブロックの半円状切欠部に設置された配管の上半部を覆う状態で底部側ブロックに接合するように配置される。その状態でU字ボルトを使用して断熱ブロックの外周面を固定部材に固定することで、底部側ブロックと頂部側ブロックの内側に保持された配管が固定部材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された固定方法では、地震発生時に、配管の長手方向に強い応力が発生した場合、U字ボルトによって固定された配管が長手方向に移動し、配管が破損するという問題がある。例えば、配管が長手方向に移動すると、配管の長手方向延設部に設けられるエルボ部分に応力が集中し、エルボ部分が破損する。また、配管が長手方向に移動すると、配管の外周面を保持している断熱ブロックに大きな衝撃が作用するため、底部側ブロック及び頂部側ブロックが破損してしまい、固定部材が配管を適切に保持できなくなるという問題もある。
【0007】
上記問題は、例えば断熱ブロックが設けられず、U字ボルトが配管の外周面に直接接合するように配置される場合も起こり得る。すなわち、U字ボルトが配管の外周面に直接接合している場合であっても、地震発生時に配管の長手方向に強い応力が発生すると、U字ボルトによって保持される配管が長手方向に移動し、配管が破損する事態が起こり得る。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、地震発生時に、配管が長手方向に移動することを抑制できるようにした配管固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、基台の支持面に断熱ブロックが設置され、前記断熱ブロックの内側に配管を設置して前記配管の外周面を前記断熱ブロックで包囲し、前記断熱ブロックの外周面にU字状の配管固定部材を接合させた状態で前記配管固定部材を前記基台に固定することにより前記配管を前記基台に固定する配管固定装置において、前記配管の外径と同径の内径を有する円環状の拘束部と、前記拘束部から外方に延びる係止部とを有し、前記拘束部が前記配管の外周面を拘束保持した状態で、前記係止部が前記基台に接合した状態に取り付けられることにより、前記配管の長手方向の移動を規制する規制部材を備えたことを特徴とする構成である。
【0010】
第2に、本発明は、基台の支持面に配管が設置され、前記配管の外周面にU字状の配管固定部材を接合させた状態で前記配管固定部材を前記基台に固定することにより、前記配管を前記基台に固定する配管固定装置において、前記配管の外径と同径の内径を有する円環状の拘束部と、前記拘束部から外方に延びる係止部とを有し、前記拘束部が前記配管の外周面を拘束保持した状態で、前記係止部が前記基台に接合した状態に取り付けられることにより、前記配管の長手方向の移動を規制する規制部材を備えたことを特徴とする構成である。
【0011】
第3に、本発明は、上記第1又は第2の構成を有する配管固定装置において、前記規制部材は、前記配管の長手方向において前記基台を挟んで両側に配置されることを特徴とする構成である。
【0012】
第4に、本発明は、上記第1乃至第3のいずれかの構成を有する配管固定装置において、前記規制部材は、前記係止部に装着される断熱部材を有し、前記係止部は、前記断熱部材を前記基台に接合させた状態に取り付けられることを特徴とする構成である。
【0013】
第5に、本発明は、上記第1乃至第4のいずれかの構成を有する配管固定装置において、前記規制部材は、前記拘束部の姿勢変化を抑制する姿勢保持部材を備えることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、拘束部が配管の外周面を拘束した状態で規制部材の係止部を基台に接合させた状態に取り付けられることにより、規制部材は配管が長手方向に滑って移動することを規制することができる。そのため、地震発生時において配管が長手方向に移動してしまうことを抑制することが可能であり、地震による配管や断熱ブロックの破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態における配管固定装置を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態における配管固定装置を示す側面図である。
【
図3】規制部材として設けられる配管バンドの構成例を示す図である。
【
図4】配管の長手方向に対して強い応力が発生した場合の規制部材の作用を説明する図である。
【
図5】配管の長手方向に対して規制部材による規制力を超えるような強い応力が作用した場合の規制部材の挙動を示す図である。
【
図6】第2実施形態における配管固定装置を示す側面図である。
【
図7】規制部材として設けられる配管バンドの構成例を示す図である。
【
図8】姿勢保持部材を含む規制部材が配管に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図9】接合部を配管の長手方向と平行な横方向に延ばした規制部材を示す側面図である。
【
図10】第3実施形態における配管固定装置を示す側面図である。
【
図11】第3実施形態における配管バンドの構成例を示す図である。
【
図12】配管バンドの拘束部の内側に突起部を設けた変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0017】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における配管固定装置1を示す斜視図である。
図2は、その配管固定装置1を示す側面図である。
図1及び
図2に示すXYZ三次元座標系は、XY平面を水平面とし、Z軸方向を鉛直方向とする座標系であり、他の図に示す座標系と共通する座標系である。
図1及び
図2に示すように、配管固定装置1は、建造物には設置される配管2を基台3に固定するための装置である。配管2は、例えば鋼管などの金属管で構成され、建造物内の空調設備などに対して冷温水を供給する配管である。基台3は、例えば床面や壁面、天井空間などに設置され、水平方向に設置される配管2を支持する。基台3は、例えば軽溝形鋼やリップ溝形鋼などの形鋼によって形成され、支持面30と、その支持面30の左右両側から垂下する一対の側面31,32とを有している。基台3は、その長手方向(Y方向)に直交する水平方向(X方向)に沿って配置される配管2を、支持面30において支持する。尚、
図1では、基台3の長手方向(Y方向)において1本の配管2が基台3の取り付けられた状態を示しているが、基台3に取り付け可能な配管2の本数は1本に限られず、複数本の配管2を平行な状態で基台3に取り付けることも可能である。また、基台3が天井空間に設置される場合には、例えば基台3の長手方向(Y方向)の両端に、天井構造物から垂下する吊りボルトやアングル材などの吊り部材が固着され、その吊り部材によって基台3が天井空間の所定高さ位置に設置される。
【0018】
配管2には冷温水が流れるため、配管固定装置1は、基台3が配管2を固定する構造として断熱支持構造を採用している。具体的には、この配管固定装置1は、基台3の支持面30に断熱ブロック4を配置し、その断熱ブロック4の内側に配管2を配置して配管2の外周面を断熱ブロック4で包囲した状態で支持する。断熱ブロック4は、基台3の支持面30に設置される下部ブロック4aと、その下部ブロック4aの上側に配置される上部ブロック4bとの2つの部材によって構成される。下部ブロック4a及び上部ブロック4bは、例えば硬質ウレタンフォームなどの断熱材で形成される。下部ブロック4aは、基台3の支持面30に載置可能な底面を有し、その上部には配管2の外径に対応して半円状の凹部が形成され、その凹部で配管2の下半部を覆うように構成される。上部ブロック4bは、半円状のブロック体であり、下部ブロック4aの凹部両側の接合部4cに接合し、且つ、配管2の上半部を覆う凹部を有している。配管2は、基台3に載置された下部ブロック4aの凹部に設置された後、上部ブロック4bが下部ブロック4aに接合装着されることにより、断熱ブロック4の内側に設置される。
【0019】
配管固定装置1は、断熱ブロック4の内側に配管2が設置された状態で断熱ブロック4(上部ブロック4b)の外周面にU字状の配管固定部材5を接合させ、その配管固定部材5を基台3に固定することにより、配管2を基台3上に設置する。配管固定部材5は、U字バンドの両端にボルト部5aが固着されており、そのボルト部5aを基台3の支持面30に形成された取付孔33に挿入し、支持面30の下面側に突出するボルト部5aの先端にナット5bを装着することにより基台3に固定される。ナット5bを締め付けることにより、U字バンドが断熱ブロック4を基台3に向けて押圧するため、断熱ブロック4の内側に保持される配管2が基台3に対して一定の強度で固定される。
【0020】
上記のように配管2が基台3に取り付けられると、配管2は、外周面が断熱ブロック4によって包囲された状態となる。そのため、基台3に固定される箇所において、配管2の断熱性が確保されており、配管2の内側を冷温水が流れる場合に熱損失を防止することができると共に、結露水が下方に滴り落ちることを防ぐことも可能である。
【0021】
本実施形態の配管固定装置1は、上記のように基台3に取り付けられた配管2が、配管2の長手方向(X方向)に移動することを防ぐための一対の規制部材7,7を備えている。一対の規制部材7,7は、基台3を挟むように配管2の2箇所の位置に取り付けられる。例えば本実施形態の規制部材7,7は、配管バンド10によって構成され、配管2の外径と同径の内径を有する円環状の拘束部14と、拘束部14から下方に延びる係止部11とを有している。
【0022】
図3は、規制部材7として設けられる配管バンド10の構成例を示す図である。配管バンド10は、第1バンド部材15と、第2バンド部材16とを互いに組み付けることにより形成される。第1バンド部材15は、配管2の外径に対応する内径の半円部15aと、半円部15aの上端に設けられた係合部15bと、半円部15aの下端に設けられた接合部15cとを有している。第2バンド部材16は、配管2の外径に対応する内径の半円部16aと、半円部16aの上端に設けられた係合部16bと、半円部16aの下端に設けられた接合部16cとを有している。係合部15b,16bは互いに着脱可能な形状を有している。また、接合部15c,16cには、ボルト12を挿通するための孔17が設けられている。
【0023】
第1バンド部材15及び第2バンド部材16は、
図3(a)に示すように、半円部15a,16aを互いに対向させた状態に配置される。そして、半円部15a,16aの上端に設けられた係合部15b,16bを互いに係合させ、接合部15c,16cを接合させることにより、
図3(b)に示すように、円環状の拘束部14が形成される。また、互いに接合した接合部15c,16cをボルト12とナット13で締着することにより、拘束部14から下方に延びる係止部11が形成される。このような配管バンド10は、拘束部14が配管2の外周面に密着するように装着される。拘束部14の内径が配管2の外径と同一であるため、ボルト12とナット13が締め付けられると、配管バンド10が配管2の外周面に固定される。
【0024】
例えば
図2に示すように、一対の配管バンド10(10a,10b)のうち、一方の配管バンド10aは、係止部11を基台3の一方の側面31に接合させた状態で配管2に装着される。また、他方の配管バンド10bは、基台3の他方の側面32に接合させた状態で配管2に装着される。配管バンド10の係止部11を基台3の側面31,32に接合させることにより、地震発生時において、配管2が長手方向(X方向)に移動すること規制するのである。
【0025】
図4は、配管2の長手方向に対して強い応力が発生した場合の規制部材7の作用を説明する図である。まず、
図4(a)に示すように、地震発生時に矢印X1方向の応力が発生した場合、配管2にはその応力に応じて矢印X1方向に移動させる力が働く。このとき、配管2の外周面に固定されている配管バンド10aは、拘束部14から下方に延びる係止部11が基台3の側面31に接合している。そのため、配管バンド10aは、配管2が矢印X1方向に移動することを規制する。
【0026】
また、
図4(b)に示すように、地震発生時に矢印X2方向の応力が発生した場合、配管2にはその応力に応じて矢印X2方向に移動させる力が働く。このとき、配管2の外周面に固定されている配管バンド10bは、拘束部14から下方に延びる係止部11が基台3の側面32に接合している。そのため、配管バンド10bは、配管2が矢印X2方向に移動することを規制する。
【0027】
このように規制部材7,7は、基台3の側面31,32に接合する状態で配管2に固定されており、地震発生時に配管2を長手方向に移動させようとする応力が作用した場合に、配管2が移動してしまうことを規制し、基台3に対する配管2の相対変位を抑制することができる。したがって、本実施形態の配管固定装置1は、地震発生時における配管2の破損を防ぐことができると共に、断熱ブロック4の破損も防ぐことができる。そのため、地震が収まれば、直ぐに冷温水の供給を再開することが可能である。
【0028】
この配管固定装置1は、
図1及び
図2に示すように取り付けられた後、規制部材7,7及び配管2の外周面を包囲するように断熱材が巻き付けられる。この断熱材は、断熱ブロック4以外の部分を包囲するように巻き付けられる。これにより、配管2の断熱性が確保されるようになり、配管2の内側を冷温水が流れる場合に熱損失を防止することができる。また、配管2の内側を冷却水が流れる場合に、結露水が下方に滴り落ちることを防ぐことも可能になる。
【0029】
本実施形態における配管固定装置1は、比較的外径寸法の小さい配管2(例えば100A以下の配管2)に対して好適に利用し得る。外径寸法の小さい配管2は、それ自体の重量が比較的軽く、内部を流れる冷温水の流量も少ないため、地震発生時に配管2に作用する応力が比較的小さいと言える。そのため、配管固定装置1は、規制部材7,7として
図3に示した配管バンド10を用いることにより、比較的簡単に配管2の移動を規制することができる。
【0030】
尚、上記説明では、断熱ブロック4の内側に配管2が設置された状態で断熱ブロック4の外周面にU字状の配管固定部材5を接合させ、その配管固定部材5を基台3に固定することにより、配管2を基台3上に設置するタイプの配管固定装置1を例示した。しかし、これに限られるものではなく、本実施形態において上述した配管固定装置1の構成は、配管2の外周面に断熱ブロック4が設けられない場合にも適用可能である。この場合、配管固定装置1は、基台3の支持面に配管2が設置され、配管2の外周面にU字状の配管固定部材5を接合させた状態で配管固定部材5の両端を基台3に固定することにより、配管2を基台3に固定することができる。このような配管固定装置1は、配管2の内側を冷温水が流れるのではなく、常温の液体が流れる場合に採用される。
【0031】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。例えば、第1実施形態の配管固定装置1を比較的外径寸法の大きい配管2(例えば100Aを超える配管2)に適用した場合、地震発生時に配管2に作用する応力が比較的大きくなるため、大規模地震発生時には規制部材7,7による規制力を超えるような強い応力が配管2に作用することがある。この場合、第1実施形態で説明した規制部材7,7では、配管2の長手方向の移動を規制できないことがある。
【0032】
図5は、配管2の長手方向に対して規制部材7,7による規制力を超えるような強い応力が作用した場合の規制部材7,7の挙動を示す図である。
図5(a)に示すように、配管2の長手方向に対して規制部材7,7による規制力を超えるような強い応力が作用すると、配管2が長手方向に移動するため、規制部材7,7は、係止部11に設けられたボルト12を支点として、矢印Fで示すように揺動する。地震発生中にそのような揺動が1回でも発生すると、
図5(b)に示すように配管バンド10の係止部11の上端部分19が開き、円環状の拘束部14の内径が配管2の外径よりも大きく変形してしまう。すると、規制部材7,7による配管2の移動を規制する機能が失われてしまい、その後に更に大きな振動が生じると、配管2がその長手方向に大きく移動してしまい、配管2の破損や断熱ブロック4の破損を招くという問題がある。
【0033】
そこで本実施形態では、比較的外径寸法の大きい配管2(例えば100Aを超える配管2)にも好適に適用し得る配管固定装置1について説明する。
【0034】
図6は、第2実施形態における配管固定装置1を示す側面図である。この配管固定装置1は、基台3を挟んで左右両側に配置される一対の規制部材7,7の係止部11が第1実施形態よりも長尺に形成されており、それぞれの係止部11に2つのボルト12,12が装着される点で第1実施形態と異なる。
【0035】
図7は、本実施形態において規制部材7として設けられる配管バンド10の構成例を示す図である。本実施形態の配管バンド10は、第1バンド部材15及び第2バンド部材16のそれぞれの接合部15c,16cに2つの孔17,17が設けられる。また、
図7(a)に示すように、第1バンド部材15及び第2バンド部材16の接合部15c,16cの間には、拘束部14の姿勢変化を抑制する姿勢保持部材20が配置される。姿勢保持部材20は、例えば接合部15c,16cと同一サイズの金属板で構成され、接合部15c,16cに形成された2つの孔17,17に対応する位置に2つの孔21,21が設けられる。この配管バンド10は、
図7(b)に示すように、半円部15a,16aの上端に設けられた係合部15b,16bを互いに係合させると共に、接合部15c,16cの間に姿勢保持部材20を配置して接合部15c,16cを姿勢保持部材20に接合させた状態で、ボルト12とナット13を2つの孔17,21に装着して締め付けることで形成される。
【0036】
図8は、上記のような規制部材7(配管バンド10)が配管2に取り付けられた状態を示す断面図である。配管バンド10の拘束部14が配管2の外周面を拘束するように取り付けられると、
図8に示すように姿勢保持部材20は、その上端部20aが配管2の外周面に密着する。また、姿勢保持部材20は、2つのボルト12で接合部15c,16cに固定されているため、姿勢保持部材20は接合部15c,16cと同一の姿勢を保持する。そのため、大規模地震発生時に規制部材7,7が
図5(a)に示したように揺動しようしても、姿勢保持部材20の上端部20aが配管2の外周面に当たっているので、拘束部14の姿勢変化を抑制でき、円環状の拘束部14の内径が配管2の外径よりも大きく変形してしまうことを防止することができる。
【0037】
このように本実施形態の規制部材7,7は、姿勢保持部材20を備えており、地震発生時に配管2を長手方向に移動させようとする強い応力が作用した場合であっても拘束部14の姿勢変化を抑制でき、配管2が移動してしまうことを良好に規制することができる。したがって、本実施形態の配管固定装置1は、地震発生時における配管2の破損を防ぐことができると共に、断熱ブロック4の破損も防ぐことも可能である。特に本実施形態の配管固定装置1は、比較的外径寸法の大きい配管2(例えば100Aを超える配管2)に対して好適に利用し得るものであり、重量の大きい配管2であっても地震発生時に配管2が長手方向に移動することを抑制できるという利点がある。
【0038】
ここで、
図7では配管バンド10の接合部15c,16cを配管2の長手方向に直交する縦方向に延ばし、2つの孔17,17を接合部15c,16cの縦方向に配置した構成例を説明した。しかし、これに限られるものではなく、例えば
図9に示すように接合部15c,16cを配管2の長手方向と平行な横方向に延ばし、ボルト12を挿通するための2つの孔17,17を接合部15c,16cの横方向に配置する構成としても構わない。これにより、規制部材7,7は、配管2の長手方向に厚みが増し、拘束部14の剛性を高めることができる。そのため、地震発生時に、
図5(a)に示したような規制部材7,7の揺動が抑えられ、拘束部14の内径が配管2の外径よりも大きく変形してしまうことを防止することができる。尚、
図9に示した構成では、拘束部14自体が一定の強度を有するため、上述した姿勢保持部材20を配置しなくても良い。ただし、拘束部14の強度をより一層高めるために、上述した姿勢保持部材20を配置する構成を採用しても構わない。
【0039】
尚、本実施形態の配管固定装置1は、上記以外の点は第1実施形態で説明したものと同様である。そのため、本実施形態の配管固定装置1も第1実施形態と同様、配管2の外周面に断熱ブロック4が設けられない場合にも適用することが可能である。
【0040】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。上述した第1及び第2実施形態の配管固定装置1では、規制部材7,7として設けられている配管バンド10の係止部11が基台3の側面31,32に接触している。そのため、配管2内を冷温水が流れる場合、配管バンド10を介して基台3への熱伝導が起こるため、熱損失が生じやすくなる。そこで、本実施形態では、配管バンド10を介して起こる熱伝導を低減し、熱損失を防止できるようにした配管固定装置1について説明する。
【0041】
図10は、第3実施形態における配管固定装置1を示す側面図である。この配管固定装置1は、基台3を挟んで左右両側に配置される一対の規制部材7,7の係止部11に断熱部材25を装着し、その断熱部材25を基台3の側面31,32に押し当てた状態で規制部材7,7を配管2に取り付けた構成である。
【0042】
図11は、第3実施形態における配管バンド10の構成例を示す図である。この配管バンド10は、例えば第2実施形態で説明したように接合部15c,16cの間に姿勢保持部材20を配置した係止部11を有している。ただし、係止部11は、接合部15c、16cの間に姿勢保持部材20を設けない構成であっても構わない。姿勢保持部材20を設けるか否かは、配管2の外径サイズに応じて決定すれば良い。
【0043】
断熱部材25は、硬質ウレタンフォームなどの硬質樹脂を母材とするブロック状の部材であり、その中央に配管バンド10の係止部11を挿通可能な孔25aを有している。一方、係止部11は、上下2箇所の位置にボルト12を挿通可能な孔17,17が設けられており、それら2つの孔17,17の間隔は断熱部材25の縦寸法よりも大きくなっている。そのため、
図11に示すように、係止部11の上側の孔17にボルト12を挿入してナット13を取り付けた後、下側の孔17にボルト12を挿入する前に、断熱部材25を係止部11に装着することができる。断熱部材25を係止部11に装着した後、係止部11の下側の孔17にボルト12を挿入してナット13を取り付けることにより、断熱部材25は、係止部11から離脱しないように2つのボルト12の間に保持される。
【0044】
上記構成を有する配管バンド10は、断熱部材25を基台3の側面31,32に接合させることにより、実質的に係止部11を基台3の側面31,32に接合させた状態で配管2に取り付けられる。したがって、本実施形態の配管固定装置1は、規制部材7,7が断熱部材25を介して基台3の側面31,32に接合する状態で配管2に固定されており、第1及び第2実施形態と同様に、地震発生時に配管2が長手方向に移動してしまうことを規制し、基台3に対する配管2の相対変位を抑制することが可能である。
【0045】
加えて、本実施形態の配管固定装置1は、規制部材7,7が断熱部材25を介して基台3の側面31,32に接合する構成である。そのため、配管2内を冷温水が流れる場合に配管バンド10から基台3への熱伝導を防ぐことが可能であり、熱損失を防止することができる。特に、配管2内を冷却水が流れる場合、基台3に結露が生じることを防ぎ、結露水が下方に滴り落ちることを防ぐことも可能である。
【0046】
尚、配管固定装置1は、
図10に示すように配管2に取り付けられた後、規制部材7,7及び配管2の外周面を包囲するように断熱材が巻き付けられ、配管2の断熱性を確保する点は第1及び第2実施形態と同様である。
【0047】
また本実施形態の配管固定装置1は、上記以外の点は第1及び第2実施形態のそれぞれで説明したものと同様である。そのため、本実施形態の配管固定装置1も第1及び第2実施形態と同様、配管2の外周面に断熱ブロック4が設けられない場合にも適用することが可能である。
【0048】
(変形例)
以上、本発明に関する好ましい幾つかの実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記各実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0049】
図12は、配管バンド10の拘束部14の内側に突起部41を設けた変形例を示す図である。例えば
図12(a)に示すように、配管バンド10の拘束部14の内側に突起部41を設けたものであっても構わない。この場合、配管バンド10を配管2に取り付け、拘束部14が配管2の外周面を拘束した状態で締め付けると、突起部41が配管2の外周面に埋没する。これにより、拘束部14が配管2の外周面を滑らないように固定することができる。つまり、突起部41は、地震発生時に拘束部14の姿勢変化を抑制する姿勢保持部材として機能することになる。したがって、拘束部14の内側に突起部41を設けることにより、
図7に示した姿勢保持部材20を配置する必要がなくなる。
【0050】
また、突起部41は、
図12(b)に示すように、拘束部14の外周面に螺子孔42を設け、その螺子孔42にボルト43をねじ込むことによって形成しても構わない。この場合、拘束部14が配管2の外周面を拘束した状態に配管バンド10が取り付けられた後、螺子孔42にボルト43をねじ込むことにより、ボルト43の先端を配管2の外周面に確実に埋没させることが可能である。尚、
図12に示した突起部41は、上述した第1乃至第3実施形態のいずれの構成にも適用することが可能である。
【0051】
また、上記各実施形態では、配管2が水平方向に設置される場合を例示して説明した。しかし、これに限られるものではなく、上記各実施形態で説明した配管固定装置1は、配管2を鉛直方向に設置する際にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…配管固定装置、2…配管、3…基台、4…断熱ブロック、5…配管固定部材、7…規制部材、11…係止部、14…拘束部、20…姿勢保持部材、25…断熱部材。