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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152192
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】車両用樹脂構造体
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/06 20060101AFI20241018BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20241018BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20241018BHJP
   B60R 21/206 20110101ALI20241018BHJP
【FI】
B60R7/06 Z
B60R13/02 Z
B60R13/04 Z
B60R21/206
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066235
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 篤史
【テーマコード(参考)】
3D022
3D023
3D054
【Fターム(参考)】
3D022CB01
3D022CC03
3D022CD06
3D022CD24
3D022CD27
3D023AA01
3D023AA04
3D023AD08
3D023BA01
3D023BA09
3D023BB01
3D023BC01
3D023BD12
3D023BE03
3D054AA02
3D054AA08
3D054AA14
3D054BB18
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】樹脂で一体成形されて車両の内装または外装に用いられる車両用樹脂構造体において、遮蔽が所望される被遮蔽部を適切に遮蔽する遮蔽部が一体成形されているとともに、当該車両用樹脂構造体を一体成形する際の金型の数や工程を増加させる必要がない、車両用樹脂構造体を提供する。
【解決手段】車室内または車両外に露出する位置に配置されて一部の縁部にフランジ面11を有する正面パネル10と、フランジ面に対して略平行に延設されて遮蔽が所望される被遮蔽部24を有する被遮蔽パネル20と、被遮蔽部を覆うように被遮蔽パネルに対して略平行に延設された遮蔽パネル30と、正面パネル裏面12から所定距離をあけて対向するように配置されて被遮蔽パネルと遮蔽パネルを接続する接続パネル40とを有し、遮蔽パネルは正面パネル裏面に接続され、被遮蔽パネルは正面パネル裏面に接続されることなく接続パネルにて遮蔽パネルに接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で一体成形されて車両の内装または外装に用いられる車両用樹脂構造体であって、
前記車両の室内あるいは前記車両の外側に露出する位置に配置されているとともに一部の縁部には前記露出の方向である露出方向に対して反対方向となる反露出方向に向かって延設されたフランジ面を有する正面パネルと、
前記正面パネルにおける前記反露出方向の側に配置され、前記フランジ面に対して略平行となるように前記反露出方向に向かって延設されているとともに、遮蔽が所望される被遮蔽部を有する被遮蔽パネルと、
前記正面パネルにおける前記反露出方向の側に配置され、少なくとも前記被遮蔽部を覆うように前記被遮蔽パネルに対して略平行となるように前記反露出方向に向かって延設された遮蔽パネルと、
前記正面パネルにおける前記反露出方向の側に配置されているとともに前記正面パネルの前記反露出方向の側の面である正面パネル裏面から所定距離をあけて対向するように配置され、前記被遮蔽パネルと前記遮蔽パネルとを接続する接続パネルと、
を有しており、
前記遮蔽パネルは、前記正面パネル裏面に接続されており、
前記被遮蔽パネルは、前記正面パネル裏面に接続されることなく前記接続パネルにて前記遮蔽パネルに接続されている、
車両用樹脂構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用樹脂構造体であって、
前記遮蔽パネルは、前記正面パネル裏面との接続部から前記接続パネルとの接続部までの第1パネルと、前記接続パネルとの接続部から前記反露出方向の側の縁部までの第2パネルと、を有しており、
前記第2パネルは、前記正面パネルから遠ざかるにしたがって薄くなるように形成されており、
前記第1パネルは、前記正面パネルから遠ざかるにしたがって厚くなるように形成されている、
車両用樹脂構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂で一体成形されて車両の内装または外装に用いられる車両用樹脂構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両の内装や外装の一部には、樹脂で一体成形された種々の車両用樹脂構造体が用いられている。例えば近年の車両の中には、車両の衝突時に運転者の膝を保護する、いわゆるニーエアバッグがステアリングコラムの下方に設けられているものがあり、当該ニーエアバッグは、ステアリングコラムの下方に配置された車両用樹脂構造体に収容されている。
【0003】
ニーエアバッグを収容している車両用樹脂構造体は、ほぼ黒色一色で一体成形されている。そしてニーエアバッグは、一般的に、金属等の光沢ある銀色のフックが車両用樹脂構造体の取付孔(ステアリングコラムに対向する上面に設けられた取付孔)に係止されて車両用樹脂構造体に収容されている。車両の中には、ステアリングコラム(ステアリング)を、運転者が操作しやすいように、前後や上下に調整できる車両があり、運転者がステアリングを前方や上方へ移動させた場合、運転者から、車両用樹脂構造体の取付孔から突出しているフックの端部が見えてしまう場合がある。黒色一色の車両用樹脂構造体の一部に、光沢ある銀色のフックの端部が見えると非常に目立ち、見栄えがよくない。そこで、運転者から上記のフックの端部が見えないように遮蔽することが所望されている。
【0004】
例えば特許文献1には、ニーエアバッグを収容した合成樹脂製のエアバッグカバー(車両用樹脂構造体に相当)において、上記のフックの端部が運転者から見えないようにした膝保護用エアバッグ装置が開示されている。エアバッグカバーは、後述する[比較例1]に示すように、運転者の膝の前方において車室内に露出するように配置された意匠パネル部と、当該意匠パネル部の裏面から前方に延びるように設けられた連結壁部と、連結壁部の取付孔から突出した上記フックを遮蔽するように連結壁部の上方において連結壁部と平行に設けられた遮蔽部と、を有している。そして連結壁部の後端と遮蔽部の後端は、それぞれ意匠パネル部の裏面に接続されており、意匠パネル部と連結壁部と遮蔽部とが一体成形されている。
【0005】
また特許文献1には、エアバッグカバーの遮蔽部の別の例として、後述する[比較例2]に示すように、遮蔽部が、連結壁部と平行ではなく、連結壁部の取付孔よりも後方となる位置から斜め上方かつ前方に延びるように設けられたエアバッグカバーが記載されている。そして意匠パネル部と連結壁部と遮蔽部とが一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6806021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された、連結壁部と遮蔽部とが平行なエアバッグカバー(後述する[比較例1]に示すエアバッグリテーナ)は、金型を用いて樹脂の一体成形品を製造する際、金型を抜く方向には抜き勾配を設ける必要があるので、後述するように、遮蔽部の前端の厚さが製造下限薄さよりも薄くなり、製造が困難である。これを回避するために遮蔽部の前端の厚さを製造下限薄さよりも厚くすると、抜き勾配の影響により、遮蔽部における意匠パネル部との接続部の厚さが非常に厚くなり、いわゆる「樹脂のヒケ」が発生して意匠パネル部における運転者の側(意匠面)に複数の「窪み」が発生して見栄えが悪くなる可能性がある。この双方を回避するには、遮蔽部の個所の金型を分離しなければならず、金型の数が増加するとともに、増加した金型を引く抜く工程も追加しなければならなくなるので好ましくない。
【0008】
また、特許文献1に記載された、連結部の途中から斜め上方に延びる遮蔽部を有するエアバッグカバー(後述する[比較例2]に示すエアバッグリテーナ)では、後述するように、当該遮蔽部を形成するために金型を分離しなければならず、分離した金型の引抜方向を遮蔽部に沿う方向にしなければならない。このため、金型の数が増加するとともに、増加した金型を引く抜く工程も追加しなければならなくなるので好ましくない。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、樹脂で一体成形されて車両の内装または外装に用いられる車両用樹脂構造体において、遮蔽が所望される被遮蔽部を適切に遮蔽する遮蔽部が一体成形されているとともに、当該車両用樹脂構造体を一体成形する際の金型の数や工程を増加させる必要がない、車両用樹脂構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の発明は、樹脂で一体成形されて車両の内装または外装に用いられる車両用樹脂構造体である。そして、前記車両の室内あるいは前記車両の外側に露出する位置に配置されているとともに一部の縁部には前記露出の方向である露出方向に対して反対方向となる反露出方向に向かって延設されたフランジ面を有する正面パネルと、前記正面パネルにおける前記反露出方向の側に配置され、前記フランジ面に対して略平行となるように前記反露出方向に向かって延設されているとともに、遮蔽が所望される被遮蔽部を有する被遮蔽パネルと、前記正面パネルにおける前記反露出方向の側に配置され、少なくとも前記被遮蔽部を覆うように前記被遮蔽パネルに対して略平行となるように前記反露出方向に向かって延設された遮蔽パネルと、前記正面パネルにおける前記反露出方向の側に配置されているとともに前記正面パネルの前記反露出方向の側の面である正面パネル裏面から所定距離をあけて対向するように配置され、前記被遮蔽パネルと前記遮蔽パネルとを接続する接続パネルと、を有している。さらに、前記遮蔽パネルは、前記正面パネル裏面に接続されており、前記被遮蔽パネルは、前記正面パネル裏面に接続されることなく前記接続パネルにて前記遮蔽パネルに接続されている、車両用樹脂構造体である。
【0011】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係る車両用樹脂構造体であって、前記遮蔽パネルは、前記正面パネル裏面との接続部から前記接続パネルとの接続部までの第1パネルと、前記接続パネルとの接続部から前記反露出方向の側の縁部までの第2パネルと、を有している。そして、前記第2パネルは、前記正面パネルから遠ざかるにしたがって薄くなるように形成されており、前記第1パネルは、前記正面パネルから遠ざかるにしたがって厚くなるように形成されている、車両用樹脂構造体である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、被遮蔽パネルにおける被遮蔽部を覆うように被遮蔽パネルに対して略平行に配置された遮蔽パネルは、正面パネル裏面に接続されている。そして、遮蔽が所望される被遮蔽部を有する被遮蔽パネルは、正面パネル裏面に接続されることなく、正面パネル裏面から離れて対向する接続パネルにて遮蔽パネルに接続される。この構成を有することで、後述するように、金型の数や工程を増加させることなく、遮蔽パネルの先端の厚さを製造下限薄さよりも厚くなるように、かつ、「樹脂のヒケ」の発生を回避し、樹脂の一体成形品として適切に製造することができる。
【0013】
第2の発明によれば、正面パネルにおける車両の室内または車両の外側に露出する面に、いわゆる「樹脂のヒケ」が発生することを、より確実に回避できるとともに、より確実に、遮蔽パネルの先端の厚さを製造下限薄さよりも厚くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両用樹脂構造体の一例であるエアバッグリテーナの全体構成を説明する斜視図である。
図2図1に示すエアバッグリテーナをII方向から見た側面図である。
図3図1及び図2に示すエアバッグリテーナを一体成形する際の各金型と、各金型の引抜方向の例を説明する図である。
図4】エアバッグリテーナの被遮蔽パネルの被遮蔽部が、遮蔽パネルに覆われて運転者から見えないことを説明する図である。
図5図1図4に示すエアバッグリテーナに対して、被遮蔽パネルが正面パネル裏面に接続された[比較例1]のエアバッグリテーナの側面図である。
図6図5に示す[比較例1]のエアバッグリテーナを一体成形する際の各金型と、各金型の引抜方向の例を説明する図である。
図7図1図4に示すエアバッグリテーナに対して、遮蔽パネルが、被遮蔽パネルの途中から斜め上方に延びるように被遮蔽パネルに接続された[比較例2]のエアバッグリテーナの側面図である。
図8図7に示す[比較例2]のエアバッグリテーナを一体成形する際の各金型と、各金型の引抜方向の例を説明する図である。
図9図1図4に示すエアバッグリテーナに対して、被遮蔽パネルが正面パネル裏面に接続され、遮蔽パネルが正面パネル裏面に接続されることなく接続パネルを介して被遮蔽パネルに接続された[比較例3]のエアバッグリテーナの側面図である。
図10図9に示す[比較例3]のエアバッグリテーナを一体成形する際の各金型と、各金型の引抜方向の例を説明する図である。
図11】従来のエアバッグリテーナの全体構成を説明する斜視図である。
図12図11に示す従来のエアバッグリテーナをXII方向から見た側面図である。
図13図11及び図12に示す従来のエアバッグリテーナを一体成形する際の各金型と、各金型の引抜方向の例を説明する図である。
図14】従来のエアバッグリテーナの被遮蔽パネルの被遮蔽部が、運転者から見えてしまうことを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の車両用樹脂構造体について、図面を用いて説明する。なお、図中にX軸、Y軸、Z軸が記載されている場合、X軸とY軸とZ軸は互いに直交している。X軸方向は、正面パネル10(図1参照)が車室内(車両用樹脂構造体が内装の場合)あるいは車両外側(車両用樹脂構造体が外装の場合)に露出する方向、かつ略水平方向を示している。またY軸方向は、X軸方向に直交する方向、かつ略水平方向を示している。またZ軸方向は、鉛直上方に向かう方向を示している。またX軸方向は、正面パネル10の露出方向を示しているが、図中にV軸が記載されている場合、V軸方向はX軸方向とは反対方向を示しており、反露出方向を示している。以降、X軸方向を「露出方向X」と記載し、V軸方向を「反露出方向V」と記載する。
【0016】
なお以下では、車両用樹脂構造体の一例として、車室内のステアリングコラムの下方に配置されて車両の衝突時に運転者の膝を保護するニーエアバッグを収容するエアバッグリテーナ1を例として説明する。
【0017】
<エアバッグリテーナ1の外観と全体構造(図1図2)>
エアバッグリテーナ1は、図1及び図2に示すように、正面パネル10、被遮蔽パネル20、遮蔽パネル30、接続パネル40、下方パネル50等を有している。また図2において二点鎖線で示すように、ニーエアバッグ80は、被遮蔽パネル20と下方パネル50との間に収容され、金属等のフック81が被遮蔽パネル20の取付孔23に係止され、金属等のフック82が下方パネル50の取付孔53に係止されている。また図4に示すように、エアバッグリテーナ1は、ステアリングコラム90の下方、かつ、運転者の膝の前方となる車室内に配置されている。
【0018】
正面パネル10は、車両の室内に露出する位置に配置されているとともに、一部の縁部(この場合、上端の縁部)には、反露出方向Vに向かって延設されたフランジ面11を有している。また正面パネル10における反露出方向Vの側の面である正面パネル裏面12には破断溝13が形成されている。ニーエアバッグ80の作動時には、ニーエアバッグの膨張により破断溝が破断して正面パネル10に窓部が形成され、ニーエアバッグが飛び出す。
【0019】
被遮蔽パネル20は、正面パネル10における反露出方向Vの側に配置され、フランジ面11に対して略平行となるように、正面パネル10の裏側から反露出方向Vに向かって延設されている。また、被遮蔽パネル20には、遮蔽が所望される被遮蔽部24を有している。この場合、取付孔23に係止されて取付孔23から突出して露出しているフック81が被遮蔽部24に相当する。被遮蔽パネル20は樹脂の一体成形品の一部であり、ほとんど黒一色であるが、フック81は光沢ある銀色の金属等であり、運転者から見えた場合は非常に目立ち、見栄えがよくない。
【0020】
遮蔽パネル30は、正面パネル10における反露出方向Vの側に配置され、少なくとも被遮蔽部24を覆うように被遮蔽パネル20に対して略平行となるように、正面パネル10の裏側から反露出方向に向かって延設されている。
【0021】
接続パネル40は、正面パネル10における反露出方向Vの側に配置されているとともに正面パネル裏面12から所定距離L1をあけて対向するように配置され、被遮蔽パネル20と遮蔽パネル30とを接続している。
【0022】
図2に示すように、被遮蔽パネル20における露出方向Xの側の先端である露出方向先端21は、正面パネル裏面12に接続されることなく接続パネル40に接続され、当該接続パネル40を介して遮蔽パネル30に接続されている。つまり、接続パネル40におけるフランジ面11に近い側の縁部は、遮蔽パネル30において露出方向先端31から反露出方向Vに向かう途中に接続されており、接続パネル40におけるフランジ面11から遠い側の縁部は、被遮蔽パネル20における露出方向先端21に接続されている。また遮蔽パネル30における露出方向Xの側の先端である露出方向先端31は、正面パネル裏面12に接続されている。
【0023】
また遮蔽パネル30は、図2に示すように、正面パネル裏面12との接続部から接続パネル40との接続部までの第1パネル30Aと、接続パネル40との接続部から反露出方向Vの側の縁部(反露出方向先端32)までの第2パネル30Bとを有している。そして第2パネル30Bは、正面パネル10から遠ざかるにしたがって徐々に薄くなるように形成されており、図2中において厚さT3>厚さT4とされている。また第1パネル30Aは、正面パネル10から遠ざかるにしたがって徐々に厚くなるように形成されており、図2中において厚さT1<厚さT2とされている。例えば、厚さT1、T4は約1.0[mm]程度であり、厚さT2、T3は約2.0[mm]程度である。
【0024】
下方パネル50は、正面パネル10における反露出方向Vの側に配置され、被遮蔽パネル20に対して略平行となるように、正面パネル10の裏側から反露出方向Vに向かって延設されている。そして下方パネル50における露出方向Xの側の先端である露出方向先端51は、正面パネル裏面12に接続されている。また下方パネル50には、ニーエアバッグ80のフック82が係止される取付孔53が形成されている。
【0025】
<エアバッグリテーナ1を一体成形する際の金型の例(図3)>
図3は、エアバッグリテーナ1を樹脂にて一体成形する際の各金型A1~A4の例と、各金型A2~A4の引抜方向A2H~A4Hの例を示している。なお図3では、樹脂の一体成形品であるエアバッグリテーナ1と、各金型A1~A4を区別しやすいように、エアバッグリテーナ1と各金型との間や、隣り合う金型との間にスキマをあえてあけて記載している。
【0026】
図3に示す状態にて溶融した樹脂を充填後、樹脂が冷却されてエアバッグリテーナ1の一体成形が終了した際、まず金型A2を引抜方向A2Hの方向に沿って引き抜く。遮蔽パネル30の第2パネル30Bには、図2に示すように厚さT4<厚さT3となるように抜き勾配が設けられているので、容易に引き抜くことができる。なお、図2に示すように第1パネル30Aは、厚さT2>厚さT1とされているので、第2パネル30Bでは厚さT3を約2.0[mm]程度、反露出方向先端32の厚さT4を約1.0[mm]程度にすることが可能であり、製造下限薄さ以上の厚さを確保することができる。
【0027】
次に、金型A3を引抜方向A3Hの方向に沿って引き抜く。図3に示すように、金型A3及び当該金型A3の引抜方向により、第1パネル30Aには抜き勾配を設ける必要がないので、図2に示すように、厚さT2>厚さT1とされている。厚さT1は、例えば約1.0[mm]程度であり、樹脂が冷えた際に図3中における接続個所10Sに、いわゆる「樹脂のヒケ」が発生しにくい厚さとしている。「樹脂のヒケ」が発生すると、正面パネル10における露出方向Xの側の面(意匠面)に、複数の「窪み」が形成されて見栄えが悪くなるが、厚さT1を約1.0[mm]程度にすれば、当該「樹脂のヒケ」の発生を防止できる。なお第1パネル30Aには抜き勾配を設ける必要がないので、厚さT1~厚さT2を一定にしたり、厚さT2<厚さT1としたりしてもよいが、剛性を確保するために、厚さT2>厚さT1とすることが好ましい。
【0028】
なお、第2パネル30Bにおける第1パネル30Aに近い側の厚さT3(図2参照)を約2.0[mm]程度にするのであれば、第1パネル30Aにおける第2パネル30Bに近い側の厚さT2(図2参照)を約2.0[mm]程度にすることが好ましい。また図3からわかるように、接続パネル40及び被遮蔽パネル20には、抜き勾配を設ける必要はないので、適切な自由な厚さに設定されている。なお被遮蔽パネル20の取付孔23には、金型A3を引く抜くための抜き勾配が設定されている。
【0029】
次に、金型A4を引抜方向A4Hの方向に沿って引き抜くことで、一体成形されたエアバッグリテーナ1を取り出すことができる。また図3からわかるように、下方パネル50には、抜き勾配を設ける必要はないので、適切な自由な厚さに設定されている。なお下方パネル50の取付孔53には、金型A4を引く抜くための抜き勾配が設定されている。
【0030】
以上、エアバッグリテーナ1を樹脂の一体成形品として製造する際の金型の数、及び金型の引抜方向は、後述する従来のエアバッグリテーナ801と同じである。従って、金型の数や工程を増加させることなく、遮蔽パネルを追加することができる。また、エアバッグが作動及び膨張して被遮蔽パネル20を押圧した際、接続パネル40がリブとして機能して剛性が上がっているので、膨張したエアバッグの圧力が正面パネル10に集約される。このため、膨張したエアバッグの圧力は、不要に分散されることなく、適切に正面パネル10の破断溝13を破断し、当該エアバッグにて運転者の膝を適切に保護することができる。
【0031】
そして図4に示すように、運転者から、ステアリングコラム90の下方の先に、被遮蔽パネル20の被遮蔽部24が見えてしまうことを、遮蔽パネル30にて適切に防止することができる。
【0032】
<従来のエアバッグリテーナ801の外観と全体構造(図11図12)>
次に図11及び図12を用いて、従来のエアバッグリテーナ801の外観と全体構造について説明する。図11及び図12に示すエアバッグリテーナ801は、図1及び図2に示すエアバッグリテーナ1に対して、遮蔽パネル30と接続パネル40が省略され、被遮蔽パネル20が正面パネル裏面812に接続されている点が異なる。なお、正面パネル810は正面パネル10と同様であり、下方パネル850は下方パネル50と同様であるので説明を省略する。
【0033】
被遮蔽パネル820は、フランジ面811と略平行に配置されており、露出方向Xの側の縁部である露出方向先端821が正面パネル裏面812に接続されている。なお取付孔823は、被遮蔽パネル20の取付孔23と同様であり、ニーエアバッグ880のフック881が係止されて遮蔽が所望される被遮蔽部824も、遮蔽が所望される被遮蔽部24と同様である。
【0034】
従来のエアバッグリテーナ801は、遮蔽パネル30に相当するパネルが無いので、図14に示すように、運転者から被遮蔽部824が見えてしまう場合があり、見栄えがよくないので好ましくない。
【0035】
<従来のエアバッグリテーナ801を一体成形する際の金型の例(図13)>
図13は、従来のエアバッグリテーナ801を樹脂にて一体成形する際の各金型G1~G4の例と、各金型G2~G4の引抜方向G2H~G4Hの例を示している。なお図13では、樹脂の一体成形品であるエアバッグリテーナ801と、各金型G1~G4を区別しやすいように、エアバッグリテーナ801と各金型との間や、隣り合う金型との間にあえてスキマをあけて記載している。
【0036】
図13に示すように、金型G1~G4の数は、図3に示す金型A1~A4の数と同じである。また、図13に示す金型G2~G4の引抜方向G2H~G4Hは、図3に示す金型A2~A4の引抜方向A2H~A4Hと同じである。従って、本実施の形態のエアバッグリテーナ1は、遮蔽が所望される被遮蔽部24を適切に遮蔽する遮蔽部(遮蔽パネル30)が一体成形されているとともに、車両用樹脂構造体(エアバッグリテーナ1)を一体成形する際の金型の数や工程を増加させる必要がない。
【0037】
<[比較例1]のエアバッグリテーナ101(図5)と、一体成形する際の金型の例(図6)>
次に図5を用いて、図2及び図3に示す本実施の形態のエアバッグリテーナ1に対して、[比較例1]のエアバッグリテーナ101の例について説明する。[比較例1]のエアバッグリテーナ101は、エアバッグリテーナ1に対して、接続パネル40が省略されて、被遮蔽パネル120が正面パネル裏面112に接続されている点と、遮蔽パネル130が、抜き勾配の影響で、露出方向先端131から反露出方向先端132に向かって徐々に薄くなっている点が異なる。被遮蔽パネル120の取付孔123にはフック181が係止されて、遮蔽が所望される被遮蔽部124が有り、遮蔽パネル130は被遮蔽部124を、運転者から見えないように遮蔽する。
【0038】
図6は、図5に示す[比較例1]のエアバッグリテーナ101を樹脂にて一体成形する際の各金型B1~B4の例と、各金型B2~B4の引抜方向B2H~B4Hの例を示している。なお図6では、樹脂の一体成形品であるエアバッグリテーナ101と、各金型B1~B4を区別しやすいように、エアバッグリテーナ101と各金型との間や、隣り合う金型との間にあえてスキマをあけて記載している。
【0039】
遮蔽パネル130には、金型B2を引き抜くための抜き勾配を設けなければならないので、厚さT5>厚さT6としなければならない。ここで、図6に示す接続個所110Sにおける遮蔽パネル130の厚さT5を必要以上に厚くすると、いわゆる「樹脂のヒケ」が発生して、正面パネル110の表面(意匠面)に複数の「窪み」が発生してしまう。
【0040】
厚さT5を、「樹脂のヒケ」が発生しないよう程度の厚さに設定すると、抜き勾配によって薄くなった厚さT6が、製造下限薄さを下回ってしまうので、実現が困難である。厚さT6を、製造下限厚さよりも厚くすると、抜き勾配によって厚くなった厚さT6が必要以上に厚くなり、「樹脂のヒケ」が発生して見栄えがよくないので好ましくない。この双方を回避するには、遮蔽パネル130の抜き勾配を不要とするために、金型B2から点線で示す金型(B5)を分離し、当該金型(B5)を引抜方向(B5H)の方向に引き抜かなければならない。この場合、金型の数が増加するとともに増加した金型を引き抜く工程も追加しなければならないので好ましくない。
【0041】
<[比較例2]のエアバッグリテーナ201(図7)と、一体成形する際の金型の例(図8)>
次に図7を用いて、図2及び図3に示す本実施の形態のエアバッグリテーナ1に対して、[比較例2]のエアバッグリテーナ201の例について説明する。[比較例2]のエアバッグリテーナ201は、エアバッグリテーナ1に対して、接続パネル40が省略されて、被遮蔽パネル220が正面パネル裏面212に接続されている点と、遮蔽パネル230が、被遮蔽パネル220の途中の位置から斜め上方に延びるように設けられている点が異なる。被遮蔽パネル220の取付孔223にはフック281が係止されて、遮蔽が所望される被遮蔽部224が有り、遮蔽パネル230は被遮蔽部224を、運転者から見えないように遮蔽する。
【0042】
図8は、図7に示す[比較例2]のエアバッグリテーナ201を樹脂にて一体成形する際の各金型C1~C5の例と、各金型C2~C5の引抜方向C2H~C5Hの例を示している。なお図8では、樹脂の一体成形品であるエアバッグリテーナ201と、各金型C1~C5を区別しやすいように、エアバッグリテーナ201と各金型との間や、隣り合う金型との間にあえてスキマをあけて記載している。
【0043】
遮蔽パネル230が、被遮蔽パネル220と略平行ではないので、金型C5を追加して、当該金型C5を引抜方向C5Hの方向に引き抜く工程の追加が必要であるので好ましくない。さらに、金型C5を引抜方向C5Hの方向に引き抜くので、フランジ面211の延設方向は、反露出方向Vに沿う方向にすることができず、引抜方向C5Hの方向に沿う方向にする必要があり、フランジ面211の延設方向に制限が発生してしまう点も好ましくない。
【0044】
<[比較例3]のエアバッグリテーナ301(図9)と、一体成形する際の金型の例(図10)>
次に図9を用いて、図2及び図3に示す本実施の形態のエアバッグリテーナ1に対して、[比較例3]のエアバッグリテーナ301の例について説明する。[比較例3]のエアバッグリテーナ301は、エアバッグリテーナ1に対して、被遮蔽パネル320が正面パネル裏面312に接続され、遮蔽パネル330が正面パネル裏面312に接続されることなく接続パネル340にて被遮蔽パネル320に接続されている点が異なる。被遮蔽パネル320の取付孔323にはフック381が係止されて、遮蔽が所望される被遮蔽部324が有り、遮蔽パネル330は被遮蔽部324を、運転者から見えないように遮蔽する。
【0045】
図10は、図9に示す[比較例3]のエアバッグリテーナ301を樹脂にて一体成形する際の各金型D1~D5の例と、各金型D2~D5の引抜方向D2H~D5Hの例を示している。なお図10では、樹脂の一体成形品であるエアバッグリテーナ301と、各金型D1~D5を区別しやすいように、エアバッグリテーナ301と各金型との間や、隣り合う金型との間にあえてスキマをあけて記載している。
【0046】
遮蔽パネル330は被遮蔽パネル320と略平行であるが、接続パネル340が有るので、金型D5を追加して、当該金型D5を引抜方向D5Hの方向に引き抜く工程の追加が必要であるので好ましくない。さらに、金型D5を引抜方向D5Hの方向に引き抜くので、フランジ面311の延設方向は、反露出方向Vに沿う方向にすることができず、引抜方向D5Hの方向に沿う方向にする必要があり、フランジ面311の延設方向に制限が発生してしまう点も好ましくない。
【0047】
本発明の、車両用樹脂構造体であるエアバッグリテーナ1は、本実施の形態で説明した構成、構造、形状、外観等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0048】
本実施の形態の説明では、車両の内装として車室内に配置されるエアバッグリテーナ1を車両用樹脂構造体の例として説明した。しかし、これに限定されず、樹脂で一体成形されて車両の内装または外装に用いられる種々の車両用樹脂構造体に、本実施の形態にて説明した車両用樹脂構造体(エアバッグリテーナ1)の構造を適用することができる。
【0049】
また本実施の形態の説明では、「遮蔽が所望される被遮蔽部」として、エアバッグリテーナ1から露出したニーエアバッグ80のフック81を例として説明したが、「遮蔽が所望される被遮蔽部」は、フック81に限定されるものではない。また「遮蔽が所望される」における「遮蔽」とは、「ユーザから見えないようにする」だけでなく、「被水を回避する」等を含み、目的のために覆うことを指す。
【0050】
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 エアバッグリテーナ(車両用樹脂構造体)
10 正面パネル
10S 接続個所
11 フランジ面
12 正面パネル裏面
13 破断溝
20 被遮蔽パネル
21 露出方向先端
22 反露出方向先端
23 取付孔
24 被遮蔽部
30 遮蔽パネル
30A 第1パネル
30B 第2パネル
31 露出方向先端
32 反露出方向先端
40 接続パネル
50 下方パネル
51 露出方向先端
52 反露出方向先端
53 取付孔
80 ニーエアバッグ
81、82 フック
90 ステアリングコラム
A1~A4 金型
A2H~A4H 引抜方向
L1 所定距離
T1、T2、T3、T4 厚さ
V 反露出方向
X 露出方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図14